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関連審決 不服2001-1388
関連ワード 特許を受ける権利 /  自然法則 /  29条1項3号 /  発明の詳細な説明 /  遡及 /  分割出願 /  名義変更 /  技術的意義 /  同一の作用効果 /  実施 /  同意 /  拒絶査定 /  拒絶理由通知 /  請求の範囲 /  減縮 /  変更 /  要旨変更 /  当事者参加 / 
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事件 平成 14年 (行ケ) 414号 審決取消請求独立当事者参加事件
原告(参加人) 有限会社テクノ海洋
訴訟代理人弁理士 鈴木正次、涌井謙一 脱退原告 海洋工業株式会社
被告 特許庁長官 太田信一郎
指定代理人 西野健二、清田榮章、高木進、林栄二
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 2003/02/06
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
主文 原告(参加人)の請求を棄却する。
訴訟費用は原告(参加人)の負担とする。
事実及び理由
原告(参加人)の求めた裁判
特許庁が不服2001-1388号事件について平成14年3月4日にした審決を取り消す、との判決。
事案の概要
1 手続の経緯等 (1) 原出願 出願 昭和62年11月2日(特願昭62-278104号) (出願人:脱退原告、発明の名称:「間欠空気揚水装置における給気方法」) (2) 本 願 出願 平成6年2月4日(原出願からの分割出願) 拒絶査定 平成12年12月26日 審判請求 平成13年2月1日(不服2001-1388号) 拒絶理由通知 平成13年12月11日(発送日) 手続補正書 平成14年1月18日(提出日) 審決 平成14年3月4日(同月19日脱退原告に送達) 審決の結論 「本件審判の請求は、成り立たない。」 (3) 本訴提起後に、脱退原告海洋工業株式会社から原告(参加人)有限会社テクノ海洋(以下「原告」というときは、参加人を指す。)に対し特許を受ける権利の譲渡(平成14年4月16日特許庁に出願人名義変更届) 2 本願発明の要旨(平成14年1月18日付け手続補正書による補正後の特許 請求の範囲の記載) 「【請求項1】筒体外の空気室から筒体内へ気泡弾を間欠的に供給して揚水するようにした揚水方法において、前記間欠的に与える一回の空気量を、前記筒体の直径を30cmから、80cm(但し40cmを除く)までとした場合に、その筒体直径を直径とする球体容積の1.0倍乃至3.0倍以内とし、送気量を毎分100リットル乃至2000リットルの間として、平均流速を0.8m/sec〜1.5m/secとすることを特徴とした間欠空気揚水装置における給気方法。」 3 審決の理由の要点 審決の理由は、別紙審決の写し(審決書)の理由欄に記載のとおりである。要するに、
(1) 本願は、特願昭62-278104号(出願日昭和62年11月2日)を原出願とする分割出願として出願されたものであるが、本願の明細書又は図面は、原出願の出願当初の明細書又は図面に記載した事項の範囲内でないものを含むから、
この出願の分割は、適法になされたものではなく、出願日の遡及は認められない、
(2) 本願発明は、引用例(特公平3-46679号公報(原出願の公告公報)、
甲第2号証)に記載された発明であるから、特許法29条1項3号に該当し、特許を受けることができない、
というものであり、出願の分割についての判断(前記(1))の理由は、以下に引用するとおりである。
「(2)本願の出願の分割について ・・・本願の出願の分割は、・・・上記の要件ロ.(判決注.「分割出願の明細書又は図面が、原出願の出願当初の明細書又は図面に記載した事項の範囲内でないものを含まないこと」)を満たしていない。
すなわち、本願の明細書又は図面には、発明の詳細な説明又は図面に、「筒体の直径を30cm,50cm,80cm,100cmとした場合」について記載され、特許請求の範囲の請求項1に、「筒体の直径を30cmから、80cm(但し40cmを除く)までとした場合」と記載されている。そして、段落【0037】に、「前記実施例13、14で明らかなように、筒体の直径80cmの場合は、ほぼ直径50cmの場合と同一状態で、空気量が多くなれば流速の増加が認められるが、直径1mの場合には、空気量の増大に比較して流速の増加は少ないものと認められる。従って実用上筒体直径の上限は80cm付近と判断される。」との記載がある。これに対して原出願の出願当初の明細書又は図面(特開平1-121600号公報、参照。)には、発明の詳細な説明又は図面に、「筒体の直径を30cm、50cmとした場合」について記載されるだけであり、特許請求の範囲第1項に、「筒体直径を30cm前後とした場合」と記載されるだけである。
したがって、本願の明細書又は図面が、原出願の出願当初の明細書又は図面に記載した事項の範囲内でないものを含むことは、明らかである。」(審決書2頁)
原告主張の審決取消事由の要点
本件出願は、以下に述べるとおり、適法な分割出願であることが明らかであるから、分割が不適法であるとして出願日の遡及を認めなかった審決は違法であり、これに基づいた判断は取り消されるべきである。
1 原出願の願書に最初に添付した明細書又は図面(以下、「原出願の当初明細書」という。甲第3号証)は、特許請求の範囲第1項に、「筒体直径を30cm前後以上」と規定し、筒体の直径50cmまでの実施例を記載していた。筒体直径30cm以上ということは、技術的には、直径30cm以上の大径であっても同一数値関係にあるものについては、同一発明と認められることを示すものである。
そこで、原出願の明細書を補正して筒体の直径80cmのデータを付加したが、
いわゆる要旨変更でないと認められ、出願公告(特公平3-46679号公報:甲第2号証)され、特許第2071524号として特許された。
原出願についてされた上記補正が要旨変更に当たらない適法な補正と認められた以上、上記補正に係る内容は、原出願の出願時に原出願に含まれていたと認められたものである。
2 一般に、願書に添付された明細書又は図面とは、現実に文言として記載されていなくても、「発明として当然認められる範囲」までを含むものである。例えば、特許請求の範囲の「筒体の直径30cm以上」との記載が、筒体の直径30cm及び50cmの実験例のデータの記載に基づいている場合には、「30cm以上」は少なくとも50cmを含むのであり、同一作用効果を奏する80cmのデータがあり、かつ作用効果の相違する100cmのデータがある場合には、「30cm以上」は、最低80cmを当然含むことになる。
原出願の補正後の明細書(甲第2号証)には、特許請求の範囲(請求項1)に、
「筒体直径を30cm乃至80cmとした場合に」と記載され、発明の詳細な説明欄に、筒体直径80cmとした場合のデータが記載され、筒体直径80cmとした場合にも筒体直径30cmと同一の作用効果を奏することが示されている。筒体直径30cm以上の上限は同一自然法則を利用する範囲内で同一効果を奏する範囲により定められるべきであるから、原出願には、筒体直径が80cmまでの発明が含まれていたものである。
なお、本願発明及び原出願の発明における上昇流の発生は、甲第2号証の第1図に示すように、筒体1内を気泡弾19が浮力により上昇する場合の浮力と、上昇すべき水量と、筒体内壁と水流の摩擦力のバランスにより定まる。前記における浮力と、上昇すべき水量は、筒体直径の三乗に比例するが、摩擦力は筒体直径の一乗に比例する。したがって、筒体直径が増加するほど、浮力に対する摩擦力の比率は小さくなる。前記理由により、浮力に対する比率は、筒体直径が20cmの場合は筒体内壁による摩擦力が大きいが、筒体直径30cmの場合は筒体内壁による摩擦力が小さくなるので、両者を同一方法では律し切れないが、筒体直径30cm以上の場合には、摩擦力の影響が小さくなるので、実用上使用しうる80cm〜100cmの間の範囲までは同一効果を奏すると推定される。
3 分割出願された本願発明は、原出願の発明の要旨を変更したものではない。
すなわち、本願発明は、原出願における「筒体直径を30cm前後以上」(原出願の当初明細書の特許請求の範囲)を「筒体直径を30から、80cmまで」に減縮しているのであるから、この分割(補正)は要旨変更には当たらない。そして、分割時の原出願の明細書には、筒体直径80cmの実施例が記載されていた。本願発明は、補正の規定において要旨を変更しないものとみなされる範囲内の分割であるから、当然、その分割出願は適法である。
4 以上のことからすれば、本願発明は、原出願の当初明細書(甲第3号証)に含まれていた発明というべきであるから、その分割出願は適法な分割出願である。
被告の反論の骨子
1 分割出願が適法と認められるためには、分割出願に係る発明は、原出願の当初明細書又は図面に記載されている(その記載から自明な事項を含む。)ことを要する。
2 本願の特許請求の範囲の請求項1(甲第4号証-2)に記載された発明は、
「筒体の直径を30cmから、80cmまでとした場合」とした点において、原出願の当初明細書に記載された事項の範囲外の事項を要旨としているものであり、審決の判断に誤りはない。
当裁判所の判断
1 本願発明については、本訴提起後の平成14年4月26日付け譲渡契約により、特許を受ける権利が脱退原告から原告に譲渡され、同日付けで特許庁長官に対し上記譲渡の事実を届け出る出願人名義変更届が提出された。これに伴い、原告が被告を相手方として民訴法47条1項の規定による独立当事者参加をし、脱退原告は、被告の同意を得て本件訴訟から脱退した。
2 甲第2ないし第3号証及び第4号証1、2並びに弁論の全趣旨によれば、本願発明は、特願昭62-278104号の出願(原出願)の当初明細書(甲第3号証、原出願の公開特許公報)が補正され、出願公告(平成3年7月16日、甲第2号証、特公平3-46679号)がされた後に、原出願からの分割出願として出願され(甲第4号証の1、本願公開公報)、その後、平成14年1月18日付け手続補正書によって明細書の補正がされたものであり(甲第4号証の2)、本願発明の要旨は、前記第2の2に記載のとおりである。
3 本訴において、原告の主張する審決取消事由は、もっぱら、本願発明の分割出願が不適法であるとして出願日の遡及を認めなかった審決の認定判断の誤りをいうものである。
(1)そこで、まず、分割出願の要件についてみるに、原出願の当初明細書が分割出願前に補正され、出願公告されている場合において、分割出願に係る発明は、
原出願の当初明細書及び原出願の分割時の明細書の双方に記載されている(その記載から自明な事項を含む。)ことを要するものというべきである。
審決は、その分割出願の適否についての判断(審決書2頁)において、分割出願が適法と認められるためには、分割出願に係る発明が原出願の出願当初明細書に記載されていることを要するとの前提に立って、本件分割出願の適否を判断していることが明らかである。原告も、原出願の当初明細書に分割出願に係る発明が記載されていることが適法な分割出願と認められるための要件であること自体を争うものではない。
したがって、本件の争点は、本願の特許請求の範囲【請求項1】に記載された筒体直径の上限値を80cmとする発明が、原出願の当初明細書に記載されていたか否かにある。
(2)以上の観点から原出願の当初明細書を検討し、本願発明が原出願の当初明細書に記載されているか否かをみる。
ア 原出願の当初明細書の記載 (ア) 甲第3号証によれば、原出願の当初明細書(公開特許公報)には、
次の記載が認められる。
@「また、出願人は先に小径の揚水筒(例えば筒径20cm前後)に関しては間欠的に与える一回の空気量と筒体直径を直径とする球体容積との関係を明らかにした給気方法を提案した(特願昭61-102624)。」(甲第3号証の1頁右下欄) A「また、前記特願昭61-102624の発明は筒径20cm前後の揚水装置には適用できるが、大口径のものについては不十分の問題点があった。」(同2頁左上欄) B「即ちこの発明は、筒体内へ気泡弾を間欠的に供給して揚水するようにした揚水方法において、前記空気量を、前記筒体直径を30cm前後以上とした場合に、
その直径とする球体容積の0.5倍乃至3.0倍として間欠空気揚水装置における給気方法を構成した。前記における空気容量は表-1〜表-6の実験結果から求めた。」(同2頁左上欄) C「前記実施例1乃至実施例12は、筒径30cmと50cm、筒長5m、10m、15m、空気室容量を球体容積の0.5倍、3.0倍とした時の流速を求めたものである。前記実施例は、上下限の限界値付近について説明したもので、表-1乃至表-6に示すように同径、同長の筒体について、球体容積の0.3倍乃至10倍につき、送気量100l/分乃至2000l/分までの実験を行った。これをグラフ化したものが第3図乃至第8図である。」(同7頁左下欄) D「この発明によれば、筒径30cm以上において一回の放出空気量を筒体直径とする球体容積の0.5倍乃至3.0倍としたので、エネルギー効率が著しく向上する効果がある。」(同7頁右下欄) (イ) 上記記載@〜Cによると、原出願の当初明細書に記載された発明は、特願昭61-102624号に記載された小径(例えば筒径20cm前後)の揚水筒における給気方法(乙第1号証)を前提技術とし、この前提技術よりも大口径のものに適用しようとして、筒体直径30cm及び50cmの場合について実験を行い、その実験結果に基づいて、上記Dの「エネルギー効率が著しく向上する」という効果を奏する、間欠的に与える一回の空気量と筒体直径を直径とする球体容積との関係を明らかにしたものと認められる。
(ウ) してみると、原出願の当初明細書における「筒体直径を30cm前後以上とした場合」との記載は、前提技術としての「筒体直径20cm前後の場合」と区別するための下限値を明らかにするものであり、上記Dの効果を奏することのできる筒体直径の上限値までも明らかにするものではない。
そして、原出願の当初明細書には、筒体直径を30cmと50cmとしたものが上記Dの効果を奏することについては記載されているが、筒体直径を50cmを超えて大きくしていったときに、どの範囲のものであれば30cm、50cmのものと同等の効果を奏するかについては、記載されておらず、その点が原出願の当初明細書の記載から自明であるということもできない。
イ 本願明細書について (ア) 甲第4号証の1、2によれば、本願明細書には、原出願の当初明細書の上記記載事項@〜Dに追加して、次の事項が記載されていることが認められる。
E「【実施例13】筒径80cm、筒長15mの筒体1を水深25mに設置し、
容量267リットルの空気室2(前記筒体直径を直径とする球体容積の1.0倍相当)を付設し、毎分1000リットルの空気を供給した所、毎分1.07回の気泡を放出した。この場合における筒体内の揚水の平均流速は、1.07m/secであった(表-6)。」(甲第4号証-1【0032】) F「【実施例14】筒径100cm、筒長15mの筒体1を水深25mに設置し、容量522リットルの空気室2(前記筒体の直径を直径とする球体容積の1.0倍相当)を付設し毎分2000リットルの空気を供給した所、毎分1.09回の気泡を放出した。この場合における筒体内の平均流速は、1.12m/secであった(表-7)。」(同【0034】) G「前記実施例13、14で明らかなように、筒体の直径80cmの場合は、ほぼ直径50cmの場合と同一状態で、空気量が多くなれば流速の増加が認められるが、直径1mの場合には、空気量の増大に比較して流速の増加は少ないものと認められる。従って実用上筒体直径の上限は80cm付近と判断される。」(同【0037】欄) H「前記実施例は、上下限の限界値付近について説明したもので、表-1乃至表-6に示すように同径、同長の筒体について、筒径を直径とする球体容積の0.3倍乃至10倍につき、送気量100リットル/分乃至2000リットル/分までの実験を行った。これをグラフ化したものが図2乃至図9である。」(同【0044】) I「この発明によれば、筒径30cm乃至80cmにおいて一回の放出空気量を筒体直径を直径とする球体容積の0.75倍乃至3.0倍としたので、エネルギー効率が著しく向上する効果がある。」(同【0047】) そして、本願の特許請求の範囲の請求項1(甲第4号証の2)には、「前記間欠的に与える一回の空気量を、前記筒体の直径を30cmから、80cm(但し40cmを除く)までとした場合に、その筒体直径を直径とする球体容積の1.0倍乃至3.0倍以内とし、」)と記載されている。
(イ) 本願明細書の上記E〜Hの記載によると、本願明細書は、筒体直径80cm、100cmについての実験を追加し、その実験結果に基づいて、筒体直径80cmでは上記Iの効果を奏し、筒体直径100cmでは上記効果を奏さないことを明らかにしたものであると認められる。
ウ 以上認定した事実に基づいて、原出願の当初明細書の記載と本願発明とを対比する。
本願明細書は、前認定のとおり、原出願の当初明細書の記載に加えて、【実施例13】及び【実施例14】として筒体直径を80cmとしたものと100cmとしたものを追加し、これらの追加した実施例のデータに基づいて、「筒体の直径80cmの場合は、ほぼ直径50cmの場合と同一状態で、空気量が多くなれば流速の増加が認められるが、直径1mの場合には、空気量の増大に比較して流速の増加が少ないものと認められる。従って、実用上筒体直径の上限は80cm付近と判断される。」(甲第4号証の1の段落【0037】)との記載を追加し、特許請求の範囲に、「筒体の直径を30cmから、80cm(但し40cmを除く)」と記載したものと認められる。
これに対し、原出願の当初明細書には、特許請求の範囲に、「筒体直径を30cm前後以上とした場合」と記載され、発明の詳細な説明中には、実施例1ないし12として筒体直径を30cmとしたものと50cmとしたものが記載されているが、筒体直径を80cm、100cmとした場合については何ら記載がなく、また、80cmまでは実施例1ないし12と同等の「エネルギー効率が著しく向上する」という効果を奏するが100cmでは効果がないので筒体直径の上限値は80cm付近であるという点についても、何ら記載されていないことが認められる。
そうすると、本願発明における筒体直径の上限値及びその上限値が有する技術的意義は、原出願の当初明細書には記載されておらず、本願明細書において初めて明らかにされたものであるといわざるを得ない。
エ 以上のとおりであるから、本願の特許請求の範囲の請求項1において、
「筒体の直径を30cmから、80cmまでとした場合」とした点は、原出願の当初明細書に記載された事項といえないばかりでなく、原出願の当初明細書の記載から自明の事項であるということもできない。
したがって、本願発明は、原出願に包含された発明ということができない。
(3)原告は、原出願の当初明細書に記載された「筒体の直径が30cm前後以上」の上限は、同一自然法則を利用する範囲内で同一効果を奏する範囲により定められるべきであると主張し、筒体の直径を80cmとした場合には30cmと同一の効果を奏するから、原出願の当初明細書には筒体直径の上限値を80cmとする発明が含まれていたと主張する。
しかしながら、筒体直径が80cmのものが30cm又は50cmのものと同一の効果を奏し、100cmの場合には空気量の増大に比較して流速の増加が少ないので実用上の上限値は80cm付近であるということが、本願明細書に新たに追加された実施例13、14及びそのデータ(表-6、表-7)によって初めて明らかにされた事項であることは、前示のとおりである。そして、原告の主張するとおり、間欠空気揚水装置における上昇流の発生が、筒体1内を気泡弾19が浮力により上昇する場合の浮力と、上昇すべき水量と、筒体内壁と水流の摩擦力とのバランスによって定まることからすれば、筒体直径がどの値まで筒体直径30cm又は50cmとのものと同一効果を奏するかは、実際に種々の筒体直径のものを作成して実験して初めて分かる事項であると解されるのであって、他に同一効果を奏する筒体直径の上限値が30cm、50cmのもののデータから当業者に自明の事項であると認めるべき証拠もない。原告の上記主張は採用することができない。
原告は、また、原出願について分割出願前に補正がされ、補正が要旨変更に当たらないとして原出願が出願公告された場合には、その補正に係る事項は原出願の当初から原出願に含まれていた(記載されていた)事項と認められるべきである旨主張し、分割出願に係る発明は原出願の当初明細書の特許請求の範囲を筒体直径を80cmまでとする限定を付加することにより減縮したものである旨主張するが、筒体直径を80cmまでとする発明が原出願の当初明細書に記載されていなかったとの判断が上記のとおりである以上、原告のこれらの主張をもってしても、本願発明が原出願に包含されたものではないとの判断を動かすものではない。
結論
以上のとおりであるから、審決が本願発明の分割出願を不適法と判断したことに誤りはなく、分割の適否についての審決の判断の誤りをいう原告主張の取消事由は理由がない。よって、原告の請求を棄却することとし、主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 塩月秀平
裁判官 古城春実
裁判官 田中昌利
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