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関連審決 異議2000-72834
関連ワード 反復(反復可能性) /  反復実施 /  新規性 /  頒布された刊行物 /  一致点の認定 /  同一の発明 /  発明の詳細な説明 /  明瞭でない記載 /  同一の作用効果 /  実施 /  設定登録 /  新規事項追加(新規事項の追加) /  訂正の目的 /  請求の範囲 /  減縮 /  拡張 /  変更 /  釈明 /  訂正明細書 /  取消決定 / 
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事件 平成 13年 (行ケ) 107号 特許取消決定取消請求事件
原告 テイカ製薬株式会社
訴訟代理人弁護士 鈴木和夫、杉山真一、弁理士 臼村文男
被告 特許庁長官及川耕造
指定代理人 宮本和子、森田ひとみ、茂木静代
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 2001/12/18
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
主文 原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
原告の求めた裁判
「特許庁が異議2000-72834号事件について平成13年1月29日にした決定を取り消す。」との判決。
事案の概要
1 特許庁における手続の経緯 本件特許第3002733号の請求項1ないし2の発明(名称「インドメタシン含有貼付剤」。本件発明)は、平成2年7月19日に特許出願され、平成11年11月19日にその特許の設定登録があったが、特許異議の申立てがあって(異議2000-72834号)、平成12年12月28日訂正請求があり、平成13年1月29日、「訂正を認める。特許第3002733号の請求項1ないし2に係る特許を取り消す。」との決定があり、その謄本は平成13年2月19日原告に送達された。
2 本件発明の要旨(上記訂正後)【請求項1】 (a) インドメタシンと、
(b) インドメタシン1重量部に対して0.01〜5.0重量部のノニル酸ワニリルアミド、インドメタシン1重量部に対して0.1〜10.0重量部のポリオキシエチレンとポリオキシプロピレンのブロック共重合体およびインドメタシン1重量部に対して0.01〜5.0重量部のトウガラシエキスから選ばれる少なくとも1種のインドメタシンの長期安定性を改善するための安定化剤とを含有することを特徴とするインドメタシン含有貼付剤。
【請求項2】 剤型がパップ剤である請求項1に記載のインドメタシン含有貼付剤。
3 決定の理由の要点 (1) 訂正の適否についての判断 (1)-1 訂正の内容訂正事項a 特許請求の範囲の請求項1が「(a) インドメタシンと、
(b) ノニル酸ワニリルアミド、ポリオキシエチレンとポリオキシプロピレンのブロック共重合体およびトウガラシエキスから選ばれる少なくとも1種の安定化剤とを含有することを特徴とするインドメタシン含有貼付剤。」とあるのを、
「(a) インドメタシンと、
(b) インドメタシン1重量部に対して0.01〜5.0重量部のノニル酸ワニリルアミド、インドメタシン1重量部に対して0.1〜10.0重量部のポリオキシエチレンとポリオキシプロピレンのブロック共重合体およびインドメタシン1重量部に対して0.01〜5.0重量部のトウガラシエキスから選ばれる少なくとも1種のインドメタシンの長期安定性を改善するための安定化剤とを含有することを特徴とするインドメタシン含有貼付剤。」と訂正し、
訂正事項b 明細書3頁15〜20行(特許掲載公報第4欄1〜6行)の「本発明のインドメタシン含有貼付剤は、以下の(a) および(b) 成分を含有することを特徴とする。
(a) インドメタシンと、
(b) ノニル酸ワニリルアミド、ポリオキシエチレンとポリオキシプロピレンのブロック共重合体およびトウガラシエキスから選ばれる少なくとも1種の安定化剤。」を、
「本発明のインドメタシン含有貼付剤は、以下の(a) および(b) 成分を含有することを特徴とする。
(a) インドメタシンと、
(b) インドメタシン1重量部に対して0.01〜5.0重量部のノニル酸ワニリルアミド、インドメタシン1重量部に対して0.1〜10.0重量部のポリオキシエチレンとポリオキシプロピレンのブロック共重合体およびインドメタシン1重量部に対して0.01〜5.0重量部のトウガラシエキスから選ばれる少なくとも1種の安定化剤。」と訂正するものである。
(1)-2 訂正の目的の適否、拡張変更の存否、及び新規事項の追加の有無 上記訂正事項aは、請求項1に記載された安定化剤の配合割合を明細書4頁1〜12行に記載されている範囲に限定するものであるから、特許請求の範囲減縮に該当する。
訂正事項bは、特許請求の範囲の訂正に伴って、発明の詳細な説明の欄の記載を整合させたものであることから、明瞭でない記載釈明に該当する。
また、これらの訂正は実質上特許請求の範囲拡張し、又は変更するものでもない。
以上のとおりであるから、上記訂正請求は、特許法第120条の4第2項及び同条第3項で準用する第126条第2〜3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。
(2) 特許異議の申立てについての判断 (2)-1 本件発明 本件請求項1〜2に係る発明は、訂正後の特許請求の範囲に記載された事項により特定されるとおりの「1.(a) インドメタシンと、
(b) インドメタシン1重量部に対して0.01〜5.0重量部のノニル酸ワニリルアミド、インドメタシン1重量部に対して0.1〜10.0重量部のポリオキシエチレンとポリオキシプロピレンのブロック共重合体およびインドメタシン1重量部に対して0.01〜5.0重量部のトウガラシエキスから選ばれる少なくとも1種のインドメタシンの長期安定性を改善するための安定化剤とを含有することを特徴とするインドメタシン含有貼付剤。
2.剤型がパップ剤である請求項1に記載のインドメタシン含有貼付剤。」にあるものと認められる。
(2)-2 引用例記載の発明 異議手続の平成12年9月29日付け取消理由通知において引用した特開昭61-12614号公報(引用例)には、以下の事項が記載されている。
(i)外用基材にインドメタシンを配合するとともに、メントールとカンフルとの固溶体及び/又はサリチル酸グリコールを配合してなることを特徴とする外用剤。
(特許請求の範囲第1項)(ii)外用剤としては例えば軟膏、液剤、ゲル軟膏、クリーム、貼付剤等が挙げられるが、特に水溶性高分子物質を用いた水性パップ基材を有するパップ剤がインドメタシンを経皮吸収させる手段として好適である。(2頁左下〜右下欄)(iii)インドメタシンの配合量は基材全体の0.1〜5%、特に0.3〜2%とすることが好ましく、メントール……好適である。(3頁右下欄〜4頁左上欄)(iv)本発明の外用剤には、上記インドメタシン、メントール、カンフル、サリチル酸グリコールのほか、所望によりサリチル酸メチル、……唐辛子エキス、唐辛子末、唐辛子チンキ、カプサイシン、ノニル酸ワニリルアミド等の有効成分の1種又は2種以上を配合し得る(配合量通常0〜20%)(4頁左上欄〜右上欄) (2)-3 対比・判断 引用例には外用剤に配合する種々の任意成分の配合割合を0〜20%(摘示事項(iv))と記載されているが、任意成分は化学的に、また、物理的に性質の異なるものを包含しているから、この配合割合は、任意成分の個々のものの配合割合を示しているのではなく、記載されている多数の任意成分の上限と配合しない場合の配合割合を示しているものと認められる。
そこで、本件出願当時に市販されていたパップ剤等の貼付剤でのトウガラシエキスとノニル酸ワニリルアミドの配合量をみると、それらは、基材100g中それぞれ0.04〜0.5g、0.01〜0.08g(「一般薬 日本医薬品集」第5版、財団法人日本医薬情報センター編、薬業時報社、昭和60年発行、536、541、
549、554、566、557頁、及び 「医薬品要覧」第4版、大阪府病院薬剤師会編、薬業時報社、昭和63年発行、1152〜1153頁参照)配合されている。つまり、ノニル酸ワニリルアミド及びトウガラシエキスは貼付剤に普通に配合されている成分であって、これらの含有割合は通常0.01〜0.5重量%程度のものと認められる。
そうすると、引用例には、基材中の配合割合としてインドメタシン0.1〜5重量%(摘示事項(iii))、トウガラシエキス又はノニル酸ワニリルアミドを上記配合割合のうち少なくとも0.01〜0.5重量%の範囲で含有するパップ剤等の貼付剤を包含する外用剤(摘示事項(ii))が実質的に記載されており、この含有割合をインドメタシン1重量部に対する割合に換算すると、インドメタシン1重量部に対してノニル酸ワニリルアミド又はトウガラシエキスは0.002〜5.0重量部含有することになる。
本件請求項1の発明に係る貼付剤と引用例に記載の貼付剤とを対比すると、インドメタシン1重量部に対するノニル酸ワニリルアミド又はトウガラシエキスの含有割合が0.01〜5.0重量部の場合は両者は重複しているので、両者は、
(a) インドメタシンと、
(b) インドメタシン1重量部に対して0.01〜5.0重量部のノニル酸ワニリルアミド又はトウガラシエキスを含有する貼付剤である点で一致している。本件請求項1の発明はノニル酸ワニリルアミド及びトウガラシエキスをインドメタシンの長期安定性を改善するための安定化剤と規定しているが、貼付剤中に含有する成分及びその配合割合が同一である以上、安定化剤との規定の有無によって貼付剤としての物が異なるものではない。
したがって、本件請求項1の発明は引用例に記載された発明である。
次に、請求項2に係る発明についてみると、引用例にパップ剤が記載されているのであるから、請求項1と同様に請求項2は引用例に記載された発明である。
(3) 決定のむすび 以上のとおりであるから、本件請求項1及び2の発明は特許法第29条第1項第3号に違反して特許されたものであるから、本件特許は特許法第113条第1項第2号の規定により取り消すべきものである。
原告主張の決定取消事由
1 取消事由1(一致点の認定の誤り) (1) 決定は、本件請求項1の発明と引用例に記載された発明とは、
「(a) インドメタシンと、
(b) インドメタシン1重量部に対して0.01〜5.0重量部のノニル酸ワニリルアミド又はトウガラシエキスを含有する貼付剤である点で一致している。」と認定するが、誤りである。
(2) 引用例に記載された発明の目的は、インドメタシン外用剤におけるインドメタシンの経皮吸収性の改善であって、その解決手段として、インドメタシン外用剤に更にメントールとカンフルの固溶体又はサリチル酸グリコールを配合する構成を採用したものである。
引用例には、決定が指摘するように、「本発明外用剤には、上記インドメタシン、メントール、カンフル、サリチル酸グリコールの他、所望により、サリチル酸メチル……唐辛子エキス、唐辛子末、唐辛子チンキ、カプサイシン、ノニル酸ワニリルアミド等の有効成分の1種又は2種以上を配合し得る(配合量通常0〜20%)」との記載がある。
しかし、この記載においては、トウガラシエキス又はノニル酸ワニリルアミドは、医薬品業界で比較的他の成分とともに配合されるハッカ油、ユーカリ油、ビタミンE等共に任意成分として、網羅羅列的に記載されているにすぎないのであって、インドメタシンにこれらを配合するとの構成は示唆されているにすぎず、現実の具体的構成として開示されているものではない。
したがって、引用例に、
(a) インドメタシンと (b) ノニル酸ワニリルアミド又はトウガラシエキスを含有する貼付剤、との構成が開示されているということはできない。
(3) また、決定引用の「一般薬 日本医薬品集 第5版」及び「医薬品要覧 第4版」には、インドメタシンと、トウガラシエキス又はノニル酸ワニリルアミドの組合せを示唆した記載はなく、インドメタシンとトウガラシとノニル酸ワニリドアミドとの配合割合の記載はない。単にパップ剤の総量とトウガラシエキス等を配合する際の重量割合が記載されているにすぎない。
したがって、インドメタシンに、トウガラシエキス又はノニル酸ワニリルアミドを配合する際の重量割合は、引用例にも上記文献にも記載がない。
2 取消事由2(用途の相違の看過) (1) 決定は、「本件請求項1の発明は、ノニル酸ワニリルアミド又はトウガラシエキスをインドメタシンの長期安定性を改善するための安定化剤として規定しているが、貼付剤に含有する成分及びその配合割合が同一である以上、安定化剤との規定の有無によって貼付剤としての物が異なるものではない。」と認定したが、誤りである。
(2) 本件発明は、「インドメタシンを長期に亘って安定に含有する貼付剤組成物に関する。」(訂正明細書1頁)ものであって、従来技術にあっては、「……インドメタシンは、水に対する溶解性が小さく、グリセリン、流動パラフィンなどの通常の媒体には溶解しないため、基材の選択が難しく、また、インドメタシンの保存安定性も左右されることから、長期に亘って、安定な製剤の開発には困難が伴う。」(同1〜2頁)「インドメタシンを長期安定に含有するバップ剤製剤の開発は困難であった。」(同3頁)との問題点があったので、「インドメタシンの分解を防止して、長期間安定に含有する貼付剤を提供するものである。」(同3頁) そして、上記課題を解決するため、本件発明においては、インドメタシン含有貼付剤にインドメタシンと共に、「インドメタシン1重量部に対して0.01〜5.0重量部のノニル酸ワリルアミド、インドメタシン1重量部に対して0.01〜10.0重量部のポリオキシエチレンとオキシプロピレンのブロック共重合体 およびインドメタシン1重量部に対して0.01〜5.0重量部のトウガラシエキスから選ばれる少なくとも1種のインドメタシンの長期安定性を改善するための安定化剤」(同3頁)を含有する構成を採用したので、その結果、「保存時のインドメタシンの安定性を改善し、長期に亘って薬効を保つことができる。」(同6頁)との効果を得ることができるものである。
したがって、本件発明は、既知の物質であるトウガラシエキス又はノニル酸ワニリルアミドについて、これらを特定割合でインドメタシン含有貼付剤に含有させることにより、インドメタシンの長期安定性を改善する安定化剤という用途に使用することを内容とする発明、いわゆる「用途発明」である。
(3) 医薬品における製剤の特許は、安全性の面から、未知の物質ではなく公知の物質を利用することが比較的多い。これら公知の物質の組合せによって特定の作用効果が得られることがあり、新規な効果が得られるならば、当該物質が他の作用効果により公知の物質であるとしても、特許性が認められるべきである。
そして、本件発明が、「用途発明」である以上、引用例に記載された発明と同一であるとして特許法第29条第1項第3号によって特許を受けることができないとされるためには(すなわち、引用例に記載された発明が本件発明と同一の発明であって本件発明がそれにより新規性を喪失するというためには)、引用例に本件発明と同一の用途発明が開示されていることが必要である。
(4) 用途発明に係る特許出願に限らず、一般に、特許出願に係る発明が特許法第29条第1項第3号により、特許を受けることができないとされるためには、上記「特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明」は、発明として完成していることが必要である。発明が完成したというためには、
その技術手段が当該技術分野における通常の知識を有する者が反復実施して目的とする効果を挙げることができる程度にまで具体的・客観的なものとして構成されていることを要する。
したがって、引用例に記載された発明が本件発明と同一の発明であって、本件発明がそれにより新規性を喪失するというためには、引用例に記載された発明が完成した用途発明として開示されていること、言い換えれば、引用例の記載において、
用途発明である同一発明が、当業者が反復実施して所定の効果を挙げることができる程度にまで具体的・客観的なものとして構成されていることをも必要とする。
(5) トウガラシエキス又はノニル酸ワニリルアミドは、従来、貼付剤、バップ剤等の外用剤において、温感刺激剤として用いられてきたものであり、本件出願前に、これらをインドメタシン含有貼付剤に含有させることにより、インドメタシンの長期安定性を改善する安定化剤という用途に使用するとの知見はなかった。
このことは、「OTCハンドブック1999-2000、1999年9月20日発行、発行所株式会社学術情報センター、659頁」(甲第6号証)の「ノニル酸ワニリルアミド」の項に、「トウガラシの辛み成分であるカプサイシンから合成された物質である。カプサイシンの辛味が作用を有するには、その構造式中にワニリルアミン残基として炭素原子数9〜10をもつことが必要であるとわかり、この物資が合成された。局所の温感刺激作用(皮膚の表面温度を1〜2℃上昇させるといわれている)により、局所の血管を拡張させ、血行改善作用を示すといわれている。」との記載があること、及び、「薬理と治療」Vol.13 No.1 Jan. '85、99〜108頁(甲第7号証)に掲載の「温感パップ剤のThermographyによる温熱様効果の検討(1)」との論文に、「(同論文で検討した)温感パップ剤は、急性炎症期の発熱した患部を冷却する従来のパップ剤の水分含量を減らし、保温性の高いグリセリンを増量した改良基材に、温感成分であるcapsaicinを含有するとうがらし(Capsicum annuum L.)の抽出エキスと毛細血管拡張作用をもつdl-camphor、さらに、血管消炎鎮痛作用のあるmethyl salicylate を配合したものである。本剤(注、温感パップ剤)は、3成分の相乗作用により、温感点の刺激作用と患部の末梢循環血流を改善することにより、適度の温感と炎症緩解を目的とした製剤である。」(99頁)との記載があることからも、明らかである。
(6) 前述のとおり、引用例に記載の発明の目的は、インドメタシン外用剤におけるインドメタシンの経皮吸収性の改善であって、その解決手段として、インドメタシン外用剤に更にメントールとカンフルの固溶体又はサリチル酸グリコールを配合する構成を採用したものである。
引用例には、決定が指摘するように、「本発明外用剤には、上記インドメタシン……の他、所望により、……唐辛子エキス、唐辛子末、唐辛子チンキ、カプサイシン、ノニル酸ワニリルアミド等の有効成分の1種又は2種以上を配合し得る(配合量通常0〜20%)(4頁左上欄〜右上欄)との記載がある。
しかし、上記記載においては、トウガラシエキス又はノニル酸ワニリルアミドは、従来からの用途、すなわち、局所刺激、消炎鎮痛、抗炎症のために使用されることが想定されているにすぎず、インドメタシン含有貼付剤に、インドメタシンの長期安定性を改善するための安定化剤として配合するとの用途については、その示唆さえ一切ない。
したがって、引用例には、既知の物質であるトウガラシエキス又はノニル酸ワニリルアミドをインドメタシンの長期安定性を改善する安定化剤として使用する用途は一切記載されていないから、引用例に、本件発明と同一の用途発明が開示されているとはいえない。
また、引用例には、本件発明と同一の用途発明が、当業者が反復実施して所定の効果を挙げることができる程度にまで具体的・客観的なものとして構成されているとは到底いうことができず、引用例に記載された発明が、完成した用途発明として開示されているということもできない。
決定取消事由に対する被告の反論
1 取消事由1(一致点の認定の誤り)に対して 引用例には、「本発明の外用剤には、上記インドメタシン、メントール、カンフル、サリチル酸グリコールのほか、所望により……唐辛子エキス、唐辛子末、唐辛子チンキ、カプサイシン、ノニル酸ワニルアミド等の有効成分の1種又は2種以上を配合し得る(配合量通常0〜20%)。」(4頁左上欄〜右上欄)との記載がある。
この記載は、インドメタシンとともに、メントールとカンフルとの固溶体及び/又はサリチル酸グリコールを配合してなる引用例記載の外用剤(この外用剤はインドメタシンを含有するパップ剤を包含する)に、さらに、上記唐辛子エキスとノニル酸ワニリルアミド等の少なくとも1種の特定の有効成分を20%まで配合することを具体的に記載している。
引用例には、インドメタシン含有量とノニル酸ワニリルアミド等の配合量の相対的な関係は示されていないが、本件出願当時に市販されていたパップ剤等の貼付剤におけるノニル酸ワニリルアミド等の配合量をみると、それらは、基材100g中それぞれ0.04〜0.5g、0.01〜0.08gであることが知られている。また、「温感パップ剤のThermographyによる温熱様効果の検討(1)」との論文(甲第7号証)の「被験薬剤」の項でも、トウガラシエキス使用量は0.165%である。
つまり、ノニル酸ワニリルアミド等は貼付剤に普通に配合されている成分であって、これらの含有割合は通常0.01〜0.5重量%程度のものであるから、引用例においては、インドメタシン0.1〜5重量%で、ノニル酸ワニリルアミド等を少なくとも0.01〜0.5重量%という薬効の期待できる常識的な配合量で含有するパップ剤等の貼付剤を包含する外用剤が記載されているといえる。
このノニル酸ワニリルアミド等の通常の薬効を発揮させる含有割合をインドメタシン1重量部に対する割合に換算すると、インドメタシン1重量部に対してノニル酸ワニリルアミド等は0.002〜5.0重量部となり、本件請求項1の発明の配合割合と重複することになる。
したがって、引用例の貼付剤は、インドメタシンのほか、メントールとカンフルの固溶体及び/又はサリチル酸グリコールをも必須成分として含むが、本件請求項1の発明は、特許請求の範囲に明記されている(a)及び(b)成分以外の他の成分を含有することを排除するものではないから、決定が、本件請求項1の発明と引用例に記載された上記パップ剤とが、(a) インドメタシンと、(b) インドメタシン1重量部に対して0.01〜5.0重量部のノニル酸ワニリルアミド又はトウガラシエキスを含有する貼付剤である点で一致している、と認定した点に誤りはない。
2 取消事由2(用途の相違の看過)に対して (1) 原告は、本件発明があたかもノニル酸ワニリルアミド等をインドメタシンの長期安定性を改善するという用途に使用するインドメタシン長期安定化剤自体の発明であるかのように主張するが、本件発明はその特許請求の範囲に記載のとおり「貼付剤」そのものの発明であって、インドメタシン長期安定化剤の発明ではない。
そして、ノニル酸ワニリルアミド等がインドメタシンを安定化するという今まで知られていない性質(属性)を有することを見いだし、上記属性を発揮させることを目的としてインドメタシンにこれらを配合し貼付剤とした物と、ノニル酸ワニリルアミド等の温感刺激作用等の薬効という別の属性を発揮させることを目的として重複する配合割合でインドメタシンと併用して貼付剤とした公知の物とでは、ノニル酸ワニリルアミド等のどの性質に着目したかにかかわらず、同じ成分を同じ割合で含有する「貼付剤」という物であって、両者は区別できない。貼付剤中の成分が同じであれば、一定期間経過後のインドメタシンの残存量も同じはずであり、貼付剤としての安定性にも差異は生じず、貼付剤という物の有する性質も異ならない。
このように、本件発明と引用例に記載された発明はいずれも貼付剤という物に関する発明であって、その物自体に相違が存在しない。また、「貼付剤」が用途発明の表現形式に当たるとしても、両者は共に「貼付剤」であるから、その用途が相違していることはない。
(2) 原告は、引用例には、本件発明と同一の用途発明が当業者が反復実施して所定の効果を挙げることができる程度にまで具体的・客観的なものとして構成されていないとも主張する。
しかしながら、以下のとおり、引用例には、上記取消事由1に対する反論において示した各成分の配合割合に加え、貼付剤の製法に関する充分な記述があるから、
上記主張も理由がない。
引用例には外用剤の調製に関して実施例の記載のほかに、次の記載がある。
「例えば、外用剤をパップ剤として調製する場合、水性パップ基材の組成には特に制限はなく、何れの組成の物も使用でき、……水溶性高分子物質……無機粉体、
……保湿剤……などを使用することができる。……」(2頁右下欄下から3行〜3頁右下欄10行) 「本発明の外用剤は常法に従って製造し得、例えば、水性パップ剤は、上記各成分をよく練合してペースト状に調製し、これを紙、織布……等の支持体(バッキング)に塗布し、必要によりポリエチレンフィルム等のフェイシングを被覆することにより得られるものである。」(4頁右上欄12〜17行) また、パップ剤の通常の製法については「第十一改正 日本薬局方解説書」(乙第1号証)のパップ剤の項に、「成形パップ剤は、図1、2のように、あらかじめ薬物を……保水性に富む水溶性高分子を主体とした膏体基剤と混和して、不織布などの支持体(バッキング)に展延し、膏体表面をポリエチレンあるいはポリプロピレンなどのプラスチックフィルム(ライナー)で被覆し、……」と記載されており、引用例のハップ剤もこのような当業者に充分周知されていた製法にならって製造されるものであることが明らかである。
一方、本件訂正明細書における貼付剤の調製方法も「貼付剤の剤型は問わないが、保水性基材を用いるパップ剤……としての利用が有効である。パップ剤としては、ゼラチン等の粘着剤、カオリン等の賦形剤および水を含む含水ゲル状膏体を不織布などの基体に塗布し、プラスチックフィルムなどのライナーで被覆したタイプが代表的である。……」(訂正明細書5頁)等の記載からみて、引用例や「第十一改正 日本薬局方解説書」に記載の外用剤の調製法と異なるところは見当たらない。
このように、本件発明の貼付剤も、引用例に記載されている貼付剤も、常法で製造されるのであり、本件発明においてノニル酸ワニリルアミド等を配合し、安定化作用を促すために製剤上の格別の技術的な工夫が必要とされたとする事情も見当たらない。
したがって、引用例に記載されている貼付剤は、上記したように当業者が反復実施できる程度に記載されているのであって、完成された発明として開示されている。
当裁判所の判断
1 取消事由1(一致点の認定の誤り)について (1) 甲第3号証によれば、引用例には、「1.外用基材にインドメタシンを配合するとともに、メントールとカンフルとの固溶体及び/又はサリチル酸グリコールを配合してなることを特徴とする外用剤」(特許請求の範囲1)との発明が開示され、発明の詳細な説明には、当該発明に係る「(本発明に係る)外用剤としては例えば軟膏、液剤、ゲル軟膏、クリーム、貼付剤等が挙げられる」(2頁左下欄下から3〜1行)、「本発明外用剤には、上記インドメタシン……の他、所望により……唐辛子エキス、唐辛子末、唐辛子チンキ、カプサイシン、ノニル酸ワニリルアミド等の有効成分の1種又は2種以上を配合し得る(配合量通常0〜20%)」(4頁左上欄10行〜右上欄1行)と記載されていることが認められる。
上記各記載によれば、引用例には、インドメタシンを含有する貼付剤に、トウガラシエキス、ノニル酸ワニリルアミド等を含有せしめ得ることが明示的に記載されていることは明らかである。
(2) トウガラシエキス及びノニル酸ワニリルアミドについて記載のある文献は、
以下のとおりである。
(2)-1 「第十一改正 日本薬局方解説書」1986(乙第1号証)の「21.パップ剤」の項には、「トウガラシエキス又はノニル酸ワニリルアミドを含有する製剤は、皮膚の温感点を刺激するところから、通例、温感タイプと呼ばれ、慢性疾患あるいは腫張寛解後の炎症性疾患に使用され、冷感タイプの製剤と区別される。」(A-140頁6〜8行)と記載されていることが認められる。
(2)-2 「薬理と治療」Vol.13 No.1 Jan. '85、99〜108頁(甲第7号証)には、「(同論文で検討した)温感パップ剤は、……温感成分であるcapsaicinを含有するとうがらし(Capsicum annuum L.)の抽出エキスと毛細血管拡張作用をもつdl-camphor……を配合したものである。……温感点の刺激作用と患部の末梢循環血流を改善することにより、適度の温感と炎症緩解を目的とした製剤である。」(99頁左欄下から10行〜右欄1行)、及び、「V考察 整形外科的疾患に対する保存的治療法の一つとして……パップ剤、プラスター剤、軟膏剤等の外用剤が……臨床の場において定着しつつある。一般的に、炎症の急性期には、発熱した患部を冷やす療法として冷湿布が用いられ、また慢性期の炎症には、患部の血流改善を目的として温湿布または温感パップ剤などが用いられている。」(107頁左欄7〜17行)との記載があることが認められる。
(2)-3 「OTCハンドブック1999-2000、1999年9月20日株式会社学術情報流通センター発行、659頁」(甲第6号証)の「第17章 肩こり、筋肉痛治療剤」の「薬理作用の解説とその特徴」の節において、「外用剤 局所刺激成分」として「ノニル酸ワニリルアミド」について「トウガラシの辛味成分のひとつであるカプサイシンから合成された物質である。……局所の温感刺激作用(皮膚の表面温度を1〜2℃上昇させるといわれている)により、局所の血管を拡張させ、血行改善作用を示すといわれている。」(659頁)と記載されていることが認められる。
(2)-4 財団法人日本医薬情報センター編「一般薬 日本医薬品集」の第5版(昭和60年発行。甲第4号証)、上記「一般薬 日本医薬品集」の1990〜1992年版、及び1992〜1993年版(甲第8号証の1及び2)、大阪府病院薬剤師会編「医薬品要覧 第4版」(昭和63年発行。甲第5号証)によれば、ノニル酸ワニリルアミド及びトウガラシエキスは、本件出願前から、市販されている非常に多くの貼付剤に、現に含有されていることが認められる。
また、これら製品の多くにおいて、トウガラシエキス又はノニル酸ワニリルアミドは、メントール、カンフル及び/又はサリチル酸グリコールと組み合わせて配合されていることが認められる。(例えば、上記各甲号証には、トウガラシエキスがメントール、カンフル及び/又はサリチル酸グリコールとともに配合された貼付剤の例としては、エースHM(商品名。以下同じ)(甲第5号証1152頁)、ゼラップホット(同)、テイカ温パップ(甲第8号証の1第661頁右欄)、トクホンC(同663頁右欄)、パテックスQ(同671頁左欄)その他多数が収載され、
ノニル酸ワニリルアミドがメントール、カンフル及び/又はサリチル酸グリコールとともに配合された貼付剤の例としては、三共あったかシップ(甲第4号証549頁中欄。トウガラシエキスも配合されている。)、ゼノールホット(同554頁右欄)、ハリホットZ(同566頁左欄)、エルデ温パップ(甲第8号証の1第641頁左欄)、トクホンエース(同663頁右欄)その他多数が収載されている。なお、甲第7号証の論文で検討された貼付剤も、トウガラシエキスが、カンフルとともに配合されている。) (3) 上記(2)の認定によれば、貼付剤には、温感タイプの貼付剤、冷感タイプの貼付剤等が知られていること、温感タイプの貼付剤は、例えば、「慢性期の炎症に」、「患部の血流改善を目的として」使用される等、冷感タイプのものと明確に区別して使い分けられていること、温感タイプの貼付剤では、トウガラシエキス及びノニル酸ワニリルアミドは、常套的に温感を与える成分として常用されているものと認めることができる。
(4) 引用例には、前示のとおり、「(引用例記載の貼付剤には)インドメタシン……の他、……唐辛子エキス……ノニル酸ワニリルアミド等の有効成分の1種又は2種以上を配合し得る」と記載されているところ、上記認定事項に照らせば、この記載は、引用例記載の貼付剤は、トウガラシエキス又はノニル酸ワニリルアミドを配合して周知の温感タイプの貼付剤とすることができることを明示したものと解される。
そうすると、引用例には、インドメタシンとともにトウガラシエキス又はノニル酸ワニリルアミドを配合した貼付剤が実質的に記載されているものということができる。
もっとも、引用例に記載された貼付剤には、インドメタシンのほかに、メントールとカンフルの固溶体あるいはサリチル酸グリコールを必須成分として含有するところ、仮に、これらメントール等の成分とトウガラシエキス又はノニル酸ワニリルアミドとを同時に配合することができない特段の事情がある場合には、上記のように解することはできない。しかしながら、現に市販されている多くの貼付剤において、トウガラシエキス又はノニル酸ワニリルアミドが、メントール、カンフル、サリチル酸グリコールとともに配合されていることは前示のとおりであるから、引用例記載の発明において、そのような特段の事情があるものと認めることはできない。
そして、本件発明が、インドメタシン、トウガラシエキス及びノニル酸ワニリルアミドに加えて、メントールとカンフルの固溶体あるいはサリチル酸グリコールを含有する貼付剤を排除するものでないことは、その特許請求の範囲請求項1の記載から明らかである。
(5) 次に、ノニル酸ワニリルアミド及びトウガラシエキスの配合量について検討する。
甲第3号証によれば、引用例には、「インドメタシンの配合量は基材全体の0.1〜5%、特に0.3%〜2%とすることが好まし(い)」(3頁右下欄下から2〜1行)との記載があることが認められる。なお、引用例の上記記載中の配合量の単位が重量%であることは、原告も争わないところである。
また、引用例に、「本発明外用剤には、上記インドメタシン……の他、所望により……唐辛子エキス、唐辛子末、唐辛子チンキ、カプサイシン、ノニル酸ワニリルアミド等の有効成分の1種又は2種以上を配合し得る(配合量通常0〜20%)」と記載されていることは、前示のとおりである。なお、引用例の上記記載中の配合量の単位が重量%であることについても、原告は争っていない。
上記「(配合量通常0〜20%)」との記載は、@貼付剤の基材全体の重量を基準とするものであるか、A貼付剤に含有されるインドメタシンの重量を基準とするものであるか明らかでないが、いずれを基準とするものであるとしても、引用例記載の貼付剤中の配合されるインドメタシンに対するトウガラシエキス、ノニル酸ワニリルアミドの配合量は、以下の計算のとおり、本件発明の請求項1に規定される「インドメタシン1重量部に対して0.01〜5.0重量部のノニル酸ワニリルアミド」、あるいは「インドメタシン1重量部に対して0.01〜5.0重量部のトウガラシエキス」との範囲と重複することは明らかであり、したがって、引用例に記載された発明と、本件請求項1の発明とは、この点の構成についても相違しない。
@の場合 最小値: 0重量%。
最大値:(基材全体に対するトウガラシエキス又はノニル酸ワニリルアミドの最大配合量(20重量%))/(基材全体に対するインドメタシンの最小配合量(0.1重量%))=200重量% Aの場合 最小値: 0重量% 最大値:(基材全体に対するインドメタシンの最大配合量(5重量%))×(インドメタシンに対するトウガラシエキス又はノニル酸ワニリルアミドの最大配合量(20重量%))=1重量% (6) したがって、本件請求項1の発明と、「引用例」に記載された発明とは、
「(a) インドメタシンと (b) インドメタシン1重量部に対して0.01〜5.0重量部のノニル酸ワニリルアミド又はトウガラシエキスを含有する貼付剤である点で一致している。」とした決定の認定に誤りはない。
2 取消事由2(用途の相違の看過)について (1) 原告は、本件発明は、トウガラシエキス又はノニル酸ワニリルアミドについて、これらを特定割合でインドメタシン含有貼付剤に含有させることにより、インドメタシンの長期安定性を改善するという用途に使用することについての発明、すなわち用途発明である旨、主張する。
しかしながら、本件発明は、トウガラシエキス又はノニル酸ワニリルアミドを含有することを特徴とする「貼付剤」の発明であって、トウガラシエキス又はノニル酸ワニリルアミドの用途の発明(例えば、「トウガラシエキス又はノニル酸ワニリルアミドからなるインドメタシンの安定化剤」)でないことは、本件請求項1及び2の発明の特許請求の範囲の記載により明白である。
原告の主張は、特許請求の範囲に基づかないものであり、理由がない。
(2) もっとも、特許請求の範囲請求項1には、「……ノニル酸ワニリルアミド……および……トウガラシエキスから選ばれる少なくとも1種のインドメタシンの長期安定性を改善するための安定化剤とを含有することを特徴とするインドメタシン含有貼付剤。」として、本件請求項1の発明において、ノニル酸ワニリルアミド及びトウガラシエキスはインドメタシンの安定剤として含有させるものである旨規定されている。
しかしながら、引用例に、本件発明とその構成が同一の発明(貼付剤)が記載されていることは前示のとおりである。このように両発明の構成が同一である以上、
両発明の貼付剤が含有する成分は、主観的な添加目的にかかわらず、同一の作用効果を奏することは自明である。本件発明において添加されたトウガラシエキス又はノニル酸ワニリルアミドがインドメタシンを安定化するとの効果を奏する一方、引用例で添加されたトウガラシエキス又はノニル酸ワニリルアミドが、そのような効果を奏さないというようなことは起こり得ない。逆に、引用例記載の発明においてトウガラシエキス又はノニル酸ワニリルアミドがそれらの周知の効果である温感刺激作用を奏する一方、本件発明では、そのような効果を奏さないということも起こり得ないものと認められる。
したがって、本件特許請求の範囲の請求項1に、本件請求項1の発明の貼付剤に含有されるトウガラシエキス及びノニル酸ワニリルアミドはインドメタシンの長期安定性を改善するための安定化剤である旨が規定されているとしても、このことにより、本件請求項1の発明が、引用例に記載されている発明と別異のものとなるということはできない。
(3) 原告は、引用例に記載の発明が、用途発明である本件発明と同一であって、
これにより本件発明が新規性を喪失するというためには、引用例に、トウガラシエキス又はノニル酸ワニリルアミドについて本件発明と同一の用途が開示されており、引用例にそのような用途に使用する発明として完成した発明が記載されている必要がある、あるいは、引用例に記載された発明が、当業者が反復実施して所定の効果を挙げることができる程度にまで具体的・客観的なものとして構成されていることが必要である旨、主張する。
原告の主張は、本件発明が用途発明であることを前提とするものであるところ、
本件発明が用途発明でないことは上記判断のとおりである。原告の主張は、その前提において理由がない。
結論
以上のとおり、原告主張の決定取消事由は理由がないので、原告の請求は棄却されるべきである。
(平成13年12月4日口頭弁論終結)
裁判長裁判官 永井紀昭
裁判官 塩月秀平
裁判官 古城春実