運営:アスタミューゼ株式会社
  • ポートフォリオ機能


追加

関連ワード 29条1項3号 /  設定登録 /  請求の範囲 /  取消決定 / 
元本PDF 裁判所収録の全文PDFを見る pdf
事件 平成 14年 (行ケ) 70号 特許取消決定取消請求事件
原告 日本電気株式会社
訴訟代理人弁理士 鈴木康夫
同 臼田保伸
被告 特許庁長官及川耕造
指定代理人 松本悟
同 板谷一弘
同 森田ひとみ
同 大橋良三
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 2002/06/18
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
主文 1 特許庁が異議2000−73509号事件について平成13年12月17日にした決定を取り消す。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
全容
1 原告の請求 (1) 主文第1項と同旨 (2) 訴訟費用は被告の負担とする。
2 当事者間に争いのない事実 (1) 特許庁における手続の経緯 原告は,発明の名称を「非水電解液二次電池」とする特許第3024636号(平成10年8月27日出願,平成12年1月21日設定登録,以下「本件特許」といい,その発明を「本件発明」という。)の特許権者である。
本件特許の請求項1ないし6の全部に関し,平成12年9月13日,特許異議の申立てがあり,特許庁は,これを異議2000-73509号事件として審理し,その結果,平成13年12月17日,「特許第3024636号の請求項1ないし6に係る特許を取り消す。」との決定(以下「本件取消決定」という。)をし,平成14年1月15日に,その謄本を原告に送達した。
(2) 決定の理由 決定の理由は,要するに,本件請求項1ないし6に係る発明は,刊行物1(特開平9-293538号公報)に記載された発明であるから,本件特許は,特許法29条1項3号の規定に違反してされたものである,というものである。
(3) 訂正審決の確定 原告は,本訴係属中,平成14年3月22日付けで,本件特許出願の願書に添付した明細書につき,特許請求の範囲請求項1ないし6の訂正を含む審判を請求した。特許庁は,これを訂正2002-39079号事件として審理し,その結果,平成14年5月17日に上記訂正をすることを認める旨の審決(以下「本件訂正審決」という。)をし,これが確定した。
(4) 本件訂正審決による請求項1ないし6の訂正の内容 (ア) 本件訂正審決による訂正前の特許請求の範囲請求項1ないし6 「【請求項1】 正極電極に,(A)リチウム・マンガン複合酸化物と,(B1)比表面積Xが0.3≦ X(m2/g)であって,LiNiO 2,Li 2NiO 2,LiNi 2O4,Li 2Ni 2O 4,およびLiNi 1-x MxO 2(0<x≦ 0.5であり,Mは,Co,Mn,Al,Fe,Cu,およびSrからなる群より選ばれる1種類以上の金属元素を表す。)からなる群より選ばれる少なくとも1種からなるリチウム・ニッケル複合酸化物とを含むことを特徴とする非水電解液二次電池 【請求項2】 前記リチウム・ニッケル複合酸化物の比表面積Xが,さらにX≦3.0(m2/g)であることを特徴とする請求項1記載の非水電解液二次電池。
【請求項3】 正極電極に,(A)リチウム・マンガン複合酸化物と,(B2)D50 粒径が40μm以下かつ3μm以上であって,LiNiO2,Li 2NiO 2,LiNi2O 4,Li 2Ni 2O 4,およびLiNi 1-x MxO 2(0<x≦ 0.5であり,Mは,Co,Mn,Al,Fe,Cu,およびSrからなる群より選ばれる1種類以上の金属元素を表す。但し,リチウム・ニッケル・コバルト・アルミニウム複合酸化物を除く。)からなる群より選ばれる少なくとも1種からなるリチウム・ニッケル複合酸化物とを含むことを特徴とする非水電解液二次電池。
【請求項4】 前記リチウム・マンガン複合酸化物とリチウム・ニッケル複合酸化物との重量比率を[LiMn複合酸化物]:[LiNi複合酸化物]=(100-a):aで表したとき,3≦a≦45であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の非水電解液二次電池。
【請求項5】 前記リチウム・マンガン複合酸化物は,スピネル構造のマンガン酸リチウムである請求項1〜4のいずれかに記載の非水電解液二次電池。
【請求項6】 電解液中の支持塩が,LiPF6またはLiBF 4である請求項1〜5のいずれかに記載の非水電解液二次電池。」 (イ) 本件訂正審決による訂正後の特許請求の範囲請求項1ないし5(下線部が訂正個所である。) 「【請求項1】 正極電極に,(A)リチウム・マンガン複合酸化物と,(B1)比表面積Xが0.71 ≦ X(m2/g)であって,LiNiO 2,Li 2NiO 2,LiNi 2O 4,Li 2Ni 2O 4,およびLiNi 1-x MxO 2(0<x≦ 0.5であり,Mは,Co,Mn,Al,Fe,Cu,およびSrからなる群より選ばれる1種類以上の金属元素を表す。)からなる群より選ばれる少なくとも1種からなるリチウム・ニッケル複合酸化物とを含み,前記 リチウム ・マンガン 複合酸化物 とリチウム・ニッケル 複合酸化物 との 重量比率 を[LiMn 複合酸化物 ]:[LiNi 複合酸化物 ]=( 100 -a):a で表したとき ,10 ≦a≦20 である ことを特徴とする非水電解液二次電池 【請求項2】 前記リチウム・ニッケル複合酸化物の比表面積Xが,さらにX≦3.0(m2/g)であることを特徴とする請求項1記載の非水電解液二次電池。
【請求項3】 正極電極に,(A)リチウム・マンガン複合酸化物と,(B2)D50 粒径が15μm以下かつ3μm以上であって,LiNiO 2,Li 2NiO 2,LiNi2O 4,Li 2Ni 2O 4,およびLiNi 1-x MxO 2(0<x≦ 0.5であり,Mは,Co,Mn,Al,Fe,Cu,およびSrからなる群より選ばれる1種類以上の金属元素を表す。但し,リチウム・ニッケル・コバルト・アルミニウム複合酸化物を除く。)からなる群より選ばれる少なくとも1種からなるリチウム・ニッケル複合酸化物とを含み,前記 リチウム ・マンガン 複合酸化物 とリチウム ・ニッケル複合酸化物 との 重量比率 を[LiMn 複合酸化物 ]:[LiNi 複合酸化物 ]=(100 -a):a で表したとき ,10 ≦a≦20 である ことを特徴とする非水電解液二次電池。
【請求項4】 前記リチウム・マンガン複合酸化物は,スピネル構造のマンガン酸リチウムである請求項1〜3のいずれかに記載の非水電解液二次電池。
【請求項5】 電解液中の支持塩が,LiPF6またはLiBF 4である請求項1〜4 のいずれかに記載の非水電解液二次電池。」3 当裁判所の判断 上記当事者間に争いのない事実の下では,本件特許請求の範囲請求項1ないし6ついては,特許法29条1項3号に違反して登録された特許であることを理由にこれらの特許を取り消した本件取消決定の取消しを求める訴訟の係属中に,特許請求の範囲の文言に係る訂正を含む訂正の審判の請求がなされ,特許庁は,同請求を認めるとの本件訂正審決をし,これが確定した,ということができる。本件取消決定は,これにより,結果として,請求項1ないし6について,判断の対象となるべき発明を特定すべき特許請求の範囲の文言の認定を誤ったことになる。この誤りが本件取消決定の結論に影響を及ぼすことは明らかである。したがって,本件特許請求の範囲請求項1ないし6に係る特許を取り消した本件取消決定は,取消しを免れない。
4 以上によれば,本訴請求は理由がある。そこで,これを認容し,訴訟費用の負担については,原告に負担させるのを相当と認め,行政事件訴訟法7条,民事訴訟法62条を適用して,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 山下和明
裁判官 阿部正幸
裁判官 高瀬順久