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関連審決 異議2000-71348
関連ワード 頒布された刊行物 /  進歩性(29条2項) /  同一技術分野(同一の技術分野) /  容易に発明 /  一致点の認定 /  相違点の認定 /  発明の詳細な説明 /  択一的 /  置き換え /  容易に想到(容易想到性) /  実施 /  設定登録 /  請求の範囲 /  変更 /  訂正明細書 /  取消決定 / 
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事件 平成 13年 (行ケ) 28号 特許取消決定取消請求事件
原告 株式会社寺岡精工
訴訟代理人弁理士 高橋詔男
同 赤尾 謙一郎
同 鈴木三義
同 西和哉
同 志賀正武
被告 特許庁長官太田 信一郎
指定代理人 番場得造
同 砂川克
同 山口由木
同 大橋良三
同 高木進
同 涌井幸一
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 2002/11/28
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
主文 1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
当事者の求めた裁判
1 原告 (1) 特許庁が異議2000-71348号事件について平成12年11月17日にした決定を取り消す。
(2) 訴訟費用は被告の負担とする。
2 被告 主文と同旨
当事者間に争いのない事実
1 特許庁における手続の経緯 原告は,発明の名称を「ラベルプリンタ」とする特許第2956599号の特許(平成8年7月31日特許出願,平成11年7月23日設定登録,以下「本件特許」という。)の特許権者である。
本件特許に対し,請求項1ないし2につき,特許異議の申立てがあり,その申立ては,異議2000-71348号事件として審理された。原告は,この審理の過程で,平成12年10月24日,本件特許の出願に係る願書の訂正の請求をした(以下「本件訂正」といい,本件訂正による訂正後の明細書を「訂正明細書」という。)。特許庁は,上記事件につき審理した結果,平成12年11月17日,「訂正を認める。特許第2956599号の請求項1ないし2に係る特許を取り消す。」との決定をし,平成12年12月25日にその謄本を原告に送達した。
2 特許請求の範囲(本件訂正による訂正後のもの。これにより特定される発明を,以下「本件発明」という。) 【請求項1】ラベル用紙に少なくとも商品の品名及び値段を印字して発行するラベルプリンタにおいて, 少なくとも通常の値段ラベル用のラベル用紙が装着された印字部と,マークダウン処理を行うのに適したラベル用紙が装着された印字部とを含む複数の印字部と, 前記商品の商品番号毎に少なくとも品名及び単価,並びに前記複数の印字部に関する情報を指定することなく前記マークダウン処理の有無を識別可能な関連情報からなるラベル発行用のデータを予め記憶する記憶手段と, 前記記憶手段に記憶されているラベル発行用のデータを読み出す読出手段と, 前記読出手段によって読み出されたラベル発行用のデータを一時的に変更する変更手段と, 前記変更手段によって前記ラベル発行用のデータが一時的に変更された場合には変更後のラベル発行用のデータにおける前記関連情報に基づいて,変更されない場合には前記読出手段によって読み出されたラベル発行用のデータにおける前記関連情報に基づいて,マークダウン処理を行うか否かを判断する判断手段と, 前記マークダウン処理の有無に関する判断結果に応じ,前記マークダウン処理を行う場合には,前記複数の印字部からマークダウン処理を行うのに適したラベル用紙が装着された印字部を選択する選択手段と を具備することを特徴とするラベルプリンタ。(以下「本件発明1」という。)。【請求項2】 ラベル用紙に少なくとも商品の品名及び値段を印字して発行するラベルプリンタにおいて, 少なくとも通常の値段ラベル用のラベル用紙が装着された印字部と,POP広告用のイメージデータを印字するのに適したラベル用紙が装着された印字部とを含む複数の印字部と, 前記商品の商品番号毎に少なくとも品名及び単価,並びに前記複数の印字部に関する情報を指定することなく前記POP広告用のイメージデータの印字の有無を識別可能な関連情報からなるラベル発行用のデータを予め記憶する記憶手段と, 前記記憶手段に記憶されているラベル発行用のデータを読み出す読出手段と, 前記読出手段によって読み出されたラベル発行用のデータを一時的に変更する変更手段と, 前記変更手段によって前記ラベル発行用のデータが一時的に変更された場合には変更後のラベル発行用のデータにおける前記関連情報に基づいて,変更されない場合には前記読出手段によって読み出されたラベル発行用のデータにおける前記関連情報に基づいて,POP広告用のイメージデータを印字するか否かを判断する判断手段と, 前記POP広告用のイメージデータの印字の有無に関する判断結果に応じ,前記イメージデータを印字する場合には,前記複数の印字部からPOP広告用のイメージデータを印字するのに適したラベル用紙が装着された印字部を選択する選択手段と を具備することを特徴とするラベルプリンタ。」(以下「本件発明2」という。)。 3 決定の理由 決定は,別紙決定書の写しのとおり,本件訂正を認めた上,本件発明2は,本件特許出願前に頒布された刊行物である特開昭63-294340号公報(以下「刊行物1」という。)に記載された発明(以下「引用発明1」という。)と同一であり,また,本件発明1は,引用発明1及び本件特許出願前に頒布された刊行物である特公昭62-12452号公報(以下「刊行物2」という。)に記載された発明(以下「引用発明2」という。)に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである,と認定判断した。
原告主張の決定取消事由の要点
決定は,本件発明2と引用発明1との相違点であるものを一致点であると誤認し(請求項2についての取消事由1及び2),その結果,本件発明2を引用発明1と同一であると誤って判断し,また,本件発明1と引用発明1との一致点の認定を誤り(請求項1についての取消事由1),本件発明1の進歩性の判断を誤った(請求項1についての取消事由2)ものであるから,請求項1及び2のいずれについても,違法として取り消されるべきである。
1 請求項2についての取消事由1(POPラベル等に係る引用発明1と本件発明2との一致点・相違点の認定の誤り) 決定は,引用発明1の「POPラベル」及び「ラベルプリンタ」が,それぞれ本件発明2の「POP広告用のイメージデータを印字したラベル」及び「ラベルプリンタ」に相当すると認定した(決定書7頁23行〜30行)。しかし,この認定は,誤りである。
(1) 引用発明1の「POPラベル」(甲3号証第17図)には,商品の値段が印字されていないのであるから,これらのラベルは,単独では使用することができず,「一般的計量ラベル」(値段ラベル)(同第15図)に付随してのみ,使用することができるものである。
これに対し,本件発明2の「POP広告用のイメージデータを印字したラベル」(甲第2号証【図15】(c))は,イメージデータとともに商品の値段も印字され,単独で使用されるものであるから,引用発明1の「POPラベル」とは,根本的に相違するものである。すなわち,本件発明2を特定する特許請求の範囲【請求項2】には,「ラベル用紙に少なくとも商品の品名及び値段を印字して発行するラベルプリンタにおいて」と記載されているのみならず,「通常の値段ラベル用のラベル用紙が装着された印字部と,POP広告用のイメージデータを印字するのに適したラベル用紙が装着された印字部とを含む複数の印字部」と,「前記複数の印字部からPOP広告用のイメージデータを印字するのに適したラベル用紙が装着された印字部を選択する選択手段」を備えることが記載されているのであるから,ラベルプリンタが,選択された印字部のラベル用紙に対して品名及び値段を印字するものであることはいうまでもない。
本件発明2は,本件発明1の「マークダウン処理」という文言を「POP広告用のイメージデータの印字」に置き換えただけであり,その他の構成が全く同一であることは,請求項1と請求項2とを対比すれば,明らかである。そして,本件発明1の場合,マークダウン処理の定義(値引前と値引後の値段を同一のラベルに併記して印字し,値引前の値段に取消線を印字する処理)からして,値段を印字するための「(特殊な)値段ラベル用のラベル用紙」を用いることについては疑念がない。したがって,本件発明2は,本件発明1と「マークダウン処理」以外の構成が全く同じなのであるから,そのPOP広告用の「ラベル用紙」は,本件発明1の場合と同じく「値段ラベル用のラベル用紙」であると解釈せざるを得ない。
このように,本件発明2では,「POP広告用のイメージデータを印字するのに適したラベル用紙」を装着した印字部が選択されると,このラベル用紙に対し,少なくとも商品の品名及び値段が印字されるのである。
(2) 引用発明1の「ラベルプリンタ」においては,上記したように「POPラベル」が「一般的計量ラベル(値段ラベル)」に付随して使用されることから,POPラベルを印字する際,同時に一般的計量ラベル(値段ラベル)を印字するものである(甲3号証7頁左上欄2行〜5行参照)。一方,本件発明2の「ラベルプリンタ」は,各ラベルがそれぞれ単独で使用されることから,POP広告付きラベルを印字する場合には,通常の値段ラベルは印字しない(甲2号証【0032】,【0033】,図8のS8,S9)。すなわち,本件発明2の「ラベルプリンタ」は,各ラベル用紙を択一的に選択して値段ラベルを印字する点で,「一般的計量ラベル(値段ラベル)」と「POPラベル」を同時に印字する引用発明1の「ラベルプリンタ」とは異なる。
2 請求項2についての取消事由2(「フラグYF3」に係る引用発明1と本件発明2との一致点・相違点の認定の誤り) 決定は,引用発明1の「予約ファイルにおけるPOPラベルの発行の予約があるときに立つフラグYF3」が,本件発明2の「複数の印字部に関する情報を指定することなくPOP広告用のイメージデータの印字の有無を識別可能な関連情報」に相当すると認定している(決定書7頁31行〜37行参照)。しかし,この認定は,誤りである。
本件発明2においては,請求項2の記載から明らかなように,関連情報に基づいてPOP広告用のイメージデータを印字するか否かを判断するとともに,関連情報の判断結果に基づいて,「印字部」の選択をするものである。すなわち,本件発明2では,上記イメージデータを印字するか否かの選択,及び,印字部の選択は,いずれも関連情報に基づいて行われ,しかも,関連情報には,印字部の選択情報が含まれていないという特徴がある。本件発明2においては,このような構成により,イメージデータを印字するためにどの印字部を使用すればよいかの選択は,関連情報に基づいて自動的に行われ,作業者(オペレータ)が行うことはない。
これに対し,引用発明1では,モードフラグPF3の設定により,POPラベルを印字する第2の印字機構部が選択される(甲3号証14図)。このように第2の印字機構部がPOPラベルを印字するために選択された場合,常に第1の印字機構部も選択されて,「一般的計量ラベル」(値段ラベル)が印字される。そして,第2の印字機構部で,フラグYF3の有無によって,選択的にPOPラベルを印字したり,しなかったりする。このように,引用発明1では,フラグYF3の有無によって,第2の印字機構部でPOPラベルを印字するか否かの選択的判断を行っているものの,フラグYF3は,およそ印字部の選択には何ら寄与していないのである。
本件発明2では,「関連情報」に基づいて,上記イメージデータを印字するか否かの選択,及び,印字部の選択を行うものであるから,印字部の選択に全く寄与することのない引用発明1のフラグYF3は,本件発明2の「関連情報」には相当しない。
3 請求項1についての取消事由1(本件発明1と引用発明1との一致点・相違点の認定の誤り) 決定は,「刊行物1に記載された発明の「POPラベルの発行の予約があるときに立つフラグYF3,プロモーションラベルの発行の予約があるときに立つYF4,及びバーコードラベルの発行の予約があるときに立つYF5」は,各レジスタ(記憶手段)にセット(記憶)される,一般的計量ラベル(値付けラベル)とは異なるラベル(POPラベル,プロモーションラベル,バーコードラベル)発行用のデータであり,また,判断手段が一般的計量ラベル(値付けラベル)とは異なるラベル(POPラベル,プロモーションラベル,バーコードラベル)を印字するか否かを判断する際に基づくものでもあり,複数の印字部に関する情報を指定するものでない。」(決定書8頁下から5行〜9頁4行)と認定し,その上で,引用発明1のフラグYF3ないしYF5は,本件発明1の「関連情報」に相当する,と認定した。しかし,この認定は誤りである。
(1) 上記2で本件発明2について主張したのと同様に,本件発明1の「関連情報」も,値段ラベルを印字する印字部の選択に寄与するものに限定すべきである。
すなわち,本件発明1は,「関連情報」に基づいてマークダウン処理の有無を判断し,その判断結果に基づいて値段ラベルを印字する印字部を選択するものであり,しかも,【請求項1】の「商品の品名及び値段を印字して発行するラベルプリンタ」との記載,及び,マークダウン処理自体が値段の印字を必須のものとすることからすれば,「関連情報」は結果的に値段ラベル用の印字部の選択に寄与しているものに限定すべきである。
したがって,本件発明1における「関連情報」の要件は,その【請求項1】に記載されているとおり, @ マークダウン処理の有無を識別可能な, A 複数の印字部に関する情報を指定することなく, B 関連情報に基づいて,マークダウン処理を行うか否かを判断し,その判断結果に応じ,複数の印字部から印字部を選択する, ことを要件とするものである。
(2) 引用発明1に記載された フラグYF3ないしYF5は,次に述べるとおり,上記要件のいずれかを欠いているので,本件発明1の「関連情報」には相当しない。
(ア) 引用発明1のフラグYF3及びYF5は,それぞれPOPラベル印字及びバーコードラベル印字の際に用いられるフラグである。POPラベル又はバーコードラベルを印字する第2の印字機構部4を選択するか否かの判断は,モードフラグPF3又はPF2で行われ,フラグYF3及びYF5は印字機構部の選択に寄与するものではないから,前記Bの要件を具備しない。
(イ) 引用発明1のフラグYF4は,プロモーションラベル印字の際に用いるフラグであり,第2の印字機構部4が印字を行うか否かの判断を行っており,この点で前記Bの要件を具備するものの,印字部を選択するための専用データであり,印字データ(例えばマークダウン処理の有無)とは無関係に設定されるものであるから,前記Aの要件を具備しない。
刊行物1には,印字機構部4でプロモーションラベルを印字する場合,「広告品」とプリ印刷したものに代えて,「「広告品」等の広告文は,ラベルプリンタにて印字することも可能である」(甲3号証4頁左上欄5行〜6行)との記載があるものの,「プリ印刷」の代わりに広告文データをラベルプリンタで印字したからといって,広告文データが商品の商品番号毎に記憶されることがないのは明らかであり,上記広告文は,第2の印字機構部4がフラグYF4によって選択された後に,商品の種別と無関係に印字されるものにすぎない。
したがって,フラグYF4は,印字部を選択するものであるものの,印字部専用のデータ(引用発明1において,値段ラベルを第1印字部3で印字するのか,第2印字部4で印字するのかを指定することのみに用いられるデータ)であるから,上記Aの要件を具備せず,本件発明1の「関連情報」には相当しない。。
4 請求項1についての取消事由2(引用発明1と本件発明1との相違点についての判断の誤り) 決定は,「刊行物1に記載された発明において,「POPラベル」,「プロモーションラベル」及び「バーコードラベル」等の処理に代えて,同一技術分野に属する上記刊行物2に記載されたマークダウン処理を行うようになすことは,当業者が適宜想到し得,その作用効果も格別顕著でない。」(決定書10頁)と判断した。
しかし,引用発明1には,マークダウン処理の記載がなく,刊行物2にはマークダウン処理の有無に基づいて印字用紙を選択使用することについては,何ら開示されていないのであるから,引用発明1と引用発明2を組み合わせる動機そのものが存在せず,また,これを組み合わせたとしても,刊行物2には本件発明1の具体的構成,目的及び作用効果が全く開示されていないのであるから,当業者といえども本件発明1を容易に考え出すことは不可能である。
被告の反論の骨子
決定の認定判断はいずれも正当であって,決定を取り消すべき理由はない。
1 請求項2についての取消事由1(POPラベル等に係る引用発明1と本件発明2との一致点・相違点の認定の誤り)について 本件発明2の「POP広告用のイメージデータを印字するのに適したラベル用紙」については,値段を印字するラベルであるとか,他のラベルとは同時に印字されないとか,他のラベルと付随的に使用されず,単独で使用されるものであるとかの限定はない。
2 請求項2についての取消事由2(「フラグYF3」に係る引用発明1と本件発明2との一致点・相違点の認定の誤り)について (1) 本件発明2の「関連情報」は,複数の印字部に関する情報を指定することなく,POP広告用のイメージデータの印字の有無を識別することが可能な情報であればよい。引用発明1のフラグYF3も,複数の印字部に関する情報を指定することなく,POPラベルの発行の予約の有無を識別することが可能な情報である。
(2) 本件発明2においては,関連情報の判断手段の判断結果に応じ,選択手段が印字部を選択している。引用発明1のフラグYF3も,本件発明の関連情報と同様に,印字部の選択に寄与している。
3 請求項1についての取消事由1(本件発明1と引用発明1との一致点・相違点の認定の誤り)について (1) 本件発明1の「関連情報」は,複数の印字部に関する情報を指定することなく,マークダウン処理の有無を識別することが可能な情報であればよい。引用発明1のフラグYF3ないしYF5は,通常の値段ラベル処理とは異なる処理の有無を識別することが可能な情報である点で共通している。
(2) 本件発明1においては,関連情報の判断手段の判断結果に応じ,選択手段が印字部を選択している。引用発明1のフラグYF3ないしYF5も,本件発明の関連情報と同様に,印字部の選択に寄与している。
4 請求項1についての取消事由2(引用発明1と本件発明1との相違点についての判断の誤り)について 引用発明1と引用発明2から,本件発明1を想到するのは容易である。
当裁判所の判断
1 請求項2についての取消事由1(POPラベル等に係る引用発明1と本件発明2との一致点・相違点の認定の誤り)について (1) 引用発明1の「POPラベル」と本件発明2の「POP広告用のイメージデータを印字するのに適したラベル用紙」の関係について 訂正明細書の請求項2中には,「POP広告用のイメージデータを印字するのに適したラベル用紙」について,値段も印字するラベル(以下「値段ラベル」という。)である,とか,他のラベルと同時には印字されないラベルであって,単独で使用されるものである,とかの格別な限定を加える記載は含まれていない(乙1号証の2)。
もっとも,訂正明細書の請求項2において,「ラベル用紙に少なくとも商品の品名及び値段を印字して発行するラベルプリンタ」であることが,要件の一つとされていることは事実である。しかし,訂正明細書の請求項2の記載全体及び訂正明細書発明の詳細な説明の記載全体をみても,上記の要件が,「単独のラベル用紙に少なくとも商品の品名及び値段を印字して発行するラベルプリンタ」であると解すべき根拠はない。上記要件は,ラベルプリンタ自体の構成を「ラベル用紙に少なくとも商品の品名及び値段を印字して発行する」ものと規定するものであるにすぎず,この記載から,刊行物1の第15図及び第17図(甲3号証)に示されるような値段を印字したラベルとPOP広告用のイメージデータを印字したPOPラベルとを別のラベルとして印字し,これらを組み合わせて発行するラベルプリンタを除外しているものと解することはできない。
本件発明2は,「印字するラベル印字機構部の選択又は切り替えをマニュアル操作でしなければならず,面倒であった。」(乙1号証の2【0007】)ことから,これを解決するために,請求項2記載の構成,特に,「通常の値段ラベル用のラベル用紙が装着された印字部と,POP広告用のイメージデータを印字するのに適したラベル用紙が装着された印字部とを含む複数の印字部」と,「前記関連情報に基づいて,POP広告用のイメージデータを印字するか否かを判断する判断手段と,前記POP広告用のイメージデータの印字の有無に関する判断結果に応じ,前記イメージデータを印字する場合には,前記複数の印字部からPOP広告用のイメージデータを印字するのに適したラベル用紙が装着された印字部を選択する選択手段とを具備することを特徴とするラベルプリンタ。」との構成を採用し,POP広告用のイメージデータを印字するか否かを関連情報に基づいて判断する判断手段と,その判断結果に応じて,複数の印字部からPOP広告用イメージデータを印字する印字部を選択する選択手段とを備えることを,その要件として規定しているものであり,POP広告用のイメージデータの印字と値段の印字を単独のラベル用紙に印字することまでをその要件としているわけではないのである。すなわち,「POP広告用のイメージデータを印字するのに適したラベル用紙が装着された印字部を選択する」とは,POP広告用に当該印字部を選択することを必須の構成としていることを意味しているものであるにすぎず,これと同時に,値段ラベルの印字部を併行して選択する手段を備える構成のものを排除しているわけではないことは,請求項2の記載全体から明確である。
刊行物1にも,発明が解決しようとした課題につき,「このようなラベル発行時における印字装置の選択は,従来のラベルプリンタにおいては要求されていなかった新たな作業であるため,オペレータに負担がかかり,作業能率の低下や貼り間違いが起こることが予想される。この発明は,このような事情に鑑みてなされたものであり,ラベル発行時におけるオペレータの負担をなくして,複数の印字装置を自動的に選択して使用することのできるラベルプリンタを提供することを目的とする。」(甲3号証2頁左上欄)との記載があり,ここに示されている課題は,本件発明2におけるものと同じである。このように,発明が解決しようとした課題の点においても,本件発明2と引用発明1との間において何ら差異はないのであり,本件発明2において,POP広告を印刷するときに,常に,単独のラベルに値段も印字するものでなければならないと解すべき理由はないことは,この点からも裏付けられているのである。
以上のとおり,本件発明2の「POP広告用のイメージデータを印字するのに適したラベル用紙」を,単独のラベル用紙に,POPイメージデータとともに値段を印字するものに限定して解すべき理由はないのであるから,引用発明1の「POPラベル」も,本件発明2の「POP広告用のイメージデータを印字するのに適したラベル用紙」に相当することになる。「POP広告用のイメージデータを印字するのに適したラベル用紙」は,常に値段も印字されるラベル用紙である,と解釈すべきであるとの原告の主張は,訂正明細書実施例に基づく主張であり,本件発明2自体についての主張としては,根拠に欠けるものというべきである。
原告は,請求項1と請求項2との対比から,本件発明2のPOP広告用のラベル用紙も,本件発明1の場合と同じく,「値段ラベル用」のラベル用紙であると解釈せざるを得ない,と主張する。しかし,本件発明2と本件発明1とは,別の発明であるから,本件発明2の発明の要旨の認定が,請求項2に基づいてなされるべきであることは当然である。原告の主張は,本件発明2の要旨の認定に,本件発明1に特有の事項である「マークダウン処理」による解釈を持ち込もうとするものである。このような主張を,合理的なものとして採用することはできない。
(2) 引用発明1の「ラベルプリンタ」と本件発明2の「ラベルプリンタ」の関係について 訂正明細書には,「本発明は,ラベルに所定データの印字を行うとともに,印字したラベルを発行するラベルプリンタに係り,特にスーパー等の販売店において陳列するパック商品に貼付する値段ラベルを印字して発行するラベルプリンタに関する。」(乙1号証の2【0001】)と記載され,その請求項2には,上記のとおり,「ラベル用紙に少なくとも商品の品名及び値段を印字して発行するラベルプリンタ」という記載がある。この記載が,商品に単独で使用されるラベルのみを印字するラベルプリンタという趣旨のものではなく,各商品に添付される,少なくとも商品の品名と値段を印字したラベルを発行するラベルプリンタであることを示したものであるにすぎず,引用発明1の「一般的計量ラベル」のような値段ラベルと,これと一緒に商品に貼付される「POPラベル」のような別のラベルをも,同時にそれぞれ別の印字部で印字するラベルプリンタを排除しているものでないことは,上記認定のとおりである。原告は,本件発明2の「ラベルプリンタ」は,各ラベル用紙を択一的に選択して値段ラベルを印字するものであることを前提として主張するものであり,その前提となる主張が採用し得ないものであることは上記のとおりであるから,原告の主張は,理由がない。
引用発明1の「ラベルプリンタ」は,本件発明2の「ラベルプリンタ」に相当するとした決定に誤りはない。
2 請求項2についての取消事由2(「フラグYF3」に係る引用発明1と本件発明2との一致点・相違点の認定の誤り)について 訂正明細書の請求項2における「前記商品の商品番号毎に少なくとも品名及び単価,並びに前記複数の印字部に関する情報を指定することなく前記POP広告用のイメージデータの印字の有無を識別可能な関連情報からなるラベル発行用のデータを予め記憶する記憶手段」との記載は,記憶手段に記憶される商品番号毎の「関連情報」の内容を特定しているものであり,この記載によれば,本件発明2の「関連情報」は,複数の印字部に関する情報を指定することなく,POP広告用のイメージデータの印字の有無を識別することの可能な情報であると認められる。
もっとも,訂正明細書の【請求項2】の「関連情報に基づいて,POP広告用のイメージデータを印字するか否かを判断する判断手段と,・・・判断結果に応じ,前記イメージデータを印字する場合には,前記複数の印字部からPOP広告用のイメージデータを印字するのに適したラベル用紙が装着された印字部を選択する選択手段とを具備する・・・ラベルプリンタ。」との記載からすれば,本件発明2のラベルプリンタは,その判断手段が「関連情報」に基づいてイメージデータを印字するか否かを判断し,また,その判断結果に応じて,選択手段が,複数の印字部から,POP広告用イメージデータを印字するのに適したラベル用紙が装着された印字部を選択するとの構成のものである。したがって,本件発明2においては,その「関連情報」は,前記のとおり,複数の印字部に関する情報を指定するものではないものの,その「判断手段」と「選択手段」が,関連情報に基づいて印字部を選択するという意味において,関連情報が印字部の選択に間接的に寄与しているものであるということができる。
これに対し,刊行物1には,「予約ファイル33は,第7図に示すように,商品番号に対応して,後述する各種のフラグ,パック数(品出数量),特売品の特売期間,POPNo.等を記憶するものである。・・・この予約ファイル33に記憶されるフラグとしては,第9図に示すように,パック数(品出数量)つまり印字するラベルの枚数の予約があるときに立つフラグYF1,特売品の予約つまり特売する商品としての指定があるときに立つフラグYF2,後述するPOPラベルの発行の予約があるときに立つフラグYF3,後述するプロモーションラベルの発行の予約があるときに立つフラグYF4,および後述するバーコードラベルの発行の予約があるときに立つフラグYF5がある。」(甲3号証3頁左下欄13行〜右下欄9行)と記載され,「プリントキーを操作することにより,第14図のフローに入ってラベルを印字する。・・・第2の印字機構部4の使用モードがPOPラベルの印字モードであるか否かを使用モードフラグPF2(判決注・PF3の誤記と認める。)から判断する(ステップSB3)。使用モードフラグPF2(判決注・PF3の誤記と認める。)が立っているときは,POPラべルの印字モードであると判断してステップSB4に進み,予約ファイル33におけるフラグYF3から,POPラベルの予約があるか否かを判断する。フラグYF3が立っていないときは,予約なしと判断してステップSB2に進み,第1の印字機構部3にて計量ラベルのみを印字する。ステップSB4にて,予約ありと判断したとき,つまりフラグYF3が立っているときは,第1の印字機構部3にて計量ラベルを印字(ステップSB5)すると共に,第2の印字機構部4にてPOPラベルを印字(ステップSB6)する。」(同6頁左下欄15行〜7頁左上欄5行)と記載されている。
この記載によれば,引用発明1の「フラグYF3」は,第1又は第2の印字機構部の選択に関する情報を指定するものではなく,あくまでも予約ファイル33に記憶され,予約ファイル33から読み出されるフラグであって,商品番号毎にPOPラベルの発行の予約の有無,すなわち,POP広告用のイメージデータの印字の予約の有無を識別することが可能な情報であり,複数の印字部の選択に関する情報を指定するものではないのであるから,本件発明2の「関連情報」に相当するものである。
また,引用発明1においては,上記のとおり,使用モードフラグPF3と,商品番号毎にPOPラベルの発行の予約の有無を識別することが可能な情報であるYF3とから判断して,第1の印字機構部と第2の印字機構部から印字機構部を複数又は単数選択するものであるから,引用発明1のYF3は,この意味で,印字機構部の選択に寄与するものであり,この点でも,本件発明2の「関連情報」が,判断手段及び選択手段により,印字部の選択に寄与していることと,何ら差異はないのである。
決定は,引用発明1の「フラグYF3」は,本件発明2の「複数の印字部に関する情報を指定することなくPOP広告用のイメージデータの印字の有無を識別可能な関連情報」に相当すると認定したものであり(決定書7頁31行〜37行参照),決定のこの認定に何ら誤りはない。
原告は,引用発明1では,フラグYF3の有無によって,第2の印字機構部でPOPラベルを印字するか否かの選択的判断を行っているものの,フラグYF3は,およそ印字部の選択には何等寄与していないから,本件発明2の「関連情報」には該当しない,と主張する。しかし,引用発明1においても,フラグYF3の有無によって,第2の印字機構部でPOPラベルを印字するか否かの選択的判断が行われ,その結果,第2の印字機構部が選択されたり,選択されなかったりするのであるから,フラグYF3が印字機構部の選択に何ら寄与していないということができないのは,上記認定のとおりである。原告の主張は,採用することができない。
3 請求項1についての取消事由1(本件発明1と引用発明1との一致点・相違点の認定の誤り)について 訂正明細書の請求項1における「複数の印字部に関する情報を指定することなく前記マークダウン処理の有無を識別可能な関連情報からなるラベル発行用のデータを予め記憶する記憶手段」との記載は,記憶手段に記憶される商品番号毎の「関連情報」の内容を特定しているものであり,この記載によれば,本件発明1の「関連情報」は,複数の印字部に関する情報を指定することなく,マークダウン処理の有無を識別することが可能な情報であると認められる。
もっとも,訂正明細書の【請求項1】の「関連情報に基づいて,マークダウン処理を行うか否かを判断する判断手段と,・・・判断結果に応じ,前記マークダウン処理を行う場合には,前記複数の印字部からマークダウン処理を行うのに適したラベル用紙が装着された印字部を選択する選択手段とを具備する・・・ラベルプリンタ」との記載からすれば,本件発明2のラベルプリンタは,その判断手段が「関連情報」に基づいてマークダウン処理を行うか否かを判断し,また,その判断結果に応じて,選択手段が,複数の印字部から,マークダウン処理を行うのに適したラベル用紙が装着された印字部を選択するとの構成のものである。したがって,本件発明2においては,その「関連情報」は,前記のとおり,複数の印字部に関する情報を指定するものではないものの,その「判断手段」と「選択手段」が,関連情報に基づいて印字部を選択するという意味において,関連情報が印字部の選択に間接的に寄与しているものであるということができる。
これに対し,刊行物1には,上記2で引用した記載(甲3号証3頁左下欄13行〜右下欄9行,同6頁左下欄15行〜7頁左上欄5行)があり,さらに,その記載に続いて,「ステップSB3にて,POPラベルの印字モードではないと判断したときは,使用モードフラグPF3(判決注・PF2の誤記と認める。)から,プロモーションラベルの印字モードであるか否かを判断する(ステップSB7)。
使用モードフラグPF3(判決中・PF2の誤記と認める。)が立っているときは,プロモーションラベルの印字モードであると判断してステップSB8に進み,予約ファイル33におけるフラグYF4から,プロモーションラベルの予約があるか否かを判断する。フラグYF4が立っていないときは,予約なしと判断してステップSB2に進み,第1の印字機構部3にて計算ラベルのみを印字する。ステップSB8にて,予約ありと判断したとき,つまりフラグYF4が立っているときは,第2の印字機構部4にてプロモーションラベルを印字する(ステップSB9)。ステップSB7にて,プロモーションラベルの字モードではないと判断したときは,予約ファイル33におけるフラグYF5から,バーコードラベルの印字モードであるか否かを判断する(ステップSB10)。フラグYF5が立っていないときは,バーコードラベルの予約がないと判断してステップSB2に進み,第1の印字機構部3にて計量レベル(判決注・ラベルの誤記である。)のみを印字する。ステップSB10にて予約ありと判断したとき,つまりフラグYF5が立っているときは,第1の印字機構部3にて計量ラベルを印字(ステップSB11)すると共に,第2の印字機構部4にてPOP(判決注・バーコードの誤記と認める。)ラベルを印字(ステップSB12)する。」(甲3号証7頁左上欄6行〜右上欄13行)」との記載がある。
これらの記載によれば,引用発明1の「フラグYF3,YF4及びYF5」は,第1又は第2の印字機構部の選択に関する情報を指定するものではなく,あくまでも予約ファイル33に記憶され,予約ファイル33から読み出されるフラグであって,商品番号毎に,それぞれPOPラベルの発行の予約の有無,プロモーションラベルの発行の予約の有無,又は,バーコードラベル発行の予約の有無を識別することが可能な情報であり,複数の印字部の選択に関する情報を指定するものではないのであるから,本件発明1の「関連情報」に相当するということができる。
引用発明1においては,上記のとおり,使用モードフラグPF3と商品番号毎にPOPラベルの発行の予約の有無を識別することが可能な情報であるYF3,又は,使用モードフラグPF2と商品番号毎にバーコードラベルの発行の予約の有無を識別することが可能な情報であるYF5とから判断して,第1の印字機構部と第2の印字機構部から印字機構部を複数又は単数選択するものであるから,引用発明1のフラグYF3及びYF5は,この意味で,印字部の選択に寄与するものでもあり,この点でも本件発明1の「関連情報」が判断手段及び選択手段により,印字部の選択に寄与していることと,何ら差異はないのである。
引用発明1においては,上記のとおり,使用モードフラグPF2と,商品番号毎にプロモーションラベルの発行の予約の有無を識別することが可能な情報であるYF4とから判断して,第1の印字機構部と第2の印字機構部から印字機構部を選択するものであるから,引用発明1のYF4は,この意味で,印字部の選択に寄与するものでもあり,この点でも本件発明1の「関連情報」が判断手段及び選択手段により,印字部の選択に寄与していることと,何ら差異はないのである。
したがって,決定の「刊行物1に記載された発明の「POPラベルの発行の予約があるときに立つフラグYF3,プロモーションラベルの発行の予約があるときに立つYF4,及びバーコードラベルの発行の予約があるときに立つYF5,」は,各レジスタ(記憶手段)にセット(記憶)される,一般的計量ラベル(値付けラベル)とは異なるラベル(POPラベル,プロモーションラベル,バーコードラベル)発行用のデータであり,また,判断手段が一般的計量ラベル(値付けラベル)とは異なるラベル(POPラベル,プロモーションラベル,バーコードラベル)を印字するか否かを判断する際に基づくものでもあり,複数の印字部に関する情報を指定するものでない。」(決定書8頁下から5行〜9頁4行)との認定,及び,本件発明1とは,「複数の印字部に関する情報を指定することなく前記通常の値段ラベルとは異なる処理の有無を識別可能な関連情報」(決定書9頁11行〜13行参照)である点で一致するとの認定に誤りはない。
原告は,引用発明1のフラグYF3及びYF5は印字機構部の選択に何ら寄与するものではない,と主張する。しかし,引用発明1においても,フラグYF3及びYF5の有無によって,第2の印字機構部で印字するかどうかの選択的判断が行われ,その結果,第2の印字機構部が選択されたり,選択されなかったりするのであり,フラグYF3及びYF5が印字部の選択に何ら寄与していないということができないのは,上記のとおりである。原告の主張は,採用することができない。
原告は,フラグYF4が印字部を選択するための専用データであり,印字データとは無関係に設定されるものであるので,本件発明1の関連情報には該当しない,と主張する。しかし,刊行物1には,「例えば,広告の品等で特に客の注意を引き付けたい場合に,他の計量ラベルとは異なる色(・・・)のラベル用紙に印字したもの,あるいは予め「広告品」とプリ印刷されているラベル用紙に印字したものである。後者の場合には,「広告品 」等の広告文 は,ラベルプリンタ にて 印字 することも 可能 である 」(甲3号証3頁右下欄末行〜4頁左上欄6行,下線付加)と記載され,プロモーションラベルとしては,通常の値段ラベルに印字されるデータと併せて,「広告品」等の広告文のデータをラベル用紙に印字することも可能であることが示されている。そうである以上,引用発明1のフラグYF4を印字部選択用の専用データと解することはできず,決定が「フラグYF4」を「通常の値段ラベルの印字処理とは異なる処理の有無を識別可能な関連情報」に相当するとした点に誤りはない。
原告は,上記広告文のデータは,商品番号毎に記憶されることがない,と主張する。しかし,プロモーションラベルの対象となる商品は,すべての商品ではなく,一部の商品であるのが通常であるから,商品番号をもって特定される商品であると解すべきであり,原告の上記主張は採用することができない。
4 請求項1についての取消事由2(引用発明1と本件発明1との相違点についての判断の誤り)について 刊行物2には,ラベルに改訂前のデータと改訂後のデータを併せて印字すること,すなわちマークダウン処理をすることが記載されているのであるから(甲4号証),この引用発明2を,通常の値段ラベルの処理とは異なる処理(POPラベルの印字,プロモーションラベルの印字及びバーコードラベルの印字等)を行う手段を有する引用発明1において採用することは,当業者が容易に想到することができることである。したがって,これと同旨の決定の判断に誤りはない。
原告は,刊行物2には本件発明1の具体的構成,目的及び作用効果が全く開示されていないのであるから,当業者といえども本件発明1を容易に考え出すことは不可能である,と主張する。しかし,決定は,マークダウン処理の構成を除いては,本件発明と一致した構成が開示されている引用発明1において,POPラベル,プロモーションラベル及びバーコードラベル等の処理に代えて,引用発明2のマークダウン処理を行うようにすることは,当業者にとって容易であると判断したものであり,原告の上記主張に理由がないことは明らかである。
5 結論 以上に検討したところによれば,原告の主張する取消事由はいずれも理由がなく,その他,決定には,これを取り消すべき瑕疵は見当たらない。そこで,原告の請求を棄却することとし,訴訟費用の負担について,行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 山下和明
裁判官 設樂隆一
裁判官 高瀬順久