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関連ワード 29条1項3号 /  容易に発明 /  発明の詳細な説明 /  設定登録 /  訂正審判 /  請求の範囲 /  減縮 /  取消決定 / 
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事件 平成 13年 (行ケ) 416号 特許取消決定取消請求事件
原告 株式会社三共
訴訟代理人弁理士 今崎一司
被告 特許庁長官及川耕造
指定代理人 松川直樹
同 村山隆
同 渡部葉子
同 山口由木
同 宮川久成
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 2002/02/13
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
主文 特許庁が平成11年異議第72762号事件について平成13年7月24日にした決定を取り消す。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
当事者の求めた裁判
1 原告 主文と同旨 2 被告 原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
当事者間に争いのない事実
1 特許庁における手続の経緯 (1) 原告は、名称を「可変表示装置」とする特許第2849446号発明(平成2年6月2日特許出願、平成10年11月6日設定登録、以下「本件発明」という。)の特許権者である。
平成11年7月14日及び同月21日、上記特許につきそれぞれ特許異議の申立てがされ、平成11年異議第72762号事件として特許庁に係属したところ、原告は、平成12年1月27日、明細書の特許請求の範囲及び発明の詳細な説明の各記載を訂正する旨の訂正請求をした。
特許庁は、同特許異議事件について審理した上、平成13年7月24日、
「特許第2849446号の請求項に係る特許を取り消す。」との決定(以下「本件決定」という。)をし、その謄本は同年8月17日原告に送達された。
(2) 原告は、本件決定の取消しを求める本訴提起後の平成13年11月5日、
本件明細書の特許請求の範囲及び発明の詳細な説明の各記載を訂正する旨の訂正審判の請求をしたところ、特許庁は、同請求を訂正2001-39201号事件として審理した上、平成13年12月25日、上記訂正を認める旨の審決(以下「本件訂正審決」といい、本件訂正審決に係る訂正を「本件訂正」という。)をし、その謄本は平成14年1月9日原告に送達された。
2 特許請求の範囲の記載 (1) 本件訂正前の特許請求の範囲の記載 【請求項1】 複数の識別情報が表面に形成された回転部材を備えた可変表示装置において、
該可変表示装置は、透光性のある部材で構成される前記回転部材と、該回転部材を回転せしめるモータと、該モータを固定するモータ固定板と、該モータ固定板に設けられ且つ前記回転部材の裏面から遊技者の視認し得る前記識別情報を照射する発光部材と、からなる回転部材ユニット機構を、支持部材に対して複数個並列状に支持固定したことを特徴とする可変表示装置。
【請求項2】 前記回転部材を、一側面が開放した円筒状に形成してその開放側から円筒状の空間部に前記モータ及び発光部材がほぼ収まるように収納配置したことを特徴とする請求項1記載の可変表示装置。
【請求項3】 前記支持部材は、一側面が開放した箱状に形成された収納ボックスであり、
前記複数個の回転部材ユニット機構を前記収納ボックス内に収納する際に、
前記モータ固定板に形成される係合部を前記収納ボックスに並列状に形成される被係合部に係合させて支持固定することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の可変表示装置。
(2) 本件訂正によって訂正された特許請求の範囲の記載(注、訂正部分を下線で示す。) 【請求項1】 複数の識別情報が表面に形成された回転部材を備えた可変表示装置において、
該可変表示装置は、透光性のある部材で構成される前記回転部材と、該回転部材を回転せしめるモータと、該モータを固定するモータ固定板と、該モータ固定板に設けられ且つ前記回転部材の裏面から遊技者の視認し得る前記識別情報を遊技状態 がリーチ 状態 であるときの 未だ識別情報 が確定 していない 回転部材 に対する 表示態様 がリーチ 状態 の前にいずれの 回転部材 に対して 行なった 表示態様 とも 異なるように 照射 すると 共に、さらに 前記 リーチ 状態 で既に識別情報 が確定 した 回転部材に対する 表示態様 がリーチ 状態 と大当 たり 状態 とで 異なるように 照射する発光部材と、からなる回転部材ユニット機構を、支持部材に対して複数個並列状に支持固定したことを特徴とする可変表示装置。
【請求項2】 前記回転部材を、一側面が開放した円筒状に形成してその開放側から円筒状の空間部に前記モータ及び発光部材がほぼ収まるように収納配置したことを特徴とする請求項1記載の可変表示装置。
【請求項3】 前記支持部材は、一側面が開放した箱状に形成された収納ボックスであり、
前記複数個の回転部材ユニット機構を前記収納ボックス内に収納する際に、
前記モータ固定板に形成される係合部を前記収納ボックスに並列状に形成される被係合部に係合させて支持固定することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の可変表示装置。
3 本件決定の理由 本件決定は、(1)訂正請求に係る訂正の適否に関し、@当該訂正後の明細書の特許請求の範囲の請求項1、2記載の本件発明は実願昭60-36595号(実開昭61-151783号)のマイクロフィルム(以下「刊行物1」という。)記載の発明に基づいて、A同請求項3記載の本件発明は刊行物1及び特開平2-102687号公報(以下「刊行物2」という。)記載の各発明に基づいて、それぞれ当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであって、当該訂正は、特許法120条の4第3項において準用する同法126条3項(平成6年法律第116号による改正前のもの)の規定に適合せず、認められないとし、(2)特許異議の申立てに関し、本件発明の要旨を上記2(1)記載のとおり認定した上、@同請求項1、2記載の本件発明は刊行物1記載の発明であって、特許法29条1項3号の規定に違反して特許されたものであり、A同請求項3記載の本件発明は刊行物1、2記載の各発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができものであって、同条2項の規定に違反して特許されたものであるから、その特許は、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)4条1項及び2項の規定により、取り消されるべきものとした。
当事者の主張
1 原告 本件決定が、本件発明の要旨を本件訂正前の特許請求の範囲の記載のとおり認定した点は、本件訂正審決の確定により特許請求の範囲の記載が上記のとおり訂正されたため、誤りに帰したことになる。そして、この瑕疵は本件決定の結論に影響を及ぼすものであるから、本件決定は違法として取り消されるべきである。
2 被告 本件訂正審決の確定により特許請求の範囲の記載が上記のとおり訂正されたことは認める。
当裁判所の判断
本件訂正審決の確定により、特許請求の範囲の記載が上記のとおり訂正されたことは当事者間に争いがなく、この訂正によって特許請求の範囲減縮されたことは明らかである。
そうすると、本件決定が、本件発明の要旨を本件訂正前の特許請求の範囲のとおりであると認定したことは、結果的に誤りであったことに帰する。そして、これが本件決定の結論に影響を及ぼすことは明らかであるから、本件決定は、瑕疵があるものとして取消しを免れない。
よって、原告の請求は理由があるから認容し、訴訟費用は、原告の申立て等本件訴訟の経過にかんがみ、原告に負担させることとして、主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 篠原勝美
裁判官 長沢幸男
裁判官 宮坂昌利