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関連ワード 製造方法 /  進歩性(29条2項) /  容易に発明 /  設定登録 /  請求の範囲 /  減縮 /  取消決定 / 
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事件 平成 13年 (行ケ) 520号 特許取消決定取消請求事件
原告 東洋インキ製造株式会社
訴訟代理人弁理士 三好秀和
同 岩崎幸邦
同 高久 浩一郎
同 原裕子
同 羽室 真木子
被告 特許庁長官太田 信一郎
指定代理人 石井良夫
同 山田充
同 森田 ひとみ
同 大橋良三
同 涌井幸一
同 一色 由美子
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 2003/03/27
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
主文 1 特許庁が異議2001−70981号事件について平成13年9月27日にした決定をすべて取り消す。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
当事者の求めた裁判
1 原告 (1) 主文1項と同旨 (2) 訴訟費用は被告の負担とする。
2 被告 (1) 原告の請求を棄却する。
(2) 訴訟費用は原告の負担とする。
当事者間に争いのない事実
1 特許庁における手続の経緯 原告は,発明の名称を「珪素酸化物系蒸着フィルムおよびその製造方法」とする特許(特許第3094702号,平成4年11月19日出願,平成12年8月4日設定登録,以下「本件特許」という。)の特許権者である。
平成13年3月26日,本件特許に対し,請求項1ないし3につき,特許異議の申立てがなされた。特許庁は,これを異議2001-70981号事件として審理し,その結果,平成13年9月27日,「特許第3094702号の請求項1ないし3に係る特許を取り消す。」との決定をし,同年10月22日に,その謄本を原告に送達した。
2 決定の理由 決定の理由は,要するに,本件特許請求の範囲請求項1ないし3に係る発明は,いずれも,刊行物1(特開平3-239537号公報),同2(「日本接着学会誌」Vol.27,No.6,246頁〜251頁,平成3年6月1日,日本接着学会発行)及び同3(「Japan Energy & Technology Intelligence」Vol.39,No.12,95頁〜97頁,平成3年11月1日,株式会社ジェティ)に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである,とした上,請求項1ないし3に係る特許は,いずれも,特許法29条2項に違反してなされたものである,とするものである。
3 訂正審決の確定 原告は,本訴係属中,平成14年7月30日付けで,本件特許の出願の願書に添付した明細書(以下「本件明細書」という。甲第1号証は,その内容が記載された公開公報である。以下,これを「本件特許公報」という。)につき,特許請求の範囲減縮を含む訂正の審判を請求した。特許庁は,これを訂正2002-39163号事件として審理し,その結果,平成15年1月6日に上記訂正をすることを認める旨の審決(以下「本件訂正審決」という。)をし,これが確定した。
4 本件訂正前の本件特許の請求項 (1) 【請求項1】プラスチックフィルムの少なくとも片面に,珪素酸化物または珪素酸化物を主成分とした蒸着薄膜層と,有機金属化合物の1種または2種以上を加水分解し部分縮合させたゾル溶液を用いて形成されたガラス質被膜とを順次積層してなる蒸着フィルム。
(2) 【請求項2】有機金属化合物が,分子中に2個以上の炭素数1〜4のアルコキシル基を有し,Si,Ti,Al,B,Zr,W,Taから選ばれる1種の金属元素を含む化合物である請求項1記載の蒸着フィルム。
(3) 【請求項3】プラスチックフィルムの少なくとも片面に,珪素酸化物または珪素酸化物を主成分とした蒸着薄膜層を形成したのち,該蒸着薄膜層の上に,有機金属化合物の1種または2種以上を混合した溶液または該混合溶液をアルコールなどの有機溶媒に溶かして加水分解し部分縮合させたゾル溶液をコーティングし,熱処理を施すことでガラス質被膜を形成する蒸着フィルムの製造方法
5 本件訂正審決による特許請求の範囲に係る訂正の内容 (1) 請求項1及び3中の「有機金属化合物」を,「分子中に2個以上の炭素数1〜4のアルコキシル基を有しSi,Ti,Al.Bから選ばれる1種の金属元素を含む有機金属化合物」と訂正する。
(2) 請求項2中の「Si,Ti,Al,B,Zr,W,Taから選ばれる」とあるのを,「Si,Bから選ばれる」と訂正する。
(3) 請求項3中の「混合した溶液または該混合溶液をアルコールなどの有機溶媒に溶かして」とあるのを,「混合しアルコールに溶かして」と訂正する。
当裁判所の判断
上記当事者間に争いのない事実の下では,本件特許の請求の範囲請求項1ないし3について,特許法29条2項に違反して登録された特許であることを理由に,その特許を取り消した決定(以下「本件取消決定」という。)の取消しを求める訴訟の係属中に,上記各請求項のすべてにつき,特許請求の範囲減縮を含む訂正の審判の請求がなされ,特許庁は,これを認める審決(本件訂正審決)をし,これが確定したということができる。
本件取消決定は,これにより,結果として,請求項1ないし3のいずれについても,判断の対象となるべき発明の認定を誤ったことになる。上記各請求項のいずれについても,この誤りが本件取消決定の結論に影響を及ぼすことは明らかである。したがって,本件取消決定は,すべて,取消しを免れない。
以上によれば,本訴請求は理由がある。そこで,これを認容し,訴訟費用の負担については,原告に負担させるのを相当と認め,行政事件訴訟法7条,民事訴訟法62条を適用して,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 山下和明
裁判官 阿部正幸
裁判官 高瀬順久