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関連ワード 進歩性(29条2項) /  容易に発明 /  設定登録 /  訂正審判 /  請求の範囲 /  減縮 /  取消決定 / 
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事件 平成 14年 (行ケ) 245号 特許取消決定取消請求事件
原告 日本鋼管株式会社
原告 旭硝子株式会社
両名訴訟代理人弁理士 小林久夫
同 安島清
同 石川壽彦
同 佐々木 宗治
同 木村三朗
被告 特許庁長官太田 信一郎
指定代理人 藤井俊明
同 鈴木久雄
同 高木進
同 宮川久成
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 2003/01/31
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
主文 特許庁が異議2001−71636号事件について平成14年3月27日にした決定を取り消す。
訴訟費用は被告の負担とする。
事実及び理由
請求
主文と同旨
当事者間に争いのない事実
1 特許庁における手続の経緯 (1) 原告らは,名称を「高温高圧流体の流量制御弁及びその弁軸の固着防止方法」(その後,下記本件訂正審決により「高炉用高温高圧流体の流量制御弁及びその弁軸の固着防止方法」と訂正)とする特許第3116305号発明(平成10年8月31日特許出願,平成12年10月6日設定登録,以下「本件発明」といい,この特許を「本件特許」という。)の特許権者である。
その後,本件特許につき特許異議の申立てがされ,同申立ては,異議2001-71636号事件として特許庁に係属したところ,原告らは,平成13年11月1日及び平成14年1月24日,本件特許出願の願書に添付した明細書(以下「本件明細書」という。)の特許請求の範囲の記載等を訂正する旨の訂正請求(以下「本件訂正請求」という。)をした。
特許庁は,同特許異議事件について審理した上,同年3月27日,「訂正を認める。特許第3116305号の請求項1ないし8に係る特許を取り消す。」との決定(以下「本件決定」という。)をし,その謄本は,同年4月15日,原告らに送達された。
(2) 原告らは,本件決定の取消しを求める本訴提起後の平成14年9月24日,本件明細書の特許請求の範囲の記載等を訂正する旨の訂正審判の請求をしたところ,特許庁は,同請求を訂正2002-39198号事件として審理した上,同年12月16日,上記訂正を認める旨の審決(以下「本件訂正審決」という。)をし,その謄本は,同月27日,原告らに送達された。
2 特許請求の範囲の記載 (1) 設定登録時の特許請求の範囲の記載 【請求項1】弁板及び弁軸がセラミックスにより一体に形成された弁体と,前記弁軸が回転自在に挿通され,流路壁に設けられた開口部に挿着される耐火物からなるプラグ部材と,前記プラグ部材が固着され,前記開口部の取付座に取り付けられる金属製の取付部材と,前記取付部材の前記プラグ部材と反対側の面に取り付けられる弁駆動手段とを備えたカートリッジ式の流量制御弁であって, 前記プラグ部材の外周面に装着される第1のシール部材と, 前記取付部材と前記取付座の間に介装される第2のシール部材と, 前記取付部材の前記弁軸の軸受部材に装着される第3のシール部材と, を備えたことを特徴とする高温高圧流体の流量制御弁。 【請求項2】前記プラグ部材が,軸方向前部を高強度耐火物,軸方向後部を断熱性耐火物とする2層構造からなることを特徴とする請求項1記載の高温高圧流体の流量制御弁。 【請求項3】前記プラグ部材が先細り状の円錐台形状に形成してあることを特徴とする請求項1または請求項2記載の高炉用高温高圧流体の流量制御弁。
【請求項4】第1のシール部材が耐熱性ファイバーからなることを特徴とする請求項1記載の高温高圧流体の流量制御弁。 【請求項5】前記弁駆動手段と前記弁軸とは継手手段によって連結されていることを特徴とする請求項1記載の高温高圧流体の流量制御弁。 【請求項6】前記プラグ部材は,その先端面が前記流路壁の内周面にほぼ一致するように前記開口部に挿着されることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一に記載の高温高圧流体の流量制御弁。 【請求項7】請求項1から請求項6のいずれか一に記載の高温高圧流体の流量制御弁において,前記弁軸と前記プラグ部材の軸孔との間隙に,加熱された気体を供給することを特徴とする高温高圧流体の流量制御弁の弁軸の固着防止方法。 【請求項8】前記取付部材の内部に,前記第3のシール部材によってシールされ,前記弁軸と前記プラグ部材の軸孔との間隙に連通する空間部を設け,前記空間部に,加熱された気体の供給手段を接続したことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一に記載の高温高圧流体の流量制御弁。
(2) 本件訂正請求に係る訂正後の特許請求の範囲の記載(注,訂正部分を下線で示す。以下【請求項1】〜【請求項8】に係る発明を「本件発明1」〜「本件発明8」という。) 【請求項1】弁板及び弁軸がセラミックスにより一体に形成された弁体と,前記弁軸が回転自在に挿通されるブシュを先端側に有し,流路壁に設けられた開口部に挿着される耐火物からなるプラグ部材と,前記プラグ部材が固着され,前記開口部の取付座に取り付けられる金属製の取付部材と,前記取付部材の前記プラグ部材と反対側の面に取り付けられる弁駆動手段とを備え,前記弁体は片持ち式に支持され,送風支管の側面に設けられた前記開口部に直接取り付けられる カートリッジ式の流量制御弁であって, 前記プラグ部材の外周面に装着される第1のシール部材と, 前記取付部材と前記取付座の間に介装される第2のシール部材と, 前記取付部材の前記弁軸の軸受部材に装着されるグランドパッキンからなる第3のシール部材と, を備えたことを特徴とする高炉用高温高圧流体の流量制御弁。 【請求項2】前記プラグ部材が,軸方向前部を高強度耐火物,軸方向後部を断熱性耐火物とする2層構造からなることを特徴とする請求項1記載の高炉用高温高圧流体の流量制御弁。 【請求項3】前記プラグ部材が先細り状の円錐台形状に形成してあることを特徴とする請求項1または請求項2記載の高炉用高温高圧流体の流量制御弁。
【請求項4】第1のシール部材が耐熱性ファイバーからなることを特徴とする請求項1記載の高炉用高温高圧流体の流量制御弁。 【請求項5】前記弁駆動手段と前記弁軸とは継手手段によって連結されていることを特徴とする請求項1記載の高炉用高温高圧流体の流量制御弁。 【請求項6】前記プラグ部材は,その先端面が前記流路壁の内周面にほぼ一致するように前記開口部に挿着されることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一に記載の高炉用高温高圧流体の流量制御弁。 【請求項7】請求項1から請求項6のいずれか一に記載の高炉用高温高圧流体の流量制御弁において,前記弁軸と前記プラグ部材の軸孔との間隙に,加熱された気体を供給することを特徴とする高炉用高温高圧流体の流量制御弁の弁軸の固着防止方法。 【請求項8】前記取付部材の内部に,前記第3のシール部材によってシールされ,前記弁軸と前記プラグ部材の軸孔との間隙に連通する空間部を設け,前記空間部に,加熱された気体の供給手段を接続したことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一に記載の高炉用高温高圧流体の流量制御弁。
(3) 本件訂正審決に係る訂正後の特許請求の範囲の記載(注,訂正部分を下線で示す。なお,二重下線部分は,上記(2)との相違部分である。) 【請求項1】弁板及び弁軸がセラミックスにより一体に形成された弁体と,前記弁軸が回転自在に挿通されるブシュを先端側に有し,開口部に挿着される耐火物からなるプラグ部材と,前記プラグ部材が固着され,前記開口部の取付座に取り付けられる金属製の取付部材と,前記取付部材の前記プラグ部材と反対側の面に取り付けられる弁駆動手段とを備えカートリッジ式の流量制御弁であって, 前記プラグ部材の外周面に装着される第1のシール部材と, 前記取付部材と前記取付座の間に介装される第2のシール部材と, 前記取付部材の前記弁軸の軸受部材に装着されるグランドパッキンからなる第3のシール部材と, を備えたことを特徴とする高炉用高温高圧流体の流量制御弁。 【請求項2】前記プラグ部材が,軸方向前部を高強度耐火物,軸方向後部を断熱性耐火物とする2層構造からなることを特徴とする請求項1記載の高炉用高温高圧流体の流量制御弁。 【請求項3】前記プラグ部材が先細り状の円錐台形状に形成してあることを特徴とする請求項1または請求項2記載の高炉用高温高圧流体の流量制御弁。
【請求項4】第1のシール部材が耐熱性ファイバーからなることを特徴とする請求項1記載の高炉用高温高圧流体の流量制御弁。 【請求項5】前記弁駆動手段と前記弁軸とは継手手段によって連結されていることを特徴とする請求項1記載の高炉用高温高圧流体の流量制御弁。 【請求項6】前記プラグ部材は,その先端面が前記流路壁の内周面にほぼ一致するように前記開口部に挿着されることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一に記載の高炉用高温高圧流体の流量制御弁。 【請求項7】請求項1から請求項6のいずれか一に記載の高炉用高温高圧流体の流量制御弁において,前記弁軸と前記プラグ部材の軸孔との間隙に,加熱された気体を供給することを特徴とする高炉用高温高圧流体の流量制御弁の弁軸の固着防止方法。 【請求項8】前記取付部材の内部に,前記第3のシール部材によってシールされ,前記弁軸と前記プラグ部材の軸孔との間隙に連通する空間部を設け,前記空間部に,加熱された気体の供給手段を接続したことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一に記載の高炉用高温高圧流体の流量制御弁。
3 本件決定の理由 本件決定は,本件訂正請求に係る訂正を認めた上,本件発明の要旨を同訂正後の特許請求の範囲の記載(上記2(2))のとおり認定し,本件発明1は,実公昭63-46771号公報(本訴甲12,審判甲1,以下「刊行物1」という。),特開平7-27234号公報(本訴甲13,以下「刊行物2」という。)及び特開平4-285368号公報(本訴甲14,審判甲6,以下「刊行物3」という。)に記載された各発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり,本件発明2は,刊行物1及び実公平1-17729号公報(本訴甲15,審判甲2,以下「刊行物4」という。)に記載された各発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり,本件発明3〜6は,本件発明1についての判断と同様であり,本件発明7は,刊行物1及び特開昭56-14676号公報(本訴甲16,以下「刊行物5」という。)に記載された各発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり,本件発明8は,刊行物1,5に記載された各発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本件発明1〜8についての特許は,特許法29条2項の規定に違反してされたものであって,特許法113条2号に該当し,取り消されるべきものであるとした。
当事者の主張
1 原告ら 本件決定が,本件発明の要旨を本件訂正請求に係る訂正後の特許請求の範囲の記載(上記第2の2(2))のとおり認定した点は,本件訂正審決の確定により特許請求の範囲の記載が上記第2の2(3)のとおり訂正されたため,誤りに帰したことになる。そして,この瑕疵は本件決定の結論に影響を及ぼすものであるから,本件決定は違法として取り消されるべきである。
2 被告 本件訂正審決の確定により特許請求の範囲の記載が上記のとおり訂正されたことは認める。
当裁判所の判断
本件訂正審決の確定により,本件明細書の特許請求の範囲の記載が上記第2の2(3)のとおり訂正されたことは当事者間に争いがなく,この訂正によって,特許請求の範囲減縮されたことは明らかである。
そうすると,本件決定が,本件発明の要旨を,本件訂正請求に係る訂正後の特許請求の範囲の記載(上記第2の2(2))のとおり認定したことは,結果的に誤りであったことに帰し,これが本件決定の結論に影響を及ぼすことは明らかであるから,本件決定は,瑕疵があるものとして取消しを免れない。
よって,原告らの請求は理由があるから認容することとし,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 篠原勝美
裁判官 岡本岳
裁判官 長沢幸男