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関連ワード 進歩性(29条2項) /  容易に発明 /  設定登録 /  請求の範囲 /  減縮 /  変更 /  審決確定(審決が確定) /  取消決定 / 
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事件 平成 14年 (行ケ) 66号 特許取消決定取消請求事件
原告 ヤマハ株式会社
訴訟代理人弁理士 岡部惠行
被告 特許庁長官太田信一郎
指定代理人 谷川洋
同 杉山務
同 小林信雄
同 林栄二
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 2002/09/17
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
主文 1 特許庁が異議2001−71779号事件について平成13年12月17日にした決定を取り消す。
2 訴訟費用は各自の負担とする。
事実及び理由
原告の求めた裁判
主文第1項と同旨の判決。
訴訟費用は被告の負担とする。
前提となる事実
1 特許庁における手続の経緯 原告は,発明の名称を「演奏指示装置」とする特許第3120732号(本件特許)の特許権者である。
本件特許は,平成8年5月17日に特許出願され,平成12年10月20日に設定登録された(請求項の数は10)。
平成13年6月21日ローランド株式会社から本件特許請求の範囲の請求項1ないし5に係る発明(本件第1ないし5の発明)に対して特許異議の申立てがされ(異議2001-71779号),特許庁は,平成13年12月17日,「特許第3120732号の請求項1ないし5に係る特許を取り消す。」とした異議の決定(本件決定)をし,その謄本は平成14年1月15日に原告に送達された。
2 本件決定の理由の要旨 後記3の請求項1ないし5に係る本件第1ないし5の発明は,いずれも甲第3号証(実開平6-84471号公報で,決定における刊行物1)の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって,特許法29条2項により特許を受けることができないものであるので,同法113条2号の規定により,取り消されるべきものである。
3 後記5の訂正審決による訂正前の本件第1ないし5の発明の要旨【請求項1】 自動演奏データを読み出す読出し手段と,鍵盤の図形を表示するとともに,該表示された鍵盤の各鍵に対応して演奏者が行うべき押鍵から離鍵に至る範囲を示す鍵操作領域を表示する表示手段と,前記読出し手段によって読み出された自動演奏データに従って,前記鍵操作領域を前記表示された鍵盤に近づいていくようにスクロールするスクロール手段とを有し,前記鍵操作領域が,操作すべき鍵および操作すべきタイミングに応じた位置で,自動演奏曲の進行に応じてスクロール表示され,操作すべき鍵とその操作タイミングを表示することを特徴とする演奏指示装置。
【請求項2】 前記表示された鍵操作領域が対応する前記表示鍵盤の鍵に到達したときに,当該鍵の表示態様を変更する鍵表示態様変更手段を有することを特徴とする請求項1記載の演奏指示装置。
【請求項3】 演奏者が音高情報を入力するための鍵盤を有し,演奏者が前記鍵盤を押鍵したときに,当該押鍵に係る鍵の音高と前記読み出された自動演奏データの音高とを比較し,当該押鍵の正誤を判定する正誤判定手段を有し,前記鍵表示態様変更手段は,該正誤判定手段による判定結果に応じて表示態様を変更することを特徴とする請求項2記載の演奏指示装置。
【請求項4】 前記表示された鍵操作領域毎に,該鍵操作領域に対応する鍵の階名または音名を当該鍵操作領域の近傍に表示する階名/音名表示手段を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の演奏指示装置。
【請求項5】 前記表示された鍵操作領域が対応する前記表示鍵盤の鍵に到達したときに,演奏者が当該鍵操作領域に対応する押鍵をしない場合には,当該押鍵があるまで前記曲の再生および前記スクロールを一時停止する一時停止手段を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の演奏指示装置。
4 後記5の訂正審決による訂正後の本件第1ないし5の発明の要旨(下線部は,前記3と相違する箇所を示すものである。)【請求項1】 複数のイベント で構成 される 自動演奏データを読み出す読出し手段と,鍵盤の図形を表示するとともに,該表示された鍵盤の各鍵に対応して演奏者が行うべき押鍵から離鍵に至る範囲を示す鍵操作領域を表示する表示手段と,前記読出し手段によって読み出された自動演奏データに従って,前記鍵操作領域を前記表示された鍵盤に近づいていくようにスクロールするスクロール手段とを有し,前記鍵操作領域は,前記自動演奏 データ のイベント のオンオフ に応じて スクロール 方向における 長さが 規定 され ,前記自動演奏 データ のイベント の種類 に応じて 異なった表示態様 で表示 され ,操作すべき鍵および操作すべきタイミングに応じた位置で,自動演奏曲の進行に応じてスクロール表示され,操作すべき鍵とその操作タイミングを表示することを特徴とする演奏指示装置。
【請求項2】 前記表示された鍵操作領域が対応する前記表示鍵盤の鍵に到達したときに,当該鍵の表示態様を変更する鍵表示態様変更手段を有することを特徴とする請求項1記載の演奏指示装置。
【請求項3】 演奏者が音高情報を入力するための鍵盤を有し,演奏者が前記鍵盤を押鍵したときに,当該押鍵に係る鍵の音高と前記読み出された自動演奏データの音高とを比較し,当該押鍵の正誤を判定する正誤判定手段を有し,前記鍵表示態様変更手段は,該正誤判定手段による判定結果に応じて表示態様を変更することを特徴とする請求項2記載の演奏指示装置。
【請求項4】 前記表示された鍵操作領域毎に,該鍵操作領域に対応する鍵の階名または音名を当該鍵操作領域の近傍に表示する階名/音名表示手段を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の演奏指示装置。
【請求項5】 前記表示された鍵操作領域が対応する前記表示鍵盤の鍵に到達したときに,演奏者が当該鍵操作領域に対応する押鍵をしない場合には,当該押鍵があるまで前記曲の再生および前記スクロールを一時停止する一時停止手段を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の演奏指示装置。
5 訂正審決の確定 原告は,本訴係属中の平成14年6月3日,本件特許につき,特許請求の範囲減縮等を目的として,明細書の訂正をする審判を請求したところ(訂正2002-39134号),同年7月23日,当該訂正を認める旨の審決があり,その謄本は同年8月5日に原告に送達され,訂正審決は確定した。
原告主張の決定取消事由
本件決定は,第2の3に記載の訂正前の本件発明の要旨を認定し,これに基づき,第2の2のとおり,本件発明は特許法29条2項により特許を受けることができないものであるなどとしているが,第2の5のとおり特許請求の範囲減縮等を目的とする訂正を認める審決が確定し,本件発明の要旨が第2の4のとおり訂正されたことにより,本件決定は,結果的に本件発明の要旨の認定を誤ったことになり,瑕疵があるものとして取消を免れない。
当裁判所の判断
第2に記載の事実関係は,本件証拠及び弁論の全趣旨により認めることができ,これらの事実関係に照らせば,原告主張の事由により本件決定は取り消されるべきものであり(なお,訂正されたのは,形式的には請求項1に記載の発明であるが,請求項2ないし5に記載の発明は,請求項1に記載の発明を直接又は間接に引用しているので,これらについても結果として訂正されたことになる。),本訴請求は理由がある。
よって,原告の請求は理由があるからこれを認容し,訴訟費用の負担につき行訴法7条,民訴法62条を適用して,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 永井紀昭
裁判官 古城春実
裁判官 田中昌利