関連ワード | 新規性 / 進歩性(29条2項) / 技術的範囲 / 発明の詳細な説明 / 参酌 / 特許発明 / 実施 / 構成要件 / 差止請求(差止) / 侵害 / 実施権 / 専用実施権 / 通常実施権 / 独占的通常実施権 / 請求の範囲 / |
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事件 |
平成
14年
(ワ)
5493号
特許権侵害差止等請求事件
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原告 株式会社エクセル 訴訟代理人弁護士 井原紀昭 同 小泉哲二 被告 株式会社静岡産業社 被告 株式会社スペック 被告両名訴訟代理人弁護士 上村正二 |
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裁判所 | 大阪地方裁判所 |
判決言渡日 | 2003/01/30 |
権利種別 | 特許権 |
訴訟類型 | 民事訴訟 |
主文 |
1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 |
事実及び理由 | |
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請求
1 被告らは、別紙物件目録記載の物件を製造し、譲渡し、貸し渡し、又は譲渡若しくは貸渡しのため展示してはならない。 2 被告らは、前項記載の物件及びこれを製造するために必要な金型を廃棄せよ。 3 被告らは、原告に対し、連帯して金1120万円及びこれに対する被告株式会社静岡産業社につき平成14年6月18日、被告株式会社スペックにつき同年7月2日(それぞれ訴状送達の日の翌日)から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 |
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事案の概要
本件は、「ビデオテープカセット用カバーケース」の特許発明の専用実施権者(平成14年8月20日以前は独占的通常実施権者)である原告が被告らに対し、被告らが製造、販売するビデオテープのカバーケースは同特許発明の技術的範囲に属すると主張して、専用実施権に基づきその製造等の差止めを請求するとともに、独占的通常実施権の侵害による損害賠償を請求した事案である。 1 争いのない事実等(証拠の掲記のないものは当事者間に争いがない。) (1) 株式会社日本ビデオセンターは、次の特許権を有している(以下「本件特許権」といい、その特許請求の範囲の請求項1の特許発明を「本件発明」という。)。 ア 発明の名称 ビデオテープカセット用カバーケース イ 特許番号 第2640074号 ウ 出 願 日 平成5年7月8日(特願平5-194114号) エ 公 開 日 平成7年2月3日(特開平7-33188号) オ 登 録 日 平成9年5月2日 カ 特許請求の範囲は、別紙特許公報(以下「本件公報」といい、その明細書を「本件明細書」という。甲2)該当欄記載のとおりである。 (2) 本件発明の特許請求の範囲は、次のとおり分説するのが相当である。 A 箱型形状の本体を有し、 B ビデオテープカセットを本体の上面側と幅広の側面側から出し入れできるように上面及び幅広の一側面を開閉可能に構成し、 C かつ幅広の両側面の少なくともいずれか一方の内側にストッパを突設したビデオテープカセット用カバーケースであって、 D 開閉可能な幅広の一側面を閉じきった状態でビデオテープカセットを格納するための箱型のレンタル用ケースを上面開口から前記本体内に挿入したときレンタル用ケースの底部が前記ストッパに当接して同ケースの上部が所定寸法だけ前記上面開口から上方へ露出し、かつ前記ビデオテープカセットを前記本体に格納して幅広の両側面の一方へ片寄せたとき前記開閉可能な幅広の側面が前記ストッパに邪魔されることなく閉じきるように前記ストッパの突出寸法を設定したことを特徴とする E ビデオテープカセット用カバーケース。 (3) 原告は、平成9年10月15日、株式会社日本ビデオセンターより、本件特許権について独占的通常実施権の設定を受けた(甲3)。 さらに、原告は、株式会社日本ビデオセンターから、本件特許権に関し、 地域を日本国内全域、期間を平成25年7月7日まで、内容をビデオテープカセット用カバーケースの製造とする専用実施権の設定を受け、平成14年8月20日にその旨の登録を経由した。 (4) 被告らは、別紙物件目録記載のビデオケース(以下「被告物件」という。)を製造、販売している。 被告物件の構成について、原告は別紙「被告物件の構成(原告主張)」記載のとおりであると主張し、被告らは別紙「被告物件の構成(被告主張)」記載のとおりであると主張する。 被告物件は、構成要件A、C〜Eをいずれも充足し、構成要件Bのうち「ビデオテープカセットを本体の幅広の側面側から出し入れできるように幅広の一側面を開閉可能に構成」されているとの要件を充足する。 2 争点 (1) 被告物件は「(本体の)上面を開閉可能に構成」されている(構成要件B)といえるか。 (2) 損害の発生及び額 |
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争点に関する当事者の主張
1 争点(1)(被告物件は「(本体の)上面を開閉可能に構成」されている(構成要件B)といえるか。)について 〔原告の主張〕 (1)ア 「(本体の)上面を開閉可能に構成」されている(構成要件B)とは、 ケース本体の上面開口部が開閉可能な構成、すなわち、同開口部が開閉可能となるような蓋状の部材を取り付けることが可能な構成となっていれば足りるのであって、同開口部が閉じた状態になる構成が含まれている必要はないと解すべきである。 イ 被告らは、本件発明は、ケース本体の上面が閉じた状態になる構成が必須要件となっていると主張する。 しかし、本件発明(特許請求の範囲の請求項1)では、ケース本体の上面開口部が開閉可能な構成となっていることが記載されているだけであり、上面に蓋体を取り付け、上面が閉じた状態になることは全く記述されていない。 一方、本件特許請求の範囲の請求項3において、「前記上面を前記本体に着脱可能な蓋体にて構成し、かつ同蓋体を上面開口に沿って起立するように取り付ける取付手段を設けたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のビデオテープカセット用カバーケース。」と記載され、着脱可能な蓋体の構成が明記されている。 また、本件明細書の発明の詳細な説明の項において、実施例1として、 ケース本体と上面開口部を閉じる蓋体とが2体構造、すなわち別個の部材として記載されている。 このことからすると、本件発明(特許請求の範囲の請求項1)は、外ケース1(ケース本体)の構造についての発明と解すべきであり、外ケース1(ケース本体)の上面開口部8が開閉可能となるような蓋状の部材を取り付けることが可能となっていれば、必要かつ十分であり、ケース本体の上面開口部を閉じた状態にする構成(例えば蓋体)を備えているか否かを問わないものと解すべきである。 (2) 被告物件の上面開口部8の両端には、上面開口部8が開閉可能となる蓋状の部材を取り付けることができる断面コ字状部材5a、5bが設けられている。 そして、被告物件の断面コ字状部材5a、5bには、実際に蓋状の部材を嵌合することが可能であり、蓋状の部材を断面コ字状部材5a、5bに嵌着すると、外ケース1の上面開口部8は完全に閉状態となり、他方、蓋状の部材を断面コ字状部材5a、5bから取り外すと上面開口部8は開状態となる。 したがって、被告物件は、断面コ字状部材5a、5bを設けたことにより、「(本体の)上面を開閉可能に構成」されているといえるから、構成要件Bを充足する。 〔被告らの主張〕 (1)ア 「(本体の)上面を開閉可能に構成」されている(構成要件B)とは、 ケース本体の上面が開閉可能な構造、すなわち、上面が閉じた状態になる構成を必須要件としていると解すべきである。 イ 本件特許出願時には、特公平7-41941号特許公報(出願日平成4年3月7日、乙5)記載の発明(以下「乙5発明」という。)が出願されていたが、乙5発明は、箱型形状をしたもので上面側を開口とし、ここからテープケースを取出し可能とし、さらには、箱内側にはテープケース面に当接する当り片を設置し、この当り片を収納口から底に向けて高くしているため、いわゆるストッパーの役割をしている構成の発明である。 そうすると、本件発明は、本体と閉蓋する蓋体からなる2体構造にし、 当該蓋体には、補強用凸条、突起又は足部、嵌合凸条等を設置した点に新規性、進歩性が存するというべきである。 ウ 原告は、「(本体の)上面を開閉可能に構成」されている(構成要件B)とは、ケース本体の上面開口部が開閉可能な構成、すなわち、同開口部が開閉可能となるような蓋状の部材を取り付けることが可能な構成となっていれば足りると主張する。 しかし、本件発明は、「レンタル用ケースの有無に応じて、ビデオレンタルショップにおいては展示用ケースとして利用でき、一般家庭においては保管に便利な普通のカバーケースとして使用できるので、極めて経済的である」(本件公報4欄44〜47行、6欄25〜28行)という効果、すなわち、ビデオショップにおいては、上面開口部を開口させビデオテープカセットのレンタル用ケースの一部上方を露出させて展示し、家庭等において保管する場合には、開口部を蓋体等により閉じた状態でゴミ、ほこり等が混入しないようにするという効果を奏することを目的としたものである。このため、特許請求の範囲の請求項1では「上面及び幅広の一側面を開閉可能に構成」する必要があり、請求項2では「上面、幅広の一側面及び幅広の一側面に連接する幅狭の一側面を開閉可能に構成し」、かつ…(中略)…「前記ビデオテープカセットを前記本体に格納して幅狭の両側面の一方へ片寄せたとき前記開閉可能な幅狭の側面が前記ストッパに邪魔させることなく閉じきるように……」されており、また請求項3では「上面を前記本体に着脱可能な蓋体にて構成し、かつ同蓋体を上面開口部に沿って起立するように取り付け」られるようになっているものである。 もし、原告の主張のように解するならば、いかなるケースでも、市場コストを考えなければ蓋を設置することは可能であって、乙5発明のようなものまで本件発明の技術的範囲に含まれることとなる。 したがって、「(本体の)上面を開閉可能に構成」されている(構成要件B)とは、上面開口部が開閉可能となるような蓋状の部材を取り付けることが可能な構成となっていれば足りるとの原告の主張は理由がない。 (2)ア 被告物件は、外ケース1の上面開口部8が閉じた状態になる構成を備えていないから、「(本体の)上面を開閉可能に構成」されている(構成要件B)とはいえない。 イ 原告は、被告物件の上面開口部8の両端には、上面開口部8が開閉可能となる蓋状の部材を取り付けることができる断面コ字状部材5a、5bを設けられていると主張する。 しかし、上記のとおり、被告物件は外ケース1の上面開口部8が閉じた状態になる構成を備えていないのであり、原告の主張は、被告物件にない構成を憶測に基づき付加して権利侵害を主張するものであって、理由がない。 また、被告物件の断面コ字状部材5a、5bが下向きのコ字状に折れ曲がったような形状になっているのは、上面開口部8からカセット用ケースを挿入又は取出しの際に加わる力をセーブし損壊しないように強化するためのものである。 被告物件の上面からビデオテープカセットの内ケース2(レンタル用ケース)を挿入した時には、蓋を挿入することが事実上不可能な構成になっているから、断面コ字状部材5a、5bに開閉可能な蓋状部材を取り付けることが可能であるとする原告の主張は、単なる憶測にすぎないものである。被告らは、被告物件の上面開口部8を閉じた状態で使用したことは一度もないし、蓋体を製作販売したこともない。 2 争点(2)(損害の発生及び額)について 〔原告の主張〕 (1) 被告らは、共同して被告物件を製造し、平成13年11月ころから、株式会社カルチャーコンビニエンスクラブに、少なくとも毎月平均20万個、本訴提起時までに合計140万個を販売した。 (2) 被告らは、被告物件の製造販売により、1個当たり8円、合計1120万円(140万個×8円)の利益を得たから、原告が被告物件の製造販売行為により同額の損害を被ったものと推定される。 〔被告らの主張〕 原告の主張事実は否認する。 |
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争点に対する判断
1 争点(1)(被告物件は「(本体の)上面を開閉可能に構成」されている(構成要件B)といえるか。)について (1)ア 本件発明は、「ビデオテープカセット用カバーケース」に関する発明であるところ、構成要件Bは、「ビデオテープカセットを本体の上面側と幅広の側面側から出し入れできるように上面及び幅広の一側面を開閉可能に構成し」というものである。この構成要件Bにいう「(本体の)上面を開閉可能に構成」するとは、 その文言及び特許請求の範囲(請求項1)の全体の記載からすれば、ケース本体の上面を開くことと閉じることの2つの状態のいずれにもすることが可能な構成をケース本体自体が備えていることを意味するものと解される。 イ(ア) さらに、本件明細書の発明の詳細な説明を検討すると、次の記載がある(甲2)。 a 【従来の技術】の項には、従来技術として、「ビデオテープカセット10を格納したレンタル用ケース11を上面開口12aから挿入すると、同ケース11の底面がストッパ12dに当接し、それ以上中へ入らないのでレンタル用ケース11の上部が所定寸法だけ開口12aから上方に露出し、表示シール12cが隠れる。一方、ビデオテープカセット10がレンタル中のときは起立部12bの表示シール12cが露出するので、客は展示用ケース12を一瞥するだけでビデオカセットテープ10がレンタル中であるか否かを知ることができる。」(本件公報3欄22〜31行)という機能を備えたビデオレンタルショップで用いられる展示用ケースが存在したことが記載されている。 b 【発明が解決しようとする課題】の項には、「ところで、ビデオテープカセット10はレンタル用ケース11と同じ構造の箱型で幅広の一側面を開閉できるカバーケースに格納した状態で販売されている。この種のカバーケースは通常不透明であるので、一瞥し(た)だけでは中にビデオカセットテープが入っているか否かを判別できない。そこで、ビデオレンタルショップでは購入後に不透明なカバーケースからビデオカセットテープ10を取り出して透明または半透明のレンタル用ケース11に入れ替え、そのうえで展示用ケース12に入れて展示している。従って、ビデオレンタルショップがビデオテープカセット10をレンタルの用に供すべく購入する場合には展示用ケース12が必要となるうえに、購入時ビデオテープカセットに附属してくるカバーケースが不用となるので、甚だ不経済である。本発明はかかる問題点に鑑み、ビデオレンタルショップにおいて展示用ケースとして利用可能なカバーケースを提供することを目的とする。」(3欄33〜49行)と記載されている。 c 【発明の作用・効果】の項には、「請求項1または請求項2に記載のカバーケースによれば、レンタル用ケースに入れない裸のままのビデオテープカセットを本体に格納するときはストッパに邪魔されることなく開閉可能な幅広の一側面1(ま)たは幅狭の側面を閉じきることができる。一方、レンタル用ケースに入れたビデオテープカセットは上面開口から挿入したときレンタル用ケースの底面がストッパに当接して上部が上面開口から上方へ所定量露出する。従って、レンタル用ケースの有無に応じて、ビデオレンタルショップにおいては展示用ケースとして使用でき、一般家庭においては保管に便利な普通のカバーケースとして使用できるので、極めて経済的である。」(4欄36〜47行)と記載されている。 d 【実施例】の項に示される第1実施例は、「箱型形状の本体20と本体上面に形成した開口20aを閉蓋する蓋体30から成る2体構造」(5欄17〜18行)を有するものであるが、この第1実施例について、「蓋体30は嵌合凸条37,38を嵌合溝23a,24aに嵌合することにより図1と図4に示すように本体20上面に取付けられ、このとき本体20上面の開口20aが蓋体30により閉蓋される。」(5欄38〜42行)、「一方、嵌合凸条35,36を嵌合溝23a,24aに嵌合することにより蓋体30は図3及び図5に示すように、開口20aに沿って起立するように本体20に取付けることができる。」(5欄42〜45行)、「レンタル用ケース11の有無に応じて、ビデオレンタルショップにおいては展示用ケースとして使用でき、一般家庭においては普通のカバーケースとして使用できるので、極めて経済的である。」(6欄25〜28行)と記載されている。 また、第2実施例は、「本体40と蓋体41を一体成形し、蓋体41を上方へ開閉できるように背面42との連接部を薄肉に成形」(6欄47〜49行)するとともに、「蓋体41の裏側には右側面43に連接する補助片44が成形されている」(6欄49〜50行)ものである。 (イ) 本件発明の詳細な説明中の上記記載からすれば、本件発明は、ビデオレンタルショップにおいては、ケース本体の上面からレンタル用ケースに入れたビデオテープカセットを出し入れするために、上面を開口状態にした展示用カバーケースが用いられることを前提として、従来用いられていた、上面が開口し、両側面内側にストッパが突設された展示用ケースでは、ビデオレンタルショップがレンタル用ビデオカセットを購入する時ビデオカセットを格納しているカバーケースが不用となり不経済であるとの問題点があることから、この課題を解決する手段として、カバーケースの上面を開閉可能に構成するという本件発明の構成を備えることにより、一個のカバーケースを上面が開口した展示用ケースとして用いるとともに、当該ケース本体の上面開口部を閉じた状態にして、ビデオテープカセットを販売したり、一般家庭で保管する際にも用いることができるようになるという作用・効果を有するものであると認められる。このような本件発明の解決課題、解決手段、作用・効果からすると、本件発明は、発明の構成として、蓋体等の開閉手段を備えることが必須であるというべきである。 また、本件明細書におけるケース本体と蓋体を別体に構成する第1実施例に関する記載も、蓋体の構造、及び蓋体を取り付けるためのケース本体の構造について詳細な説明がなされ、蓋体の存在を前提とした内容になっており、その他、本件明細書において、原告が主張するように、その物件(展示用ケース)自体の構成としては、従来技術のように上面が開口しているのみで、蓋体等の開閉手段を備えないものであっても、ケース本体の上面開口部に対し、開閉可能となるような蓋状の部材を新たに取り付けることが可能な構成となっていれば足りるとの解釈につながるような記載は見当たらない。 したがって、本件発明の詳細な説明における記載を参酌しても、 「(本体の)上面を開閉可能に構成」する(構成要件B)とは、上面開口部を閉じる構成(蓋状の部材)を備えていることが要件となっているというべきである。 ウ 原告は、本件特許請求の範囲の請求項3において、着脱可能な蓋体の構成が明記されているから、本件発明(特許請求の範囲の請求項1)は、外ケース1(ケース本体)の構造についての発明と解すべきであると主張する。 しかし、請求項3においては「前記上面を前記本体に着脱可能な蓋体にて構成し、かつ同蓋体を上面開口に沿って起立するように取り付ける取付手段を設けたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のビデオテープカセット用カバーケース。」と記載されており、単に「上面を着脱可能な蓋体にて構成」したのではなく、「蓋体を上面開口に沿って起立するように取り付ける取付手段を設けたこと」を特徴とするものである。 そうすると、本件発明(特許請求の範囲の請求項1)について、上記のとおり、上面開口部を閉じる構成(蓋状の部材)を備えていることが要件となっていると解しても、請求項1と請求項3とが同じ構成を重複して記載していることにはなるものではない。 したがって、本件特許請求の範囲の請求項3の記載を理由に、本件発明(特許請求の範囲の請求項1)は、外ケース1(ケース本体)の構造についての発明と解すべきであるとする原告の主張は理由がない。 (2)ア 被告物件は、別紙物件目録記載のとおり、外ケース1の上面開口部8を閉じる構成(蓋状の部材)がなく、その構成として開閉手段を有しないから、 「(本体の)上面を開閉可能に構成」する(構成要件B)との要件を充足しているとはいえない。 イ この点について、原告は、被告物件の上面開口部8の両端に設けられた断面コ字状部材5a、5bに、上面開口部8が開閉可能となる蓋状の部材を取り付けることができると主張するが、被告物件に外ケース1の上面開口部8を閉じる構成(蓋状の部材)がない以上、断面コ字状部材5a、5bに蓋状の部材を取り付けることが可能か否かに関わらず、「(本体の)上面を開閉可能に構成」する(構成要件B)との要件を充足しているとはいえないことに変わりはない。 ウ しかも、被告物件の断面コ字状部材5a、5bには、本件明細書の第1実施例に記載されているような蓋体取付け用の嵌合溝はなく、その他に上面開口部を閉鎖する蓋状の部材を取り付けるための特別な構成が備わっているとはいえないこと、被告物件のカタログ(甲7)には、「上部開口部分へのフタの取り付けはできません。」と記載されており、その他被告物件に取り付けられるような蓋状の部材が製造、販売されたことを認めるに足りる証拠はないことからすると、被告物件は蓋状の部材を取り付けることを予定した商品であるとはいえないというべきである。 原告は、被告物件の断面コ字状部材5a、5bに嵌合可能な蓋体を作成し、検甲2として提出するが、その外観からすれば、同蓋体は、原告がプラスチック製のプレートを適当な大きさに切り、これを貼り付けて製作したものであることが認められるから、被告物件の断面コ字状部材5a、5bに嵌合可能な蓋体をこのように試験的に製作することが可能であるとしても、上記のとおり被告物件が蓋状の部材を取り付けることを予定した商品であるとはいえないことに変わりはない。 (3) 以上によれば、被告物件は本件発明の技術的範囲に属するとはいえない。 2 よって、原告の請求は、その余の争点について判断するまでもなく理由がないから、主文のとおり判決する。 |
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追加 | |
(別紙)物件目録第1図第2図第3図第4図第5図第6図(別紙)被告物件の構成(原告主張)外ケース1は、展開可能であるが、通常は閉じた状態にあり、その上面に、上面開口部8を形成している。 そして、上面開口部8の両端には、上面開口部8が開閉可能となる蓋状の部材を取り付けることができる断面コ字状部材5a、5bを設けている。 ビデオテープカセット4を入れた内ケース2は、外ケース1を閉じた状態では、 この開口部8から出し入れされる(別紙物件目録第1図参照)。 外ケース1の幅広の一側面を閉じきった状態で、ビデオテープカセット4を格納するための内ケース2を上面開口部8から外ケース1内に挿入したとき、内ケース2の底部は、外ケース1の幅広面の内側下部に設けられたストッパ7に当接して、 内ケース2の上部が所定寸法(外ケース1の底部から何センチメートル上方の地点にストッパ7を設けるかによって、内ケース2の上部の露出寸法を自由に調節できる。)だけ、外ケース1の開口部から上方に露出し、内ケース突出部8を形成する(同第3図、第4図参照)。 ビデオテープカセット4を外ケース1に格納して、同ケースの幅広の両側面の一方へ片寄せたとき、幅広の側面3a、3bがストッパ7に邪魔されることなく完全に閉じることができるようにストッパ7の寸法を設定している(同第5図、第6図参照)。 (別紙)被告物件の構成(被告主張)ビデオテープカセット4のレンタル用外ケース1の上面開口部8からレンタル用内ケース2を出し入れできるように、また幅広の側面からもビデオテープカセット4の内ケース2を出し入れできるよう幅広の側面3a、3bを開閉可能にしている。 なお、幅広の側面3aの内側上端に断面コ字状部材5bの補強用突起9が設置されている。また、10a、10bを閉じた時に断面コ字状部材5aの中に挿入される補強用部材10があり、閉じた場合10a、10bが幅狭の側面を構成する。 幅広の側面3a下端部内側にストッパ7を突設し、また開閉可能な幅広の両側面3a、3bを閉じた状態でビデオテープカセット4を収納した外ケース1を上面開口部8から挿入すると、レンタル用内ケース2の底部が前記ストッッパ7に当接して同内ケース2の上部が前記上面開口部8から上方へ露出するようになっている。 また、ビデオテープカセット4を内ケース2からはずして外ケース1内に格納して幅広の側面3aの一方へ片寄せたとき、開閉可能な幅広の側面3aのストッパ7に邪魔されることなく閉じきるように前記ストッパ7の突出寸法で設定されているビデオテープカセット用カセットケース。ただし、この場合でも上面開口部8は閉じられない構造になっている。 |
裁判長裁判官 | 小松一雄 |
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裁判官 | 阿多麻子 |
裁判官 | 前田郁勝 |