関連審決 | 審判1996-13416 |
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関連ワード | 製造方法 / 公然実施(29条1項2号) / 進歩性(29条2項) / 容易に発明 / 相違点の判断 / 周知技術 / 技術常識 / 参酌 / 置き換え / 容易に想到(容易想到性) / 実施 / 加工 / 交換 / 設定登録 / 請求の範囲 / 変更 / 独立特許要件 / 訂正明細書 / 判決の拘束力 / |
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事件 |
平成
12年
(行ケ)
389号
審決取消請求事件
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原告 東レ・デュポン株式会社 訴訟代理人弁護士 柴田眞宏、松崎昇 同 弁理士 樋口榮四郎 被告 富士紡績株式会社 訴訟代理人弁理士 仁木弘明、草野浩一 |
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裁判所 | 東京高等裁判所 |
判決言渡日 | 2002/12/19 |
権利種別 | 特許権 |
訴訟類型 | 行政訴訟 |
主文 |
原告の請求を棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 |
事実及び理由 | |
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原告の求めた裁判
特許庁が平成8年審判第13416号事件について平成12年8月25日にした審決を取り消す。 訴訟費用は被告の負担とする。 |
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前提となる事実
1 手続の経緯 (1)原告は、名称を「紙おむつ用弾性糸巻糸体」とする特許第2000038号の発明(昭和63年3月1日出願、平成7年12月8日設定登録。以下「本件発明」という。)の特許権者である。 (2)被告は、平成8年8月7日、本件特許について無効審判を請求し(平成8年審判第13416号)、原告から平成9年1月20日に訂正の請求(本件訂正請求)がされ、特許庁は、平成10年3月30日、「本件訂正を認める。本件審判の請求は成り立たない。」旨の審決をした(第1次審決)。 これに対し、被告から審決取消訴訟が提起され(東京高等裁判所平成10年(行ケ)第140号)、東京高等裁判所は、平成11年8月26日、第1次審決を取り消す旨の判決をした(前訴判決)。 その後、再開された審判手続において、特許庁は、本件訂正について訂正拒絶理由を通知し、平成12年8月25日、「特許第2000038号発明の明細書の請求項1ないし請求項4に係わる特許を無効とする。」との審決をし(以下、単に「審決」という。)、その謄本を平成12年9月13日に原告に送達した。 2 発明の要旨 (1)本件発明(登録時の明細書の特許請求の範囲の記載) 「1 糸巻量が1.5kg若しくはそれ以上で巻幅Aと巻厚Bとの比B/Aが0.4若しくはそれ以上である弾性糸巻糸体であって、該巻糸体内における弾性糸の見掛けの伸長率C(%)と各弾性糸の処理剤付着量D(重量%)とが D-5≦C≦D+5 D≦2 の関係にあり、かつ各弾性糸の繊度が280〜1120デニールであることを特徴とする紙おむつ用弾性糸巻糸体。 2 巻幅Aと巻厚Bとの比B/Aが0.5以上であることを特徴とする請求項1記載の紙おむつ用弾性糸巻糸体。 3 糸巻量が3kg以上であることを特徴とする請求項1記載の紙おむつ用弾性糸巻糸体。 4 弾性糸がポリウレタン弾性糸であることを特徴とする請求項1記載の紙おむつ用弾性糸巻糸体。 (2)訂正発明(本件訂正請求に係る訂正明細書の特許請求の範囲の記載。下線は訂正箇所) 「1 糸巻量が1.5kg若しくはそれ以上で巻幅Aと巻厚Bとの比B/Aが0.4若しくはそれ以上である弾性糸巻糸体であって、該巻糸体内における弾性糸の見掛けの伸長率C(%)と各弾性糸の処理剤付着量D(重量%)とが D-3≦C≦D+ 3 D≦2 の関係にあり、かつ各弾性糸の繊度が280〜1120デニールであることを特徴とする紙おむつ用弾性糸巻糸体。」 (請求項2ないし4は、登録時の明細書の記載と同文につき、記載省略) 3 審決の理由の要点 審決の理由は、別紙審決の写し(審決書)のとおりである。その要点は、次のとおりである。 A 訂正の適否 (1) 甲第4号証ないし第13号証及び甲第17号証(審判甲1ないし甲10、甲18)によれば、本件特許出願前に、次のものが公然と実施されていたものと認められる。 「組紐に用いられるポリウレタン弾性糸の巻糸体であって、繊度が840デニールおよび1120デニール、糸巻量が1.0kgで、処理剤を付与することなく巻き取られたもの。 その巻糸体を、本件発明の方法に従って、巻幅Aと巻厚B、見掛けの伸長率C(%)と該弾性糸の処理剤付着量D(重量%)とを計測、測定した場合、その数値が、『巻幅Aと巻厚Bとの比B/Aが0.4以上』、『見掛けの伸長率C(%)と該弾性糸の処理剤付着量D(重量%)とが、D-3≦C≦D+3、 D≦2』の範囲にあるもの。」(以下、「公然実施発明」という。) (2) 訂正発明と公然実施発明とを対比すると、両者は、 ポリウレタン弾性糸の巻糸体であり、巻幅Aと巻厚Bとの比B/Aが0.4以上の範囲にあること、見掛けの伸張率C(%)と該弾性糸の処理剤付着量D(重量%)の数値が、「D-3≦C≦3、D≦2」の範囲にあること、繊度が840デニール及び1120デニールの範囲にあること、で一致し、次の点で相違する。 相違点1:糸巻量が訂正発明では1.5kg以上であるのに対し、公然実施発明では1.0kgであること、 相違点2:訂正発明が紙おむつ用弾性糸に係る物であるのに対し、公然実施発明は組紐に用いるものであること。 (3) 相違点の検討 (3)-1 相違点1について 甲第14号証(審判甲11)の記載からみて、巻糸体のラージパッケージ化傾向について知られていたことが認められ、弾性糸の巻糸体であっても、同様にラージパッケージ化が要求されていたものと解することができる。 そうすると、公然実施発明の巻糸体についても、その糸巻量を多くする試みは必要に応じて当業者が適宜なし得ることと認められ、弾性糸の場合に1.5kg以上のものとすることが困難であったとするに足る根拠もない。 訂正発明が弾性糸をラージパッケージ化するために採用する手段は、巻幅Aと巻厚Bとの比B/A、見掛けの伸張率Cと該弾性糸の処理剤付着量Dとの関係を特定することによるものと解されるのであり、その関係を満足すれば1.5kg以上の多巻量化が可能であるとしているのであるから、それらの関係を満足しているものであれば、糸巻量を1.5kg以上としたとしても、形態保持性等に問題が生じることのない巻糸体が当然に得られたものと解される。 したがって、1.0kgのものであっても、上記の関係を満足する巻糸体が公知であったと認められる以上、その巻糸量を1.5kg以上とすることは、当業者にとって容易に想到し得ることといわざるを得ない。 (3)-2 相違点2について 弾性糸を紙おむつ用に供することは周知の事項であったものと認められる。 (3)-3 そうすると、上記各相違点に係る構成は、いずれも、当業者が必要に応じて容易に想到し得ることと認められる。 (4) よって、訂正発明は、公然実施発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、訂正発明は出願の際独立して特許を受けることのできないものであるから、本件訂正は認められない。 B 本件発明についての無効理由の判断 本件発明1ないし4は、いずれも、甲第4号証ないし第13号証及び甲第17号証(審判甲1ないし10及び18)から認められる公然実施発明b(CとDの関係式をD-5≦C≦D+5とする以外は、(1)の公然実施発明と同じ)及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものである。 C むすび 本件の請求項1ないし請求項4に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものであり、特許法123条1項の規定により無効とすべきものである。 |
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原告主張の審決取消事由
審決は、(1)公然実施発明の認定を誤り(取消事由1)、(2)仮に、公然実施発明が審決の認定のとおりのものであったとしても、これと訂正発明との対比において相違点を看過し(取消事由2)、(3)公然実施発明と訂正発明との相違点1及び相違点2についての判断を誤り(取消事由3)、訂正発明の進歩性を否定する誤った結論に至ったものであるから、違法なものとして取り消されるべきである。 1 公然実施発明の認定の誤り(取消事由1) 審決は、甲第12号証(審判甲9)の試験成績書において測定されている巻糸体(「甲第12号証の巻糸体」という。)が、甲第4、第5号証(審判甲1、2)の出荷通知書に記載された巻糸体を忠実に再現した巻糸体であると誤認し、この誤った認定に基づいて公然実施発明を認定した誤りがある。 (1)本件において、被告は、既に存在しない甲第4、第5号証の巻糸体を、同巻糸体製造当時(昭和60年)の製造条件に従って再現したときに、その再現品が、「B/Aが0.4若しくはそれ以上」、「D-3≦C≦D+3、D≦2」の関係にあったことを、再現実験によって立証しようとし、この再現実験(「甲第12号証の再現実験」という。)によって作成されたポリウレタン弾性糸巻糸体(甲第12号証の巻糸体)の試験結果を記載した甲第12号証(審判甲9)の試験成績書を提出している。しかしながら、甲第12号証の巻糸体は、次の(2)、(3)で述べるとおり、甲第4、第5号証の巻糸体を製造した当時と同1条件で作成されたものと認めることはできないから、これを作成した実験に再現実験としての意味はなく、甲第12号証の巻糸体の特性をもって、甲第4、第5号証の巻糸体の特性であるということはできない。 審決は、甲第12号証の巻糸体は甲第4、第5号証の巻糸体を「可能な範囲で再現したもの」といわざるを得ず、甲第12号証の巻糸体が第4、第5号証の巻糸体と異なるものであるとすることはできない、旨述べて、甲第4ないし第13号証、 第17号証(審判甲1ないし10、18)に基づき審決のいう公然実施発明を認定したが、誤りである。 しかも、審決は、後記(4)で述べるとおり、甲第4、第5号証の巻糸体の特性(D-3≦C≦D+3、D≦2の関係を満たすかどうか)がその出荷当時公知とはなっていなかったのに、この点も含めて公然実施発明と認定する誤りを犯している。 (2)A証言の信用性 審判で行われた証人尋問における証人Aの証言(A証人の反対尋問テープ反訳書〔甲第20号証〕。以下「A証人」、その証言を「A証言」という。)は、信憑性がない。 審決は、A証言について、「請求人会社(被告)では、昭和60年当時、スパンデックスの巻糸体は甲第9号証の1及び2(審判甲6の1、2)の紡糸製造標準(以下「甲第9号証の製造標準」という。)に従って製造していたこと、オイルレスのものについては、油剤付与の条件を除いて、その紡糸製造標準に従って製造していたことが証言されている。」(審決8頁)と指摘した上で、「甲第1号証〔本訴甲4〕に示された、昭和60年2月6日に出荷された、840Dのオイルレスのスパンデックス巻糸体は、油剤を付与しない以外は甲第6号証の1〔本訴甲9の1〕に記載された、昭和59年10月23日に設定された条件で、また、甲第2号証〔本訴甲5〕に示された、昭和60年6月10日に出荷された、1120Dのオイルレスのスパンデックス巻糸体は、油剤を付与しない以外は甲第6号証の2〔本訴甲9の2〕に記載された、昭和59年12月22日に設定された条件で、それぞれ製造されたものであると認めざるを得ない。」(審決8頁)と認定し、さらに、 「甲第9号証〔本訴甲12号証〕の製造実験において、甲号各証に示されていない条件については昭和60年当時採用されていたと解される条件に従って製造したという趣旨の証言がされているのであるから、その証言内容は認めざるを得ず、・・・甲第9号証〔本訴甲12〕の実験が甲第1、第2号証〔本訴甲4、5〕の巻糸体と異なるものであるとすることはできない。」(審決10頁)としている。 しかし、A証言に信憑性がないことは以下のとおりである。 @ A証人は、被告が行っているスパンデックス糸製造に当たって、湿式紡糸では溶剤を変えたことがなく、ジメチルホルムアミドを使用しており、これ以外の溶剤は用いていない旨、証言しているが(甲第20号証8頁76〜81項)、被告の製造に係る湿式紡糸によるスパンデックス糸からはジメチルアセトアミドが検出され、ジメチルホルムアミドは検出されなかった(甲第23、第24号証)。 A 被告は、前訴(東京高裁平成10年(行ケ)第140号審決取消訴訟)において、「紡糸製造標準は、通常のスパンデックス糸が対象であり、油剤を付与することを前提に記載されており、特別なケースとして油剤を付与しないときには、その都度別途紡糸製造標準ではなく通達指示される。」(甲第22号証29頁)と明白に自白している。A証人にこのことに関し、「油剤がない場合、通達で、その都度、別途紡糸製造標準でなく指示される」と書いてあることを確かめたところ、この点については特に間違いがあるとの発言もなく認めている(甲第20号証5頁44〜47項)。その一方で、A証人は油剤を付与する製造紡糸標準に従って油剤を付与しない(オイルレス)製品を製造する、という矛盾した証言をしている(証人Aの主尋問・反対尋問録音テープ反訳書〔乙第1号証の1〕)。 B 甲第9号証の製造標準にあるフィードローラー、ドライブローラーの速度条件は、油剤付与後の工程の条件であり、これらの速度は緩く巻くか、きつく巻くかに影響するから、オイルレスの製品を製造する場合には、オイルレスに応じた速度条件があってしかるべきであり、このことからも、甲第4、第5号証の巻糸体が油剤を付与しない以外は甲第9号証の製造標準に設定された条件で製造されていたといえないことは明らかである。 したがって、信憑性のない証人の証言を前提に、甲第4、第5号証の巻糸体は油剤を付与しない以外は甲第9号証の製造標準に設定された条件で製造された、とした審決の認定は誤りである。 (3)再現実験性 審決は、甲第12号証の巻糸体は、甲第4、第5号証の巻糸体を「可能な範囲で再現した」ものであるというが、可能な範囲で再現したというだけでは、甲第12号証の巻糸体が甲第4、第5号証の巻糸体と同一だということにはならない。原告の再現実験は、以下に述べるとおり、甲第4、第5号証の巻糸体が製造された当時(昭和60年)の被告小坂井工場の紡糸製造標準(甲第9号証の製造標準)に設定された条件及び当時(昭和60年)の操業条件に従い、これを忠実に実施したものでもない。 @ 吐出速度 甲第9号証の製造標準には吐出速度が記載されているが、A証人は甲第12号証の再現実験においては吐出速度を測定しなかった旨の証言をしている(甲第20号証1頁1〜4項)。つまり、甲第12号証の再現実験は、吐出速度を無視して行ったものであって、忠実な再現実験とはいえない。 被告は、吐出速度の算出につき、乙第12号証に基づいて反論するが、失当である。すなわち、乙第12号証において算出要素としている原液の固形分濃度について、A証人は20%と証言するが(甲第20号証29項、甲第21号証)、乙第12号証の算出に用いられた濃度は、添加剤を加えるとの説明から21.2%であり、また、原液の比重は1.030であるが、これらの数値は甲第9号証の製造標準に記載はない。また、証人は、添加剤を加えて紡糸原液の濃度を上記20%から21.2%にするとも証言してはいない。したがって、被告の主張は、その前提において失当であり、吐出速度は甲第9号証の製造標準記載の他の条件から自ずと決まるものではなく、結局、再現実験は甲第9号証の製造標準に設定された吐出速度条件に従って実施したといえるものではない。 A 原液の粘度 甲第9号証の製造標準には、原液の粘度600ps(温度40℃)と記載されているが、甲第12号証の再現実験は、この粘度で実施したかどうかが不明である。A証人は、原液を1日程度熟成させるので600psに変わるのだと証言するが(甲第20号証9頁87〜96項)、再現実験において、実際に、どの程度の粘度になったものを使用したかについては、依然として不明であるし、粘度変化(粘度が大きくなる)はポリウレタンの重合反応の進行によるものであり、重合反応は貯蔵時の温度に影響されるが、その温度も不明である。また、仮に、被告主張のように、添加剤を紡糸原液の濃度が21.2%となるような量まで添加するのであれば、なおさら、その原液の粘度は不明となってしまう。 つまり、甲12号証の再現実験は、原液の粘度を無視して行ったものであって、 忠実な再現実験とはいえない。 B 紙管の外径 甲第4、第5号証の巻糸体は、甲第13号証の2の昭和60年2月5日当時のスパンデックス糸包装規定に基づいて外径79mmの紙管を用いていたと見るのが常識であるのに対し、甲第12号証の再現実験では外径85.5mmの紙管を用いて行っている。したがって、上記再現実験は、当時の操業条件に従って忠実に実施したものとはいえない。 審決は、紙管については甲第13号証の2によれば79oであるが、その後、85.5oのものに変更されていたことが、証言されており、甲第17号証をも考慮すると、昭和60年2月当時、すなわち甲第4号証、甲第5号証に係る巻糸体に使用された紙管は85.5oφの径のものであったと認めることができる(審決書8頁下から12行から9行)という。しかしながら、甲第17号証記載の紙管は、同号証の適用範囲の欄には「この仕様書きは、フジボウ小坂井(株)殿へ、納入するスパンデックス紙管に適用する」と記載されているから、個別のケースについて適用されるものである。そして、甲第17号証記載の紙管がスパンデックス糸包装規定に掲載され、甲第4、第5号証の巻糸体を含む製品一般への使用が認められたのは昭和62年5月1日からである(甲第13号証の3)。昭和60年2月5日当時のスパンデックス糸に外径85.5mmの紙管が用いられていたとする証人の証言(乙第1号証の1、15〜16頁53〜64項)は信用し難い。 C 添加剤について A証人は、昭和60年当時、各種の添加剤を使用していたと証言している(乙第1号証の1、2頁、101〜109項)にもかかわらず、甲第12号証の再現実験では添加剤の種類、添加量が記載されていない。 添加剤の種類や添加量は糸質に影響し、見掛けの伸長率Cにも影響を与える条件である。 (4)巻糸体の特性の公知性についての誤認 甲第4、第5号証の巻糸体が、特性(ロ)のうち「本件発明の方法に従って、見掛けの伸長率C(%)と処理付着量D(重量%)とを計測、測定した場合、その数値がD-3≦C≦D+3、D≦2の範囲にある」という特性を持っていたことは、本件特許出願前には公知でなかった。甲第4、第5号証の巻糸体と主張されるもの(甲第12号証の巻糸体)に対し前述の計測、測定をしたのは、平成8年5月17日作成の甲第12号証の再現実験のときであり、その結果が公知になったのは甲第12号証の試験成績書を不特定人が閲覧することが可能になった本件審判請求日の平成8年8月7日以降である。したがって、上記特性を持つものとして巻糸体は公知でなく、公然実施発明として知られてはいなかったのであり、上記特性を含めて公然実施発明を認定した審決は誤りである。 2 取消事由2(相違点の看過) 仮に、甲第12号証の巻糸体が甲第4、第5号証の巻糸体を忠実に再現した巻糸体であったとしても、この巻糸体が、特性(ロ)のうち「B/Aが0.4以上」という点はともかく、「D-3≦C≦D+3、D≦2」という特性を持っていたことは、前記1(4)のとおり、本件特許出願前に公知ではなかったし、この特性の作用効果も公知でなかった。したがって、上記の点は、訂正発明と甲第4、第5号証の巻糸体との相違点とされるべきであったのに、審決はこれを看過している。 3 取消事由3(相違点についての判断の誤り) 3-1 相違点1(糸巻量)についての判断の誤り 審決は、相違点1(糸巻き量が訂正発明では1.5kg以上、公然実施発明では1.0kgであること)について、「1.0kgのものであっても、上記の関係(注、D-3≦C≦D+3、D≦2)を満足する巻糸体が公知であったと認められる以上、その巻糸量を1.5kg以上にすることは、当業者にとって容易に想到し得る。」(審決11頁)と判断するが、誤りである。 (1)本件特許出願当時、巻糸体のラージパッケージ化が試みられていたことは認めるが、だからといって、容易に糸巻量を1.5kg以上にすることができるとはいえない。弾性糸巻糸体を従来存在しない1.5kg以上のものとするには格別の困難があり、工夫を要する。 糸巻量を1.5kg以上にすることが容易に想到し得るというためには、そもそも、無数にある巻糸体の中から、特に甲第4、第5号証の巻糸体について、その糸巻量を1.5kg以上に増やしても紙おむつ用の用途に耐える正常な巻糸体が得られるという潜在的可能性に気付かなければならず、その潜在的可能性に気付かない限り、甲第4、第5号証の巻糸体の糸巻量を増やそうとの考えに至ることはない。 (2)また、巻幅Aと巻厚Bとの比B/A、見掛けの伸長率Cと処理剤付着量Dとの関係を特定すれば、1.5kg以上の多巻量化が可能であり、形態保持性等に問題が生じることのない巻糸体が得られるという事項は、訂正発明が初めて明らかにした技術的事項であって、本件出願前には、この技術的事項は公知でない。この公知でない技術的事項を相違点1の判断材料にして、審決のように、「訂正発明が弾性糸をラージパッケージ化するために採用する手段は、巻き幅Aと巻厚Bとの比B/A、見掛けの伸長率Cと該弾性糸の処理剤付着量Dとの関係を特定することによるものと解されるのであり、その関係を満足すれば1.5kg以上の多巻量化が可能であるとしているのであるから、それらの関係を満足しているものであれば、 糸巻量を1.5以上としたとしても、その形態保持性等に問題が生じることのない巻糸体が当然に得られたものと解される。」(審決書11頁)と判断することは誤りである。 甲第4、第5号証の巻糸体が公然と存在していても、その見掛けの伸長率Cは知られておらず、また、その製造条件も本件出願前に公知となっていたものではないのであるから、その巻糸量を1.5kg以上にするのは技術的に困難であったというべきである。審決の「困難であったとするに足る根拠もない。」(審決書11頁)との認定判断は誤りである。 3-2 相違点2(紙おむつ用か組紐用か)についての判断の誤り 審決は、相違点2(紙おむつ用の弾性糸か組紐用の弾性糸かという用途の相違)について、弾性糸を紙おむつ用に供することは周知の事項であったから、相違点2に係る構成は、当業者が必要に応じて容易に想到し得ることと認められる旨判断したが、誤りである。 組紐用弾性糸巻糸体と紙おむつ用弾性糸巻糸体とは、その弾性糸の使用目的、使用態様が異なり、それぞれの目的、用途の観点から、それぞれに適する特性が付与されているのであって、単に弾性糸を紙おむつに用いることが公知であったからといって、甲第4、第5号証の巻糸体とされるものを紙おむつ用とすることが容易に想到し得るとはいえない。仮に、紙おむつ用とすることが容易に想到し得るとしても、甲第4、第5号証の巻糸体を紙おむつ用とすることだけの意味しかなく、訂正発明が容易に想到し得ることにはならない。訂正発明は、紙おむつ用という用途と他の要件とが一体になった点に意味があるのであって、用途だけを取り出して判断しても、訂正発明の進歩性を否定することはできない。 |
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被告の反論の要点
1 取消事由1(公然実施発明の認定の誤り)に対して (1)審決のした公然実施発明の認定に誤りはない。 (2)A証言の信憑性 湿式紡糸に使われる溶剤として購入されるジメチルホルムアミド(DMF)に微量ジメチルアセトアミド(DMAc)が不純分として含まれ(乙第14号証、表5)、そのために、それを溶剤として製造した湿式紡糸の糸は、熱水浴中での脱溶媒後においても、糸に脱溶媒され難いDMAcが残留する傾向があるものであり(乙第14号証、表1、2)、甲第23号証の分析結果は、湿式紡糸過程で残留した不純分であるDMAcを検出していると理解される。被告会社製造に係る湿式紡糸によるスパンデックス弾性糸が、溶剤としてDMFではなくて、DMAcを用いていると結論付けることはできない。 A証言(乙第1号証の1、14頁43〜47項、26〜27頁148項)は、オイルレスは甲第9号証の製造標準に基づいて紡糸されるが、これは特殊品なので、 その点は甲第9号証の製造標準に記載せず、その都度、オイルレスであることだけが別途指示されるとの意味であることは明らかであって、矛盾した証言ではない。 A証言に信憑性がないとの原告主張は失当である。 (3)甲第12号証の再現実験性 @ 吐出速度 吐出速度は、甲第9号証の製造標準に設定されている生産装置の稼働条件等から決まる性質のものであり、吐出量とノズル断面積から算出した結果は、甲第9号証の製造標準の吐出速度に示されているとおりのものとなっている(乙第12号証)。 A 紡糸原液の濃度 甲第4、第5号証の巻糸体の製造の場合と甲第12号証の再現実験の場合のいずれにおいても、紡糸原液は、重合終了直後から1日程度の貯蔵による経時変化で粘度が510ポイズから600ポイズ程度に上昇したものを用いていることは、証人により証言されているとおりである(乙第1号証の1、 11頁18項、19〜20頁87〜96項)。そして、該貯蔵が室温下の放置で行われていることも明らかである。また、紡糸原液への添加剤添加後の原液濃度が21.2%になることは明らかであり(乙第12号証)、添加剤を加えれば粘度が上がることは当たり前のことである。そして、甲第12号証の再現実験の場合も、甲第4、第5号証の巻糸体の製造の場合も、同様に添加剤が添加され、粘度の上昇が等しく起こっているだけのことである。 B 紙管の外径について 甲第17号証は、田中紙管鰍ェ富士紡績小坂井工場から求められ作成、送付したスパンデックス糸用紙管仕様書であって、昭和59年9月12日付けのものであり、適用範囲欄に「この仕様書は、フジボウ小坂井鰍ヨ、納入するスパンデックス紙管に適用する。」と、また、規格欄に「貴社名印刷」と記載されているのであるから、常識的に考えても、昭和60年2月頃には、 小坂井工場で使用された紙管は外径=85.5oのものに変更されていたとみるのが自然である。また、スパンデックス糸包装規程は、現場サイドによる実務運用上の小さな変更を一切許さないとする趣旨のものではない。 また、前訴判決は、甲第4、第5号証の巻糸体について、紙管は外径85.5oのものであった旨を判示しており(判決文57頁17、18行、59頁1行〜3行)、原告は確定した前訴判決の拘束力に従ってなされた審決の認定を違法として非難しているにすぎない。 さらに、外径85.5oの紙管を用いた甲第12号証記載の巻糸体の巻幅Aと巻厚Bの比B/A(10個の試料の平均値)は、0.499及び0.515であり、 仮に、原告が主張するように外径79.0oの紙管を用いていたとしても、それらの巻糸体のB/A比が訂正発明の要求するB/A比0.4以上との要件を満たしていることに疑問の余地はなく、審決が公然実施発明として認定した内容に影響することはない。 甲第12号証の再現実験において、紡糸原液に添加剤を入れていたこと、それが甲第4、第5号証の巻糸体を製造した昭和60年当時と変わっていないことは、A証言のとおりであり、甲第12号証でその旨の記載を省略しているのは見掛けの伸長率Cや処理剤付着量Dの値に影響しないからであることも、A証言から明らかである。 また、本件訂正明細書では、糸質は見掛けの伸長率Cを左右するものとして位置づけられていないし、訂正発明は、糸質を特徴とすることによって成立しているものでもなければ、目的、作用効果が達成されるとしている発明でもないから、見掛けの伸長率Cは、糸質によって影響されないことが明らかである。 (4)巻糸体の特性の公知性について 甲第4、第5号証の巻糸体が公然と使用されていた以上、その見掛けの伸長率Cは、甲第4、第5号証の巻糸体の現物を見た当業者が知り、知り得ることであったのであり、そのC値は公然と知られたものとなっていたというべきである。 2 取消事由2(相違点の看過)に対して 原告の主張は失当である。 3 取消事由3(相違点についての判断の誤り) 3-1 相違点1について 甲第4、第5号証記載のスパンデックス(ポリウレタン弾性糸)巻糸体は、本件出願前に公知であり、また、組紐用に公然と用いられた際に、解舒性や糸切れ、糸層崩れ等のトラブルなしに使用することができたものであったことは明らかであるから、その巻糸量を1.5s以上にすることができないと考える理由はない。1sのものを更に巻き増して1.5s以上にすればよいだけである。1.5s以上に巻き増すことは、実験的に適宜行えば足りること、容易に行える程度のことである。 ポリウレタン弾性糸の引き伸ばしの程度や綾角度、巻幅はそのままにするなど、1sの甲第4、第5号証の巻糸体を得るまでと同様の巻取条件で、更に1.5s以上に巻き増すことができるかを考えればよいだけのことである。 3-2 相違点2について 甲第4、第5号証の巻糸体が、組紐用の他に、紙おむつ用にも使えることは、技術的、常識的にみて明らかである。弾性糸によって弾性、ストレッチ性、伸縮性を付与する点で、両用途間に使用上の目的の差異はない。また、訂正発明における見掛けの伸長率Cと処理剤付着量D及びこれらの関係、さらに、巻幅Aと巻厚Bの比B/Aや糸巻量は、紙おむつ用との用途と、別段、一体不可分の関係にあるものではないから、それを分けて判断しても、何ら誤りではない。 |
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当裁判所の判断
1 取消事由1(公然実施発明の認定の誤り)について (1)前訴判決及び審決の判断事項 本件は、第1次審決を取り消した前訴判決を受けて、審判手続が再開され、審決に至った事案であり、前訴判決においては、被告(前訴原告)の主張した第1次審決取消事由1ないし3のうち、取消事由1及び3は理由がないが、取消事由2(訂正発明の独立特許要件の判断のうち、訂正発明が容易推考でないとした判断の前提となる事実認定等の誤り)は理由があるとの判断がされ、第1次審決が取り消されている。 ア 前訴判決における取消事由2についての判断の要旨は、次のとおりである(前訴判決文中の原告を「被告」、前訴被告を「原告」、証拠番号を本訴の証拠番号に置き換えて要旨を摘示する。)。 (1)@ 甲第4、第5号証のポリウレタン弾性糸巻糸体は、昭和60年の時点で、被告小坂井工場において製造され、日新繊維株式会社に組紐用に出荷、納入されたもので、この弾性糸巻糸体が公然と存在し、知られていたものであること、甲第4号証の巻糸体は、繊度840デニール、油剤等の処理剤を付着させないスパンデックス糸で、糸巻量1kgの巻糸体であり、甲第5号証の巻糸体は、繊度1120デニール、油剤等の処理剤を付着させないスパンデックス糸で、糸巻量1kgの巻糸体であったこと、が認められる。 A 甲第9号証の1、2の紡糸製造標準や、甲第10号証の1、2の乾燥・仕上・巻取日誌は、同一の製品を再び製造することができるように製造された製品の製造条件を記載しているものと認められるから、これらの標準、日誌等には同一の製品を再び製造するために必要な製造条件を記載しているものと認められ、 これに、記録する必要のない被告小坂井工場における他の標準的な製造条件を加えれば、同一製品を再び製造することができるものと認められる。 そうすると、甲第4、第5号証の巻糸体が甲第9号証の1、2の紡糸製造標準、甲第10号証の1、2の乾燥・仕上・巻取日誌に記載された条件に従って製造されたことが、審判手続で被告が申請していた証人の尋問等により立証されれば、被告が上記甲第9号証の1、2の紡糸製造標準、甲第10号証の1、2の乾燥・仕上・巻取日誌に従って製造したものと主張する甲第12号証に記載された弾性糸巻糸体は、甲第4、第5号証の巻糸体を製造再現したものと認めるべきである。 B 甲第9号ないし第11号証に、弾性糸の原料重合体の成分、粘度(分子量)、紡糸原液の組成や紡糸浴の組成が記載されていないとしても、これらは、 被告が申請した証人の証言により立証することが可能な事項と認められるから、弾性糸の原料重合体の成分等が不明であるから再現することができない旨の原告の主張は採用することができない。 (2) したがって、被告の申請した証人の立証趣旨を正しく理解せずにその必要性を否定し、甲第9ないし第15号証に当時の標準的技術が開示されていたとしても、その開示技術で甲第4、第5号証の巻糸体を製造したものか否か不明であるので、前記甲号証を参酌しても、甲第4、第5号証のポリウレタン弾性糸巻糸体を忠実に製造再現することができるものとはいえないとした第1次審決の認定、判断は誤りである。 そして、審決のこの点の誤りは、独立特許要件の判断のうち推考容易に ついての判断に影響するものと認められる。 イ 審決の認定・判断 審決は、(@)再開された審判手続において前訴判決の判示(アの(1)A)に従って実施された証人尋問の結果に基づき、甲第4、第5号証の巻糸体が甲第9号証の1、2の紡糸製造標準、甲第10号証の1、2の乾燥・仕上・巻取日誌に記載された条件に従って製造されたことは証人尋問により立証されたと認定し(審決書8頁5行〜12行)、さらに(A)原告が甲第9号証の1、2の紡糸製造標準、甲第10号証の1、2の乾燥・仕上・巻取日誌に従って製造したものと主張する甲第12号証に記載された弾性糸巻糸体は、甲第4、第5号証の巻糸体を製造再現したものと認められるとしたうえ、(B)甲第12号証の巻糸体のB/A値は0.4以上(甲第12号証の第1表)、処理剤付着量D及び見掛けの伸張率CとDの関係は、 甲第12号証の第2、3表からみて、訂正発明で規定する範囲に入る数値である、 として、次のもの;「組紐に用いられるポリウレタン弾性糸の巻糸体であって、繊度が840デニールおよび1120デニール、糸巻量が1.0kgで、処理剤を付与することなく巻き取られたもの。」(特性(イ)という。)「その巻糸体を、本件発明の方法に従って、巻幅Aと巻厚B、見掛けの伸長率C(%)と該弾性糸の処理剤付着量D(重量%)とを計測、測定した場合、その数値が、『巻幅Aと巻厚Bとの比B/Aが0.4以上』、『見掛けの伸長率C(%)と該弾性糸の処理剤付着量D(重量%)とが、D-3≦C≦D+3、D≦2』の範囲にあるもの。」(特性(ロ)という。)が公然と実施されていた(公然実施発明)と認定したものである。 (2)原告の主張とその検討 本訴において、原告は、審決の上記(1)イの(@)の認定に対し、甲第4、第5号証の巻糸体の製造方法に関する証人の証言には信憑性がないと主張し、同(A)の認定に対し、甲第12号証の実験は忠実な再現実験ではないと主張し、その理由として甲第12号証の実験における吐出速度、紡糸原液の粘度、紙管の外径及び添加剤が甲第4、第5号証の巻糸体製造当時と同一であることは確認されていないことを挙げ、さらに、同(B)の認定について、甲第4、第5号証の巻糸体の再現品とされる甲第12号証の巻糸体が「巻幅Aと巻厚Bの比B/Aが0.4以上」、 「D-3≦C≦D+3、D≦2」を満たすという特性(ロ)を持つとしても、甲第4、第5号証の巻糸体について、特性(ロ)は、本件特許出願当時知られていなかった旨主張する。 ア そこで検討するに、審判におけるA証人の証言を録取した録音テープの反訳と認められる乙第1号証の1によれば、同証人は、昭和51年に被告の小坂井工場に配属されて以来、継続して小坂井工場に勤務し、一貫してポリウレタン弾性糸(スパンデックス)の製造に携わっており、昭和60年頃には係長としてスパンデックスの製造に従事していたことが認められる。そして、同証人は、昭和60年当時、小坂井工場において、スパンデックスは、甲第9号証の1及び2の製造標準に従って製造されていた旨証言しており、その証言を疑うに足りる理由はない。原告は、溶剤成分の相違、油剤を使用しない場合の製造標準に関する証言の矛盾、オイルレスの製品を製造する場合のローラー速度が不明であること等を挙げてA証言は信用し難い旨主張するが、A証言における証言の趣旨が不明瞭な点を取り上げて信用性を争っているものにすぎず、また、原告指摘の各点に関する被告の説明ないし反論(前記第4の1(2))はいずれも合理的なものとして首肯し得るのであって、昭和60年当時のスパンデックスの製造条件に関するA証言の信用性を争う原告の主張は、採用することができない。 イ また、甲第12号証の再現実験性について、原告は、甲第12号証の巻糸体は昭和60年当時の被告小坂井工場におけるスパンデックス巻糸体の製造条件を忠実に再現して作られたものではないと主張するが、甲第9号証の1、2(昭和59年10月23日及び12月22日に各作成の被告小坂井工場の紡糸製造標準)、甲第10号証の1、2(被告小坂井工場の「乾燥・仕上・巻取日誌」)、乙第1号証の1(A証言を録取した録音テープの反訳書。なお、同証人の反対尋問部分のみの録音テープ反訳書が甲第20号証として提出されている。)及び甲第17号証(田中紙管株式会社が「フジボウ小坂井鞄a」に宛てた昭和59年9月12日付け「スパンデックス糸用紙管製品仕様書」)によれば、甲12号証の再現実験は、小坂井工場で昭和60年当時から使用されている湿式法製造4号機を用いて甲第9号証の1、2の製造標準に記載された条件に従い、製造標準に記載のない事項については昭和60年当時のスパンデックス糸の製造に用いられていた条件と同等の条件で行われた再現実験であると認めることができる。原告は、甲第12号証の巻糸体が甲第4、第5号証の巻糸体を再現したものはないと争うが、被告の小坂井工場において実施されていた事項の全部が紡糸製造基準に記載されていなくても、 現場の常識に属する事項であれば、それが紡糸製造標準に記載されていなくてもあながち不自然ということはできず、それらの事項は、証人の証言によって十分補い得る事項であるということができる(前訴判決もこの趣旨を判示する。)。そして、昭和60年当時のスパンデックスの製造条件及び甲第12号証の再現実験で採用した製造条件についてのA証人の証言内容、及びA証言の趣旨に関する被告の説明は、いずれも首肯し得るものである。甲第12号証の巻糸体は甲第4、第5号証の巻糸体を再現したものではない旨の原告の主張は、採用することができない。 ウ 以上のとおりであるから、甲第12号証の巻糸体は、本件特許出願前の昭和60年の時点で、被告の小坂井工場において製造され、日新繊維株式会社に組紐用に出荷、納入されて、公然と存在し、知られたものとなっていた甲第4、第5号証の巻糸体を製造再現したものと認められる。 そして、甲第4、第5号証の巻糸体の再現品と認められる巻糸体(甲第12号証の巻糸体)について、B/A比及び見かけの伸張率を測定した結果を記載したものと認められる甲第12号証(平成8年5月17日作成、試験成績書作成責任者Aの記名押印のある「ポリウレタン弾性糸巻糸体試験成績書」)によれば、甲第12号証の巻糸体は、840デニール巻糸体において、巻幅Aと巻圧Bとの比B/Aが0.499、見掛けの伸張率が表層部で1.324%(単量を500gにした表層部で1.245%)、処理剤付着量Dが1.280%、1120デニール巻糸体において、B/Aが0.515、見掛けの伸張率が表層部で1.134%(単量を500gにした表層部で1.078%)、処理剤付着量Dが1.272%(上記数値はいずれもサンプル10体の平均値)と認められるのであり、結局、甲第4、第5号証に記載された巻糸体は、審決が認定したとおりの特性(ロ)(「B/A比が0.4以上」、「D-3≦C≦D+3」)を有していたものと認められる(なお、甲第12号証における処理剤付着量Dは本件訂正前の明細書の記載に従って算出されているが、本件訂正後の方法によっても上式の数値範囲内に包含されることに変わりはない。)。 以上認定したところによれば、昭和60年に被告の小坂井工場から組紐用に出荷、納品され、公然と存在するものとなっていた甲第4、第5号証の巻糸体は、その特性(ロ)、すなわちB/A比が0.4以上、処理剤付着量と見かけの伸張率CとDの関係が「D-3≦C≦D+3」を満たすという点を含めて、本件特許出願前に公知となっていたというべきである。 エ 原告は、甲第4、第5号証の巻糸体が特性(ロ)を有することは、無効審判の段階に至って甲第12号証の試験成績書が提出されることにより初めて明らかになったことであるから、本件特許出願前に公知であったとはいえないと主張する。 しかしながら、特性(ロ)のうち、巻幅と巻厚との比B/Aは、甲第4、第5号証の巻糸体の現物を見れば当業者が一見して看取し得る事項であり、その油剤付着量(オイルレスであること)も、知られていた。 また、見掛けの伸張率Cは、その測定方法について記載した訂正明細書の記載(甲第2号証の4、5頁)によれば、要するに、ポリウレタン弾性糸が巻糸体とされた状態でどの程度引き伸ばされているかを示す指標であると認められるところ、 巻糸体における弾性糸の引き延ばしの程度は、巻糸体の現物に接した当業者であれば、極めて容易に(経験的ないし直感的に)把握し得る事項であり、少なくとも旧知の残留張力の測定方法(これを示すものとして、例えば乙第11号証の特開昭51-127229号公報)に従って誰でも容易に測定することのできる残留張力の値から難なく推算し得るものというべきである(残留張力と見掛けの伸張率Cとは、共に、弾性糸巻糸体における弾性糸の引き伸ばしの程度を示すものであるが、 残留張力の算出には綾角度による糸の蛇行が考慮されているのに対し、見掛けの伸張率Cは、綾角度の大小による伸びの程度の変動という要素を計算に入れずに算出されるものであり、その意味で、見掛けの伸張率Cの方がよりおおまかな計算による数値ということができる。綾角による蛇行が計算に入っていない結果、見かけの伸張率Cの値は、残留張力の値よりも小さくなる。)。 本件においては、客観的に特性(ロ)を持った甲第4、第5号証の巻糸体が公然と存在しており、そのB/A比及び弾性糸の引き延ばしの程度と油剤付着量との関係も巻糸体の現物に接する当業者の知り得るところとなっていたのであるから、特性(ロ)を有する巻糸体は、不特定多数の者が知り又は知り得る状態で公然と実施され、公知となっていたというを妨げない。 したがって、特性(ロ)を含めて公然実施発明を認定した審決に誤りがあるということはできない。 (3)よって、原告主張の取消事由1は理由がない。 2 取消事由2(相違点の看過)について 原告は、甲第4、第5号証の巻糸体が特性(ロ)を有することは公知でなかったから、特性(ロ)を訂正発明と公然実施発明との相違点と認定しなかった審決には相違点を看過した違法があると主張するが、その主張が失当であることは前記1に示したところから明らかである。 したがって、原告主張の取消事由2も理由がない。 3 取消事由3(相違点の判断の誤り)について (1)訂正発明 ア 甲第3号証によれば、訂正明細書に以下の記載が認められる。 @「〔発明が解決しようとする課題〕しかしながら、従来の技術においては、 糸巻体における糸の巻量が少なく、従って必要な製品を製造する工程において頻繁に巻糸体を交換しなければならず、そのため、生産性が悪く、また巻糸体を交換するたびに製品の品質に斑が発生する等から生産コストの増大につながっていた。 この原因の一つとして考えられることは、弾性糸そのものが伸縮性を有しており、巻糸体に巻上げた場合の張力管理が難しく、張力が高めになると内層が締めつけられ、巻糸体からの解舒性が悪化し、糸同士の粘着による糸切れが発生し易く、張力が低めになると糸同士の滑りにより糸層崩れが発生する等の欠点があり、 したがって巻糸体の巻糸量を増加させること、つまりラージパッケージ化が困難であった。近年、弾性糸を使用した製品の生産速度も大巾に向上してきており、巻糸体のラージパッケージ化の必要性は富に高まっている。 一方、かかる欠点を解決するため弾性糸を高めの張力に設定して巻糸体を巻上げる際に、粘着性を低くするために油剤等の処理剤を多量に弾性糸に付着させることも行われているが、この方法では・・・問題もみられた。・・・さらに、従来の技術にあっては、弾性糸の巻糸体はその巻糸量が小さくラージパッケージ化が出来なかったため、生産工程中で頻繁に巻糸体を交換する必要があった。上記の問題は、紙おむつ(使い捨ておむつ)の製造において顕著である」(同2頁) A「多巻量のチーズの検討を行ったが、巻量を1.5kg以上とし、巻幅と巻厚の比率を0.4以上とした場合には、特に内層へ向かうに従い、弾性糸のチーズからの解舒性が悪化し、糸同士の粘着による糸切れが発生し易くなるという問題点を有することが判明した。 また、この場合、解舒性を改善する目的で弾性糸をチーズに巻上げる際の伸長率を低下させ、チーズをソフトなものにした場合には、前記した駆動ローラ上にチーズを載せて、高速で解舒、糸出しを行なうに際し、チーズが変形して崩れ、 糸がもつれることにより、前記したと同様、糸切れの原因となることが判明した。 かかる欠点は、他の製品の製造工程において、高速化を計る場合は共通した問題となっていた。 本発明の目的は上述した従来技術の欠点を改良し、弾性糸の巻糸体からの解舒性が良好で巻糸体の形態保持性が優れている多巻量の弾性糸巻糸体であって、 しかも生産工程中における取扱い性が良く、高速生産を行っても張力変動或は糸切れの発生がなく製品の品質を低下させないで効率よく紙おむつを製造することの出来る紙おむつ用弾性糸巻糸体を提供するものである。」(同3頁) B「〔課題を解決するための手段〕本発明における弾性糸の巻糸体は、上記した目的を達成するため次のように構成されている。即ち・・・(特許請求の範囲の記載と実質同一内容の記載)・・・。」(同3頁) C「〔作用〕本発明に係る紙おむつ用弾性糸巻糸体は弾性糸の巻糸体からの解舒性が良好で巻糸体の形態保持性が優れている多巻量の弾性糸巻糸体であって、しかも生産工程中における取扱い性が良く、・・・高速生産を行っても張力変動あるいは糸切れの発生がなく・・・高速化に対応しうるのみならず、生産工程中のトラブルが少なく・・・紙おむつ製造工程において、多巻量であるため、チーズの取替作業が頻繁になることを防止し、かつ弾性糸表面の付着油分Dと、チーズ内の弾性糸の見かけの伸張率Cとの関係が定められた範囲に制限されているため、糸立ちが良好であり、かつチーズの形状保持性が良いので、糸切れ等のトラブルが少なく、 また、油分量が2%以下と少ないので、弾性糸と紙おむつ用シート材料との接着性が良く、剥離等の問題を生じ難い。」(同8頁)。 D 「〔効果〕 (作用欄の記載とほぼ同文記載がある。)」 E 実施例1ないし7として、繊度(420デニール、560デニール、840デニール、1120デニール)、巻量(1.5kg、3.0kg、6kg)及び油剤付着量(油剤なし、1%、2%)が異なる7種類のチーズ(巻糸体)において、それぞれ「紡糸、巻取条件を調節して」チーズ内の見掛けの伸張率Cを7段階に変化させ、糸切れ数をテストしたことが記載されている。 イ 上記@ないしEの記載によると、弾性糸巻糸体において糸の巻量が少ないと生産性が悪いため、これを解決するためにラージパッケージ化(巻量を多くすること)の必要性が高まっていたが、糸の巻量を多くすると糸切れが発生するなどの不具合が生じていたこと、訂正発明は、これらの不具合を生じることなく糸の巻量を多くした紙おむつ用弾性糸巻糸体を提供することを目的とするものであって、 この目的を達成するために、特許請求の範囲に記載したとおり、弾性糸の繊度が280〜1120デニールのものにおいて、弾性糸巻糸体の巻幅と巻厚の比B/Aを0、4以上とし、かつ、見掛けの伸張率Cと処理剤付着量Dの関係を「3-D≦C≦3+D、D≦2」と特定したものであること、そして、弾性糸表面の付着油分Dと見掛けの伸張率Cとの関係を上記の特定した範囲に制御することにより、弾性糸巻糸体における形状保持性、良好な解舒性及び取扱いの容易性という要請を両立させつつ、多巻量化を実現するというものであると認められる。 ウ なお、弾性糸巻糸体における弾性糸の張力と解舒性、形態安定性との関係、及び処理剤付着量と解舒性との関係については、訂正明細書中に従来技術に関して述べられているとおりであり(前記ア@)、これによれば、処理剤付着量と巻糸体内における弾性糸の張力(引き伸ばしの程度)との間に、処理剤を多くすると解舒性が良くなる、張力を小さくすると(ソフト巻にすると)形態安定性が悪くなる処理剤を少なくすると解舒性が悪くなるので巻糸の張力を小さくする(ソフト巻とする)必要がある、等の相関関係があることは、当業者の技術常識に属する事項であったと認められる。 (2)以上(1)の認定に立って、訂正発明の想到容易性について検討する。 ア 相違点1(糸巻量を1.5kg以上とした点)について (ア) 審決が認定した公然実施発明と訂正発明との間の相違点1は、「糸巻量が訂正発明では1.5kg以上であるのに対し、公然実施発明では1.0kgであること」というものである(この相違点1の認定自体に争いはない。)。 ところで、弾性糸巻糸体においてラージパッケージ化(糸巻き量を大きくすること)の必要性が高まっていたことは、訂正明細書にも記載されているとおりである(前記(1)ア@)。 また、甲第14号証(「フィラメント加工技術マニュアル 下巻」日本繊維機械学会昭和51年11月15日発行、144、145頁)には、仮撚糸チーズの寸法の変遷と題する項に「仮撚糸の開発初期には、処理速度が遅かったために、巻取のパッケージは数百gですんでいた。しかし、仮撚機の高速化につれてラージパッケージ化が進み、最近では7kg巻ができるものも出現している。」との記述がある。この記述は仮撚糸に関するものではあるが、弾性糸巻糸体のラージパッケージ化は、業界の趨勢であったことを知ることができる。 (イ) そうすると、前示のとおり、客観的に、弾性糸巻糸体の巻幅と巻厚の比B/Aが0、4以上で見掛けの伸張率Cと処理剤付着量Dの関係が「3-D≦C≦3+D、D≦2」の範囲にある巻糸体が公然と存在し、知られたものとなっており、格別の支障なく実用に供せられていた以上、その巻糸量を増やし、1.5kg以上の巻糸体を得ようとすることは、当業者にとって、極めて自然な発想というべきであり、その点に想到すること自体に何ら困難性は認められない。 そして、上記のようなB/A比が0.4以上、処理剤付着量Cと見掛けの伸縮率Cとの関係が「3-D≦C≦3+D、D≦2」の範囲にあるという特性を有する公知の糸巻量1.0kgの巻糸体を1.5kg以上に巻き増すことに技術的な困難があることを裏付ける事情も認めることができない。 (ウ) この点につき、原告は、解舒性及び形態保持性が良好で実用に適した1.5kg以上の巻糸体を得るためには格別の困難があり、工夫を要すると主張する。 しかしながら、先に認定したとおり(前記(1)イ)、訂正発明は、弾性糸巻糸体における巻幅Aと巻厚Bとの比B/A及び見掛けの伸張率Cと処理剤付着量Dとの関係を特定することによって、1.5kg以上の多巻量化を可能とし、形態保持性等に問題が生じることのない実用に適した巻糸体を得るものと認められる。そして、訂正明細書には、所与の処理剤付着量(0%、1%、2%)において式「3-D≦C≦3+D、D≦2」を充足するような見掛けの伸張率Cについても、「このとき、紡糸速度、巻取速度、チーズ条の綾角を調節することにより、チーズ内の見掛けの伸張率を-7から+7まで変化させた7種類のチーズを得た。」、「この時、紡糸、巻取条件を調節してチーズ内の見掛けの伸張率を-6から+8まで変化させて7種類のチーズを得た。」(甲第3号証10欄)等と、紡糸速度、巻取速度、チーズ上の綾角を適宜調節することによって、所望の見掛けの伸張率のものを得られることを前提とした記載がある(訂正明細書の実施例1、2についての説明。同旨の説明が実施例2ないし7についてもされている。)。 これらの訂正明細書に記載された事項は、それが真実である限り、客観的な技術的事項として、訂正発明のものと同一の特性を有する甲第4、第5号証の巻糸体についても、当然当てはまるはずのものであって、この訂正発明の特定する「B/A比0.4以上」、「3-D≦C≦3+D、D≦2」という条件を満たす巻糸体の糸巻量を、1.0kgから1.5kg以上に増やした場合でも、その際の紡糸条件及び巻取条件を適宜調節することによって、当然に、解舒性及び形態保持性等の良好な実用に適した巻糸体を得ることができるといわねばならない。 したがって、公然実施発明の巻糸体を巻き増して、実用に適した特性(解舒性、 形態保持性、糸切れの少ない取扱い容易性等)を持つ1.5kg以上の巻糸体を得ることに、原告の主張するような格別の技術的困難があるとは認め難い。 (エ) 原告は、また、巻幅Aと巻厚Bとの比B/A比及び見掛けの伸張率Cと処理剤付着量Dとの関係を特定すれば実用に適した多巻量の巻糸体が得られるという事項は、訂正発明が初めて明らかにした技術的事項であるうえ、本件特許出願前には甲第4、5号証の巻糸体の見掛けの伸張率Cが知られていなかったのであるから、訂正発明に想到することは容易でない旨主張する。 しかしながら、巻幅Aと巻厚Bとの比B/A及び見掛けの伸張率Cと処理剤付着量の巻糸体Dとの関係が訂正発明において特定された条件を満たすものが本件特許出願当時、公然と存在していたことは先に説示したとおりであり、しかも、巻糸体における弾性糸の引き伸ばしの程度と処理剤付着量とが弾性糸巻糸体の解舒性及び形態安定性を左右する要素であることは当業者の技術常識に属する事項であったのであるから、これら事情の下で弾性糸の引き伸ばしの程度と処理剤付着量を適宜調整して、巻幅Aと巻厚Bとの比B/A及び見掛けの伸張率Cと処理剤付着量の巻糸体Dとの関係が訂正発明において特定された範囲内のものとすることは、当業者が適宜なし得たことというべきである。 (オ) 以上のとおりであるから、B/A比0.4以上、処理剤付着量Cと見掛けの伸縮率Cとの関係が「3-D≦C≦3+D、D≦2」の範囲にある公知の巻糸体の糸巻量を1.5kg以上とすることは当業者にとって容易に想到し得ることであるとした審決の認定判断に誤りは認められない。 イ 相違点2(紙おむつ用か組紐か)について スパンデックスを含む弾性糸を紙おむつ用に供することは、甲第15号証(特公昭61-56322号公報)その他の証拠を挙げるまでもなく、周知の事項であったと認められるから、相違点2に係る構成は、当業者が必要に応じて適宜想到し得るこというべきである。この点に関する原告の主張は、採用することができない。 (3)審決には原告主張の相違点の看過はなく、以上説示したとおり、相違点の判断の誤りも認められないから、訂正発明は、審決のいう公然実施発明に基づいて、当業者が容易に想到し得たものというべきであり、進歩性判断に関する審決の認定、判断に誤りはない。 4 結論 以上のとおり、本件発明1ないし4に係る特許についての無効理由を判断する前提問題として訂正発明の独立特許要件を検討し、訂正発明の進歩性を否定した審決に対し、その訂正発明の進歩性についての認定判断の誤り(取消事由1ないし3)をいう原告の主張はいずれも理由がない。そして、本件全記録を精査しても、他に審決を取り消すべき瑕疵は見出すことができない。よって、原告の請求を棄却することとし、主文のとおり判決する。 |
裁判長裁判官 | 塩月秀平 |
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裁判官 | 古城春実 |
裁判官 | 田中昌利 |