運営:アスタミューゼ株式会社
  • ポートフォリオ機能


追加

関連ワード 進歩性(29条2項) /  容易に発明 /  設定登録 /  訂正審判 /  請求の範囲 /  減縮 /  釈明 /  取消決定 / 
元本PDF 裁判所収録の全文PDFを見る pdf
事件 平成 14年 (行ケ) 71号 特許取消決定取消請求事件
原告 イビデン株式会社
原告 日産ディーゼル工業株式会社
両名訴訟代理人弁護士 木下洋平
同 弁理士 小川順三
被告 特許庁長官及川耕造
指定代理人 西川惠雄
同 氏原康宏
同 高木進
同 宮川久成
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 2002/07/17
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
主文 特許庁が異議2001−71817号事件について平成13年12月26日にした決定を取り消す。
訴訟費用は被告の負担とする。
事実及び理由
当事者の求めた裁判
1 原告ら 主文と同旨 2 被告 原告らの請求を棄却する。
訴訟費用は原告らの負担とする。
当事者間に争いのない事実
1 特許庁における手続の経緯 (1) 原告らは、名称を「セラミック構造体」(その後、下記本件訂正審決により「排気ガス浄化装置用フィルタとして用いられるセラミック構造体」と訂正)とする特許第3121497号発明(平成6年7月14日特許出願、平成12年10月20日設定登録、以下「本件発明」といい、この特許を「本件特許」という。)の特許権者である。
その後、本件特許につき特許異議の申立てがされ、同申立ては、異議2001-71817号事件として特許庁に係属したところ、原告らは、平成13年11月20日、本件特許出願の願書に添付した明細書(以下「本件明細書」という。)の特許請求の範囲の記載を訂正する旨の訂正請求(以下「本件訂正請求」という。)をした。
特許庁は、同特許異議事件について審理した上、同年12月26日、「訂正を認める。特許第3121497号の請求項1ないし3に係る特許を取り消す。」との決定(以下「本件決定」という。)をし、その謄本は、平成14年1月16日、原告らに送達された。
(2) 原告らは、本件決定の取消しを求める本訴提起後の平成14年3月14日、本件明細書の特許請求の範囲の記載を訂正する旨の訂正審判の請求をしたところ、特許庁は、同請求を訂正2002-39075号事件として審理した上、同年4月23日、上記訂正を認める旨の審決(以下「本件訂正審決」という。)をし、
その謄本は、同年5月7日、原告らに送達された。
2 特許請求の範囲の記載 (1) 設定登録時の特許請求の範囲の記載 【請求項1】長手方向に沿って並列する複数の貫通孔を有し、かつ、これらの貫通孔の各端面は、それぞれ市松模様状に目封じされていると共に、ガスの入側と出側とでは開閉が逆の関係にあり、そして、これらの貫通孔の隣接するものどうしは、多孔質な隔壁を通じて互いに通気可能にしたセラミック部材を、複数個結束させて集合体としたセラミック構造体において、
前記各セラミック部材の相互間に、少なくとも無機繊維、無機バインダー、有機バインダーおよび無機粒子からなるものを充填し、乾燥し、硬化して、前記無機繊維と、無機粒子と、無機バインダーの加熱焼成によって生成するセラミックスとが、三次元的に交錯する構造の弾性質シール材を形造り、そのシール材を介して前記各セラミック部材が一体に接着されており、とくに前記無機粒子として、
炭化珪素、窒化珪素、および窒化硼素から選ばれる少なくとも1種以上の無機粉末またはウィスカーを用いることを特徴とするセラミック構造体。
【請求項2】前記シール材において、無機繊維としては、シリカ-アルミナ、ムライト、アルミナおよびシリカから選ばれる少なくとも1種以上のセラミックファイバーを用い、無機バインダーとしては、シリカゾルおよびアルミナゾルから選ばれる少なくとも1種以上のコロイダルゾルを用い、そして有機バインダーとしては、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、エチルセルロースおよびカルボメトキシセルロースから選ばれる少なくとも1種以上の多糖類を用いることを特徴とする請求項1に記載のセラミック構造体。
【請求項3】前記シール材は、固形分で、10〜70wt%のシリカ-アルミナセラミックファイバー、1〜30wt%のシリカゾル、0.1〜5.0wt%のカルボメトキシセルロースおよび3〜80wt%の炭化珪素粉末からなることを特徴とする請求項2に記載のセラミック構造体。
(2) 本件訂正請求に係る訂正後の特許請求の範囲の記載(注、訂正部分を下線で示す。) 【請求項1】長手方向に沿って並列する複数の貫通孔を有し、かつ、これらの貫通孔の各端面は、それぞれ市松模様状に目封じされていると共に、ガスの入側と出側とでは開閉が逆の関係にあり、そして、これらの貫通孔の隣接するものどうしは、多孔質な隔壁を通じて互いに通気可能にした焼成セラミック部材を、複数個結束させて集合体としたセラミック構造体において、
前記各焼成セラミック部材の相互間に、少なくとも無機繊維、コロイダルゾルからなる 無機バインダー、有機バインダーおよび無機粒子からなるものを充填し、乾燥し、硬化して、前記無機繊維と、無機粒子と、無機バインダーの加熱焼成によって生成するセラミックスとが、三次元的に交錯する構造の弾性質シール材を形造り、そのシール材を介して前記各セラミック部材が一体に接着されており、とくに前記無機粒子として、炭化珪素、窒化珪素、および窒化硼素から選ばれる少なくとも1種以上の高熱伝導性の無機粉末またはウィスカーを用いることを特徴とするセラミック構造体。
【請求項2】前記シール材において、無機繊維としては、シリカ-アルミナ、ムライト、アルミナおよびシリカから選ばれる少なくとも1種以上のセラミックファイバーを用い、無機バインダーとしては、シリカゾルおよびアルミナゾルから選ばれる少なくとも1種以上のコロイダルゾルを用い、そして有機バインダーとしては、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、エチルセルロースおよびカルボキシメチルセルロース (注、この部分の訂正は明りょうでない記載の釈明を目的とした訂正である。)から選ばれる少なくとも1種以上の多糖類を用いることを特徴とする請求項1に記載のセラミック構造体。
【請求項3】前記シール材は、固形分で、10〜70wt%のシリカ-アルミナセラミックファイバー、1〜30wt%のシリカゾル、0.1〜5.0wt%のカルボキシメチルセルロース (注、この部分の訂正は明りょうでない記載の釈明を目的とした訂正である。)および3〜80wt%の炭化珪素粉末からなることを特徴とする請求項2に記載のセラミック構造体。
(3) 本件訂正審決に係る訂正後の特許請求の範囲の記載(注、訂正部分を下線で示す。なお、二重下線部分は、上記(2)との相違部分である。) 【請求項1】長手方向に沿って並列する複数の貫通孔を有し、かつ、これらの貫通孔の各端面は、それぞれ市松模様状に目封じされていると共に、ガスの入側と出側とでは開閉が逆の関係にあり、そして、これらの貫通孔の隣接するものどうしは、多孔質な隔壁を通じて互いに通気可能にした焼成 セラミック部材を、
複数個結束させて集合体としたセラミック構造体において、
前記各焼成 セラミック部材の相互間に、少なくとも無機繊維、コロイダルゾルからなる 無機バインダー、有機バインダーおよび無機粒子からなるものを充填し、乾燥し、硬化して、前記無機繊維と、無機粒子と、無機バインダーの加熱焼成によって生成するセラミックスとが、三次元的に交錯する構造の弾性質シール材を形造り、そのシール材を介して前記各セラミック部材が一体に接着されており、とくに前記無機粒子として、炭化珪素、窒化珪素、および窒化硼素から選ばれる少なくとも1種以上の高熱伝導性の無機粉末またはウィスカーを用いることを特徴とするセラミック構造体。
【請求項2】前記シール材において、無機繊維としては、シリカ-アルミナ、ムライト、アルミナおよびシリカから選ばれる少なくとも1種以上のセラミックファイバーを用い、無機バインダーとしては、シリカゾルおよびアルミナゾルから選ばれる少なくとも1種以上のコロイダルゾルを用い、そして有機バインダーとしては、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、エチルセルロースおよびカルボキシメチルセルロース (注、この部分の訂正は明りょうでない記載の釈明を目的とした訂正である。)から選ばれる少なくとも1種以上の多糖類を用いることを特徴とする請求項1に記載のセラミック構造体。
【請求項3】前記シール材は、固形分で、10〜70wt%のシリカ-アルミナセラミックファイバー、1〜30wt%のシリカゾル、0.1〜5.0wt%のカルボキシメチルセルロース (注、この部分の訂正は明りょうでない記載の釈明を目的とした訂正である。)および3〜80wt%の炭化珪素粉末からなることを特徴とする請求項2に記載のセラミック構造体。
3 本件決定の理由 本件決定は、本件訂正請求に係る訂正を認めた上、本件発明の要旨を同訂正後の特許請求の範囲の記載(上記2(2))のとおり認定し、本件発明は、実願平4-73813号(実開平6-47620号)のCD-ROM、特開平1-252588号公報、特公昭57-5429号公報、特開平6-9253号公報に記載された各発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものであって、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)4条2項の規定により取り消されるべきものであるとした。
当事者の主張
1 原告ら 本件決定が、本件発明の要旨を本件訂正請求に係る訂正後の特許請求の範囲の記載(上記第2の2(2))のとおり認定した点は、本件訂正審決の確定により特許請求の範囲の記載が上記第2の2(3)のとおり訂正されたため、誤りに帰したことになる。そして、この瑕疵は本件決定の結論に影響を及ぼすものであるから、本件決定は違法として取り消されるべきである。
2 被告 本件訂正審決の確定により特許請求の範囲の記載が上記のとおり訂正されたことは認める。
当裁判所の判断
本件訂正審決の確定により、本件明細書の特許請求の範囲の記載が上記第2の2(3)のとおり訂正されたことは当事者間に争いがなく、この訂正によって、特許請求の範囲減縮されたことは明らかである。
そうすると、本件決定が、本件発明の要旨を、本件訂正請求に係る訂正後の特許請求の範囲の記載(上記第2の2(2))のとおり認定したことは、結果的に誤りであったことに帰し、これが本件決定の結論に影響を及ぼすことは明らかであるから、本件決定は、瑕疵があるものとして取消しを免れない。
よって、原告らの請求は理由があるから認容し、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法7条、民事訴訟法61条を適用して、主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 篠原勝美
裁判官 岡本岳
裁判官 宮坂昌利