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関連審決 訂正2002-39192 審判1998-35216
関連ワード 反復(反復可能性) /  翻訳文 /  優先権 /  設定登録 /  請求の範囲 /  減縮 /  国際出願 / 
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事件 平成 14年 (行ケ) 236号 審決取消請求事件
原告 ボード,オブ,リージェンツ,ザ,ユニバーシティ,オブ,テキサス,システム
訴訟代理人弁護士 大野聖二
同 中道徹
訴訟代理人弁理士 社本一夫
被告 イーオーエスゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング イレクトロ オプティカル システムズ
訴訟代理人弁理士 後藤洋介
同 池田憲保
同 山本格介
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 2003/02/25
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
主文 1 特許庁が平成10年審判第35216号事件について平成14年1月7日にした審決を取り消す。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
3 この判決に対する上告及び上告受理の申立てのための付加期間を30日と定める。
事実及び理由
全容
1 原告の請求 (1) 主文第1項と同旨 (2) 訴訟費用は被告の負担とする。
2 当事者間に争いのない事実 (1) 特許庁における手続の経緯 原告は,発明の名称を「選択的焼結によって部品を製造する方法」とする特許第2620353号(米国における1986年(昭和61年)10月17日及び1987年(昭和62年)10月5日の各出願に基づく優先権を主張して,昭和62年10月14日に外国語特許出願により国際出願。平成9年3月11日設定登録。以下「本件特許」といい,その発明を「本件発明」という。本件発明の数は1である。)の特許権者である。
被告は,平成10年5月22日,本件特許につき,これを無効とすることについて審判を請求した。特許庁は,これを平成10年審判第35216号として審理し,その結果,平成11年6月30日,審判の請求は成り立たない,との審決をした。被告は,同年11月22日,東京高等裁判所に同審決の取消しを求める訴えを提起し(平成11年(行ケ)第374号),同裁判所は,平成13年3月6日,同審決を取り消すとの判決をし,同判決は確定した。特許庁は,上記審判事件について,更に審理し,その結果,平成14年1月7日,「特許第2620353号の特許請求の範囲第1〜5項に記載された発明についての特許を無効とする。」との審決(以下「本件審決」という。)をし,同年1月18日に,その謄本を原告に送達した。なお,出訴期間として90日が付加された。
(2) 審決の理由 本件審決の理由は,要するに,本件特許は,国際出願日における国際出願の明細書,特許請求の範囲又は図面及びこれらの書類の出願翻訳文(審判甲第2号証,本訴甲第3号証)に記載された発明以外の発明についてなされたものであるから,平成5年法律第26号による改正前の特許法184条の15の規定により,無効にすべきである,というものである。
(3) 訂正審決の確定 原告は,本訴係属中,平成14年9月18日付けで,本件特許出願の願書に添付した明細書につき,特許請求の範囲減縮を含む訂正の審判を請求した。特許庁は,これを訂正2002-39192号事件として審理し,その結果,平成14年12月17日に上記訂正を認める審決(以下「本件訂正審決」という。)をし,これが確定した。
(4) 本件訂正審決によるの訂正の内容 (ア) 本件訂正審決による訂正前の特許請求の範囲 「【請求項1】 粉末第1層を目標表面に分与し; 前記粉末第1層における部品の第1断面に対応する部分に,その部分の前記粉末を焼結させるべくレーザビームを選択的に指向させ; 前記レーザビームの選択的指向の後に前記粉末第1層上に粉末第2層を分与し; 前記粉末第2層における部品の第2断面に対応する部分に,その部分の前記粉末を焼結させるべく,また前記粉末第2層のその部分において焼結した粉末を前記第1層中の焼結した粉末に接合させるべくレーザビームを選択的に指向させ; 以後必要な回数だけ連続して,直前の粉末層についてのレーザビームの選択的指向の後に前記直前の粉末層上に次の粉末層を分与し,分与したその粉末層における部品の断面に対応する部分に,その部分のその粉末層の粉末を焼結させるべく,またその粉末層のその部分において焼結した粉末を前記直前の層中の焼結した粉末に接合させるべくレーザビームを選択的に指向させる工程を反復し, そして,全工程を通じて目標区域の粉末を焼結温度より低い温度に加熱することにより,焼結したおよび非焼結の粉末の温度を制御し, 部品が製造された後,非焼結の粉末を取り除く, 各工程を含む,粉末から部品を1層ずつ積層的に製造する方法。
【請求項2】 前記制御する工程は,気体を加熱すること及び加熱した気体を前記目標区域に指向させることを含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】 前記の目標区域に指向した加熱気体を,目標区域から排出させることをさらに含む請求項2に記載の方法。
【請求項4】 前記の加熱気体の排出を目標区域の下方から行う請求項3に記載の方法。
【請求項5】 前記分与する工程が,前記目標区域に近接して粉末を分与することを含み;かつ前記分与する工程数に前記目標区域に沿ってドラムを移動させ;この移動の間前記目標区域に沿って前記ドラムが移動する方向とは逆の方向にドラムを回転させ;ドラムが目標区域に沿って移動している間,粉末をこの逆回転ドラムと接触させ,それによりこの移動の後,粉末層が目標区域上に形成されるようにする請求項1に記載の方法。」 (イ) 本件訂正審決による訂正後の特許請求の範囲 本件訂正による特許請求の範囲の訂正は,請求項2及び5を削除し,請求項3の記載中「請求項2」を「請求項1」と,請求項4の記載中「請求項3」を「請求項2」とそれぞれ改め,請求項3及び4の番号をそれぞれ請求項2及び3と改め,かつ,請求項1の文言を次のとおりに改めるものである(下線を付した部分が訂正に係る部分である。)。
「【請求項1】 粉末第1層を目標表面に分与し; 前記粉末第1層における部品の第1断面に対応する部分に,その部分の前記粉末を焼結させるべくレーザビームを選択的に指向させ; 前記レーザビームの選択的指向の後に前記粉末第1層上に粉末第2層を分与し; 前記粉末第2層における部品の第2断面に対応する部分に,その部分の前記粉末を焼結させるべく,また前記粉末第2層のその部分において焼結した粉末を前記第1層中の焼結した粉末に接合させるべくレーザビームを選択的に指向させ; 以後必要な回数だけ連続して,直前の粉末層についてのレーザビームの選択的指向の後に前記直前の粉末層上に次の粉末層を分与し,分与したその粉末層における部品の断面に対応する部分に,その部分のその粉末層の粉末を焼結させるべく,またその粉末層のその部分において焼結した粉末を前記直前の層中の焼結した粉末に接合させるべくレーザビームを選択的に指向させる工程を反復し, そして,全工程を通じて気体を加熱 し,加熱 した 気体 を前記目標区域 に指向させて 目標区域 の粉末 を焼結温度 より 低い温度 に加熱 することにより ,焼結 したおよび 非焼結 の粉末 の温度 を制御 し, 部品が製造された後,非焼結の粉末を取り除く,各工程を含み ,前記分与する 工程 のそれぞれが ,粉末 を分与 し;前記目標区域 に沿って ドラム を移動 させ ;この 移動 の間前記目標区域 に沿って 前記 ドラム が移動 する 方向 とは 逆の方向 にドラムを回転 させ ;ドラム が目標区域 に沿って 移動 している 間,粉末 をこの 逆回転 ドラムと接触 させ ,それによりこの 移動 の後,粉末層 が目標区域上 に形成 されるようにすることを 含む 粉末から部品を1層ずつ積層的に製造する方法。
【請求項2】 前記の目標区域に指向した加熱気体を,目標区域から排出させることをさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】 前記の加熱気体の排出を目標区域の下方から行う請求項2に記載の方法。」3 当裁判所の判断 前記当事者間に争いのない事実の下では,本件特許について,平成5年法律第26号による改正前の特許法184条の15に該当することを理由にこれを無効とした本件審決の取消しを求める訴訟の係属中に,特許請求の範囲減縮を含む訂正の審判の請求がなされ,特許庁は,同請求を認めるとの本件訂正審決をし,これが確定した,ということができる。本件審決は,これにより,結果として,判断の対象となるべき発明の認定を誤ったことになる。この誤りが本件審決の結論に影響を及ぼすことは明らかである。したがって,本件審決は,取消しを免れない。
4 以上によれば,本訴請求は理由がある。そこで,これを認容し,訴訟費用の負担については,原告に負担させるのを相当と認め,行政事件訴訟法7条,民事訴訟法62条を適用して,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 山下和明
裁判官 設樂隆一
裁判官 阿部正幸