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関連審決 異議1999-72691
関連ワード 進歩性(29条2項) /  容易に発明 /  一致点の認定 /  相違点の判断 /  上位概念 /  下位概念 /  技術常識 /  先行技術 /  発明の詳細な説明 /  実質的に同一 /  参酌 /  文言解釈 /  技術的意義 /  特許発明 /  実施 /  設定登録 /  拒絶査定 /  請求の範囲 /  独立特許要件 /  取消決定 /  国際出願 /  国際公開 / 
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事件 平成 12年 (行ケ) 241号 特許取消決定取消請求事件
原告 松下電器産業株式会社
訴訟代理人弁理士 石原勝
同 坂口智康
被告 特許庁長官及川耕造
指定代理人 大島祥吾
同 神崎潔
同 大野克人
同 茂木静代
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 2001/12/20
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
主文 原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
請求
特許庁が平成11年異議第72691号事件について平成12年5月18日にした決定を取り消す。
前提となる事実
1 特許庁における手続の経緯 原告は、発明の名称を「電気部品装着装置」とする特許第2847801号の発明(平成元年9月26日特許出願、平成10年11月6日設定登録。以下「本件特許発明」という。)の特許権者である。
本件特許発明について、特許異議の申立てがなされ、特許庁は、この申立てを平成11年異議第72691号事件として審理し、原告は、平成12年1月31日、
願書添付の明細書の訂正を請求し(以下「本件訂正請求」という。)、平成12年4月25日、本件訂正請求について手続補正書を提出した(以下「本件補正」という。)が、特許庁は、平成12年5月18日、「特許第2847801号の請求項1ないし4に係る特許を取り消す。」との決定をし、その謄本は同年6月12日に原告に送達された。
2 本件訂正請求(本件補正前)に係る明細書の特許請求の範囲に記載の発明(以下、「訂正発明」といい、それぞれを「訂正請求項1の発明」等という。) 【請求項1】「平面移動可能なヘッド部と、前記ヘッド部に設けられ、部品を吸着してプリント基板上の所定位置に部品を装着可能なノズルとを有し、前記ヘッド部が、前記ノズルに吸着された部品の姿勢を認識する認識部を具備するとともに、前記ヘッド部は、前記ノズルにより部品供給部から部品を取り出してから前記プリント基板上の所定位置まで平面移動する間に、前記ノズルに保持された部品の画像を前記認識部に入力することを特徴とする電子部品装着装置。」 【請求項2】「平面移動可能なヘッド部に設けられた吸着ノズルにより部品供給部から電子部品を取り出し、前記ヘッド部がプリント基板上まで移動した後、プリント基板上の所定位置に取り出した前記電子部品を装着する電子部品装着装置であって、ヘッド部は、前記吸着ノズルと一体的に平面移動可能な、認識部及び照明部を具備し、部品供給部から電子部品を取り出してから前記プリント基板上の所定位置まで平面移動する間に吸着ノズルに保持された電子部品の画像を前記認識部に入力するよう構成された電子部品装着装置。」 【請求項3】「認識部及び照明部は、プリント基板上への電子部品装着時に、吸着ノズルの下降動作を妨げない位置まで一体的に待避可能に構成されていることを特徴とする請求項2記載の電子部品装着装置。」 【請求項4】「認識部はカメラで構成されており、ノズルに吸着された部品の姿勢を認識可能に構成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の電子部品装着装置。」 3 決定の理由 別紙決定書の理由写し記載のとおり、本件訂正請求に対する本件補正は認められないとして、本件訂正請求に係る明細書の特許請求の範囲に記載の発明(訂正発明)について、上記2のとおり認定し、訂正発明は、いずれも刊行物1(特表昭61-500341号公報、甲第4号証)及び刊行物2(特開昭61-63099号公報、甲第5号証)に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許出願の際、独立して特許を受けることができないものであるから、本件訂正請求は認められないとした上で、本件訂正請求前の明細書の特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、刊行物1に記載された発明と実質的に差異がなく、刊行物1記載の発明であり、請求項2ないし4に係る発明は、いずれも刊行物1及び刊行物2に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものであり、いずれの発明も、拒絶査定されるべき出願に対して特許されたものであるから、これらの特許は取り消されるべきであると判断した。
原告主張の決定の取消事由の要点
決定の理由中、決定が本件訂正請求に対する本件補正を認めなかったこと、刊行物1及び2の記載事項は争わないが、決定は、訂正請求項1の発明と刊行物1記載の発明とを対比するに当たり、刊行物1記載の発明について、「素子移動部」(訂正発明の「ヘッド部」に相当)が、「位置走査部」(訂正発明の「部品の姿勢を認識する認識部」に相当)を具備するものであるという誤った認定をしたために、一致点の認定を誤ったものである(取消事由1)。また、決定は、相違点2(訂正請求項1の発明が、部品姿勢の認識をする場所を「部品供給部から電子部品を取り出してから前記プリント基板上の所定位置まで平面移動する間に」としているの対して、刊行物1記載の発明には、部品供給部からプリント基板上に配置されるまでの「平面移動する間」であることを明示する言及がない点)に関して、進歩性の判断を誤ったものである(取消事由2)。決定は、訂正請求項2ないし4の発明についても、これらと同様の誤りをしており、その結果、決定は、独立特許要件の判断を誤り、本件訂正請求を認めなかったものであって、違法であるから、取り消されるべきである。 1 取消事由1(刊行物1記載の発明について、「素子移動部」が「位置走査部」を具備するものであると誤認したこと) (1) 決定は、訂正請求項1の発明と刊行物1記載の発明の一致点として、
「平面移動可能なヘッド部と、前記ヘッド部に設けられ、部品を吸着してプリント基板上の所定位置に部品を装着可能なノズルとを有し、前記ヘッド部が、前記ノズルに吸着された部品の姿勢を認識する認識部を具備するとともに、前記ヘッド部は前記ノズルにより部品供給部から部品を取り出してからプリント基板上に装着するまでの間に部品の姿勢を認識する電子部品装着装置。」(決定書5頁18行ないし26行)と認定している。
しかし、刊行物1記載の発明について、「前記ヘッド部(刊行物1記載の発明における「素子移動部」)が、前記ノズル(刊行物1記載の発明における「ピックアップ手段」)に吸着された部品(刊行物1記載の発明「素子」)の姿勢を認識する認識部(刊行物1記載の発明における「位置走査部」)を具備する」と認定したことは誤りである。
(2) 決定が、刊行物1記載の発明の「素子移動部が、ピックアップ手段に吸着された素子の姿勢を認識する位置走査部を具備する」構成のものであると認定した根拠は、決定が刊行物1の記載事項として、「イ.引用刊行物とその記載事項の概要」の欄で認定した次の刊行物1(甲第4号証)の記載事項a、bにあると思料される。
a 「前記位置走査部15が前記素子移動部11に配置され、前記素子ピックアップ手段の下部に位置している」(甲第4号証の請求項10、以下「記載事項a」という。) b 「別の可能性は位置走査手段が素子移動手段の素子ピックアップ及び保持部材の下に配置され、これと実質的に共軸に位置される構成にすることである。」(同5頁右上欄22行ないし左下欄2行、以下「記載事項b」という。) (3) 記載事項aにおいて「配置」という言葉は、「広辞苑(第2版)」によると、「@それぞれの位置に割り当てること。A割り当てられた位置・持場・受持。」を意味する。したがって、記載事項aは、一般常識的な解釈では、位置走査部15が複数考えられる位置の内の1つの位置である「素子移動部11」に係わる位置に割り当てられていることを意味している、と解することができる。
したがって、記載事項aは、位置走査部15と素子移動部11と素子ピックアップ手段の3者の位置関係を述べたものであって、ここから決定の「素子移動部が位置走査部を具備する」という認定が直ちに導かれることはあり得ない。
また、記載事項bにおける「位置走査手段が素子移動手段の素子ピックアップ及び保持部材の下に配置され、これと実質的に共軸に位置される構成」という記載も、位置走査手段(位置走査部)と素子ピックアップ及び保持部材(素子ピックアップ手段)の2者の位置関係を述べたものであって、ここから決定の「素子移動部が位置走査部を具備する」という認定が直ちに導かれることはあり得ない。
このように、刊行物1の記載事項a、bは、いずれも位置走査部(位置走査手段)と素子移動部(素子移動手段)、素子ピックアップ手段(素子ピックアップ及び保持部材)との位置関係を示すものであって、特別な理由のない限り、これら記載事項a、bに基づいて、「素子移動部が、ピックアップ手段に吸着された素子の姿勢を認識する位置走査部を具備する」構成を認定することは、論理の飛躍があり、妥当でない。そして、決定の理由中には、その特別な理由についての言及がされていない。
(4) そこで、刊行物1のその余の記載事項等についても考察して、記載事項a、bについて、「素子移動部が位置走査部を具備する」という構成が刊行物1に記載されているという理由となるか否かについて、以下に検討する。
ア 記載事項aについて (ア) 記載事項aは、刊行物1記載の発明の特許請求の範囲の請求項10に記載されているところ、請求項10は請求項9と対をなし、共に請求項8の従属項である。また、請求項8の発明は、「先述請求の範囲のいずれか1項記載の方法を実施するための装置」に係るものであり、換言すれば、請求項1(請求項2ないし7は請求項1に対し従属する関係にある。)記載の方法を実施するための装置に係るものである。
この請求項8には、「位置走査部15は前記素子移動部10、11のピックアップ手段13、14により保持される素子9、20の移動路の域内に配置され、前記ピックアップ手段の位置決め軸に関しあらかじめ決められた位置に対する素子9、
20の相対的な位置のずれを測定し」(甲第4号証2頁左上欄5行ないし9行)と記載されており、請求項9には、「前記位置走査部15が作業片保持部(1、2、
4)の上部にこれと共軸に、一定の距離をおいて配置されている」(同15行、16行)と記載され、請求項10には、「前記位置走査部15が前記素子移動部11に配置され、前記素子ピックアップ手段13、14の下部に位置している」(同18行ないし20行、記載事項a)とそれぞれ記載されている。
これら請求項8ないし10における位置走査部15に関する記載によると、位置走査部15は、素子9、20の移動路の域内に配置され、その下位概念として、請求項9のものは位置走査部15が作業片保持部(1、2、4)の上部に所定関係をもって配置され、請求項10のものは位置走査部15が素子移動部11の素子ピックアップ手段13、14の下部に配置されているものとされている、と解することが自然である。
そして、請求項8における位置走査部15が配置される「素子9、20の移動路の域内」に関しては、請求項1に、「素子を前記マガジンから取り去った後素子移動手段により作業片に対して相対的にあらかじめ決められた位置へ移動させ、この場合、素子移動手段の選択可能な位置決め軸線は作業片上の素子の前記あらかじめ決められた位置と一致しており;次いで素子を作業片の方に移動中、前記位置決め軸線に対する素子の実際の位置を測定し、前記あらかじめ決められた見かけ位置に対して生ずるであろうずれを記録し;そして最後に、・・・修正させることを特徴とする」(甲第4号証1頁左下欄7行ないし18行)と記載されている。
この請求項1の記載から明らかなように、素子は「マガジン→前記あらかじめ決められた位置」に移動し、その後に、「前記あらかじめ決められた位置→作業片」に移動するが、この後段の移動中、すなわち「次いで素子を作業片の方に移動中」に、素子の実際の位置を測定することが明らかである。そして上記の「あらかじめ決められた位置」とは「素子移動手段の選択可能な位置決め軸線は作業片上の素子の前記あらかじめ決められた位置と一致」する関係にあり、刊行物1(甲第4号証)の第1図に点線で示されるような作業片の上方位置である。
したがって、請求項8における位置走査部15は、「前記あらかじめ決められた位置→作業片」の間にあり、しかも、その間の素子の移動路において、実際の位置を測定し得るところに配置されている、と理解することが自然である。
このように、請求項8における「素子9、20の移動路の域内」とは、「前記あらかじめ決められた位置→作業片」の間の素子9、20が移動する域内であって、
「マガジン→あらかじめ決められた位置」の移動域内を含まないものであると解される。
以上のとおり、刊行物1の請求項1、請求項8ないし10の記載内容を総合的に検討すれば、位置走査部は、前記あらかじめ決められた位置(第1図に点線で示されるような位置)と作業片との中間位置にあり、このような位置にある位置走査部のより具体的な位置について、請求項9は、作業片保持部との関係で規定し、請求項10は、素子移動部との関係で規定していると解することが自然である。
したがって、請求項10に係る記載事項aの「前記走査部15が前記素子移動部11に配置され、前記素子ピックアップ手段の下部に位置している」とは、前記あらかじめ決められた位置と作業片との間の域内における走査部15と素子移動部11との位置関係を述べただけであると解されるので、記載事項aに基づいて「素子移動部がピックアップ手段に吸着された素子の姿勢を認識する位置走査部を具備する」と認定することは妥当でない。
(イ) 刊行物1は、国際出願PCT/CH84/00177に基づく日本語翻訳出願に係るものであるが、この国際出願(PCT出願)の国際公開公報(WO85/02088、甲第6号証)に掲載される明細書の原文(ドイツ語)によると、上記請求項8ないし10は、下記のように記載されている。
【(PCT)請求項8】 1又はそれ以上の請求項による方法を実施するための装置であって、部品収納箱または部品収納箱群、部品を撮影するためのピックアップを備えた部品移動手段、
ならびに少なくとも一つの部品を獲得する部品保持部を少なくとも含み、部品移動手段は部品収納箱または部品収納箱群と部品保持部との間を移動可能に配置されており、位置検出手段は搬送されている部品の瞬間的な位置を走査するために用いられ、位置検出手段(15)は部品移動手段(10、11)のピックアップ(13、
14)により検出される部品(9、20)の通過路上に配置され、位置矯正軸上にあってピックアップにより関連づけられた「あるべき位置」に対するこの部品(9、20)の相対的変位を測定し、位置検出手段(15)および少なくとも部品移動手段(10、11)の駆動と結びついた制御装置が位置変位の測定値を考慮することにより上記駆動に影響を与えることを特徴とする装置。
【(PCT)請求項9】 位置検出手段(15)は少なくとも部品保持部(1、2、4)の上側に少なくとも略中心の位置に一定間隔で配置されたことを特徴とする請求項8に記載の装置。
【(PCT)請求項10】 位置検出手段(15)はピックアップ(13、14)の下方にあって少なくとも略中心の位置で部品移動手段(11)に接して配置されたことを特徴とする請求項8に記載の装置。
上記のPCT出願における【(PCT)請求項10】の記載を参照しても、位置走査手段(位置検出手段15)がピックアップ手段(ピックアップ13、14)の下方所定位置で、素子移動部(部品移動手段11)に接して配置されていることが記載されているだけであり、「具備する」や「一体」といった記載はない。
また、上記PCT出願に基づく米国特許出願は、その公報(USP4615093、甲第7号証)に示されるように、刊行物1の請求項10そのものに相当する記載が無く、刊行物1の請求項9と請求項10が一つになった表現で、【(米国)請求項9】として、次のように表現されている。
【(米国)請求項9】 請求項8に記載の装置であって、前記作業片受容及び保持手段と、前記素子ピックアップ及び保持手段が垂直方向に配置され、前記位置走査手段は、一定間隔で、
前記作業片受容及び保持手段の上方で、かつ、前記素子ピックアップ及び保持手段の下方に配置され、しかも、前記位置走査手段は、前記作業片受容及び保持手段と前記素子ピックアップ及び保持手段の実質的に中心に位置している。
この米国特許出願の【(米国)請求項9】の記載からも推測できるように、刊行物1の請求項10は、請求項9と対をなすものであり、位置走査部(位置走査手段)が素子移動部のピックアップ手段(素子ピックアップ及び保持手段)の下方に配置されていることを記載しているにすぎないと思料され、素子移動部が「具備する」ことや、これと「一体」とされていることまでを記載しているわけではない。
(ウ) 以上のとおり、刊行物1に対応するPCT出願や米国特許出願を参酌するとより一層明らかなように、刊行物1の請求項10に係る記載事項aに基づいて「素子移動部がピックアップ手段に吸着された素子の姿勢を認識する位置走査部を具備する」と認定することは妥当でない。
イ 記載事項bについて 刊行物1(甲第4号証)には、請求項8の装置が、5頁左上欄11行ないし右上欄9行において説明されている。そして、これに続いて、請求項9の装置が、5頁右上欄10行ないし21行において実質的に説明され、さらにこれに続いて、請求項10の装置が5頁右上欄22行ないし左下欄5行において、実質的に説明されている。上記の5頁右上欄10行、11行における「本発明によれば位置走査部は作業片受容及び保持手段上に一定の距離をおいて配置され、これと実質的に共軸位置にある。」という記載内容が、請求項9の記載に対応することは明らかであり、また、上記の5頁右上欄22行ないし左下欄2行の「別の可能性は位置走査手段が素子移動手段の素子ピックアップ及び保持部材の下に配置され、これと実質的に共軸に位置される構成にすることである。」という記載事項bが、請求項10の記載に対応することは明らかである。なお、上記記載内容中の「別の可能性」なる語句は、刊行物1記載の発明の別の可能性を意味すると解される。
そして、記載事項bは、記載事項aと実質的に同一の内容であって、前述した理由のとおり、この記載内容は、位置走査部(位置走査手段)と素子移動部(素子移動手段)との位置関係を示しているにすぎず、記載事項bに基づいて「素子移動部がピックアップ手段に吸着された素子の姿勢を認識する位置走査部を具備する」と決定が認定したことは、論理の飛躍があり、妥当でない。
ウ 刊行物1における「配置」の語の使用例について 記載事項a、bにおいて使用されている「配置」なる語について、「具備」と解釈し得るような使用例が、刊行物1の明細書中に存在するか否かについて検討すると、いずれの記載箇所をみても、「配置」の語句の対象になる複数の部材について、これらを一体的に構成したという意味で用いられているものと明確に判断することができる使用例は見当たらず、この点からも、記載事項a、bにおける「配置」の語について、「具備する」、「一体」というように解することは相当ではない。
エ 刊行物1記載の発明の技術課題、作用効果の記載について 刊行物1記載の発明は、この発明に先行する公知発明(米国特許第4,135,630号)が素子移動部に「中心位置決め素子」を具備する構成であったことから生ずる諸問題点を解釈することを技術的課題としている。そして、その問題点の1つとして「この公知構造の別の難点は作業の加速或いは非加速できるようにするためには極めて高価につくことである。回路基板上に複数の素子を短いリズムで配置させるようにするためには、移動部の駆動手段(これもまた上述中心位置決め部を有するようにしなければならない)は極めて強力なものでなければならない。」(甲第4号証4頁左上欄9行ないし15行)が挙げられている。これは素子移動部に「位置決めに関する別部材」(中心位置決め素子)を具備させることは、重量増大を招き、それによる欠点(迅速性の欠如、駆動手段の強大化)が生ずることを述べたものである。また、刊行物1記載の発明の作用効果に関し、「中心位置決め部を設ける必要がないようにしたため、素子移動部の移動量(原告は、「移動量」は誤訳であると推量する。他の記載との整合性を考慮すると、「重量」ないし「被駆動質量(moved mass) 」とすべきであろう。)ははるかに小さくなる;このことは素子移動部が同じ駆動性能を発揮する時間を少なくしうるが、或いは同じ作業時間を費やす場合に駆動部の寸法を小さくしうるという利点を結果とする。」(同5頁右上欄2行ないし6行)と記載されている。
以上の刊行物1記載の発明の技術的課題や作用効果に関する記載を参酌すると、
刊行物1記載の発明は、素子移動部に「位置決めに関する別部材」を具備することを否定しており、これを技術思想の中核とするものである。
したがって、刊行物1の記載を全体としてみると、「素子移動部」と「位置走査部」とを一体のものとすることは全く読みとれないばかりか、それを否定することが示唆されているというべきである。
(5) 被告の主張に対する反論 被告は、記載事項b(「別の可能性は位置走査手段が素子移動手段の素子ピックアップ及び保持部材の下に配置され、これと実質的に共軸に位置される構成にすることである。」)との記載と、これに続く「このような素子移動手段の動きを遮断する必要なく素子の起こりうるずれを決定することができる」との記載(被告主張の記載事項b及びd)について、刊行物1記載の発明の「別の可能性」のものとして「素子移動手段が短時間の停止をしない、つまり素子移動手段が移動している状態のままで「素子の起こりうるずれを決定する」ものであることを説明したものと解するのが自然である」と主張し、この記載事項を根拠として、刊行物1に、素子移動部が位置走査部を具備することが記載されていると主張している。
しかし、刊行物1(甲第4号証)には、5頁右上欄10行ないし左下欄5行に、
「本発明によれば位置走査部は作業片受容及び保持手段上に一定の距離をおいて配置され、これと実質的に共軸位置にある。・・・別の可能性は位置走査手段が素子移動手段の素子ピックアップ及び保持部材の下に配置され、これと実質的に共軸に位置される構成にすることである。・・・あてはまる。」と記載され、この記載部分は、前記のとおり、請求項8の装置の発明における位置走査部の配置に関する従属発明である請求項9、10の発明の説明がされているにすぎない。上記の記載を素直に読めば、請求項8の装置発明の位置走査部を、「作業片受容及び保持手段上に一定の距離をおいて配置され、これと実質的に共軸位置にある」構成(請求項9に対応)とする可能性や、「素子移動手段の素子ピックアップ及び保持部材の下に配置され、これと実質的に共軸に位置される」構成(請求項10に対応)とする別の可能性があることが説明されているにすぎないことが分かるのであって、この「別の可能性」なる語句は、位置走査部の配置についての構成上の別の可能性を示すものにすぎない。したがって、上記の記載事項b及びdが、「素子移動部を短時間停止させることのない構成を備えた実施例」を説明するものであるとする被告の主張は、論理の飛躍があり、妥当でない。
さらに、上記の記載事項b及びdは、請求項10を説明したものであるが、請求項10の発明は、請求項8の装置発明の従属発明であり、これらの発明は請求項1の方法発明を実施するためのものであるから、この記載事項を解釈するに当たっては、請求項1、8の記載との整合性が図られるべきである。また、上記の記載事項b及びdの直前の記載である「本発明によれば位置走査部は作業片受容及び保持手段上に一定の距離をおいて配置され、これと実質的に共軸位置にある。そのため素子移動部を短時間作業片上に停止させること、好ましくは素子移動手段により保持される素子が位置走査部上にあることに停止させることが可能である。この短時間の停止の間に理論的な位置軸線、即ちその正規の位置に対する素子の実際の位置を決定し、修正信号を発生する。」(甲第4号証5頁右上欄10行ないし17行)との記載は、請求項9を説明したものであるが(以下「請求項9の説明事項」という。)、請求項9の発明は、請求項8の装置発明の従属発明であり、これらの発明は請求項1の方法発明を実施するためのものであるから、請求項9の説明事項を解釈するに当たっては、請求項1、8の記載との整合性が図られるべきである。
請求項1には、素子移動部がマガジンから「あらかじめ決められた位置(作業片に対して相対的にあらかじめ決められた位置)」に素子を移動させ、次いで素子を「あらかじめ決められた位置」から作業片の方に移動させる間に素子位置を測定する、という基本動作が記載されている。また請求項8には、素子の移動路の域内に配置されて素子位置を測定する位置走査部15が記載されている。これらのことを前提にして、請求項9の説明事項中の「素子移動部を短時間作業片上に停止させる」を解釈すると、素子移動部を上記「あらかじめ決められた位置」(実施例を参照すると水平面上の位置、X、Y座標上の所定位置)に短時間停止させることを意味するものと解せられ、被告もそのように解していることは明らかである。他方、上記請求項1の基本動作を参酌して、請求項10の場合の素子移動部の移動を検討すると、この場合においても、水平面上(X、Y座標上)の移動は、「あらかじめ決められた位置」で停止していると考えるのが自然であり、素子移動部はその間に素子を「あらかじめ決められた位置」から作業片に向け移動させ、その降下動途中で、位置走査部15によって素子位置が測定されると解すべきである。
被告は、記載事項b及びdについて、請求項10の場合、素子移動手段が(X、
Y座標上の)移動を停止しないで素子位置を測定することを説明している旨主張し、これを請求項9の説明事項の反対解釈から導き出しているが、上述のように、
請求項1、8の記載との整合性に留意すると、請求項10の場合にも、素子移動部は、X、Y座標上の所定位置で停止し、その間に素子を降下動させて素子位置を測定すると解されるので、被告の上記の主張は失当である。
また、記載事項b及びdの記載中の「素子移動手段の動きを遮断する」なる表現は、何を意味しているか理解に苦しむ表現である。「素子移動手段の動き」が、素子をX、Y座標上に移動させる動作を指すのか、素子を降下動させる動作を指すのか、あるいはその両者を含めた全体の動作を指すのかは、必ずしも明らかでない。
また、「遮断」とは「広辞苑(第2版)」によると、「さえぎり絶つこと。ふさぎとめること。」を意味し、単に「停止」を表現する言葉としては大げさであり、適切ではない。原告にも推論が許されるとすれば、「素子移動手段の動きを遮断する」とは、素子移動手段の素子を移動させる一連の動作(請求項1に記載される基本動作)の円滑さを阻害することを表現しているものと思料する。そして、位置走査手段と素子移動手段のピックアップ手段とが共軸に位置している請求項10の場合には、素子移動手段が素子を「あらかじめ決められた位置」に移動させたとき、
同時に、位置走査手段とピックアップ手段とが共軸関係にあって、X、Y座標上の位置合わせが不要となるので、そのまま素子を降下動させる動作に移行させて素子位置測定を行わせることができること、換言すれば、素子移動手段の素子を移動させる一連の動作を阻害することなく、円滑に素子位置測定を行うことができることを上記の表現は説明していると解し得るのである。
このように、記載事項b及びdについて、「素子移動手段が短時間の停止をしない状態のままで素子の起こり得るずれを決定するものであることを説明したもの」とする被告の主張は、失当である。
2 取消事由2(相違点2の判断の誤り) (1) 決定は、訂正請求項1の発明と刊行物1記載の発明との相違点2(訂正請求項1の発明においては、部品姿勢の認識する場所を「部品供給部から電子部品を取り出してから前記プリント基板上の所定位置まで平面移動する間に」としているのに対して、刊行物1記載の発明においては、部品供給部からプリント基板上に配置されるまでの「平面移動」する間であることを明示する言及がない点。)に関して、「刊行物1の「位置走査手段が素子移動手段の素子ピックアップ及び保持部材の下に配置され、これと実質的に共軸に位置される構成にすることである。このような構成は素子移動手段の動きを遮断する必要なく素子の起こりうるずれを決定することができる。」との記載(甲第4号証5頁右上欄22行ないし左下欄4行、
以下「記載事項d」という。)や、「素子の位置の走査は素子を載置することなく素子が素子移動手段に保持されている間に行われる」との記載(同4頁左下欄5行ないし7行、以下「記載事項e」という。)、さらには刊行物1において、発明の目的として「作業片に対し素子を位置決めする方法を実施するのに・・・、それによりマガジンから取り去った素子を迅速にかつきわめて正確に作業片、例えば電子回路基盤上に」配置するという指摘(同4頁右下欄19行ないし5頁左上欄2行、
以下「目的指摘事項」という。)もあることを勘案すれば、部品の姿勢認識を部品の移動中に行うことは、刊行物1において充分示唆されているといえる。そして、
「平面移動」が「素子移動部」の移動経路に含まれることは明らかで、しかも、当該姿勢認識を「平面移動する間」に行う構成を採用することに何ら阻害する要因も見当たらないから、部品の装着姿勢を認識する場所をヘッド部が「平面移動する間」とすることは、当業者が容易になしえた設計事項といえる」旨判断している(決定書6頁6行ないし20行)が、以下のとおり、この判断は、いずれも失当である。
ア 記載事項dについて 記載事項d中の前段に当たる「刊行物1の「位置走査手段が素子移動手段の素子ピックアップ及び保持部材の下に配置され、これと実質的に共軸に位置される構成にすることである。」は、記載事項bについて検討したとおり、この記載内容は、
位置走査手段と素子移動手段との位置関係を示しているにすぎず、しかも「あらかじめ決められた位置」(平面移動の終端位置)から作業片の間における両者の位置関係を示しているにすぎないものであり、また、素子移動手段に位置走査手段が具備されることを示すものではない。次に、記載事項d中の後段に当たる「このような構成は素子移動手段の動きを遮断する必要なく阻止の起こりうるずれを決定することができる」という記載内容は、必ずしもその意味するところが明確ではないが、前段に記載された構成の説明であるので、「あらかじめ決められた位置」から作業片の間における認識(走査)動作に関する説明であると理解される。
このように、記載事項dには、「部品の装着姿勢を認識する場所をヘッド部が「平面移動する間」とすること」を示唆する事項は、何ら記載されていない。
イ 記載事項eについて 記載事項eの「素子の位置の走査は素子を載置することなく素子が素子移動手段に保持されている間に行われる」との記載は、刊行物1(甲第4号証)の4頁左下欄5行ないし7行に記載されたものであるが、これは、同4頁右上欄7行ないし右下欄18行の「従って本発明による素子を作業片上に配置する方法は請求の範囲第1項の上位概念に記載される方法にかかわるものである。・・・それにより素子を作業片の面上に完全に円滑に配置することができる。」という「本発明の方法」を説明する文脈中に存在するものである。
したがって、「素子の位置の走査」が行われる場所(時間)については、「本発明の方法」、特に、刊行物1の請求項1記載の発明を前提にして定めなければならず、既に述べたように、刊行物1記載の発明では、「素子の位置の走査」は、「あらかじめ決められた位置」から作業片の間になされるのである。記載事項eは、その間での「素子の位置の走査」が、素子の載置状態ではなく、素子が素子移動手段に保持される状態で行われることを述べているにすぎない、と解することが自然である。
このように、記載事項eには、「部品の装着姿勢を認識する場所をヘッド部が「平面移動する間」とすること」を示唆する事項は、何ら記載されていない。
ウ 目的指摘事項について 目的指摘事項は、刊行物1(甲第4号証)の4頁右下欄19行ないし5頁右上欄3行の「本発明の別の目的は、 作業片に対し素子を位置決めする方法を実施するのに適した請求の範囲第8項の上位概念に示す装置を提供し、それによりマガジンから取り去った素子を迅速かつ極めて正確に作業片、例えば電子化回路基盤上に先述した難点を有することなく配置しうるようにすることである。このような装置は複雑で、重く高価な中心位置決め部が必要でないようなものでなければならない」 との記載から抜粋したものである。
ここで「マガジンから取り去った素子を迅速かつ極めて正確に作業片・・・に・・・配置」における「迅速」の意味を、刊行物1に記載される先行技術(米国特許第4,135,630号)との関係で検討する。
この先行技術は、「中心位置決め素子を有する移動部のピックアップ手段を設け」(甲第4号証3頁右下欄6行ないし12行)たものである。そして刊行物1記載の発明による装置について、「既に述べたように(先行技術が備えている)中心位置決め部を設ける必要がないようにしたため、素子移動部の移動量ははるかに小さくなる:このことは素子移動部が同じ駆動性能を発揮する時間を少なくしうるが、或いは同じ作業時間を費す場合には駆動部の寸法を小さくしうるという利点を効果とする。」(甲第4号証5頁右上欄2行ないし6行)と記載されているように、刊行物1記載の発明における「迅速」とは、先行技術に示されるような中心位置決め部(中心位置決め素子)を素子移動部に具備させない構成によって可能になった作用効果であると解される。
したがって、目的指摘事項には、 「部品の装着姿勢を認識する場所をヘッド部が「平面移動する間」とすること」を示唆する事項は、何ら記載されていない。
以上のとおり、相違点2についての決定の判断が根拠としている記載事項d、記載事項e、目的指摘事項のいずれにも、「部品の装着姿勢を認識する場所をヘッド部が「平面移動する間に」とすること」を示唆する事項は記載されておらず、決定の相違点2についての判断は失当である。
(2) 次に、決定は、「訂正に係る請求項1の発明の奏する効果も、刊行物1及び2に記載された発明から予測しうる程度のものでしかない。」と判断している(決定書6頁21行、22行)が、この判断は、以下のとおり失当である。
訂正発明は、刊行物1及び刊行物2には記載されない特有の構成である「ヘッド部は、ノズルにより部品供給部から部品を取り出してからプリント基板上の所定位置まで平面移動する間に、ノズルに保持された部品の画像を(ヘッド部に具備した)認識部に入力する」構成を有することにより、刊行物1及び2に記載された発明に比較して格別の効果を奏し得るものである。
すなわち、刊行物1記載の発明は、素子移動部が作業片上に移動 (平面移動)した後、ピックアップ手段が降下して、その降下の途中で位置走査部によって素子の位置を認識するものであるので、位置走査部による認識後、ピックアップ手段が降下している短い距離間でしか正確な位置への位置決めを行うことができず、素子の位置ずれ誤差が大きければ位置補正にも時間がかかり、降下が完了してからも位置決め動作を行う時間が必要となり、実装タクトにロスが生じる。また、早く位置決めを行おうとしてピックアップ手段を早く移動させようとすると、素子がピックアップ手段から離れて実装ミスとなるおそれが大きくなり、また、降下距離を長くすれば、装置が大型化、あるいは通常の装着にも移動時間が多くなり、実装タクトのロスが生じるという問題点が生じる。刊行物2記載の発明も、刊行物1記載の発明と同様、平面移動した後に電子部品を認識するものであるので、上記問題点と同様の問題点が生じる。
これに対し、訂正発明は、部品供給部から部品を取り出してからプリント基板上の所定位置まで平面移動する間に部品供給部に具備した認識部で部品を認識することができるので、平面移動中に途中で停止することなく部品の認識を行えて、実装時間のロスタイムを軽減することができ、また部品の位置ずれが生じた場合にも、
早めに部品の状態を知ることによって位置補正を早めに行え、実装時間のロスタイムを軽減することができるのであって、刊行物1、2記載の実装タクトロスという問題点を解消することができると共に、その他の問題点も解消することができる。
このような訂正発明の効果は、刊行物1及び2に記載された発明からは予測困難なものであるというべきであるから、決定の上記の判断は、失当である。
被告の反論の要点
決定における刊行物1の認定、刊行物1記載の発明と訂正請求項1の発明との間の一致点及び相違点の判断に誤りはなく、決定に取り消すべき違法はない。
1 取消事由1(刊行物1記載の発明について、「素子移動部」が「位置走査部」を具備するものであると誤認したこと)に対して (1) 決定が刊行物1において素子移動部が位置走査部を具備していると認定した根拠について 刊行物1記載の発明につき、「素子移動部が、ピックアップ手段に吸着された素子の姿勢を認識する位置走査部を具備する」構成のものであるとの決定の認定に係る刊行物1の記載は、「前記走査部15が前記素子移動部11に配置され、前記素子ピックアップ手段の下部に位置している」(甲第4号証の請求項10、記載事項a)、「別の可能性は位置走査手段が素子移動手段の素子ピックアップ及び保持部材の下に配置され、これと実質的に共軸に位置される構成にすることである。このような構成は素子移動手段の動きを遮断する必要なく素子の起こりうるずれを決定することができる。」(甲第4号証5頁右上欄22行ないし左下欄4行、記載事項b及びd)との記載事項である。
記載事項aには、「前記走査部15が前記素子移動部11に配置され、前記素子ピックアップ手段の下部に位置している」とあり、記載事項b及びdの「別の可能性は・・・素子移動手段の動きを遮断する必要なく素子の起こりうるずれを決定することができる。」との記載は、記載事項aに対応する詳細な説明の記載であって、決定では指摘していないが、記載事項b及びdの直前には、「素子移動部を短時間作業片上に停止させる・・・この短時間の停止の間に・・・素子の実際の位置を決定し、修正信号を発生する。」(同5頁右上欄12行ないし17行)という記載がある。
そして、記載事項b及びdの冒頭に「別の可能性は」とあるところから、その記載内容は、その直前に記載された「素子移動部を短時間停止させる実施例とは異なる「別の可能性」をもつ実施例の説明をしたものとみるのが自然な文理解釈である。そうすると、記載事項b及びdの「素子移動手段の動きを遮断する必要なく素子の起こりうるずれを決定する」ということは、「素子移動手段が短時間の停止をしない、つまり素子移動手段が移動している状態のままで素子の起こり得るずれを決定するものであることを説明したもの」と解するのが自然である。そして、このように素子移動手段が移動している状態で、素子の位置を決定するためには、「素子移動手段」と「素子の姿勢を認識する位置走査部」とが相対的に停止状態にあること、換言すれば、それらが同一の位置関係を保ったまま両者一体となった状態で移動する必要があることは明らかである。もっとも、このような関係は、必ずしも両者一体で移動しなくても、両者別個に同調した動きをさせれば実現することが可能ではあろうが、これを実現するためには、設計上必要以上の煩雑を伴うことは明らかであって、かかる煩雑を回避して、両者を一体のものとするのが機械設計上の技術常識というべきである。
このような技術常識のもとに、上記の記載事項aと記載事項b及びdとを合わせ見れば、記載事項aの「前記走査部15が前記素子移動部11に配置され、前記素子ピックアップ手段の下部に位置している」という記載は、「素子移動部が位置走査部を具備している」ことを実質上明示したものといえる。
(2) 「配置」の語の意味について 原告は、「配置」という言葉について、「広辞苑(第2版)」に「それぞれの位置に割り当てること」という説明があることをもとに、記載事項aの「前記走査部15が前記素子移動部11に配置され」という記載は、「素子移動部」に係わる位置に割り当てられていることを意味している旨主張しているが、このような「係わる」との記載は、「広辞苑」にはなく、上記の説明に即して、記載事項aは、「前記走査部が前記素子移動部の位置に割り当てられている」ことを意味していると解せば、上記(1)で述べたところと全く矛盾はない。
(3) 刊行物1における請求項1、8ないし10の記載及びこれに対応する記載、並びにドイツ語原文等について 原告は、刊行物1の請求項1、8ないし10の記載と、これに対応する明細書の記載、さらには関連するドイツ語原文等をもとに、決定が刊行物1記載の発明について、「素子移動部がピックアップ手段に吸着された素子の姿勢を認識する位置走査部を具備する」ものと認定したことは、失当である旨主張している。
しかし、上記(1)のとおり、請求項10の「前記走査部15が前記素子移動部11に配置され、前記素子ピックアップ手段の下部に位置している」という記載から、「素子移動部が位置走査部を具備している」ことは明確に解し得るし、このような解釈は、請求項1中の「素子を作業片の方に移動中、前記位置決め軸線に対する素子の実際の位置を測定し」という記載と何ら矛盾するものではない。
したがって、上記以外の請求項の記載やそれに関連する記載がどのようであろうと、既に説明したように、それらは、少なくとも、走査部15と素子移動部11との配置関係については、請求項10に記載されたものと異なる実施例を説明したものとみるべきであるから、それらの他の記載をもとに、請求項10の記載文言を恣意的に解釈するのは妥当ではない。また、決定で全く言及していないドイツ語原文に基づく原告の主張についても同様である。
なお、刊行物1における請求項1の「素子移動手段の選択可能な位置決め軸線は作業片上の素子の前記あらかじめ決められた位置と一致しており」との記載は、素子移動手段の基準となる座標(実施例の記載においては「理論的な位置軸線M」(甲第4号証7頁右下欄20行、第6図参照))が作業片上のあらかじめ決められた位置と対応していることを意味しており、選択可能な位置決め軸線(理論的な位置軸線M)は、ずれ量を検出するためのものであって、ずれ量の検出は必ずしも絶対座標系で行う必要はないのであるから、前記の記載は、位置決め軸線と作業片上の素子の装着位置とが一致することを意味しているものではない。また、このような解釈は、実施例の他の記載内容とも矛盾しないし、請求項1、8ないし10の記載内容から、必然的に導かれるものである。
2 取消事由2(相違点2の判断の誤り)に対して (1) 原告は、刊行物1の記載事項dの後段の「このような構成は素子移動手段の動きを遮断する必要なく素子の起こりうるずれを決定することができる。」という記載は明確でなく、「部品の装着姿勢を認識する場所をヘッド部が「平面移動する間」とすること」を示唆するものでないし、また、刊行物1の記載事項eの「素子の位置の走査は素子を載置することなく素子が素子移動手段に保持されている間に行われる」との記載も同様である旨主張しているが、原告のこの指摘が適切なものでないことは、上記1に記載したことから明らかである。
(2) また、原告は、刊行物1の「作業片に対し素子を位置決めする方法を実施するのに・・・、それによりマガジンから取り去った素子を迅速にかつきわめて正確に作業片、例えば電子回路基盤上に」配置するという目的指摘事項を、「部品の装着姿勢を認識する場所をヘッド部が「平面移動する間」とすること」を示唆するものとみることは、先行技術文献である米国特許明細書(4,135,630号)の記載事項との整合性がない旨も主張しているが、刊行物1自体の記載によって十分示唆されている事項を、先行技術文献の記載との整合性を理由として否定するのは、刊行物1の記載についての合理的な解釈とはいえないし、本件の決定とは無関係な主張である。
(3) 上記のとおり、原告の主張には理由がなく、刊行物1記載の発明には「素子移動部が、ピックアップ手段に吸着された素子の姿勢を認識する位置走査部を具備する」構成が記載されていることは、前記1のとおりであり、しかも、「部品の姿勢認識を」部品の移動中に行うことは、刊行物1に充分示唆されている」点、及び「「平面移動」が「素子移動部」の移動経路にふくまれることは明らか」である点は、決定に記載したように正当であるあるから、決定が「(部品の)姿勢認識を「平面移動」する間に行う構成を採用することに何ら阻害する要因も見当たらない」とした判断に誤りはない。
理 由1 取消事由1(刊行物1記載の発明について、「素子移動部」が「位置走査部」を具備するものであると誤認したこと)について (1) 甲第4号証によれば、刊行物1の特許請求の範囲の請求項10に、「前記位置走査部15が前記素子移動部11に配置され、前記素子ピックアップ手段13、14の下部に位置していることを特徴とする請求の範囲第8項記載の装置」(記載事項a)と記載されていることが認められる。
ここで、「配置」の語が、広辞苑(第2版)に記載されるとおり、「それぞれの位置に割り当てられること」を意味するものであることは原告が自認するところであるから、上記の刊行物1の請求項10に記載されている「位置走査部15が素子移動部11に配置され(ている)」との構成は、「位置走査部15」が「素子移動部11」の位置に割り当てられていることを意味するものであり、「位置走査部15」は、「素子移動部11」の位置に置かれている(具備されている)構成であることは、その文言解釈上から明らかであるというべきである。そして、刊行物1記載の発明の詳細な説明における記載事項b及びdの「別の可能性は位置走査手段が素子移動手段の素子ピックアップ及び保持部材の下に配置され、これと実質的に共軸に位置される構成にすることである。このような構成は素子移動手段の動きを遮断する必要なく素子の起こりうるずれを決定することができる。」との記載事項も、被告が指摘するように、上記認定に係る刊行物1記載の発明の構成及びその構成による作用効果を説明したものであると解することが、より自然であるとみることができる。
原告は、上記の「配置」の語が有する意味を前提としながら、記載事項aは、位置走査部15が複数考えられる位置の内の1つの位置である「素子移動部11」に係わる位置に割り当てられていることを意味しており、位置走査部15と素子移動部11と素子ピックアップ手段の3者の位置関係を述べたものと解することができる旨主張しているが、刊行物1の請求項10には、「位置走査部15が「前記素子移動部11に」配置され」と記載されており、位置走査部15が割り当てられる位置が素子移動部11であると明確に特定しているのであって、原告が主張するように「位置走査部15が「前記素子移動部11に係わって」配置され」とは記載されていないのであるから、その文言上、原告が主張するように解釈することができないことは明らかであり、原告の上記主張は、採用することができない。
(2) 原告のその余の主張について 上記のとおり、刊行物1記載の発明には、「素子移動部」が「位置走査部」を具備する構成のものが記載されていることは、記載事項aの文言解釈から明らかであるというべきであるが、原告が、そのように解すべきでないとするその余の主張について、検討を加える。
ア 原告は、記載事項aの解釈について上記(1)のとおり主張し、その理由を次のように主張している。すなわち、「記載事項aは、刊行物1記載の発明の特許請求の範囲の請求項10に記載されているところ、請求項10は請求項9と対をなし、共に請求項8の従属項であり、請求項8の発明は、請求項1(請求項2ないし7は請求項1に対し従属する関係にある。)記載の方法を実施するための装置に係るものであるところ、請求項8ないし10における位置走査部15に関する記載によると、位置走査部15は、素子9、20の移動路の域内に配置され、その下位概念として、請求項9のものは位置走査部15が作業片保持部(1、2、4)の上部に所定関係をもって配置され、請求項10のものは位置走査部15が素子移動部11の素子ピックアップ手段13、14の下部に配置されているものとされていると解することが自然であり、請求項8における位置走査部15が配置される「素子9、20の移動路の域内」に関しては、請求項1の記載から明らかなように、請求項1では、素子は「マガジン→前記あらかじめ決められた位置(刊行物1の第1図に点線で示されるような位置)」に移動し、その後に、「前記あらかじめ決められた位置→作業片」に移動するが、この後段の移動中、すなわち「次いで素子を作業片の方に移動中」に、素子の実際の位置を測定するものであることが明らかであるから、請求項8における位置走査部15は、「前記あらかじめ決められた位置→作業片」の間における素子の移動路において、実際の位置を測定し得るところに配置されていると理解することが自然である」、「このように、請求項8における「素子9、20の移動路の域内」とは、「前記あらかじめ決められた位置→作業片」の間の素子9、20が移動する域内であって、「マガジン→あらかじめ決められた位置」の移動域内を含まないものであると解されるのであり、したがって、刊行物1の請求項1、請求項8ないし10の記載内容を総合的に検討すれば、位置走査部は、前記あらかじめ決められた位置と作業片との中間位置にあり、このような位置にある位置走査部のより具体的な位置について、請求項9は、作業片保持部との関係で規定し、請求項10は、素子移動部との関係で規定していると解することが自然である」旨主張し、以上のことから、請求項10に係る記載事項aの「前記走査部15が前記素子移動部11に配置され、前記素子ピックアップ手段の下部に位置している」とは、前記あらかじめ決められた位置と作業片との間の域内における走査部15と素子移動部11との位置関係を述べただけであると解されるので、
記載事項aに基づいて「素子移動部がピックアップ手段に吸着された素子の姿勢を認識する位置走査部を具備する」と認定することは妥当でない旨主張している。
しかしながら、刊行物1(甲第4号証)の特許請求の範囲の記載をみると、請求項10には、末尾に「請求項8記載の装置。」との記載があり、請求項8記載の装置を引用しているところ、引用に係る請求項8には、「位置走査部15は前記素子移動部10、11のピックアップ手段13、14により保持される素子9、20の移動路の域内に配置され」と記載されており、位置走査部15が配置される位置(場所)について、上記の記載以上に限定する構成は何ら記載されていないことが認められる。また、請求項8の冒頭には、「先述請求の範囲のいずれか1項記載の方法を実施するための装置であって、」と記載されているのであり、請求項8の装置は、請求項1に記載の方法を実施するための装置に限られるものではないところ、請求項8が引用する「先述請求の範囲のいずれか1項」に当たる請求項2には、「素子の位置の走査を、素子が載置される前でなく、素子移動手段と保持されている間に行うことを特徴とする請求の範囲第1項記載の方法」と記載されており、「素子の位置の走査」を行う時期に関して、請求項1記載の方法と異なり、広く「素子移動手段と保持されている間に行うことを特徴とする」ことが記載されている。
以上の刊行物1の特許請求の範囲の記載によれば、請求項8に記載されている「素子9、20の移動路の域内」について、原告主張の範囲に限定して解釈しなければならないものとは認めることができないから、このように限定して解釈すべきことを前提として、請求項8を引用する請求項10に係る発明について述べる原告の上記の主張は、採用することができない。
イ 原告は、刊行物1記載の発明は、この発明に先行する公知発明(米国特許第4,135,630号)が素子移動部に「中心位置決め素子」を具備する構成であったことから生ずる諸問題点を解決することを技術的課題としており、この刊行物1記載の発明の技術的課題や作用効果に関する記載を参酌すると、刊行物1記載の発明は、素子移動部に「位置決めに関する別部材」を具備することを否定しており、刊行物1の記載を全体としてみると、「素子移動部」と「位置走査部」とを一体のものとすることは全く読みとれないばかりか、それを否定することが示唆されている旨主張している。
しかしながら、甲第4号証によれば、刊行物1には、原告が主張する先行発明に係る問題点に関して、「中心位置決め素子を有する移動部のピックアップ部を設けることが提案され」(3頁右下欄8行、9行)ているが、「通常極めて小さな寸法の電子素子を把握して理論的に要求されるみかけ位置に機械的にシフトさせることは、機械的に複雑で高価な素子が必要である。このような中心位置決め部は極めて高精密な基準に合致するようにしなければならないのであるから、その設計及び製造は極くデリケートなものであり、従って高価につく。・・・この公知構造の別の難点は作業の加速或いは非加速できるようにするためには極めて高価につくことである。回路基板上に複数の素子を短いリズムで配置させるようにするためには、移動部の駆動手段(これもまた上述中心位置決め部を有するようにしなければならない)は極めて強力なものでなければならない。」(3頁右下欄末行ないし4頁左上欄15行)と記載されており、刊行物1記載の発明は、この問題点を解決することを目的とするものであることに関して、「本発明の別の目的は、・・・先述した難点を有することなく配置しうるようにすることである。このような装置は複雑で、
重く高価な中心位置決め部が必要でないようなものでなければならない。」(4頁右下欄19行ないし5頁左上欄3行)と記載され、また、刊行物1記載の発明の作用効果に関し、「中心位置決め部を設ける必要がないようにしたため、素子移動部の移動量(注、原告は重量の誤訳であると主張している。)ははるかに小さくなる;このことは素子移動部が同じ駆動性能を発揮する時間を少なくしうるが、或いは同じ作業時間を費やす場合に駆動部の寸法を小さくしうるという利点を結果とする。」(5頁右上欄2行ないし6行)と記載されていることが認められる。 刊行物1記載の発明に関する以上の記載内容を総合すれば、刊行物1記載の発明は、先行の公知発明(米国特許第4,135,630号)における装置が「複雑で、重く高価な中心位置決め部」を必要とするという問題点を有していたのに対して、このような「中心位置決め部」を必要としない構成としたことに技術的意義があることが認められるのであり、刊行物1記載の発明の特許請求の範囲に記載された発明は、いずれも「複雑で、重く高価な中心位置決め部」を採用しておらず、そこに記載されている「位置走査部15」は、先行の公知発明の装置における「複雑で、重く高価な中心位置決め部」に相当するものではないことは、刊行物1の上記の記載事項に照らし、明らかである。
したがって、刊行物1記載の発明の技術的課題や作用効果に関する上記の記載内容は、刊行物1記載の請求項10に係る発明における「素子移動部」が「位置走査部」を具備する構成のものであるとする上記(1)の解釈の妨げとなるものではない。
原告は、刊行物1記載の発明は、素子移動部に「位置決めに関する別部材」を具備することを否定している旨主張するが、刊行物1には、刊行物1記載の発明が上記のとおり「複雑で、重く高価な中心位置決め部」を採用しないことが明記されているのであって、原告主張のように、刊行物1記載の発明が素子移動部に「位置決めに関する別部材」をおよそ具備しないものとして構成されていると解すべき根拠は、刊行物1の記載中に見いだすことができないから、原告の上記主張は、採用することができない。
ウ 以上によれば、刊行物1記載の発明には、「素子移動部」が「位置走査部」を具備する構成のものが含まれていることは、刊行物1の記載事項自体から明らかであるから、刊行物1に記載された発明の構成を認定するために、刊行物1以外の文献である国際出願(PCT出願)の国際公開公報(WO85/02088、
甲第6号証)に掲載される明細書の原文や、上記PCT出願に基づく米国特許出願の公報(USP4615093、甲第7号証)の記載事項を斟酌する余地はなく、
刊行物1の記載は不明瞭であるとして、他の文献をも参酌すべきとする原告の主張は失当である。
他に、刊行物1記載の発明に、「素子移動部」が「位置走査部」を具備する構成のものが記載されていると解すべきでないとの原告の主張を肯定するに足りる証拠はない。
(3) 以上のとおり、原告の取消事由1は、理由がない。
2 取消事由2(相違点2の判断の誤り)について (1)ア 原告は、決定が、訂正請求項1の発明と刊行物1記載の発明との相違点2(訂正請求項1の発明においては、部品姿勢の認識する場所を「部品供給部から電子部品を取り出してから前記プリント基板上の所定位置まで平面移動する間に」としているのに対して、刊行物1記載の発明においては、部品供給部からプリント基板上に配置されるまでの「平面移動」する間であることを明示する言及がない点)に関して、「刊行物1の「位置走査手段が素子移動手段の素子ピックアップ及び保持部材の下に配置され、これと実質的に共軸に位置される構成にすることである。このような構成は素子移動手段の動きを遮断する必要なく素子の起こりうるずれを決定することができる。」との記載(甲第4号証5頁右上欄22行ないし左下欄4行、記載事項d)や、「素子の位置の走査は素子を載置することなく素子が素子移動手段に保持されている間に行われる」との記載(同4頁左下欄5行ないし7行、記載事項e)、更には刊行物1において、発明の目的として「作業片に対し素子を位置決めする方法を実施するのに・・・、それによりマガジンから取り去った素子を迅速にかつきわめて正確に作業片、例えば電子回路基盤上に」配置するという指摘(同4頁右下欄19行ないし5頁左上欄2行、目的指摘事項)もあることを勘案すれば、部品の姿勢認識を部品の移動中に行うことは、刊行物1において充分示唆されているといえる。そして、「平面移動」が「素子移動部」の移動経路に含まれることは明らかで、しかも、当該姿勢認識を「平面移動する間」に行う構成を採用することに何ら阻害する要因もみあたらないから、部品の装着姿勢を認識する場所をヘッド部が「平面移動する間」とすることは、当業者が容易になしえた設計事項といえる」旨判断している(決定書6頁6行ないし20行)ことについて、
いずれも失当であると主張している。
イ しかしながら、前記1で判示したとおり、刊行物1記載の特許請求の範囲の請求項10に係る発明では、「素子移動部」が「位置走査部」を具備する構成のものが記載されていると認められるのであり、また、請求項10が引用する請求項8に記載されている「素子9、20の移動路の域内」については、原告主張の範囲に限定して解釈しなければならないものとは認めることができないから、これらに反することを前提とする原告の主張は、採用することができない。
そして、甲第4号証によれば、決定が指摘するとおり、刊行物1には、「本発明方法によれば、素子の位置の走査は素子を載置することなく素子が素子移動手段に保持されている間に行われる」(同4頁左下欄5行ないし7行、記載事項e)と記載されており、素子の位置の走査について、素子が、素子移動手段(素子移動部)に保持されている間に行われることが記載されている。
そうとすれば、素子は、素子マガジンよりピックアップされて、作業片3に載置されるまでの間は、素子移動部(素子移動手段)に保持されたままなのであるから、刊行物1には、素子マガジンより素子をピックアップして、作業片3に載置するまでの間において、素子の位置の走査が行われることが記載されていることになる。そして、素子マガジンから素子がピックアップされた後、作業片上に移動されるまでの間において、素子移動部が「平面移動」することは、刊行物1(甲第4号証)の第1図によって明らかである。
以上によれば、刊行物1記載の発明において、「素子移動部」に具備された「位置走査部」が、素子移動部が平面移動する間に、素子の位置を走査することは、刊行物1に十分に示唆されて記載されているということができ、決定の上記の判断は、いずれも相当であると認められる。
(2)ア 原告は、決定が「訂正に係る請求項1の発明の奏する効果も、刊行物1及び2に記載された発明から予測しうる程度のものでしかない。」(決定書6頁21行、22行)とした判断についても、誤りである旨主張している。 イ しかしながら、原告の上記アの主張は、刊行物1記載の発明について、素子移動部が作業片上に移動 (平面移動)した後、ピックアップ手段が降下して、その降下の途中で位置走査部によって素子の位置を認識するものに限定されるものであるとの主張を前提とするものであるところ、前記1の(2)アに判示のとおり、原告のこの主張は採用することができないものであるから、原告の上記アの主張は、その前提において失当であって、理由がないものと認められる。
そして、上記(1)のとおり、刊行物1記載の発明において、「素子移動部」に具備された「位置走査部」が、素子移動部の平面移動の間に、素子の位置を走査することは、刊行物1に十分に示唆されて記載されていると認めることができるものであって、訂正請求項1の発明の作用効果は、この刊行物1に示唆されている構成に、刊行物2に記載された発明における構成(電子部品装着のための部品姿勢の認識に当たって、画像認識部で部品の画像を入力して行う構成)を組み合わせることによって、予測し得る範囲内のものであると認められるから、決定の上記の判断は、相当であると認められる。
(3) 以上のとおり、相違点2に関する上記(1)及び(2)の決定の判断に誤りがあるものとは認められないから、原告の取消事由2も理由がない。
3 結論 以上の次第で、原告主張の取消事由はいずれも理由がなく、その他決定にはこれを取り消すべき瑕疵は見当たらない。
よって、原告の請求は理由がないからこれを棄却することとし、主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 永井紀昭
裁判官 塩月秀平
裁判官 橋本英史