関連審決 | 審判1999-11516 |
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関連ワード | 進歩性(29条2項) / 容易に発明 / 相違点の認定 / 発明の詳細な説明 / 発明の概要 / 優先権 / 実質的に同一 / 置き換え / 容易に想到(容易想到性) / 実施 / 拒絶査定 / 請求の範囲 / 変更 / |
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元本PDF | 裁判所収録の全文PDFを見る |
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事件 |
平成
13年
(行ケ)
98号
審決取消請求事件
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原告 アールシーエーライセンシング コーポレーション 訴訟代理人弁理士 伊東忠彦、湯原忠男 被告 特許庁長官太田信一郎 指定代理人 谷川 洋、橋本恵一、小林信雄、林栄二 |
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裁判所 | 東京高等裁判所 |
判決言渡日 | 2002/10/03 |
権利種別 | 特許権 |
訴訟類型 | 行政訴訟 |
主文 |
原告の請求を棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 この判決に対する上告及び上告受理申立てのための付加期間を30日と定める。 |
事実及び理由 | |
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当事者の求めた裁判
1 原告 特許庁が平成11年審判11516号事件について平成12年10月2日にした審決を取り消す。 訴訟費用は被告の負担とする。 2 被告 主文と同旨 |
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当事者間に争いのない事実
1 特許庁における手続の経緯 原告は、昭和62年11月2日、発明の名称を「ビデオ表示装置」とする発明(以下「本件発明」という。)につき特許を出願し(1986年(昭和61年)11月4日の米国特許出願第926701号に基づく優先権主張)、平成11年4月28日に拒絶査定の謄本の送達を受けたので、拒絶査定に対する不服の審判を請求し(平成11年審判第11516号)、平成12年8月25日付け手続補正書(甲第6号証)により特許請求の範囲を補正したが、特許庁は、平成12年10月2日、「本件審判請求は成り立たない。」旨の審決をし、その謄本を同年11月13日、原告に送達した(出訴期間として90日付加)。 2 本件発明の要旨(平成12年8月25日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の記載) 予め定められたレベル以上の振幅をもったトリガ信号に応答して高電圧信号を発生させ、上記予め定められたレベル未満の非零の振幅をもったトリガ信号には実質的に応答しないで上記高電圧信号が発生されないようにする制御回路を具備し高電圧を発生させる高電圧発生手段と、 正常動作時には第1のレベル以上の振幅をもつ偏向周波数信号を発生し、偏向電流の切断のようなある種の異常動作のモードでは上記第1のレベル未満の非零の振幅をもった偏向周波数信号を発生させ、動作し続ける偏向出力装置を具備した偏向回路と、 上記偏向周波数信号に応答して、上記異常動作のモード中に上記高電圧が発生されないように、上記偏向周波数信号の変化に応じて上記トリガ信号の振幅を偏向することにより、上記正常動作中に上記予め定められたレベル以上の振幅をもった上記トリガ信号を発生させ、上記異常動作のモード中に上記予め定められたレベル未満の振幅をもった上記トリガ信号を発生させるパルス処理回路とを有する、ビデオ表示装置。 3 審決の理由の要旨 審決は、別紙審決の理由写し(以下「審決書」という。)のとおり、本件発明は、刊行物1(実願昭52-144487号(実開昭54-70320号公報)のマイクロフィルム、甲第7号証)に記載された発明及び刊行物2(特公昭56-6172号公報、甲第8号証)に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、と認定、判断した。 |
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原告主張の審決取消事由
審決は、刊行物1記載の発明と本件発明との対比を誤った結果、一致点及び相違点の認定を誤り(取消事由1)、相違点に関する判断を誤るとともに判断を遺脱し(取消事由2)、本件発明の想到容易性についての判断を誤った(取消事由3)ものであるから、違法であり、取り消されるべきである。 1 取消事由1(対比の誤り、一致点及び相違点の認定の誤り) 審決は、刊行物1記載の発明と本件発明との対比において、(1)刊行物1の「高圧安定化回路10」は本件発明の「制御回路(42)」に対応し、刊行物1の「高圧出力回路8及びフライバックトランス9」は本件発明の「高電圧発生手段(53,55)」に相当し、(2)刊行物1の「水平出力回路3及び水平偏向コイル4」は本件発明の「偏向回路(25)」に相当し、(3)刊行物1の「ダイオード27、コンデンサ28及び抵抗器30」は本件発明の「パルス処理回路(72)」に対応すると認定した(審決書3頁15行〜28行)。しかし、これらの認定は誤りであり、これを前提とする一致点及び相違点の認定も誤りである。 (1)「制御回路」及び「高電圧発生手段」についての対比の誤り ア 本件発明における「高電圧発生手段」、「制御回路」 本件発明の請求項の「高電圧発生手段」は、実施例の高電圧調整回路40、電界効果トランジスタ41及び駆動回路42から構成される「高電圧発生回路」に、請求項の「制御回路」は実施例の「高電圧調整回路40」に、それぞれ対応する。 (ア)「高電圧発生手段」 本件明細書の「4.図面の簡単な説明」の項(甲第2号証13頁)には、高電圧調整回路40、電界効果トランジスタ41及び駆動回路42が高電圧発生回路と対応する旨記載されている。この高電圧発生回路が「高電圧発生手段」に相当することは明らかである。 被告は、電界効果トランジスタ53、高電圧変成器55が「高電圧発生手段」であると主張するが、本件明細書には前記のとおり高電圧調整回路40、電界効果トランジスタ41及び駆動回路42が高電圧発生回路と対応する旨記載されているのであるから、被告の上記主張は誤りである。 (イ)「制御回路」 本件明細書(甲第2号証第11頁16〜第13頁5行)を参照すると、高電圧調整回路40は、予め定められたレベル以上の振幅をもったトリガ信号(トリガ・パルス)に応答して高電圧信号(高電圧)を発生させ、上記予め定められたレベル未満の非零の振幅をもったトリガ信号(トリガ・パルス)には実質的に応答しないで上記高電圧信号(高電圧)が発生されないように制御するものであるから、「制御回路」に相当することが明らかである。 さらに、本件明細書には、上記記載に加えて「前述のように、高電圧レベルは、 高電圧調整回路40から供給されるパルス幅変調出力信号によって生じるFET41のスイッチングの結果として発生される。」(同号証第10頁9行〜12行)と記載されており、これによれば、高電圧調整回路40から供給されるパルス幅変調出力信号によってFET41の切換が制御されるのであるから、FET41を制御する制御回路は、パルス幅変調出力信号を出力する高電圧調整回路40であると解される。 被告は、高電圧調整回路40によって駆動される駆動回路42が請求項に記載された「制御回路」であると主張するが、誤りである。駆動回路42は、高電圧調整回路40が生成した幅変調出力パルス信号を受けてFET41を単に駆動するだけであるから、制御回路ということはできない。このことは「高圧レベルは、高電圧調整回路40から供給されるパルス幅変調出力信号によって生じるFET41のスイッチングの結果として発生される。」(10頁9〜12行)との記載や「高電圧調整回路40の幅変調出力パルス信号は駆動回路42によって電界効果トランジスタ(FET)41のゲートに供給される。」(同号証8頁4〜6行)との記載からも明らかである(この記載によれば、FET41を制御する制御回路は、高電圧調整回路40であると解される。)。しかも、本件発明の制御回路が有する機能、すなわち、「予め定められたレベル以上の振幅をもったトリガ信号に応答して高電圧信号を発生させ、上記予め定められたレベル未満の非零の振幅をもったトリガ信号には実質的に応答しないで上記高電圧信号が発生されないようにする制御」を、駆動回路42が有することについては、本件明細書には記載されていない。したがって、駆動回路42が本件発明における制御回路であるとする被告の主張は誤っている。 イ 刊行物1記載の発明との対応関係 (ア) 本件発明の「高電圧発生手段」は、既に述べたとおり、実施例では高電圧発生回路40、41、42であるから、これに対応するものは、刊行物1においては「高圧安定化回路10」である。審決の「刊行物1の発明における「高圧安定化回路10」は、高圧出力回路8に電力を給電しているから、本件発明における「制御回路(42)」に対応する。」との認定は誤りである。 (イ) 本件発明の「制御回路」は、既に述べたとおり実施例では高電圧調整回路40であるから、これに対応するものは、刊行物1における「高圧安定化回路10」ではない。審決が本件発明の「制御回路」と刊行物1の「高圧安定化回路10」とが対応するとしたことは誤りである。 刊行物1の「高圧安定化回路10」は、トランジスタ25がオン状態のとき継続的に動作し続け、トランジスタ25がオフになると、動作を停止するものであり、 本件発明の「高電圧発生手段」を構成する高電圧調整回路40のようにトリガ信号で駆動されるトリガタイプの回路ではない。すなわち、高圧安定化回路10が動作しているときは、+B電源が出力端子14に出力され、高圧安定化回路10が動作していないときは、出力端子14の出力電圧はほぼ零になり、高圧出力回路8が動作しなくなって、高圧出力回路8への電力の供給を停止するのである。 以上のように、刊行物1の高圧安定化回路10は、本件発明のように「予め定められたレベル以上の振幅を持ったトリガ信号に応答して高電圧信号を発生させ、上記予め定められたレベル未満の非零と振幅をもったトリガ信号には実質的に応答しないで上記高電圧信号が発生されないようにする」(本件発明の請求項の記載)ものではなく、したがって、本件発明の「制御回路」に対応するものではない。 (2)「偏向出力装置を具備した偏向回路」についての対比の誤り ア 本件発明における「偏向出力装置」、「偏向回路」 (ア) 本件発明は「偏向出力装置を具備した偏向回路」(請求項の記載)を有するものであるが、この請求項の「偏向出力装置」は、実施例におけるトランジスタ24に、「偏向回路」は、実施例における水平発振回路22、水平駆動回路23及び出力回路25に、それぞれ対応する。 @ 本件明細書の「4.図面の簡単な説明」の項(甲第2号証13頁)には、水平発振回路22、水平駆動回路23及び共振リトレース形出力回路25は偏向回路手段と対応する旨記載されている。この偏向回路手段が請求項の「偏向回路」に相当することは明らかである。 A 本件明細書には「駆動回路23はトランジスタ24のような水平出力装置用の水平周波数スイッチング信号を発生する。トランジスタ24は、・・・出力回路25の一部を構成している。」(同6頁13行〜18行)、「水平偏向巻線31の接続が絶たれた場合のようなある種の故障状態の下でも、水平出力回路25を含む水平偏向回路は動作し続けることができる。」(同10頁19行〜11頁2行)、 「偏向巻線31の接続が絶たれた時のような水平偏向電流が生成されない異常な状態の間も、依然として水平偏向出力回路は動作し続け、」(同12頁15行〜18行)と記載されている。これらによれば、トランジスタ24は、「水平出力装置」と表現されているから、(水平)偏向出力装置である。 ここで、水平偏向出力回路25は、トランジスタ24、ダンパ・ダイオード26、抵抗27、及びリトレース・キャパシタ30から構成され、トランジスタ24が唯一の能動素子であるから、水平偏向出力回路25が異常な状態の間も動作し続けるためには、トランジスタ24が異常な状態の間も、動作し続けることとなる。 したがって、特許請求の範囲の「動作し続ける偏向出力装置を具備した偏向装置」に相当するものはトランジスタ24である。 してみると、正常動作時には第1のレベル以上での振幅をもつ偏向周波数信号を発生し、偏向電流の切断のようなある種の異常動作のモードでは上記第1のレベル未満の非零の振幅をもった偏向周波数信号を変成器35の2次回線に発生させるのは、トランジスタ24を含む水平偏向出力回路25又は水平偏向出力回路25を含む偏向回路である。 水平発振回路22、水平駆動回路23及び共振リトレース25は、「偏向回路手段」と対応する旨記載されているのであり、この「偏向回路手段」が請求項に記載の「偏向回路」に相当することは明らかである。 (イ) 被告は、請求項の「偏向回路」は実施例の共振リトレース形出力回路25に、「動作し続ける偏向出力装置」は実施例の変成器35に、それぞれ相当すると主張するが、誤りである。 @ 被告の主張は、符号25は出力回路であって、水平の共振リトレースによる偏向を行う出力回路であるから、「偏向回路手段」が直ちに「偏向回路」であるとはいえないというものであるが、本件明細書の「4.図面の簡単な説明」の項に記載されている偏向回路手段と請求項に記載されている「偏向回路」とは、「手段」という語の有無で異なるのみで、この「偏向回路手段」が「偏向回路」に相当することは、明らかである。 また、第1図における出力回路25は、水平発振回路22、水平駆動回路23及び共振リトレース形出力回路25で構成される偏向回路において、出力回路として機能する共振リトレース形出力回路であり、偏向回路ではない。 A 請求項の「動作し続ける偏向出力装置」は変成器35であるという被告の主張は、トランジスタ24が動作し続けるためには、偏向調整回路37からの実行B+電圧が巻線34を介して、このトランジスタ24に供給される必要があることを理由とするものであるが、当該水平偏向調整回路37は、偏向回路B+電圧そのものを生成するものではなく、単に、偏向回路に供給される実効B+電圧を制御するものであるから、「トランジスタ24が動作し続けるためには、偏向調整回路37からの実行B+電圧が巻線34を介して、このトランジスタ24に供給される必要がある」との解釈は誤りであり、当該解釈を前提とした主張も誤りである。 イ 刊行物1記載の発明との対応関係 審決は、刊行物1の発明における「水平出力回路3及び水平偏向回路4」が本件発明における「偏向回路」(25)に相当すると認定したが誤りである。 (ア) 本件発明の請求項の「偏向回路」は、既に述べたとおり、実施例では、水平発振回路22、水平駆動回路23及び出力回路25であり(「偏向出力装置」は実施例ではトランジスタ24)、これに対応するものは、刊行物1においては、水平発振回路1、水平ドライブ回路2及び水平出力回路3から構成される偏向回路である。 (イ) 被告は、刊行物1の「水平出力回路3及び水平偏向回路4」が本件発明の「偏向回路」に相当すると主張するが、これらの回路は、所定の水平同期信号を出力するか(正常時)しないか(異常時)のどちらかであり(なお、水平偏向コイル4の接続が絶たれた場合又は水平偏向コイル4が存在しない場合の異常モードの認識はない。)、本件発明のように「正常動作時には第1のレベル以上の振幅をもつ偏向周波信号を発生し、偏向電流の切断のようなある種の異常動作のモードでは上記第1のレベル未満の非零の振幅をもった偏向周波数信号を発生させ」る(本件発明の請求項の記載)ものではない。 (3)「パルス処理回路」についての対比の誤り ア 本件発明における「パルス処理回路」 本件発明の「パルス処理回路」は、実施例においてはパルス処理回路72である。 イ 刊行物1記載の発明との対応関係 本件発明の「パルス処理回路」(72)に対応するものは、刊行物1には存在しない。すなわち、本件発明の「高電圧発生手段」に対応するものは、前記のとおり刊行物1の高圧安定化回路10であるところ、刊行物1の高圧安定化回路10はトリガタイプの回路ではないので、刊行物1記載の発明においては本件発明のトリガパルス源に対応するものがなく、パルス処理回路に対応する回路も存しないのである。 審決は、本件発明の「パルス処理回路」に対応するものは、刊行物1においてはダイオード27、コンデンサ28及び抵抗器30から構成される処理回路であるとしているが、誤りである。すなわち、刊行物1のダイオード27、コンデンサ28及び抵抗器30は、整流回路又は平滑回路として記述されているが、端子35に印加されたパルスのピークレベルを、コンデンサ28の両端のDC電圧とするのであるから、供給されたパルスのピークレベルに対応したDCレベルに変換するピーク値検出器である。したがって、この回路は、本件発明のように「上記偏向周波数信号に応答して、上記以上動作のモード中に上記高電圧が発生されないように、上記偏向周波数信号の変化に応じて上記トリガ信号の振幅を偏向することにより、上記正常動作中に予め定められたレベル以上の振幅をもった上記トリガ信号を発生させ、上記以上動作のモード中に上記予め定められたレベル未満の振幅をもった上記トリガ信号を発生させる」(本件発明の請求項の記載)ものではない。 (4)一致点及び相違点の認定の誤り(相違点の看過) 本件発明と刊行物1記載の発明との対比における前記(1)ないし(3)の認定が誤りである以上、審決の一致点及び相違点の認定も誤りである。すなわち、審決は、次の@〜Bの相違点を看過している。 @本件発明は、予め定められたレベル以上の振幅をもったトリガ信号に応答して高電圧信号を発生させ、上記予め定められたレベル未満の非零の振幅をもったトリガ信号には実質的に応答しないで上記高電圧信号が発生されないようにする制御回路を具備し高電圧を発生させる高電圧発生手段を有しているのに対し、刊行物1記載の発明は、このような高電圧発生手段を有していない点 A本件発明は、正常動作時には第1のレベル以上の振幅をもつ偏向周波数信号を発生し、偏向電流の切断のようなある種の異常動作のモードでは上記第1のレベル未満の非零の振幅をもった偏向周波数信号を発生させ、動作し続ける偏向出力装置を具備した偏向回路を有しているのに対し、刊行物1記載の発明は、このような偏向回路を有していない点 B本件発明は、偏向周波数信号に応答して、異常動作のモード中に上記高電圧が発生されないように、偏向周波数信号の変化に応じて上記トリガ信号の振幅を変更することにより、正常動作中に上記予め定められたレベル以上の振幅をもった上記トリガ信号を発生させ、異常動作のモード中に上記予め定められたレベル未満の振幅をもった上記トリガ信号を発生させるパルス処理回路を有しているのに対し、刊行物1記載の発明は、このようなパルス処理回路を有していない点 2 取消事由2(相違点についての判断の遺漏と判断の誤り) (1)「偏向回路」に関する判断の遺漏及び相違点(1)についての判断の誤り ア 「偏向回路」に関して、審決は、相違点(1)として、本件発明においては「偏向出力装置」を具備するのに対し、刊行物1記載の発明はこれを具備していない点を挙げ(審決書4頁4行、5行)、刊行物1の「偏向回路」が「偏向出力装置」を具備していない点については判断しているが、この「偏向回路」が正常動作時には第1のレベル以上の振幅をもつ偏向周波数信号を発生し、偏向電流の切断のようなある種の異常動作のモードでは上記第1のレベル未満の非零の振幅をもった偏向周波数信号を発生させる点について判断していない。当該判断は、結論に影響を及ぼすものであるから、判断の遺漏として審決は取り消されるべきものである。 イ 審決は、審決認定の相違点(1)について、刊行物1の発明における「偏向回路」に本件発明の「偏向出力装置(35)」に相当する「水平出力トランス10」を具備させることは当業者であれば容易になし得ることであると判断した(審決書4頁12行〜19行)が、本件発明の動作し続ける「偏向出力装置」は、 トランジスタ24に対応するものであり、変成器35に対応するものではないから、「偏向出力回路」が変成器35に対応するものであることを前提とした当該判断も誤りである。 (2)「処理回路」に関する判断の遺漏及び相違点(2)についての判断の誤り ア 「処理回路」に関して、審決は、相違点(2)として、本件発明においては「トリガ信号」を発生する「パルス処理回路」であるのに対し、刊行物1記載の発明においては「バイアス」を発生する「処理回路」である点を挙げて(審決書4頁6行〜8行)判断しているが、刊行物1の記載における、バイアスを発生する「ダイオード27、コンデンサ28及び抵抗器30から構成される処理回路」が、 偏向周波数信号の変化に応じて異常動作のモード中に高電圧が発生されないように、偏向周波数信号の変化に応じて上記トリガ信号の振幅を変更することにより、 正常動作中に上記予め定められたレベル未満の振幅をもったトリガ信号を発生させる点については判断していない。当該判断は、結論に影響を及ぼすものであるから、判断の遺漏として審決は取り消されるべきものである。 被告は、「処理回路」については、審決の理由5の(2)の相違点(2)の検討(審決書4頁20行〜32行)の中で判断している旨主張する。 しかしながら、審決における「水平偏向パルスの正常動作・異常動作に応じて、 その「バイアス」の振幅が変更され」(審決書4頁25、26行)は、「水平偏向パルスの有無に応じて、その「バイアス」のレベルが変更され」ることを意味するから、この判断は、本件発明における「水平偏向回路に故障が生じた場合は、巻線34を流れる電流は消滅し、高電圧調整回路40用のトリガ・パルスは発生せず、 高電圧信号は発生しない。」場合の判断である。「水平偏向巻線31の接続が断たれた偏向電流の切断のような場合は、水平偏向出力回路25を含む水平偏向回路は動作し続け、巻線34を通って電流が流れる。その結果、高電圧調整回路40をトリガするのに充分な振幅をもったパルス(偏向周波数信号)が、巻線部分36Bに生じる場合があり、そのような場合では、このパルスにより高電圧信号が発生される。これによりCRTが損傷されることとなる」不具合を解決するために、「パルス処理回路72は、巻線部分36Bに生じたパルスの振幅を変更(処理)して、水平偏向回路の動作が正常な間は高電圧調整回路40をトリガするレベルのパルスとし、水平偏向回路の動作が異常な間は高電圧調整回路40をトリガしないようなレベルとする」ようにパルス処理回路72が処理することについては何ら判断されていない。 また、審決は、「パルスの正常動作・異常動作の変化」について判断しているが、本件発明は、偏向周波数信号の正常動作・異常動作の変化についてではなく、 「偏向周波数信号の変化に応じて、上記トリガ信号の振幅を変更する」ものであるので、審決は、「偏向周波数信号の変化に応じて、上記トリガ信号の振幅を変更する」点については判断していない。 イ 審決は、「「バイアス」は、水平偏向パルスの正常動作・異常動作の変化に応じて、その「バイアス」の振幅が変更され、その振幅は、正常動作では所定バイアスレベル以上変更され、異常動作では所定バイアスレベル未満に変更される。」(審決書4頁25行〜28行)と認定しているが、バイアスとは「振動現象で、振動の中心位置から測った変位の最大値。ふりはば」であるから、バイアスの大きさを「振幅」ということはできない。審決は、「バイアス」が、トリガパルスのように振幅を有することを前提として判断したものであるから、その判断の前提において誤っているものである。 (3)相違点(3)についての判断の誤り 審決は、相違点(3)として、本件発明においては「非零の振幅をもったトリガ信号」であるのに対し、刊行物1記載の発明においては「零の振幅をもったバイアス」である点を挙げ(審決書4頁9行〜11行)、刊行物1記載の発明における「偏向回路」に偏向出力装置を具備させると、当然に「信号」は「非零の振幅をもったバイアス」になり、この「非零の振幅をもったバイアス」は実質的に「非零の振幅をもったトリガ信号」といえるとの理由により、相違点(3)は当業者であれば容易になし得る旨判断した(審決書4頁33行〜5頁3行)が、本件発明の「偏向出力回路」は、トランジスタ24に対応するものであり、変成器35に対応するものでなく、しかも、バイアスの大きさを「振幅」ということもできないことは前記のとおりであるから、その判断は誤りである。 3 取消事由3(想到容易性についての判断の誤り) 審決は、本件発明は刊行物1、2の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたと判断したが、刊行物1記載の発明と刊行物2記載の発明を組み合わせても本件発明にならないから、審決の判断は誤りである。 @ 刊行物1に記載された発明と刊行物2に記載された発明とを組み合わせた場合は、刊行物1の発振回路6が刊行物2の第2図における水平出力回路からのパルスで置き換えられることになる。しかし、この組合せでは、本件発明におけるパルス処理回路がなく、本件発明とはならない。 A 刊行物1に記載された発明と刊行物2に記載された発明とを組み合わせて、 刊行物1の端子15へ印加する制御信号を、刊行物2に記載されているようにフライバック用2次巻線から得たとしても、その結果の回路は、刊行物1の端子15に印加される信号が、フライバックトランス9のフライバック用2次巻線から得られるだけであり、本件発明の構成にはならない。 B 刊行物1に記載された発明では、水平偏向コイル4の接続が断たれた場合又は水平偏向コイル4が存在しない場合に、ブラウン管面を焼損し、ブラウン管の保護ができない。 同じく、刊行物2に記載された発明では、水平偏向コイル5の接続が断たれた場合又は水平偏向コイル5が存在しない場合に、ブラウン管面を焼損し、ブラウン管の保護ができない。 したがって、刊行物1記載の発明と刊行物2記載の発明とを組み合わせても、水平偏向コイルの接続が断たれた場合又は水平偏向コイルが存在しない場合の異常動作モードに対応できない。 被告は、刊行物1においても、水平出力回路3の負荷である変更コイル4に異常が生じた場合には、水平出力回路3に負荷がなくなることであるから、水平出力回路3の出力端子35の水平偏向パルスはほぼ零となる旨主張する。しかし、偏向コイル4に異常が生じた場合であっても、水平出力回路3からは水平偏向信号が出力され、その出力が端子35に印加されるから、当該主張は誤りである。 以上のとおりであるから、本件発明は刊行物1、刊行物2に基づいて当業者が容易になし得たものとはいえないから、審決の判断は誤りである。 |
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被告の反論の要点
1 取消事由1に対して (1)「制御回路」及び「高電圧発生手段」について ア 本件発明における「制御回路」、「高電圧発生手段」 (ア) 「高電圧発生手段」 @) 本件発明における「高電圧発生手段」は、「高電圧を発生させる」ものであって、このものは「制御回路」を有している。本件発明の実施例では、FET53及び高圧変成器55が「高電圧発生手段」である。 一般に、高電圧を発生させる高電圧発生手段は、甲第8号証(刊行物2)を例にとると、第1ないし第3図に示されているような高圧出力トランジスタ6及び昇圧用のトランス7からなり、+Vと表示されている電源がB電源回路から供給されて高電圧を発生するものである(このB電源回路が、本件発明においては「制御回路」に相当し、刊行物1の発明においては「高圧安定化回路10」に相当する)。 A)原告は、本件発明の高電圧発生手段は、高電圧調整回路40,電界効果トランジスタ41及び駆動回路42から構成される高電圧発生回路であると主張する。 しかしながら、本件明細書には、「FET53の導通により端子51に設定された電圧源から高電圧変成器55の1次巻線54中に電流を流通させる。それによって3次巻線すなわち高電圧巻線56の両端間に高電圧を発生させ、この電圧はCRT13の高電圧端子すなわちアルタ端子57に供給される。」(甲第2号証9頁3行〜8行)と記載されており、これによれば、FET53が導通し、高電圧変成器55の1次巻線54中に電流を流通させることで、高電圧端子57に高電圧が供給される。したがって、高電圧を発生させるのは、「FET53と高電圧変成器55」であり、この「FET53と高電圧変成器55」を動作させるのが端子51に電圧を設定する「電圧源」である。原告のいう「高電圧発生回路」は、「高電圧発生手段」を動作させる「電圧源」であって、「高電圧発生手段」ではない。 原告は、「高電圧発生手段」と「高電圧発生回路」とが同じであるという前提に立って主張しているが、その前提自体が本件明細書の記載に基づくものではなく、 失当であるから、これに基づく主張も失当である。 (イ) 「制御回路」 @) 請求項に記載された「制御回路」に対応するものは、実施例ではFET41を含む「駆動回路42」である。 「制御回路」の語は、本件明細書には記載されていない。そこで、審決は、本件明細書の記載、特に「FET41の切換の制御の結果として端子51における電圧レベルを「制御」することにより高電圧レベルの調整が行われる」(同号証9頁11行〜13行)との記載及び第1図からみてFET41を含む駆動回路42が本件発明の「制御回路」に対応すると認定した。すなわち、当該記載によると、高電圧レベルの調整を行うのは端子51における「電圧レベルを制御するFET41」であるから、「FET41が含まれる駆動回路42」は機能的にみて「制御回路」といえるものである。 A) 原告は、実施例の高電圧調整回路40が「制御回路」であると主張するが、高電圧調整回路40が制御することに関しての記載はない。高電圧調整回路40についての記載をみると、「巻線部分36Bの両端間に発生する電圧は、 高電圧調整回路40に供給される入力すなわちトリガ・パルスを生成するために使用される。・・・高電圧調整回路40の振幅変調出力パルス信号は駆動回路42によって電界効果トランジスタ(FET)41のゲートに供給される」(同号証第7頁下から3行〜第8頁6行)と記載されている。すなわち、「高電圧調整回路40」には、トリガ・パルスが入力され、幅変調出力パルス信号が出力されるだけであって、原告が主張するように「制御するもの」との記載はない。原告の主張は本件明細書の記載に基づかない主張であって失当である また、原告は、「高電圧調整回路40」の出力が「駆動回路42」に入力されることを根拠に、「高電圧調整回路40」が「駆動回路42」を制御する旨主張する。しかし、原告主張のように解すると、回路が数段にわたり連続する場合には、 前段の回路が後段の回路を制御することとなり、すべて一般の回路は制御回路であるということになってしまうから、原告の上記主張は失当である。 イ 刊行物1記載の発明との対応関係 (ア) 「高電圧発生手段」 本件発明の「高電圧発生手段」に相当するものが刊行物1に記載された「高圧出力回路8及びフライバックトランス9」であるとした審決の認定に誤りはない。 本件発明の「高電圧発生手段」は、「高電圧を発生させる」ものであって、「制御回路」を具備するものである。 一般に、高電圧を発生させる高電圧発生手段は、甲第8号証(特公昭56-6172)の第1、2、3図に示されているように、高圧出力トランジスタ及び昇圧用のトランスからなり、これらの高電圧発生手段は、+Vと示されている電源がB電源回路から供給されて高電圧を発生するものである。そして、このB電源回路が、 本件発明においては「制御回路」に相当し、刊行物1の「高圧安定化回路10」に相当する。 また、一般的にみて、刊行物1の「高圧出力回路8、フライバックトランス9」は、高電圧を発生させる高電圧発生手段である。 (イ) 「制御回路」 本件発明の「制御回路」に相当するものが刊行物1の「高圧安定化回路10」であるとの審決の認定に誤りはない。 刊行物1の「高圧安定化回路10」は高圧出力回路8に電力を給電しているから、本件発明の「制御回路42」に対応する。 原告は、刊行物1の「高圧安定化回路10」は被制御回路を制御するものではないから「制御回路」ではない旨主張する。 しかしながら、刊行物1の「高圧安定化回路10」の機能は、安定化されたDC電圧をフライバックトランス9を介して高圧出力回路8に供給することによって「高圧」を安定化することにある。すなわち、高圧が変動した場合(例えば、ブラウン管5に表示される映像の種類に応じて電子ビームが変動する場合)には、高圧安定化用抵抗12へ流れる電流が多く(少なく)なり、「高圧安定化回路10」の出力端子14の電圧が低く(高く)なる(甲第7号証3頁)ので、「高圧安定化回路10」は、その出力端子14の安定化されたDC電圧を制御することによって「高圧」を安定化している。したがって、高圧安定化回路10は、「制御」しているといってよい。 本件発明においても、本件明細書に、「高電圧調整回路40には導線60および分圧器61を介して高電圧レベルが帰還される。FET53は一定の周波数、一定のデューティ・サイクルで切換えられるのでFET41の切換の制御の結果として端子51における電圧レベルを制御することにより高電圧レベルの調整が行われる」(甲第2号証9頁8行〜13行)と記載されており、刊行物1と同様に「高圧」を安定化することが「制御」とされている。 (2)「偏向回路」について 本件発明の「偏向回路(25)」が刊行物1の「水平出力回路3及び水平偏向コイル4」に相当するとした審決の認定、判断に誤りはない。 ア 本件発明における「偏向回路」 (ア) 一般に、(水平)偏向回路は、甲第8号証の第1、2、3図に示されているように、水平出力トランジスタ4及び偏向コイル5からなる。刊行物1に記載された(水平)偏向コイルも「水平出力回路3及び水平偏向コイル4」からなっている。 本件明細書においては、発明の詳細な説明に、「出力回路25は端子H、H´よりCRT13のネックに配置された水平偏向巻線31に水平偏向周波数の偏向電流を流通させ、この水平偏向巻線31は電子ビーム15を表示スクリーン16を横切って偏向するための水平偏向磁界を発生する」(甲第2号証6頁下から2行〜7頁3行)と記載されており、この記載によれば、出力回路25及び水平偏向巻線31が、水平偏向パルスを発生させることで、電子ビーム15を表示スクリーン16を横切って偏向している。 したがって、本件発明における「偏向回路」が出力回路25であるとした審決の認定に誤りはない。 (イ) 原告は、本件発明の「偏向回路」は、「正常動作時には第1のレベル以上の振幅をもつ偏向周波数信号を発生し、偏向電流の切断のようなある種の異常動作モードでは上記第1のレベル未満の非零の振幅をもった偏向周波数信号を発生させる」作用を行うものである旨主張するが、上記作用を行うものは、特許請求の範囲の記載によれば「偏向出力装置」であり「偏向回路」ではないから、原告の上記主張は理由がない。 また、原告は、本件明細書の図面の簡単な説明には、水平発信回路22、水平駆動回路25、共振リトレース形出力回路が「偏向回路手段」である旨記載されており、この「偏向回路手段」が即「偏向回路」である旨主張する。 しかしながら、図面の簡単な説明には「25・・・共振リトレース形出力回路」と記載されているところ、本件明細書の発明の詳細な説明中では、「水平偏向出力回路25」とも記載されており(同号証11頁1行及び12頁下から4行)、さらに、第1図には25として、符号25の下に下線が付されている。この下線は、第1図に示されている他の符号に関しての下線(例えば、35、72 、42 )からみて、下線なしの符号で示されたものを総称するものである。したがって、符号25は出力回路25であって、水平の共振リトレースによる偏向を行う出力回路であるから、本件発明における「偏向回路」に相当する。「偏向回路手段(22,23,25)」が「偏向回路」に相当するとの原告の主張は、本件明細書及び図面の記載に基づかない主張であって、失当である。 さらに、原告は、特許請求の範囲に記載された「動作し続ける偏向出力装置」はトランジスタ24に相当する旨主張する。 しかしながら、偏向出力装置に関して、本件明細書には、「水平偏向電圧は変成器35の1次巻線の両端間に供給され、それによって・・・2次巻線36の両端間に電圧が誘起される。巻線の部分36Aの両端間に発生した電圧は水平偏向調整回路37に供給される。偏向調整回路37は、巻線部分の36Aの両端間に発生する感知電圧に従って偏向回路に供給される実効B+電圧を制御することによって水平偏向電流の振幅を制御するように作用する。」(同号証7頁9〜17行)、「水平偏向巻線31の接続が絶たれた場合のようなある種の故障状態の下でも、水平偏向出力回路25を含む水平偏向回路は動作し続けることが出来る。偏向巻線31が存在しないときでも巻線34を通って十分な電流が流れることが出来、巻線部分36Bから高電圧調整回路40をトリガするのに十分の振幅をもったパルスを発生させることが出来る。」(同10頁下から2行〜11頁6行)と記載されている。 すなわち、偏向調整回路37は、実効B+電圧を制御することによって水平偏向電流の振幅を制御すること、偏向巻線31が存在しないときでも巻線34を通って充分な電流が流れることができ、巻線部分36Bから高電圧調整回路40をトリガするのに充分の振幅をもったパルスを発生させることができることが記載されており、トランジスタ24が動作し続けるためには、偏向調整回路37からの実効B+電圧が巻線34を介して、このトランジスタ24に供給される必要がある。 したがって、動作し続ける偏向出力装置は巻線34を含む変成器35であり、この変成器35を具備しているのが偏向回路25であるから、原告の主張は本件明細書の記載に基づかない主張であって失当である。 イ 刊行物1記載の発明との対応関係 以上のとおり、本件発明の「偏向回路」が回路25であることは明らかであるから、「偏向回路(25)」に刊行物1記載の発明の「水平出力回路3及び水平偏向コイル4」が対応するとした審決の認定に誤りはない。 (3)パルス処理回路について 審決が本件発明のパルス処理回路は刊行物1のダイオード27、コンデンサ28及び抵抗器30に対応するとしたことに誤りはない。 審決は、本件発明の実施態様としての「パルス処理回路(72)」と、刊行物1の「ダイオード27、コンデンサ28及び抵抗器30から構成される処理回路」とを対比するに当たって、両者は具体的に異なるから「対応する」との表現を用いた上、本件発明における「パルス処理回路」を検討すると、刊行物1の「処理回路」と技術的にみてその機能が同じであるから、両者は実質的に同一と判断したものである。この審決の認定に誤りはない。 (4)一致点及び相違点の認定の誤りに対して 以上のとおり、審決における本件発明と刊行物1記載の発明との対比に誤りはない。したがって、審決における一致点及び相違点の認定にも誤りはない。 2 取消事由2(相違点についての判断の遺漏及び判断の誤り)に対して (1)「偏向回路」及び相違点(1)に関して ア 特許請求の範囲によると「正常動作時には第1のレベル以上の振幅をもつ偏向周波数信号を発生し、偏向電流の切断のようなある種の異常動作のモードでは上記第1のレベル未満の非零の振幅をもった偏向周波数信号を発生させる」ものは、「偏向出力装置」であって「偏向回路」ではないから、原告の主張は特許請求の範囲に基づかない主張であって、失当である。 イ 本件発明の偏向周波数信号を発生させ、動作し続ける「偏向出力装置」は、巻線部分36A、36Bを備えた「変成器35」である。審決の誤りをいう原告の主張は、「偏向出力装置」がトランジスタ24に対応することを前提とするものであり、その前提が誤りであるから、主張は失当である。 (2)「処理回路」及び相違点(2)に関して 本件発明の「パルス処理回路」は、詳細な説明(甲第2号証11頁16、17行)を参照すると、供給されたパルスを微分し、かつ減衰するだけであり、当業者にとっては設計的事項といえるものである。 刊行物1記載の発明の「処理回路」については、審決は、審決の理由の5の(2)において、「また、この「バイアス」は、水平偏向パルスの正常動作・異常動作の変化に応じて、その振幅は、正常動作では所定バイアスレベル以上に偏向され、異常動作では所定バイアスレベル未満に変更される。」旨判断している。 以上のことを前提として、審決は、刊行物1の発明における「バイアス」を発生する「ダイオード27、コンデンサ28及び抵抗器30から構成される処理回路」は、実質的に本件発明における「トリガ信号」を発生する「パルス処理回路」といえる、と判断したものであって、その判断に誤りはない。 原告は、「バイアス」のレベルが変更されるとしても、「バイアス」レベルを振幅ということはできない旨主張するが、レベルとは水準であって「バイアス」のレベルが変更されるとは「バイアス」の水準が変更されること、すなわち「バイアス」という信号の振幅が変更されることであるから、「バイアス」のレベルを振幅ということができないとの原告の主張は失当である。 (3) 相違点(3)に関して 本件発明の「偏向出力回路」が変成器35に対応するものであること、及びバイアスの大きさを「振幅」ということができることは前記のとおりであるから、相違点(3)についての審決の判断に誤りはない。 3 取消事由3(想到容易性の判断の誤り)に対して 本件発明が刊行物1、2に基づいて当業者が容易に想到し得たものであるとした審決の判断に誤りはない。原告は刊行物1と刊行物2を組み合わせても本件発明にはならないと主張するが、理由がない。 @ 原告は、刊行物1の発振回路6を刊行物2の水平出力回路からのパルスで置き換えた場合は、本件発明におけるパルス処理がなく、本件発明とはならないと主張する。 しかし、刊行物1に記載された「処理回路」は、本件発明における「パルス処理回路」と同様に、従来、高電圧発生手段と偏向回路とが一体の回路で行われていたために生じる高電圧の変動によるラスタサイズの変化をさけるために、高電圧発生手段と偏向回路とを分離、独立の回路としたものであるが、高電圧発生手段が独立して動作し、ブラウン管面を損傷する問題が発生し、この問題に対処するために設けられたものである。したがって、高電圧発生手段が独立して動作する刊行物1において、偏向回路からの水平偏向パルスを高電圧発生手段に「パルス処理回路」を介して供給することは不可欠であり、刊行物1に「パルス処理回路」が記載されていることは明らかである。 A 原告は、刊行物1の端子15に印加される信号を、フライバックトランスの2次巻線から得るようにしたとしても、本件発明の構成とはならないと主張する。 しかし、審決は、刊行物1の水平出力回路3に刊行物2の記載の水平出力トランス10を具備させることは容易であると判断しているのであって刊行物2の昇圧用のトランス7から得るとはしていない。 B また、原告は、刊行物1記載の発明、刊行物2記載の発明は、いずれも水平偏向コイル4が切断された場合にブラウン管面を保護することができず、異常動作モードに対応することができないから、両者を組み合わせても、本件発明とはならないと主張する。 しかし、刊行物1においても、水平出力回路3の負荷である偏向コイル4に異常が生じた場合(偏向コイル4が断線した場合、偏向コイル4が接続されなかった場合)には、水平出力回路3に負荷がなくなることであるから、水平出力回路3の出力端子35の水平偏向パルスはほぼ零となることは当業者に自明のことである。 本願特許請求の範囲には「偏向電流の切断のようなある種の異常モード」と記載されており、刊行物1、2記載の発明も「ある種の異常動作のモード」に対応するものである したがって、原告の主張は誤りである。 |
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当裁判所の判断
1 取消事由1(対比の誤り及びこれに基づく一致点及び相違点の認定の誤り)について 原告は、審決が本件発明と刊行物1記載の発明との対比において、(T)本件発明の「制御回路(42)」に刊行物1記載の発明の「高圧安定化回路10」が、本件発明の「高電圧発生手段(53,55)」に刊行物1記載の発明の「高圧出力回路8及びフライバックトランス9」がそれぞれ対応し、(U)本件発明の「偏向回路(25)」に刊行物1記載の発明の「水平出力回路3及び水平コイル4」が相当し、(V)本件発明の「パルス処理回路(72)」に刊行物1記載の発明の「ダイオード27、コンデンサ28及び抵抗器30」が対応する旨認定したこと(審決書3頁15行〜28行)は誤りであり、その結果一致点及び相違点の認定も誤っていると主張するので、以下順次検討する。 T.「制御回路」、「高電圧発生手段」について (1)本件発明の「制御回路」、「高電圧発生手段」 審決の前記(T)の認定は、本件発明の「制御回路」は実施例の駆動回路42であり、「高電圧発生手段」は実施例のFET53及び高電圧変成器55であることを前提としている。これに対し、原告は、本件発明の「制御回路」は実施例の「高電圧調整回路40」であり、「高電圧発生手段」は実施例の高電圧調整回路40、 電解効果トランジスタ41及び駆動回路42であると主張するので、まず、これらの点を検討する。 ア 本件明細書(甲第2、第6号証)を検討する。 (ア) 本件発明の特許請求の範囲には、「予め定められたレベル以上の振幅をもったトリガ信号に応答して高電圧信号を発生させ、上記予め定められたレベル未満の非零の振幅をもったトリガ信号には実質的に応答しないで上記高電圧信号が発生されないようにする制御回路を具備し高電圧を発生させる高電圧発生手段」と記載されており、この記載から、本件発明において、 ・「制御回路」は、トリガ信号の振幅に応じて高電圧信号を発生させ又は発生させ せない作用を奏するものであること、また、 ・「高電圧発生手段」は、「高電圧を発生させるもの」であり、「制御回路」を具備 していると認められる。 なお、「制御回路」、「高電圧発生手段」という用語は、特許請求の範囲に記載されているだけで、本件明細書の発明の詳細な説明中にはこれらの用語を使用した説明がない。 (イ) 発明の詳細な説明の〈発明の概要〉欄には、次の記載(A)が認められる(便宜、番号@〜Cを付記)。 〈発明の概要〉 (A)「@この発明の特徴によれば、ビデオ表示装置は、予め定められた振幅以上のトリガ信号に応答して、高電圧信号を発生させる回路を具えた高電圧発生器を具備している。この回路は予め定められた振幅以下のトリガ信号には実質的には応答せずそのため高電圧信号は発生されない。A偏向回路は、これが正常に動作している時は第1のレベル以上の振幅をもった偏向周波数信号を発生し、偏向回路の動作が異常である時は第1のレベル以下の振幅をもった偏向周波数信号を発生する。B回路は偏向周波数信号に応答して高電圧発生器用のトリガ信号を発生させる。C上記偏向周波数信号の振幅が第1のレベル以上の時は、トリガ信号は予め定められたレベル以上の振幅をもち、それによって偏向回路の正常動作時には高電圧信号が発生する。上記偏向周波数信号の振幅が第1レベル以下の時はトリガ信号は予め定められたレベル以下の振幅をもち、そのため偏向回路の動作が異常である時は高電圧信号は発生されない。」(甲第2号証4頁1行〜19行) 上記記載によれば、@本件発明のビデオ表示装置には、トリガ信号の振幅に応じて「高電圧信号を発生させる回路」があり、この「高電圧信号を発生させる回路」は「高電圧発生器」に具わったものであること、A「偏向回路」は「偏向周波数信号」を発生すること、そして、「高電圧信号を発生させる回路」が高電圧信号を発生させるか否かは、結局、偏向回路が正常に動作しているか否かによって決まり、 具体的には、(ア)「偏向回路」が出力する偏向周波数信号〔この偏向周波数信号の振幅が一定値を超えるか否かは偏向回路の動作が正常か異常かで決まる〕→ (イ)「回路」(パルス処理回路72)が出力するトリガ信号(高電圧発生器用のトリガ信号、(このトリガ信号の振幅は入力される偏向周波数信号の振幅が一定値を超えるか否か決まる)→ (ウ)「高電圧信号を発生させる回路」が出力する高電圧信号(この高電圧信号を出力するか否かは、入力されるトリガ信号の振幅が一定値を超える否かで決まる)、という順序で、高電圧信号が発生することが認められる。 そして、「回路は偏向周波数信号に応答して高電圧発生器用のトリガ 信号 を発生させる。」との記載(記載AC)によれば、「回路」(パルス処理回路72)から出力されるトリガ信号は「高電圧発生器」用の信号であるから、「高電圧発生器」に入力されると解され、さらに、「高電圧発生器」に「高電圧信号を発生させる回路」が具わっていることからすれば、記載Aにおける「高電圧発生器」とは、トリガ信号の入力により、高電圧信号を発生させるものを指していると解するのが相当である。してみると、「高電圧発生器」は、高電圧を発生させるための信号(高電圧信号)を発するものであり、それ自体が高電圧を発生させるものではないと認められる。 (ウ) 次に、本件明細書の〈実施例の説明〉及び第1図を検討する。 本件明細書の〈実施例の説明〉には、次の記載(B)〜(D)が認められる。 (B)「この発明の特徴によれば、巻線部分36Bの両端間に発生する電圧は、 高電圧調整回路40に供給される入力トリガ・パルスを生成するために使用される」(同号証7頁18〜8頁1行) (C)「偏向回路の正常動作時に巻線部分36Bの両端間に発生したパルスは第2図Aに示されている。これらの水平周波数パルスは偏向回路の正常な動作時にはNで示されたレベルを超過する。パルス処理回路72で微分され且つ減衰された後、高電圧調整回路40に供給されたトリガ・パルスは第2図Bに示すように現れる。高電圧調整回路40のトリガ閾値レベルTはまた第2図Bに示すようになる。」(同12頁2行〜9行) (D)「例えば、偏向巻線31の接続が断たれた時のような水平偏向電流が生成されない異常な状態の間も、依然として水平偏向出力回路25は動作し続け、巻線36Bの両端間には第2図Cに示すようなパルスが発生する。同図から明らかなように、第2図CのパルスはレベルNを超過しない。パルス処理回路72による微分と減衰とにより、第2図Dに示すようなパルスが現れる。同図から明らかなように、第2図Dのパルスはトリガ閾値Tを超過しないから、高電圧調整回路40をトリガするには不充分な振幅をもったものとなる。」(同12頁15行〜13頁5行) 実施例についての上記記載(B)〜(D)及び第1図と〈発明の概要〉欄の記載(A)とを対応させてみると、 実施例においては、偏向回路の動作に応じて巻線部分36Bの両端間に発生したパルス(水平周波数パルス)が、パルス処理回路72においてトリガ閾値レベルで分別処理されてトリガ・パルスを生成し、このトリガ・パルスが高電圧調整回路40に入力されるものであるから、〈発明の概要〉欄記載の「トリガ信号」と実施例の説明における「トリガ・パルス」とは同義であると認められる。そして、第1図及び「高電圧調整回路に供給されたトリガ・パルス」との記載(記載D)によれば、実施例においては、「トリガ・パルス」(トリガ信号)が高電圧調整回路40に入力される。 イ 以上の事項を前提として、特許請求の範囲に記載された「高電圧発生手段」及び「制御回路」について検討する。 (ア) 「高電圧発生手段」について @) 「高電圧発生手段」との用語は、前記ア(ア)のとおり、本件明細書の特許請求の範囲にのみ記載され、発明の詳細な説明中には、これに対応する語が存在しない。そこで、その意義を確定するために、まず、「高電圧」について検討すると、本件明細書には、高電圧に関連して、次の(E)及び(F)の記載が認められる。 <発明の背景>欄 (E)「例えば偏向信号の喪失や偏向ヨークの偏向巻線の欠陥等により生ずる可能性のある非走査電子ビームによる衝撃によって表示スクリーンの蛍光体被膜が損傷を受けることがある。通常のフライバック形式の電源装置や偏向回路では、水平偏向周波数のリトレースあるいはフライバック・パルスが高電圧変成器を介して 高電圧 を発生 する ために使用される。従って、水平偏向が無くなると、高電圧 すなわちビーム 加速電位 も消滅し、CRTが損傷を受けるのが防止される。正確に電圧を調整することが特に重要になるコンピュータ・モニタのようなある種の適用例では、水平偏向回路とは別に高電圧を発生させることが望ましい。この形式の回路では、水平偏向が喪失しても高電圧は消滅しないので、蛍光体表示スクリーンに損傷を与える可能性がある。このため万一偏向が喪失しても高電圧発生器の動作を停止させる何らかの形式の保護回路を設けることが望ましい。」(同3頁1行〜19行) <実施例の説明>欄 (F)「FET53の導通により端子51に設定された電圧源から高電圧変成器55の1次巻線中に電流を流通させる。それによって3次巻線すなわち高電圧巻線56の両端間に高電圧を発生させこの電圧はCRT13の高電圧端子すなわちアルタ端子57に供給される。高電圧調整回路40には導線60及び分圧器61を介して高電圧レベルが帰還される」(同9頁3行〜10行) これらの記載から、「高電圧」とは、ビーム加速電圧、すなわち、実施例の第1図において、CRT13の高電圧端子(アルタ端子57)に供給される電圧であることが明らかである。そして、その高電圧は、FET53の導通により、高圧変成器55によって発生するものと認められる。 してみると、本件発明の特許請求の範囲に記載された「高電圧を発生させる高電圧発生手段」に相当するものは、実施例においてはFET53及び高圧変成器55であると認めることが相当である。したがって、これと同旨の審決の認定に誤りはない。 A)原告の主張について 原告は、本件明細書の「4.図面の簡単な説明」欄に、高電圧調整回路40、電解効果トランジスタ41、駆動回路42が「高電圧発生回路」であることが示されており、「高電圧発生回路」すなわち「高電圧発生手段」であるから、本件発明の「高電圧発生手段」は「高圧調整回路40、電解効果トランジスタ41及び駆動回路42」であると主張する。 しかし、「高圧調整回路40、電解効果トランジスタ41及び駆動回路42」は、高電圧を発生させるための「高電圧信号」を発生させるものであって、それ自体が高電圧を発生させるものではない。 また、「高電圧発生回路」の語は、「水平偏向回路に故障が生ずると・・・巻線36Bの両端間には電圧は発生しない。その結果、高電圧調整回路40用のトリガ・パルスは発生せず、高電圧発生回路は都合よく消勢される。」(甲第2号証10頁14行〜19行)という実施例の説明中一箇所に用いられているのみであり、 この説明によれば、「高電圧発生回路」は高電圧を発生させる手段そのものでなく、高電圧発生手段を動作させる「電圧源」であることが明らかである。 したがって、この点に関する原告の主張は採用することができない。 (イ) 「制御回路」について @)「制御回路」との用語は、特許請求の範囲にのみ記載され、発明の詳細な説明中には、これに対応する語が存在しないが、特許請求の範囲に「制御回路」がトリガ信号の振幅に応じて高電圧信号の発生・不発生を制御するものとして記載されていることは前記ア(ア)のとおりである。 このトリガ信号が入力されるのは、「高電圧調整回路40」と認められる(争いはない。)ところ、「高電圧調整回路40」の出力に関して、本件明細書には次の記載(G)〜(I)が認められる。 (G)「高電圧調整回路40の幅変調出力パルス信号は駆動回路42によって電界効果トランジスタ(FET)41のゲートに供給される。・・・FET41のスイッチングにより・・・ある大きさの電圧レベルがキャパシタ50の両端間に発生し、その電圧は端子51に現れる。」(甲第2号証8頁4行〜15行) (H)「FET53の導通により端子51に設定された電圧源から高電圧変成器55の1次巻線54中に電流を流通させる。それによって3次巻線すなわち高電圧巻線56の両端間に高電圧を発生させ、この電圧はCRT13の高電圧端子すなわちアルタ端子57に供給される。・・・FET41の切換の制御の結果として端子51における電圧レベルを制御することにより高電圧レベルの調整が行われる。」(同9頁3行〜13行) (I)「前述のように、高電圧レベルは、高電圧調整回路40から供給されるパルス幅変調出力信号によって生ずるFET41のスイッチングの結果として発生される。高電圧調整回路40の出力信号は巻線部分36Bの両端間に発生する電圧から取り出されたトリガ・パルスに応答して生成される。」(同10頁9行〜14行) これらの記載及び第1図によると、「高電圧調整回路40」の出力は、「駆動回路42」によってFET41に供給され、FET41のスイッチングの結果として、高電圧変成器55から高電圧を出力させると認められる。したがって、高電圧変成器55をトリガして高電圧を発生させているのは、「高電圧調整回路40」からFET41を含む「駆動回路42」までを含めた回路であり、このものを、高電圧信号を発生させる「制御回路」と認めることが相当である。 駆動回路42を「制御回路」であるとした審決は、トリガ・パルス(トリガ信号)が入力される高電圧調整回路40及びFET41を含む駆動回路42を、駆動回路42で代表させて「制御回路」としたものであると理解することができる。本件特許請求の範囲には「制御回路」が具体的構成を特定することなく作用的記載として記載されているにすぎないから、「制御回路」を制御の作用を担っていることの明らかな「駆動回路42」をもって代表させても、その認定に本件発明と刊行物1記載の発明との対比の結論を左右するような誤りがあるということはできない。 A)原告は、請求の範囲に記載された「制御回路」に対応するものは、実施例の高電圧調整回路40であると主張する。 しかしながら、原告の主張は、本件発明と刊行物1記載の発明との対比における誤りを主張する前提として、本件発明の「高電圧発生手段」が「FET53及び高電圧変成器55」ではなく「高圧調整回路40、電解効果トランジスタ41及び駆動回路42」であるとすることの理由付けとしてのみ、意味を持つものであるところ、「高電圧発生手段」についての審決の認定に誤りがないことは、前示のとおりである。 なお、念のため原告の主張について検討すると、本件明細書には、高電圧調整回路40にトリガ・パルス(トリガ信号)が入力され、高電圧調整回路40から振幅変調出力パルス信号が出力されることは示されてはいるものの、高電圧調整回路40が「制御」するとの記載はない。しかも、「高電圧調整回路40」の出力が高電圧変成器55をトリガして高電圧を発生させるということはできず、高電圧変成器55からの高電圧を直接制御しているものが駆動回路42及びFET41であると認められることは前示のとおりである。原告の主張は採用することができない。 (2)本件発明の「制御回路」、「高電圧発生手段」と刊行物1記載の発明との対応関係 ア まず、「高電圧発生手段」について見る。 本件発明の「高電圧発生手段」が、高電圧を発生してCRT13のアルタ端子57に高電圧を供給することは既に認定したとおりである。 一方、刊行物1(甲第7号証)の第1図及び「11はフライバックトランス9の2次側に生じた高い電圧を整流するためのダイオード」(3頁12行〜13行)との記載によれば、CRTに相当するブラウン管5に供給する高電圧は、高出力回路8及びフライバックトランス9によって発生されるものと認められる。してみると、刊行物1記載の発明において「高電圧を発生させる高電圧発生手段」は高圧出力回路8とフライバックトランス9であると認めることが相当である。 したがって、刊行物1記載の発明の「高圧出力回路8とフライバックトランス」が本件発明の「高電圧発生手段」に相当するとした審決の認定に誤りはない。 原告は、本件発明の「高電圧発生手段」に対応するのは、刊行物1の高圧安定化回路10であると主張する。しかし、原告の主張は、本件発明の「高電圧発生手段」が高電圧調整回路40及び駆動回路42(電解効果トランジスタ41を含む)であることを前提とするものであるところ、その前提を採用し得ないことは前示のとおりである。原告の上記主張は前提を欠くものであって、採用することができない。 イ 次に、「制御手段」について見る。 本件発明の「制御手段」がトリガ信号が入力される高電圧調整回路40から、高電圧信号すなわち高圧変成器用のトリガ信号が出力されるまでの回路であると認められることは前示のとおりである。 一方、刊行物1に記載された「高圧安定化回路10」は、その出力が、高電圧発生手段を構成するフライバックトランス9に結合されていることが第1図より明らかであり、さらに、「本案はブラウン管を使用する水平偏向回路と高圧出力回路分離型の機器において、水平偏向パルスを整流して高圧出力回路へ電力を供給する高圧安定化回路10へ加えることにより水平偏向回路が停止したとき高圧出力を落としまた同時にブラウン管をカットオフさせることによりブラウン管面が焼損するのを防ぐことを目的としている」(甲第7号証2頁15行〜3頁1行)、「(端子)36には高圧の制御電圧(ハイレベル)が印加されていて、これがローレベルになると・・・トランジスタ25はカットオフし、・・・トランジスタ20がオンし、・・・は高圧安定化回路10の出力端子14の電圧はほゞ零となり、高出力回路8が動作しなくなって高圧出力が停止し、高圧が出なくなる。また端子35の水平偏向パルスがなくなっても同様にトランジスタ25がオフし、トランジスタ20がオンするので高圧が停止する」(同4頁12行〜5頁6行)と記載されていることから、「高圧安定化回路10」は、水平偏向パルスの振幅変化に応じた出力により、フライバックトランス、高圧出力回路等による高圧出力を発生させ又は停止させるものであると認められる。 したがって、刊行物1の「高圧安定化回路10」は、水平偏向パルスの振幅変化に応じて高電圧の発生・不発生を制御する高電圧信号を発生させる本件発明の「制御回路」と同じ作用をするものであるから、高圧安定化回路10が本件発明の「制御回路」に相当するとした審決の認定に誤りはない。 U.「偏向回路」について (1)本件発明の「偏向回路」 審決は、本件発明の偏向出力装置を具備した「偏向回路」が実施例の回路25であると認定し、これを前提して本件発明と刊行物1記載の発明とを対比することによって、刊行物1の「水平出力回路3及び水平偏向回路4」が本件発明の「偏向回路」に相当すると認定した。これに対して、原告は、本件発明の「偏向回路」は、 実施例の「水平発振回路22、水平駆動回路23及び共振リトレース回路52」であると主張し、これを前提として、刊行物1の「水平発振回路1、水平ドライブ回路2及び水平出力回路3」が本件発明の「偏向回路」に相当すると主張するので、 以下検討する。 本件明細書の特許請求の範囲には、「偏向回路」が「正常動作時には第1のレベル以上の振幅をもつ偏向周波数信号を発生し、偏向電流の切断のようなある種の異常動作のモードでは上記第1のレベル未満の非零の振幅をもった偏向周波数信号を発生させ、動作し続ける偏向出力装置」を具備するものであることが記載されている。しかし、実施例の第1図には「偏向出力装置」が示されていない。 そこで、発明の詳細な説明を参照すると、〈実施例の説明〉欄に、「偏向回路の正常動作時に巻線部分36Bの両端間に発生したパルスは第2図Aに示されている。これらの水平周波数パルスは偏向回路の正常な動作時にはNで示されたレベルを超過する。」(甲第2号証12頁3行〜6行)、「例えば、偏向巻線31の接続が絶たれた時のような水平偏向電流が生成されない異常な状態の間も、依然として水平偏向出力回路25は動作し続け、巻線36Bの両端間には第2図Cのようなパルスが発生する。同図から明らかなように、第2図CのパルスはレベルNを超過しない。パルス処理回路72のよる微分と減衰により、第2図Dに示すようなパルスが現れる。・・・第2図Dのパルスはトリガ閾値を超過しないから、高電圧調整回路40をトリガするには不十分な振幅をもったものとなる。その結果、高電圧は発生しない。」(同12頁15行〜13頁6行)と記載されており、これらの記載から、特許請求の範囲の「正常動作時には第1のレベル以上の振幅をもつ偏向周波数信号を発生し、偏向電流の切断のようなある種の異常動作のモードでは上記第1のレベル未満の非零の振幅をもった偏向周波数信号を発生させ(る)偏向出力装置」の作用をしているものは、実施例では、回路25及び巻線36であること、また、 回路25及び巻線36は正常時も異常時も動作し続ける(正常時には一定レベルNを超えるパルスを出し、異常時にはレベルNを超えないパルスを出す)ことが認められる。 そうすると、「偏向出力装置」に当たるものは、巻線36を含めた回路25であるといわざるを得ず、「偏向出力装置」を具えたものとして特許請求の範囲に記載された「偏向回路」も、また、巻線36及び回路25を含めたものといわなければならない。 水平偏向出力回路25を「偏向回路」であるとした審決の認定は、巻線36が含まれる回路25をもって「偏向回路」を代表させたものということができるから、 その認定に本件発明と刊行物1記載の発明との対比における認定、判断を結論を左右するような誤りがあるということはできない。 原告は、水平発振回路22、水平駆動回路23及び共振リトレース回路52が「偏向回路」であると主張するが、原告の主張によれば偏向周波数信号を発生する巻線36及び回路25が「偏向回路」に含まれないことになってしまい、実施例と齟齬をきたすことになる。したがって、原告の上記主張は採用することができない。 (2) 本件発明の偏向回路と刊行物1記載の発明との対応関係 原告は、刊行物1の「水平出力回路3及び水平偏向コイル4」が本件発明の「偏向回路(25)」に相当するとの審決の認定は誤りであると主張する。 審決が、刊行物1の「水平出力回路及び水平偏向コイル」が本件発明の「偏向回路(25)」に相当するとした理由は、両者とも水平偏向パルスを発生するということにある。 本件明細書の発明の詳細な説明には、回路25に関して、「出力回路25は端子H、H´よりCRT13のネックに配置された水平偏向巻線31に水平偏向周波数の偏向電流を流通させ、この水平偏向巻線31は電子ビーム15を表示スクリーン16を横切って偏向するための水平偏向磁界を発生する」(同6頁下から2行〜7頁3行)と記載されており、これによれば、出力回路25及び水平偏向巻線31が、水平偏向パルスを発生させることが認められる。 他方、刊行物1の発明における「水平出力回路3及び水平偏向コイル4」が電子ビームを表示スクリーンを横切って偏向させる水平偏向パルスを発生するものであることは明らかである。 そうすると、審決が、刊行物1の「水平出力回路3及び水平偏向コイル4」と本件発明の偏向巻線31を有する「出力回路25」とが同様の作用、機能を有することに着目して、「水平出力回路3及び水平偏向コイル4」は本件発明の「出力回路25」に相当するとしたことに誤りはない。 V.「パルス処理回路(72)」について 原告は、刊行物1記載の発明の「ダイオード27、コンデンサ28及び抵抗器30」は「パルス処理回路(72)」に相当するとの審決の認定は誤りであると主張する。 特許請求の範囲に記載された「パルス処理回路」は、要するに、入力される偏向周波数信号の変化に応じて一定値以上又は以下の振幅を持つトリガ信号を発生させるもので、そのトリガ信号が高電圧の発生に関与するものである。 一方、刊行物1に記載された「ダイオード27、コンデンサ28、抵抗器30」は、第1図によると、水平出力回路3から端子35に入力された水平偏向パルスに応じた値を出力するもので、その出力は、トランジスタ25に入力されて高電圧の発生に関与するものであるから、本件発明の「パルス処理回路」と同様の信号処理機能を果たしているといえる。 したがって、審決の認定に誤りはない。 2 取消事由2(相違点に関する判断の遺漏及び判断の誤り) (1)相違点(1)に関して 審決は「偏向回路」が、本件発明においては「偏向出力装置」を具備するのに対して、刊行物1記載の発明においては具備していない点を相違点(1)として挙げたうえ、刊行物1記載の発明における「偏向回路」(水平出力回路3および水平偏向コイル4)に、本件発明の「偏向出力装置(35)」に相当する、刊行物2(甲第8号証)に示された水平出力トランス10を具備させることは、当業者であれば容易になし得ることである旨判断した。 ア 原告は、審決の上記判断は、「偏向回路」が正常動作時には第1のレベル以上の振幅をもつ変更周波数信号を発生し、偏向電流の切断のようなある種の異常動作のモードでは上記第1のレベル未満の非零の振幅をもった変更周波数信号を発生させる点についての判断をしておらず、判断の遺漏があると主張する。 しかしながら、刊行物2の第2図に示された水平出力トランス10は、水平発振回路の出力がそのベースに入力されるトランジスタ4、ダイオードおよび偏向コイル5の並列回路に直列接続されており、これと、本件発明の水平発振回路の出力が入力されるトランジスタ24、ダイオード26および偏向コイルH、H´の並列回路に直列接続された変成器35からなる回路とは同等の構成であり、しかも、刊行物2において偏向コイルの断線等の異常状態により前記回路状態が変化すること、 したがって流れる電流値も変化すること等は、当業者にとって明らかな技術的事項である。 そうすると、当業者にとって明らかな上記技術的事項を踏まえてなされた審決の相違点(1)についての判断は、刊行物1記載の発明の「偏向回路」に本件発明の「偏向出力装置(35)」に相当する「水平出力トランス10」を具備させたものにおいては、「正常動作時には第1のレベル以上の振幅をもつ偏向周波数信号を発生し、偏向電流の切断のようなある種の異常動作のモードでは上記第1のレベル未満の非零の振幅をもった偏向周波数信号を発生させる」ことになるという判断を包含したものということができる。したがって、審決がこの点の判断を遺脱したとの原告の主張は理由がない。 イ 原告は、また、相違点(1)についての審決の上記判断が誤りであると主張するが、その主張は、本件発明の「偏向出力装置」が変成器35に対応するとした審決の認定が誤りであることを理由とするものであるところ、この点に関する審決の認定に誤りがないことは前示したとおりである。原告の主張は、その前提を欠くものであるから、理由がない。 (2)相違点(2)に関して ア 原告は、刊行物1の処理回路(バイアスを発生するダイオード27、コンデンサ28及び抵抗器30)が偏向周波数信号の変化に応じて、一定のレベル以上(正常動作時)又は未満(異常動作時)トリガ信号を発生させる点について、審決は判断していないと主張する。 本件発明のトリガ信号は、「制御回路」に入力されるものであり、この「制御回路」に相当するものが刊行物1記載の発明の「高圧安定化回路10」であることは前示のとおりである。そして、刊行物1には、この「高圧安定化回路10」がトランジスタ20のベースに入力されるトランジスタ25のオンオフにより動作されるものであること、当該トランジスタ25がベースに入力される水平偏向パルスを処理した「バイアス」によってオンオフされることが記載されており(甲第2号証4頁2行〜5頁6行、)、これらの点から、審決は「刊行物1の発明においては、水平偏向パルスを処理した「バイアス」によって、トランジスタ25をオンオフし、 その結果、高圧安定化回路10をオンオフ制御しているから、この「バイアス」は、高圧安定化回路10をオンオフする制御するところの「トリガ信号」とも言える。」(審決書4頁20行〜24行)と判断したものである。 さらに、当該「バイアス」に関して、審決は、「また、この「バイアス」は、水平偏向パルスの正常動作・異常動作の変化に応じて、その「バイアス」の振幅が変更され、その振幅は正常動作では所定バイアスレベル以上に変更され、異常動作では所定バイアスレベル未満に変更される。」(同頁25行〜28行)と判断しているのであるから、審決は、予め定められたレベル未満又は以上の振幅を持つトリガ信号の発生に関して判断していることが明らかである。 したがって、審決に原告の主張するような判断の遺脱はなく、原告の主張は理由がない。 イ 原告は、また、「バイアス」の大きさを「振幅」ということはできないから、審決が、「バイアス」にトリガパルスのように振幅があることを前提として、「バイアス」と「トリガパルス」とを同視する判断をしたことが誤りである旨主張する。 しかし、「振幅」は、「振動の中心位置から測った変位の最大値」であり、しかも本件発明においてオンオフの制御に意味のあるのは、振幅の大きさ(中心位置からみた偏位のレベル・水準)であって、振動現象ではないから、審決は刊行物1記載の発明を本件発明と対比するに当たって、その点を考慮し、両者の対応関係を明らかにする趣旨で刊行物1における「バイアス」のレベルを「振幅」と表現したうえ、「刊行物1の発明における「バイアス」を発生する・・・処理回路は、実質的に、本件発明における「トリガ信号」を発生する「パルス処理回路」といえる。」と判断したものということができる。これら審決の判断を誤りということはできない。 (3)相違点(3)の判断について 「偏向出力装置」が変成器35に対応すること、バイアスの大きさを「振幅」といえることは前示のとおりであり、さらに「偏向出力装置」の出力は、偏向周波数信号であることが特許請求の範囲に記載されている。 してみると、原告の主張は前提において失当というほかなく、相違点(3)についての審決の判断に誤りがあるということはできない。 3 取消事由3(想到容易性の判断の誤り)について 原告は、刊行物1記載の発明と刊行物2記載の発明とを組み合わせても、本件発明の構成には至らないと主張し、その理由として、@刊行物1の発振回路を、刊行物2の水平出力パルスと置き換えた場合、パルス処理回路がなく、本件発明とはならない、A刊行物1の端子15に印加される信号が、フライバックトランスの2次巻線から得られるだけで、本件発明とはならない、B刊行物1では水平偏向コイル4が切断された場合ブラウン管面を保護することができず、刊行物2と組み合わせても、水平偏向コイルの異常動作モードに対応ができない、という点を挙げるが、 いずれの点についても原告の主張は採用することができない。 まず、@の点について、審決は、刊行物2の「水平出力トランス10」が、本件発明における「偏向出力装置(35)」に相当すると認定したうえで、「水平出力トランス」を刊行物1に具備させることは容易である旨判断しているのであり、 「水平出力トランス」は、刊行物1の「偏向回路」の出力段として配設されるだけであるから、原告主張のように「パルス処理回路」が無くなるものではないことは明らかである。 Aまた、「水平出力トランス10」の出力は、「パルス処理回路」に入力されるものであるから、当該出力が端子15に入力されることを前提とした原告の主張は、その前提を欠き、失当である。 B 異常動作モードへの対応という点については、刊行物2に、 「しかし、水平出力回路が故障した場合には水平偏向動作が行われていない状態で高圧がブラウン管の陽極に加わるため、ブラウン管の蛍光体を損焼してしまう惧れがある。本発明はこのような欠点を除くもので、以下のその実施例について説明する。」(甲第8号証1欄末行〜2欄3行)、「この実施例において水平出力回路の発生するフライバックパルスによって高圧出力トランジスタ6等を駆動させ、高圧を得るため、偏向コイル5に何らかの原因で偏向電流が加わらなくなれば同時に高圧の発生動作も停止し、ブラウン管の蛍光体の損傷を防止することができる。」(同2欄15行〜20行)との記載があり、 また、刊行物1には、 「本案は、ブラウン管を使用する水平偏向回路と高圧出力回路分離型の機器において、水平偏向パルスを整流して高圧出力回路へ電力を供給する高圧安定化回路へ加えることにより水平偏向回路が停止したとき高圧出力を落としまた、同時にブラウン管をカットオフさせることによりブラウン管面が焼損するのを防ぐことを目的としている。」(甲第7号証2頁15行〜3頁1行) との記載がある。 これらの記載から、刊行物2及び刊行物1には、偏向コイル5に偏向電流が印加されない異常状態、及び水平偏向回路が停止する異常状態に対応することが記載されているということができる。 そして、本件発明における「異常動作のモード」とは、特許請求の範囲に「偏向電流の切断のようなある種の異常モード」と記載されていることから明らかなとおり、偏向電流の切断に限らず、異常動作状態を指すものであるから、刊行物1も刊行物2も異常動作のモードに対応することができるものである。 したがって、「本件発明は、刊行物1、2の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである」との審決の判断に誤りは認められず、原告主張の取消事由3は理由がない。 4 結語 以上のとおりであるから、原告主張の取消事由はいずれも理由がなく、他に審決を取り消すべき瑕疵は見当たらない。よって、原告の請求を棄却することとし、主文のとおり判決する。 |
裁判長裁判官 | 永井紀昭 |
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裁判官 | 塩月秀平 |
裁判官 | 古城春実 |