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審判番号(事件番号) データベース 権利
平成14ワ2473損害賠償等請求事件 判例 特許
昭和44行ケ80 判例 特許
平成15行ケ39審決取消請求参加事件 判例 特許
平成17行ケ10309審決取消請求事件 判例 特許
平成16ワ8682損害賠償請求事件 判例 特許
関連ワード 創作性(創作) /  進歩性(29条2項) /  29条の2(拡大された先願の地位) /  技術的範囲 /  出願公開 /  発明の詳細な説明 /  明瞭でない記載 /  出願変更 /  権利の濫用(権利濫用) /  技術的意義 /  均等 /  置き換え /  意識的除外(意識的に除外) /  禁反言 /  特許発明 /  実施 /  構成要件 /  正当な理由 /  差止請求(差止) /  侵害 /  設定登録 /  審理範囲 /  訂正審判 /  誤記の訂正 /  請求の範囲 /  拡張 /  変更 /  釈明 /  特許無効審決 /  審決確定(審決が確定) /  異議申立 / 
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事件 平成 13年 (行ケ) 589号 審決取消請求事件
原告 ミック電子工業株式会社
訴訟代理人弁護士 及川昭二
被告 アルプス電気株式会社
訴訟代理人弁護士 飯田秀郷,栗宇一樹,早稲本和徳,七字賢彦,鈴木英之
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 2003/02/20
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
主文 原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
原告の求めた裁判
特許庁が無効2001-35163号事件について平成13年11月20日にした審決を取り消す。
事案の概要
本件は,後記本件特許権者である原告が審決により後記本件発明についての特許を無効とされたため,当該審決の取消を求めた事案である。
1 前提となる事実等 (1) 本件訴訟までの経緯ないし背景事情等 (1-1) 原告は,名称を「センサースイッチ」とする特許第1730090号(本件特許)の特許権者である。本件特許は,当初,昭和57年5月22日に実用新案登録出願されたものが(実願昭57-75500号),昭和58年2月19日に特許出願に変更され(特願昭58-26594号,出願日は前記実用新案登録出願日が基準となる。),平成2年6月8日に出願公告がされた(特公平2-26330号)。
出願公告時(後記の公告後補正前)の特許請求の範囲1は, 「絶縁基台に接点ばね片を略平行して 埋設し,両接点ばね片の接点を一定間隔を隔てて相対したリーフスイッチにおいて,一側面に設定幅の案内面を有するガイド兼カバー若しくはガイド片のガイド部材を,一方の接点ばね片に連結手段を介して連係設置し,該ガイド部材に対して一定の方向性をもって接触してくる対象体を,上記案内面が該接点ばね片を反曲させつつ首振り運動して滑り案内するように設け,他方の接点ばね片の一部に検出突部を設けて,該検出突部の先端を上記案内面より外方に設定寸法突出せしめて設け,上記ガイド部材の案内面に接触した対象体の定位置の変形部の有,無により,検出突部が対象体の接触部に押されて接点ばね片を反曲させつつ後退して,該反曲動作によって接点相互を接触(閉)せしめ,或は,検出突部が案内面から突立したままの原位置を保つ,即ち,接点も離間(開)位置を保つようにして,対象体の変形部の有,無を自動的に検出して作動するようにしたことを特徴とする,センサースイッチ。」というものであった(乙6。なお,下線は当裁判所が付したものである。)。
(1-2) 平成2年9月12日,特許異議の申立てがされ,その理由は,上記発明は,上記出願の前に出願され,上記出願後に公開された実願昭56-167117号,乙2-2,3)の明細書又は図面に記載された考案(本件先願考案)と同一であるというものであった(乙5-1,2)。
(1-3) これに対し,原告は,平成3年5月13日,公告後補正をした。
公告後補正後(後記の本件訂正前)の特許請求の範囲1(以下,この発明を「訂正前発明」という。)は, 「絶縁基台に接点ばね片を上下に略平行 して 埋設し,両接点ばね片の接点を一定間隔を隔てて相対したノーマルオープン型リーフスイッチにおいて,検出突部の前方から上方に設定幅の案内面を形成するガイド兼カバー若しくはガイド片等のガイド部材を,下の接点ばね片に連結手段を介して連係設置し,該ガイド部材に対して一定の方向性をもって接触してくる対象体を,上記案内面が該接点ばね片を反曲させつつ首振り運動して滑り案内するように設け,上の接点ばね片の一部に検出突部を設けて,該検出突部の先端を上記案内面より外方に設定寸法突出せしめて設け,上記ガイド部材の案内面に接触した対象体の定位置の変形部の有,無により,検出突部が対象体の接触部に押されて接点ばね片を反曲させつつ後退して,該反曲動作によって接点相互を接触(閉)せしめ,或は,検出突部が案内面から突立したままの原位置を保つ,即ち,接点も離間(開)位置を保つようにして,対象体の変形部の有,無を自動的に検出して作動するようにしたことを特徴とする,センサースイッチ。」というものとなった(乙6,最終頁。なお,下線は当裁判所が付したものである。)。
そして,原告は,平成3年7月24日付け特許異議答弁書において, 「申立人は,……両者に全く相違点がないかのように記述していますが,本願が「絶縁基台に接点ばね片を略平行して埋設し」ているのは,上の接点ばね片(可動側)と下の接点ばね片(固定側)を上下位置に相対して平行設置しているのであって,甲号証(判決注:乙5-2,3によれば,本件先願考案に係るマイクロフィルムであると認める。)のようにホルダ29に第1リード片21,第2リード片22を水平並列位置に平行設置しているのと全く相違しています。本願は上下平行であるため,接点を一定間隔を隔てて相対していますが,甲号証は水平並列であるため,そのままでは接点部23,24は接触できないので,わざわざ接点部23,24を第1,第2リード片21,22の先端に突出形成して,該突出部を重合接触(常時)する構成としており,両者のリーフスイッチとしての基本構成は全く相違しています。」と主張した(乙5-3の4頁〜5頁)。
(1-4) 本件特許は,平成5年1月29日,特許番号第1730090号として,設定登録された。
(1-5) 原告は,被告に対し,被告が製造販売する検出スイッチが本件特許権を侵害するものであると主張して,平成10年に侵害差止等を求める訴えを提起したが(東京地裁平成10年(ワ)第17311号事件),東京地裁は,平成12年5月30日,原告の上記請求を棄却する判決を言い渡した。
(1-6) 原告は,平成12年10月26日,訂正審判の請求をした(訂正2000-39127号,乙7)。そして,平成13年1月10日,特許庁により,訂正を認める旨の審決がされ(本件訂正審決,乙8),同月29日確定した(本件訂正)。
本件訂正後の特許請求の範囲1(以下,この発明を「訂正後発明」という。)は, 「絶縁台に接点ばね片を略平行して 埋設し,両接点ばね片の接点を一定間隔を隔てて相対したノーマルオープン型リーフスイッチにおいて,検出突部の前方から上方に設定幅の案内面を形成するガイド兼カバー若しくはガイド片等のガイド部材を,一方の接点ばね片に連係手段を介して連係設置し,該ガイド部材に対して一定の方向性をもって接触してくる対象体を,上記案内面が該接点ばね片を反曲させつつ首振り運動して滑り案内するように設け,他方の接点ばね片の一部に検出突部を設けて,該検出突部の先端を上記案内面より外方に設定寸法突出せしめて設け,上記ガイド部材の案内面に接触した対象体の定位置の変形部の有,無により,検出突部が対象体の接触部に押されて接点ばね片を反曲させつつ後退して,該反曲動作によって接点相互を接触(閉)せしめ,或は,検出突部が案内面から突立したままの原位置を保つ,即ち,接点も離間(開)位置を保つようにして,対象体の変形部の有,無を自動的に検出して作動するようにしたことを特徴とする,センサースイッチ。」となった(乙8。なお,下線は当裁判所が付したものである。)。
(1-7) 前記訴訟の控訴審(東京高裁平成12年(ネ)第3411号事件)において,東京高裁は,平成13年10月25日,控訴を棄却することなどの判決を言い渡した(乙3)。判決の中で,本件訂正が本件発明の特許請求の範囲拡張するものであり,本件特許権が無効とされるべきものであることが判示された(乙3)。
原告からの上告及び上告受理の申立てに対し,最高裁は,平成14年4月25日,上告を棄却すること,及び上告審として受理しないことの決定をした(乙4)。
(1-8) 被告は,前記控訴審の係属中で,本件訂正後である平成13年4月16日に,本件無効審判請求をした(無効2001-35163号,乙1)。特許庁は,上記控訴審判決後である平成13年11月20日に「特許第1730090号の請求項1に係る発明についての特許を無効とする。」旨の本件審決をし(甲1),審決謄本は,平成13年12月3日,原告に対して送達された。
(2) 本件発明の要旨 本件訂正後の特許請求の範囲1(訂正後発明)は前記(1-6)に,本件訂正前の特許請求の範囲1(訂正前発明)は前記(1-3)に,それぞれ記載されたとおりである。
(3) 審決の理由 本件審決の理由は,【別紙1】の「審決の理由」に記載のとおりである。要するに,本件訂正によって,絶縁基台に埋設される接点ばね片の構成を「上下に略平行して」(反曲動作方向に略平行して)と規定されていたものを,単に「略平行して」にすると訂正したことにより,訂正後の請求項1の記載に基づく技術的範囲には,反曲動作方向に略平行して絶縁基台に埋設されている接点ばね片の構成の他に,反曲動作方向から見て左右に略平行して絶縁基台に埋設されている接点ばね片の構成をも包含することになると考えられる以上,本件訂正は本件発明の特許請求の範囲拡張するものであったと言わざるをえず,本件特許は,願書に添付した明細書の訂正が平成6年改正前の特許法126条2項の規定に違反してなされたものであり,平成5年改正特許法123条1項7号に該当し,無効とすべきものである,というものである。
2 原告の主張(審決取消事由) 【別紙2】(平成14年5月14日付け原告準備書面(第2回)の2頁以下)に記載されたとおりである。
3 被告の主張 【別紙3】(平成14年6月21日付け被告準備書面(1)の第2項以下)に記載されたとおりである。
当裁判所の判断
1 原告が審決取消事由として主張するところは,要するに,「絶縁基台に埋設される接点ばね片の構成を「上下に略平行して」(反曲動作方向に略平行して)と規定されていたものを,単に「略平行して」にするとした本件訂正により,訂正後の請求項1の記載に基づく構成として,反曲動作方向に略平行して絶縁基台に埋設されている接点ばね片の構成の他に,反曲動作方向から見て左右に略平行して絶縁基台に埋設されている接点ばね片の構成をも包含することになるから,本件訂正は,本件発明の特許請求の範囲拡張するものであった。」旨の審決の判断は,誤りであるというものである。
2 本件訂正前の特許請求の範囲1に記載の発明(訂正前発明)について (1) 訂正前発明における「上下に」との意義について検討する。
(1-1) 本件特許の公告公報及び公告後補正掲載の公報(以下,両公報を一体として「訂正前明細書」という。乙6)のうち,訂正前発明の特許請求の範囲の記載(乙6最終頁,公告後補正掲載の公報)によれば,「絶縁基台に接点ばね片を上下に略平行 して 埋設し」は,2つの接点ばね片の埋設構造を示すものである。したがって,埋設する際のそれらの配列方向が,発明の構成要件となり得る事項であることは,明らかである。
(1-2) そこで,訂正前の特許請求の範囲1の記載(前記)をみると,@絶縁基台に接点ばね片を上下に略平行して埋設すること,A検出突部の前方から上方に設定幅の案内面を形成するガイド兼カバー若しくはガイド片等のガイド部材を,Aa下の接点ばね片に連結手段を介して連係設置し,Ab該ガイド部材に対して…接触してくる対象体を,上記案内面が該接点ばね片を反曲させつつ首振り運動して滑り案内するように設けること,B上の接点ばね片の一部に検出突部を設けて,該検出突部の先端を上記案内面より外方に設定寸法突出せしめて設けること,C…検出突部が対象体の接触部に押されて接点ばね片を反曲させつつ後退して,該反曲動作によって接点相互を接触(閉)せしめ,或は,検出突部が案内面から突立したままの原位置を保つ…こと,などを理解し得る。これらの記載は,センサースイッチという立体において上下という基準から接点ばね片の配列ないし位置関係を特定するもので,一義的かつ明確に理解し得るものである。
そして,上記記載によれば,2つの接点ばね片は,絶縁基台に埋設された端部を起点として,下方に反曲動作をし,上方に戻る動作をすることが認められ,接点ばね片を「上下に」略平行して埋設する(設置する)というのは,接点ばね片を「反曲動作方向及び元に戻る方向に」略平行して埋設する(設置する)ということにほかならないことが認められる。
そうすると,訂正前の特許請求の範囲1の記載に照らし,審決の「訂正前の請求項1の記載から,「前方から上方に設定幅の案内面を形成するガイド兼カバー若しくはガイド片等のガイド部」が対象体の接触によって「案内面が接点ばね片を反曲させつつ首振り運動して滑り案内する」ことになるため,前方から上方に形成された案内面が対象体によって押圧されて接点ばね片を押圧する方向,即ち,下方向とこれによって接点ばね片が反曲動作する方向は同一であることは明らかであり,「上下」,「下」及び「上」なる用語は,接点ばね片の反曲動作方向をも同時に示すものであると認められる。」との説示は,是認し得るものというべきである。
(2) 念のため,訂正前明細書の「発明の詳細な説明」欄及び図面(乙6)をみるに,4つの実施例が図面とともに開示されている。第1図は,実施例1に関するものであり,(イ)が正面図,(ロ)が平面図,(ハ)が底面図である。また,第5図は,実施例2に関するもので,(イ)が正面図,(ロ)が平面図,(ハ)が底面図であり,同様に第6図は,実施例3に関するもので,(イ)が正面図,(ロ)が平面図,(ハ)が底面図である。なお,第7図は,実施例4に関するもので正面図のみであるが,実施例1ないし3と同様の方針で作成されていることがうかがわれる。
このように,立体であるセンサースイッチを正面図,平面図,底面図により表すことにより,姿勢が特定されることになる。そして,製図法によれば,平面図は,立体を真上から見た図,底面図は,立体を真下から見た図であるから,その正面図においては,図面上の上端方向及び下端方向が,立体における「上下」に当たるものと認められる(なお,第2図,第4図は,本件発明の構成を示すものではない。
第3図は,センサースイッチを設置したメカ機枠にカセットを装填した状態を示す「説明図」であり,実施例の構成を示す正面図,平面図等とは異なるものであり,第3図の存在が上記認定の妨げとなるものではない。)。
そこで,上記第1図,第5図ないし第7図及びその説明等をみると,各正面図において,絶縁基台1に埋設された接点ばね片A,Bが図面の上下方向に平行に記載されていること,各平面図(もっとも第4実施例には平面図は存在しない。)において,接点ばね片A,Bは,重なるように記載されていることが認められる。そうすると,訂正前明細書の記載は,第1図,第5図ないし第7図によって特定されるセンサースイッチの姿勢を前提として,接点ばね片A,Bは,「上下」に「略平行して」配列されるものであると認めることができる。
以上のとおり,前記特許請求の範囲1の記載に関する解釈は,訂正前明細書の「発明の詳細な説明」欄及び図面の記載とも整合するものであり,何らの矛盾もない。
(3) さらに,公告後補正がされた経緯をみれば,訂正前明細書を上記のように解するのが相当であることがより一層明白となる。
すなわち,本件発明の出願公告後に前記のように異議申立てがされ,先願考案と同一であるとの理由が主張された。
先願考案の明細書(乙2-2,3)によれば,平面図,底面図,側面図,正面図が記載されており,これにより姿勢が特定されるところ,2つのリード片(ばね片に相当)は,上下に反曲するように記載されていること,2つのリード片(ばね片)は,「押上げられる方向及び元に戻る方向」(反曲動作方向及び元に戻る方向に相当)に垂直な面内において平行に配列する構成であることが認められる。
異議に対応して,原告は,特許請求の範囲1につき,「略平行して」を「上下に略平行して」と加え,これに整合させて「一方」「他方」を「下の」「上の」に補正し,「リーフスイッチ」を「ノーマルオープン型リーフスイッチ」に補正した(先願考案は,ノーマルクローズ型リーフスイッチであった。)。そして,原告は,平成3年7月24日付け特許異議答弁書において,「申立人は,……両者に全く相違点がないかのように記述していますが,本願が「絶縁基台に接点ばね片を略平行して埋設し」ているのは,上の接点ばね片(可動側)と下の接点ばね片(固定側)を上下位置に相対して平行設置しているのであって,甲号証(判決注:乙5-2,3によれば,前記実開昭58-72735号のマイクロフィルムであると認める。)のようにホルダ29に第1リード片21,第2リード片22を水平並列位置に平行設置しているのと全く相違しています。本願は上下平行であるため,接点を一定間隔を隔てて相対していますが,甲号証は水平並列であるため,そのままでは接点部23,24は接触できないので,わざわざ接点部23,24を第1,第2リード片21,22の先端に突出形成して,該突出部を重合接触(常時)する構成としており,両者のリーフスイッチとしての基本構成は全く相違しています。」と主張した(乙5-3の4頁〜5頁)。
(4) 以上のとおり,審決が,上記の公告後補正の経緯を検討し,訂正前明細書の特許請求の範囲1の記載から,「上下」,「下」及び「上」なる用語が,接点ばね片の反曲動作方向をも同時に示すものであると認められると説示した点は,相当であって,是認し得るものである。
3 本件訂正後の特許請求の範囲1に記載の発明(訂正後発明)について 訂正後発明の明細書(乙7に添付の明細書)によれば,訂正後発明においても,「接点ばね片の反曲動作方向及び元に戻る方向」の意味するところを,前記訂正前発明に関する判示と同様に認めることができる。
そして,訂正後発明の「絶縁基台に接点ばね片を略平行して 埋設し」は,平行に配列する方向につき何の限定もないから,上記「接点ばね片の反曲動作方向及び元に戻る方向」に平行に配列することに加え,「接点ばね片の反曲動作方向及び元に戻る方向」に垂直な面内において平行に配列することをも含むことになることが明らかである。
なお,審決は,このような後者の配列を「反曲動作方向から見て左右に略平行して絶縁基台に埋設されている接点ばね片の構成」と称したものであるが,上記と同旨であるものと認められる。
4 以上によれば,訂正後発明は,訂正前発明の特許請求の範囲拡張したものであることは明らかである。これと同旨の審決の判断に誤りはない。
5 以下,原告の個別具体的な主張についても検討しておく。
(1) 原告は,訂正前発明の「上下に」は,前提となる方向の記載を欠くので不明瞭,不適切な記載であり(したがって,訂正前発明の構成要件ではない),発明の構成要件ではない不明瞭,不適切な記載を削除することは特許請求の範囲拡張するものではない旨主張する。
しかし,前記2で説示したように,特許請求の範囲の記載により,センサースイッチという立体において上下という基準から接点ばね片の配列ないし位置関係を特定し得るものであり,接点ばね片A,Bは,「上下」に「略平行して」配列されるものであることを一義的に確定し得ることが認められる。したがって,「上下に」との用語が不明瞭であるとはいえず,他により適切な表現があるとはいえるものの,削除すべきほどに不適切であるとも断じ難い。したがって,「上下に」は訂正前発明の構成要件として考慮することができ,また考慮しなければならない事項であって,原告の上記主張は,採用することができない。
(2) 原告は,実施例1(正面図)は訂正前発明の「上下に」に該当するものの,スイッチを上向きに設置した実施例2(第3図)は,接点ばね片の配列方向は「左右に」であり,また,接点ばね片の反曲動作方向(及び元に戻る方法)は「左」(「右」)であるから,訂正前発明の「上下に」に対応しないので,「上下に」は不明瞭,不適当な記載であると主張する。
しかし,そもそも,実施例2は第3図によって示されるものではないので(乙6の8欄25行目),原告の主張は,前提において誤っている(なお,実施例2は,第5図によって示されるが,その内容は前判示のとおりである。また,第3図は,スイッチを設置したメカ機枠にカセットを装填した状態を説明するための説明図であり(同10欄27行目),前記実施例1ないし4を示す第1図,第5図ないし第7図とは性質の異なる図面であって,説明図に記載されたスイッチの姿勢のみが異なるからといって,直ちに前記認定を覆すに足りるものとはいえない。)。
(3) 原告は,訂正前発明は「特許請求の範囲」に「上下に」を追加するだけで,発明の詳細な説明及び図面には「上下に」を追加しておらず,訂正前明細書は整合性を欠いているので,「上下に」は不明瞭,不適当な記載であると主張する。
しかし,訂正前明細書の特許請求の範囲1の解釈は前記のとおりであって,実施例に係る第1図,第5図ないし第7図の記載もこれと矛盾するものではない。これらの「上下に」についての解釈が整合性を欠くものではない。
(4) 原告は,訂正前明細書中に記載がない反曲動作方向等の文言を用いて「上下に」の意義を解釈することは不当である旨主張する。
しかし,訂正前明細書において,反曲動作方向等という文言そのものの記載がないとしても,前記2で説示したように,同明細書の記載から容易に前記のように認めることができるのであって,これを不当ということはできない。
(5) 原告は,補正の経緯を考慮することは適切ではないこと,また,補正の経緯は訂正審判の審理で既に考慮したはずであり,本件審決で再度考慮するのは不当であることなどを主張する。
本件では,訂正前発明の内容を確定する必要があり,その過程で本件の公告後補正の経緯を事情として考慮することを不適切であるとすべき理由はない。また,訂正審決で考慮されたとしても,その後に考慮することが禁じられるものとも解されない。よって,原告の主張は採用することができない(もっとも,本件においては,前記説示から明らかなように,補正の経緯の考慮は,訂正前発明の特許請求の範囲を解釈するに際しての裏付けにとどまる。)。
(6) 原告は,先願明細書に「左右に」平行して配列する記載はない旨主張する。
前記2で説示したように,先願考案の2つのリード片(ばね片)は,「押上げられる方向及び元に戻る方向」(反曲動作方向及び元に戻る方向に相当)に垂直な面内において平行に配列する構成であることが認められる。原告指摘の審決の説示部分も同旨をいうものと認められる。ただ,「反曲動作方向から見て左右に略平行」の「左右」との表現は,乙2-3の第6図,第8図の各正面図によるものと推測され,必ずしも適切ではないが,この点が結論を覆すに足りるものとは認められない。
(7) 原告は,リーフスイッチでは,接点ばね片の配列方向は作用効果上さほど重要な事項ではないので(接点の相対構成が重要である),訂正前発明の「上下に略平行して」が「左右に略平行して」の構成を包含していたことは明らかであり,訂正前発明の「上下に」を削除したとしても,拡張には当たらない旨主張する。
しかし,接点ばねの配列方向も,接点の相対構成と並び,スイッチの主要な構成要件であるというべきであって,原告の主張は採用の限りではない。
(8) その他,【別紙2】記載の原告の主張を精査しても,審決を違法として取り消すべき事由があることを認めることはできない。
6 結論 以上のとおり,原告主張の審決取消事由は理由がないので,原告の請求は棄却されるべきである。
追加
【別紙1】審決の理由無効2001-35163号事件,平成13年11月20日付け審決(下記は,上記審決の理由部分について,文書の書式を変更したが,用字用語の点を含め,その内容をそのまま掲載したものである。)理由1.手続の経緯本件特許第1730090号に係る発明についての出願は、昭和57年5月22日に出願された実願昭57-75500号を昭和58年2月19日に特願昭58-26594号に出願変更し、平成2年6月8日に出願公告(特公平2-26330号)され、平成5年1月29日にその発明について特許権の設定登録がなされ、その後、平成12年10月26日に本件特許に対し訂正審判請求(訂正2000-39127号)がなされ、平成13年1月29日に訂正を容認する審決が確定したものである。
2.請求人の主張これに対して、請求人は、本件発明の特許を無効とする、との審決を求め、その理由として、訂正2000-39127号審判事件による訂正前の特許請求の範囲に基づく技術的範囲には、別紙対象目録(添付を省略)記載のスイッチは包含されないものであるところ、訂正後の特許請求の範囲に基づく技術的範囲に、別紙対象目録記載のスイッチは包含されると被請求人は東京高等裁判所において主張しており、かかる主張を許容する可能性を生み出す本件特許請求の範囲の記載は、平成6年改正前の特許法126条第2項に違反し、平成5年改正特許法123条1項7号の規定により無効である(以下、「無効理由1」という。)、本件特許発明の要旨とするセンサースイッチは、本件特許発明の出願日前に出願され、本件特許発明の出願後に出願公開された実願昭56-167117号(実開昭58-72735号、以下甲第2号証という)の願書に最初に添付された明細書(実開昭58-72735号のマイクロフィルム、以下甲第3号証という)に記載された考案と同一であり、本件特許発明は、特許法第29条の2、平成5年改正特許法123条1項2号の規定により無効である(以下、「無効理由2」という。)と主張し、証拠方法として、甲第1号証「東京地方裁判所平成10年(ワ)第17311号特許権侵害差止等請求事件判決書」乃至甲第3号証を提出している。
3.被請求人の主張被請求人は、平成13年7月11日付けの答弁書において、無効理由1に対し、
訂正審判請求事件の審決による訂正は、不明瞭な記載の釈明に相当し、また、実質上特許請求の範囲拡張していないので、訂正2000-39127号の審決は正しい旨、また、無効理由2に対し、本件特許発明は甲第3号証に記載された考案と同一ではなく、従って、平成5年改正特許法第123条第1項第2号の規定に違反していない旨、主張している。
4.無効理由1についてそこでまず、上記無効理由1について検討する。
(1)訂正2000-39127号審判請求における訂正の内容上記訂正審判請求において、特許権者が求めた訂正の内容は、以下のとおりであった。
a.特許請求の範囲の請求項1の中の「絶縁基台に接点ばね片を上下に略平行して埋設」の「上下に」とあるを削除する。
b.特許請求の範囲の請求項1の中の「ガイド部材を、下の接点ばね片に」の「下」とあるを「一方」に訂正する。
c.特許請求の範囲の請求項1の中の「上の接点ばね片の一部に検出突部」の「上」とあるを「他方」に訂正する。
d.特許請求の範囲の請求項1の中の「連結手段」を「連係手段」に訂正する。
e.特許請求の範囲の請求項2を削除する。
上記の訂正を容認する審決により、特許請求の範囲は、請求項1の「絶緑基台に接点ばね片を上下に略平行して埋設し、両接点ばね片の接点を一定間隔を隔てて相対したノーマルオープン型リーフスイッチにおいて、
検出突部の前方から上方に設定幅の案内面を形成するガイド兼カバー若しくはガイド片等のガイド部材を、下の接点ばね片に連結手段を介して連係設置し、
該ガイド部材に対して一定の方向性をもって接触してくる対象体を、上記案内面が該接点ばね片を反曲させつつ首振り運動して滑り案内するように設け、
上の接点ばね片の一部に検出突部を設けて、該検出突部の先端を上記案内面より外方に設定寸法突出せしめて設け、
上記ガイド部材の案内面に接触した対象体の定位置の変形部の有、無により、検出突部が対象体の接触部に押されて接点ばね片を反曲させつつ後退して、該反曲動作によって接点相互を接触(閉)せしめ、或は、検出突部が案内面から突立したままの原位置を保つ、即ち、接点も離間(開)位置を保つようにして、対象体の変形部の有、無を自動的に検出して作動するようにしたことを特徴とする、センサースイッチ。」が、
「絶緑基台に接点ばね片を略平行して埋設し、両接点ばね片の接点を一定間隔を隔てて相対したノーマルオープン型リーフスイッチにおいて、
検出突部の前方から上方に設定幅の案内面を形成するガイド兼カバー若しくはガイド片等のガイド部材を、一方の接点ばね片に連係手段を介して連係設置し、
該ガイド部材に対して一定の方向性をもって接触してくる対象体を、上記案内面が該接点ばね片を反曲させつつ首振り運動して滑り案内するように設け、
他方の接点ばね片の一部に検出突部を設けて、該検出突部の先端を上記案内面より外方に設定寸法突出せしめて設け、
上記ガイド部材の案内面に接触した対象体の定位置の変形部の有、無により、検出突部が対象体の接触部に押されて接点ばね片を反曲させつつ後退して、該反曲動作によって接点相互を接触(閉)せしめ、或は、検出突部が案内面から突立したままの原位置を保つ、即ち、接点も離間(開)位置を保つようにして、対象体の変形部の有、無を自動的に検出して作動するようにしたことを特徴とする、センサースイッチ。」となった。
(2)訂正の可否に対する判断訂正2000-39127号審判請求の審決は、『訂正前の特許請求の範囲の請求項1において、「上下に」、「下」、「上」の語句は、何れも、2本の接点ばね片(A、B)の説明を、本件特許発明スイッチを全て横向きに表わした実施例図面に従ったものであり、単に図面との統一を図ったものと解される。しかしながら、
本件特許発明スイッチは明細書記載の如く各種電子機器のメカ部分等に設置して使用するものであるが、それらに使用されている設置状態は実施例図面の状態の他に、上向き、下向き、同じ横向きでも右向き、左向き、前向き、後向き、或は斜め方向その他全く自由自在であり、同じスイッチであっても設置位置、姿勢が変るたびに接点ばね片A、Bの位置関係も様々に変化することになるのは明らかである。
そうすると、2本の接点ばね片(A、B)の位置関係を「上下」、「上」あるいは「下」で表わすことは、2本の接点ばね片を単純に図面上の位置関係だけで捉えた例を示したにすぎず、両接点ばね片の各々をスイッチ全体の構成、作用、効果等を説明する上で明確に区別する用語としては不明瞭、不適切なものと認められる。』との理由により、上記a.乃至c.の訂正事項は、何れも明りょうでない記載の釈明に相当するものであるとし、さらに、『「上下に」という記載は、上述したように不明瞭な記載であり、構成上格別の意味を有していないものであるから、かかる記載を削除したとしても、本件特許発明スイッチの構成を把握する上で何等の影響を与えるものではなく、・・・極めてコンパクトで性能優秀なセンサースイッチの提供という課題に変更を及ぼすものでもないから、これらの訂正は実質上特許請求の範囲拡張し又は変更するものではない。』とする判断の下に訂正を容認したものである。
しかしながら、本件発明に係る出願公告後の異議申立ての審査時に、異議の証拠として提出された実開昭58-72735号公報に係る先願明細書に記載された考案(反曲動作方向から見て左右に略平行して絶縁基台に埋設されている接点ばね片の構成を有するセンサースイッチ)との同一性を回避するために公告後補正がなされ、その結果、本件発明の特許請求の範囲に「上下」、「下」及び「上」との要件が記載されることになった経緯を考慮すれば、訂正前の請求項1に記載された「絶縁基台に接点ばね片を上下に略平行して埋設し」における「上下に略平行して」とは、接点ばね片が反曲動作する方向を「下」とし、反曲動作した接点ばね片が元に戻る動作方向を「上」として、「上下」を規定したものであり、これにより、絶縁基台に略平行に埋設される接点ばね片の構成を、接点ばね片の反曲動作方向、即ち、上下に配置するとの構成を規定したものであることが明らかである。
さらに、訂正前の請求項1の記載から、「前方から上方に設定幅の案内面を形成するガイド兼カバー若しくはガイド片等のガイド部」が対象体の接触によって「案内面が接点ばね片を反曲させつつ首振り運動して滑り案内する」ことになるため、
前方から上方に形成された案内面が対象体によって押圧されて接点ばね片を押圧する方向、即ち、下方向とこれによって接点ばね片が反曲動作する方向は同一であることは明らかであり、「上下」、「下」及び「上」なる用語は、接点ばね片の反曲動作方向をも同時に示すものであると認められる。
そうすると、絶縁基台に埋設される接点ばね片の構成を「上下に略平行して」(反曲動作方向に略平行して)と規定されていたものを、単に「略平行して」にすると訂正したことにより、訂正後の請求項1の記載に基づく技術的範囲には、反曲動作方向に略平行して絶縁基台に埋設されている接点ばね片の構成の他に、反曲動作方向から見て左右に略平行して絶縁基台に埋設されている接点ばね片の構成をも包含することになると考えられる以上、上記訂正は本件発明の特許請求の範囲拡張するものであったと言わざるをえない。
5.むすびしたがって、上記無効理由2について検討するまでもなく、本件特許は、願書に添付した明細書の訂正が、平成6年改正前の特許法第126条第2項の規定に違反してなされたものであり、平成5年改正特許法第123条第1項第7号に該当し、
無効とすべきものである。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
平成13年11月20日【別紙2】平成14年5月14日付け原告準備書面(第2回)の要点(下記は,上記準備書面の2頁以下について,文書の書式は変更したが,用字用語及び誤記の点も含め,その内容をそのまま掲載したものである。なお,別紙図面の添付は省略した。)原審決は下記の通り判断の誤りが明白であり遺法不当であるから取消しを求める。
第1.原審決の「(2)訂正の可否に対する判断」のうち、第4頁第37行〜第5頁第25行に記載の判断は、誤っている。念の為これを摘記すると次の通りである。
1.[判断1]第4頁第37行〜第5頁第9行の記載部分「しかしながら、本件発明に係る出願公告後の異議申立ての審査時に、異議の証拠として提出された実開昭58-72735号公報に係る先願明細書に記載された考案(反曲動作方向から見て左右に略平行して絶縁基台に埋設されている接点ばね片の構成を有するセンサースイッチ)との同一性を回避するために公告後補正がなされ、その結果、本件発明の特許請求の範囲に「上下」、「下」及び「上」との要件が記載されることになった経緯を考慮すれば、訂正前の請求項1に記載された「絶縁基台に接点ばね片を上下に略平行して埋設し」における「上下に略平行して」とは、接点ばね片が反曲動作する方向を「下」とし、反曲動作した接点ばね片が元に戻る動作方向を、「上」として、「上下」を規定したものであり、これにより、絶縁基台に略平行に埋設される接点ばね片の構成を、接点ばね片の反曲動作方向、即ち、上下に配置するとの構成を規定したものであることが明らかである。」2.[判断2]第5頁第10行〜第17行の記載部分「さらに、訂正前の請求項1の記載から、「前方から上方に設定幅の案内面を形成するガイド兼カバー若しくはガイド片等のガイド部」が対象体の接触によって「案内面が接点ばね片を反曲させつつ首振り運動して滑り案内する」ことになるため、前方から上方に形成された案内面が対象体によって押圧されて接点ばね片を押圧する方向、即ち、下方向とこれによって接点ばね片が反曲動作する方向は同一であることは明らかであり、「上下」、「下」及び「上」なる単語は、接点ばね片の反曲動作方向をも同時に示すものであると認められる。」3.[判断3]第5頁第18行〜第25行の記載部分「そうすると、絶縁基台に埋設される接点ばね片の構成を「上下に略平行して」(反曲動作方向に略平行して)と規定されていたものを、単に「略平行して」にすると訂正したことにより、訂正後の請求項1の記載に基づく技術的範囲には、反曲動作方向に略平行して絶縁基台に埋設されている接点ばね片の構成の他に、反曲動作方向から見て左右に略平行して絶縁基台に埋設されている接点ばね片の構成をも包含することになると考えられる以上、上記訂正は本件発明の特許請求の範囲拡張するものであったと言わざるをえない。」上記各判断の誤りについての理由を次の第2の通り開陳する。
第2.[判断1]の誤れる理由(その1)1.「上下に」の文言が不明瞭な記載であること、また訂正審決が正当であること、よって本件特許無効審決の判断について審理不尽による致命的な欠陥のあることを主張する。
2.本件問題検討の全てのカギは「上下に」たった3文字からなる文言に存する。しかるに原審決はこの「上下に」が出願の経緯で追加された「規定」した要件である断定した。原告はこの「上下に」は単なる不明瞭な記載に過ぎず、よって不明瞭な記載が要件で有り得ない、と主張する。
原審決が、本件発明の規定した要件であるとする「上下に」と対比して、原審決が本件先願考案(原審甲第3号証の考案)の規定した要件であるとする「左右に」の文言は、本件先願考案の明細書中には全く記載がなく、被告が本件特許権侵害差止請求等訴訟の反論主張において初めて用いた文言であって、何ら技術的根拠に基づく文言でなく、後記のように本件発明の「上下に」と同じく不明瞭な記載であり、原審決が「上下に」と「左右に」を両者(本件発明と本件先願考案)の構成要件の相違を対比判断するための基礎としていること自体が後記の通り重大なミスであり、この点だけでも原審決は取消されるべきものであることが明白である。
3.原審決は、本件先願考案が「異議の証拠として提出された実願昭58-72735号公報に係る先願明細書に記載された考案(反曲動作方向から見て左右に略平行して絶縁基台に埋設されている接点ばね片の構成を有するセンサースイッチ)」(審決第4頁第37行〜第5頁第1行)であるのに対して、
訂正前本件発明は『訂正前の請求項1に記載された「絶縁基台に接点ばね片を上下に略平行して埋設し」におおける「上下に略平行して」とは、接点ばね片が反曲動作する方向を「下」とし、反曲動作した接点ばね片が元に戻る方向を「上」として、「上下に」を規定したものであり、これにより、絶縁基台に略平行に埋設される接点ばね片の構成を、接点ばね片の反曲動作方向、即ち、上下に配置するとの構成を規定したものであることが明らかである。』(審決第4頁第37行〜第5頁第1行)(上記別件高裁判決と一語一句同一。)と記載しており、
即ち、訂正前本件発明は「反曲動作方向から見て上下に略平行して絶縁基台に埋設されている接点ばね片の構成を有するセンサースイッチ」であるとして、両者の構成要件の相違は「上下に」と「左右に」の相違に有ると断定している。
なお、原審決の上記「反曲動作する方向」、「反曲動作方向」、「反曲動作した接点ばね片が元に戻る方向」等の文言は全て原告でなく被告及び原審決等が初めて創作使用した文言であって、「左右に」と同じく本件発明及び本件先願考案の明細書等中に全く記載がない文言である。従って、これらの文言の使用、解釈に当たっては上記事情を踏まえた上で慎重に行われるべきである。
4.本件で問題となっているのは、「上下に」という2つの物の位置関係を示す文言であり、本件発明ではそれは2枚略平行の接点ばね片の位置を示す文言として用いられているが、2枚略平行の接点ばね片をその位置関係から見た場合、本件明細書及び図面には、明らかに2つの実施例が示されている。
なお、本件発明の明細書にはスイッチの横向き設置、上向き設置等の設置の位置や方向等を規定する記載は全くない。
実施例1は、第1図、第5図、第6図、第7図に図示された実施例であり、実施例2は、第3図に図示された実施例である。
而して、「上下に」の文言が当て嵌まるのは明らかに実施例1の正面図イの場合だけであって、原審決はこの正面図イに表わされた構成についてだけ判断し、実施例の2を見落として全く判断しなかった誤りを犯している。
この点については、後記[判断1]の誤れる理由(その2)に於て詳記する。
5.本件先願考案スイッチは、本件発明スイッチと同一目的、同一用途で同一設置位置関係に設置される。
従って、本件発明と同一(例、横向き、縦向き-訂正審決の文言)姿勢で設置した状態で対比することが両者の比較検討上必須である。
そこで、本件発明と本件先願考案を同条件で並列図示(別紙図面(一))して対比し、これにつき説明する。
(1)両者を正面から見た場合(本件発明の正面図(イ)、本件先願考案の側面図(b))@本件発明は、原審決の言う、接点ばね片の反曲動作する方向を「下とし」、反曲動作した接点ばね片が元に戻る動作方向を「上として」、接点ばね片A,Bを「上下に」略平行して埋設している。
即ち、この状態が「接点ばね片が反曲動作する方向を下とし、反曲動作した接点ばね片が元に戻る方向を上として、上下に略平行して設置されている」に該当する。
Aそれに対して、本件先願考案は接点ばね片が反曲動作する方向を「上とし」、
反曲動作した接点ばね片が元に戻る動作方向を「下として」、「前後に」略平行して設置されており、絶対に「左右に」略平行してではない。
(なお、原審決が用いる「・・とし」、「・・として」の文言については後記[判断1]の誤れる理由(その3)6.「前提条件となる文言」を参照されたい。)(2)両者を上(平面)から見た場合(本件発明の正面図(ロ)、本件先願考案の平面図(a))。
@本件発明、本件先願考案の接点ばね片が反曲動作する方向を「上から見て」文言で表現するのは不能である。但し、「接点ばね片が反曲動作する方向を「下とし」(若しくは「上とし」)、反曲動作した接点ばね片が元に戻る動作方向を「上とし」(若しくは「下とし」)とは絶対に言えない。
Aまた、本件発明は接点ばね片が「上下に」略平行に埋設されている、であるか否かは不明であるが、但し本件先願考案の第1、第2リード21,22は絶対に「左右に」略平行に埋設されている、ではなく「上下に」略平行に埋設されている。
6.上記で明らかなように、本件先願考案には原審決が「反曲動作方向から見て左右に略平行して絶縁基台に埋設されている接点ばね片の構成を有するセンサースイッチ」に該当するとしている構成は全く見当らない。
即ち、本件発明は正面(実施例1の正面図イに該当)から見た場合だけ、接点ばね片が「上下に」略平行して埋設されていると言い得るが、本件先願考案の実施例図面と本件発明の実施例図面を同条件で対比した場合、本件先願考案の第1、第2リード21,22は絶対に「左右に」略平行して埋設されているとは言えない。
7.即ち、「上下に」が本件発明について原告が規定した要件であるとすれば、
「左右に」は本件先願考案について原審決が規定した要件である。ところが、上記の通り、同条件において本件先願考案に、原審決の言う「反曲動作方向から見て左右に略平行して設置されている」に該当する構成は全く見当らないのであるから、
原審決の判断は明らかに間違いである。
原審決が両者の構成につき誤った判断をした原因は、両者の構成を技術的に正確に対比する場合に必須である両者を同条件に置いて対比していないからである。
つまり、本件発明については実施例1の正面図(イ)に表れた構成の「上下に」としておきながら、それと対比する本件先願考案については、技術的根拠不明な文言である「左右に」という文言を全く不用意に用いて、両者を対比しようとしたこと自体が根本的な間違いであって、これでは特に位置関係の対比は全く不可能である。
なお、前記のように「左右に」の文言は被告が別件本件発明特許権侵害訴訟事件における主張において初めて創作使用したものであり、本件先願考案の明細書等出願書類中には全く存在しない文言である。
8.而して、上記の点は、原審決では、本件発明及び本件先願考案の構成要件として両者を対比している原点であり、原審決の判断の根幹をなすものであることからして、原審決の上記の間違いは正に致命的なものである。
9.以上のように、上記両者の構成を表わす実施例図(本件発明は実施例1だけ)を対比して検討しただけでも、特に原審決自らが上記のような単純な間違いを犯すことからみても、接点ばね片の位置関係を明確に区別し規定するためには「上下に」、「左右に」などの文言では規定不能であって、強いてそうしても不明瞭、
不適切な記載になってしまうことが明らかである。
(1)従って、「上下に」は訂正審決の通り、及び原告が原審、訂正審判等で主張した通り、実施例の1例における1場面(特定の方向から見た場合)だけを示しているだけで、他の場合を説明するには全く不明瞭、不適切な文言であることが明確に理解できる。
(2)本件発明の上記のように不明瞭な文言「上下に」と対比するのに、原審決のように本件先願考案の方も上記のように不明瞭な文言「左右に」を用いたのでは、
全く対比不可能であり、よって、上記の間違いだけでも原審決は取消されるべきものである。
なお、「上下に」が不明瞭な文言であることについては、後記[判断1]の否認理由(2)及び(3)においても詳述する。
第3.[判断1]の誤れる理由(その2)原審決は、「上下に」が不明瞭な記載であることの証拠である本件発明の第3図示実施例(実施例2)の判断を全く行わなかったこととしている。
1.原審決は、前記の通り、
「本件発明は、反曲動作方向から見て接点ばね片が反曲動作する方向を下とし、
反曲動作した接点ばね片が元に戻る方向を上として、上下に略平行すいて設置されていた」と断定している。
2.本件で問題となっているのは、「上下に」という2つの物の位置関係を示す文言であり、本件発明ではそれが2枚略平行の接点ばね片の位置関係を示す文言として用いられているが、2枚略平行の接点ばね片をその位置関係から見た場合、本件明細書及び図面には、明らかに2つの実施例が図示されている。なお、本件発明にはスイッチの横向き設置、上向き設置等の設置の位置や方向等を規定する記載は全く無い。
実施例1は、第1図、第5図、第6図、第7図に示された実施例であり、実施例2は、第3図に示された実施例である。
3.然るところ、原審決は明らかに実施例1についてだけ判断し、第3図に明記されている実施例2を見落として判断しなかった誤りを犯している。
該第3図(イ)、(口)は本発明スイッチを設置したメカ機枠に対象体(カセット)を装填した状態を示す説明図(図面の簡単な説明)であって、本発明スイッチを上向き設置した実施例である。
然して、この実施例2は原審決が規定した本件発明の構成要件には絶対に当て嵌まらない。
4.そこで、上記第3図の実施例2と本件先願考案の実施例を両者同条件に上向き設置の状態に図示(別紙図面(二))して対比すると、
(1)本件発明の場合は、どう見ても「接点ばね片が反曲動作する方向を左とし、
反曲動作した接点ばね片が元に戻る方向を右として、左右に略平行して埋設されている接点ばね片の構成を有するセンサースイッチ」であり、また、本件先願考案の場合は、「接点ばね片(第1、第2リード21,22)が反曲動作する方向を右とし、反曲動作したが接点ばね片が元に戻る方向を左として、前後に略平行して埋設されている接点ばね片の構成を有するセンサースイッチ」であって、
絶対に、原審決が規定した、本件発明が「接点ばね片が反曲動作する方向を下とし、反曲動作した接点ばね片が元に戻る方向を上として、上下に略平行して埋設されている接点ばね片の構成を有するセンサースイッチ」であるのに対し、本件先願考案は「接点ばね片(第1、第2リード21,22)が反曲動作する方向を下とし、反曲動作したが接点ばね片が元に戻る方向を上として、左右に略平行して埋設されている接点ばね片の構成を有するセンサースイッチ」ではない。
(2)つまり、本件発明の接点ばね片A,B、及び本件先願考案の第1、第2リード21,22の位置関係を「規定」するには、「上下に」、「左右に」の文言では、全く不明瞭、不適当であることが上記によって一目瞭然である。
5.即ち、原審決が審決第4頁第39行〜第5頁第1行において本件先願考案を『(反曲動作方向から見て左右に略平行して絶縁基台に埋設されている接点ばね片の構成を有するセンサースイッチ)』と規定したこと、及び同第5頁第4行〜第9行において本件発明を『訂正前の請求項1に記載された「絶縁基台に接点ばね片を上下に略平行して埋設し」における「上下に略平行して」とは、接点ばね片が反曲動作する方向を「下」とし、反曲動作した接点ばね片が元に戻る動作方向を、
「上」として、「上下」を規定したものであり、これにより、絶縁基台に略平行に埋設される接点ばね片の構成を、接点ばね片の反曲動作方向、即ち上下に配置するとの構成を規定したものであることが明らかである。』と、判断し規定したこと自体が間違っており、全く「規定」したことになっていないのである。
つまり、原審決は「上下に」が本件発明において如何なる技術的意義を有しているかの詳細な検討を怠り、また、「左右に」の文言を本件発明と本件先願考案を同条件の下で正確に技術的対比をすることなしに不用意に採択使用した為に上記のような単純な誤りを犯したものである。
第4.[判断1]の誤れる理由(その3)原審決の『その結果、本件発明の特許請求の範囲に「上下」「下」及び「上」との要件が記載されることになった経緯を考慮すれば、』の判断の誤っていること、
即ち「上下に」の補正が技術的錯誤であり、よって「規定」したことにならないことの理由を次に明らかにする。
1.(1)本件発明の異議申立前特許請求の範囲【請求項1】の「絶縁基台に接点ばね片を略平行して埋設し、…」を、
(2)登録時特許請求の範囲【請求項1】の「絶縁基台に接点ばね片を上下に略平行して埋設し、…」のように補正し、
(3)訂正審決によって、【請求項1】の「上下に」を不明瞭な記載として訂正削除した、の3通りの特許請求の範囲の文言を解釈する場合仮に、補正を行った原告(出願人)の意図(原審決が「異議申立て時に本件先願考案との同一性を回避するため」と認定した原告の意図)を一時差し置いて、上記3通りの特許請求の範囲の文言を純粋公正に技術的に対比解釈したならば、訂正審決の通りであることは明確である。
2.即ち、訂正審決は、「上下に」等について下記のように、技術的に極めて明確に審決している。
『…理由1.請求の要旨本件審判請求の要旨は、…下記[1]ないし[5]のとおり訂正することを求めるものである。
[1]特許請求の範囲の請求項1の中の「絶縁基台に接点ばね片を上下に略平行して埋設」の「上下に」とあるを削除する。
[2]特許請求の範囲の請求項1の中の「ガイド部材を、下の接点ばね片に」の「下」とあるを「一方」に訂正する。
[3]特許請求の範囲の請求項1の中の「上の接点ばね片の一部に検出突部」の「上」とあるを「他方」に訂正する。
2.当審の判断…[1]ないし[3]の訂正について訂正前の特許請求の範囲の請求項1において、[1]の「上下に、[2]の「下」、[3]の「上」の語句は、何れも、2本の接点ばね片(A,B)の説明を、本件特許発明スイッチを全て横向きに表わした実施例図面に従ったものであり、単に図面との統一を図ったものと解される。
しかしながら、本件特許発明スイッチは明細書記載の如く各種電子機器のメカ部分等に設置して使用するものであるが、それらに使用されている設置状態は実施例図面の状態の他に、上向き、下向き、同じ横向きでも右向き、左向き、前向き、後向き、或いは斜め方向その他全く自由自在であり、同じスイッチであっても設置位置、姿勢が変るたびに接点ばね片A,Bの位置関係も様々に変化することになるのは明らかである。
そうすると、2本の接点ばね片(A,B)の位置関係を「上下」、「上」あるいは「下」で表わすことは、2本の接点ばね片を単純に図面上の位置関係だけで捉えた例を示したにすぎず、両接点ばね片の各々をスイッチ全体の構成、作用、効果等を説明する上で明確に区別する用語としては不明瞭、不適切なものと認められる。
したがって、上記の[1]ないし[3]の訂正は、かかる不備を解消するためのものであるから、明瞭でない記載釈明に相当するものである。
そして、本件明細書の発明の詳細な説明には、公告公報(特公平2-26330号公報)の第2頁右欄第9〜10行に「絶縁基台に接点ばね片を略平行して埋設」、同第2頁右欄第33〜34行に「絶縁基台1に接点ばね片A,Bを略平行して埋設」、同第3頁右欄第8〜9行に「絶縁基台1に接点a,b付の接点ばね片A,Bを対面略平行して埋設」と記載されているように、いずれも「上下に」という語句が用いられている。
さらに、同第2頁右欄第19行に「他方の接点ばね片の一部に検出突部」、同第3頁右欄第14〜16行に「他方の接点ばね片Bの接点b付近に、後記ガイド兼カバーD2の上面板7の外側に突出する山形部3を有する検出突部E」と記載されているように、いずれも「上」ではなく「他方」という語句が用いられている。
したがって、上記の[1]ないし[3]の訂正は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものである。…そして、上記[1]の訂正において、「上下に」という記載は、上述したように不明瞭な記載であり、構成上格別の意味を有していないものであるから、かかる記載を削除したとしても、本件特許発明スイッチの構成を把握する上で何等の影響を与えるものではなく、また、上記[1]ないし[5]の各訂正により、極めてコンパクトで性能優秀なセンサー・スイッチの提供という課題に変更を及ぼすものでもないから、これらの訂正は実質上特許請求の範囲拡張し又は変更するものではない。
また、訂正後における特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができない発明でもない。…3.したがって、本件審判の請求は、平成6年法改正前の特許法第126条第1項ただし書で規定する要件を満たし、かつ、同条第2項及び第3項の規定に適合する。
よって、結論のとおり審決する。…』3.そこで、上記訂正審決を踏まえた上で、原審決を検討するに、原審決は補正、訂正の経緯と原告(出願人)の意図を重視し過ぎて、原告(出願人)自ら規定したことを再び削除して元に戻すようなことは適当でないとの判断が先に立ち、原審決が「上下に」規定したとしていること自体が、実は単に不明瞭な記載に過ぎず技術的には何ら規定したことになっていない、という事実の判断を全くしなかった、或は思い及ばなかったものと考えられる。
4.また、原審決は、本件発明の「上下に」ついては、この3文字が有る為に本件特許を無効とするという極めて重大な判断の誤りをしながら、
自らは、前記のように、本件発明の「上下に」と対比する重大なキーワードである本件先願考案についての「左右に」の3文字を、その技術的な意味も正確に検討せず全く不用意に採択使用する誤りを犯している。
上記の通り、「左右に」の文言では、本件先願考案の第1、第2リードの位置を正確に規定することは不可能であり、単なる不明瞭な記載に過ぎないことは、明らかである。
即ち、原審決は原告には極めて厳しく、自己には甘いと言わざるを得ない。
なお、上記のように、「左右に」の文言は本件先願考案の出願書類中には全く記載がなく、被告が本件特許権侵害差止請求等訴訟における主張において初めて創作使用したものであって、本件先願考案の構成要件を規定する上において何ら技術的な根拠がなく単なる不明瞭な記載に過ぎないものである。
5.原告(出願人)が「上下に」を補正追加したのは、原審決も言うように、補正の時点では本件先願考案との同一性を回避することを目的とする意図があったものと思われる。
しかしながら、補正追加した結果は単純な技術的な錯誤となってしまって、事実は技術的には全く規定したことになっていない、言わば無意味な補正追加となったものである。
つまり、特許請求の範囲のこの位置に、「上下に」の文言だけを補正追加しただけでは、両接点ばね片の位置を明確に規定することはできず、単に不明瞭、不適切な記載になってしまうことは上記及び後記の通りである。
6.「前提条件となる文言」についてしかし、両接点ばね片の位置を技術的に明確に規定した、とするためには、「上下に」の文言の他に、
例えば、原審決のように「反曲動作する方向を下とし」、「元に戻る方向を上として」、「反曲動作方向、即ち、上下に配置」などの文言や、また例えば「横向きに設置したものを正面から見て、…」のような、両接点ばね片の位置関係をきめるための前提、仮定となるような文言、即ち、「前提条件となる文言」が無いと、何を基準にして上下なのか、何所に対して上下なのか、どういう場合(例、設置位置関係)の上下なのかを、規定、特定することは不可能である。
[注]「…として」…(接続詞)[前を受けて]かりにそううだとして。(三省堂国語辞典771頁)7.即ち、上記のような「前提条件となる文言」が「特許請求の範囲の記載」に有ることによって、はじめて「除上に」が接点ばね片の位置関係を規定、特定することができるのである。
従って、本件発明の場合、「上下に」の前に例えば「接点ばね片が、その反曲動作方向を下とし、反響動作した接点ばね片が元に戻る方向を上として、…」とか「横向きに設置したものを正面から見て、…」等の前提条件となる文言があって、
特許請求の範囲の記載が例えば「絶縁基台に接点ばね片を、該接点ばね片が、その反曲動作方向を下とし、反曲動作した接点ばね片が元に戻る方向を上として、横向きに設置したものを正面から見て、上下に略平行して埋設し、…」のようになっていれば、「上下に」が接点ばね片の位置を規定していることを明確に把握できるのである。
ところが、本件発明の特許請求の範囲には上記のような前提条件となる文言は全く見当らず単に「上下に」とだけあり、従って、「上下に」だけでは不明瞭、不適切にならざるを得ないのである。
8.上記のように、原審決は、「上下に」を規定として断定するにつき、前提条件となる文言である、
「反曲動作する方向を下とし」、「元に戻る方向を上として」、「反曲動作方向、即ち、上下に配置」などの文言を、全く当たり前のように不用意に使用しているが、これらの文言は本件発明の明細書中には全く存在しないものであり、
従って、上記本件発明の場合を原審決に置き換えれば、原審決は、上記の前提条件となる文言を用いることによって、はじめて「上下に」を規定として断定することができたのであって、上記の文言を用いなければ「上下に」を規定として断定することが不可能であることが明白である。
9.技術的に間違った判断は、出願人に限らず、原審決(上記及び、前記の「左右に」を規定とした間違いのように)においても存在するのであり、一方、正しい技術(発明)は厳然として存在(明細書、図面等中)しており、それを如何に正確な文言で表現するかについての正、誤の問題であるので、技術自体の解釈につき、
出願人が不明瞭を不明瞭と認めてそれを補正、訂正しても何ら不当でないのである。
また、正当な理由(たとえば不明瞭な記載の釈明誤記の訂正。)があれば、一旦補正、訂正した文言(構成要件でない)を補正、訂正し、或は元に戻すことを禁じる法規定は無い。
10.本件発明の場合、出願人が規定の意図で補正をしたとしても、その結果が事実上、技術的、実質的に要件を規定したことに該当せず、逆に不明瞭、不適切になってしまったものである。
つまり、「上下に」は不明瞭な補正追加であって規定したことになっておらず、
事実これでは正確な技術的構成を把握、理解することができないことは明らかである。
然して、このような場合には、その不明瞭な文言即ち「上下に」は規定した構成要件とは言えないし、構成要件で有り得ないことは明白である。
従って、不明瞭、不適切であるため規定した構成要件で有り得ない文言即ち「上下に」を削除する訂正を行って、何故、特許請求の範囲拡張という重大な結果が生じるのか、この点において、原審決は明らかに誤った判断をしているのである。
11.なお、「上下に」が規定した構成要件でないことは、訂正審決も「…そして、上記[1]の訂正において、「上下に」という記載は、上述したように不明瞭な記載であり、構成上格別の意味を有していないものであるから、かかる記載を削除したとしても、本件特許発明スイッチの構成を把握する上で何等の影響を与えるものではなく、…」と、技術的な判断において明確に認めている。そしてこの訂正審決の判断は出願人の意図に左右されることのない真に技術的な判断であると思料される。
なお、上記の適正な訂正審決を行った審判長と、正反対の原審決を行った審判長とは同一人であり、また、原審決に言う『本件発明の特許請求の範囲に「上下」、
「下」及び「上」との要件が記載されることになった経緯』は、当然訂正審判審理範囲内であったことを重ねて付記するものである。
12.また、訂正審決にも記載の通り、「上下に」を補正追加、訂正削除したのは「特許請求の範囲」だけであって、発明の詳細な説明、図面に記載の実施例等については全くしておらず、その結果、本件発明全体の整合性を欠いていたことも、
「上下に」が不明瞭な記載であり、規定した構成要件でないことを示す重要な理由である。
第5.[判断2]の誤れる理由1.審決第5頁第10行〜第17行に記載の無効理由は、
『さらに、訂正前の請求項1の記載から、「前方から上方に設定幅の案内面を形成するガイド兼カバー若しくはガイド片等のガイド部」が対象体の接触によって「案内面が接点ばね片を反曲させつつ首振り運動して滑り案内する」ことになるため、前方から上方に形成された案内面が対象体によって押圧されて接点ばね片を押圧する方向、即ち、下方向とこれによって接点ばね片が反曲動作する方向は同一であることは明らかであり、「上下」、「下」及び「上」なる用語は、接点ばね片の反曲動作方向をも同時に示すものであると認められる。』としているが下記の通り全て間違っており誤りである。
2.本件発明の特許請求の範囲の上記に該当する部分は、
(1)異議申立前の【請求項1】では、
「一側面に設定幅の案内面を有するガイド兼カバー若しくはガイド片のガイド部材を、一方の接点ばね片に連結手段を介して連係設置し、該ガイド部材に対して一定の方向性をもって接触してくる対象体を、上記案内面が該接点ばね片を反曲させつつ首振り運動して滑り案内しるように設け、」(2)公告後補正した訂正前の【請求項1】では、
「検出突部の前方から上方に設定幅の案内面を形成するガイド兼カバー若しくはガイド片等のガイド部材を、下の接点ばね片に連結手段を介して連係設置し、該ガイド部材に対して一定の方向性をもって接触してくる対象体を、上記案内面が該接点ばね片を反曲させつつ首振り運動して滑り案内するように設け、」(3)訂正審決による訂正後の【請求項1】では、
「検出突部の前方から上方に設定幅の案内面を形成するガイド兼カバー若しくはガイド片等のガイド部材を、一方の接点ばね片に連係手段を介して連係設置し、該ガイド部材に対して一定の方向性をもって接触してくる対象体を、上記案内面が該接点ばね片を反曲させつつ首振り運動して滑り案内するように設け、」と記載されている。
3.この部分について原審決は『さらに、訂正前の請求項1の記載から「前方から上方に設定幅の案内面を形成するガイド兼カバー若しくはガイド片のガイド部」』と記載しているが、この部分の訂正前の【請求項1】では上記の通り「検出突部の前方から上方に設定幅の案内面を形成するガイド兼カバー若しくはガイド片等のガイド部材を、」とあり、従って、原審決は「検出突部の」文言を故意に削除している。なお、「材」を削除した理由は不明。原審決が「検出突部の」を削除した理由は接点ばね片を上下に規定したとするに自らの判断に都合の良いように理論構成するためと、思料される。
4.また、原審決はここにおいても本件発明の実施例1だけを念頭にして判断した為に、実施例2の検討を全く脱落した誤りを犯している。
そのことは、上記原審決の記載を本件発明の第3図(実施例2)及び前記別紙図面(二)に当て嵌めてみれば直ちに判明する。なお、第3図(実施例2)及び前記別紙図面(二)では一見して明らかなように、接点ばね片は「上下に」ではなく「左右に」略平行して絶縁基台に埋設されており、また、接点ばね片の反曲動作方向は「下」ではなく「左」、元に戻る方向は「上」ではなく「右」である。
従って、上記原審決の記載は『(検出突部の)前方から上方に設定幅の案内面を形成するガイド兼カバー若しくはガイド片等のガイド部(材)』が対象体の接触によって「案内面が接点ばね片を反曲させつつ首振り運動して滑り案内する」ことになるため、(検出突部の)前方から上方に形成された案内面が対象体によって押圧されて接点ばね片を押圧する方向、即ち、「左(絶対に下ではない)方向」とこれによって接点ばね片が反曲動作する方向は同一であることは明らかであり、「左右(絶対に上下ではない)」、「左(絶対に下ではない)」及び「右(絶対に上ではない)」なる用語は、接点ばね片の反曲動作方向をも同時に示すものであると認められる。』としなければ正しく説明できない。
即ち、原審決の「…前方から上方に形成された案内面が対象体によって押圧されて接点ばね片を押圧する方向、即ち、下方向と…」の記載は第3図(実施例2)の場合完全に否定され、また「…接点ばね片が反曲動作する方向は同一…」であるにしても、それは「下方向」ではなく「左方向」である点で相違し、更に『「上下」、「下」及び「上」なる用語は、接点ばね片の反曲動作方向をも同時に示すものであると認められる。』は、「上下」でなく「左右」であり、「下」及び「上」でなく「左」「右」であって、これらも完全に否定される。
これ即ち「上下に」を規定と断定したのでは第3図(実施例2)の場合は説明不可能であり、「上下に」が規定などではなく、単なる不明瞭な記載に過ぎないことを明確に立証しているのである。
してみると、原審決のこの点についての判断は全くの恣意に基づく若しくは被告等の先の主張を厳格な分析なしに鵜呑みにしたことによる、誤った極めて不当な判断と言わざるを得ない。
5.なお、上記の通り、
(2)公告跡の補正した特許請求の範囲【請求項1】では、
「検出突部の前方から上方に設定幅の案内面を形成するガイド兼カバー若しくはガイド片等のガイド部材を、」(3)訂正審決による訂正後特許請求の範囲【請求項1】でも、
「検出突部の前方から上方に設定幅の案内面を形成するガイド兼カバー若しくはガイド片等のガイド部材を、」のように、「検出突部の前方から上方」の文言を訂正しなかった理由は、「検出突部」という部材若しくは部分構成「の」「前方から上方」という構成において、該部材若しくは部分構成がその文言通りの構成であるため(実施例1,2も該当)、訂正の必要を認めなかったためであって、この点から見ても原審決の解釈判断が単なるこじ付けであり不当であることが明らかである。
6.また、本件発明の請求項1に「検出突部の前方から上方に設定幅の案内面を形成するガイド兼カバー若しくはガイド片等のガイド部材を、一方の接点ばね片に連係手段を介して連係設置し、該ガイド部材に対して一定の方向性をもって接触してくる対象体を、上記案内面が該接点ばね片を反曲させつつ首振り運動して滑り案内するように設け、他方の接点ばね片の一部に検出突部をもうけて、該検出突部の先端を上記案内面より外方に設定寸法突出せしめて設け、」と記載された構成が、
本件発明の構成要件の1であり、本件先願考案(特許異議の証拠)がこの構成要件を備えていないことの相違によって、本件発明は新規かつ進歩性ある優れた発明として特許されたものでるが、上記記載中に「…該検出突部の先端を上記案内面より外方に設定寸法突出せしめて設け、…」とある。而してこの点はげん審決の判断からすれば当然「…案内面より上方に…」でなければならぬ筈である。
しかるに「外方に」としていることは前記の通り「検出突部」という部材若しくは部分構成と案内面との構成位置関係として記載していることの証拠であり、また「外方」であれば設置位置方向等に関係なく説明できる(実施例1,2も適合)。
よって、この点から見ても原審決の第5頁第10行〜第17行に記載の判断は合理的根拠を欠いた不当なものである。
第6.[判断3]の誤れる理由訂正前本件発明「反曲動作方向から見て上下に略平行して絶縁基台に埋設されている接点ばね片の構成を有するセンサースイッチ」の構成に、明らかに本件先願考案は包含されること、即ち、包含されないとする原審決が誤っていることの主張。
これにより訂正審決が特許請求の範囲拡張に該当しないことを明らかにする。
1.原審決は、
(1)本件発明の異議申立前特許請求の範囲【請求項1】の「絶縁基台に接点ばね片を略平行して埋設し、両接点ばね片の接点を一定間隔を隔てて相対したリーフスイッチにおいて、」は、本件先願考案の「互いに平行に配置され、先端部に接触または離反する接点部を設け、基部は互いに絶縁保持された第1と第2のリード片からなり、」と同じであった、即ち本件発明の上記構成中に本件先願考案の構成を包含していたとし、
(2)そして、公告後補正した特許請求の範囲【請求項1】の「絶縁基台に接点ばね片を上下に略平行して埋設し、両接点ばね片の接点を一定間隔を隔てて相対したノーマルオープン型リーフスイッチにおいて」は、「上下に」と規定したため、本件先願考案の構成を包含しなくなったとし、
(3)ところが、訂正審決による訂正後特許請求の範囲【請求項1】は「上下に」を不明瞭な記載として訂正削除し、元に戻して「絶縁基台に接点ばね片を略平行して埋設し、両接点ばね片の接点を一定間隔を隔てて相対したノーマルオープン型リーフスイッチにおいて」としたため、再び上記(1)と同じく本件先願考案の構成を包含することになったとして、
これ即ち、特許請求の範囲拡張するものであり、よって本件訂正審決は違法であり、本件特許は無効であると審決した。
然しながら、この審決は、下記の通り、本件発明と本件先願考案を、同条件の下で正確に技術的対比をすることを怠ったことによる、全くの誤審である。
2.本件発明、本件先願考案に限らず、「リーフスイッチの構成要件」は、接点ばね片の反曲動作で電路開閉のスイッチ作用を行うために(目的、作用、効果)、
接点ばね片(本件発明AとB、本件先願考案第1リード21と第2リード22)の接点(本件発明aとb、本件先願考案23と24)が相対している構成であることによって全て充足され、よって、2枚の接点ばね片が絶縁基台に埋設設置されている位置などは、上下、左右、前後、対角線位置、その他に違っていても、それはリーフスイッチとしての構成、及び作用、効果には全く関係、影響がなく、当事者が自由に選択設計変更できる均等技術に過ぎず、要するに接点ばね片の反曲動作で相対した接点が互いに接、離(ON,0FF)するように相対して設置されていれば足りる。
また、横向き設置、上向き設置等の設置方向も部品としての単なる使用上の事項であってリーフスイッチとしての構成、及び作用、効果に全く関係が無いものである。
3.而して、本件発明と本件先願考案の接点部分の構成、及び作用、効果を、前記と同様に、両者の実施例を同条件で表わした構成略図(別紙(三)、(四))で対比すると、
(1)(別紙図面(三)を参照)正面から見て、本件発明の接点ばね片は絶縁基台に「上下に」、本件先願考案の接点ばね片は絶縁基台に「前後に」(絶対に「左右に」ではない)のように、絶縁基台に対する接点ばね片の埋設位置は多少違っているが、
本件発明は接点ばね片が反曲動作する方向は「下とし」、元に戻る方向は「上とし」て、また、本件先願考案は接点ばね片が反曲動作する方向は「上とし」、元に戻る動作方向は「下とし」て、
本件発明の接点a,bは「上下に」相対設置されており、また、本件先願考案の接点23,24も「上下に」相対して設置されており、従って、両者の「リーフスイッチの構成要件」は全く同一である。
(2)(別紙図面(四)を参照)また、本件発明を右側面から見た(該当実施例図なし)、また本件先願考案を左側面から見た(第6図、第8図)接点ばね片の埋設位置を示す別紙図面(四)を見ても、
本件発明の接点ばね片は絶縁基台に「上下に」、本件先願考案の接点ばね片は絶縁基台に「左右に」(この方向から見た場合にだけ、本件先願考案の接点ばね片んが絶縁基台に「左右に」であることがわかる。)のように、絶縁基台に対する接点ばね片の埋設位置は多少違っているが、
本件発明は接点ばね片が反曲動作する方向を「下とし」、元に戻る動作方向を「上とし」て、また、本件先願考案は接点ばね片が反曲動作する方向を「上とし」、元に戻る動作方向を「下とし」て、
本件発明の接点aとbは「上下に」相対して設置されており、また本件先願考案の接点23と24も「上下に」(絶対に「左右に」ではない)相対設置されており、従って、両者のリーフスイッチの構成要件は全く同一である。
4.上記の通り、本件発明と本件先願考案は、「リーフスイッチの構成要件」において全く同一である。
(1)即ち、仮に、原審決の通り、「上下に」が規定したものであるとしても、本件発明の「…接点ばね片を上下に略平行して埋設し、両接点ばね片の接点を…相対した…」の構成に対し、本件先願考案の構成は「…第1、第2リードを前後に(絶対に「左右に」ではない)略平行して埋設し、両リードの接点を…相対した…」であって、両者の構成要件は全く同一であり、訂正前本件発明の構成に本件先願考案の構成が包含されていることは明らかである。
(2)してみると、本件発明の特許請求の範囲に、異議申立前、出願公告後補正、
訂正審決後を通して実質的な変更は全く無かったことになる。
即ち、「上下に」を訂正削除したことは特許請求の範囲拡張するものであり、
よって訂正審決は誤審であり、本件発明は無効である、とした原審決は全くの誤審である。
第7.(結論)以上の通りであるので、原審決の第4頁第37行〜第5頁第25行に記載の判断1〜判断3は上記の理由によって悉く誤審であることが明らかになった。
『5.むすびしたがって、上記無効理由2について検討するまでもなく、本件特許は、願書に添付した明細書の訂正が、平成6年改正前の特許法第126条第2項の規定に違反してなされたものであり、平成5年改正特許法第123条第1項第7号に該当し、
無効とすべきものである。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。』は、全て誤審であるため、取消されるべきものである。
・【別紙3】平成14年6月21日付け被告準備書面(1)の要点(下記は,上記準備書面の第2項以下について,文書の書式は変更したが,用字用語の点を含め,その内容をそのまま掲載したものである。)第2原告の主張について1まず,上記原告の主張によれば,原告自身,本件発明と本件先願考案が同一であることを認めることになり,本件特許権が特許法29条の2により無効であることを認めることになることを指摘しておく。
2加えて,上記の原告の主張は,特許異議の審理経過中になされた原告の答弁と全く異なるものである。
原告は,本件発明と本件先願考案の関係について,特許異議答弁書(乙第5号証の3)において以下のように主張していたものである(乙3号証の特許権侵害差止請求控訴事件の判決20頁参照)。
『申立人は…両者に全く相違がないかのように記述していますが,本願が「絶縁基台に接点ばね片を略平行して埋設しているのは,上の接点ばね片(可動側)と下の点はね片(固定側)を上下位置に相対して並行設置しているのであって,甲号証(本件先願考案)のようにホルダ29に第1リード片21,第2リード片22を水平並列位置に並行設置しているのと全く相違しています。本願は上下並行であるため…そのままでは接点部23,24は接触できないので,わざわざ接点部23,24を第1,第2リード片21,22の先端に突出形成して,該突出部を重合接触(常時)する構成としており,両者のリーフスイッチとしての基本構成は全く相違しています。』(以上につき,乙第5号証の3の4頁1行目〜5頁2行目)。
このように,原告は,特許異議の審理経過中には,本件発明においては,上記の意味で接点ばね片が上下方向に埋設されていることから,その点で本件先願考案とは異なる旨を強調していたのである。
原告準備書面(第2回)における原告の主張は,特許異議の審理経過中の自らの主張を180度覆すものであり,禁反言の法理(包装禁反言)からも許されないというべきである(東京高裁平成12年2月1日判決,判時1712号167頁,等参照)。
3そして,上記の出願経緯から考えて,また,本件明細書の記載から考えて,補正において追加された「上下に」との意味が接点ばね片が反曲動作し,また,元に戻る方向であることは明らかであり,これをもって不明瞭であるなどという原告の主張は主張自体失当である(乙3の判決書21頁4行目)。
4いずれにしても,原告準備書面(第2回)における原告の主張は,自ら本件特許権が無効であることを自白してしまっているなど,その論理構成が破綻してしまっている上,自らの従前の主張と180度異なった主張をするなど,到底認められるものではない。
第3被告の主張1本件特許の補正をめぐる経緯について(1)本件特許の出願に先立って,訴外日本楽器製造株式会社が,接点ばね片が絶縁基台に左右方向に埋設されているカセットセンサ孔検出装置に係る実用新案の出願をしていた(本件先願考案,乙2の2)。
(2)本件特許の異議申立事件において,被告(申立人)は,本件発明と本件先願考案の同一性を主張した(乙5の1,2)。
(3)これに対して,原告(出願人)は,本件発明の特許請求の範囲に「上下」,「下」及び「上」等の,文言を追加する補正を行い,特許異議答弁書において,本件発明は,接点ばね片が上下方向に位置しているから,本件先願考案とは異なるとの主張を行った(乙5の3)。
以上の補正をめぐる経緯から考えて,原告が,本件発明を,絶縁基台に接点ばね片を埋設する方向が上下(なお,上記の経過及び明細書の記載から考えて,ここで「上」とは,反曲動作した接点ばね片が元に戻る動作方向をいい,「下」とは,接点ばね片が反曲動作する方向を指すことは明白である)のものに意識的に限定したことは明らかである。
なお,上記補正が,本件先願考案(接点ばね片が絶縁基台に左右方向に埋設されているカセットセンサ孔検出装置に係る実用新案)との同一性を回避することを目的とする意図でなされたものであることは,原告自身も認めているところであり(原告準備書面(第2回)14頁21行目以下),このことからも,原告が上記のような意識的な限定を行ったことは明白である。
2その後,原告は,本件訂正により,「上下に」との要件が不明瞭であるなどとして絶縁基台に埋設される設定はね片の構成を「上下に略平行して」(反曲動作方向に略平行して)と規定されていたものを,単に「略平行して」とするなどの訂正を行った。
3以上から,本件訂正によって,絶縁基台に埋設される設定はね片の構成が,「上下に略平行」(反曲動作方向に略平行)しているものだけでなく,補正段階で意識的に除外したはずの本件先願考案のように(反曲動作方向から見て)「左右に略平行」しているものまで包含することになったことは明らかであり,本件訂正は,特許請求の範囲を明らかに拡張するものである。
なお,原告の主張の内容に着目して考えても,原告は,特許異議答弁書の段階では,本件発明は,本件先願考案の構成を含むものではないと主張していたのに,原告準備書面(第2回)においては,本件発明は,本件先願考案の構成を包含するものである,などと主張しており,原告の主張内容のみから考えても,本件特許請求の範囲拡張されていることになる。
4従って,本件訂正は,特許請求の範囲拡張するものであるから,平成6年法律第116号による改正前の特許法126条2項(平成6年法律第116号附則6条1項)の規定に違反してなされたものであり,平成5年改正特許法第123条第1項7号に該当し無効であるとした本件審決は,正当である。
なお,別件の特許権侵害訴訟において,東京高裁は,上記と同様の理由から,訂正が違法で本件特許権が無効とされるべきであり,原告の権利行使が権利の濫用に該当する,と判断した(乙3)。
その後,上記判決に対して上告したが,平成14年4月25日に,最高裁が上告棄却の決定を出したことにより,上記高裁判決は確定している(乙4)。
5以上より,原告の請求には理由がなく,直ちに,原告の請求は棄却されるべきである。
裁判長裁判官 塩月秀平
裁判官 古城春実
裁判官 田中昌利
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