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関連審決 異議2000-73899
関連ワード 優先権 /  取消決定 / 
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事件 平成 13年 (行ケ) 287号 特許取消決定取消請求事件
原告 ダイハツ工業株式会社
原告 株式会社不二機販
被告 特許庁長官及川耕造
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 2002/01/29
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
主文 本件訴えを却下する。
訴訟費用は原告らの負担とする。
事実及び理由
全容
1 原告らは、「特許庁が異議2000-73899号事件について平成13年5月9日にした決定を取り消す。」との判決を求め、被告は、主文第1項同旨の判決を求めた。
2 原告らは、平成4年6月22日、平成3年10月17日出願の平成3年特許願第267987号に基づく優先権主張を伴い、名称を「浸炭焼入れ部品の疲労強度向上方法」とする発明について特許出願(平成4年特許願第162380号)し、特許第3033638号として登録された。
本件特許に対しては特許異議の申立てがあり、異議2000-73899号事件として審理された結果、平成13年5月9日、「特許第3033638号の請求項1に係る特許を取り消す。」との決定があり、その謄本は、平成13年5月26日12時、当時の原告ら代理人であったA弁理士事務所に送達された。
本件決定の取消しを求める本訴の訴状が当裁判所に提出されたのは、平成13年6月26日(火)であった。特許法178条3項所定の出訴期間は平成13年5月26日から30日以内であり、同法3条に従い平成13年6月25日(月)までであったから、本訴提起は特段の事情のない限り、出訴期間経過後にされたものであって、不適法なものである。
3 原告らは、本件においては民訴法97条所定の当事者の責めに帰することができない事由が存するとして、別紙原告らの主張のとおり主張するが、当裁判所は、本件において上記当事者の責めに帰することができない事由は存しないものと判断する。その理由は次のとおりである。
(1) 甲第1号証、乙第1号証及び原告ら代理人Bが平成13年8月8日付けで当裁判所にファックス送信した事実説明書によると、原告らの代理人であったA弁理士の事務所職員は、平成13年5月26日に本件決定謄本の送達を大阪西郵便局配達担当者から受けたこと、同日は土曜日であったため、同職員は次の事務所営業日である5月28日(月)に至って、受領した決定謄本1頁の右肩に同日付け事務所受領印を押した上で、翌29日に原告ら担当者に引き継いだこと、原告らは、本件決定に対する取消訴訟である本訴提起を、原告ら訴訟代理人である弁理士らに依頼し、同弁理士らは決定謄本に押された平成13年5月28日の受領印に基づき訴訟提起期限を算出した上で本件訴状を当裁判所に郵送し、平成13年6月26日当裁判所において本件訴状が受け付けられたこと、の各事実を認めることができる。
(2) 原告らは、原告ら代理人であるB弁理士が、平成13年6月12日特許庁に電話をして、決定謄本の原告らへの送達日が平成13年5月28日であったとの事実を特許庁担当者から確認を得たと主張し、甲第10号証の1(NTTコミュニケーションズ利用分ダイヤル通話料金明細内訳書)には、同日13時48分、原告ら代理人事務所から特許庁の代表電話番号に対する電話があったことの記録がある。しかし、甲第10号証の1によってもその電話内容を認めることはできないし、他に、原告ら主張のように、原告ら代理人が決定謄本の原告らへの送達日を特許庁に確認したことを認めるべき客観的証拠はない(甲第11号証(B弁理士の宣誓供述書)には、同弁理士が6月12日特許庁審判部書記課に電話をかけて担当者に確認を求めたところ、送達日は5月28日であったとの回答を得た旨の記載があるが、その担当者名、回答の具体的根拠内容を認定するに足りる客観的証拠は存しない。)。
(3) 本件において出訴期間が遵守されなかった発端は、決定謄本の送達を受けた当時の原告ら代理人事務所の職員が事務所受領印として、送達された日付ではなく2日後の日付のものを決定謄本に押捺したことにあり、かつ、このことが原告ら担当者あるいはその後原告らの代理人となった弁理士らに伝わらなかった点にあることは明白である。送達を受けた当時の代理人と、その後本訴提起を受任した代理人とは別の弁理士であるが、両者は同じ原告らの代理人として、出訴期間遵守の関係では共同して最善の注意を払う必要があり、送達日の調査、確認を慎重かつ正確に行うべきであったといわなければならない。このことにかんがみれば、送達日が客観的に明らかな本件において、出訴期間が遵守されなかったことにつき民訴法97条所定の当事者の責めに帰することができない事由が存するものと認めることはできない。
その他、本件記録に現れる事実及び原告らが主張する一切の点を考慮しても、出訴期間経過後にされた本訴提起を適法なものとすべき特段の事情に該当すべき事実関係は見当たらない。
4 よって、主文のとおり判決する。
(平成13年12月11日口頭弁論終結)
裁判長裁判官 永井紀昭
裁判官 塩月秀平
裁判官 古城春実