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事件 平成 13年 (ネ) 257号 特許権侵害差止等請求控訴,附帯控訴事件
平成 13年 (ネ) 343号 特許権侵害差止等請求控訴,附帯控訴事件
控訴人兼附帯被控訴人(第1審原告) 中濃産業株式会 社(以下「控訴人」 という。)
訴訟代理人弁護士 伊神喜弘
補佐人弁理士 樋口武尚
被控訴人兼附帯控訴人(第1審被告) 関西ゴム産業株 式会社 (以下「被控訴人 会社」という。)
被控訴人(第1審被告) B(以下「被控訴人 B」という。)
被控訴人ら訴訟代理人弁護士 田中千博
訴訟復代理人弁護士 森田泰久
裁判所 大阪高等裁判所
判決言渡日 2002/04/10
権利種別 特許権
訴訟類型 民事訴訟
主文 1 原判決主文3項及び4項中,被控訴人会社に関する部分を次のとおり変更する。
(1) 被控訴人会社は,控訴人に対し,676万8507円及び内金650万7984円に対する平成8年2月27日から,内金26万0523円に対する平成11年5月1日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(2) 控訴人の被控訴人会社に対するその余の請求を棄却する。
2 控訴人の被控訴人Bに対する控訴を棄却する。
3 本件附帯控訴を棄却する。
4 訴訟費用は,第1,2審を通じて,控訴人と被控訴人会社との間においては,控訴人に生じた費用と被控訴人会社に生じた費用の各4分の3を控訴人の負担とし,その余を被控訴人会社の負担とし,控訴人と被控訴人Bとの間においては控訴人の負担とする。
5 主文1項(1)のうち,原審の認容額を超えて支払を命じる部分は,仮に執行することができる。
事実及び理由
当事者の求めた裁判
1 控訴の趣旨(1) 原判決主文3項及び4項中,被控訴人会社及び被控訴人Bに関する部分を次のとおり変更する。
(2) 被控訴人会社及び被控訴人Bは,各自,控訴人に対し,3000万円及び内金2800万円に対する平成8年2月27日から,内金200万円に対する平成11年5月1日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(3) (2)について仮執行宣言2 附帯控訴の趣旨(1) 原判決中,被控訴人会社敗訴部分を取り消す。
(2) 控訴人の被控訴人会社に対する請求を棄却する。
[以下,「第2 事案の概要」,「第3 争点に関する当事者の主張」及び「第4 当裁判所の判断」の部分は,原判決「事実及び理由」中の「第二 事案の概要」,「第三 争点に対する当事者の主張」の一ないし六及び「第四 争点に対する判断」の一ないし六の部分を付加訂正した。ゴシック体太字の部分が,当審において,内容的に付加訂正を加えた主要な箇所である。それ以外の字句の訂正,部分的削除等については,特に指摘していない。]
事案の概要
本件は,発明の名称を「複層タイヤ」とする特許発明の特許権者である控訴人が,被控訴人会社並びにその代表取締役である被控訴人B及び取締役であるその余の原審相被告らに対し,被控訴人会社の製造,販売する複層タイヤは同発明の技術的範囲に属すると主張して,その差止め等と損害賠償を請求した事案である。
原審は,控訴人の被控訴人会社に対する,原判決添付別紙イ号物件目録(以下,「別紙」はすべて原判決添付のものである。)及び別紙ロ号物件目録記載の各物件(以下,順次「イ号物件」,「ロ号物件」という。)を製造し,販売し,又は販売のために展示する行為の差止め,被控訴人会社保管に係るイ号物件及びロ号物件の廃棄請求を認容し,損害賠償請求については,676万8486円及び内金648万2669円に対する平成8年2月27日から,内金28万5817円に対する平成11年5月1日から,各支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で一部認容し,被控訴人会社に対するその余の請求並びに被控訴人B及びその余の原審相被告らに対する請求をいずれも棄却した。
そこで,控訴人が,被控訴人会社及び同社の代表取締役である被控訴人Bに対する関係での棄却部分を不服として,同人らに対し,各自3000万円及びこれに対する遅延損害金の支払を求める限度で一部控訴し,被控訴人会社も,原判決中被控訴人会社に対する控訴人の請求を認容した部分を不服として附帯控訴を提起した。
1 争いのない事実等(1) 当事者 控訴人は,タイヤの修理及び販売,自動車の販売及びリース,レンタル等を目的とする株式会社である。
被控訴人会社は,生成ゴム材料の販売,中古タイヤの販売,産業廃棄物処分業等を目的とする株式会社であり,被控訴人Bはその代表取締役である。
(2) 控訴人の特許権 控訴人は,以下の特許権(以下「本件特許権」といい,特許請求の範囲1項の発明を「本件第1発明」,同3項の発明を「本件第3発明」,本件第1発明及び本件第3発明を合わせて「本件発明」という。)を有している。
ア 発明の名称 複層タイヤイ 出願日 昭和59年3月16日(特開昭59―51589)ウ 出願公告日 平成2年8月30日(特公平2―38401)エ 登録日 平成3年7月15日オ 特許番号 第1610830号カ 特許請求の範囲は,別紙特許公報(以下「本件公報」という。)の該当欄記載のとおりである。
(3) 本件第1発明及び本件第3発明は,次のとおり分説される。
ア 本件第1発明A クラウン部のトレッドパターンを切削して,ショルダー部及びクラウン部の外表面を滑かに仕上げると共にタイヤ内部に装着された気密性を保つためのチューブの圧力に抗する内装タイヤと,B 一方のサイドウォール部の中央よりビード部寄りで切断し,リムに固定するビード部を一方のみとした外装タイヤからなり,C 上記外装タイヤの内部に上記内装タイヤを装着してなることを特徴とする複層タイヤ。
イ 本件第3発明A’ 外表面を滑かに仕上げ,タイヤ内部に装着された気密性を保つためのチューブの圧力に抗する内装タイヤと,B’ 一方のビード部またはビード部及びレインフォース部を有せず,リムに固定するビード部を一方のみとした外装タイヤからなり,C’ 上記外装タイヤの内部に上記内装タイヤを装着してなることを特徴とする複層タイヤ。
(4) 本件発明の作用効果は,外装タイヤの内部に内装タイヤを装着することによって,チューブの内圧が内装タイヤによって保持され,外装タイヤに受けた外傷は,内圧の影響を受けて広がることがないから,外装タイヤを摩耗するまで使用できることにある。
(5) 被控訴人会社は,外装タイヤの内部に内装タイヤを装着してなる複層タイヤを製造,販売している(なお,上記複層タイヤの構成については,後記第3の1のとおり,控訴人,被控訴人間に争いがある)。
2 争点(1) 被控訴人会社が製造,販売した複層タイヤの性状(2) 被控訴人会社が製造,販売した複層タイヤは,本件発明の技術的範囲に含まれるか。
(3) 被控訴人会社が台タイヤを製造,販売した行為は,本件特許権を侵害するといえるか。
(4) 被控訴人Bの責任(5) 損害の発生及び額(6) 製品及び半製品の廃棄並びに複層タイヤ製造機の除去請求について
争点に対する当事者の主張
1 争点1(被控訴人会社が製造,販売した複層タイヤの性状)〔控訴人の主張〕(1) 被控訴人会社が製造,販売する複層タイヤは,イ号物件又はロ号物件(両者の違いは,外表面を滑らかに仕上げる方法として,イ号物件が摩耗によるのに対し,ロ号物件が切削によるという点にある。)のどちらかのタイプのものである。
(2) 上記事実は,次の各事実から明らかである。
ア イ号物件に相当する複層タイヤ(検甲1)は,控訴人が株式会社佐藤工務店(以下「佐藤工務店」という。)に依頼し,佐藤工務店から木村タイヤ株式会社(以下「木村タイヤ」という。)に対し,被控訴人会社の製造した複層タイヤを1本注文してもらい,平成7年11月2日に佐藤工務店に納入されたものである。
イ ロ号物件に相当する複層タイヤ(検甲2)は,控訴人の補佐人である弁理士樋口武尚(以下「樋口弁理士」という。)が大東建設株式会社の社長C(以下「C」という。)に依頼し,Cから木村タイヤを介して被控訴人会社が製造した複層タイヤを2本注文してもらい,平成8年2月5日ころ樋口弁理士の下に納入されたもののうちの1本である。
なお,木村タイヤは,トーヨータイヤ兵庫販売株式会社(以下「トーヨータイヤ兵庫販売」という。)に上記複層タイヤに用いる再生タイヤ2本を注文し,被控訴人会社は,トーヨータイヤ兵庫販売から,平成8年1月24日発送の上記再生タイヤ2本を受領している。
ウ 控訴人は,平成9年2月13日,吉田直土木株式会社(以下「吉田直土木」という。)阪奈作業所から,使用済みの複層タイヤ26本を引き取ったところ,そのうち6本はイ号物件又はロ号物件に該当する複層タイヤであった。
上記6本のタイヤは,西日本タイヤ株式会社(以下「西日本タイヤ」という。)が平成7年12月28日及び平成8年1月12日に,被控訴人会社から合わせて8本仕入れ,それを吉田直土木に納入したものである。
エ 樋口弁理士は,平成10年5月20日,株式会社関西タイヤリサイクルセンター(以下「関西リサイクルセンター」という。)において,被控訴人会社が製造したと思われる切削したタイヤを確認した。
オ 外装タイヤに1ランク下の規格の内装タイヤを装着するためには,内装タイヤのクラウン部からショルダー部にかけて丸みを持たせる必要があるから,被控訴人会社が製造する複層タイヤの内装タイヤの外表面も上記のような状態になっていると考えられる。
カ(当審における追加主張) 甲71の写真5に示すように,ORタイヤの複層タイヤ(B型タイヤ)は,外装タイヤと内装タイヤとが客観的にみてほぼ密接すること及び外装タイヤと内装タイヤとの摩擦で溶けて変形したという痕跡がないことから,内装タイヤを外装タイヤに装着する前に,内装タイヤの外表面を切削加工したものであることは明らかである。また,ORタイヤのクラウン部の厚みが新品のORタイヤよりも薄くなっていることは,測定結果から客観的に明らかである。
〔被控訴人らの主張〕(1)ア 控訴人の主張(1)は否認する。
イ(ア) 控訴人の主張(2)アについて 検甲1の複層タイヤは,控訴人のもとで外装タイヤと内装タイヤが分離されているから,製造,販売当時の形状を示す証拠とはならない。
また,検甲1の複層タイヤが被控訴人会社の製造したものであるということについては,「購入する際,関西ゴム産業と指定した。」との控訴人代表者の主張以外には積極的証拠がなく,その証明はない。
(イ) 控訴人の主張(2)イについて 被控訴人会社が,平成8年1月24日ころ,トーヨータイヤ兵庫販売から,再生タイヤ2本を受領したこと,同じころ,木村タイヤに対し,上記再生タイヤを用いた複層タイヤを2本販売したことは認めるが,上記2本のタイヤのうちの1本がロ号物件に相当する複層タイヤであることは否認する。控訴人の主張する入手経路は,通常の流通経路とは異なる上,被控訴人会社が木村タイヤに出荷してから樋口弁理士のもとに到達するまで10日を要し,その間多くの人手を経ているから,検甲2の複層タイヤは,被控訴人会社が製造したタイヤの形状を示す証拠としての信用性は低い。
(ウ) 控訴人の主張(2)ウについて 被控訴人会社が,西日本タイヤに対し,平成7年12月28日及び平成8年1月12日に,複層タイヤを合わせて8本販売したことは認めるが,その余の事実は否認する。
上記各複層タイヤは,内装タイヤの外表面が,切削してあったり,凹状に陥没したりするもので,被控訴人会社が製造するものとは異なる上,上記各内装タイヤは3種類の方法で切削されていることからすると,複数の会社により製造されたものである。
また,被控訴人会社が販売してから控訴人が入手するまでに1年以上経過しているから,上記各複層タイヤが被控訴人会社が製造したものと同一であることの証明力はないに等しい。
(エ) 控訴人の主張(2)エについて 関西リサイクルセンター内にあった切削したタイヤが被控訴人会社が製造したものであるとの控訴人の主張は,単なる推測にすぎず,何ら根拠はない。
(オ) 控訴人の主張(2)オについて 外装タイヤより1ランク下の規格の内装タイヤであっても,中古のものであれば,外表面が滑らかに仕上げられていなくても,装着可能である。
ウ(ア) 被控訴人会社は,手元にある中古タイヤを外装タイヤ及び内装タイヤとして適宜組み合せて複層タイヤを製造しており,内装タイヤの外表面を切削する必要はなく,実際,切削していない。
(イ)(当審における追加主張) 被控訴人会社が製造,販売した複層タイヤは,顧客がタイヤを持ち込んだ場合等を除き,中古タイヤを材料とする燃料用ゴムチップの製造及び販売並びに中古タイヤの販売を主たる事業とする被控訴人会社の事業のごく一部として,たまたま存する中古タイヤを組み合わせて製造するものであり,被控訴人会社は,かかる複層タイヤの製造,販売を昭和40年代から行ってきた。したがって,被控訴人会社は,複層タイヤの製造,販売を控訴人による本件特許出願前から当然のこととして行ってきたのであり,製造過程も上記のようなものであるから,過去に製造した複層タイヤの形状についての記録が残存していない。検乙1の複層タイヤは,通常の製造方法と全く同一の方法によって製造されたものであるから,被控訴人会社が製造,販売した複層タイヤと同一の形状であると認定すべきである。
(2) 被控訴人会社は,別紙「A型及びB型タイヤ販売一覧表」並びに別紙「C型及びD型タイヤ販売一覧表」に記載のとおり,A型ないしD型タイヤを販売したが,その構成は,次のとおりである。
ア A型及びB型タイヤ A型タイヤの外装タイヤは,ナイロンタイヤ(大きさは,10.00―20,9.00―20,8.25―20,7.50―15又は16〔注・上記10.00―20の10.00はタイヤの断面幅,20はリム径をそれぞれインチで表示したもの〕)であり,片ビードを切断してある。
B型の外装タイヤは,ナイロンタイヤ(大きさは,23.5―25,20.5―25,17.5―25,14.00―24,13.00―24の大型のもの)であり,「ORタイヤ」又は「ジャンボタイヤ」と呼ばれているオフロードタイプのものであり,片ビードを切断してある。
A型及びB型タイヤの内装タイヤは,両ビードを切断せず,その外表面を切削しておらず,トレッドパターンの凹凸を有する中古のタイヤである(ただし,トーヨージャイアントタイヤ販売株式会社(以下「トーヨージャイアント」という。)に販売したものは,新品の内装タイヤが用いられている。)。
具体的な構成は,別紙被控訴人主張物件目録(検乙1のタイヤに相当するもの)に示すとおりである。
イ C型タイヤ 外装タイヤは,スチールタイヤ(大きさは,10.00R20)であり,両ビードは切断できないため,切断していない。
内装タイヤは,両ビードをビード部とサイドウォール部の境界付近で斜めに切断した中古のタイヤである。
ウ D型タイヤ 外装タイヤは,ナイロンチューブタイヤで,両ビードを切断している。
内装タイヤは,ノーパンクタイヤで,両ビードを切断していない新品又は中古のタイヤである。
エ 当審における控訴人の主張に対する反論(ア) B型の二重タイヤにおいて,内装タイヤに新品の切削しないタイヤを用いたとしても,これが外装タイヤに組み込まれ,商品として販売され,使用されることは可能である。ビート部を切断しない側においても,外装タイヤと内装タイヤのビード部がリムの外周面に近似しているのであって,取付けに何らの困難がないものである。
(イ) 被控訴人会社は,甲71,73 の複層タイヤの加工において,内装タイヤに新品タイヤを用いた。これと同様の複層タイヤは,被控訴人会社が製造し,トーヨージャイアントにより約15年以上にわたって発売され,その間,一度もクレームを受けていないから,商品価値を十分有したものである。
〔被控訴人らの主張に対する控訴人の反論〕(1) 検乙1の複層タイヤは,被控訴人会社が本件訴訟提起後に見本として製造したものであって,被控訴人会社が実際に製造,販売したものと同一であるとはいえない。
(2) C型タイヤについて ラジアルタイヤのビードは切断できないことはないから,外装タイヤがラジアルタイヤであるとの理由から,その両ビードが切断されていないものであるということはできない。
内装タイヤの両ビードを切断した場合,外装タイヤと内装タイヤとの境界にギャップが発生し,すぐにパンクしてしまい使用できない。
(3) D型タイヤについて 被控訴人会社が株式会社吉本商店に販売した複層タイヤについては,外装タイヤの両ビードが切断されたものであることは認めるが,被控訴人らがD型タイヤを販売したと主張するその余の取引先については,外装タイヤの両ビードが切断された複層タイヤであることは否認する。
被控訴人らがD型タイヤのみを販売したと主張する有限会社タイヤショップ松井の社長D(以下「D」という。)は,控訴人代理人に対し,被控訴人会社から購入した複層タイヤの外装タイヤは一方のビード部を切断したものである旨回答している。
外装タイヤの両ビードを切断した場合,内装タイヤに固定するのが極めて困難になるから,被控訴人会社が,そうした複層タイヤを販売することは考えにくい。
(4) 当審における追加主張 新品又は中古のタイヤからなる内装タイヤの場合,内装タイヤのクラウン部とショルダー部との境界部分を切削しなくては,これを外装タイヤに組み込むことはできない。トラック等の大型車両用のタイヤは,クラウン部のみが厚くなっており,そのためクラウン部とショルダー部との境界が角張っているから,仮にこれを外装タイヤに挿入できたとしても,内装タイヤのクラウン部とショルダー部との境界が外装タイヤにぶつかり,外装タイヤの内面に内装タイヤの外面が接触できず,かつ,内装タイヤのビード部がリム外周面から突出する位置となり,外装タイヤの一方のビード部と内装タイヤの両ビード部がリム外周面に一致することがない。したがって,実用に供する複層タイヤとすることはできない。
中古タイヤからなる内装タイヤも,使用によりクラウン部が摩耗していても,クラウン部とショルダー部との境界の摩耗変化は少ないから,複層タイヤとして取り付けることはできない。
2 争点(2)(被控訴人会社が製造,販売した複層タイヤは,本件発明の技術的範囲に含まれるか。)〔控訴人の主張〕(1) イ号物件の構成α,βは第3発明の構成要件A’を,同γは構成要件B’を,同δは構成要件C’をそれぞれ充足するから,イ号物件は,本件第3発明の技術的範囲に属する。
ロ号物件の構成α,βは第1発明の構成要件Aを,同γは構成要件Bを,同δは構成要件Cをそれぞれ充足するから,ロ号物件は,本件第1発明の技術的範囲に属する。
(2) 被控訴人らがD型タイヤと主張するタイヤについて 内装タイヤについては,ノーパンクタイヤといっても,大型タイヤの場合は,チューブに空気の代わりに「発砲ウレタン」を入れるものであり,この場合,本件発明の「タイヤ内部に装着された気密性を保つためのチューブの圧力に抗する内装タイヤ」であることは間違いない。したがって,本件発明の課題の「特殊なトレッドベルトを使用することなく,市販されているタイヤを切削加工し,これらのタイヤを二重にすることによって,タイヤの寿命を延長すること」に基づくものである。
(3)(当審における追加主張)ア 「外表面を滑かに仕上げる」処理は,クラウン部のトレッドパターンをなくすこととは関係がない。外装タイヤに内装タイヤが入るようにし,かつ,外装タイヤと内装タイヤの自己形状維持力によって接合できる状態に,外装タイヤに内装タイヤが面接触すれば足りることである。
イ 甲71のORタイヤの内装タイヤは,クラウン部のトレッドパターン及びショルダー部の外表面を切削して,外表面を滑らかに仕上げたものである。また,仮に内装タイヤの外表面を切削加工したものでないとしても,客観的測定データとして内装タイヤのクラウン部が新品よりも摩耗したものであるから,本件第1発明及び本件第3発明の「外表面を滑かに仕上げ」に対応する本件公報9欄37ないし42行記載の実施態様に対応するものである。
〔被控訴人らの主張〕(1) 本件発明における「外表面を滑かに仕上げ」とは,明細書の記載からすると,内装タイヤの外表面を,トレッドパターンの凹凸を除去して外装タイヤの内面の表面状態と同程度にまで仕上げることを意味すると解すべきである。
本件発明の出願前に公知であった実公昭58―32966号実用新案公報(乙1)に記載の技術と本件発明とを比較すると,内装タイヤの外表面にトレッドパターンを有するか否かの点を除き,すべての構成が共通しているから,内装タイヤの外表面にトレッドパターンを有するものが本件発明の技術的範囲に含まれると解することはできない。
(2) 上記解釈を前提とすると,別紙被控訴人主張物件目録記載の構成のA型及びB型タイヤは,内装タイヤの外表面にトレッドパターンの凹凸を有するから,本件第1発明の構成要件A及び本件第3発明の構成要件A’を備えていない。
また,外装タイヤの両ビード部を切断せず,内装タイヤの両ビード部を切断したC型タイヤ,及び外装タイヤの両ビード部を切断し,内装タイヤにノーパンクタイヤを用いたD型タイヤは,いずれも,本件第1発明及び本件第3発明の技術的範囲に属さない。
(3)(当審における追加主張) 甲71の写真5の複層タイヤは,内装タイヤのクラウン部のトレッドパターンが非常にはっきりと凸凹を残したままであることは明らかであり,「外表面を滑かに仕上げ」たとは到底いえず,本件発明の要件を具備しない。また,甲71の調査の対象たる複層タイヤについては,被控訴人会社の行為は,これをトーヨージャイアントに引き渡した時点で終了しており,上記引渡の時点から調査時点までに,仮に内装タイヤに何らかの形状の変化があったとしても,これは被控訴人会社とは何ら関係がない。
さらに,D型タイヤである複層タイヤは,内装タイヤのチューブ内にウレタンを充填するものであって,内装タイヤ内にはもはや空気は存しておらず,「気密性を保つためのチューブ」はもはや存在しない。
3 争点(3)(被控訴人会社が台タイヤを製造,販売した行為は,本件特許権を侵害するといえるか。)〔控訴人の主張〕 被控訴人会社が製造,販売した台タイヤのうち大きさが8.25R以上のものは,本件発明の技術的範囲に属する複層タイヤの内装タイヤとして出荷されたものであるから,上記台タイヤの製造,販売行為は,侵害行為を組成した物の譲渡(特許法102条1項参照)に該当する。
〔被控訴人らの主張〕 中古タイヤのトレッド部分を取り除き新しいトレッドを張り付けることにより再生したタイヤを「再生タイヤ」という(「更生タイヤ」ともいう。)が,被控訴人会社は,タイヤ販売店等から中古タイヤを取得して,再生タイヤ用の台タイヤとして流通業者や再生タイヤ業者に販売している。
したがって,被控訴人会社が販売している台タイヤは,複層タイヤとは関係がない。
4 争点(4)(被控訴人Bの責任)〔控訴人の主張〕 被控訴人Bは,被控訴人会社の代表取締役として,その職務の遂行として被控訴人製品を製造,販売したから,控訴人に対し,民法709条による損害賠償責任を負う。
〔被控訴人Bの主張〕 控訴人の上記主張は争う。
5 争点5(損害の発生及び額)〔控訴人の主張〕(1) 複層タイヤ及び台タイヤの製造,販売に伴う損害ア 主位的請求(ア) 被控訴人会社は,平成2年5月1日から平成11年4月30日までの間に,本件第1発明もしくは本件第3発明を侵害する複層タイヤを少なくとも1789本製造,販売した。
被控訴人会社の上記販売行為がなければ販売することができた複層タイヤの1本当たりの控訴人の利益は4万円であるから,特許法102条1項により,控訴人の被った損害は,7156万円となる。
(イ) 台タイヤについて 被控訴人会社は,平成2年5月1日から平成8年4月30日までの間に,台タイヤ5549本を製造,販売したが,そのうち少なくとも10分の1の554本は,複層タイヤの内装タイヤ用に製造,販売されたものである。
被控訴人会社は,平成8年5月1日から平成11年4月30日までの間に,複層タイヤの内装タイヤ用として,台タイヤ14本を販売した。
被控訴人会社の上記台タイヤ合計568本の製造,販売行為は,本件特許権を侵害する行為に該当するところ,被控訴人会社の上記行為がなければ販売することができた複層タイヤの1本当たりの控訴人の利益は4万円であるから,控訴人の被った損害は,2272万円となる。
イ 予備的請求(ア) 特許法102条3項に基づき,実施料相当損害金を請求する。
(イ) 当審における追加主張 特許法102条3項にいう「その特許発明実施に対し受けるべき金銭の額」とは,侵害者に対しては,侵害事実を踏まえて通常の取引契約の実施料より高く設定されるべきである。そうでなければ,侵害のやり得,侵害の誘発・誘導を招くといわなければならない。実施料率5%は実施契約を締結した場合に比較的多い割合なので,本件のような侵害事例の損害賠償を算定するときには7%ないし10%とすべきである。
また,実施料率に乗ずべき販売価格としては,エンドユーザーに対する小売価格を採るべきである。
控訴人は,A型タイヤについては販売実績があり,そのA型タイヤの販売価格は1本当たり7万5000円であるので,これを実施料算定の基準とすべきである。控訴人以外の業者は,特許権侵害者による価格破壊値段であり,実施料率の算定の基礎として考えるべきではない。
控訴人にはB型タイヤの販売実績はないので,大物タイヤー株式会社(以下「大物タイヤー」という。)の販売価格10万4545円ないし11万5000円,有限会社オーアールタイヤ商会(以下「オーアールタイヤ商会」という。)の販売価格3万円ないし4万円,木村タイヤの販売価格7万円,トーヨージャイアントの販売価格40万円,西日本タイヤの販売価格7万円(推定)を基礎にして算定すべきである。
(2) 弁護士費用及び弁理士費用 本件訴訟に係る弁護士費用及び弁理士費用としては630万円(平成2年5月1日から平成8年2月20日までの損害に対応した上記費用525万円,平成8年2月21日から平成11年4月30日までの損害に対応した上記費用105万円)が相当である。
(3) 被控訴人の主張に対する反論ア 被控訴人会社の平成2年8月30日から平成8年2月20日までの期間のA型タイヤ販売数量である769本は,1年当たり139本,平成8年2月21日から平成11年4月30日までの期間の34本は,1年当たり10本である。この程度の数量について控訴人に実施能力のあることは,控訴人の複層タイヤ出荷の実績からも明らかである。そうであるとすれば,特許法102条1項による損害の基礎としては,803本全部とすべきである。
イ 代替する製品の存在により販売数量が減少した事実があったとしても,被控訴人会社が現実に製造,販売した複層タイヤについては,実際にも販売できたのであるから,代替する製品の存在をもって新会社の販売実績から更に減算するのは論理矛盾である。
(4) 控訴人は,被控訴人らに対し,@ 平成2年5月1日から平成8年2月20日までの上記1の損害及び上記2の弁護士費用及び弁理士費用の内5000万円及びこれに対する訴状送達の日である平成8年2月27日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金,A 平成8年2月21日から平成11年4月30日までの上記1の損害及び上記2の弁護士費用及び弁理士費用の内1105万円及びこれに対する不法行為の後の日である平成11年5月1日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の各支払を求める。
〔被控訴人らの主張〕(1) 控訴人の上記主張は争う。
(2) 控訴人には,被控訴人会社が加工又は加工販売した数量の複層タイヤを販売できたとはいえない次のような事情がある。
ア 本件訴訟において陳述書を提出した被控訴人会社の販売先14社のうち,西日本タイヤ及びトーヨージャイアントは,控訴人のことを知っていたものの,自ら控訴人から複層タイヤを購入したことはなく,その余の取引先は控訴人の存在を知らなかった。
イ 控訴人の複層タイヤの売値は,控訴人の主張によれば7万5000円である一方,被控訴人会社の売値は,A型タイヤが2000円から1万円,B型タイヤが8000円から7万円,C型タイヤが1万円から1万2000円,D型タイヤが5000円から1万円である。
ウ 複層タイヤ自体に対する需要が近年減退しており,複層タイヤに代替する製品も多々存する。
(3) 当審における追加主張ア 控訴人の複層タイヤは,外装タイヤに新品タイヤ,内装タイヤに中古タイヤを用いたものであるが,被控訴人会社が取り扱った複層タイヤは,A型ないしD型タイヤのいずれも顧客が自ら新品タイヤを持ち込んで加工を依頼した場合の例外を除き,外装タイヤ及び内装タイヤともすべて中古タイヤである。また,被控訴人会社が販売する複層タイヤは,チューブ,フラップ,ホイールを伴わないところ,これらは使用者が中古のものを使用するか,自ら調達することが多いものであって,タイヤを交換するごとにこれらを交換する(購入する)とは考え難い。さらに,特にホイールは金属製であって,チューブやフラップと比較して交換の頻度は更に低い。したがって,価格のみならず製品の性質上,控訴人の製品と被控訴人会社の製品とは異なるものであり,被控訴人会社の製品に代替して控訴人の製品が販売される可能性はない。
また,新品チューブの小売価格は,概ね4000円から4500円程度,新品フラップの小売価格は,概ね2000円から2500円程度,ホイールの小売価格は,概ね1万5000円から1万8000円程度である。したがって,仮にこれら新品の小売価格の合計をしたとしても,2万1000円から2万5000円程度である。被控訴人会社が販売していたA型タイヤである複層タイヤの売値は1500円から1万円であり,この部分に小売りのための利潤を上乗せしたとしても,全体として小売り段階で7万円から7万5000円になるとは到底考えられない。
このような控訴人の製品と被控訴人会社の製品の価格差を考慮すると,結局,仮に被控訴人会社の製品がなかったとしても,控訴人は,自らの製品を販売できなかったものであるから,特許法102条1項但書により,損害はなかったこととなる。
イ そもそも,複層タイヤは,実用上,内装タイヤの「外表面を滑かに仕上げ」る必要が全くない。したがって,本件発明の実施価値は極めて低いものであって,この点からも控訴人主張の実施料率はもとより,原判決認定の実施料率も高きに過ぎるものである。
6 争点(6)(製品及び半製品の廃棄並びに複層タイヤ製造機の除去請求について)〔控訴人の主張〕 控訴人は,特許法100条2項に基づき,被控訴人会社に対し,その保管に係るイ号物件及びロ号物件並びに同各物件の材料である外装タイヤ及び内装タイヤの廃棄とともに,本件特許権を侵害するイ号及びロ号物件の複層タイヤを製造する設備である別紙機械目録記載の複層タイヤ製造機の除去を求めることができる。
〔被控訴人らの主張〕 控訴人の主張は争う。
当裁判所の判断
1 争点(1)(被控訴人会社が製造,販売した複層タイヤの性状)について 証拠(乙8〜41,42の1.2,43〜62)及び弁論の全趣旨によれば,被控訴人会社は,別紙「A型及びB型タイヤ販売一覧表」並びに別紙「C型及びD型タイヤ販売一覧表」記載のとおり,複層タイヤを販売したことが認められる(ただし,後記5(1)アのとおり販売本数が一部不正確である。なお,藤田タイヤ工業所に販売したA型タイヤとして,品番の欄に「内装タイヤ」と記載されているものは,外装タイヤとともに販売したものであるから,金額を合計する際にその金額を加算してあるが,数量を合計する際にはその数は加算していない。)。
A型ないしD型タイヤの各形状は,次のとおりである。
(1) A型タイヤについてア A型タイヤは,外装タイヤの一方のビード部を切断し,リムに固定するビード部を一方のみとしたものであること,ビード部の上記切断位置がサイドウォール部の中央よりビード部寄りであることは,当事者間に明らかに争いがない。
イ(ア) 検甲1の複層タイヤの入手経路について,証拠(甲5,6,8,16〜18,検証の結果)によれば,次の事実が認められる。
控訴人代表者のAは,被控訴人会社が本件特許権を侵害する疑いのある複層タイヤを製造しているとの情報を得たことから,佐藤工務店に対し,佐藤工務店の名で木村タイヤに対し関西ゴムを指定して複層タイヤを1本注文してもらうように依頼した。
佐藤工務店は,上記依頼に従って木村タイヤに注文したところ,平成7年11月2日,木村タイヤから,複層タイヤが1本納入されたので,同複層タイヤを控訴人方に送付し,それを樋口弁理士の事務所に運び込んで,弁理士萬田正行に鑑定を依頼し,同弁理士の立会いのもとで外装タイヤと内装タイヤとを分解して写真を撮影した後,再度複層タイヤに戻し,控訴人は,同タイヤを検甲1として原審裁判所に提出した。そして,平成8年12月10日の原審における検証手続において,検甲1の外装タイヤを切断し内装タイヤを分離して,検証が実施された。
(イ) なお,被控訴人らは,検甲1の複層タイヤは控訴人のもとで外装タイヤと内装タイヤが分離されているから,製造,販売当時の形状を示す証拠とはならない旨主張するが,上記入手経路,分解の経緯が不自然なものということはできず,これらの過程において,検甲1の内装タイヤが付け替えられたことを疑わせるに足りる事情はないし,その他,検甲1の複層タイヤが被控訴人会社の製造に係るものであることを覆すに足りる証拠はない。
(ウ) そして,証拠(甲5,検甲1,検証の結果)によれば,検甲1の複層タイヤは,外装タイヤは,大きさが10.00―20で,一方のビード部が切断されたものであり,内装タイヤは,大きさが8.25R20で,ショルダー部が削られ,その外表面は,トレッドパターンが摩耗してその溝がかなり浅くなり,少なくとも極端な凹凸のない状態であることが認められる。
ウ(ア) 検甲2の複層タイヤの入手経路について,被控訴人会社が,平成8年1月24日ころ,トーヨータイヤ兵庫販売から,再生タイヤ2本を受領したこと,同じころ,木村タイヤに対し,上記再生タイヤを用いた複層タイヤを2本販売したことは当事者間に争いがなく,証拠(甲9の1〜3,4及び5の各イ,ロ,10の1〜3,11の1〜3,13,16,18,19の1・2,26,27の2,乙13)によれば,次の事実が認められる。
樋口弁理士は,平成8年1月20日ころ,Cに木村タイヤ及び被控訴人会社に複層タイヤの購入を依頼し,承諾を得たため,同月23日,その旨ファクシミリにて送信した。
木村タイヤは,Cから上記依頼を受け,トーヨータイヤ兵庫販売に対し,外装タイヤにするための再生タイヤ2本を被控訴人会社に送付することとして1本1万円で発注するとともに,被控訴人会社に対し,同再生タイヤを用いた複層タイヤ2本を1本5000円で発注した。
被控訴人会社は,同月24日,トーヨータイヤ兵庫販売から再生タイヤ2本の送付を受け,それを用いて複層タイヤ2本を製造し,同年2月1日,Cのもとに運賃着払いで送付した(なお,上記複層タイヤ2本の送付の際の送り状(甲9の4のロ)の出荷主欄に「トーヨータイヤ兵庫販売」と記載されているが,甲11の1・3,13に徴すると,被控訴人会社は,トーヨータイヤ兵庫販売から送付を受けた再生タイヤ2本を用いて複層タイヤ2本を製造した後,これをトーヨータイヤ兵庫販売を経由することなく直接Cのもとに送付したものと認められる。)。
Cは,上記2本の複層タイヤを樋口弁理士の事務所に送付し,樋口弁理士が,平成8年2月7日,上記タイヤを受け取って駐車場に保管していたが,控訴人は,そのうちの1本を検甲2として原審裁判所に提出し,他の1本は,平成9年2月8日に同事務所において分解し写真撮影をした後,再度組み立てて保管することとした。そして,平成8年12月10日の検証手続において,検甲2の外装タイヤを切断し内装タイヤを分離して,検証が実施された。
(イ) 被控訴人らは,上記入手経路は,通常の流通経路とは異なること,樋口弁理士のもとに到達するまでの期間,多くの人手を経ていること等を理由に,検甲2の信用性が低い旨主張するが,上記入手経路が不自然なものということはできないし,その他,検甲2の複層タイヤが被控訴人会社の製造に係るものであることを覆すに足りる証拠はない。
(ウ) 証拠(甲20,検甲2,検証の結果)によれば,上記2本の複層タイヤは,外装タイヤは,大きさが10.00―20で,一方のビード部が切断されたものであり,内装タイヤは,大きさが9.00―20で,ショルダー部とクラウン部が削られ,トレッドパターンが摩耗してその凹凸がほとんどない状態になっていることが認められる。
エ 控訴人が吉田直土木から引き取った複層タイヤについて,被控訴人会社が,西日本タイヤに対し,平成7年12月28日及び平成8年1月12日に,合わせて8本販売したことは争いがなく,証拠(甲29の7〜9,30〜33)によれば,西日本タイヤは,吉田直土木に対し,平成8年1月12日及び同月22日にそれぞれ4本ずつ複層タイヤを販売したこと,控訴人は,平成9年2月13日,吉田直土木から使用済み複層タイヤ26本を引き取ったところ,そのうちの6本の複層タイヤが外装タイヤの一方のビード部が切断されたタイプのものであったこと,控訴人代理人及び樋口弁理士において,控訴人の要請を受け,同年4月26日,上記6本のタイヤについて実況見分したが,そのうち2本のタイヤから内装タイヤを取り出したところ,いずれも両ビード部が切断されていないタイヤであり,1本はトレッドパターンの凹凸が全く残らない程度に切削されたもの,他の1本はトレッドパターンの凹凸が残ってはいるものの極端な凹凸が生じない程度に切削されたものであったことが認められる。
そして,上記事実に吉田直土木の阪奈作業所長E男が,上記6本のタイヤは西日本タイヤから購入したと述べていること(甲28の1)を併せ考慮すると,上記6本の複層タイヤについても,被控訴人会社が製造したものであると推認することができる。
オ なお,控訴人は,樋口弁理士が平成10年5月20日関西リサイクルセンターにおいて被控訴人会社が製造したと思われる切削したタイヤを確認した旨主張し,樋口弁理士作成の実況見分報告書(甲34)には,同趣旨の記載があるが,関西リサイクルセンターにおいて確認したタイヤが被控訴人会社の製造に係るものであることについて,樋口弁理士の推測以外に何ら客観的な根拠がないといわざるを得ず,上記証拠は,被控訴人会社が製造したタイヤの状況を示す証拠としては採用できない。
カ そうすると,被控訴人会社が販売したA型タイヤは,そのすべての形状を示す証拠はないものの,上記イ及びウ記載のとおり,検甲1及び検甲2の複層タイヤは,いずれも外装タイヤの断面幅が10インチ,リム径が20インチのサイズであり,かつ,一方のビード部が切断され,リムに固定するビード部を一方のみとしたものであるので,A型タイヤに属するものであると認められ,また,前記エのとおり,控訴人が吉田直土木から入手した6本の複層タイヤも,そのサイズからA型タイヤに属すると認められるところ,外装タイヤの一方のビード部が切断され,そのうち2本のタイヤから内装タイヤを取り出したところ,いずれも両ビード部が切断されていないタイヤであり,1本はトレッドパターンの凹凸が全く残らない程度に切削されたもの,他の1本はトレッドパターンの凹凸が残ってはいるものの極端な凹凸が生じない程度に切削されたものであり,逆にA型タイヤの中に検甲1又は検甲2の複層タイヤとは異なる形状のものが存在することを推認させる反証もないから,A型タイヤは,検甲1又は検甲2の複層タイヤ,すなわち,イ号物件又はロ号物件のいずれか(検甲1の複層タイヤがイ号物件の,検甲2の複層タイヤがロ号物件の各形状を有することは弁論の全趣旨から認められる。)に相当するタイヤであることが推認できるというべきであり,上記推定を覆すに足りる証拠はない。
キ この点について,被控訴人らは,検乙1の複層タイヤは通常の製造方法と全く同一の方法によって製造されたものであるから,被控訴人会社が製造,販売した複層タイヤと検乙1の複層タイヤが同一の形状であると認定すべきであると主張する。
しかしながら,検乙1の複層タイヤは,タイヤのサイズからA型タイヤに属するものといえるが,控訴人から本件訴訟を提起された後,被控訴人会社において製造したものであるから,前記カの従前製造販売されたA型タイヤが検甲1ないし検甲2に相当する複層タイヤであるとの推認を覆すものではない。したがって,被控訴人らの上記主張を採用することはできない。
(2) B型タイヤについてア B型タイヤは,外装タイヤの一方のビード部を切断し,リムに固定するビード部を一方のみとしたものであること,ビード部の上記切断位置はサイドウォール部の中央よりビード部寄りであることは,当事者間に明らかに争いがない。
イ(ア) 証拠(甲72,乙46,63,72の1〜7)によれば,B型タイヤは,「ORタイヤ」又は「ジャンボタイヤ」と呼ばれているオフロードタイプの大型タイヤであり,被控訴人会社がトーヨージャイアントに販売したB型タイヤの内装タイヤが,新品のものでトレッドの凹凸がそのまま残っていることが認められる。
また,その余の取引先に販売したB型タイヤの内装タイヤの形状を直接示す証拠はないが,証拠(乙41,42の1,61,62)及び弁論の全趣旨によれば,トーヨージャイアント以外の取引先のうちの4社,すなわちオーアールタイヤ商会,大物タイヤー,株式会社大東タイヤサービス及び西日本タイヤに被控訴人会社が販売したB型タイヤの内装タイヤは,中古のものであること,上記取引先4社のうち,西日本タイヤを除く3社に販売されたB型タイヤについては,内装タイヤのトレッドパターンが切削されていなかったことが認められる。
(イ)a 控訴人は,B型タイヤの内装タイヤの形状についても,被控訴人会社が製造した検甲1及び検甲2の複層タイヤの形状に基づく立証をするのみであるが,上記のとおりその内装タイヤは中古のものであるから,一定程度トレッドパターンが摩耗しているとしても,検甲1及び検甲2の複層タイヤとB型タイヤとは,大きさ,形状が上記のとおり異なるものであること,トーヨージャイアントに販売したものにおいては,トレッドパターンの凹凸が残った新品の内装タイヤを装着していること,トーヨージャイアント以外の販売先のうちの前記3社が,内装タイヤのトレッドパターンの摩耗の程度については言及していないものの,切削されていなかったと述べていることからすると,B型タイヤにまで検甲1及び検甲2の複層タイヤの形状と同一であるとの推認が直ちに働くものとすることはできない。
b また,控訴人は,外装タイヤに1ランク下の規格の内装タイヤを装着するには,内装タイヤのクラウン部からショルダー部にかけて丸みを持たせる必要がある旨主張し,証拠(甲52,55の2・3)によれば,被控訴人会社が大物タイヤーに販売したB型タイヤが,外装タイヤの1ランク下の規格の内装タイヤを装着していることが認められるが(なお,甲55の4によれば,被控訴人会社は2ランク下の内装タイヤを装着した複層タイヤも販売している。),上記事実から直ちに内装タイヤの外表面が検甲1や検甲2の内装タイヤと同等の滑らかさを有するものと推認することはできない。
なお,控訴人代理人作成の報告書(甲52)及び同陳述書(甲54)には,控訴人代理人が大物タイヤーの社長F男から「つるつるのタイヤを中に入れていると思う。」との回答を得たとの事実が記載されている。しかし,飯田社長作成の陳述書(乙42の1)には,内装タイヤの外表面は切削されてないとの内容が記載されており,同会社の八幡営業所長G男の陳述書(乙42の2)には,内装タイヤを見たことはなかったが,自分の考えで「つるつるのタイヤを中に入れていると思う。」と回答したとの内容が記載されており,誰がどのような知見から「つるつるのタイヤを中に入れていると思う。」と回答したかについて明らかでないから,控訴人代理人作成の上記各証拠を採用することはできず,その他,控訴人が主張するように,B型タイヤの内装タイヤのトレッドパターンが切削ないし摩耗により外表面を滑らかに仕上げたものであることを認めるに足りる証拠はない。
c 控訴人は,新品又は中古のタイヤからなる内装タイヤの場合,クラウン部とショルダー部との境界が角張っているから,仮にこれを外装タイヤに挿入できたとしても,内装タイヤのクラウン部とショルダー部との境界が外装タイヤにぶつかり,外装タイヤの内面に内装タイヤの外面が接触できず,かつ,内装タイヤのビード部がリム外周面から突出する位置となり,外装タイヤの一方のビード部と内装タイヤの両ビード部がリム外周面に一致することがないとして,内装タイヤのクラウン部とショルダー部との境界部分を切削しなくては組み込めない旨主張する。
しかしながら,証拠(検乙1,検証の結果)によると,側面に「10.00-20」の表示がある外装タイヤの一方の側のビード部が切断され,側面に「8.25R20」の表示がある内装タイヤが,クラウン部のトレッドパターンやショルダー部が切削されていない状態のままで,外装タイヤに組み込まれており,かつ,外装タイヤの切断されていない側のビード部と内装タイヤの両ビード部がリム外周面に一致するよう揃っていることが認められる。
また,乙63によると,被控訴人B及び被控訴人ら訴訟代理人である田中弁護士が,トーヨージャイアントにおいて,同社に返送されてきたORタイヤの一つについて調査した結果,同タイヤは,外装タイヤの一方の側のビード部が切断され,内装タイヤが組み込まれているが,外装タイヤの切断されていない側のビード部と内装タイヤの両ビード部がリム外周面に一致するよう揃っており,また,外装タイヤの一部を切開して露出させた内装タイヤを見分しても,内装タイヤを切削したような形跡は見当たらなかったことが認められる。
以上に加えて,後記dのとおり,控訴人において,前記トーヨージャイアントでORタイヤを調査した結果でも,同タイヤの内装タイヤには,クラウン部のトレッドパターンやショルダー部を切削していない新品タイヤが組み込まれていることが認められること,後記2(1)イ(イ)のとおり,内タイヤにトレッドパターンを有する新品のタイヤを用いるダブルタイヤの技術が存すること,更に証拠(乙78の1〜6,79の1〜16)を併せ考慮すると,外装タイヤと内装タイヤのサイズの組み合わせによっては,一方の側のビード部が切断された外装タイヤに,クラウン部のトレッドパターンやショルダー部を切削していない新品タイヤが組み込まれた場合でも,切断されていない側のビード部と内装タイヤの両ビード部がリム外周面に一致するよう揃った状態になることも可能であると認められるから,控訴人の前記主張を採用することはできない。
d また,控訴人は,控訴人において,前記トーヨージャイアントでORタイヤを調査した結果,当該ORタイヤに組み込まれた内装タイヤは,クラウン部のトレッドパターン及びショルダー部の外表面を切削して,外表面を滑らかに仕上げたものであるとする(甲71,73)。
しかし,証拠(甲73〜75,77,78の1,乙85,86,87の1〜14)及び弁論の全趣旨によると,トーヨージャイアントが,近畿TCM株式会社を通じて当該ORタイヤを購入したダイカン株式会社(以下「ダイカン」という。)宛に作成したジャイアントタイヤ作業確認受領書(乙86)では,作業内容欄に「新品カブセu-Fil加工 タイヤ2本納品」と,また,「装着タイヤおよび使用部品」欄に,それぞれ「新品 20.5-25」と「新品 17.5-25」の2本のタイヤ,シリアル番号(同書証の記載はセリアル)「734YTDB」及び「729YTD」との記載が,更にいずれも「u-Fil充填」との記載があること,控訴人がトーヨージャイアントで内装タイヤの状態の調査対象としたORタイヤは,同社がダイカンからの依頼で引き上げた複層タイヤであり,外装タイヤの表面に「729YTDB」のシリアル番号が刻印されていること,当該ORタイヤの外装タイヤを切り開いて内装タイヤの形状を見分しても,内装タイヤには,トレッドパターンが明りょうに残っており,クラウン部のトレッドパターンやショルダー部に特に切削した痕跡は見当たらないこと,かえって当該ORタイヤの外装タイヤの内側に内装タイヤが食い込んで生じたと思われる痕跡が存在することが認められる。そして,これらを総合すると,控訴人が調査したORタイヤは,外装タイヤ,内装タイヤとも新品のタイヤを使用し,内装タイヤのクラウン部のトレッドパターンやショルダー部を切削しないまま外装タイヤに組み込んだものであると認めるのが相当である。
また,控訴人は,当該ORタイヤの内装タイヤとして使用されているタイヤのショルダー部付近のトレッドパターンの溝の深さは,控訴人代表者が各2か所を計測した結果,新品のもので45o,44oであるのに対し,前記内装タイヤとして使用されているものは35o,36oであったとしている(甲73)が,このように溝の深さが浅くなっていること,すなわち,内装タイヤのショルダー部が摩耗していることの原因としては,内装タイヤ組み入れ後,車両に装着使用されているうちに,外装タイヤ内表面との摩擦等で摩耗した可能性も考えられるところであり,ショルダー部が摩耗していることをもって,直ちに内装タイヤのショルダー部を切削して外装タイヤに組み込んだものと推認することはできない。
e したがって,控訴人の前記各主張はいずれも採用することはできない。
(3) C型タイヤについて C型タイヤが,イ号物件ないしロ号物件に該当するタイヤであることを認めるに足りる証拠はない。
かえって,証拠(乙7,44,48,49,60,62,75)によれば,C型タイヤの外装タイヤは,スチールタイヤ(大きさは,10.00R20)で両ビードを切断していないものであり,内装タイヤは,両ビードを切断した中古のタイヤであること,スチールタイヤには,ビード部,サイドウォール部,ショルダー部及びトレッド部のすべてでスチールコードが使用されているオールスチール構造のものと,トレッド部又はトレッド部及びサイド部の上部のみにスチールコードが使用されているST構造ないしスチールブレーカ構造のものとがあり,上記外装タイヤに用いられるものはオールスチール構造のもので,そのビード部は何らかの方法で切断可能かもしれないが,実際は困難であることが認められる。
なお,控訴人は,内装タイヤの両ビードを切断した場合,外装タイヤと内装タイヤとの境界にギャップが発生し,すぐにパンクしてしまい使用できないと主張するが,証拠(乙3の3〜5,44,64及び65の各1〜3)並びに弁論の全趣旨によれば,C型タイヤにおいては,内装タイヤの両ビードの切断位置がビード部とサイドウォール部の境界付近か否かは明確ではないものの,上記切断部は斜めになっており,切断部とチューブとの間にフラップが挿入されることが認められるから,上記切断部に一定のギャップが生じるとしても,そのギャップが発生することが不可避なものということはできず,その他,控訴人の上記主張を認めるに足りる証拠はない。
(4) D型タイヤについて D型タイヤが,イ号物件ないしロ号物件に該当するタイヤであることを認めるに足りる証拠はない。
かえって,証拠(乙8,40,43,47)によれば,D型タイヤの外装タイヤは,ナイロンチューブタイヤで両ビードを切断したものであり,内装タイヤは,ノーパンクタイヤで両ビードを切断していない新品又は中古のタイヤであることが認められる。
なお,控訴人は,DからD型タイヤの外装タイヤは一方のビード部を切断したものである旨の回答を得ていると主張し,控訴人代理人作成の報告書(甲53)には,上記主張に沿う記載があるが,D自身が作成した陳述書(乙43)には,外装タイヤの両ビードを切断したものである旨の記載がある上,上記内容は前記認定の証拠にも合致するものであるから,控訴人代理人作成の上記証拠を直ちに採用することはできない。
2 争点(2)(被控訴人会社が製造,販売した複層タイヤは,本件発明の技術的範囲に含まれるか。)について(1) A型タイヤについてア(ア) 同タイヤは,外装タイヤの一方のサイドウォール部の中央よりビード部寄りで切断し,一方の少なくともビード部を有せず,リムに固定するビード部を一方のみとしたものであり,本件第1発明の構成要件B及び本件第3発明の構成要件B’を充足する。
(イ) 同タイヤは,内装タイヤは両ビード部を切断せず,タイヤ内部にチューブを有するものであり,本件第1発明の構成要件A及び本件第3発明の構成要件A’の内装タイヤが「タイヤ内部に装着された気密性を保つためのチューブの圧力に抗する」との構成を充足する。
(ウ) 同タイヤは,外装タイヤの内部に内装タイヤを装着した複層タイヤであり,本件第1発明の構成要件C及び本件第3発明の構成要件C’を充足する。
イ 同タイヤのうち,検甲1に相当する複層タイヤ(イ号物件)が本件第3発明の構成要件Aの内装タイヤが「外表面の滑かに仕上げ」たものとの構成を,検甲2に相当する複層タイヤ(ロ号物件)が本件第1発明の構成要件A’の内装タイヤが「クラウン部のトレッドパターンを切削して,ショルダー部及びクラウン部の外表面を滑かに仕上げ」たものとの構成をそれぞれ充足するかについて検討する。
(ア) 本件公報の発明の詳細な説明中の〔従来技術〕の項には,「実用的な公知技術として特公昭57―34112公報を挙げることができる。前記公報に記載の技術は,第3図及び第4図の要部断面図に示す構造を有するものである。…図中,21はその外側に係合するトレッドパターン22を具備するタイヤカーカスである。23は着脱自在トレッドベルトであり,24は前記トレッドパターン22と係合する凹凸部を有するトレッドベルト側のトレッドパターンである。」(4欄34行〜5欄1行),「しかし,この種のタイヤにおいては,着脱自在トレッドベルト23の内側トレッドパターン24とタイヤカーカス21のトレッドパターン22との係合によるものであったから,専用のタイヤカーカス21を必要とし,しかも,使用時にトレッドパターン24及び22相互間の発熱により,特殊な用途に用いることができても汎用的ではなかった。」(5欄32行〜39行)との記載がある。
〔発明の目的〕の項には,「本発明は上記欠点を除去し,特殊なトレッドベルトを使用することなく,市販されているタイヤを切削加工し,これらのタイヤを二重にすることによって,タイヤの寿命を延長することを目的とするものである。」(6欄6行〜10行)との記載がある。
発明の概要〕の項には「クラウン部のトレッドパターンを切削してショルダー部及びクラウン部の表面を滑かに仕上げた内装タイヤ」との記載がある(6欄12〜14行)。
〔発明の実施例〕の項には,「前記内装タイヤが市販状態と異なる点は,第7図に示す様にクラウン部及びショルダー部,必要によりサイドウォール部の表面を滑かに仕上げた点にある,即ち,ショルダー部からクラウン部に至るトレッド51の凸状部を切削して,そのトレッドパターンを除去し,また,サイドウォール部にデコレーションラインを有するものにあっては,当該デコレーションラインをも切削する。勿論,前記デコレーションラインの程度によっては無視してもよい。」(6欄42行〜7欄7行),「クラウン部及びショルダー部及び必要により行なうサイドウォール部の切削の深さは,上記外装タイヤ30に内装タイヤ50を装着した状態において,外装タイヤ30の形状に影響を与えない程度の切削深さでよい。」(7欄8〜12行),「外装タイヤ30の内部のカーカスに,クラウン部のトレッドパターンを切削して,ショルダー部及びクラウン部の外表面を滑かに仕上げた内装タイヤ50の外表面を密接させ装着したものにおいては,外装タイヤ30の内表面と内装タイヤ50の外表面との間が一体となって変化するから,両者間に摩擦熱が発生し難くなる。」(8欄21〜28行),「前記密接とは厳密に言えば,外装タイヤ30のカーカスの内面にも,メーカー毎に異なる若干の凸状パターンがあり,内装タイヤ50の仕上げにおいても,滑かに仕上げるとは,加工精度を上げる意味ではなく,極端な凹凸が生じない程度に仕上げることを意味するものであるから,外装タイヤ30と内装タイヤ50の自己形状維持力によって接合している状態を意味するものである。」(8欄28〜36行),「以上の実施例では,市販のタイヤを用いた場合について述べたが,特に内装タイヤにあっては,その表面の構造を,クラウン部のトレッドパターンを切削して,ショルダー部及びクラウン部の外表面を滑かに仕上げたものであるから,古タイヤのクラウン部のトレッドパターンが摩耗したものを使用すると,クラウン部のトレッドパターンを切削する手間が省けることができ効果的であり,その使用において,何等新しいタイヤに劣るところがない。」(9欄33〜42行)との記載がある。
(イ) 本件発明の出願前の公知技術として,乙1(実公昭58―32966号実用新案公報)記載の技術があるが,同公報によれば,その技術は,実用新案登録請求の範囲を「ホイール付のタイヤに於いて,チューブの入った内タイヤにそれより一回り大きい古い外タイヤを被せ,外タイヤの裏ビード部を切断し,表ビード部のみをホイールのリムに組込み,チューブ内の空気圧により内タイヤが外タイヤの表ビード部をリムに圧着したことを特徴とするダブルタイヤ」とするものであり,考案の詳細な説明のうち,実施例の項には,「内タイヤは新品で」との記載があり,図面には,内タイヤのトレッドパターンが明記されており,これらの記載内容から,上記内タイヤにはトレッドパターンを有する新品のタイヤを用いるものであることが認められる。
(ウ) 本件公報の前記各記載によれば,本件第1発明の構成要件A及び本件第3発明の構成要件A’における「外表面を滑かに仕上げ」とは,外装タイヤの内表面を内装タイヤの外表面に密着させ,外装タイヤと内装タイヤを自己形状維持力により接合させ,両者間に摩擦熱が発生し難くするために必要であって,その滑らかさは,極端な凹凸が生じない程度であれば足りると解される。
そして,本件第1発明においては,構成要件Aに「クラウン部のトレッドパターンを切削して」とあるように,上記外表面を滑らかに仕上げた状態を,クラウン部のトレッドパターンを切削することによって形成することが要件となる。
また,本件第3発明の構成要件A’においては,切削することが要件となっておらず,前記のとおり明細書の実施例において,内装タイヤとして,古タイヤのクラウン部のトレッドパターンが摩耗したものを使用することも予定していることからすると,摩耗して外表面に極端な凹凸がない状態になった古タイヤを特段の加工を施すことなく内装タイヤとして用いることも含まれるものと解される。
(エ) これに対し,内装タイヤの外表面が極端な凹凸がないとはいえない場合,とりわけ内装タイヤとして新品のタイヤを用いた場合には,本件第1発明の構成要件A及び本件第3発明の構成要件A’を充足しない。このことは,前記(イ)記載のとおり,複層タイヤにおいて,内装タイヤにトレッドパターンを有する新品のタイヤを用いる先行技術が存することからも明らかである。
(オ) そうすると,A型タイヤのうち,検甲1に相当する複層タイヤ(イ号物件)は,その外表面が少なくとも極端な凹凸のない状態であるから,本件第3発明の構成要件A’の内装タイヤが「外表面を滑かに仕上げ」たものとの構成を充足し,検甲2に相当する複層タイヤ(ロ号物件)は,その外表面のうちショルダー部とクラウン部が削られ,トレッドパターンが摩耗してその凹凸がほとんどない状態になっているから,本件第1発明の構成要件Aの内装タイヤが「クラウン部のトレッドパターンを切削して,ショルダー部及びクラウン部の外表面を滑かに仕上げ」たものとの構成を充足する。
(2) B型タイヤについてア トーヨージャイアントに販売したB型タイヤは,その内装タイヤは新品でトレッドパターンの凹凸がそのまま残っているものであり,その余の取引先に販売したB型タイヤの内装タイヤのトレッドパターンの残存の程度は明確ではなく,外表面を滑らかに仕上げたものであることが認められないのであるから,本件第1発明の構成要件A及び本件第3発明の構成要件A’に該当するとすることはできない。
イ 控訴人は,甲71のORタイヤの内装タイヤは,クラウン部のトレッドパターン及びショルダー部の外表面を切削して,外表面を滑らかに仕上げたものであると主張するが,前記1(2)イ(イ)dのとおり,同タイヤのクラウン部のトレッドパターンやショルダー部に特に切削した痕跡は見当たらず,「クラウン部のトレッドパターンを切削し」たものとは認められないから,B型タイヤである甲71のORタイヤは,本件第1発明の構成要件Aに該当しない。
また,控訴人は,仮に内装タイヤの外表面を切削加工したものでないとしても,客観的測定データとして内装タイヤのクラウン部が新品よりも摩耗したものであるから,本件公報9欄37ないし42行記載の実施態様に対応し,本件第3発明の「外表面を滑かに仕上げ」に該当する旨主張する。
なるほど,前記(1)イ(ア)のとおり,本件公報の[発明の実施例]の項には,「以上の実施例では,市販のタイヤを用いた場合について述べたが,特に内装タイヤにあっては,その表面の構造を,クラウン部のトレッドパターンを切削して,ショルダー部及びクラウン部の外表面を滑かに仕上げたものであるから,古タイヤのクラウン部のトレッドパターンが摩耗したものを使用すると,クラウン部のトレッドパターンを切削する手間が省けることができ効果的であり,その使用において,何等新しいタイヤに劣るところがない。」(9欄33〜42行)との記載があることなどから,前記(1)イ(ウ)のとおり,本件第3発明の構成要件A’においては,切削することが要件となっておらず,摩耗して外表面に極端な凹凸がない状態になった中古のタイヤを特段の加工を施すことなく内装タイヤとして用いることも含まれるものと解される。
しかしながら,前記(1)イ(ウ)のとおり,本件第1発明の構成要件A及び本件第3発明の構成要件A’における「外表面を滑かに仕上げ」とは,外装タイヤの内表面を内装タイヤの外表面に密着させ,外装タイヤと内装タイヤを自己形状維持力により接合させ,両者間に摩擦熱が発生し難くするために必要であって,その滑らかさは,極端な凹凸が生じない程度であれば足りると解されるところ,甲71のORタイヤにおいては,内装タイヤのショルダー部付近におけるトレッドパターンの溝が若干浅くなっているといっても,同内装タイヤのトレッドパターンは相当に残存している(乙87の7〜13)のであって,いまだ「外表面を滑かに仕上げ」た状態に至っているとまで認定することはできない。また,甲71のORタイヤは,新品の内装タイヤを外装タイヤに組み込んだものであって,同内装タイヤのショルダー部が摩耗している原因としては,内装タイヤ組み入れ後,車両に装着使用されているうちに,外装タイヤ内表面との摩擦等で摩耗した可能性も考えられることからすると,被控訴人会社が甲71のORタイヤを製造,販売した時点において,控訴人指摘の内装タイヤにおけるショルダー部の摩耗が既に存在していたとは認めるに足りないから,いずれにしても,B型タイヤである甲71のORタイヤは,「外表面を滑かに仕上げ」たものではなく,本件第3発明の構成要件A’に該当しない。
したがって,前記控訴人の主張はいずれも採用することができない。
ウ よって,B型タイヤに係る控訴人の請求は理由がない。
(3) C型タイヤについて C型タイヤは,その外装タイヤの両ビードを切断していないものであるから,本件第1発明の構成要件B及び本件第3発明の構成要件B’を充足せず,本件第1発明及び本件第3発明の技術的範囲に属しないものである。
よって,C型タイヤに係る控訴人の請求は理由がない。
(4) D型タイヤについて D型タイヤは,その外装タイヤの両ビードを切断したものであるから,本件第1発明の構成要件B及び本件第3発明の構成要件B’を充足せず,本件第1発明及び本件第3発明の技術的範囲に属しないものである。
よって,その余の点について判断するまでもなく,D型タイヤに係る控訴人の請求は理由がない。
3 争点(3)(被控訴人会社が台タイヤを製造,販売した行為は,本件特許権を侵害するといえるか。)について(1) 証拠(乙66〜71)及び弁論の全趣旨によれば,被控訴人会社は,中古タイヤのトレッド部分を取り除いたものを台タイヤとして販売し,販売先は,上記台タイヤに新しいトレッドを張り付けることにより「再生タイヤ」(「更生タイヤ」ともいう。)を製造し,あるいは,再生タイヤ用の台タイヤとして転売していることが認められる。
(2) そうすると,被控訴人会社が製造,販売する台タイヤは,検甲1又は検甲2に相当する複層タイヤ(A型タイヤ)の内装タイヤとして用いることができるものの,他に再生タイヤの台タイヤとしての用途もあるから,台タイヤの製造,販売行為は,本件特許権の侵害行為ないし間接侵害行為に当たるということはできない。
よって,被控訴人会社の台タイヤの製造,販売行為が本件特許権を侵害することを理由とする控訴人の請求は理由がない。
4 争点(4)(被控訴人Bの責任)について 控訴人は,被控訴人Bが,被控訴人会社の代表取締役として,その職務の遂行として複層タイヤを製造,販売した旨主張するが,前記のとおり,被控訴人会社がA型タイヤ等の製造,販売を行ったことは認められるものの,被控訴人Bが上記行為にどの程度の関与をしたかについては,これを具体的に明らかにする証拠はない。
したがって,被控訴人会社によるA型タイヤの製造,販売が本件特許権を侵害していることについて,被控訴人B個人に故意,過失があることを基礎付ける事実,すなわち,被控訴人Bに対する損害賠償義務を基礎付ける事実は,本件証拠上これを認めるに足りず,控訴人の被控訴人Bに対する請求は理由がない。
5 争点5(損害の発生及び額)について(1) 主位的請求(特許法102条1項に基づく請求)についてア 証拠(乙9〜39,50〜58)及び弁論の全趣旨によれば,被控訴人会社が販売した本件特許権(出願公告から登録までは仮保護の権利)の侵害に当たるA型タイヤの販売数量は,本件発明が出願公告された日である平成2年8月30日から平成8年2月20日までの期間は771本(販売額425万3600円),平成8年2月21日から平成11年4月30日までの期間は33本(販売額18万2000円)である。その具体的な内訳は,別紙「A型及びB型タイヤ販売一覧表」(ただし,同表「25 毎日タイヤ」の欄につき,乙33によると,「H2.5.1〜H8.2.20」の「10.00-20」,「3,000」の販売本数は17本であると,また,乙57によると,「H8.5.1〜H11.4.30」の「7.50-**」,「5,000」の販売本数は10本であると認められる。)並びに別紙「A型タイヤの平成2年5月1日から同年8月29日までの販売分」のとおりである。
控訴人は,被控訴人会社の平成8年5月1日以降の複層タイヤの販売行為が本件特許権を侵害するものであるとし,同日以降の販売額を基礎として損害賠償を請求するが,本件発明が出願公告された日である平成2年8月30日以前の販売額を基礎として損害賠償を請求する部分については理由がない。
イ 上記販売数量に対し,被控訴人らは,控訴人の複層タイヤの知名度,控訴人の製品と被控訴人会社の製品との価格差等を理由に,控訴人は,被控訴人会社が加工又は加工販売した数量の複層タイヤを販売できたとはいえないと主張する。
(ア) 被控訴人らは,被控訴人会社の販売先14社のうち,西日本タイヤ及びトーヨージャイアントは,控訴人の存在を知っていたものの,自ら控訴人から複層タイヤを購入したことはなく,その余の取引先は控訴人の存在を知らなかった旨主張するところ,被控訴人会社の販売先作成に係る陳述書(乙8,40,41,42の1,44〜46,48,59〜62)によれば,上記主張に沿う事実(ただし,控訴人の存在を認識していたか否かについて言及しているのは,上記掲記の陳述書を提出した12社である。)が認められる。
(イ) 証拠(甲35〜42)によれば,控訴人は複層タイヤ(鉱山スチールASN10.00―20)を7万円ないし7万5000円で販売していることが認められ,一方,被控訴人会社の販売する複層タイヤの売値は別紙「A型及びB型タイヤ販売一覧表」記載のとおり1500円から1万円であるから,両者の間には7倍から50倍に至る価格差がある。証拠(乙45,48,59,61,62)及び弁論の全趣旨によれば,被控訴人会社は,外装タイヤに中古タイヤや再生タイヤを用いることが多く,販売先が提供した外装タイヤを用いて複層タイヤを製造することもあることが認められるが,上記の事情を考慮しても,なお上記価格差は著しいものというべきである。
そして,販売価格差が著しいことに加え,証拠(乙44,46,48,61,62,80,81)によれば,被控訴人会社が複層タイヤを販売した取引先4社が,売値が7万5000円とすれば非常に高いとの意見を述べていること,近年,通常のタイヤの中にもトレッド部の厚さがより厚い製品が開発され,いわゆるノーパンクタイヤやウレタンタイヤなど複層タイヤに代替する製品も存在することが認められることに照らすと,複層タイヤは,パンクが起き易い場所等においてパンクの発生を減らし,外装タイヤを摩耗するまで使用するために用いられるものであり,いわばコスト軽減のために使用される製品であるから,複層タイヤを用いるか否かの判断において,上記パンクを減らすことのメリットとの比較において,複層タイヤに要するコストが重要な要素となると考えられる。
上記のような事情に前記(ア)の事実も勘案すると,被控訴人会社が販売したA型タイヤの数量の7割については,控訴人において販売することができないとする事情があり,控訴人において販売することができたのは,被控訴人会社が販売したA型タイヤの数量のうち3割程度にとどまると認めるのが相当である。
(ウ) そうすると,損害の基礎とすべきA型タイヤの販売数量は,平成2年8月30日から平成8年2月20日までの期間は231本,平成8年2月21日から平成11年4月30日までの期間は9本となる。
ウ 控訴人の複層タイヤの1本当たりの利益について(ア) 特許法102条1項にいう「利益の額」とは,特許権者等が侵害行為がなかったならば,販売できたであろう追加的な売上を得るに当たって,追加的に必要となると考えられる諸経費を上記売上額から控除した額であると解するのが相当である。
(イ) 前記のとおり,控訴人は複層タイヤ(鉱山スチールASN10.00―20)を7万円ないし7万5000円で販売し,証拠(甲43〜51)によれば,その材料費として,新品の外装タイヤ2万5000円ないし2万9000円,新品のチューブ1700円ないし2300円,新品のフラップ1100円ないし1600円,ホイール1500円,台タイヤ650円ないし2300円を要していることが認められる。
(ウ) 一方,証拠(甲68の1〜3,10)によれば,控訴人の帳簿上の粗利益は,昭和63年8月が47万円(販売数16本),平成元年8月が80万円(販売数35本),平成2年8月が60万円(販売数24本),平成3年8月が12万円(販売数4本)と算出されていることが認められるから,上記期間における複層タイヤ1台当たりの平均粗利益は,2万5189円(1,990,000/79)となる。
上記帳簿上の粗利益の算出経過は明確ではないものの,売値から前記(イ)記載の材料費を控除すると,3万3300円ないし4万5050円となり,甲56によれば,複層タイヤの製造に要する労務費は1本当たり約1000円であり,その製造には,5万円ないし10万円のグラインダーのほか特に高価な機械,工具は必要がないことが認められる。そうすると,上記平均粗利益の額2万5189円は,当該複層タイヤの製造,販売に応じて増減する間接費を控除したものと推認され,控訴人の複層タイヤ1本当たりの利益の額は2万5189円とするのが相当である。
エ 以上によれば,控訴人の損害は,平成2年8月30日から平成8年2月20日までの期間は581万8659円,平成8年2月21日から平成11年4月30日までの期間は22万6701円となる。
オ なお,控訴審において,控訴人は,特許法102条1項による損害の基礎として,A型タイヤの販売数量である803本全部とすべきである旨主張し,他方,被控訴人らは,仮に被控訴人会社の製品がなかったとしても,控訴人は,自らの製品を販売できなかったものであるから,同法102条1項但書により,損害はなかったこととなると主張する。しかし,前記イ(ア),(イ)の事情を考慮すると,当裁判所も,被控訴人会社が販売したA型タイヤの数量の7割について,控訴人において販売することができないとする事情があるものと認める。したがって,控訴人及び被控訴人らの前記主張は,いずれも採用することができない。
(2) 予備的請求(特許法102条3項に基づく請求)についてア 前記(1)イ記載のとおり,被控訴人会社が販売したA型タイヤのうち,7割については,控訴人において販売することができないとする事情があるとして,その部分に関しては同法102条1項による請求ができないが,この部分についても,無許諾の実施品であることに変わりがないから,同法102条3項相当な対価額の賠償請求は認められるものと解される。そして,控訴人において販売することができないとして除かれた販売数量は,平成2年8月30日から平成8年2月20日までの期間は540本,平成8年2月21日から平成11年4月30日までの期間は24本であり,上記数量に対応する売上高を,各期間のA型タイヤの売上高の7割とみなして計算すると,平成2年8月30日から平成8年2月20日までの期間は297万7520円(4,253,600×0.7),平成8年2月21日から平成11年4月30日までの期間は12万7400円(182,000×0.7)となる。
イ 本件発明の実施に対し受けるべき実施料の率は,甲70によって認められるゴム製品の実施料率の業界相場や本件発明の内容,発明品の種類,用途等を考慮すると,3%が相当である。
ウ よって,控訴人が同法102条3項に基づいて賠償を受けるべき損害額は,平成2年8月30日から平成8年2月20日までの期間は8万9325円(2,977,520×0.03),平成8年2月21日から平成11年4月30日までの期間は3822円(127,400×0.03)となる。
エ なお,控訴人は,同項に基づく損害額の算定に当たり,実施料率に乗ずべき販売価格としては,控訴人のエンドユーザーに対する小売価格を採るべきである旨主張するが,実施料相当額の算定に当たっては,実際の実施料率に基づいて実施料額を算定する場合と同様,侵害者である被控訴人会社の実際の売上高に前記実施料率を乗じる方法によるのが相当であり,控訴人の上記主張も採用することはできない。
(3) 上記(1)及び(2)の損害額の合計は,平成2年8月30日から平成8年2月20日までの期間は590万7984円,平成8年2月21日から平成11年4月30日までの期間は23万0523円となる。
各期間に対応した弁護士費用,弁理士費用は,平成2年8月30日から平成8年2月20日までの期間は60万円,平成8年2月21日から平成11年4月30日までの期間は3万円が相当であり,同費用を加算した損害額の合計は,平成2年8月30日から平成8年2月20日までの期間は650万7984円,平成8年2月21日から平成11年4月30日までの期間は26万0523円となり,総合計は676万8507円となる。
6 争点(6)について 控訴人は,被控訴人会社に対し,その保管に係るイ号物件及びロ号物件並びに同各物件の材料である外装タイヤ及び内装タイヤの廃棄を求める。
そこで検討するに,イ号物件及びロ号物件に相当するA型タイヤが本件第1発明又は本件第3発明の構成を充足することは,前記2(1)のとおりであるから,被控訴人会社保管に係るイ号物件及びロ号物件の廃棄を求める部分は理由がある。
しかしながら,内装タイヤは,前記4記載のとおり内装タイヤは再生タイヤの台タイヤとして用いることが可能なものであり,外装タイヤもD型タイヤに用いる等,他の用途が考えられるものであるから,右外装タイヤ及び内装タイヤは特許法100条2項にいう「侵害の行為を組成した物」ということはできず,上記外装タイヤ及び内装タイヤの廃棄を求める部分は理由がない。
また,控訴人は,別紙機械目録記載の複層タイヤ製造機の除去を求めるが,被控訴人らが本件特許権を侵害するおそれをなくするためには,控訴人の請求のうち製造,販売及び販売のための禁止と,侵害品の廃棄を命ずれば十分であって,イ号物件及びロ号物件以外のC型,D型タイヤ等の製造にも用いることができる上記複層タイヤ製造機の除去を命ずるまでの必要性は認められないから,上記複層タイヤ製造機の除去を求める部分は理由がない。
結論
以上の次第で,控訴人の被控訴人会社に対する損害賠償請求は,676万8507円及び内金650万7984円に対する平成8年2月27日から,内金26万0523円に対する平成11年5月1日から各支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度において理由があり,その余は理由がないところ,原判決中,これと異なる部分は一部失当であるから,控訴人の被控訴人会社に対する控訴に基づいて主文1項のとおり変更する。
また,控訴人の被控訴人会社に対するイ号物件及びロ号物件の製造販売等の差止め並びに被控訴人会社保管に係るイ号物件及びロ号物件の廃棄請求は理由があり,他方,控訴人の被控訴人Bに対する損害賠償請求は理由がなく,原判決中,これらと同旨の部分は相当であって,控訴人の被控訴人Bに対する控訴及び被控訴人会社の本件附帯控訴はいずれも理由がないので,これを棄却することとする。
よって,主文のとおり判決する。
(平成14年2月1日口頭弁論終結)
裁判長裁判官 竹原俊一
裁判官 小野洋一
裁判官 西井和徒
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