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事件 平成 13年 (ネ) 1213号 損害賠償請求控訴事件
控訴人(原告) 東京製網株式会社
訴訟代理人 弁護士 満園武尚
同 満園勝美
同 小屋 和歌子
補佐人 弁理士 鈴江武彦
同 坪井淳
同 河井将次
被控訴人(被告) 株式会社ゴショー
被控訴人補助参加人 川鉄建材株式会社
被控訴人及び補助参加人訴訟代理人弁護士 宮崎誠
同 平野惠稔
被控訴人及び補助参加人補佐人弁理士 吉村勝俊
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 2001/11/29
権利種別 特許権
訴訟類型 民事訴訟
主文 本件控訴を棄却する。
控訴費用は控訴人の負担とする。
事実及び理由
当事者の求めた裁判
1 控訴人 原判決を取り消す。
被控訴人は控訴人に対し金12,489,840円及びこれに対する平成12年2月1日から支払い済みに至るまで年5分の割合による金員を支払え。
訴訟費用は第1、2審とも被控訴人の負担とする。
2 被控訴人 主文と同旨
事案の概要
控訴人は被控訴人に対し、被控訴人が平成10年3月ころ神戸市<以下略>において神戸市道路公社発注の六甲有料道路災害防除工事(「本件工事」)に用いた工法(「被告工法」)が控訴人の有する特許権(登録第2679966号、「本件特許」)を侵害するものであると主張し、特許権侵害による損害賠償を請求した。原審は、被告工法は本件発明に係る明細書(「本件明細書」、ただし平成12年3月28日付けでなされた訂正請求により訂正された後のもの)の特許請求の範囲に記載された「立ち木および浮き石が点在する傾斜面全体の上に、その立ち木を伐採することなく、複数のワイヤロープを前記立ち木を避け、かつ前記浮き石の上を通るように網目状に張設し」という構成(「構成要件A」)を充足しないと判断し、控訴人の請求を棄却した。
当事者の主張
当事者の主張は、次の1及び2のとおり当審における当事者の主張を付加するほか、原判決の事実及び理由欄「第二 事案の概要」に摘示のとおりである。
1 控訴人の主張の要点 (1) 構成要件Aの解釈について 原判決は、構成要件Aにおける「その立ち木を伐採することなく」とは、「傾斜面上に存在する立ち木を1本たりとも伐採することなく」という意味に理解すべきであると解釈したが、この解釈は誤りである。また、本件発明にいう「伐採」とは、「単に立ち木をどこかで切る」という意味ではなく、立ち木を避けるためにワイヤロープを曲げる必要がなくなるように根元から伐採することを意味すると解すべきである。
ア 本件発明は、柔軟性のあるワイヤロープを1本ずつ傾斜面に引っ張って這わせて敷設していき、最終的に傾斜面の全体にワイヤロープを網目状に張設する技術であり、ワイヤロープに柔軟性があることから、ワイヤロープの敷設線上に立ち木があっても、その立ち木を伐採することなく、ワイヤロープの柔軟性を利用して立ち木を避けてワイヤロープを張設することに特徴がある。本件発明の特許請求の範囲で「その立ち木を伐採することなく」、「前記立ち木を避け」といっているのは、上記のような本件発明の施工方法の特徴からして、ワイヤロープの敷設線上に立ち木がある場合について述べたものであって、そうした箇所にある立ち木、すなわち「邪魔になる立ち木」を対象として、「その立ち木を伐採することなく」と表現したものである。したがって、特許請求の範囲にいう「その立ち木」、「前記立ち木」とは、「ワイヤロープ敷設線上にある立ち木」を指すことが明らかである。これを反面からいうと、ワイヤロープの敷設線上にない立ち木は、「邪魔にならない立ち木」であるから、本件発明でいう「その立ち木を伐採することなく」、
「前記立ち木を避け」の「立ち木」には当たらない。ワイヤロープの敷設線から外れた位置にある立ち木(邪魔にならない立ち木)を伐採するか否かは、本件発明とは無関係であり、構成要件充足性の判断に当たって考慮する必要がない(なお、控訴人は、ワイヤロープの敷設線上にある立ち木を一本だけ残し他を全部「伐採」したような場合まで、「伐採することなく」の要件を充足すると主張するものではない。)。
また、本件発明でいう立ち木の「伐採」とは、単に立ち木をどこかで切るという意味ではなく、上述したワイヤロープの柔軟性を利用してワイヤロープの敷設線上にある立ち木を避けるという本件発明の特徴からして、避けるべき立ち木がなくなりワイヤロープを曲げる必要がなくなるように根元から切ることを意味すると解すべきである。立ち木を根元の上方途中で切っても、切った立ち木の残りの部分を避けるようにワイヤロープが曲げられている場合は、本件発明にいう「伐採」には当たらない。 イ 原判決は、構成要件Aの「その立ち木を伐採することなく」が傾斜面上の立ち木の一本たりとも伐採しないことを意味するという解釈を採る理由として、
(@)本件明細書の「発明の詳細な説明」欄の記載、(A)本件特許の出願経過
及び(B)本件発明の出願時に公然実施されていた工事(乙第17号証)を挙げている。しかし、これらは、いずれも原判決の採った解釈を支持する理由となり得るものではない。
(@) 原判決は、本件明細書の「発明の詳細な説明」欄に、本件発明の課題、目的、実施例及び効果に関して、次の@からCの記載(以下「記載@」などという。)があることを指摘する。
@(課題) 「このような従来の手段においては、傾斜面の全体に金網を張設する関係で、その傾斜面上の立ち木(自然林、植林)を伐採しなければならず、このため施工作業が相当面倒となるばかりでなく、環境破壊を招き、美観も損なってしまう難点がある」(段落【0003】)、
A(目的) 「立ち木の伐採を要することなく施工でき、環境破壊や美観の低下を伴うことなく落石の発生を防止することができる落石防止工法を提供することにある。」(段落【0004】) B(実施例の説明) (立ち木を避けてワイヤロープを張設する工法の説明に続けて)「そして立ち木2…を特に伐採する必要がなく、このため施工作業が簡易で施工コストが低減するばかりでなく、立ち木2…をそのまま残せるから、
環境破壊を招かず、自然保護の点で有益であり、また立ち木2…によりワイヤロープ4…がある程度隠されるから外観も良好に保つことができる」(段落【0011】) C(効果) 「立ち木の伐採を要することがないから、設置が簡易でかつ環境破壊や美観の低下を伴うことがない利点がある。」(段落【0013】) しかし、記載@で言及されている従来技術とは、施工区域の傾斜面上にある立ち木を全部取り除いてから金網を傾斜面全体に覆い被せる「落石防止網工法」のことであり、本件明細書は、このような1本でも立ち木を残しておくことのできない工法との対比において、「立ち木の伐採を要することなく施工でき」(記載A)と述べているのであるから、「立ち木の伐採を要することなく」は、立ち木を一本たりとも伐採しないということまでを意味するものではない。むしろ、「立ち木の伐採を要することなく」は、伐採しても施工が可能であることを示唆する記載である。
また、実施例に関して説明した記載Bは、ワイヤロープを敷設する位置に生えている立ち木(邪魔になる立ち木)であっても、これを生えたままに残すことができることを説明しているだけであり、立ち木を一本たりとも伐採してはならないということまで述べたものではない。
記載Cについても、本件発明の効果として述べられた「設置が簡易で環境破壊や美観の低下がない」という点は、従来技術である「落石防止網工法」との対比で説明されているものであって、このことから、原判決が認定した「一本たりとも伐採することなく」という意味を引き出すことはできない。
なお、原判決は、本件明細書中に立ち木の伐採を示唆する記載がない旨説示するが、伐採を示唆する記載がないことは「一本たりとも伐採してはならない」と解釈すべき理由にならない。
(A) 原判決は、特許異議手続中でなされた拒絶理由通知に対して、控訴人が本件特許請求の範囲の記載に「その立ち木を伐採することなく」という文言を付加する訂正を請求し、この訂正を容れて本件特許を維持する旨の異議の決定がなされたという出願経過を指摘し、これを、「その立ち木を伐採することなく」を「傾斜面上に存在する立ち木を一本たりとも伐採することなく」という意味に理解すべき理由として挙げている。
確かに、本件特許の出願から登録維持に至る経過は原判決の認定のとおりであるが、異議手続中でなされた前記訂正は、明細書の段落【0011】、【0013】に対応する記載が特許請求の範囲に記載されていないという36条5項、6項違反の拒絶理由通知に対してなされたものであり、「立ち木を避け」の立ち木が「傾斜面に元々存在した全部の立ち木」を対象とすることを明らかにする趣旨でしたものではない。したがって、上記訂正の経緯は、構成要件Aを原判決のように限定して解釈する理由とはなり得ない。
(B)原判決は、本件特許出願前に公然実施された工法(乙17号証、以下同号証に示された工法を「第17号証の工法」という。)を構成要件Aについての限定解釈の理由として挙げている。しかし、乙第17号証の工法は、本件発明とは全く異なる「ワイヤロープ掛工」であって、原判決が認定したような「立ち木及び浮き石が点在する法面の上に、あらかじめ立ち木の一部を伐採した後に、複数のワイヤロープを、残った立ち木を避け、かつ前記浮き石の上を通るように網目状に張設し、これらワイヤロープの端末をアンカーを介して傾斜面に係止する」工法ではない。さらに重要なことは、乙第17号証の工法が実施されたという現場では、ワイヤロープの交差部がアンカーで係止されておらず、また、傾斜面に掘った穴に凝固剤を充填することも行われていないことである(甲第18号証)。つまり、乙第17号証の工法は「傾斜面の複数箇所に穴を掘り、これら穴内にそれぞれ凝固剤を充填し、これら凝固剤中にそれぞれアンカーを差し込んでワイヤロープの交差部を係止」するという構成(本件発明の構成要件D)を欠いている。したがって、乙第17号証の工法は、「あらかじめ立ち木の一部を伐採した後に、残った立ち木を避けて」ワイヤロープを張設する工法は本件発明の技術的範囲に含まれないと解釈するのに根拠となり得るような公知技術ではない。
(2) 被告工法について 原判決は、「被告工法では、傾斜面に点在する立ち木のうち、ワイヤロープを張設するのに邪魔になる立ち木は、地表面付近の小さな立ち木のみならず、径の比較的大きいものも伐採しており、伐採した立ち木は元々傾斜面に存在した立ち木の約半分にのぼる(当事者間に争いがない。なお、被告工法の具体的内容については乙1(枝番号は省略する。)参照。)。」と認定した。しかし、当事者間に争いがないのは、「地表面付近の小さな立ち木のみならず、径の比較的大きいものも伐採しており、伐採した立ち木は元々傾斜面に存在した立ち木の約半分にのぼる」点であり、「邪魔になる立ち木を伐採した」ことを控訴人が認めたものではない。
被告工法では、ワイヤロープは、傾斜面上の立ち木の相当数を伐採した後、伐採されずに残った立ち木でワイヤロープの敷設線上にあるものを避けるように曲がって張設されており、立ち木を切った場合でも、切り残した木の根元の部分を避けて曲がるようにワイヤロープが張設されている(乙第1号証の6、7、甲第17号証)から、ワイヤロープの敷設線上にある立ち木について、本件発明の意味における「伐採」は行われていない。
(3) 本件発明と被告工法との対比 本件発明の構成要件Aは、前述のとおり、ワイヤロープの「敷設線上にある立ち木」を「伐採することなく・・・避けてワイヤロープを張設する」ことを規定したものであるから、ワイヤロープ敷設線上に残った立ち木(邪魔になる立ち木)を「伐採する」(ワイヤロープを曲げる必要がないように切る)ことなく、立ち木を避けて張設している被告工法は、構成要件Aを充足する。また、その他の本件発明の構成要件もことごとく充足する。
2 被控訴人及び補助参加人の主張の要点 (1) 構成要件Aの解釈について 構成要件Aの「その立ち木を伐採することなく、・・・前記立ち木を避け」の「立ち木」は、特許請求の範囲の記載の前後の文脈に照らしても、本件特許の異議手続中で拒絶理由通知に対してなされた訂正の経緯に照らしても、「傾斜面上に元々存在する全部の立ち木」を意味する。控訴人の主張するように「ワイヤロープ敷設線上の立ち木」と解釈すべき理由は全くない。また、「伐採」の意味を控訴人主張のように狭く解する理由もない。
ア 控訴人は、本件発明の施工方法は、ワイヤロープの敷設線上に立ち木があっても、その立ち木を伐採せずにワイヤロープの柔軟性を利用して立ち木を避けて敷設することができる技術であり、そのことから当然に、「立ち木」は「ワイヤロープの敷設線上にある立ち木」を意味し、「伐採」とは立ち木を避けるためにワイヤロープを曲げる必要のないように根元から伐採することであると主張する。しかし、本件明細書中には、控訴人の上記解釈を支持する記述は一切存在しないし、
ワイヤロープの柔軟性を利用して立ち木を避けた実施例も示されていない。
かえって、本件明細書の【図2】を見ると、本件発明の施工方法は、ワイヤロープの柔軟性を利用してワイヤロープの敷設線上にある立ち木を避けるというものではなく、むしろ、敷設線上に立ち木が来ることのないように(立ち木を避けて)ワイヤロープを網目状に張設する技術であることが明らかである。控訴人の主張は、
前提において失当であり、理由がない。
イ 本件明細書の発明の詳細な説明、本件特許の出願経過先行技術(乙第17号証)は、いずれも構成要件Aについての原判決の解釈を支持するものである。
(@) 原判決が摘示した本件発明の目的・効果に関する本件明細書中の記述は、本件発明の目的が立ち木の伐採を避け、環境・美観の低下の防止を図ることにあることを明確にし、本件発明によってこれらの目的が達成され、落石防止装置設置も容易になるとしている。これらの明細書中の記述に照らせば、本件発明により伐採されることのなくなった「立ち木」がワイヤロープの敷設線上の立ち木のみであると解することは不可能である。
「伐採」の意味についての控訴人の解釈も、根拠がない。「伐採」とは、国語どおり、木を切断することである。本件発明が目的とする環境及び美観の保護という見地からは立ち木をどの高さで切ろうと同じことであるから、「伐採」を控訴人の主張するような特殊な意味に理解することはできない。 (A) 本件特許の権利成立の経緯からしても、本件発明の構成要件Aの「伐採することなく」という文言の対象としている立ち木がワイヤロープの敷設線上にある立ち木のみであるという控訴人の主張は、失当である。すなわち、本件特許については、異議手続の中で、特許請求の範囲に「その立ち木を伐採することなく」という文言を付加する訂正の請求がされ、特許庁は、上記訂正によって、「立ち木を避け」の立ち木は、「傾斜面に元々存在した全部の立ち木」を対象とすることが明らかになったものと認められるから、本件特許出願が特許法36条5項及び6項の規定する要件を満たしていないという異議申立人の主張を採用することはできない旨判断して、本件特許を維持する旨の決定をしたのである。このような権利成立の経緯からすれば、「立ち木を伐採することなく」の「立ち木」がワイヤロープの敷設線上にある立ち木のみを意味するという解釈を容れる余地はない。
(B) 控訴人は、乙第17号証に示された工法は、「ワイヤロープ掛工」(甲第16号証)であり、本件発明は、それとは全く異なるものであるから、原判決が乙第17号証の工法を本件発明の先行技術として参酌して構成要件Aを解釈したことは誤りであると主張する。
しかし、控訴人が「ワイヤロープ掛工」と呼ぶ工法の特徴は、A.ワイヤロープの端部に多数のアンカーを打って固定する、B.ワイヤロープが交差して網目状になっている、C.ワイヤロープを一本ずつ引っ張って張設する、D.中間に立ち木を残すこともある(残さないこともある)、E.網目状に張設されたワイヤロープの交差部をクロスクリップで締結する、F.交差部はアンカーで締結されない、というものであり、網目状となったワイヤロープの交差部もアンカーで固定するという点(上記F)以外は、本件発明と共通している。そして、Fの点についていえば、ワイヤロープの交差部をアンカーで係止すればワイヤロープを傾斜面の地形に沿って密着させることができて、落石の防止に効果的であることは自明のことである。乙第17号証の工法が控訴人の主張のとおり「ワイヤロープ掛工」であるなら、本件発明は、公知技術である「ワイヤロープ掛工」そのものないし公知技術に自明事項を付加しただけの技術ということになる。控訴人の主張は、結局、本件特許の無効を自認しているに等しい。
また、原判決は、乙第17号証によって「法面に点在する立ち木の一部を伐採し、残りの立ち木を避けてワイヤロープを張設する落石防止工法が公然実施されていた」ことを認定し、これをも参酌して、本件発明の構成要件Aにおける「その立ち木を伐採することなく」を、「斜面上に点在する立ち木を伐採することなく」という意味を解釈したのである。乙第17号証の工法が、仮に控訴人の主張するように「ワイヤローの交差部がアンカーで固定されていないという」という点があるにしても、そのことは本件発明の構成要件Aについてした原判決の上記解釈の正当性に何らの影響も及ぼすものではない。
(2) 本件発明と被告工法との対比 本件発明の構成要件Aに関する被控訴人の主張は、前記のとおり、いずれも理由がなく、「その立ち木を伐採することなく」とは「斜面上に存在する立ち木を一本も伐採することなく」という意味に解されるところ、被告工法においては、落石防止工事を行う当たり、傾斜面上に存在する立ち木の相当数を伐採しているのであるから、本件発明の構成要件Aを充足せず、本件特許権を侵害するものではない。
当裁判所の判断
当裁判所も、被告工法は本件発明の構成要件Aを充足しないと判断する。その理由は、次のとおりである。
1 特許請求の範囲及び本件明細書の発明の詳細な説明欄の各記載 本件特許の特許請求の範囲が、平成12年3月28日付け訂正請求書に添付された訂正明細書に記載のとおり訂正されて、原判決の事実及び理由欄の第二、一、1の(五)に引用されたとおりのものとなったこと、及び本件発明の構成要件が次のAないしEのとおり分説されることは、当事者間に争いがない。
(本件発明の構成要件) A 立ち木および浮き石が点在する傾斜面全体の上に、その立ち木を伐採することなく、複数のワイヤロープを前記立ち木を避け、かつ前記浮き石の上を通るように網目状に張設すること。
B これらワイヤロープの端末をアンカーを介して傾斜面に係止すること。
C 各ワイヤロープの交差部をクロスクリップで締結すること。
D さらに前記傾斜面の複数箇所に穴を掘って、これらの穴内にそれぞれ凝固剤を充填し、これら凝固剤中にそれぞれアンカーを差し込んで固定してこれらアンカーによりワイヤロープの交差部を係止し前記ワイヤロープを点在する浮き石間で傾斜面の地形に沿って密着するようにして前記浮き石を押さえ付けること。
E 前記AないしDを特徴とする落石防止工法 また、甲第2号証及び弁論の全趣旨によれば、本件明細書には、@【発明が解決しようとする課題】欄に、「このような従来の手段においては、傾斜面の全体に金網を張設する関係で、その傾斜面上の立ち木(自然林、植林)を伐採しなければならず、このため施工作業が相当面倒となるばかりでなく、環境破壊を招き、美観も損なってしまう難点がある」として、従来技術の問題点が指摘され(段落【0003】)、上記記載に続けて、「この発明はこのような点に着目してなされたもので、その目的とするところは、立ち木の伐採を要することなく施工でき、環境破壊や美観の低下を伴うことなく落石の発生を防止することができる落石防止工法を提供することにある。」(段落【0004】)と本件発明の目的が記載され、B【発明の実施の形態】欄に、本件発明の施工方法を説明する記述に続けて、「そして立ち木2…を特に伐採する必要がなく、このため施工作業が簡易で施工コストが低減するばかりでなく、立ち木2…をそのまま残せるから、環境破壊を招かず、自然保護の点で有益であり、また立ち木2…によりワイヤロープ4…がある程度隠されるから外観も良好に保つことができる。」(段落【0011】)と記載され、C【発明の効果】欄に、「以上述べたようにこの発明によれば、浮き石の初期始動を押さえた落石の発生を確実に防止することができるとともに、立ち木の伐採を要することがないから、設置が簡易でかつ環境破壊や美観の低下を伴うことがない利点がある。」(段落【0013】)と記載されていることが認められる。 2 構成要件Aの解釈 (1) 「その立ち木」及び「前記立ち木」について 構成要件Aについては、「立ち木」が傾斜面上に元々存在する全部の立ち木を意味するのか、ワイヤロープの敷設線上にある立ち木のみを意味するのかにつき争いがあるので、まず、この点について検討する。
構成要件Aに係る「立ち木および浮き石が点在する傾斜面全体の上に、
その立ち木を伐採することなく、複数のワイヤロープを前記立ち木を避け、かつ前記浮き石の上を通るように網目状に張設し、」という特許請求の範囲の記載は、本件明細書の発明の詳細な説明及び図面に、立ち木及び浮き石がそれぞれ「立ち木2…」、「浮き石3…」と表記され図面にも複数が表示されている(段落【0006】、【0007】、【0011】、【図1】、【2】)ことに表れているように、本件発明の施工対象となる傾斜面全体(以下、単に「傾斜面」という。)の上に、複数の立ち木及び複数の浮き石が点在していることを前提としている。そして、上記文脈の中で、「その立ち木を伐採することなく」の「その立ち木」及び「前記立ち木を避け」の「前記立ち木」が同一文中で先に述べられたものを指すことは明らかであるから、「その立ち木」及び「前記立ち木」は、いずれも、傾斜面の上に「点在する立ち木」を指し、傾斜面の上に元々存在する複数の立ち木を総称したものであると解される。
「その立ち木」及び「前記立ち木」が点在する複数の立ち木であることは、本件明細書の発明の詳細な説明中に、本件発明の実施の形態について「この傾斜面1に立ち木2…とともに、落石の発生源である浮き石3…が点在している。このような斜面1の上に、多数本のワイヤロープ4…を立ち木2…を避け、かつ浮き石3…の上を通るように縦横あるいは斜め方向に網目状に張設し、これらワイヤロープ…の端末を傾斜面1にアンカー9を介して係止する。」という説明があり(段落【0006】、【0007】)、傾斜面1の上に存在する「立ち木」とワイヤロープが避ける「立ち木」のいずれについても、「立ち木2…」という複数を表す同一の表現が用いられていることにも示唆されている。
そして、「立ち木」を特定のもの(ワイヤロープの敷設線上にある立ち木)に限定する趣旨の記載は、本件明細書の全記載を検討しても、見出すことができない。
そうすると、特許請求の範囲に記載された「立ち木」は、傾斜面の上に元々存在する複数の立ち木の全部を意味していると解することが相当である。
イ 「その立ち木を伐採することなく」という文言が特許請求の範囲に付加された経緯は、構成要件Aの「その立ち木」及び「前記立ち木」が傾斜面上に元々存在する全部の立ち木であるとの解釈を支持するものということができる。
(@) 本件発明の一連の出願経過が、原判決の第三、一1(二)に摘示されたとおりであることは当事者間に争いがないところ、乙第8ないし第10、第19、第20号証、甲第3、第4号証によれば、@本件特許に対する異議手続の中で、異議申立人が異議申立理由の1つとして、特許請求の範囲に記載された「立ち木を避け」の立ち木は「傾斜面に元々存在した全部の立ち木」を対象とするのか「傾斜面に存在する立ち木の幾らかを伐採し、伐採されずに残った立ち木を対象とする」のかが明瞭でないと主張し、A特許庁は、平成10年11月20日付けで、
被申立人(控訴人)に対し、「特許請求の範囲の欄において、本件発明の構成に欠くことができない事項(特に「発明の詳細な説明」欄中の段落【0011】、【0013】に対応する事項))が記載されてなく、不明瞭である」旨の取消理由を通知し(注、段落【0011】には「そして立ち木2…を特に伐採する必要がなく、・・・・、立ち木2…をそのまま残せるから」と記載され、段落【0013】には「落石の発生を確実に防止することができるとともに、立ち木の伐採を要することがないから、」と記載されている。)、Bこれを受けて、控訴人は、同日付けで、特許請求の範囲を「立ち木および浮き石が点在する傾斜面全体の上に、その立ち木を伐採 することなく 、複数のワイヤロープを前記立ち木を避け、・・・」(注、下線部が訂正による付加部分)と訂正する訂正請求をし、C特許庁は、異議の決定において上記訂正を認め、「訂正請求における「立ち木を伐採することなく」という訂正事項により、「立ち木を避け」の立ち木は、「傾斜面に元々存在した全部の立ち木を対象とする」ことが明らかになったものと認められるから、本件特許出願が特許法第36条第5項及び第6項の要件を満たしていないという川鉄建材株式会社(注、異議申立人)の主張は、採用することができない。」と判断し、
異議各号証には、構成要件Aの構成が備わっておらず、本件発明は上記構成により「立ち木を特に伐採する必要がなく、・・・立ち木をそのまま残せるから、環境破壊を招かず」という格別の効果を奏するものであるから、他の異議申立理由も理由がないとして、本件特許を維持する決定をしたことが認められる。
(A) これらの一連の経緯に照らすと、特許請求の範囲に「その立ち木を伐採することなく」の文言を付加する訂正は、客観的にみて、「前記立ち木を避け」における避ける対象が「傾斜面に元々存在する全部の立ち木」であることを明らかにする趣旨のものと認められる。また、特許庁も、「前記立ち木を避け」の「立ち木」が「傾斜面に元々存在した全部の立ち木」を意味するとの認定を前提として、本件特許を維持する決定をしたのであり、本件特許に関する一連の手続の経緯に照らすと、「前記立ち木を避け」の「立ち木」について、前記アで認定したのと反対の解釈を採ることは許されないというべきである。
そして、上記特許請求の範囲の記載の文脈の中で、「その立ち木を伐採することなく」の「その立ち木」と「前記立ち木を避け」の「前記立ち木」とが、ともに同一の対象を指称していることは明らかであるから、「その立ち木を伐採することなく」の「その立ち木」も、「前記立ち木」と同様に「傾斜面に元々存在する全部の立ち木」を意味すると解さざるを得ない。
ウ 控訴人は、本件発明の特徴は、柔軟性のあるワイヤロープを曲げることによって立ち木を避けることにあると主張し、曲げることによって避ける立ち木はワイヤロープの敷設線上にある立ち木であるから、本件発明の構成要件Aに関して問題になる「立ち木」は、ワイヤロープの敷設線上にある立ち木である(これ以外の立ち木を伐採するか否かは本件発明の関知するところではない。)と主張する。
しかし、控訴人の主張する解釈は、特許請求の範囲の記載の文脈、本件明細書に記載された本件発明の目的、実施形態についての説明及び効果についての記載(前記1の@からC参照)に照らして無理があり、むしろ、構成要件Aにおける「その立ち木」及び「前記立ち木」は、ワイヤロープの敷設線上にあるものとないものの双方を含めた意味に理解することが特許請求の範囲の記載の文脈及び本件明細書中の開示に沿った自然な解釈である。特に、「立ち木」の限定解釈の理由として控訴人が主張する本件発明の特徴について、本件明細書の発明の詳細な説明中には、ワイヤロープの柔軟性を利用して立ち木を避ける(ワイヤロープを曲げることで立ち木を迂回する)ことに触れた記載が一切存在せず、本件発明の実施形態を平面図で示したものと認められる【図2】にもワイヤロープを曲げて立ち木を迂回することは示されていないのであって、曲げて避けることが特徴であるという控訴人の主張を支持する記載は、本件明細書中に見出すことができない。また、「立ち木」を限定して解釈する根拠となるような記載は、本件明細書の発明の詳細な説明欄の記載及び図面中に何ら存在しない。よって、構成要件Aにおける「立ち木」がワイヤロープの敷設線上に存在する立ち木に限定されるという控訴人の解釈は、採用することができない。
(2) 「伐採」について 一般用語としての「伐採」は、「山や森の竹・木などを伐(き)りとること」(広辞苑)を意味する。「伐採」がこれと異なる特別な意味を有することを窺わせる記載は本件明細書中に存在しないから、本件発明にいう「伐採」は、通常の国語上の意味である「竹木を切ること」という意味に解すべきである。
控訴人は、本件発明の「伐採」は、ワイヤロープが立ち木を避ける必要がなくなるように根元から切ることを意味し、立ち木を切っても残った切り株をワイヤロープを曲げて避けている場合には「伐採」とはいえないと主張するが、「伐採」が特別な意味を持つことを示唆する記載は、本件明細書中に存在しない。よって、「伐採」の意味について控訴人の主張する解釈は、採ることができない。 (3) 「その立ち木を伐採することなく、・・・前記立ち木を避け」について 「立ち木」及び「伐採」について上記(1)及び(2)で述べた解釈をふまえて、「その立ち木を伐採することなく、複数のワイヤロープを前記立ち木を避け、・・・網目状に張設する」という要件について検討する。
ア 本件発明の「立ち木を避け」については、「避け(る)」の技術的な意味が特許請求の範囲の記載だけからでは必ずしも明確でない。
そこで、本件明細書を検討すると、発明の詳細な説明中で、@課題解決の手段及び本件発明の実施形態について記述した箇所には、「複数のワイヤロープを前記立ち木を避け、かつ前記浮き石の上を通るように網目状に張設し」(段落【0005】)、「多数本のワイヤロープ4…を立ち木2…を避け、かつ浮き石3…を通るように縦横あるいは斜め方向に網目状に張設し」【0007】として、立ち木を「避ける」ことについて記載され(伐採しないことへの言及はない。)、A本件発明を実施した結果ないし効果について記述した箇所には、「このような落石防止工法によれば、・・・落石が長期に亘って確実に防止される。そして立ち木2…を特に伐採する必要がなく、・・・立ち木をそのまま残せるから、環境破壊を招かず・・・」(段落【0010】、【0011】)、「この発明によれば、立ち木の伐採を要することがないから、設置が簡易でかつ環境破壊や美観の低下を伴うことがないから、設置が簡易でかつ環境破壊や美観の低下を伴うことがない利点がある。」(段落【0013】)として、本件発明の構成により、立ち木の伐採が不要となり、立ち木をそのまま残せる(したがって、環境破壊や美観の低下を伴うことがない。)という利点ないし効果があることが記載されていることが認められる。
これらの記述は、全体の文脈に沿って理解するとき、立ち木を「避け」てワイヤロープを張設するから「立ち木」の伐採が不要となるという趣旨を述べているものと解される。そうすると、本件明細書に開示された落石防止工法は、立ち木を伐採しないで済むように、立ち木の生えた位置を外して(かつ、浮き石の上を通るように)各ワイヤロープの敷設される位置ないし経路(敷設線)を決め、多数のワイヤロープをその張設面が網目状になるように形成することを特徴とするものであるということができる。本件発明の実施態様を示した【図2】も、アンカーとアンカーとの間を直線状に結んだワイヤロープの敷設線が立ち木の生えている位置を外して(かつ、浮き石の上を通るように)通っている状態を示すことによって、本件発明の上記特徴を端的に示したものと認められるのであって、これ以外の「避ける」態様を示唆する記載は、本件明細書中に一切存在しない。
イ 以上の点を勘案すると、明細書中に開示された発明を記載すべきものとされている特許請求の範囲の「その立ち木を伐採することなく、複数のワイヤロープを前記立ち木を避け、・・・網目状に張設する」という記載における「立ち木を避け」は、立ち木の生えている位置を外してワイヤロープの敷設線を設定することにより立ち木を避けることを表現したものであると認められ、異議手続中の訂正請求により特許請求の範囲の記載に付加された「立ち木を伐採することなく」は、上記のような「避ける」態様を、立ち木の側に着目して表現することによって、より一層明確にしたものであると解される。
そして、ワイヤロープが「避け」るべき「立ち木」が「傾斜面上に元々存在した全部の立ち木」であることは、前記(1)に説示したとおりであるから、構成要件Aは、結局、「傾斜面上に元々存在する全部の立ち木」を対象として、これを「伐採することなく」、「避け」て、各ワイヤロープを敷設することを要求していると解すべきことになる。
ウ なお、控訴人は、構成要件Aの「立ち木を伐採することなく、・・・避け」は、ワイヤロープの敷設に先立って傾斜面上の立ち木の相当数を伐採した後、
残った立ち木を避けてワイヤロープを敷設する場合を含むものであると主張する。
しかし、傾斜面上の立ち木の相当数をあらかじめ伐採した場合には、「傾斜面上に元々存在する全部の立ち木」を「避け」て複数のワイヤロープを張設するという本件発明に特徴的とされる技術手段そのものが、不要ないし実現不能となるのであって、構成要件Aがそのような場合まで含むと解することは、矛盾しているといわざるを得ない。控訴人主張の上記解釈は、採ることができない。
また、控訴人は、構成要件Aの「立ち木を伐採することなく、・・・避け」は、
ワイヤロープの敷設線上にある立ち木を切った後に残った根元の部分をワイヤロープを曲げて迂回させる場合を含むと主張するが、これは「伐採」についての独自の解釈を前提とするものであり(その解釈を採り得ないことについては前記(2))、失当というほかない。
3 本件発明と被告工法との対比 (1) 被告工法について 弁論の全趣旨によれば、被控訴人が被告工法を実施したこと、及び原判決摘示の被告工法の構成(以下のaないしd)のうちbないしdについては、当事者間に争いがない。
(被告工法の構成) a 立ち木及び浮き石が点在する傾斜面の上に、ワイヤロープを張設するにおいて、邪魔になる立ち木を伐採した後に複数のワイヤロープを縦横に張設していること。
b 浮き石の上を通るように網目状に張設されるワイヤロープによって構成されるワイヤロープの張設面は、端末がアンカーで傾斜面に係止されているワイヤロープ(以下「係止ワイヤロープ」という。)と、端末がアンカーで傾斜面に固定されていないワイヤロープ(以下「非係止ワイヤロープ」という。)とからなっていること。係止ワイヤロープは2メートルの格子を形成し、その格子を16分するように、非係止ワイヤロープが50センチメートルおきに配置されていること。非係止ワイヤロープの末端には巻付グリップが巻き付いており、右巻付グリップと、
係止ワイヤロープとがクロスクリップで締結されていること。
c 係止ワイヤロープの交差部、非係止ワイヤロープの交差部、及び係止ワイヤロープと非係止ワイヤロープとの交差部が、いずれもクロスクリップで締結されていること。ただし、係止ワイヤロープの交差部については、クロスアンカークリップが使用され、アンカーで傾斜面に係止されていること。
d さらに前記傾斜面の複数箇所に穴を掘って、これらの穴内に凝固剤が充填されプラスチック粗網で外面が補強されている紙袋を挿入し、この紙袋内にアンカーを差し込んで固定し、これらアンカーにより前記ワイヤロープの交差部を点在する浮き石間で傾斜面の地形に沿って密着するように係止して浮き石を押さえ付けていること。
イ 被告工法の構成aについては、被告方法が「立ち木および浮き石が点在する傾斜面の上にワイヤロープを張設するにおいて、複数のワイヤロープを縦横に張設(する)」ものであること、及び、ワイヤロープの張設に先立って傾斜面上に元々存在した立ち木のうち相当数のものが伐採され、伐採した立ち木は元々傾斜面に存在した立ち木の約半分にのぼることについて、当事者間に争いがない。
被告方法が「邪魔になる立ち木を伐採した後に」ワイヤロープを張設しているか否かについては争いがあり、控訴人は、ワイヤロープ敷設線上にある立ち木(邪魔になる立ち木)は「伐採」されておらず、ワイヤロープを曲げることによって立ち木を避けていると主張する。しかし、控訴人が上記主張の根拠として挙げる乙第1号証の写真及び甲第17号証の写真(いずれも被告工法の施工現場を撮影したものと認められる。)は、被告工法の施工区域の一部を示しているにすぎず、傾斜面全体を見たときにワイヤロープの敷設線上に存在する立ち木の中で伐採されたものがないとまでは認めることができない。かえって、乙第1号証の8の写真中央部には、ワイヤロープの敷設線上に位置する立ち木が伐採された状態が示されており、
被告工法では、ワイヤロープの敷設線上にある立ち木の中にも伐採されるものがあることが認められる。
ウ 以上によれば、被告工法は、「立ち木および浮き石が点在する傾斜面の上に、ワイヤロープを張設するにおいて、傾斜面上に元々存在した立ち木のうちの相当数(立ち木の約半分にのぼり、ワイヤロープの敷設線上にあるものも含む。)を伐採した後に、複数のワイヤロープを縦横に張設し」、原判決の認定した被告工法の構成bないしdのとおりの手段を用いてワイヤロープで浮き石を固定する落石防止方法であると認められ、上記認定を覆すに足りる証拠はない。
(2) 対比(構成要件Aについて) 前記(1)で認定した被告工法の構成を本件発明の構成要件と対比すると、被告工法は、ワイヤロープの敷設線上にある立ち木も含めて、傾斜面に元々存在する多数の立ち木のうちの相当数を「伐採」しているものであるから、構成要件Aが前記2(3)イに説示したとおり、「傾斜面上に元々存在する全部の立ち木を対象として、これを伐採することなく、避けて、各ワイヤロープを敷設する」ことと解釈されるものである以上、「その立ち木(傾斜面上に点在する立ち木)を伐採することなく、・・・避けて」ワイヤロープを張設するという要件を充足するということはできない。
そして、本件発明は、「立ち木2…をそのまま残せるから、環境破壊を招かず、
自然保護の点で有益であ(る)」と説明され(段落【0011】)、発明の効果として、「立ち木の伐採を要することがないから、設置が簡単でかつ環境破壊や美観の低下を伴うことがない利点がある。」ことを標榜しているものであるところ、被告工法は、ワイヤロープの張設に先立って、施工区域の傾斜面に存在する立ち木の約半数を伐採するものであるから、本件発明が目的としている上記効果を奏するものということもできない。
4 結論 以上のとおりであるから、その余の点について判断するまでもなく、被告工法が本件発明の技術的範囲に属するということはできず、特許権侵害を理由とする控訴人の各請求は理由がない。
よって、本件控訴を棄却することとし、主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 永井紀昭
裁判官 古城春実
裁判官 橋本英史
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