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関連ワード 進歩性(29条2項) /  容易に発明 /  設定登録 /  請求の範囲 /  減縮 /  取消決定 / 
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事件 平成 14年 (行ケ) 61号 特許取消決定取消請求事件
原告 新日本石油株式会社
訴訟代理人弁理士 秋元輝雄
同 加藤宗和
被告 特許庁長官太田 信一郎
指定代理人 佐藤修
同 板橋一隆
同 森田 ひとみ
同 大橋良三
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 2002/08/29
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
主文 特許庁が異議2001−70671号事件について平成13年12月11日にした決定を取り消す。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
当事者の求めた裁判
1 原告 (1) 主文1項と同旨 (2) 訴訟費用は被告の負担とする。
2 被告 (1) 原告の請求を棄却する。
(2) 訴訟費用は原告の負担とする。
前提事実
以下の事実は,いずれも,当事者間に争いがなく,証拠上も明らかである。
1 特許庁における手続の経緯 原告は,発明の名称を「さび止め油組成物」とする特許第3083433号の特許(平成5年9月17日出願,平成12年6月30日設定登録,以下「本件特許」という。)の特許権者である。
本件特許に対し,請求項1(同項に係る発明を,以下「本件発明」という。)につき,特許異議の申立てがなされた。特許庁は,これを異議2001-70671号事件として審理し,その結果,平成13年12月11日,「特許第3083433号の請求項1に係る特許を取り消す。」との決定をし,平成14年1月9日,その謄本を原告に送達した。
(甲第1号証,第2号証,弁論の全趣旨) 2 決定の理由 決定の理由は,要するに,本件発明は,刊行物1(特開平3-47898号公報),同2(特開平2-252799号公報),同3(「潤滑通信」No.251 株式会社潤滑通信社発行),同4(「トライボロジー叢書2新版潤滑剤の実用性能」 株式会社幸書房発行),同5(「新版石油製品添加剤」 株式会社幸書房発行)に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,請求項1に係る特許は,特許法29条2項に違反してなされたものである,とするものである。
(甲第1号証ないし第7号証) 3 訂正審決の確定 原告は,本訴係属中,平成14年4月8日付けで,本件特許の出願の願書に添付した明細書につき,特許請求の範囲請求項1の訂正を含む訂正の審判を請求した。特許庁は,これを訂正2002-39088号事件として審理し,その結果,平成14年6月10日に上記訂正をすることを認める旨の審決(以下「本件訂正審決」という。)をし,その謄本は同月20日に原告に送達され,確定した。
(甲第14号証ないし第16号証,弁論の全趣旨) 4 本件訂正審決による請求項1の訂正の内容 (1) 本件訂正審決による訂正前の特許請求の範囲請求項1 「鉱油および/または合成油を基油として,これに組成物全量基準で, (1) 中性アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属スルフォネート,0.1〜20重量% (2) 全塩基価20〜500mgKOH/gの塩基性アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属スルフォネート,1.0〜30重量%,ならびに (3) 以下の(a)〜(c)の中から選ばれる少なくとも1種の化合物,0.1〜20重量% (a) 酸化ワックスおよび/またはその誘導体 (b) 多価アルコールの部分エステル (c) ラノリン脂肪酸誘導体 を必須成分として含有し,かつ組成物の40℃での動粘度が1〜150mm2/sであり,全塩基価が2〜30mgKOH/gおよび全塩基価(mgKOH/g)/全酸価(mgKOH/g)の比が4〜25であることを特徴とするさび止め油組成物。」 (2) 本件訂正審決による訂正後の特許請求の範囲請求項1(下線部が訂正部分) 「鉱油および/または合成油を基油として,これに組成物全量基準で, (1) 中性アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属スルフォネート,3.0〜20重量% (2) 全塩基価20〜500mgKOH/gの塩基性アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属スルフォネート,1.0〜30重量%,ならびに (3) 以下の(a)〜(c)の中から選ばれる少なくとも1種の化合物,0.1〜20重量% (a) 酸化ワックスおよび/またはその誘導体 (b) 多価アルコールの部分エステル (c) ラノリン脂肪酸誘導体 を必須成分として含有し,かつ組成物の40℃での動粘度が1〜150mm2/sであり,全塩基価が2〜30mgKOH/gおよび全塩基価(mgKOH/g)/全酸価(mgKOH/g)の比が4〜25であることを特徴とするさび止め油組成物。」 (甲第14号証ないし第16号証)
当裁判所の判断
上記事実の下では,本件特許の請求の範囲請求項1については,特許法29条2項に違反して登録された特許であることを理由に,その特許を取り消した決定(以下「本件取消決定」という。)の取消しを求める訴訟の係属中に,特許請求の範囲減縮を含む訂正の審判の請求がなされ,特許庁は,これを認める審決(本件訂正審決)をし,これが確定したということができる。
本件取消決定は,これにより,結果として,請求項1について,判断の対象となるべき発明の認定を誤ったことになる。この誤りが本件取消決定の結論に影響を及ぼすことは明らかである。したがって,本件取消決定は,取消しを免れない。
以上によれば,本訴請求は理由がある。そこで,これを認容し,訴訟費用の負担については,原告に負担させるのを相当と認め,行政事件訴訟法7条,民事訴訟法62条を適用して,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 山下和明
裁判官 阿部正幸
裁判官 高瀬順久