運営:アスタミューゼ株式会社
  • ポートフォリオ機能


追加

関連ワード 技術的思想 /  方法の発明 /  製造方法 /  容易に発明 /  相違点の認定 /  周知技術 /  課題の共通性 /  対象製品 /  数値限定 /  技術的意義 /  置き換え /  置換 /  容易に想到(容易想到性) /  実施 /  加工 /  構成要件 /  設定登録 /  訂正審判 /  請求の範囲 /  減縮 /  訂正明細書 / 
元本PDF 裁判所収録の全文PDFを見る pdf
事件 平成 14年 (行ケ) 208号 審決取消請求事件
原告 日本碍子株式会社
訴訟代理人弁理士 三好秀和、岩崎幸邦、鈴木壯兵衞、伊藤由布子
被告 特許庁長官太田信一郎
指定代理人 島愼二、蓑輪安夫、鈴木法明、高木進、林栄二
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 2003/01/21
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
主文 原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
原告の求めた裁判
「特許庁が訂正2001-39183号事件について平成14年4月1日にした審決を取り消す。」との判決。
事案の概要
1 特許庁における手続の経緯 原告は、名称を「電極埋設品及びその製造方法」とする特許第2967024号発明(平成6年3月29日特許出願、平成11年8月13日設定登録。本件発明)の特許権者であるが、特許異議の申立てがあり(異議2000-71691号)、
訂正請求をしたが、平成13年6月28日「訂正を認める。特許第2967024号の請求項1ないし4に係る特許を取り消す。」との決定があり、その取消訴訟が東京高裁に係属中である(平成13年(行ケ)第359号)。原告は、平成13年10月17日、本件特許につき更に訂正審判請求をしたが(訂正2001-39183号)、平成14年4月1日、「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決があり、その謄本は同月11日原告に送達された。
2 本件発明の要旨 (1) 訂正前発明【請求項1】緻密質セラミックスからなる基体と、この基体中に埋設されている電極とを備えている電極埋設品であって、前記電極が、面状の金属バルク体からなる多数の孔が設けられている板状体からなり、前記電極を包囲する前記基体が、接合面のない一体焼結品であることを特徴とする、電極埋設品。
【請求項2】前記電極が金網であることを特徴とする、請求項1記載の電極埋設品。
【請求項3】前記電極がパンチングメタルであることを特徴とする、請求項1記載の電極埋設品。
【請求項4】前記電極埋設品が、電気集塵機、電磁シールド、高周波電極及び静電チャックからなる群より選ばれていることを特徴とする、請求項1-3のいずれか一つの請求項に記載の電極埋設品。
【請求項5】前記電極埋設品が、ハロゲン系腐食性ガスを使用する半導体製造装置内に設置するための電極埋設品であることを特徴とする、請求項1-4のいずれか一つの請求項に記載の電極埋設品。
【請求項6】緻密質セラミックスからなる基体と、この基体中に埋設されている電極とを備えている電極埋設品を製造する方法であって、前記電極が、面状の金属バルク体からなる多数の孔が設けられている板状体からなり、セラミックス成形体とこのセラミックス成形体中に埋設されている前記電極とを、前記電極の厚さ方向に向かって圧力を加えつつホットプレス焼結することにより、前記基体を接合面のない一体焼結品とし、前記基体内に前記電極を埋設し、前記孔内にセラミックスを充填させることを特徴とする、電極埋設品の製造方法
(2) 訂正後発明(本件訂正審判請求に係るもの。請求項2〜5を削除し、請求項6を請求項2に繰上げ)【請求項1】緻密質セラミックスからなる基体と、この基体に埋設されている電極とを備えており、高周波電極及び静電チャックからなる群より選ばれた電極埋設品であって、前記電極が、線径φ0.03mm〜線径φ0.5mmの面状の金網からなり、前記電極を包囲する前記基体が、接合面のない一体焼結品であることを特徴とする、電極埋設品。
【請求項2】緻密質セラミックスからなる基体と、この基体中に埋設されている電極とを備えており、高周波電極及び静電チャックからなる群より選ばれた電極埋設品を製造する方法であって、前記電極が、線径φ0.03mm〜線径φ0.5mmの面状の金網からなり、セラミックス成形体とこのセラミックス成形体中に埋設されている前記電極とを、前記電極の厚さ方向に向かって圧力を加えつつホットプレス焼結することにより、前記基体を接合面のない一体焼結品とし、前記基体内に前記電極を埋設し、孔内にセラミックスを充填させることを特徴とする、電極埋設品の製造方法
本件図面【図1】 以下において「訂正発明1」「訂正発明2」とあるのは、訂正後の請求項1、2の発明を指す。
3 審決の理由 別紙審決の理由のとおりである。すなわち、審決は、訂正発明は、特許出願の出願前に頒布された特開平4-304941号公報(平成4年10月28日発行、引用例1。甲第4号証)及び特開平5-275434号公報(平成5年10月22日発行。引用例3。乙第6号証)に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではない、と判断した。
原告主張の審決取消事由
1 一致点、相違点の認定の誤り 審決は「接合面のない一体焼結品である電極埋設品」が引用例1に記載されているとし、これを訂正発明と引用例1記載の発明との一致点としているが、訂正発明の技術的意義を持つ「接合面のない一体焼結品」は、引用例1には記載されていない。したがって、審決の一致点及び相違点の認定には誤りがあり、この誤りは審決の結論に影響するものであるから、審決は取り消されるべきものである。
(1) 訂正発明は、(イ)緻密性セラミックスからなる基体と、(ロ)この基体中に埋設されている電極が、線径φ0.03mm〜線径φ0.5mmの面状の金網からなり、(ハ)この電極を包囲する基体が接合面のない一体焼結品であることを特徴とする電極埋設品に係る発明である。つまり、前記(イ)、(ロ)及び(ハ)の各構成要件がホットプレス焼結によって接合面のない一体焼結品とする技術的思想の下に不可分有機的に結合した電極埋設品及びその製造方法の発明である。
(2) 特開昭63-218585号公報(乙第1号証)に記載されている窒化アルミニウム焼結体とその製造方法は、対象製品がIC基板、パッケージ、ヒートシンク等の部品であり、訂正発明に係る「静電チャック」や「高周波電極」等の大型の電極埋設品への応用が意図されていないことは明らかである。
訂正発明の構成要件である(イ)「緻密質セラミックス」の「緻密質」の意味するところは、常圧焼結によって得られるレベルの緻密質を超える緻密性を意味するものである。
特開昭61-215269号公報(乙第2号証)に記載されているセラミックスの用途は、舗装タイル、歩道、建築等構造物の外壁材料であり、訂正発明に係る静電チャック等の電極埋設品とは、製品分野が異なるだけでなく、製品に求められる品質が異質なものである。したがって、乙第2号証に記載されている常圧焼結法で、金網をセラミックス中に埋設した建築資材が作製可能であったとしても、遥かに製造が困難である、高い絶縁耐圧特性と面内での均一な基板吸着力が要求される訂正発明1に係る静電チャック等の電極埋設品を、常圧焼結法を用いて同様に作製可能であるとの根拠とすることはできない。
(3) 引用例1には、セラミックス基体1とセラミックス誘電体層6が一体焼結されることについての記載はあるものの、その接合面についての説明はなく、さらに、引用例1全体を通して、「接合面の有無」についての説明はない。
引用例1中の【図1】、【図3】、【図4】及び【図6】に示された最終製品である静電チャックの断面図には、いずれもセラミックス基体1とセラミックス誘電体層6とを貼り合わせた接合面に相当する位置に実線がはっきりと描かれている。
この実線は、引用例1に記載された静電チャックに接合面が存在することを示すものにほかならない。
(4) 訂正発明1の電極埋設品においては、一体化に伴う焼結過程でセラミックス基体同士の接合界面が最終製品に残っていない状態とするために、焼結に際して、
電極の厚さ方向に向かって圧力を加える「ホットプレス焼結法」を採用することで、「接合面のない一体焼結品」を得ているのであって、これが静電チャックの製造方法として一般に使用されている「常圧焼結法」を用いるとすれば、焼結後にも予備成形体時に残った接合面はほぼそのまま接合面として残り、接合面近辺で多少の原子の拡散が生じたとしても、接合面のない一体焼結品を作製することはできない。
2 相違点2についての判断の誤り 審決は、引用例1の膜状電極に代え、金網を用いることは容易であり、金網の線径をどの程度のものとするかは設計事項であると認定している。しかし、訂正発明と引用例1に記載のものとは、その特徴とする基本的技術原理において共通性がない。訂正発明において、電極が金網で形成されていること、及び金網の線径に下限、上限を設けていることに技術的意義があり、この技術的意義を具体的に検討することなく、上記のとおりの審決の認定は誤りである。
(1) 引用例1の「膜状電極」の用語は普通の意味で使用されていると解するのが妥当であり、「膜」とは、「物の表面を覆う薄い物。薄く、広がりを持つもの。薄皮。」(広辞苑)であるから、「膜状電極」は、物の表面を覆う薄い形状の電極、
すなわち電極自体で自立した形状を維持できない薄い電極をいうものと認定できる。したがって、引用例1に記載された「膜状電極」は剛性を有するものではあり得ないため、「膜状電極」に剛性体である薄板状の金属材料は含まれない。
「膜状電極」の解釈のために審決で引用されている特開平4-109562号公報(乙第12号証)は、「非水電解質二次電池」についての文献であり、静電チャックとは関連性がないばかりか、セラミックス分野にも関連性がない技術である。
さらに、実願平2-76879号(実開平4-34755号)のマイクロフィルム、特開昭63-119174号公報、実願昭60-101392号(実開昭62-10381号)のマイクロフィルム(乙第13号証〜乙第15号証)も、それぞれ圧電素子、バッテリー(鉛蓄電池)、シート状ヒータに係る技術であり、やはり静電チャックあるいは高周波電極といった埋設電極とは異なる分野に係る文献である。しかも、これらの文献では、「膜状電極」の語を各明細書において特定の意味で使用しているものであり、このような証拠を「膜状電極」の用語の一般的解釈の基礎とすることはできない。
(2) 特開昭63-119186号公報(乙第3号証)、特開昭61-40801号公報(乙第4号証)に記載されているのは、静電チャックや高周波電極とは関係のない極めて特殊な用途で、金網を内部電極として用いる例であり、これらの記載に基づき、「セラミックスの中に金網を入れて内部電極とする」ことが、静電チャックや高周波電極の技術分野における当業者にも一般的に知られている周知技術に相当すると認めることはできない。
金網の線径の数値限定は、ホットプレス法を使用するために最適な線径であるだけでなく、高周波電極及び静電チャックとして求められる作動時の応答速度及び、
基板吸引力の面内均一性を提供するという技術的意義を有するものである。
(3) 訂正発明1は、常圧焼結法を用いたのでは、密着不良等が生じ、しかも誘電体層の十分な緻密性を確保することができず、絶縁破壊を防止できない点や、従来の膜状電極では抵抗が大きいという点を改善することを解決課題とし、さらに、具体的に、「緻密質のセラミックス基体」を形成するために「ホットプレス」焼結法を用いて静電チャックを作製する際に生じる技術的課題を認識することによって、
得られたものである。
上記課題の認識なくしては、「各構成要件(イ)、(ロ)及び(ハ)が、ホットプレスによって接合面のない一体焼結品とする技術的思想の下に不可分有機的に結合した電極埋設品」の発明は導かれない。
引用例1に記載された発明には、上記訂正発明1の技術的思想を導く課題は教示も示唆もされていない。したがって、引用例1に周知技術を組み合わせても、当業者が訂正発明1を容易に推考することはできない。
3 相違点3の判断の誤り(訂正発明2) 引用例1に記載されている「膜状電極」は、剛性を有する金属材料ではあり得ない。したがって、剛性を有さない「膜状電極」しか開示されていない引用例1の電極埋設品に引用例3の「ホットプレス法」を使用すれば、誘電体層の厚みが不均一になり、静電チャックとしての十分な機能を発揮し得る電極埋設品を提供することはできない。したがって、剛性を有さない「膜状電極」を使用する引用例1の静電チャックの製造方法として、引用例3の「ホットプレス法」を組み合わせることは不適当であるから、引用例1及び引用例3、さらに周知技術を考慮しても、当業者が、引用例1の製造方法として引用例3の製造方法を使用することを容易に導くことはできない。
引用例1記載の静電チャックと引用例3に記載のセラミックスヒータとは、製品分野が異なるため、求められる機能が異なり、電極形状や成形精度も大きく異なるため、両者を関連づけることは、当業者には容易ではない。
引用例1に記載の発明の課題は、静電チャックのウエハ解除応答性の改善であるのに対し、引用例3に記載の発明の課題は、発熱体を螺旋状に加工した後、アニールし、予備成形体へと運ぶ際に生じる螺旋状抵抗発熱体の型崩れを防止することであり、両者の発明の課題には何の共通性もない。このように、製品分野のみならず、課題の共通性もない引用例1の静電チャックの製造方法と引用例3のセラミックスヒータの製造方法を組み合わせることは当業者には容易ではないため、両者の組合せに基づき訂正発明2を容易に推考することはできない。
訂正発明2も、訂正発明1の課題と同じ課題を認識することによって、得られたものであり、この課題の認識なくしては、「各構成要件(イ)、(ロ)及び(ハ)が、
ホットプレスによって接合面のない一体焼結品とする技術的思想の下に不可分有機的に結合した電極埋設品の製造方法」の発明を導くことはできない。
審決取消事由に対する被告の反論
1 一致点、相違点の認定の誤りに対し (1) ホットプレス焼結することは訂正発明1の構成要件ではない。
例えば、特開昭63-218585号公報(乙第1号証)2頁右上欄14〜18行には、緻密質セラミックスが常圧焼結で得られることが記載され、特開昭61-215269号公報(乙第2号証)4頁左上欄9〜19行には、金網をセラミックスに埋設して常圧焼結させることが記載されている。そして、焼結体に埋設して用いる電極として金網を用いることは、審決で引用した特開昭63-119186号公報(乙第3号証)2頁左下欄3〜16行、特開昭61-40801号公報(乙第4号証)2頁左下欄20行〜右下欄6行、3頁右上欄15行〜左下欄16行、4頁左下欄17行〜右下欄3行にみられるように周知技術であり、さらに、材料が同じセラミックス材料であれば、それらを重合し加圧成形して一体焼結すれば、接合面近辺でセラミックス材料を構成する粉末の原子に拡散が生じてこれらの粉末が一体化し、特にホットプレス法を用いなくても接合面のない一体焼結品を形成し得るから、上記各構成要件(イ)、(ロ)及び(ハ)を備えた電極埋設品は常圧焼結でも形成し得るものであり、特にホットプレス焼結によらなければ得られないということはない。
原告は、上記(ロ)の構成を採ることによって、ホットプレス法の採用を可能とすると主張しているが、例えばスクリーン印刷による、それほど大きな剛性を有しない電極を使用した場合でも、ホットプレス法により電極埋設品を製造することは可能(例えば、特開昭62-157752号公報(乙第5号証)2頁右上欄6〜19行)であって、特に上記(ロ)の構成を採用しなければホットプレス法が採用できないというわけではない。
(2) 審決が、引用例1に接合面のない一体焼結品が記載されていると認定した根拠は、引用例1のものが、セラミックス基体1の一方の主面1b上に、同質の材料から成るセラミックス誘電体層6を、膜状電極5を覆うように形成して、一体焼結によって一体化することによって、基体が接合面のない一体焼結品となるからである。
訂正発明1は「ホットプレス焼結」を前提とするものではないから、請求項1の「緻密質セラミックス」は、あくまでも「常圧焼結法」でも作製できる「緻密質セラミックス」(訂正明細書(甲第2号証)の【0043】によれば、「常圧焼結法」でも嵩密度が99.0%の緻密質セラミックスが得られるのである。)を指すものである。
引用例3の【0013】及び【0014】や、新たに引用する特開平5-267191号公報(乙第16号証)2頁右欄4〜6行及び3頁左欄8〜9行のセラミックスヒーターのように、剛性のある金属を埋設した比較的大面積の緻密質セラミックスであっても、常圧焼結法で作製が可能である。
2 相違点2の判断の誤りに対し 原告は、訂正発明で、電極が金網で形成されていることと、金網の線径に下限、
上限を設けていることには技術的意義があるから、審決の認定判断には誤りがある、と主張するが、当業者が引用例1から膜状電極として、箔あるいは薄板状の金属材料からなる穴明き形状の電極を認識でき、しかも、焼結体中に埋設する電極として金網を用いることが周知技術であって、その効果も当然あらかじめ予想される範囲内のものである以上、引用例1に記載された発明において、電極を金網で形成することは当業者が容易になし得たものというべきである。
(1) 「膜状電極」との用語が、箔あるいは薄板等の金属材料から形成されるものを包含するものとして広く認識されていたことを示す例として、特開平4-109562号公報、実願平2-76879号(実開平4-34755号)のマイクロフィルム、特開昭63-119174号公報、実願昭60-101392号(実開昭62-10381号)のマイクロフィルム(乙第12号証〜乙第15号証)が示される。原告は、これらは技術分野が異なる分野に係る文献で、「膜状電極」との語を各明細書において特定の意味で使用しているものであるから、「膜状電極」との用語の解釈の基礎とすることができない、と主張するが、「膜状電極」との用語が、これらのどの明細書においても「箔あるいは薄板状の金属材料から形成されるものを包含するもの」として使用されていることは明らかであるから、原告の主張は失当である。
(2) 訂正発明の適用し得る技術分野は静電チャックや高周波電極に限られるものでなく、電気集塵機や電磁シールド等、セラミックスの中に電極を埋設した電極埋設品を広く含むものであることは、本件特許公報の【0012】の記載からも明らかである(訂正後の発明は、その中から、特に高周波電極及び静電チャックからなる群を選び出したものである。)。そして、特開昭63-218585号公報(乙第1号証)、特開昭61-215269号公報(乙第2号証)、特開昭63-119186号公報(乙第3号証)及び特開昭61-40801号公報(乙第4号証)に記載の発明は、これに非常に近似する技術分野に属するから、これらの技術は、
このような電極埋設品の属する技術分野の当業者においても、周知の技術ということができる。
(3) 訂正発明1が、もし「ホットプレス焼結」を用いることを必須とするのであれば、請求項1にそれに対応する構成が記載され、明細書にもその点が明記されなければならないが、請求項1には、「ホットプレス焼結」についての記載はなく、
訂正明細書にも、請求項1のものが「ホットプレス焼結」のみによって製造されるということの記載はない。
しかも、常圧焼結法を用いた場合に密着不良が必ず生じるわけではなく、緻密質のセラミックス基体が常圧焼結法でも製造できることは前述したとおりであるから、原告が請求項1の解決課題であるとするものは、常圧焼結法によっても十分解決し得るものである(例えば、特開平4-2668号公報(乙第17号証)の特許請求の範囲及び4頁左上欄17行〜右上欄9行には、金属材料に有機材料又はカーボン粉末を被覆して焼成し、金属材料とセラミックス焼結体を密着一体化する技術が記載されている。
3 相違点3の判断の誤り(訂正発明2)に対し 引用例1記載の静電チャックと引用例3記載のセラミックスヒータは、セラミックス基体に金属製導電部材を埋設するという点で、共通する技術分野に属するものであり、該金属製導電部材と半導体載置面との距離を一定にしなければならないことも、程度の差こそあれ同じである。そして、引用例3の抵抗発熱体の製造方法によれば、「成形、焼結段階において、抵抗発熱体の変形や位置ズレがほとんどなくなり、セラミックスヒーターの均熱性が向上し、製品の品質が安定する。」(引用例3の4頁右欄13〜16行)という、静電チャックの電極が必要とするのと同様の効果を奏するのであるから、引用例1のものに、引用例3の技術を適用することに困難性はない。
引用例1の静電チャック(電極埋設品)を製造しようとする場合、製造時に亀裂や隙間がなるべく生じないような製造方法を選定することは、引用例1記載の発明に内在する技術課題である。そして、引用例3記載の発明は、引用例1と同じようにセラミックス基体に金属製導電部材を埋設する技術であって、しかも「成形、焼結段階において、抵抗発熱体の変形や位置ズレがほとんどなくなり、セラミックスヒーターの均熱性が向上し、製品の品質が安定する」という効果を奏するもの、すなわち、成形、焼結段階において、抵抗発熱体の変形や位置ズレを生ぜず、製品の品質を安定化させる課題を解決したものであるから、引用例1記載の発明と引用例3記載の発明とは課題の共通性がないとする原告の主張は失当である。
当裁判所の判断
1 一致点、相違点の認定の誤りについて 原告は、訂正発明には、ホットプレス焼結により接合面のない一体焼結品を得ることにその基本とする技術的思想があり、訂正発明1はこれを物としての電極埋設品に規定したものであるのに対し、引用例1には「接合面のない一体焼結品」は記載されていないから、訂正発明1と引用例1に記載された発明との一致点、相違点の認定に誤りがあると主張するが、以下に説示するとおり、原告のこの主張は理由がない。
(1) ホットプレス焼結について 請求項1には、ホットプレス焼結により一体焼結された電極埋設品であることの記載はない。そこで、訂正発明1がホットプレス焼結によるとの構成を実質的に有しているものか否かをみてみる。
特開昭63-218585号公報(乙第1号証)には、次の記載がある。「緻密質で、良好な熱伝導性の窒化アルミニウム焼結体を得るために窒化アルミニウム粉末に種々の焼結助剤を添加し、ホットプレスあるいは常圧焼結することが試みられており、かなり良質の焼結体が得られている。」(2頁右上欄14行〜18行)。
引用例3(乙第6号証)には、次の記載がある。「【請求項1】緻密質セラミックスからなる基体と、この基体の内部に一体に埋設された抵抗発熱体とを備えた半導体加熱用セラミックスヒーターにおいて、前記抵抗発熱体が、高融点金属からなる金属箔によって形成されていることを特徴とする、半導体加熱用セラミックスヒーター」(2頁左欄2行〜7行)。「【0013】次いで、円盤状成形体9を焼結してセラミックスを緻密化させ、円盤状基体とする。この円盤状基体の背面側を研削加工し、図3に示すようなセラミックスヒーターを得る。図3においては、円盤状基体9Aの内部に抵抗発熱体2が埋設され、一対の端子3が、背面9a側に露出している。円盤状成形体9は、常圧焼結するか、ホットプレス法で焼結するか、常圧で予備焼結させた後にホットアイソスタティックプレス法で焼結させることが好ましい。」(3頁左欄39行〜47行)。
特開平5-267191号公報(乙第16号証)には、次の記載がある。「緻密質セラミックスからなる盤状基体の内部に抵抗発熱体を埋設してなるセラミックスヒーター」(2頁右欄4行〜6行)。「セラミックスヒーター1は、ホットプレス焼結、常圧焼結によって製造することができる。」(3頁左欄8行〜9行)。
上記各記載によれば、緻密質セラミックスは、ホットプレス焼結に限らず、常圧焼結によっても作製することが可能であるといわざるを得ない。
そして、特開昭61-215269号公報(乙第2号証)には、技術分野は異なるが、金網をセラミックスに埋設して常圧焼結させることが記載されているから、
電極として金網を用いたからといって、必ずしも、ホットプレス焼結によらなければセラミックス製品を作製することができないというものではない。
したがって、請求項1に原告主張の(イ)、(ロ)及び(ハ)の構成要件があるからといって、訂正発明1と引用例1に記載された発明との対比に際して、訂正発明1がホットプレス焼結により得られたものであることを、当然の前提として構成に含むものと解することはできない。
(2) 接合面について 訂正明細書(甲第2号証)には、次の記載がある。
「一方、(2)の場合には、円盤状支持体37と誘電体板36とを、双方ともに成形し、焼成した後、研削機械によって表面をそれぞれ研削加工し、特に誘電体板の方については、その厚さを一定にする平面加工を施す必要がある。しかも、両者の間に銀ろう等からなる円形シートを挟み、加熱処理することで、両者を接合する必要がある。したがって、円盤状支持体37及び誘電体板36の研削加工、厚さの調整及び特に面倒なろう接合工程が必要なので、製造工程数が多く、量産に支障がある。しかも、銀ろう等の導電性接合剤によって円盤状支持体37と誘電体板36とを接合すると、導電性接合剤層38に沿って必ず接合面が残る。しかし、高真空等の条件では、この接合面が絶縁破壊の原因となる。」(【0005】)。
このように、訂正明細書では、円盤状支持体と誘電体とを成形した後に接合する従来技術では、その接合面が絶縁破壊の原因となることが指摘されているが、常圧で一体焼結する従来技術については接合面の問題は指摘されていない。したがって、訂正発明で、放電や絶縁破壊が問題となるとしている「接合面」は、円盤状支持体と誘電体板とを別体に焼結した後に両者を接合する場合の接合面であるということができる。
一方、引用例1には、次の記載がある(甲第4号証)。「円盤状のセラミック基体1の一方の主面1bに沿って、例えば円形の膜状電極5が形成されている。そして、この膜状電極5を覆うように、一方の主面1b上にセラミック誘電体層6が形成され、一体化されている。」(2頁右欄35行〜39行)、「まず、図3に示すヒーター付き静電チャックを作製する。この作製時には、セラミックス基体1とセラミックス誘電体層6とは別体として焼結するか、一体焼結する。」(4頁左欄24行〜27行) この記載からすると、セラミックス基体1とセラミックス誘電体層6とが一体焼結された場合は、それぞれ別体として焼結し接合した場合にできるような接合面が形成されるものではないことが明らかである。原告は、引用例1中の【図1】、
【図3】、【図4】及び【図6】に示された接合面相当位置に実線がはっきり描かれていると主張するが、上記のように一体焼結することが記載されており、その接合面に関して詳細な説明に特段の記載がされていない以上、これらの図面の記載のみをもって接合面があると認定することはできない。
原告は、引用例1には、一体焼結の方法について、どのように焼結を行うのかについて具体的な記載がなく、「ホットプレス焼結法」について記載されていないから、引用例1に「接合面のない一体焼結品」が記載されているとする審決の判断は誤りであると主張するが、引用例1記載の発明においても「ホットプレス焼結法」を用いての作製が可能であるから、原告の主張は理由がない。
2 相違点2の判断について (1) 膜状電極について 引用例1(甲第4号証)には、膜状電極に関して、「膜状電極5は、セラミックス基体1とセラミックス誘電体層6との間に内蔵される。この膜状電極5は、パンチングメタルのような穴明き形状とすると、誘電体層6の基材1との密着性が良好となる。」(2頁右欄39行〜42行)と記載されている。
ここで原告が主張するように、膜状電極の「膜」を、「物の表面を覆う薄い物。
薄く、広がりを持つもの。薄皮。」(広辞苑)であると解釈しても、この解釈は膜厚について規定するものではないから、直ちに、「剛性を有するものではあり得ない」とすることはできない。
「膜状電極」については、特開昭63-72877号公報(乙第9号証)に「この電極部材3の上面には、誘電体膜4で被覆された薄膜状電極5が固着されており、・・・上記電極・・・Al製電極5aにAl2O 3の無機絶縁性誘電体膜4aを被覆したもの・・・が用いられ」(2頁左下欄20行〜右下欄8行)と記載され、
特開平2-138501号公報(乙第10号証)に「圧電セラミックス部材34a、34bの外方に露呈する面部に薄膜状の電極36a、36bを貼着する。」(5頁左上欄19行〜右上欄1行)と記載され、特開平4-109562号公報(乙第12号証)に「このアルミニウム合金は十分な延展性を有するため、100μm以下の板や箔に容易に加工でき、100μm以下の薄膜電極が容易に作製できる。」(3頁右上欄15行〜18行)と記載されている。そして、実願平2-76879号(実開平4-34755号)のマイクロフィルム、特開昭63-119174号公報、実願昭60-101392号(実開昭62-10381号)のマイクロフィルム(乙第13号証〜乙第15号証)にも同様の記載があるから、「薄膜状電極」、「薄膜電極」との用語は、様々な技術分野において、箔あるいは薄板状の金属材料からなる電極を含むものとして用いられていたということができる。訂正発明が属する電極埋設品の技術分野においても、このことを排除すべき特段の事情を認めることはできない。
一方で、引用例1記載発明の「膜状電極」について、前記のように「穴明き形状」の例として記載されている「パンチングメタル」(2頁39行〜42行の記載参照)は、一般に剛性を有することは明らかである。
よって、引用例1記載発明の「膜状電極」は剛性を有するものではあり得ないとする原告の主張は理由がなく、引用例1記載発明の「膜状電極」に代えて「金網」を用いることにつき、原告主張の阻害要因のあるものとは認められない。
(2) 金網について 訂正明細書(甲第2号証)の【0001】には、産業上の利用分野として、「本発明は、電極埋設品及びその製造方法に関するものである。」と記載され、【0012】には、「本発明に係る電極埋設品としては、高周波電極、静電チャックがある。」と記載されている。しかし、訂正前の明細書(甲第1号証=本件特許公報)の【0012】には、「本発明に係る電極埋設品としては、電気集塵機、電磁シールド、高周波電極、静電チャックが好ましい」(3頁3〜5行)と記載されており、必ずしも、静電チャックや高周波電極の技術分野における周知技術でなければ訂正発明に適用できないというものではない。訂正発明において電極として金網を用いるのは、訂正明細書によれば、主として製造上の理由によるものであるから、
電極を焼結体に一体に埋設する技術であれば適用可能であるというべきである。
そして、特開昭63-119186号公報(乙第3号証)には、「図において、
板状に形成された細かいメッシュの金網からなる電極板1の表面には、フェライト・セラミック発熱体2が所定の厚さに溶射されて固着されている。・・・・この溶射時にフェライト・セラミック発熱体4は、下層のフェライト・セラミック発熱体2と一体化し、それによって、電極板1,3及びフェライト・セラミック発熱体2,4が強固に一体的に結合されてこの板状ヒータが構成される」(2頁左下欄3行〜16行)、及び、「ところで、上述した実施例では、電極部材として細かいメッシュの金網を用いているが、電極部材としては、これ以外に孔明きの金属板を用いることもできる。」(3頁右上欄3行〜6行)との記載があり、特開昭61-40801号公報(乙第4号証)には「本発明に係る水素吸蔵体の・・・骨材としては、金網、孔明き板等の表面積の大きなものが選ばれ、・・・上記骨材の周囲を水素吸蔵金属粉末で覆い、両者を熱間プレス若しくは放電焼結することにより製造できる。」(2頁左下欄17行〜右下欄6行)との記載があり、そこでは、金網と穴明きの金属板(孔明き板)とが埋設電極として置換可能なものとして用いられている。してみると、引用例1記載発明の「パンチングメタルのような穴明き形状とされる膜状電極」に代えて「金網」を用いることは、当業者において容易に想到し得るものである。
(3) 金網の線径について この点に関する原告の主張は、金網の線径をφ0.03mm〜0.5mmにすることは、ホットプレス法を使用するために最適な線径であるだけでなく、高周波電極及び静電チャックとして求められる作動時に応答速度及び基板吸引力の面内均一性を提供するという技術的意義を有するものであり、静電チャックあるいは高周波電極として使用するという限定された使用用途において、これらの線径の数値の下限と上限はそれぞれに臨界的な意義を示すものであるから、設計事項にとどまるものではないというものである。
しかしながら、訂正明細書(甲第2号証)には、金網の線径に関して、【0033】に「金網メッシュ形状、線径等は特に限定しない。しかし、線径φ0.03mm、150メッシュ〜線径φ0.5mm、6メッシュにおいて、特に問題なく使用できた。」と記載されているのみであって、原告の主張する臨界的な意義を示す根拠となる記載はなされていない。そうだとすると、電極に加圧による変形が生じないだけの剛性と、電極としての低い抵抗値を付与することは当然であるから、そのときの金網の線径をφ0.03mm〜φ0.5mmとすることは、通常好ましいものとして採用される範囲を示したにとどまり、格別な臨界的な意義を有するものではないといわざるを得ない。
(4) 訂正発明1の課題との関連 原告は、訂正発明1は、「緻密質のセラミックス基体」を形成するために「ホットプレス」焼結法を用いて静電チャックを作製する際に生じる技術的課題を認識することによって得られたものであるのに対し、引用例1に記載された発明には、上記課題は示唆されていないと主張する。
まず、電極に金網を用いることについては、訂正明細書(甲第2号証)に次のように記載されている。
「【0029】電極の形態は、多数の小孔を有する板状体からなる面状の電極であり、これらにセラミックス粉末が流動して回り込むので、板状体の両側におけるセラミックスの接合力が大きくなり、基体の強度が向上する。
【0030】こうした板状体としては、パンチングメタル、金網を例示できる。ただし、電極が高融点金属からなり、かつパンチングメタルである場合には、金属の硬度が高いので、高融点金属からなる板に多数の小孔をパンチによって開けることは困難であり、加工コストも非常に高くなる。
【0031】この点、電極が金網である場合には、高融点金属からなる線材が容易に入手できるので、この線材を編組すれば金網を製造できる。したがって、電極の製造が容易である。
【0032】また、電極の形態が薄板である場合には、電極と基体との熱膨張係数の差によって、電極の周縁部分に特に大きな応力が加わり、この応力のために基体が破損することがあった。しかし、電極が、多数の小孔を有する板状体である場合には、この応力が多数の小孔によって分散される。」 これらの記載からみると、ホットプレス焼結を用いるための技術的課題は、必ずしも「金網」によらなければ解決できないというものではないのであり、「金網」を用いるのは、むしろ電極の製造の容易さによるものということができる。
一方、引用例1に記載の静電チャックは、一体焼結することにより作製されるものであって、そこには、焼結方法についての記載はない。しかし、前記のようにその「膜状電極」は「パンチングメタルのような穴明き形状」とされ、剛性を有するものを含むのであるから、ホットプレス焼結によっても作製が可能であることは当業者に明らかである。したがって、ホットプレス焼結を用いるための技術的課題は、引用例1記載の発明によっても解決することができるものであり、原告の上記主張は理由がない。
3 相違点3の判断(訂正発明2)について 引用例1に記載される静電チャックの「膜状電極」はパンチングメタルのような穴明き形状とされ、剛性を有する場合も含むのであるから、引用例3に記載されるホットプレス法を用いることの阻害要因とはならない。
原告は、引用例1の静電チャックと引用例3のセラミックスヒータは、製品分野が異なり、求められる機能と電極形状や成形精度が異なるから、両者を関連付けることは容易でない、と主張しているが、両者は、セラミックス基体に金属製導電部材を埋設するという点で、共通する技術分野に属するものであり、該金属製導電部材と半導体載置面との距離を一定にしなければならないことも、程度の差こそあれ同じである。そして、引用例3の抵抗発熱体の製造方法によれば、「成形、焼結段階において、抵抗発熱体の変形や位置ズレがほとんどなくなり、セラミックスヒーターの均熱性が向上し、製品の品質が安定する。」(引用例3(乙第6号証)4頁右欄13〜16行)という、静電チャックの電極が必要とするのと同様の効果を奏するのであるから、引用例1記載の発明に、引用例3の技術を適用するのに困難性は認められない。
さらに、引用例1記載発明における静電チャック(電極埋設品)を製造しようとする場合、製造時に亀裂や隙間がなるべく生じないような製造方法を選定することは、引用例1に内在する技術課題であることは自明である。引用例3記載の発明は、引用例1記載の発明と同じようにセラミックス基体に金属製導電部材を埋設する技術であって、しかも「成形、焼結段階において、抵抗発熱体の変形や位置ズレがほとんどなくなり、セラミックスヒーターの均熱性が向上し、製品の品質が安定する」という効果を奏するもの、すなわち、成形、焼結段階において、抵抗発熱体の変形や位置ズレを生ぜず、製品の品質を安定化させる課題を解決したものであるから、引用例1の発明と引用例3の発明とは課題の共通性がないとする原告の主張は、理由がない。
原告は、訂正発明2も、訂正発明1と同様、常圧焼結法を用いたのでは、密着不良が生じるとともに緻密性を確保できず、従来の膜状電極(従来技術(1)として記載のスクリーン印刷によるもの)では抵抗が大きいことを解決課題とし、さらに、「緻密質のセラミックス基体」を形成するために「ホットプレス」焼結法を用いて静電チャックを作製する際に生じる技術課題を認識することにより得られたものであると主張している。しかし、原告が「「ホットプレス」焼結法を用いて静電チャックを作製する際に生じる技術課題」とするものは、引用例1記載発明における膜状電極が、パンチングメタルのような穴明き形状の電極であることによって、
既に解決されている課題である。引用例1記載の発明には、製造時に亀裂や隙間がなるべく生じないような製造方法を選定する技術課題が内在し、引用例3記載の発明には、成形、焼結段階において、抵抗発熱体の変形や位置ズレを生ぜず、製品の品質を安定化させる課題が存在するのであるから、引用例1記載の発明に引用例3記載のホットプレス焼結を適用した審決の判断に誤りはない。
結論
以上のとおり、原告主張の審決取消事由は理由がないので、原告の請求は棄却されるべきである。
(平成14年12月19日口頭弁論終結)
追加
平成14年(行ケ)第208号訂正2001-39183号審決の理由1.請求の要旨本件審判の請求の要旨は、特許第2967024号(平成6年3月29日特許出願、平成11年8月13日設定登録)の願書に添付した明細書を、平成14年2月8日付け手続補正書により補正された審判請求書に添付した訂正明細書のとおり訂正することを求めるものと認められるところ、その要旨は、以下の訂正事項a〜gのとおりのものと認める。
(1)訂正事項a願書に添付した明細書中の請求項1を以下のように訂正する。
「【請求項1】緻密質セラミックスからなる基体と、この基体に埋設されている電極とを備えており、高周波電極および静電チャックからなる群より選ばれた電極埋設品であって、前記電極が、線径φ0.03mm〜線径φ0.5mmの面状の金網からなり、前記電極を包囲する前記基体が、接合面のない一体焼結品であることを特徴とする、電極埋設品。」(2)訂正事項b願書に添付した明細書中の請求項2ないし請求項5を削除する。
(3)訂正事項c願書に添付した明細書中の請求項6を以下のように訂正する。
「【請求項2】緻密質セラミックスからなる基体と、この基体中に埋設されている電極とを備えており、高周波電極および静電チャックからなる群より選ばれた電極埋設品を製造する方法であって、前記電極が、線径φ0.03mm〜線径φ0.5mmの面状の金網からなり、セラミックス成形体とこのセラミックス成形体中に埋設されている前記電極とを、前記電極の厚さ方向に向かって圧力を加えつつホットプレス焼結することにより、前記基体を接合面のない一体焼結品とし、前記基体内に前記電極を埋設し、孔内にセラミックスを充填させることを特徴とする、電極埋設品の製造方法。」(4)訂正事項d願書に添付した明細書中の【0007】を次のように訂正する。
「【0007】【課題を解決するための手段】本発明は、緻密質セラミックスからなる基体と、
この基体中に埋設されている電極とを備えており、高周波電極および静電チャックからなる群より選ばれた電極埋設品であって、電極が、線径φ0.03mm〜線径φ0.5mmの面状の金網からなり、電極を包囲する前記基体が、接合面のない一体焼結品であることを特徴とする。」(5)訂正事項e願書に添付した明細書中の【0008】を次のように訂正する。
「【0008】また、本発明は、緻密質セラミックスからなる基体と、この基体中に埋設されている電極とを備えており、高周波電極および静電チャックからなる群より選ばれた電極埋設品を製造する方法であって、電極が、線径φ0.03mm〜線径φ0.5mmの面状の金網からなり、セラミックス成形体とこのセラミックス成形体中に埋設されている電極とを、電極の厚さ方向に向かって圧力を加えつつホットプレス焼結することにより、基体を接合面のない一体焼結品とし、基体内に電極を埋設し、孔内にセラミックスを充填させることを特徴とする。」(6)訂正事項f願書に添付した明細書中の【0010】を次のように訂正する。
「【0010】しかも、電極を包囲する基体が、接合面のない一体焼結品であるので、高真空等の放電し易い条件下においても、接合面からの放電、絶縁破壊は生じ得ない。従って、電極埋設品の信頼性が飛躍的に向上する。しかも、電極が、面状の金属バルク体からなる多数の孔が設けられている板状体のひとつである金網からなり、セラミックス粉末が流動して回り込むので、板状体の両側におけるセラミックスの接合力が大きくなり、基体の強度が向上する。」(7)訂正事項g願書に添付した明細書中の【0012】を次のように訂正する。
「【0012】【実施例】本発明に係る電極埋設品としては、高周波電極、静電チャックがある。特に電極埋設品が高周波電極である場合には、例えば電極がタングステンであり、周波数が13.56MHzの場合、電極の厚さは430μm以上が望ましい。
しかし、この厚さの電極を、スクリーン印刷法で形成することは困難である。また、電極埋設品が静電チャックである場合には、電極を面状の金属バルク体とすることにより、チャックの応答速度の向上が可能である。」2.訂正拒絶の理由上記訂正事項a、bは、特許請求の範囲減縮を目的とするものと認められるところ、平成13年12月4日付けで通知した訂正の拒絶の理由の概要は、次のとおりである。
「訂正後における特許請求の範囲の請求項1ないし2に記載されている事項により構成されている発明(以下、「訂正後の請求項1の発明」ないし「訂正後の請求項2の発明」という。)は、上記特許出願の出願前に頒布された特開平4-304941号公報(平成4年10月28日発行:以下「引用例1」という。)、特開平5-235153号公報(平成5年9月10日発行:以下「引用例2」という。)、特開平5-275434号公報(平成5年10月22日発行:以下「引用例3」という。)に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではない。したがって、本件審判の請求は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定により従前の例によるとされる同法律による改正前の特許法第126条第3項の規定に適合しない。」3.上記訂正明細書の特許請求の範囲の記載と引用例の記載上記訂正明細書の特許請求の範囲の記載は次のとおりである。
「【請求項1】緻密質セラミックスからなる基体と、この基体に埋設されている電極とを備えており、高周波電極および静電チャックからなる群より選ばれた電極埋設品であって、前記電極が、線径φ0.03mm〜線径φ0.5mmの面状の金網からなり、前記電極を包囲する前記基体が、接合面のない一体焼結品であることを特徴とする、電極埋設品。
【請求項2】緻密質セラミックスからなる基体と、この基体中に埋設されている電極とを備えており、高周波電極および静電チャックからなる群より選ばれた電極埋設品を製造する方法であって、前記電極が、線径φ0.03mm〜線径φ0.5mmの面状の金網からなり、セラミックス成形体とこのセラミックス成形体中に埋設されている前記電極とを、前記電極の厚さ方向に向かって圧力を加えつつホットプレス焼結することにより、前記基体を接合面のない一体焼結品とし、前記基体内に前記電極を埋設し、孔内にセラミックスを充填させることを特徴とする、電極埋設品の製造方法。」引用例1には、ウエハー保持具の製造方法に関して、次のような記載がある。
(A)「図1は、セラミックスヒーターと一体化された静電チャックを示す概略断面図・・・である。」(2頁右欄20行ないし23行)(B)「円盤状のセラミックス基体1の一方の主面1bに沿って、例えば円形の膜状電極5が形成されている。そして、この膜状電極5を覆うように、一方の主面1b上にセラミックス誘電体層6が形成され、一体化されている。これにより、膜状電極5は、セラミックス基体1とセラミックス誘電体層6との間に内蔵される。この膜状電極5は、パンチングメタルのような穴明き形状とすると、誘電体層6の基材1との密着性が良好となる。」(2頁右欄35行乃至42行)(C)「セラミックス基体1、セラミックス誘電体層6は、・・・窒化珪素焼結体、サイアロン、窒化アルミニウム、アルミナ-炭化珪素複合材料等とするのが好ましい。」(3頁右欄33行ないし38行)(D)「図3に示すヒーター付き静電チャックを作製する。この作製時には、セラミックス基体1とセラミックス誘電体6とを・・・一体焼結する。」(4頁左欄24行ないし27行)(E)「・・・膜状電極5がセラミックス誘電体層6とセラミックス基体1との間に内蔵されているので、従来の金属ヒーターの場合のような汚染を防止できる。」(3頁左欄31行ないし34行)上記(A)の記載から、引用例1のウエハー保持具は静電チャックであって、上記(C)の記載から、窒化珪素焼結体、サイアロン、窒化アルミニウム、アルミナ-炭化珪素複合材料等から成るセラミックス基体1とセラミックス誘電体層6を有し、上記(B)、(D)、(E)の記載から、セラミックス基体1の一方の主面1bに沿って膜状電極5が形成され、この膜状電極5を覆うように、主面1b上にセラミックス誘電体層6が形成され、一体焼結により一体化して、膜状電極5をセラミックス誘電体層6とセラミックス基体1との間に内蔵するようにしたものである。してみれば、引用例1のセラミックス基体1とセラミックス誘電体層6は、一体焼結されることによって接合面が一体化され、全体として膜状電極5を埋設した基体を構成しているものと認められる。そして上記(B)の記載から、この膜状電極5は、誘電体層6の基材1との密着性を良好にするため、パンチングメタルのような穴明き形状とされているものと認める。
したがって、引用例1には、
「セラミックスからなる基体と、この基体に埋設されている膜状電極5とを備えており、静電チャックの電極埋設品であって、前記膜状電極5が、パンチングメタルのような穴明き形状の膜状電極からなり、前記膜状電極5を包囲する前記基体が、接合面のない一体焼結品である電極埋設品」の発明が記載されているものと認められる。
引用例3には、半導体加熱用セラミックスヒーター及びその製造方法に関して、
次のような記載がある。
(F)「金属箔1を・・・加工し、例えば図1(b)に示すような平面的パターンの抵抗発熱体2を製造する。抵抗発熱体2においては、金属箔の主表面に対してほぼ平行に、細長い金属箔が延びた形状となっており、従って、抵抗発熱体2の全体がほぼ同一平面上にある。」(3頁左欄14行ないし19行)(G)「下型5Aの上(枠6の内側)にセラミックス粉体を充填し、一旦プレス成形して予備成形体7を得る。次いで、予備成形体7の上に抵抗発熱体2を設置し、・・・抵抗発熱体2の上にセラミックス粉体8を充填する。次いで、図2(c)に示すように、上型5Bと下型5Aとでセラミックス粉体を一軸加圧成形し、円盤状成形体9を得る。次いで、図2(d)に示すように、下型5Aを上昇させて円盤状成形体9を取り出す。
【0013】次いで、円盤状成形体9を焼結してセラミックスを緻密化させ、円盤状基体とする。・・・図3においては、円盤状基体9Aの内部に抵抗発熱体2が埋設され、一対の端子3が、背面9a側に露出している。円盤状成形体9は、・・・ホットプレス法で焼結する・・・」(3頁左欄29行ないし45行)(H)「本実施例においては、金属箔からなる抵抗発熱体を用いており、かつ抵抗発熱体2がほぼ同一平面内にある。このため、抵抗発熱体の型崩れという問題がほとんどなく、・・・ホットプレス焼結・・・した場合も、抵抗発熱体2の平面形状が定まっていることから、抵抗発熱体の変形や位置ズレがほとんどなくなった。」(3頁左欄48行ないし右欄7行)(I)「円盤状基体9Aを構成する緻密質セラミックスとしては、窒化珪素、窒化アルミニウム、サイアロン等を例示できる。・・・窒化アルミニウムを使うと、ハロゲン系腐食性ガスに対して、高い耐蝕効果が得られる。」(3頁右欄13行ないし18行)(J)「いずれの場合も、ホットプレスによる抵抗発熱体の変形は見られなかった。」(3頁右欄30行ないし31行)(K)「第二の方法では、円盤状成形体9をコールドアイソスタティックプレスで緻密に成形し、この成形体を焼結する。この焼結方法としては、上記した各焼結方法を用いうる。」(4頁左欄18行ないし21行)上記(F)の記載から、引用例3の半導体加熱用セラミックスヒーターは、金属箔1から成る平面的パターンの抵抗発熱体2を有し、上記(G)〜(K)の記載から、プレス成形した予備成形体7の上に抵抗発熱体2を設置し、その上にセラミックス粉体8を充填して加圧成形し、円盤状基体9A中に抵抗発熱体2を埋設して、
ホットプレス法等で焼結するもので、セラミックスは緻密化されており、ホットプレスによっても抵抗発熱体である金属箔1の変形が見られないものと認められる。
したがって、引用例3には、
「緻密質セラミックスからなる円盤状基体9Aと、この円盤状基体9A中に埋設されている抵抗発熱体2とを備えており、抵抗発熱体2が金属箔1からなり、セラミックス円盤状成形体9とこのセラミックス円盤状成形体9中に埋設されている前記金属箔1とをホットプレス焼結することにより、前記基体を一体焼結品とし、前記円盤状基体9A内に前記金属箔1を埋設した半導体加熱用セラミックスヒーターの製造方法。」の発明が記載されているものと認められる。
4.訂正後の請求項1の発明と、上記引用例1に記載された発明との対比訂正後の請求項1の発明と、上記引用例1に記載された発明とを対比すると、上記引用例1の発明における「膜状電極5」は「電極」であり、「静電チャック」は、該電極が埋設された「電極埋設品」であって、「高周波電極および静電チャックからなる群より選ばれた電極埋設品」のうちの一つであるから、訂正後の請求項1の発明は、上記引用例1に記載された発明と、
「セラミックスからなる基体と、この基体に埋設されている電極とを備えており、高周波電極および静電チャックからなる群より選ばれた電極埋設品であって、
前記電極を包囲する前記基体が、接合面のない一体焼結品である電極埋設品」である点で一致し、以下の相違点で相違している。
<相違点>1)訂正後の請求項1の発明の基体は、緻密質セラミックスからなるのに対し、
引用例1の発明の基体は、セラミックスからなる一体焼結品ではあるが、該セラミックスが緻密質であるのかどうかが明かでない点。
2)訂正後の請求項1の発明の電極は、線径φ0.03mm〜線径φ0.5mmの面状の金網からなるのに対し、引用例1の発明の電極は、パンチングメタルのような穴明き形状の膜状電極からなるものである点。
5.上記の相違点に対する当審の判断次に、上記の相違点について検討する。
(1)相違点1)に関して半導体製造装置に用いられる基体を緻密質セラミックスで形成することは、引用例3にも記載されているように従来周知である(他に必要ならば、特開昭62-264638号公報を参照されたい。)。してみれば、引用例1の静電チャックの基体を緻密質セラミックスで形成することは当業者が容易に行うことができたものである。
(2)相違点2)に関して引用例1の電極は、パンチングメタルのような穴明き形状の膜状電極からなるものであるが、膜状電極には、スクリーン印刷により形成したもの以外に、膜状の電極を基体と別体に形成するものも含まれており(例えば、特開昭63-72877号公報、特開平2-138501号公報、実願昭62-78006号(実開昭63-187499号)のマイクロフィルム参照。)、このような電極は、普通、箔あるいは薄板等の金属材料から形成されるものと認められる(例えば、特開平4-109562号公報における3頁右上欄15行ないし18行を参照されたい。)。
したがって、膜状電極には箔あるいは薄板状の金属材料からなる穴明き形状の電極も含まれるものと認られるから、引用例1の膜状電極として、箔あるいは薄板状の金属材料からなる穴明き形状の電極が認識できる。
また、焼結体中に埋設される電極を、金網で形成することは周知技術(例えば、
特開昭63-119186号公報、特開昭61-40801号公報参照)である。
してみれば、引用例1の発明の膜状電極に代えて金網を用いることは、上記引用例1に上記周知技術を適用することにより、当業者が容易に行うことができたものである。そしてその場合、金網の線径をどの程度とするかは、当業者が使用目的等に応じて選定する単なる設計事項である。
そうすると、引用例1の電極を、線径φ0.03mm〜線径φ0.5mmの面状の金網で形成することは当業者が容易に行うことができたものというべきである。
6.訂正後の請求項2の発明に関して(1)訂正後の請求項2の発明と、上記引用例1に記載された発明との対比上記引用例1に記載された発明には「セラミックスからなる基体と、この基体中に埋設されている電極とを備えており、高周波電極および静電チャックからなる群より選ばれた電極埋設品を製造する方法であって、前記基体を接合面のない一体焼結品とし、前記基体内に前記電極を埋設する電極埋設品の製造方法」も開示されており、さらに、上記『5.の(2)』でも指摘したように、上記引用例1に記載された発明において、電極は箔あるいは薄板状の金属材料からなる穴明き形状の電極と認識できる。そして、上記『3.の(B)』の「パンチングメタルのような穴明き形状とすると、誘電体層6の基材1との密着性が良好となる。」との記載からみて、該穴内には当然セラミックスが充填されるものと認められる。したがって、
訂正後の請求項2の発明は、上記引用例1に記載された発明と、
「セラミックスからなる基体と、この基体中に埋設されている電極とを備えており、高周波電極および静電チャックからなる群より選ばれた電極埋設品を製造する方法であって、前記基体を接合面のない一体焼結品とし、前記基体内に前記電極を埋設し、孔内にセラミックスを充填させる電極埋設品の製造方法。」である点で一致し、『訂正後の請求項1の発明と、上記引用例1に記載された発明との対比』で指摘した相違点1)、2)に加えて、以下の相違点3)で相違している。
<相違点3)>訂正後の請求項2の発明の電極埋設品は、セラミックス成形体とこのセラミックス成形体中に埋設されている電極とを、電極の厚さ方向に向かって圧力を加えつつホットプレス焼結しているのに対し、上記引用例1に記載された発明の静電チャックは、一体焼結されるものの、どのようにして焼結を行うのか明かでない点。
(2)上記の相違点3)に対する当審の判断セラミックス成形体とこのセラミックス成形体中に埋設されている金属箔とをホットプレス焼結することは、上記引用例3に記載されている。上記引用例3の金属箔は、電極として用いられるものではないが、静電チャックの電極を金属箔、金属板等の膜状電極で形成することは、引用例1に記載された技術であるから、引用例1の金属箔、金属板等の膜状電極をセラミックス成形体中に埋設するときに引用例3の技術を適用することは、当業者が容易に行うことができたものであり、さらに、金網も薄板状の金属板であることから、引用例1の金属箔、金属板等の膜状電極を金網に置き換えたものに、引用例3の技術を適用することも当業者が容易に行うことができたものである。なお、引用例3のホットプレス焼結においては、圧力をどの方向から加えてホットプレス焼結を行うのかが明かでないが、静電チャックをホットプレス焼結によって製造するのに、圧力を電極の厚さ方向に向かって加えることは、最も自然な形態であり、また、それは周知技術(例えば、特開昭62-157752号公報における第3図を参照されたい。)でもある。
してみれば、引用例1で、箔あるいは薄板状の金属材料からなる穴明き形状の膜状電極に代えて金網を用いた静電チャックを製造するのに、セラミックス成形体とこのセラミックス成形体中に埋設されている電極とを、電極の厚さ方向に向かって圧力を加えつつホットプレス焼結することは、上記引用例3と上記周知技術から当業者が容易に行うことができたものである。
7.当審の判断以上のとおりであるから、訂正後における特許請求の範囲の請求項1ないし2に記載されている事項により構成されている発明は、上記特許出願の出願前に頒布された引用例1と引用例3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではない。
8.むすびしたがって、本件審判の請求は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定により従前の例によるとされる同法律による改正前の特許法第126条第3項の規定に適合しない。
裁判官 塩月秀平
裁判官 古城春実
裁判長裁判官 永井紀昭