• この表をプリントする
  • ポートフォリオ機能


追加

関連ワード 出願公開 /  同一の発明 /  遡及効 /  遡及 /  優先権 /  出願審査請求 /  国内優先権 /  優先日 /  優先期間 /  異議申立 /  特許協力条約 /  国際出願 / 
元本PDF 裁判所収録の全文PDFを見る pdf
事件 平成 13年 (行ウ) 274号 出願審査請求却下処分取消請求事件
原告 日本信号株式会社
訴訟代理人弁護士 日野和昌
同 大井暁
補佐人弁理士 丹羽宏之
同 野口忠夫
被告 特許庁長官及川耕造
指定代理人 松本真
同 志村陽子
同 佐藤一行
同 宮島義直
裁判所 東京地方裁判所
判決言渡日 2002/03/26
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
主文 1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
請求
被告が原告に対し平成11年9月9日付けでなした出願審査請求却下処分を取り消す。
事案の概要
1 争いのない事実等(認定事実には証拠を掲げる。) (1) 原告は,平成7年6月5日,発明の名称を「電磁アクチュエータ」とする特許出願(平成7年特許願第138082号)をした(乙第1号証,以下「本件特許出願」という。)。
原告は,平成8年6月5日,日本国特許庁に,日本,米国,韓国並びにヨーロッパ広域特許に係るドイツ,フランス及び英国の各国を指定国として,本件特許出願,平成7年特許願第138081号及び平成7年特許願第148811号を基礎とする優先権主張を伴った千九百七十年六月十九日にワシントンで作成された特許協力条約(以下「PCT条約」という。)に基づく国際出願(PCT/JP96/01520)をした(乙第2号証,以下「本件国際出願」という。)。
(2) 原告は,平成9年2月5日,本件国際出願における指定国から日本国の指定を取り下げた。
(3) 原告は,平成11年1月26日,本件特許出願について出願審査の請求をした(以下「本件請求」という。)。
(4) 被告は,原告に対し,平成11年3月1日付けで,本件請求について,出願が取り下げたものとみなされた後の提出であることを理由とする却下理由通知をした(甲第2号証)。
被告は,同年9月9日付けで,上記却下理由通知書に記載した理由によって本件請求を却下し(甲第3号証,以下「本件却下処分」という。),同年10月13日,その旨を原告に通知した。
(5) 原告は,平成11年12月13日,本件却下処分に対し,行政不服審査法に基づく異議の申立てをしたところ,被告は,平成13年7月6日付けで,上記異議申立てを却下する旨の決定をした。
2 本件は,原告がした出願審査請求(本件請求)に対し,被告が,本件請求は本件特許出願が取り下げたものとみなされた後のものであることを理由として本件却下処分を行ったことから,原告が,本件却下処分の違法を主張して,その取消しを求める事案である。
争点及びこれに対する当事者の主張
1 争点 本件却下処分の適法性 2 争点に関する当事者の主張 【被告の主張】 (1) 本件国際出願は,特許法184条の3第1項により,指定国の一つである日本国においては,その国際出願日である平成8年6月5日にされた特許出願とみなされ,さらに,本件国際出願は,本件特許出願,平成7年特許願第138081号及び平成7年特許願第148811号を基礎とする優先権を主張するものであるから,日本においては,国内優先権の主張を伴う特許出願とみなされる。
上記のような国際特許出願は,特許法に特段の定めがない限り特許法の規定が適用されるところ,特許法上,国内優先権の主張を伴う国際特許出願であって,国内優先権の基礎出願が国内出願である場合について特段の定めはないから,この場合は特許法42条1項がそのまま適用される。
本件特許出願に関して,同条1項ただし書及び同条3項に該当するような事実は存しないから,同条1項本文により,本件特許出願は,その出願の日である平成7年6月5日から1年3月を経過した平成8年9月5日の経過をもって取り下げたものとみなされる。
(2) 原告は,平成9年2月5日に,本件国際出願における指定国から日本国の指定を取り下げたため,PCT条約24条(1)により,本件国際出願のうち日本における特許出願は同日取り下げたものとみなされる。
しかし,この時すでに,本件特許出願は上記のとおり取り下げたものとみなされており,後からされた本件国際出願における日本国の指定取下げがこれに影響することはない。
(3) したがって,本件請求がされた平成11年1月26日には,本件請求の対象である本件特許出願はすでに取り下げたものとみなされて存在しないから,本件請求は不適法であって,これを補正することもできない。したがって,特許法18条の2第1項により,本件請求は却下されなければならない。
よって,本件却下処分は適法である。
【原告の主張】 (1) PCT条約24条は,国際出願における指定国の指定の取下げについて,当該指定国における国内出願の取下げの効果と「同一の効果をもって消滅する」と規定しており,国内出願の取下げとみなされるとは規定していない。
国内出願の取下げの効果については,特許法39条5項が同条1項ないし4項の場合に限って遡及効を規定しているところ,出願については先後願の関係が生じるので,同条5項の意義があるが,指定国の指定については先後関係が生じることは考え難いので,同条1項ないし4項の場合がないことになり,同条5項の存在意義がなくなり,ひいてはPCT条約24条において「同一の効果をもって消滅する」とした意義も失われる。
したがって,指定の取下げに関しては,同法39条5項の定める遡及効を,同条1項ないし4項の場合に限定せず,すべての場合に遡及するものと解して初めてPCT条約24条が意義を有することになる。
このように解すると,本件国際出願において日本国の指定の取下げがされた結果,当初から日本国は指定国でなかったことになり,日本国については特許法41条優先権主張を伴う出願をしていないものと取り扱われるから,同法42条1項を適用する基礎を欠く。
(2) また,特許法42条は,先の出願と優先権主張を伴う後の出願が並存することによって生ずる競合出願を排除し,重複出願や重複公開を回避するために設けられた規定である。
一方,PCT条約23条では,指定官庁は優先日から20か月を経過する前に,国際出願の処理又は審査を行ってはならないことを規定している。
したがって,本件国際出願について,原告が日本国の指定を取り下げた平成9年2月5日までに重複審査や重複公開がされることはないから,本件特許出願に特許法42条を適用すべき実質的理由もない。
(3) しかるに,被告は,本件特許出願に特許法42条1項を適用して,その出願日から1年3月を経過した平成8年9月5日に取り下げられたものとみなし,その後にされた本件請求を却下したのであるから,本件却下処分は違法である。
当裁判所の判断
1(1) 特許法184条の3第1項は,PCT条約11条(1)若しくは(2)(b)又は14条(2)の規定に基づく国際出願日が認められた国際出願であって,同条約4条(1)(A)の指定国に日本国を含むものは,その国際出願日にされた特許出願とみなす旨規定する。
本件国際出願は,PCT条約11条(1)に基づき平成8年6月5日を国際出願日と認められた国際出願であって(乙第2号証),同条約4条(1)(A)の指定国に日本国を含むものであるから,同日にされた日本の特許法上の特許出願とみなされる。
また、PCT条約8条(2)(b)後段は,国際出願が,いずれかの指定国において若しくはいずれかの指定国についてされた国内出願に基づく優先権の主張を伴う場合又は一の国のみの指定を含む国際出願に基づく優先権の主張を伴う場合には,当該指定国における優先権の主張の条件及び効果は,当該指定国の国内法令の定めるところによる旨規定する。
しかるところ,上記特許出願(本件国際出願)は,本件特許出願,平成7年特許願第138081号及び平成7年特許願第148811号を基礎とする優先権の主張を伴うものである。
したがって、上記特許出願(本件国際出願)については、上記のとおり,優先権の主張の条件及び効果を含めて、日本の特許法が適用されるから,特許法42条1項が適用され,同項ただし書に該当する事実が存しない限り,優先権の主張の基礎とされた先の出願は,その出願から1年3月を経過した時に取り下げたものとみなされる。
弁論の全趣旨によると,本件特許出願に関して,同項ただし書に該当する事実は存しないものと認められるから,本件特許出願は,同項本文により,その出願の日である平成7年6月5日から1年3月を経過した平成8年9月5日の経過をもって取り下げたものとみなされる。
(2) 原告は,平成9年2月5日に,本件国際出願における指定国から日本国の指定を取り下げた。
PCT条約24条(1)は,同条約11条(3)に定める国際出願の効果は,出願人が国際出願又は当該指定国の指定を取り下げた場合には,指定国において,当該指定国における国内出願の取下げの効果と同一の効果をもって消滅する旨規定する。
したがって,原告が本件国際出願において日本国の指定を取り下げたことにより,日本における国内出願の効果は,平成9年2月5日に国内出願が取り下げられたのと同一の効果をもって消滅したものである。
ところで,上記PCT条約24条(1)にいう「国内出願の取下げと同一の効果」に関して,原告は,国際出願における指定国の指定の取下げについては,特許法39条5項の定める遡及効を,同条1項ないし4項の場合に限定せず,すべての場合に適用すべきである旨主張する。
しかしながら,特許法39条5項は,同一の発明等について,二つ以上の特許出願等があった場合に,最先の特許出願等が取り下げられる等した場合には,最先でない特許出願人等が特許等を受けることができるようにした規定であるから,そのような場合以外に同項が適用されるものでないことは明らかである。
原告は,指定国の指定については先後関係が生じることは考え難いので,特許法39条1項ないし4項の場合が存在しないことになり,同条5項の意義がなくなるから,ひいてはPCT条約24条の存在意義を失うと主張するが,39条1項ないし4項の場合を,指定同士の先後関係に限定する理由はないから,例えば,日本国を指定国とした国際出願が日本国内における最先の特許出願である場合には,国際出願における日本国の指定の取下げによって,特許法39条1項,5項により,最先でない特許出願人が特許を受けることができるようになることからすると,国際出願における指定国の指定の取下げについて,特許法39条1項ないし4項の場合が存在しないということはない。
したがって,本件国際出願における日本国の指定の取下げについては,特許法39条5項は適用されず,特許出願が初めからなかったものとみなされることはないから,前記(1)のとおり,本件国際出願における日本国の指定の取下げのときにすでに取り下げたものとみなされていた本件特許出願が,本件国際出願における日本国の指定の取下げによって,復活することはない。
(3) なお,原告は,本件国際出願について,原告が日本国の指定を取り下げた平成9年2月5日までに重複審査や重複公開がされることはないから,本件特許出願に特許法42条を適用すべき実質的理由がないと主張する。
同法42条が,優先権の主張の基礎とされた先の出願について,その出願の日から1年3月を経過した時に取り下げたものとみなすのは,二つの出願が並存することによって生ずる競合出願を排除し,重複審査や重複公開を回避するためであり,優先期間としての1年に,見直し期間としての3月を加え,後の出願の出願公開の時期が先の出願の日から1年6月経過後であることも考慮して,1年3月の期間を出願人に与えたものということができる。
PCT条約23条により,優先日から20か月を経過する前に,国際出願の処理又は審査が行われないからといって,20か月以内に指定を取り下げた場合に特許法42条を適用しないとするならば,出願人に上記優先期間及び見直し期間として20か月の期間を与えたのと同様の結果に帰することになり,国際出願についてのみ,明文の規定なく,このような別異の扱いをする理由はないから,原告の主張は採用できない。
かえって,本件においては,原告にも他の出願人と等しく,同法42条の定める1年3月の期間が与えられていたのであり,その期間内に日本国の指定の取下げ,本件国際出願の取下げ,本件特許出願の優先権主張の取下げ等をすることによって,本件特許出願について取り下げたものとみなされないようにすることが可能であったのであるから,本件にのみ同法42条の適用を排除する実質的な理由もない。
(4) したがって,本件請求がされた平成11年1月26日には,本件請求の対象である本件特許出願はすでに取り下げたものとみなされて存在しないから,本件請求は不適法な手続であって,これを補正する余地もない。
2 以上のとおり,本件却下処分に違法な点は認められない。
よって,原告の請求は理由がないから,これを棄却することとし,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 森義之
裁判官 岡口基一
裁判官 男澤聡子
  • この表をプリントする