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関連ワード 新規性 /  進歩性(29条2項) /  要約書 /  優先権 /  国内優先権 /  分割出願 /  優先日 /  設定登録 /  異議申立 / 
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事件 平成 13年 (行コ) 213号 異議申立却下決定に対する取消請求控訴事件
控訴人 中外製薬株式会社
訴訟代理人弁護士 鈴木修
同 岡本義則
補佐人弁理士 栗田忠彦
同 富田博行
被控訴人 特許庁長官 及川耕造
指定代理人 松本真
同 白井ときわ
同 小林進
同 宮島義直
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 2002/03/28
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
主文 本件控訴を棄却する。
当審における訴訟費用は,控訴人の負担とする。
事実及び理由
当事者の求めた裁判
1 控訴人 (1) 原判決を取り消す。
(2) 被控訴人が,平成7年特許願第5185号(特許第2535141号)につき,平成10年12月8日付けでした手続補正書に係る手続の却下処分を取り消す。
(3) 訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人の負担とする。
2 被控訴人 主文と同旨
事案の概要
本件は,控訴人が,特許の分割出願につき,分割出願手続の後に,特許法(以下,単に「法」ということがある。)41条1項の規定による優先権を主張する旨を願書に追加する旨の手続補正書を提出したのに対し,被控訴人が同手続補正書について手続却下の処分をしたことから,控訴人が,この処分は,@本来認められるべき補正を却下したものであり,かつ,A法律的な根拠及び十分な理由を示さないでしたものであって,違法であると主張し,その取消しを求めている事案である。
当事者の主張は,次のとおり付加するほか,原判決の「事実及び理由」の「第2 事案の概要」の欄に記載されたとおりであるから,これを引用する(なお,当裁判所も,「第1出願」,「原出願」,「本件分割出願」,「刊行物1」,「本件手続補正書」,「本件通知書」,「本件処分」の語を,原判決の用法に従って用いる。)。
1 控訴人の当審における主張の要点 (1) 分割出願は,その趣旨からして,原出願が有する新規性,進歩性の判断についての基準日(出願日及び優先日)の利益を享有することを前提として行なわれる。また,本件のように,原出願において優先権を主張している場合には,優先権主張の基礎となる出願は特定されており,分割出願の後に優先権を主張する旨の補正をしても,第三者に不測の損害を与えるおそれはない。このような分割出願における優先権の主張は,原出願においてなされた優先権の主張を明示する意味を有するものにすぎない。
本件における取消理由通知において引例とされた刊行物1は,控訴人自身の出願である。自己の出願を引例として分割出願を拒絶されるのは出願人にとって耐え難いことであり,このような状況の中で,控訴人が,優先権主張をあえてしないことを選択して,本件分割出願をしたなどということは,あり得ないことである。
したがって,本件分割出願において,優先権を主張する旨の記載を漏らしたことについて,その補正をすることは許される。東京高判昭和53年10月11日(判タ383号148頁)も,優先権主張の記載漏れを後に補充するとの補正を認めており,優先権を主張する旨の記載を補充することを一律に認めない立場に立っている原審の判断は誤りである。
(2) 特許法の手続規定の解釈に当たっては,特許法独自の問題であるとして行政手続法と無関係に解釈することなく,行政手続法の目的,理念を十分に勘案しつつ,解釈すべきである。
特許法18条の2第2項の「前項の規定により却下しようとするときは,手続をした者に対し,その理由を通知し」とは,相手方の弁明が何らかの形で可能になる程度の理由を通知すればよいのではなく,相手方の十分な弁明を可能ならしめる程度の理由を通知すべきである。
本件通知書における「登録後の差し出し」という理由では,本件処分の法的な根拠が不明であり,これを,十分な弁明をすることが可能な程度の理由の記載ということはできない。
控訴人は,本件通知について,法的な根拠が分からなかったため,被控訴人に対し説明を求めたが,被控訴人は説明をしないまま,本件処分をなした。これは,法が弁明の機会を保障したことを没却するものであり,法18条の2ひいては行政手続法の趣旨からして許容されない。
よって,本件処分は違法である。
2 被控訴人の反論の要点 すべて争う。
当裁判所の判断
当裁判所は,控訴人の本訴請求は,理由がないから棄却すべきものである,と判断する。その理由は,次のとおり付加するほか,原判決の「第3 当裁判所の判断」のとおりであるので,これを引用する。
1 本件補正書について 特許出願人は,国内優先権を主張することにより,優先権主張の基礎とされた先の出願の願書に添付した明細書と図面に記載されている発明の限度で,特許要件の判断について,先の出願のときにされたものとみなすという利益を得るものである。したがって,国内優先権の主張がされているか否かは,先の出願と優先権主張を伴う後の出願との間にされた出願等に基づく第三者の権利の取得の可否等にかかわるものとして,第三者に及ぼす影響が大きい。
そこで,法41条4項は,特許出願について国内優先権の主張をしようとする者は,その旨及び先の出願の表示を記載した書面を特許出願と同時に特許庁長官に提出しなければならないと規定している(ただし,国内優先権を主張しようとする者は,当該特許出願の願書にその旨及び必要な事項を記載して,この主張書面の提出を省略することもできる。特許法施行規則27条の4第1項)。
44条2項は,特許出願の分割について,分割出願は,「もとの特許出願の時にしたものとみなす。ただし,…(中略)…第41条第4項…(中略)…の規定の適用については,この限りでない。」と規定し,出願人に対し,分割出願について国内優先権の主張をしようとする場合には,分割出願の際に改めて優先権主張をする旨の書面の提出等の上記方式を履践することを明文で要求している。
平成11年法律第41号による改正後の法44条4項,同附則2条2項により,平成12年1月1日以降の分割出願で,同日より前の元の出願日に出願したものとみなされるものについては,法44条4項が適用され,法44条4項によれば,分割出願について法41条4項により提出しなければならない優先権主張書面は,当該分割出願と同時に特許庁長官に提出されたものとみなされる。これに対し,上記改正法施行前になされた分割出願については,法44条4項のようなみなし規定の適用はない。このことからも,平成12年1月1日より前の分割出願において国内優先権を主張するためには,分割出願と同時に,優先権主張書面を提出するなどしてその手続を採る必要があったことは,明らかである。
控訴人は,平成7年1月17日,原出願の分割出願として,本件分割出願をした。控訴人は,原出願の際には,願書に第1出願に基づく国内優先権を主張する旨を記載したものの,本件分割出願の際には,願書に国内優先権を主張する旨を記載せず,また法44条4項に規定する優先権主張書面も提出しなかった。
上記のような国内優先権の制度趣旨及びその手続に関する規定と本件分割出願の出願日からすれば,本件分割出願における国内優先権の主張は,本件分割出願と同時にされる必要があったことが明らかである。
補正とは,特許庁への手続が不備であったり,明細書,図面や要約書に不備,誤記,不明瞭な記載があった場合に,それらの補充や訂正を行うことをいうものである。特許出願の際に実際にされた国内優先権の主張の記載上の明白な誤記を訂正するような場合はこれを補正ということができるものの,特許出願の際に優先権主張の手続をしていないとの瑕疵がある場合において,後に優先権主張書面を提出することによってその瑕疵を治癒しようとすることは,もはや補正ということができないものであることは,上記に述べたところから明らかである。
控訴人は,本件のように,原出願において優先権を主張している場合には,優先権主張の基礎となる出願は特定されており,分割出願後に優先権を主張する旨の補正をしても,第三者に不測の損害を与えない,本件の取消理由通知において引例とされた刊行物1は,控訴人自身の出願であり,このような状況の下で,控訴人が,優先権主張をあえてしないことを選択して,本件分割出願をしたなどということは,あり得ない,したがって,本件分割出願において,優先権を主張する旨の記載を漏らしたことについて,その補正をすることは許される,と主張している。
しかし,法が,分割出願について,国内優先権を主張する場合には,優先権主張書面を分割出願と同時に提出するか,その旨を願書に記載すべきことを要求していることは前記のとおりである。控訴人の上記主張は,法が明らかに規定している方式に反するものであるから,採用することができない。控訴人が引用する裁判例も,本件とは事案を異にするものであり,本件においてこれを参考にすることはできない。
2 本件処分及び本件通知書の理由の記載について 特許法の規定による処分については,行政手続法第2章及び第3章の規定は適用しないものとされている(法195条の3)。したがって,手続却下の処分においてどのような内容及び程度の理由を記載すべきかは,特許法の解釈により決められることになる。
18条の2第2項は,補正をすることのできない不適法な手続を却下しようとするときは,手続をした者に対し,その理由を通知し,相当の期間を指定して,弁明書を提出する機会を与えなければならないと規定している。同項は,商標法条約上の「官庁は,出願又は第10条から前条までの規定による申請に関し,却下し又は拒絶しようとすることについて合理的な期間内に意見を述べる機会を出願人又は申請人に与えることなく,その全部又は一部を却下し又は拒絶することができない。」(同条約14条)との規定に対応し,特許法においても,不適法な手続であってその補正をすることができないものについて却下する場合には,事前に意見陳述の機会を付与することとしたものである。このように,法18条の2第2項所定の理由の通知は,相手方に弁明書を提出する機会を与えるための手続として定められているものであるから,理由の記載の程度は,相手方の弁明を可能にする内容が記載されていれば足りるものと解することができる。
被控訴人は,本件通知書において,本件手続補正書を却下する理由として「登録後の差し出し。(注)本願は「平成8年6月27日」付で登録済である。」と記載し,本件処分の際に控訴人に交付した「手続却下の処分」と題する書面には,「この出願について平成9年11月18日付け提出の手続補正書に係る手続は,平成10年5月8日付け却下理由通知書に記載した理由によって却下する。」と記載している。
本件手続補正書の「補正対象項目名」が「先の出願に基づく優先権主張」であることからすれば,本件通知書における上記の記載が,本件手続補正書による国内優先権の主張が,本件分割出願に係る特許権が設定登録された後にされたものであるために不適法であるという理由を示していることは,その記載自体から明らかである。そして,本件通知書において,上記のような具体的な理由が記載されていれば,本件手続補正書が法41条4項に違反していることを示しているものであることは明らかであり,少なくとも本件処分の名宛人である控訴人がこれを了知することは十分に可能であったというべきである。したがって,本件通知書における上記の記載は,相手方である控訴人の弁明を可能にするだけの内容のものということができ,法18条の2第2項所定の理由として十分なものということができる。また,本件処分は,本件通知書記載の理由と同一の理由によりされたのであるから,本件通知書の記載を引用する形式で本件処分に付記された理由により,本件処分の内容とその理由が,控訴人にとって明らかであったというべきである。
控訴人は,本件通知書には,相手方の十分な弁明を可能ならしめる程度の理由を通知すべきである,本件通知書における「登録後の差し出し」という理由では,本件処分の法的な根拠が不明であり,十分な弁明をすることが可能な程度の理由の記載とはいえない,等と主張する。しかし,控訴人の上記主張が採用し得ないものであることは,上に説示したところから明らかである。
結論
以上に検討したところによれば,控訴人の主張はいずれも理由がなく,控訴人の請求を棄却した原判決は相当である。そこで,本件控訴を棄却することとして,訴訟費用の負担について,行政事件訴訟法7条,民事訴訟法67条1項,61条を適用して,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 山下和明
裁判官 設樂隆一
裁判官 阿部正幸
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