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関連審決 審判1998-1693
関連ワード 製造方法 /  29条1項3号 /  進歩性(29条2項) /  容易に発明 /  相違点の判断 /  発明の詳細な説明 /  抵触 /  容易に想到(容易想到性) /  実施 /  既判力 /  拒絶査定不服審判 /  拒絶査定 /  請求の理由 /  前置審査 /  拒絶理由通知 /  請求の範囲 /  減縮 /  変更 /  一事不再理 /  取消判決 /  判決の拘束力 / 
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事件 平成 13年 (行ケ) 171号 審決取消請求事件
原告A
訴訟代理人弁理士 中畑孝
被告 特許庁長官太田 信一郎
指定代理人 吉國信雄
同 杉原進
同 山口由木
同 高木進
同 宮川久成
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 2002/08/09
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
主文 原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
当事者の求めた裁判
1 原告 特許庁が平成10年審判第1693号事件について平成13年3月6日にした審決を取り消す。
訴訟費用は被告の負担とする。
2 被告 主文と同旨
当事者間に争いのない事実
1 特許庁における手続の経緯 原告は、平成4年12月28日、名称を「コアレスペーパーロールの製法とこれに用いる装置」とする発明(以下「本願発明」という。)について特許出願(特願平4-359869号)をし、平成7年6月7日、出願公告されたが、平成9年12月24日、拒絶査定を受けたので、平成10年2月5日、これに対する不服の審判を請求し、同年3月9日付け手続補正書により、本件特許出願の願書に添付した明細書(以下「本件明細書」という。)の特許請求の範囲等の補正(以下「本件補正」という。)をした。特許庁は、同請求を平成10年審判第1693号事件として審理した上、平成11年9月17日、本件補正を却下するとともに「本件審判の請求は、成り立たない。」とする審決(以下「前審決」という。)をしたが、当庁平成12年(行ケ)第17号審決取消請求事件において、平成13年1月15日言渡しの判決(以下「前判決」という。)により前審決が取り消されたので、更に審理をした結果、同年3月6日、「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決(以下「本件審決」という。)をし、その謄本は、同月26日、原告に送達された。
2 本件補正に係る本件明細書の本願発明の要旨(以下、【請求項1】に係る発明を「本願発明1」、【請求項2】に係る発明を「本願発明2」という。) 【請求項1】ぺーパー巻取り用の巻取軸を加熱して巻取りパートにおける巻取りに供し、このぺーパー巻始端に水又は接着剤液を塗布して巻取りを進行させ、上記巻始端に塗布された水又は接着剤液を上記加熱巻取り軸により乾燥してぺーパー巻芯部に保形層を形成するコアレスペーパーロールの製法において、上記巻取りが完了したぺーパーロールを上記巻取りパートのぺーパーロール排出側に設けられた巻取軸抜き取りパートヘ転出して巻取軸の抜去を行ない、該抜去された巻取軸をグリッパーにて吊上げて上記巻取りパートの上方に配された加熱パートヘ供給して上記加熱を行ない、該加熱パートにて加熱された巻取軸を上記グリッパーにて上記巻取りパートに供給し上記巻取りを行なわせるようにしたコアレスペーパーロールの製法。
【請求項2】巻取軸にぺーパーを巻取る巻取手段と、この巻取手段に供給する巻取軸を加熱する巻取軸加熱手段と、この加熱巻取軸に巻き取るぺーパーの巻始端に水又は接着剤を塗布する手段と、巻取りが完了したぺーパーロールの転出を受け巻取軸の抜去を行なう巻取軸抜き取り手段と、上記巻取手段の上方に配された巻取軸加熱手段と、上記巻取軸抜き取り手段により抜去された巻取軸を該巻取軸抜き取り手段から吊上げて上記巻取軸加熱手段へ供給すると共に加熱済巻取軸を該巻取軸加熱手段から上記巻取手段に供給するグリッパーとから成ることを特徴とするコアレスペーパーロールの製造装置。
3 審決の理由 本件審決の理由は、別添審決謄本写し記載のとおり、本願発明1及び2は、
特開昭63-66054号公報(本訴甲第23号証、以下「引用例1」という。)及び特開平4-55250号公報(本訴甲第10号証、以下「引用例2」という。)に記載された発明(以下、それぞれ「引用例発明1」、「引用例発明2」という。)に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないとした。
原告主張の審決取消事由
審決の理由中、「1.手続の経緯・本願発明」及び「2.引用例」は認める。「3.対比・判断」中、相違点の判断(審決謄本5頁2行目〜6頁25行目、7頁11行目〜末行)は争い、その余は認める。「4.むすび」は争う。
本件審決は、本願発明1及び2と引用例発明1の相違点の判断を誤り(取消事由1)、一事不再理の原則に違反し(取消事由2)、特許法159条2項において準用する同法50条の適用により必要とされる拒絶理由通知を欠くものである(取消事由3)から、違法として取り消されるべきである。
1 取消事由1(相違点の判断の誤り) (1) 本件審決は、引用例発明1(甲第23号証)に引用例2(甲第10号証)記載の技術事項を採用して本願発明に想到することに格別の困難があったとはいえないと判断するが、引用例発明1に引用例2の技術事項を適用しても、本願発明は得られない。
(2) すなわち、引用例発明1は、第1図(5頁)に示すとおり、つかみ部材(グリッパー)を巻き取りパートと巻取軸抜き取りパートの2点間で往復運動させる基本構成を発明の不可欠の要素としており、この構成がなければ引用例発明1は成り立ち得ないものである。他方、引用例2(甲第10号証)には、「巻軸を加熱しておくことにより」との記載があるだけであり、巻取軸加熱をどのような手段を用いて行うのか、また、巻取軸加熱を取り入れ、巻取り、軸抜去及び加熱という一連の工程を環状サイクルをもって遂行するシステムをどのように構築するのかという点については、全く記載がなく、示唆もされていない。したがって、引用例発明1の基本構成であるつかみ部材を巻取りパートと巻取軸抜き取りパートの2点間で往復運動させる基本構成において、引用例2における「巻軸を加熱しておく」との構成を採用するならば、引用例2にはその具体的構成について全く開示がないから、巻取りパートにおいて加熱するか、又は巻取軸抜き取りパートにおいて加熱するかの、いずれかしか想定することができない。そうすると、引用例1及び2を総合しても、本願発明1において「抜去された巻取軸をグリッパーにて吊上げて上記巻取りパートの上方に配された加熱パートヘ供給して上記加熱を行ない」「加熱パートにて加熱された巻取軸を上記グリッパーにて上記巻取りパートに供給し上記巻取りを行なわせるようにしたコアレスペーパーロールの製法」とした点、本願発明2において「巻取手段の上方に配された巻取軸加熱手段と、上記巻取軸抜き取り手段により抜去された巻取軸を該巻取軸抜き取り手段から吊上げて上記巻取軸加熱手段へ供給すると共に」「加熱済巻取軸を該巻取軸加熱手段から上記巻取手段に供給するグリッパーとから成ることを特徴とするコアレスペーパーロールの製造装置」とした点に関しては、いずれも想到することはできない。
(3) 巻取軸抜き取りパートにおける巻取軸の抜去、グリッパーによる巻取パートの上方に配された巻取軸加熱パートヘの移行、グリッパーによる加熱済巻取軸の加熱パートから巻取パートヘの供給、巻取り、巻取り軸抜き取りパートヘの転送という一連のリサイクル作業を合理的に遂行することは、本願発明によって初めて提供された独自の方式である。本願発明では、抜去した巻取軸をグリッパーで巻取パートヘ供給するに際し、同じグリッパーで巻取パート上方の加熱パートヘ吊り上げ加熱を促す機能を持たせ、さらに、この同じグリッパーで巻取パートヘ直ちに供給し、加熱巻取軸の熱を冷やさずに、巻取りに際しての水又は接着剤液の乾燥を効率的に行うというリサイクル作業を可能にするという目的を達成するものであるが、
引用例1及び2には、この点に関する開示ないし示唆はない。
(4) 被告は、加熱パートに関し、引用例2(甲第10号証)に記載された「巻取軸を加熱する」との技術事項を引用例発明1(甲第23号証)に適用する場合の選択肢として、加熱パートを新たに設けるか、又は巻取軸抜き取りパート若しくは巻取りパートで加熱するという二つの選択肢が考えられると主張する。しかしながら、引用例1が巻取りパートと巻取軸抜去パート間でグリッパーを往復動させて巻取軸をリサイクルするシステムしか想定しないのであるから、これに引用例2の「巻取軸を加熱する」技術を適用するならば、巻取りパートか巻取軸抜去パートで加熱することに想到するのが自然である。また、仮に、加熱パートを新たに設けるという選択肢が予測可能であるとしても、巻取軸抜去パートから巻取りパートヘの巻取軸移送をつかさどるグリッパーに、加熱パートヘの移送と巻取りパートヘの移送を兼務させて、上記環状サイクルシステムを構成する技術思想は、引用例2の上記技術事項を引用例発明1に適用しても、到達し得るものではない。さらに、被告は、引用例発明1(甲第23号証)のつかみ部材に加熱パートヘの移送と巻取りパートヘの移送を兼務させ、上記環状サイクルシステムを構成する技術思想が予測可能であると主張するが、引用例発明1は、このような兼務を予測していない。
(5) 本願発明は、その構成によって、本件明細書の発明の詳細な説明の欄に記載する「ぺーパー巻芯部に保形軸孔を持ったコアレスペーパーロールの生産、即ち巻取軸にぺーパーを巻取り、巻取り済ペーパーロールから巻取軸を抜去し、該抜去巻取軸を回収して加熱部へ供給し加熱する作業、更に加熱済巻取軸を加熱部から上記ぺーパー巻取り部へ供給し上記巻取りを行なう、一連の工程が環状サイクルを以って合理的に遂行でき、上記コアレスペーパーロールの生産の自動化と生産性の向上に寄与し、コストダウンを達成できる」、「又巻取軸抜き取り部とペーパー巻取り部間に巻取軸加熱部を配しつつ、この巻取軸抜き取り部と巻取軸加熱部と巻取り部間を巻取軸吊送用のグリッパーにより連絡するだけの、簡素な構成にて所期の目的を有効に達成できる」という、引用例1及び2の組合せでは得難い独自の作用効果を奏するものである。
2 取消事由2(一事不再理原則の違反) 前審決は、特許法159条2項において準用する同法50条の適用により、
拒絶理由通知の拒絶理由と同一の理由により拒絶されたとみなされるべきである。
そうすると、本件審決は、前審決と同一引用例及び同一適用法条をもって、再度、
本願発明1及び2が特許を受けることができないとの審決をしたこととなり、民訴法上の一事不再理の大原則に違反する。
3 取消事由3(拒絶理由通知を欠く違法) 前審決は、前判決により取り消されたものであるところ、審決が取り消されたにもかかわらず、審決の前提とする拒絶理由通知だけが有効であると解すべき法的根拠はないから、前審決の前提となる拒絶理由通知も前判決により取り消されたものと解すべきである。したがって、前審決が取り消されたことにより、特許庁は、更に審判の審理を行った上、請求が成り立たないとの審決をしようとするときは、あらかじめ拒絶理由を通知しなければならないところ、本件審決は、この拒絶理由通知を欠いており、特許法159条2項において準用する同法50条の規定に違反する。
被告の反論
1 取消事由1(相違点の判断の誤り)について 引用例発明1(甲第23号証)は加熱パートを有しないが、引用例2(甲第10号証)に記載された「巻取軸を加熱する」との技術事項を引用例発明1に適用する場合、加熱パートを新たに設けるか、又は、原告が主張するように、巻取軸抜き取りパート若しくは巻取りパートで加熱するかの選択肢が考えられる。引用例発明1の巻軸移送部材は、ロール押し抜き後の巻軸(巻取軸)を駆動ローラ(巻取りパート)へ移動させるものであればよく、巻軸の移動経路上に他のパートが存在しても、発明が成り立たないものではない。引用例発明1において、巻軸は、シリンダのピストンロッドの収縮、伸長とシリンダによる揺動により、巻取りパートと巻取軸抜き取りパートの間の上方を吊り上げられて移動するものであって、位置的に見ても、巻軸の移動経路上に加熱パートを設けることが困難であるとはいえない。
また、引用例2には、巻取りパートで塗布する接着剤液を速やかに乾燥させるために巻取軸を加熱することが記載されているところ、加熱には時間がかかるから、加熱のタイミングが遅すぎないように、加熱パートを巻取りパートの直前に配することは、その目的を達成するために当業者が当然選択し得る程度のことであるが、引用例発明1においても、グリッパーでつかまれた巻取軸の位置は、常に巻取りパートの上方にあるのであって、上記のように、加熱パートを巻取りパートの直前に配するのであれば、加熱パートを巻き取りパートの上方に配置するようになるのは、
当然のことである。
2 取消事由2(一事不再理原則の違反)について 前審決は、本願発明1の要旨を公告時の本件明細書に記載されたものと認定した上、本願発明1が引用例発明2と同一であることを拒絶理由とするものである。前審決における拒絶理由は、本件特許出願に対する特許異議の決定に記載した理由、すなわち、拒絶査定の理由と同じであるから、特許法159条2項において準用する同法50条の適用はない。本件審決は、本願発明1及び2の要旨を、本件補正に係る本件明細書に記載されたものと認定した上、本願発明1及び2が引用例発明1及び2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたことを拒絶理由とするものであり、前審決とは、要旨認定及び適用法条を異にするものであるから、
前審決と同一の理由に基づくものではない。
民事訴訟における一事不再理は、裁判所が確定判決と矛盾した判決をすることを許さないという効力を有するにすぎない。また、行政事件訴訟法33条に規定する取消判決の拘束力は、取消判決により違法とされた理由と同じ理由により、取り消された審決と同じ結論の審決をすることを禁止するものであって、取り消された審決と異なる理由により同じ結論の審決をすることは、拘束力に反するものではない。前判決の理由は、本件補正が特許請求の範囲減縮に当たらないとする前審決の判断が誤りであるというものであり、その余の認定判断を示していない。
3 取消事由3(拒絶理由通知を欠く違法)について 前判決により前審決が取り消されたからといって、その基礎となった拒絶理由通知までが失効するものではない。本件審決の理由は、本願発明1及び2は、引用例発明1及び2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたというものであり、拒絶理由通知のものと同一であるから、再度の拒絶理由通知は不要である。
当裁判所の判断
1 取消事由1(相違点の判断の誤り)について (1) 審決は、本願発明1と引用例発明1の相違点について、「請求項1に係る発明(注、本願発明1)では、ペーパ巻始端に水又は接着剤液を塗布して巻取りを進行させるとともに、巻取軸を加熱することによって乾燥を促進させ、ペーパー巻芯部に保形層を形成させるものであるのに対し、引例1に記載された発明(注、引用例発明1)には、巻き初めにそのような処置を施すことについては何ら示されていない点」(審決謄本4頁22行目〜26行目)を相違点1とし、「巻取軸の加熱に関して、巻取軸抜き取りパートで巻取軸を抜去した後、巻取軸をグリッパーで巻取りパートの上方に配された加熱パートへ供給して加熱を行ない、加熱後、巻取軸をグリッパーにて巻取りパートに供給するものであるのに対し、引例1に記載された発明(注、引用例発明1)には、巻取軸を加熱することについては何ら開示されていない点」(同頁27行目〜31行目)を相違点2として認定した。また、審決は、本願発明2と引用例発明1の相違点について、「請求項2に係る発明(注、本願発明2)では、巻取手段に供給する巻取軸を加熱する巻取軸加熱手段と、この加熱巻取軸に巻き取るペーパーの巻始端に水又は接着剤を塗布する手段とを有しているのに対し、引例1に記載された発明(注、引用例発明1)は、これらの装置を有していない点」(同7頁1行目〜4行目)を相違点3とし、「請求項2に係る発明(注、本願発明2)では、巻取軸加熱手段が巻取手段の上方に配置されており、巻取軸がグリッパーによって巻取軸抜き取り手段から吊り上げられて巻取軸加熱手段に供給され、次いで、巻取手段に供給されているのに対し、引例1記載の発明(注、引用例発明1)は、巻取軸加熱手段を有しておらず、その結果、グリッパーは、巻取軸抜き取り手段から、直ちに、巻取軸を巻取手段に供給するものである点」(同頁5行目〜10行目)を相違点4として認定した。
そして、審決は、相違点1〜4に係る本願発明1及び2の構成は、引用例2に記載されいるか、又は引用例2に記載された技術事項から当業者が容易に想到できた事項であり、引用例発明1に引用例2の上記構成を採用したことに格別の困難があったとは認められないから、本願発明1及び2は、引用例発明1及び2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものと判断した(審決謄本5頁2行目〜6頁25行目、同7頁11行目〜末行)。
(2) これに対し、原告は、引用例発明1(甲第23号証)は、つかみ部材を巻取りパートと巻取軸抜き取りパートの2点間で往復運動させる基本構成を発明の不可欠の要素としており、他方、引用例2(甲第10号証)には、「この巻軸を加熱しておくことにより」(6欄3行目)との記載があるにすぎないから、引用例発明1に引用例2の巻軸を加熱するとの技術事項を適用するならば、巻取りパートにおいて加熱するか、又は巻取軸抜き取りパートにおいて加熱するかのいずれかしか想定し得ないと主張するので、検討するに、引用例1(甲第23号証)には、以下の記載がある。
ア「<発明が解決しようとする問題点>・・・従来の無芯紙ロール製造装置にあっては、巻軸の巻取位置への搬送および押抜装置の押圧部材による押抜動作を、いずれも無端状コンベアを利用して行うため、構造が複雑かつ大型になるほか、巻取りを終了したロールペーパの押抜位置への移動等は、エアシリンダによって作動する補助シリンダを用いて行う必要があり、その構成、動作が複雑化するなどの問題点があった。この発明はかかる従来の問題点に着目してなされたものであリ、巻軸のぺーパ巻取装置への移動および押抜装置の押抜部材による押抜動作をコンベアの回転動作によらずに、比較的小さい占有空間にて実施可能にするほか、ロールペーパの押抜位置へのガイドを簡単な構成にて実施できるようにした無芯紙ロールの製造装置および製造方法を提供することを目的とする。」(2頁右上欄3行目〜末行) イ「<作用>この発明における押抜装置は押抜位置にある支承部材を軸方向に往動させることによって、一端を係止した巻軸に対してロール体を押し抜かせるように動作し、1回の押し抜き動作ごとに元の位置に復帰し、次の押し抜き動作に備える。また、押し抜き終了後においては、上記支承部材上に残った巻軸を、巻軸移送部材によりつかんで、ぺ一パ巻取側の駆動ローラ上に移し替えさせるように動作する。このため、押し抜きや巻軸移送のために、従来のような大形のコンベアを用いる必要がなくなり、これらの各部材の設置空間を抑制でき、無芯紙ロールの製造装置全体を小形化できるように作用する。」(2頁右下欄11行目〜3頁左上欄4行目) ウ「<発明の実施例>・・・第1図はこの発明の無芯紙ロールの製造装置を示し、これがぺーパの巻取部Aと、ぺーパのロール体を押し抜いて取る押抜部Bと、ぺーパの切断部Cと、押抜部Bの巻軸をぺーパの巻取部Aに移送する巻軸移送部Dとからなる」(3頁左上欄7行目〜11行目)、「巻軸移送部Dは、支軸(30)を中心に揺動自在に設けられたシリンダ(31)と、このシリンダ(31)内を出入れするピストンロッド端に取り付けられた、つかみ部材(32)と、上記シリンダ(31)をピストンロッドの出入れによって揺動させるもう一つのシリンダ(33)とからなる。」(3頁左下欄14行目〜19行目)、「こうして、ロール体(4)が全て側壁外部に搬出されたときは、巻軸(1)は支承部材(16)と係止部材(18)上に架けわたされており、第1のシリンダ(31)のピストンロッド(34)が伸長して降下し、つかみ部材(32)により巻軸(1)をつかみ取った後、モータ(13)の逆転によって押抜部材(15)は往路に沿って復帰し、最右端に至って次の巻軸(1)の支承動作に備える。ところで、上記ロール体(4)の搬出後も巻軸(1)だけは係止部材(18)と部材(16)間に残存するが、シリンダ(33),(31)が動作して、つかみ部材(32)のピストンロッドを延ばして、
その残存する巻軸を・・・巻取部Aの駆動ローラ(2),(3)上に臨ませ、さらにつかみ部材(32)のつかみ動作を解除し、この駆動ローラ(2),(3)上にその巻軸を載置し、次のロール体の巻装動作のため待機させる。このようにして、ぺーパ(7)の巻取り、切断、押し抜きおよび巻軸(1)の移し替えが連続的に、しかも繰り返し実施され、無芯紙ロールが製造されるのである。」(4頁右上欄18行目〜左下欄19行目) エ「<発明の効果>以上のように、この発明によれば、無芯紙ロールの製造装置を無端状ベルトコンベアを用いない巻取部A、押抜部Bと、ぺーパの切断とのり付けとを離れた位置で実施する切断部Cと、巻軸移送部Dとから構成したので、
装置全体の構成を簡素化および小形化でき、かつ動作の信頼性を高いものにする等の効果が得られる。さらに、この無芯紙ロールの製造方法によれば、従来のような補助ガイドなどの複雑な補助部材や上記ベルトコンベアなどを省いて、ぺーパ送りなどの動作、工程の単純化を図っているため、ロール体や巻軸の移送や処理の速度を早めることができ、ロール体の製造スピードが向上する等の効果が得られる。」(4頁左下欄末行〜右下欄13行目) (3) 以上の記載によれば、従来の無芯紙ロール製造装置においては、巻軸の押抜位置から巻取位置への搬送を無端状コンベアを利用して行うため、構造が複雑かつ大型になるとの問題点があったことにかんがみ、引用例発明1(甲第23号証)の巻軸移送部Dは、巻軸の押抜位置からぺーパ巻取装置への移動を、支軸を中心に揺動自在に設けられたシリンダと、このシリンダ内を出入れするピストンロッド端に取り付けられたつかみ部材と、上記シリンダを揺動させるもう一つのシリンダとから成る巻軸移送部材により行うものであり、この構成により、ぺーパの巻取り、
切断、押し抜き及び巻軸の移し替えが、連続的に、しかも、繰り返し実施されるという効果、各部材の設置空間を抑制することができるため、無芯紙ロールの製造装置全体を小形化することができるという効果、ぺーパ送りなどの動作、工程の単純化を図っているため、ロール体や巻軸の移送や処理の速度を早めることができるという効果等が得られるものと認められる。
(4) 引用例2(甲第10号証)には、「巻軸1を加熱しておくと、噴霧した接着剤液が少々早く乾燥されてトイレットペーパー同志の仮着が早くなるから、径を小さくして巻軸1をトイレットペーパーロール7より引抜き際にトイレットペーパーロール7の巻き初め部に成形されたトイレットペーパーの仮着筒芯6によりトイレットペーパーロールの形状をより良く保つことができる」(3頁左下欄15行目〜右下欄2行目)と記載されており、この作用効果を奏するために、巻軸を加熱しておくとの上記技術事項を引用例1(甲第23号証)に適用することは、当業者にとって、容易に推考し得るものというべきである。
(5) そして、引用例発明1(甲第23号証)に対して、巻軸を加熱しておくとの引用例2記載の技術事項を適用する場合、加熱する場所としては、一連の工程の連続的かつ繰り返しの実施、各部材の設置空間の抑制、装置全体の小形化、ぺーパ送り動作、工程の単純化、巻軸の移送速度を早める等、引用例発明1の作用効果を阻害しない場所を選択する必要がある。また、加熱する場所への移送に巻軸移送部材を兼務させることができ、かつ、余計な移送が追加されないように、巻取り箇所、巻軸抜き取り箇所及び巻軸の巻取箇所へという一連の工程の中から、巻軸が静止する場所を採用することが相当であるが、そのような場所としては、巻取り箇所、巻軸抜き取り箇所、巻軸が上昇した巻軸抜き取り箇所の上方の箇所、又は前記箇所から巻軸が揺動されて移動した巻き取り箇所の上方という4箇所が挙げられる。一方、本願発明は、加熱する場所として、巻取手段の上方を採用しているが、
本件明細書の発明の詳細な説明の欄において、加熱する場所の特定により奏される効果として記載されているものは、上記(2)のとおり、ペーパーの巻取り、巻取軸の抜去、抜去巻取軸を加熱部へ供給し加熱する作業、巻取軸の加熱部から巻取り部への供給という一連の工程が、環状サイクルをもって遂行し得ること、また、巻取軸抜き取り部、巻取軸加熱部、巻取り部間を巻取軸吊送用のグリッパーにより連絡するだけの簡素な構成により所期の目的を有効に達成し得ることに限られており、このような効果は、加熱する場所が一連の工程から成る環状サイクル中にあれば奏することができる。そうすると、これら本件明細書の記載を総合するならば、加熱場所を上記4箇所から選択することは、当業者にとって、加熱から巻取開始までの時間、加熱装置の設置の容易性等に応じ適宜選択可能な設計事項というべきである。
(6) したがって、原告の主張は失当であり、審決の相違点の判断に誤りはない。
2 取消事由2(一事不再理原則の違反)について (1) 原告は、前審決は、特許法159条2項において準用する同法50条の適用により、拒絶理由通知の拒絶理由と同一の理由により拒絶されたとみなされるべきであるから、本件審決は、前審決と同一引用例及び同一適用法条をもって、再度、本願発明1及び2が特許を受けることができないとの審決をしたこととなると主張する。
しかしながら、本件審決に至る経緯は、次のとおりである。すなわち、前審決(甲第1号証)は、本件補正が公告時の本願発明1を変更するものであって不適法であると判断し、本願発明1の要旨を公告時の本件明細書のものと認定した上、これが引用例発明2と同一であり、本願発明1が特許法29条1項3号に掲げる発明に当たり特許を受けることができないとした。これに対し、前判決(甲第32号証)は、本件補正が公告時の本願発明1を変更するものではなく適法であると判断し、そうすると、本願発明1の要旨は本件補正に係る本件明細書のものと認定されるべきであり、これを公告時の本件明細書のものと認定した前審決は、発明の要旨の認定を誤ったものと判断して、前審決を取り消した。そして、本件審決(甲第33号証)は、本願発明1及び2の要旨を本件補正に係る本件明細書のものと認定した上、本願発明1及び2が引用例1及び2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、同条2項に掲げる発明に当たり特許を受けることができないと判断した。以上の経緯に照らせば、原告の上記主張は独自の見解であって失当というほかはない。
(2) 原告は、また、本件審決が民訴法上の一事不再理の大原則に違反すると主張するところ、刑事訴訟においては、ある事件について有罪無罪の実体判決又は免訴の判決がされた場合には、同一事件について再び審理することはできないという一事不再理の原則があるが、民事訴訟においては、訴訟物である法律効果は判決がされた後も新たに発生し又は消滅する可能性があり、厳密に同一の事件というものは考えられないから、上記のような一事不再理の原則はない。そこで、原告の上記主張を、本件審決が前判決の既判力(民事訴訟法114条)及び拘束力(行政事件訴訟法33条1項)に抵触する趣旨をいうものと解して更に検討することとする。
なお、民事訴訟における既判力の理論的根拠を一事不再理の原則に求める学説があるが、そのような学説も、既判力の効力自体を他の学説と別異に解するものではない。
(3) 前判決の既判力は、前審決がその拒絶査定不服審判請求の理由との関係で違法であることについて生じ、前審決とは別個の行政処分である本件審決の適否に影響を及ぼすものではない。したがって、一事不再理をいう原告の主張を前判決の既判力をいうものと解しても、本件審決の判断は前判決の既判力抵触しておらず、原告の主張は失当である。
(4) 前判決には、前審決を取り消した取消判決としての拘束力が生ずるから、
再度の審判手続において、審判官は、前審決を取り消すとの前判決の結論が導き出されるのに必要な理由中の認定判断と抵触する認定判断をすることは許されない。
しかしながら、本件審決は、前判決の認定判断と同様、本願発明1及び2の要旨を本件補正に係る本件明細書のものと認定した上、本願発明1及び2が引用例発明1及び2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとの、前判決が判断していない理由により原告の本件審判請求が成り立たないとしたものであるから、前判決の拘束力抵触するところはないというべきである。したがって、一事不再理をいう原告の主張を前判決の拘束力をいうものと解しても、原告の主張は失当である。
3 取消事由3(拒絶理由通知を欠く違法)について (1) 原告は、前審決が前判決によって取り消されたことにより、前審決の前提となる拒絶理由通知も取り消されたものと解すべきであるとした上、本件審決は特許法159条2項において準用する同法50条所定の拒絶理由通知を欠いている旨主張する。しかしながら、前審決の理由は、本願発明1が引用例発明2と同一であるから特許法29条1項3号に掲げる発明に当たるというものであり、本願発明1及び2が引用例発明1及び2に基づいて当業者が容易に発明をすることができ同条2項に掲げる発明に当たるとする本件審決の理由とは異なるから、前審決が前判決によって取り消されたことは、本件審決が拒絶理由通知を欠くかどうかとは関係がないばかりでなく、拒絶査定不服審判の請求が成り立たないとする審決が判決によって取り消されたからといって、行政手続上審決とは別個の行為である拒絶理由通知までが取消判決により効力を失うと解すべき法令上の根拠も見いだせない。
(2) かえって、本件特許出願については、本願発明1及び2が引用例発明2と同一であるから特許法29条1項3号の規定により特許を受けることができないとの理由で拒絶査定(甲第16号証)がされ、これに対する不服審判請求の後に本件補正の手続補正書が提出されたことにより、前置審査(特許法162条)の手続が開始されたところ、その手続中にされた拒絶理由通知書(甲第22号証)には、本件補正に係る本願発明1及び2について、引用例発明1及び2に基づいて当業者が容易に発明をすることができるから同条2項に掲げる発明に当たるとする、本件審決の理由と同一の理由が拒絶理由として記載され、これに対する原告の意見書(甲第24号証)では、本件補正に係る本願発明1及び2について、上記拒絶理由が妥当しない旨の意見が述べられている。そうすると、前置審査においてした上記拒絶理由通知及び意見書提出の手続は、本件審決の審判手続においてされたものとして効力を有し、本件審決が拒絶理由通知を欠くということはできないから、原告の上記主張はいずれにしても失当である。
4 以上のとおりであるから、原告主張の審決取消事由は理由がなく、他に審決を取り消すべき瑕疵は見当たらない。
よって、原告の請求は理由がないから、これを棄却することとし、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法7条、民事訴訟法61条を適用して、主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 篠原勝美
裁判官 岡本岳
裁判官 長沢幸男
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