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関連ワード 特許を受ける権利 /  承継 /  権利移転 /  名義変更 /  警告 /  悪意 /  善意 /  権利の濫用(権利濫用) /  不存在 /  信義則 /  同意 /  設定登録 /  移転登録 /  変更 /  費用負担 / 
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事件 平成 13年 (ワ) 7439号 特許権移転登録の抹消登録手続等請求事件
原告 株式会社コスモインターナショナル
被告A
同被告訴訟代理人弁護士 佐藤忠雄
同 森利明
被告 株式会社日本プロセス
同被告訴訟代理人弁護士 石川雅巳
裁判所 東京地方裁判所
判決言渡日 2003/03/11
権利種別 特許権
訴訟類型 民事訴訟
主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は,原告の負担とする。
事実及び理由
請求
1 被告Aは,別紙目録1記載の特許権について,平成12年2月3日受付第000412号をもってした移転登録の抹消登録手続をせよ。
2 被告株式会社日本プロセスは,同目録1記載の特許権について,平成12年2月18日受付第000697号をもってした移転登録の抹消登録手続をせよ。
3 被告株式会社日本プロセスは,原告に対し,同目録2記載の特許権について,移転登録手続をせよ。
4 訴訟費用は,被告らの負担とする。
事案の概要
別紙目録1記載の特許権(以下「本件特許権1」という。)について,原告から被告Aに移転登録がされ,更に同被告から被告株式会社日本プロセス(以下「被告会社」という。)に移転登録がされている。また,同目録2記載の特許権(以下「本件特許権2」という。)については,特許を受ける権利につき被告会社への出願人名義変更届がなされ,同被告の下で設定登録がされている。本件は,原告が,これらの移転登録は実体のないものであると主張して,被告らに対し本件特許権1についての前記各移転登録の抹消登録手続を求めるとともに,被告会社に対し本件特許権2について原告への移転登録手続を求めている事案である。
1 争いのない事実 (1) 原告会社は,訴外株式会社デューシステム(以下「訴外会社」という。)から,平成10年11月26日,代金1億円で本件特許権1及び2の譲渡を受け,本件特許権1について,同月30日受付第004348号をもって移転登録を経由した。この譲渡契約の際,被告Aは原告会社の代理人として売買契約に携わった。
(2) 被告Aは,本件特許権1について,平成12年2月3日受付第000412号をもって移転登録を経由した。
(3) 被告会社は,本件特許権1について,平成12年2月18日受付第000697号をもって移転登録を経由した。
(4) 原告会社は,本件特許権2(なお,同特許権について設定登録がされたのは,後記(7)記載の日であるが,以下,特に断らない限り,設定登録以前の事柄についても,当該発明を表す語としてこの名称を使用する。)について,設定登録がされる以前の平成10年11月26日,訴外会社から,特許を受ける権利の譲渡を受けた。
(5) 被告Aは,本件特許権2について,平成11年11月26日,特許庁に対し,原告会社から特許を受ける権利の譲渡を受けたとして,出願人名義変更届を提出した(原告と被告Aとの間で争いがない。)。
(6) 被告会社は,本件特許権2について,平成12年11月ころ,特許庁に対し,被告Aから特許を受ける権利の譲渡を受けたとして,出願人名義変更届を提出した。
(7) 被告会社は,平成12年11月24日,同特許権の設定登録を得た。
(8) 原告会社の代表者は,平成10年9月11日の設立時,訴外B(取締役兼代表取締役),同C(前同),同D(前同)の3名であった。平成11年7月22日に,前記Dが代表取締役を辞任し,同日現在の取締役兼代表取締役は,BとCとなった。同年12月3日,Bは,原告会社の取締役兼代表取締役を辞任する旨の辞任届を作成し,その旨の登記がされた。
(9) 上記(1)の,被告Aの代理人報酬として,原告会社は同被告に300万円を支払った。
2 争点 (1) 被告Aの本案前の主張(争点1) 本件訴えは,原告会社代表者をEとして提起されているが,同人は代表権を有していないから,不適法な訴えであり,却下されるべきである。
(2) 本件特許権1につき,原告会社から被告Aへ,被告Aから被告会社への権利の移転は有効にされたかどうか,また本件特許権2につき,原告会社から被告Aへ,被告Aから被告会社へ特許を受ける権利が譲渡されたかどうか(争点2)
争点に関する当事者の主張
1 争点1(被告Aの本案前の主張)について (1) 被告Aの主張 本件訴えは,原告会社代表者を訴外Eとして提起されているが,Eは原告会社の代表権を有しないから,不適法な訴えとして却下されるべきである。
ア 原告会社の役員の変遷は,前記争いのない事実(8)記載のとおりである。
Bは原告会社の代表取締役会長として同社の経営一切を取り仕切っていた。
イ 原告会社は本件特許権1及び2を用いた商品製造開発・販売の事業化を目指していたが,いまだ営業準備中であるため運転資金に窮していた。平成11年11月,B,E及びCの共通の知人である訴外F(同人は「G」の名称も使用している。以下同じ。)から,政府系の資金5000万円の原告会社への融資を仲介するとの話がもたらされた。その際,Fは,代表取締役であるB及びCは対外信用上の問題があるので,原告会社が融資を受けるまでの間,商業登記簿の記載のみの上の対外的な便宜的措置として,B及びCがいずれも代表取締役兼取締役を辞任した扱いにして,当時安田生命保険相互会社の管理職にあったEを代表取締役兼取締役として選任した扱いにすることを提案した。Bは当時Fを信用しており,同人が,融資後は責任をもって商業登記簿の記載を元に復すると約束したので,同人の提案に応じることにした。同年12月3日に開催された取締役会において,上記事項を確認したのを受け,Bは同日原告会社取締役を辞任する旨の,同人の真意に反する辞任届(乙3)を作成し,同書を原告会社に交付した。
ウ しかし,前記融資話は,全くの作り話であり,商業登記簿上の取締役兼代表取締役の辞任登記の記載を既成事実化し,原告会社の取締役兼代表取締役としてのBの地位を奪おうとする,E,C及びD(以下「Eら」という。)並びにFらの謀略であった。Bは,その後の事実経過から,前記融資話が真実存在するか否か疑わしいことを知り,また,Eらにおいて原告会社に対するBの経営権を奪おうと画策している気配が見受けられたので,Eに次の事項を確認した確約書の交付を求め,同人より被告Aの事務所において確約書(乙4)の交付を受けた。同確約書では,@BがEらに交付した辞任届(乙3)は,原告会社がFを通じて融資を受けるための便宜的な措置である。AEは,借入れが実行されたとき,又は実行不能となったときは,直ちにBが原告会社の代表取締役会長に復することを認める。BEは,商業登記簿上Bが代表取締役兼取締役を辞任している間においても,事実上Bが代表取締役会長として会社業務を遂行することを認める,の3点が確認されている。
エ Fが仲介すると約した融資は,原告会社の越年資金を得るためのものであった。しかるに,Eらは融資手続を全く進めておらず,Bから原告会社の経営権を奪おうとするEらの意図が明確になったので,平成11年12月27日,Bは前記辞任届を保管しているCに対し,同書の返還を求めた。これに対し,Cは辞任届はFに託した旨弁解したが,結局翌12月28日,Cは,Eが勤務する安田生命保険本社において辞任届を返還した。この返還を受けるに際し,BはE及びCに,原告会社の取締役兼代表取締役を辞任する意思のないことを宣言した。辞任届受領後,Bは,被告Aと相談のうえ,辞任届が再利用されぬよう抹消のための斜線を付した。
オ 上記の経緯によれば,Bが原告会社の取締役兼代表取締役を辞任する旨の意思表示は,次の理由により無効である。@辞任届(乙3)は,融資を受けるために形式上作成されただけの文書で,意思表示文書としての性質を有するものではないから,意思表示としての成立要件を欠く。A意思表示と認められるとしても,この意思表示は表意者であるBの真意に反するもので,商業登記簿上,原告会社の現代表取締役となっているEを始めとするその他の役員全員が真意でないことを知っていたところであるから,民法93条ただし書の心裡留保として無効である。BEらの詐欺による意思表示として取り消し得るので,原告をB,被告を本訴における原告ほか4名とする東京地方裁判所平成12年(ワ)第4041号新株発行無効等の訴えにおける訴状をもって取り消す。C要素の錯誤があるものとして無効である。また,DEを原告会社の取締役に選任する臨時株主総会は開催されていないから,Eは原告会社の取締役兼代表取締役に選任されていない。E仮に,Eを取締役に選任する株主総会が開催され,同人を代表取締役に選任する取締役会が開催されていたとしても,議決をした株主及び取締役の意思表示は,心裡留保又は虚偽表示により無効である。
カ Bは,原告会社の取締役兼代表取締役を辞任する意思はなかったことから,平成11年12月27日には同人の住所変更登記をし,さらに同日まで未届けであった同人の代表取締役印を登録した。しかるに,Eらは,Bより原告会社の経営権を奪おうとする企図をあくまで押し進め,平成12年1月17日,共謀のうえ,B名義の平成11年12月3日付け取締役辞任届をBに無断でワープロで作成し,「B」名義の三文判を購入して,これを前記辞任届のB名下に押捺し,B名義の取締役辞任届を偽造し,Eを申請人として,Bが原告会社の取締役兼代表取締役の地位を退任した旨の登記を平成12年1月17日に申請し,同登記を経た。上記の経緯によれば,作成された辞任届はBの真意に反する書面であるとともに,退任登記申請に使用される前に返還を受けていたものであるから,Bには原告会社の取締役兼代表取締役を辞任する意思がなかったものであり,また,確約書(乙4)に上記ウ記載の内容が記載され,Eが署名していることに照らせば,Eらがそのことを熟知していたことは明白である。
キ 以上によれば,Eは原告会社の有効な代表取締役として選任されておらず,本件訴えは不適法である。
(2) 原告の主張 ア 被告Aの主張ア,イについて Bは,原告会社の名目的代表取締役にすぎず,経営には全く関与していなかった。同人が代表取締役を辞任したのは,原告会社の経営方針に従い,同人が真意から原告会社の取締役会において辞任の意思表示をし,取締役会で了承されたことによるものであるから,有効な辞任である。Eが辞任届を返還したのは,暴力団準構成員であるBが当時の勤務先に乗り込んできて,騒いでやるなどといって脅したためだが,辞任をした後に,辞任届を強迫行為をもって取り戻したとしても意味がない。
イ 被告Aの主張ウ,エについて Eが確約書(乙4)に署名,押印させられたことは認めるが,同人は,B及び被告Aに脅迫されて,あらかじめ被告Aが作成しておいた確約書に無理矢理署名,押印させられたものである。それでもEは必死に抵抗を試みて,当時E,C,Bらの当事者から信頼を受けていた前記Fがすべて承認済みであるなら署名する旨の条件をつけ,その旨を加筆してもらった。したがって,その部分が手書きとなっている。しかし,Fは確約書に記載されている内容を承認していたことはなく,EはBなどにだまされたものである。
また,前記のように辞任届を取り戻しても意味はないし,平成11年12月3日には,原告会社において,Eを取締役に選任する株主総会が開催されており,被告Aの主張は理由がない。
ウ 被告Aの主張カについて Bは取締役会で辞任の意思表示をし,承認されていたので,取締役,代表取締役を辞任したことは,法的に有効であった。取締役会議事録を添付して,登記手続をしてもよかったのであるが,原告会社は辞任届の添付の方が便宜であったので,その方法を採用したにすぎない。辞任の効力及び登記には影響がない。
2 争点2(本件特許権1につき,原告会社から被告Aへ,被告Aから被告会社への権利の移転は有効にされたかどうか,また本件特許権2につき,原告会社から被告Aへ,被告Aから被告会社へ特許を受ける権利が譲渡されたかどうか)について (1) 被告Aの主張 ア 本件特許権1及び2についての譲渡契約の有効性 (ア) 被担保債権の存在 原告会社は本件特許権1及び2を用いた商品製造開発・販売の事業化を目指しており,被告Aは,原告会社(具体的にはB)から依頼されて,本件特許権1及び2の権利関係の調査及び取得交渉を受任した。同被告は苦心の末,訴外会社から,本件特許権1及び2を,商標代金等込みで計1億1000万円で買い取る交渉をまとめた。このことに対する報酬として,同被告は500万円を要求したが,原告会社のB,E,Cに懇請されて350万円に減額した。しかし原告会社は報酬を支払わなかった。そのうえ,被告Aは,原告会社の代表者であるBから,原告会社の運転資金の提供をも懇請されたので,前記報酬の確保のため,顧問先である訴外銀座クレジットことHを紹介した。そして,Hの意向で,平成10年12月9日,同被告が借主となり,500万円を,返済期限平成11年1月8日,利息月3分の約定で同人から借り入れた。同被告は,平成10年12月10日,Hから借り入れたこの500万円に自己資金200万円を加えた合計700万円を,Bに貸し渡した。この貸金は,原告会社の運転資金を代表者であるBが借り受けたものであるから,原告会社に対する貸金である。Bと同被告は,この貸付けに際して,当該貸金700万円と前記報酬350万円とを併せた1050万円につき,原告会社が本件特許権1及び2を担保として同被告に提供することに合意した。その際,Bが原告会社代表者印を保管していなかったことから,Bは,本件特許権1及び2を譲渡担保とすることをEに伝えて同印の交付を求めた。EはCと相談のうえ,原告代表者印をBに交付した。
(イ) 譲渡担保権設定契約の締結 平成10年12月10日,被告Aと原告会社代表者Bとの間で,下記約定の金銭消費貸借並びに譲渡担保権設定契約(以下,設定された譲渡担保権を「本件譲渡担保権」という。)を締結した。
@ 被告Aは原告会社に対し,平成10年12月10日,700万円を,弁済期を平成11年1月8日とし,返済日には被告Aが負担する金利と併せ返済する約定で貸し渡した。
A 原告会社は被告Aに対し,原告会社と訴外会社との間の本件特許権1及び2の買取交渉につき,成功報酬350万円の支払義務を負担していることを認め,上記報酬をできる限り速やかに支払う。
B 原告会社は被告Aに対し,前記@及びA記載の計1050万円の債務の担保として,本件特許権1及び2につき被告Aを権利者とする譲渡担保権を設定し,同被告が求めたときには,本件特許につき特許権移転登録申請及び出願人名義変更届の各手続を原告会社の費用負担において行う。
C 原告会社は被告Aに対し,本件特許権1及び2の登録に関する書類を同被告が保管することを認める。
(ウ) ところが,原告会社は,再三にわたって猶予された弁済期を徒過し,最終的に被告Aに対し,700万円の借入金及び報酬残金50万円を支払わなかった。このため,被告Aは,前記Hに対する金500万円の借入金を返済するため,平成11年6月7日,被告Aが顧問をしているプレジデントインターナショナル(以下「プレジデント」という。)ことIに500万円の借入れを申し込んだ。
その際,被告Aは,今度は原告会社が主債務者となって借入れをするよう要求し,Eらをプレジデントに同行し,同日付借用証書を作成させたうえ,500万円を月利2パーセント,弁済期平成11年12月6日の約定で借入れさせた。上記借入れに際しては,Bが連帯債務者,Eが連帯保証人になったほか,被告Aも紹介者として連帯保証人となった。そして,被告Aは,同年6月8日,上記借入金500万円をもって,Hに対する500万円の借入金を弁済した。
上記プレジデントからの借入後は,被告Aは500万円については原告会社に対する貸主でなくなったが(ただし求償権は存している。),他方,同被告の200万円の貸付けはそのまま残っていたことから,同被告は,上記(イ)の譲渡担保に関する合意を再度確認する必要を感じた。そこで,同被告は,平成11年6月25日付け合意書(乙15)を,原告会社(代表者B)及びBとの間で作成し,同被告が原告会社に対しこの時点での報酬残金100万円,貸付金200万円及び求償金500万円の合計800万円の債権を有することを確認し,本件譲渡担保権がこの債権を被担保債権としてそのまま承継されたこと及びプレジデントに対する弁済期である平成11年12月6日に全額弁済できなかった場合には,被告Aが本件特許権1及び2を処分する権限を有することを確認した。同合意書には,原告会社代表者として,Bが署名した。
(エ) その後,原告会社は,プレジデントの借入金を期限までに弁済することができず,期限を平成12年2月7日として借換えを行った。さらに,前記1(1)イ及びウに述べたFも加わった虚偽の融資話があってBに形の上だけの代表取締役辞任届を作成させたり,これをいったんBに返還しておきながら,同人名義の辞任届を偽造して法務局に提出して辞任の登記をしたり,この件について被告Aから警告を受けながらこれを無視して,Bの経営上の実権を奪うために,上記のようにBの辞任が形式上のものであるのに,同人に取締役会招集通知をすることなく原告会社の資本金を1000万円から2000万円に増資するなど,極めて不穏当な行動を繰り返した。
これらのことから,原告会社が被告Aに対する債権(プレジデントの保証債務履行による求償債権を含む。)を支払う見込みが立たなくなるとともに,Eらが不実な登記であるEの代表取締役資格を利用して本件特許権1及び2を他に売却することが大いに懸念される事態となった。被告Aとしては,可及的速やかに,本件譲渡担保権に基づく移転登録を実現しなければならない必要に迫られた。
そこで,同被告は,平成11年12月27日,契約時に原告会社より差入れを受けていた申請書類に基づき,本件特許権1につき移転登録申請を行った(甲8)。ところが,この時申請した原告会社から被告Aへの本件特許権1の移転登録が印鑑不適合により平成12年1月20日却下されたので,再度同年2月3日に従前の申請書類を用いて原告会社から被告Aへの移転登録申請を行い,同月21日,上記登録を経由した。ちなみに,本件特許権2については,以前,被告Aにより,原告会社から被告Aへ,同被告から原告会社への各出願人名義変更届が順次なされていたが(被告Aはいったんは権利保全のために同被告名義への名義変更を行おうとしたが,原告会社に懇請され,撤回することとした。しかし,名義変更申請の取下げはできないとのことであったので,再度原告会社に出願人名義を移転する旨の申請を行ったものである。なお,本件特許権1についても同被告への移転登録申請を行ったが,同様に原告会社に懇請されて申請を取り下げていた。),被告Aから原告会社への名義変更届が本件特許権1同様,印鑑不適合であったので,この申請を撤回し,結局,原告会社から被告Aへの名義変更届がされたままの状態となっていた(甲10)。
イ 被告会社への本件特許権1及び2の譲渡 (ア) 平成12年2月7日になって,プレジデントからの借入金の弁済期が到来したが,Bにはこれを弁済する資力がなく,Eらはこれを無視したので,被告Aは仕方なく,連帯保証人として,同日,原告会社に代わって500万円をプレジデントに弁済した。これにより同被告は,原告会社に対し,報酬残金50万円,貸付金200万円及び求償金500万円の合計750万円の債権を有することになった。これに加え,Eらが前記ア(エ)のような不穏当な行動を取った以降発生した諸々の法律事務につき,同被告は,原告会社に対する新たな報酬として250万円を請求し,Bの承諾を得た結果,原告会社に対する債権総額は1000万円となった。このうち,後発の報酬債権250万円を除く750万円については,本件の譲渡担保契約における被担保債権と同一性を有する債権であった。そして,このような激しい内紛が起こっている原告会社の状態からすると,同被告としては,任意に弁済を受ける見込みは到底ないものと判断せざるを得ず,本件譲渡担保権に基づき,本件特許権1及び2を換価処分することを決意した。
被告Aは,Bに対し,1000万円を支払うことを要求し,支払わない場合は本件譲渡担保権に基づき本件特許権1及び2を処分する旨を通告した。このころ,Bの関係者によって被告会社が設立され,Bの妻であるJとKが代表者となったが(現在の代表者はJの兄である。),同年2月8日,Bから聞いたのか,Kが被告Aの事務所を訪れ,本件特許権1及び2を1000万円で買い取りたい旨申し入れてきた。被告Aは,他に売却の当てがなかったことから,被告会社に上記特許権を売却することにした。
(イ) 同月9日,原告会社代表者Bと被告会社代表者Kとの間において,本件特許を1000万円で売却する内容の売買契約を締結し,契約書(乙8)を作成した。そのうえで,同日,原告会社代表者B,被告会社代表者K及び被告Aとの間で,特許移転に関する合意書(乙9)により契約を締結し,本件特許権1及び2を被告会社に譲り渡すことにし,原告会社は被告会社から支払を受けた1000万円の売買代金を,被告Aに対し借入金の返済等として支払った。
(ウ) 平成12年2月19日,原告会社代表者Bと被告会社代表者Kは,公認会計士L(以下「L会計士」という。)の立会いの下で,覚書(乙10の2)により合意をした。その内容は次のとおりである。なお,下記Aのような買戻条項を入れたのは,被告Aが,本件紛争に関わった者として,原告会社の出資者及び借入人となったEらの立場をも考慮すると,原告会社に本件特許権1及び2の買戻権を留保させることが望ましいと判断し,B及びKを説得したものである。
@ 原告会社が被告会社に本件特許権1及び2を譲渡したのは,被告Aに対する債務を返済するためと,原告会社の役員らが私文書偽造によってBが有する原告会社の経営権を奪おうとしたのに対抗するためであることを確認する。
A 原告会社の増資が無効とされ,かつBが原告会社の代表取締役に復したときには,原告会社は被告会社に対し,1300万円で本件特許権1及び2を買い戻し,被告会社はこれに応じなければならない。
B 原告会社が本件特許権1及び2を買い戻したときには,原告会社は,この特許権を生かした事業に被告会社を関与させる。
C 被告会社は,原告会社の融資者に対して誠実に対応する。
(エ) 平成13年8月16日,B,K及びL会計士との間で確認書(乙10の1)が作成された。確認書では,前記(ウ)の覚書の内容につき,覚書は本件特許権1及び2が原告会社から被告会社に譲渡された趣旨を明らかにするとともに,原告会社が被告会社から本件特許権1及び2の買戻権を有することを定めたものであること,覚書2項において,「コスモの増資が無効とされ,かつBがコスモの代表取締役に復した時には」と記載されているのは,「原告の経営紛争が終結した時には」という意味で,紛争の決着の仕方によって特許の帰属を左右させる趣旨ではないことなどを確認した。
(オ) 以上の経緯によれば,本件特許権1及び2の売買契約は原告会社と被告会社との間で有効に成立しており,原告会社は本件特許権1及び2を1300万円で買い戻す権利を有するものの,原告会社の経営紛争(当庁平成12年(ワ)第4041号事件〔新株発行無効の訴え〕)が解決しない現在,買戻期限が到来していない。
したがって,本件特許権1及び2の現在の保有者は被告会社である。
(2) 被告会社の主張 ア 被告Aの原告会社に対する債権の発生原因については,被告Aの主張アのとおりである。平成10年12月10日,原告会社と被告Aは,上記債権を被担保債権として本件特許権1及び2に譲渡担保権を設定することを合意した。
平成11年6月25日,原告会社は,被告Aとの間で,被告Aの主張ア(ウ)記載のような内容の合意をし,合意書(乙15,丙1)を作成した。原告会社が弁済することなく,弁済期の平成11年12月6日を徒過したため,被告Aは,原告会社に対し本件譲渡担保権の実行を通知し,平成12年2月9日,譲渡担保権の実行として同被告は被告会社に本件特許権1及び2を1000万円で譲渡し,被告会社はこれを取得したものである。
イ 原告は,被告会社と被告Aの各主張が,本件特許権1及び2が被告会社に移転した経緯の点で相違すると主張している。すなわち,被告会社は,被告Aが譲渡担保権の実行として被告会社に本件特許権1及び2を取得させたと主張するが,被告Aは,原告会社から被告会社へ上記特許権が売却され,その代金で被告Aが原告会社に対する債権の弁済を受けたにとどまるという。
被告Aが譲渡担保権の実行を主張するのかどうかは明らかでないが,被告Aは,同被告の原告会社に対する債権の担保のため本件譲渡担保権を設定したこと,原告会社が上記特許権を被告会社に売却し,その代金を被告Aへの支払に充てたことを主張しているものであり,この売却行為を譲渡担保権の実行と評価するか否かは法律的な評価の問題であって,その基礎となる事実関係の主張に,両被告の間に矛盾はない。なお,本件特許権1及び2の被告会社への移転は,両被告への移転時期,譲渡担保権設定契約の存在,合意書(乙15,丙1)の存在等からすると,単なる売買でなく,譲渡担保権の実行と解すべきである。
また,原告会社から被告Aへの移転登録手続は,本件特許権1及び2に関する譲渡担保権の効力発生要件であり,譲渡担保権設定契約に基づいて当然になし得るから,譲渡担保権の実行ではなく,通知も不要である(乙7,3項)。本件譲渡担保権の実行は,本件特許権が確定的に被告Aに帰属し,債務の弁済等によっても取り戻せなくなることをいうと解すべきであるが,被告会社への移転はこれに当たるというべきである。
(3) 原告の主張 ア 被告らへの権利移転行為の不存在 被告Aから被告会社へ本件特許権1及び2が譲渡された旨の移転登録はあるが,それは外形のみであって,真実の譲渡行為は存在しない。なぜなら,被告Aは,同被告から被告会社へ本件特許権を譲渡したことを認めておらず,原告会社から被告会社に本件特許権1及び2が売却され,その際,被告Aの原告会社に対する貸付金につき弁済を受けたのだと主張する。これに対し,被告会社は,譲渡担保権の実行として被告Aから本件特許権1及び2を取得したと主張する。被告会社の主張は,取引相手たる被告Aがこの事実を否定する以上,信ずるに値しない。結局,被告A,訴外Bは,原告会社内に経営権をめぐる紛争が起こったことから,仮に,原告会社の経営権がC,Eらにあることが確認されたときでも,原告会社の唯一で,最大の資産である本件特許権1及び2を取得したことにしておけば,影響がないと考え,いったん,上記特許権を被告Aに移転登録したが,被告会社とも共謀し,さらに安全を期するためこれを被告Aから被告会社へ移転登録をしたものである。したがって,本件特許権1及び2について,実体的な権利移転はない。
イ 通謀虚偽表示による無効(予備的主張) 仮に,被告らの間に不正な目的にしろ本件特許権について何らかの権利移転の合意があったとしても,上記目的から虚偽の意思表示をしたものであるから無効である。これは被告Aが作成させたとする覚書(乙10の2)の記載からも明らかである。
ウ 本件特許権1及び2が,原告会社から直接被告会社に売買契約により譲渡されたとの主張に対する予備的主張 (ア) 本件特許権が,原告会社から被告会社に譲渡されたとする平成12年2月9日当時(乙8),Bは原告会社の取締役でも代表取締役でもなく,本件特許権1及び2を譲渡する権限のないことを,被告会社,被告A及びBは全員承知していたものであるから,上記譲渡に関する売買契約は成立していない。
(イ) 仮に,上記売買契約が何らかの意味で成立しているとしても,下記理由から無効である。すなわち,原告会社内に内紛があり,Bの代表取締役としての権限に疑問があること,1億円で購入した本件特許権をわずか1000万円で売却するという背任的行為であること,その売却代金は上記売買契約等を指導している被告Aに対する弁済資金に充てられる目的であったこと,上記売買は純粋な売買目的ではなく,原告会社の内紛を有利にし,かつ,本件特許権を内紛の相手方に渡さない目的であったこと,本件特許権の購入に際し,被告Aは原告会社の代理人をしており,原告会社の内紛に際し,どちらにも加担すべきでない立場にあるにもかかわらず,一方的にBに加担して,本件売買契約を進めていたことなどを当事者が充分承知しながら行った売買契約であることからすると,同取引は権利の濫用もしくは信義則違反により無効である。
エ 本件特許権1及び2が譲渡担保権の実行として,被告Aより被告会社に譲渡されたとの主張に対する予備的主張 (ア) 平成10年12月10日の金銭消費貸借及び譲渡担保契約の不存在 上記当時弁護士報酬350万円の話は,一切被告Aから原告会社に伝えられておらず,同人より報酬請求の話があったのは平成11年1月12日になってからである。しかるに,上記報酬が被担保債権となっていることからみて,本件特許権の取得を目的として,後日,同契約書が被告Aと訴外Bとの間で,原告会社の了解なく作成されたにすぎない。また,原告会社の代表取締役Bの名下に押されている代表者印は,代表者たるCの印であって,Bのものではない。
したがって,譲渡担保契約書が存在するだけであって,被告Aと原告会社の間に同趣旨の契約は存在しない。
(イ) 仮に,上記譲渡担保契約が何らかの意味で成立しているとしても,担保権の実行は下記理由から無効である。上記譲渡担保権の実行については,前記ウ(ア)記載のような事情があるうえに,譲渡担保権実行の通知が被告Aより原告会社になされていないこと,被担保債権につき,被告Aが貸付したという700万円の内,同人が借り入れて用意したという500万円については,原告会社名義で新たに借入れをして,被告Aの借入先に弁済をしており,かつ弁護士報酬も300万円は支払済みであったから,被担保債権額はわずか250万円しかなかったことを考慮に入れるならば,上記譲渡担保権の実行は,権利の濫用もしくは信義則違反により無効というべきものである。
(ウ) 取締役会決議の不存在 仮に原告会社と被告Aとの間に譲渡担保契約が存在するとしても,原告会社において,本件特許権1及び2は,極めて重要な財産であるにもかかわらず,Bが代表取締役としてこれを被告Aに譲渡担保として供するに際し,取締役会決議を経ていないばかりか他の取締役に全く知らされていないから,商法260条2項1号の要件を欠く。したがって,同譲渡担保契約は効力がない。また,被告会社は,被告Aが監査役に就任し(その後,原告会社からの被害届に基づく事情聴取において,神田警察署から問いつめられてあわてて辞任した。),Bの妻であるJが100%株主で代表取締役を務めていたという会社であるから,善意の第三者とは到底いえず,上記譲渡担保契約の効力がないことを甘受すべき立場である。
当裁判所の判断
1 本件における事実関係について 前記当事者間に争いのない事実に証拠(甲1ないし16,甲24ないし26,乙1ないし15,乙18ないし20,乙22,乙23,乙26,乙28,乙34,乙39,丙1ないし4,証人C,同B,原告代表者本人,被告A本人。書証の枝番号は省略する。)及び弁論の全趣旨を総合すれば,以下の事実が認められる。
(1) 原告会社の設立 平成10年夏ころ,Eは大手保険会社に勤務していたところ,Bが株式会社木村屋総本店の役員らと共に,融資を受けるための相談に,同保険会社を訪れた。BとEは,大学のボクシング部の先輩後輩という関係にあって面識があったところ,Eは平成12年1月に上記保険会社を定年退職する予定であったことから,退職後の進路として,Bが計画中の事業に参加することとした。そして,Eは,知人のC,Dを誘って同人らをも当該事業に参加させた。
こうして,B,Eらは,本件特許権1及び2を用いた商品製造開発・販売の事業化を目指して,平成10年9月11日に原告会社を設立した。原告会社の設立時の株主は,B,E,C,Dの4名であった。持株数は,4名で話し合い,Bの強い希望を容れて,Bが55%の110株,その余の3名が15%ずつの30株となった。原告会社の役員構成は,B,C,Dがいずれも,各人が単独で代表権を行使できる代表取締役となった。その後,平成11年7月22日に,Dが代表取締役を辞任し,その結果,原告会社の取締役兼代表取締役はBとCの両名となった。Eが原告会社の役員となるのは平成11年12月3日以降であるが,上記のような経緯から,Eは,平成12年1月に上記保険会社を定年退職する以前から,原告会社の活動に実質的に参画していた。
原告会社では,Bがもともと次に述べる本件特許権1及び2を用いた商品製造開発・販売の事業化を目指していたところに,E,Cらが後からこれに加わったという上記の経緯から,Bが営業等の活動をし,Cらが資金調達等を担当するという役割分担となっていた。
また,被告Aは,以前からBと面識があり,原告会社の法律顧問として原告会社に密接に関わるようになっていった。
(2) 本件特許権1及び2の取得 原告会社は,訴外会社から調理食品のパック方法等に関する本件特許権1及び2の譲渡を受けることを企図し,被告Aが原告会社の代理人としてその交渉に当たった。訴外会社の直前の名義人は株式会社ウェーブクックという会社であり,同社は暴力団員が経営する会社のようであったが,同社が実質的に特許権1及び2を保有している様子であった。このため,被告Aは,この会社を経営する暴力団員と交渉しようとした。ところが,同人が勾留中であったため,同人と接見して交渉することにし,たびたび接見して,特許権1及び2を譲り受ける交渉をまとめることに成功した。
最終的に本件特許権1及び2の譲渡代金は1億円と合意され,これに商標等の代金1000万円が加わって,合計1億1000万円となった。譲渡代金については,原告会社は,当初,この半額程度の金額を想定していたため,用意していた資金でこの代金を支払うことができず,借入れをして代金を支払わざるを得なかった。代金額が上記の金額となったことは,売主側の対応によるところもあり,一概に被告Aの交渉に問題があったとはいえないが,原告会社のE,Cらは,被告Aの当該事務処理につき,不満を抱くこととなった。
原告会社は,平成10年11月26日付けで本件特許権1及び2の譲渡を受け,本件特許権1については同月30日,受付第004348号をもって移転登録を経由した。また,同月26日,本件特許権2の特許を受ける権利について,出願人名義変更届を提出した。
(3) 被告Aの報酬 上記被告Aの事務処理に対する報酬として,同被告は,当初500万円を口頭でBに伝えることによって原告会社に請求した。しかし,上記のようにCらが同被告の事務処理に不満であったこと,後記(4)のように,原告会社は資金難の状態にあり,被告Aが当初の予想を上回る代金額で譲渡契約を締結したことが資金難に拍車を掛けたことから,Cらはこの要求を受け入れなかった。このため,Cらの上記意向を入れて,同被告と原告会社との間で交渉を進め,報酬額は350万円と決定された。
(4) 本件譲渡担保権の設定 原告会社は,本件特許権1及び2を用いた商品製造開発・販売の事業化を目指していたが,上記事業化はなかなか進展しなかった。このため,原告会社は,事務所費用等最低限必要な費用の支出がある一方,収入は全くない状況で,資金に窮し,B,Cらの活動資金や報酬も支払われなかった。このため,Bは,被告Aに対し,1000万円の借入方を申し入れた。
被告Aは,自ら原告会社に貸し付けることは気乗りがせず,かつ調達できる資金の額も200万円程度しかなかった。しかし,ここで原告会社に資金を融通しないと,上記報酬350万円が回収できなくなってしまうと考え,仕方なくBの要請に応ずることにした。同被告は,自己の定期預金200万円を解約し,これを原告会社に貸し付けることとした。さらに,これだけでは不足なので,同被告が顧問をしていた金融業者である訴外銀座クレジットことHを原告会社に紹介した。しかし,Hが原告会社ではなく同被告に貸し付ける形を取ることを強く望んだため,平成10年12月9日,同被告は,Hから500万円を,返済期限平成11年1月8日,利息月3分の約定で借り入れた。そして,同被告は,平成10年12月10日,この500万円に自己資金200万円を加えた合計700万円を,Bに貸し渡した。同被告は,この700万円に上記報酬350万円を加えた合計1050万円を被担保債権として,その債権保全のため,原告会社の唯一の財産である本件特許権1及び2に譲渡担保権を設定することを申し入れた。これに対し,Bは,上記のように同被告に私財を提供してもらうなどして資金を融通してもらったことから,これを応諾し,本件特許権1及び2に譲渡担保権が設定された。同日付けで,Bが代表取締役として原告会社を代表し,同被告との間で,「金銭消費貸借並びに譲渡担保契約書」(乙7)を作成した。
(5) プレジデントからの借入れ等 Hからの借入金500万円の返済期日である平成11年1月8日が到来したが,原告会社では,事業が進展していなかったので,これを返済することができなかった。そこで,Hからの上記借入金の借主となっていた被告Aは,とりあえず,自己の別の顧問先であるプレジデントインターナショナルことIから500万円を借り入れることによって,Hからの借入金を返済することとした。そして今回のIからの借入れについては,Hからの借入金のように被告Aが借主となるのではなく,原告会社を借主とするようBに申し入れた。Bは,原告会社の他のメンバーと相談し,Cらもこれに同意した。このような経緯で,平成11年6月7日,原告会社は,プレジデントことIから500万円を月利2パーセント,弁済期平成11年12月6日の約定で借り入れた。
この借入れの際,Cは,自己が信頼するEに,原告会社の記名印と代表者印を持たせて赴かせた。原告会社が借主となり,代表取締役のCの名をEが記名押印を代行して借用証書(甲14,乙13)を作成した。そして,Bが連帯債務者,Eと紹介者である被告Aが連帯保証人となった。
そして,被告Aは,同年6月8日,上記借入金500万円をもって,Hに対する500万円の借入金を弁済した。
原告会社は,被告Aに対し,前記350万円の報酬のうち,平成11年1月20日,同年2月8日,同年3月12日,同年4月5日,同年5月18日及び同年7月26日に各50万円(合計300万円)を支払った。
(6) Bの取締役辞任 原告会社では,取得した本件特許権1及び2を利用して,食品会社やコンビニエンスストアなどに対して営業活動を行ったが,原告会社が契約一時金の支払を求めたことなどから,なかなか成立に至らず,資金難の状況が続いた。そのようななかで,平成11年11月ころから12月ころにかけて,B,E,Cらと面識のある政治家の訴外Fから,同人の口利きで5000万円の融資を受けられるという話が持ち込まれた。そして,同人から,この融資を受けるには,代表者が,信用のないBやCよりも,大手保険会社に勤務していたEの方がよいとのアドバイスを受けた。こうして,平成11年12月3日付けで,Bは取締役と代表取締役を,Cは取締役を辞任することとなり,Bは辞任届(乙3)に署名・捺印してCに交付した。しかしながら,その後になって,Bは,自分の辞任後新たな代表取締役となるEが,原告会社を支配して好きなように振る舞うのではないかと不安になり,同月8日にEを被告Aの事務所に呼び出し,自分が辞任するのは上記融資を受けるための便宜的な措置にすぎないことなどを確認した書面を作成するよう求めた。これに対しEは抵抗し,電話でCに相談するなどしていたが,結局,@BがEらに交付した辞任届(乙3)は,原告会社がFを通じて融資を受けるための便宜的な措置である,AEは,借入れが実行されたとき,又は実行不能となったときは,直ちにBが原告会社の代表取締役会長に復することを認める,BEは,商業登記簿上Bが代表取締役兼取締役を辞任している間においても,事実上Bが代表取締役会長として会社業務を遂行することを認める,との3点を内容とする確約書(乙4)に署名捺印した。ところがその後も融資の話が具体化しないので,同月27日,Bは,当時新宿の野村ビルにあった原告会社の事務所を訪れ,前記の自分の辞任届を返還するよう求め,大騒ぎの末,これを取り戻した。しかし,Cらは,「B」の三文判を使用して,同日付けで,Bの辞任の登記手続を行った。
(7) 本件譲渡担保権の登録 このようななかで,プレジデントからの借入金の弁済期日平成11年12月6日が到来したが,原告会社はこれを返済することができなかった。原告会社は,プレジデントから借り換えし,新たな弁済期は平成12年2月7日となった。
前記(6)のように,EらがBの退任登記を行ったことを知った被告Aは,Bを代理して,同年1月7日,Eらを被疑者とする私文書偽造事件として,神田警察署に告訴の手続をとった。そして,被告Aは,同日,同被告の事務所を訪れたEとCに対し,上記告訴手続をとったこと及び今後は同人らを敵と認識する旨を伝えた。その際,被告Aは,Eらの上記行為が,原告会社における支配権を奪うことにあると考え,E及びCに対して,多数株主であるBに無断で増資を強行しても無効であるからそのようなことをしないようにと警告した。ところが,被告Aのこの警告にもかかわらず,Eらが原告会社の資本金を1000万円から2000万円に増資する手続を行ったため,被告Aはこれにより,原告会社の内紛により前記プレジデントからの借入金が返済される見通しがなくなったと判断した。そこで,同被告は,自己の債権を保全するために,本件譲渡担保権の設定登録をしようと考えた。
同被告は,既に,前記(6)のような事柄があった平成11年12月27日の時点で原告会社から預かっていた書類を利用して譲渡担保権による移転登録を申請していたが,当該申請が印鑑不適合により平成12年1月20日に却下されたので,再度同年2月3日に従前の申請書類を用いて原告会社から被告Aへの移転登録申請を行い,同月21日,移転登録を経由した。本件特許権2についても,平成11年11月26日,被告Aは,特許庁に対し,原告会社から特許を受ける権利の譲渡を受けたとして,出願人名義変更届を提出し,その旨の名義変更がされた。
(8) 本件譲渡担保権の実行等 このころ,プレジデントからの借入金の弁済期日である平成12年2月7日が到来したが,原告会社では内紛によりこれを支払える状況になく,Eらもこれを支払おうとしなかったので,同日,被告Aはやむなく500万円をプレジデントに弁済した。そして,同被告は,原告会社が前記被担保債権の残額やこの500万円を任意に支払う見込みがないことから,本件譲渡担保権を実行しようと考えるようになった。
平成12年1月11日,Bの関係者によって被告会社が設立され,Bの妻であるJとKが代表者となった(現在の代表者はJの兄である。)。同年2月8日,Kが被告Aの事務所を訪れ,本件特許権1及び2を1000万円で買い取りたい旨申し入れた。被告Aは,他に売却の当てがなかったことから,被告会社に上記特許権を売却することとした。
同月9日,Bが,原告会社の代表者として,被告会社代表者Kとの間において,本件特許権1及び2を1000万円で売却する内容の売買契約を締結し,契約書(乙8)を作成した。そのうえで,同日,B,被告会社代表者K及び被告Aとの間で,特許移転に関する合意書(乙9)を取り交わし,本件特許権1及び2を被告会社に譲り渡すことにし,被告会社から支払われた1000万円の売買代金は,被告Aが借入金の返済等として受領した。また,同月19日,Bと被告会社代表者Kは,L会計士立会いの下で,覚書(乙10の2)により合意をしたが,その中には,原告会社の増資が無効とされ,かつBが原告会社の代表取締役に復したときには,原告会社は被告会社に対し,1300万円で本件特許権1及び2を買い戻すことができる旨の買戻条項が入れられた。
被告会社は,本件特許権1について,平成12年2月18日受付第000697号をもって移転登録を経由した。
被告会社は,本件特許権2について,平成12年11月ころ,特許庁に対し,被告Aから特許を受ける権利の譲渡を受けたとして,出願人名義変更届を提出し,その旨の名義変更がされた。
(9) 本件特許権2の設定登録等 本件特許権2については,出願人名義が被告会社に移転した後の平成12年11月24日に設定登録がされた。
Bは,平成12年2月29日,原告会社の新株発行無効確認等の訴えを提起し,原告会社では,本件特許権1及び2の処分禁止の仮処分を申し立て,さらに本件訴えを提起して,現在に至っている。
2 争点1(被告Aの本案前の主張)について 上記認定事実を前提に,争点につき検討する。
(1) Bの辞任の意思表示の有効性について 上記1(6)において認定したところによれば,原告会社が5000万円の融資を受けられる話が訴外Fから持ち込まれ,この融資を受けるには,原告会社の代表者が信用のないBやCよりも大手保険会社に勤務していたEの方がよいとのアドバイスをFから受けたことから,平成11年12月3日付けで,Bは取締役と代表取締役を,Cは取締役を,それぞれ辞任することとし,Bは辞任届に署名・捺印してCに交付したものであり,その後になって,Bは,自分の辞任後新たな代表取締役となるEが原告会社を支配して好きなように振る舞うのではないかと不安になり,同月8日になって,Eに対し,自分が辞任するのは上記融資を受けるための便宜的な措置にすぎないことなどを確認した書面を作成するよう求め,乙4の確約書が作成されたというのである。このような経緯に照らせば,同確約書(乙4)は,Bが取締役及び代表取締役を辞任する旨の意思表示をした後に,融資が実行後再び従前の役職に復帰することの保証を求めて作成させたものであり,また,上記において認定のとおり,その内容には,「Eは,借入れが実行されたとき,又は実行不能となったときは,直ちにBが原告会社の代表取締役会長に復することを認める」旨及び「Eは,商業登記簿上,Bが代表取締役及び取締役を辞任している間においても,事実上,Bが代表取締役会長として会社業務を遂行することを認める」旨が含まれているが,これらの内容は,Bの代表取締役及び取締役の辞任が有効に行われ,その旨の商業登記がされることを当然の前提とした上で,その後にBが代表取締役に復帰し,あるいはBが「事実上」代表取締役としての業務を遂行することを記したものであるから,その記載内容からすれば,かえって,Bの辞任の意思表示が有効に行われたものであることをうかがわせるものである。
上記によれば,Bは自らその真意に基づいて辞任の意思表示をしているものであって,原告会社の代表取締役を平成11年12月3日の時点で辞任したものというべきである。
(2) 被告Aの主張について この点につき,被告Aは,Bの原告会社の代表取締役辞任が,前記1(6)の融資を受けるために行った形式のみのもので,意思表示の要件を欠く,あるいは心裡留保ないし詐欺であるなどと主張する。しかしながら,当時,BやC,Eらの間には,融資を受けるためには対外的信用のある者を代表者にした方がよいこと,そのために少なくとも融資が実行されるまでは代表取締役ないし取締役の一部の者は辞任することについて共通の認識が存在したものと認められる。
融資を受けるために対外的信用のある者を代表者にするということは,企業経営上,あり得べき選択であり,仮にBにおいて融資実行後に代表取締役に復帰するとの思惑を有していたとしても,そのことは,Bの代表取締役辞任の意思表示の有効性を左右するものではない。
本件において,Bの辞任の意思表示自体は有効な意思表示として認められるというべきである。
上記のとおり,Bの意思表示は真意に基づくものと認められるものであって,心裡留保(民法93条ただし書き)や通謀虚偽表示(同法94条)に該当するものではなく,錯誤無効(同法95条)を論ずる余地もない。
また,上記の融資の話は結局実現しなかったものであるが,Bの辞任当時,上記融資の話がどこまで具体性のあったものかはともかく,この件でCが金融機関を訪れるなどしていることが認められる(証人C等)ものであって,本件全証拠を総合しても,この融資の件が,Bに代表取締役及び取締役を辞任させて,原告会社の実権を,Eやこれと意見を相通じたCが奪うために持ち出した虚偽の話であるとまでは認められない。したがって,Bの辞任につき,Eらの詐欺によるものであるとの主張は,その前提を欠く。
(3) Eの代表取締役選任について そして,証拠(甲28ないし31)によれば,上記辞任の後,原告会社の取締役会において,Eが代表取締役に選任されていると認められるから,原告会社の代表者はEと認めるべきである。
したがって,原告会社の代表者はEでなくBであるとして,本件訴えの提起が不適法であるとする被告Aの本案前の主張は,その前提を欠くものであって,採用できない。
3 争点2(本件特許権1につき,原告会社から被告Aへ,被告Aから被告会社への権利の移転は有効にされたかどうか,また本件特許権2につき,原告会社から被告Aへ,被告Aから被告会社へ特許を受ける権利が譲渡されたかどうか)について (1) 本件譲渡担保権の有効性について ア 取締役会の承認について 前記1に認定したところによれば,本件譲渡担保権は,平成10年12月10日,Bが原告会社を代表して,被告Aとの合意により設定したものである。
Bが本件譲渡担保権設定当時,原告会社を単独で代表する権限があったことは,既に認定したところから明らかである。
原告は,譲渡担保に供された本件特許権1及び2は原告会社の重要な財産であり,これを担保に供するには取締役会の決議を要するところ(商法260条2項1号),原告会社の他の取締役であるEやCは本件譲渡担保権の設定について全く知らされていなかったものであるから,本件譲渡担保権設定契約は,取締役決議を欠くものとして無効であると主張する。
しかしながら,株式会社の代表取締役が,取締役会の決議を経てすることを要する対外的な個々的取引行為を,同決議を経ないでした場合でも,当該取引行為は,内部的意思決定を欠くにとどまるから,原則として有効であって,ただ,相手方が同決議を経ていないことを知り又は知ることができたときに限って,無効であると解するのが相当であるところ(最高裁昭和36年(オ)第1378号同40年9月22日第三小法廷判決・民集19巻6号1656頁),本件においては,なるほど,本件譲渡担保権の設定につき,原告会社の取締役会でこれを承認したことを示す議事録等は存在しないが,本件譲渡担保権の設定契約書(乙7)には,原告会社の代表社印が押印されているものであり,当該代表者印は当時CもしくはDが保管しており,Bは,被告Aから500万円の借入れをすることをC及びDの両名に対して説明して,代表者印の交付を受けたことが,証人Cの証言からも認められる。そうすると,本件譲渡担保権の設定については,事前にC及びDの知るところであったと認められるから,これを事前に承認する取締役全員(BとC及びDの3名が当時の原告会社の取締役全員である。)の合意が存在したものと認められるから,本件譲渡担保権は有効に設定されたものというべきである(仮に,取締役全員の合意が存在したとまでは認められないとしても,被告Aにおいて,取締役会の決議を欠くことを知り,又は知ることができたということは到底できないから,いずれにしても本件譲渡担保権設定契約は有効である。)。
イ 本件譲渡担保権の被担保債権について 次に,上記1において認定したところによれば,本件譲渡担保権設定の際に被担保債権として合意されたのは,@被告Aの原告会社に対する報酬債権350万円,A同被告がBを通じて原告会社に私財を貸し付けた200万円,B同被告がHから借りて,Bを通じて原告会社に貸し付けた500万円,の合計1050万円であるところ,このうちBのHからの借入金を原資とする貸付金500万円は,プレジデントから原告会社が借りた500万円により弁済されているが,@の報酬350万円については,300万円が弁済されているものの,残額50万円が未払いであり,また,Aの被告Aが私財を貸し付けた貸金200万円は,全額が未返済のままである。
本件特許権1及び2については,プレジデントからの借入金により上記Bの貸付金の弁済がされた後である平成11年6月25日に,Bが原告会社代表者として(Bは,当時,いまだ代表取締役の職にあった。),被告Aとの間で合意書(乙15)を作成しており,これによれば,同日までの間に,原告会社と被告Aとの間で,上記@の報酬の残金(当時の残額は100万円),Aの貸付金200万円に,プレジデントからの借入金についての連帯保証人としての被告Aの求償権500万円を加えた合計800万円を被担保債権とする譲渡担保権を本件特許権1及び2につき設定する旨の譲渡担保権設定契約が改めて締結されていたことがうかがえるが,いずれにしても,上記のとおり,本件譲渡担保権実行の時点において,被担保債権として,少なくとも上記@Aの残額250万円は存在していたと認められる。
(2) 本件譲渡担保権の実行について ア 前記1(8)において認定のとおり,本件特許権1及び2は,平成12年2月9日,本件譲渡担保権の担保権者である被告Aにより,譲渡担保権の実行(処分清算)として,被告会社に移転されたものである。
譲渡担保権者が被担保債権の弁済期後に目的不動産を譲渡した場合には,譲渡担保権を設定した債務者は,譲受人がいわゆる背信的悪意者に当たるときであると否とにかかわらず,債務を弁済して目的不動産を受け戻すことができない(最高裁平成元年(オ)第23号同6年2月22日第三小法廷判決・民集48巻2号414頁)と解されるところ,このことは,不動産以外の財産権が譲渡担保権の対象とされている場合であっても,同様と解される。
証拠(乙15)によれば,上記(1)イで判示した本件譲渡担保権の被担保債権の弁済期は,被告Aから原告会社への貸付金200万円及び弁護士報酬のいずれについても,平成11年12月6日と認められ,本件譲渡担保権実行時である平成12年2月ないし11月の時点において,これらの弁済期が到来していることは明らかである。そうすると,本件においては,被担保債権の弁済期到来後に譲渡担保権者である被告Aが譲渡担保権の目的物である本件特許権1及び2を被告会社に譲渡する形で処分したものであるから,譲受人である被告会社は確定的に本件特許権1及び2を取得し,他方,債務者である原告会社は,これらの権利を確定的に喪失したものである。そして,それ以降においては,債務者である原告会社が,仮に被担保債務を弁済したとしても目的物である本件特許権1及び2を受け戻すことはできず,あとは譲渡担保権者である被告Aから原告会社への清算金の支払の問題が残るだけである。
イ 原告の主張について (ア) 原告は本件譲渡担保権の実行による本件特許権1及び2の被告会社への移転の効力を争い,譲渡行為が外形のみのものであるとか,通謀虚偽表示であるとか主張する。しかしながら,上記1において認定したとおり,本件譲渡担保権は,被告Aが,自己の原告会社に対する債権につき原告会社から弁済される見通しがなくなったことから,その回収のためにこれを実行したものである。そして,上記認定の経緯に照らせば,本件特許権1及び2の譲渡先がBの関係者である被告会社であることは,他に処分先も見当たらなかったことから被告会社に譲渡したにすぎないものであって,そのことを理由に直ちに本件譲渡担保権の実行が虚偽であり,あるいは仮装のものであると認めることはできない。
(イ) また,原告は,本件譲渡担保権の実行時にBは原告会社の代表者ではなかったから,原告会社からの譲渡が成立しないとも主張するが,譲渡担保権の実行には,担保権者と譲受人の合意があれば足り,目的物の譲受人への権利移転に債務者の譲渡の意思表示を要するものではないから,この主張も採用できない。
(ウ) さらに,原告は,譲渡行為が,権利の濫用もしくは信義則違反により無効であると主張し,その根拠として,上記(ア)及び(イ)に述べたところのほか,1億円で購入した本件特許権1及び2をわずか1000万円で売却するという背任的行為であること,その売却代金は上記売買契約等を指導している被告Aに対する弁済資金に充てられる目的であったこと,本件特許権の購入に際し,被告Aは原告会社の代理人をしており,原告会社の内紛に際し,どちらにも加担すべきでない立場にある者であること,被担保債権が250万円しか残存していなかったことなどを主張する。しかしながら,たしかに本件特許権1及び2については,これを被告Aが原告会社の代理人として訴外会社と交渉し,代金1億円でこれを購入したものであるが,そもそもこの購入価額が客観的な評価額と一致するものであったかどうか疑問の余地がある上に,その後,これらの権利を利用しての事業化が原告会社において難航し,結局進展しなかったことをも併せ考慮すれば,本件譲渡担保権実行時における本件特許権1及び2の適正な評価額が原告主張のように1億円に達するものであったとはにわかに認められない。また,本件譲渡担保権実行時における本件特許権1及び2の適切な評価額が被担保債権である250万円(あるいは,これにプレジデントからの借入金についての求償権500万円を加えた750万円)を超えるものであったとしても,それは譲渡担保権者から債務者に支払われるべき清算金の多寡には影響するとしても,そのことから直ちに本件譲渡担保権実行が権利の濫用ないし信義則違反により無効となるものではない。
また,被告Aが原告会社の代理人として本件特許権1及び2の取得に関与したにもかかわらず,私的に原告会社に融資した上,自己の債権を保全するためにこれを譲渡担保として取得し,さらには第三者に処分することによりこれを実行したことは,弁護士としての活動のあり方からすれば問題となり得る行為かもしれないが,そのことから直ちに本件譲渡担保権の設定ないし実行が無効となるものではない。
原告の主張は,いずれも採用できない。
(3) 小括 上記(1)及び(2)に判示したとおり,本件譲渡担保権の設定は有効に行われており,その実行により,本件特許権1及び2は被告会社へ移転し,これに伴って原告会社は確定的に権利を喪失したものであるから,原告は,もはやその返還を求めることはできない。
したがって,本件特許権1につき被告A及び被告会社に移転登録の抹消登録手続を求め,本件特許権2につき被告会社に移転登録手続を求める原告の請求は,いずれも理由がない。
4 結論 以上によれば,原告の請求は,その余の点について検討するまでもなく,いずれも理由がないというべきである。
よって,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 三村量一
裁判官 村越啓悦
裁判官 青木孝之