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関連ワード 進歩性(29条2項) /  容易に発明 /  明瞭でない記載 /  設定登録 /  新規事項追加(新規事項の追加) /  請求の範囲 /  減縮 /  拡張 /  変更 /  釈明 /  審決確定(審決が確定) / 
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事件 平成 13年 (行ケ) 248号 審決取消請求事件
原告 旭メディカル株式会社
訴訟代理人弁護士 花岡巖
訴訟復代理人弁護士 高崎仁
訴訟代理人弁理士 武井英夫
被告 テルモ株式会社
訴訟代理人弁理士 辻邦夫
同 辻良子
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 2001/12/25
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
主文 特許庁が無効2000−35352号事件について平成13年4月17日にした審決を取り消す。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
全容
1 原告の請求 特許庁が無効2000-35352号事件について平成13年4月17日にした審決を取り消す。
訴訟費用は被告の負担とする。
2 当事者間に争いのない事実 (1) 特許庁における手続の経緯 原告は,発明の名称を「血液成分分離方法」とする特許第1930016号(昭和63年6月23日出願,平成7年5月12日設定登録,以下「本件特許」といい,その発明を「本件発明」という。)の特許権者である。
被告は,平成12年7月3日,本件特許を無効にすることについて審判を請求し,特許庁は,これを無効2000-35352号事件として審理した。原告は,この事件の審理の過程において,同年10月10日付けで本件特許の願書に添付した明細書及び図面の訂正を請求した(以下「本件第1次訂正請求」という。)。特許庁は,上記事件につき審理した結果,平成13年4月17日,「訂正を認める。特許第1930016号の請求項1に係る発明についての特許を無効とする。」との審決をし,同年5月1日に,その謄本を原告に送達した。
(2) 審決の理由 審決の理由は,要するに,@本件第1次訂正請求に係る訂正事項は,特許請求の範囲減縮及び明細書の明瞭でない記載釈明に相当し,かつ,新規事項の追加に該当せず,実質上特許請求の範囲拡張し,又は変更するものではないから,特許法134条5項により準用する同法126条2,3項の規定に適合するので,訂正を認める,A本件第1次訂正請求に係る訂正後の請求項1に係る発明についての特許は,審判甲第2ないし第6号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定に違反してなされたものであり,同法123条1項2号の規定に該当し,無効である,とするものである。
(3) 原告は,本訴係属中,平成13年8月27日付けで,本件特許出願の願書に添付された明細書及び図面(本件第1次訂正請求により訂正された後のもの)の訂正をすることについて審判を請求し,特許庁は,これを訂正2001-39139号事件として審理した結果,平成13年11月29日に上記訂正をすることを認める旨の審決(以下「本件訂正審決」という。)をし,これが確定した。
(4) 本件訂正審決による訂正の内容 (ア) 本件訂正審決による訂正前の特許請求の範囲の請求項1(本件第1次訂正請求により訂正された後のもの) 「白血球血小板除去フィルターの上流側に採血バッグが接続され該白血球血小板除去フィルターの下流側には少なくとも2つの血液成分分離用バッグが無菌的に接続されてなる血液成分分離用バッグ装置を用いて,前記採血バッグに採取された血液を前記白血球血小板除去フィルターに通して予め白血球及び血小板を除去した後に,遠心分離を行い比重差により分離された血液成分を前記血液成分分離用バッグに分取する方法。」 (イ) 本件訂正審決による訂正後の特許請求の範囲の請求項1(下線部が訂正個所である。) 「白血球血小板除去フィルターの上流側に採血バッグが接続され該白血球血小板除去フィルターの下流側には第 1及び第2の2つの血液成分分離用バッグが無菌的に接続されてなる血液成分分離用バッグ装置を用いて,前記採血バッグに採取された血液を前記白血球血小板除去フィルターに通して予め白血球及び血小板を除去して前記第 1の血液成分分離用 バッグ に赤血球 および 血漿 を得た後に,白血球血小板除去 フィルター と第1の血液成分分離用 バッグ を切り離し,遠心分離を行い,比重差により分離された上清 の血漿 を前記第 2の血液成分分離用 バッグ に移すことにより ,白血球血小板除去濃厚赤血球及 び白血球血小板除去血漿 の2つの 血液製剤を前記血液成分分離用バッグに分取する方法。」3 当裁判所の判断 上記当事者間に争いのない事実によれば,本件特許請求の範囲請求項1については,特許法29条2項に違反して登録された特許であることを理由に特許を無効とした審決の取消しを求める訴訟の係属中に,当該特許請求の範囲減縮を含む訂正の審決が確定したということになり,審決は,結果として,判断の対象となるべき発明の要旨の認定を誤ったものとなる。この誤りが審決の結論に影響を及ぼすことは明らかである。したがって,審決は取消しを免れない。
4 以上によれば,本訴請求は理由がある。そこで,これを認容し,訴訟費用の負担については,原告に負担させるのを相当と認め,行政事件訴訟法7条,民事訴訟法62条を適用して,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 山下和明
裁判官 宍戸充
裁判官 阿部正幸