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関連ワード 進歩性(29条2項) /  設定登録 /  請求の範囲 / 
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事件 平成 14年 (行ケ) 106号 審決取消請求事件
原告 日特エンジニアリング株式会社
訴訟代理人弁護士 杉浦幸彦
訴訟代理人弁理士 後藤政喜
同 松田嘉夫
同 飯田雅昭
同 三田康成
被告 株式会社多賀製作所
訴訟代理人弁理士 吉田芳春
同 高橋 敬一郎
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 2003/03/27
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
主文 1 特許庁が無効2001−35256号事件について平成14年1月29日にした審決中,特許第2693401号の請求項1項ないし4項(訂正2002−39119号の審決による訂正前の1項ないし4項であり,同審決による訂正後の1項ないし4項でもある。)に係る特許を無効とする旨の部分を取り消す。
2 その余の請求に係る原告の訴えを却下する。
3 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
当事者の求めた裁判
1 原告 (1) 特許庁が無効2001-35256号事件について平成14年1月29日にした審決を全部取り消す。
(2) 訴訟費用は被告の負担とする。
2 被告 (1) 原告の請求を棄却する。
(2) 訴訟費用は原告の負担とする。
当事者間に争いのない事実
1 特許庁における手続の経緯 原告は,発明の名称を「偏向コイルの巻線機及び圧着用導電性部材」とする特許(特許第2693401号,平成7年5月15日出願(以下「本件出願」という。),平成9年9月5日設定登録,以下「本件特許」という。)の特許権者である。
被告は,平成13年6月18日,本件特許を,請求項1ないし6につき,無効にすることについて審判の請求をした。
特許庁は,これを無効2001-35256号事件として審理した。原告は,この審判手続において,本件出願の願書に添付された明細書(以下「本件明細書」という。)につき,平成13年8月29日付けで,請求項5を削除し,請求項6を請求項5に,請求項7を請求項6に繰り上げることを含む訂正の請求をした。
審決は,審理の結果,この訂正(以下「本件第1訂正」という。)を認めた上で,平成14年1月29日,「特許第2693401号の請求項1ないし5に記載された発明についての特許を無効とする。」との審決をし,同年2月8日に,その謄本を原告に送達した。
2 審決の理由 審決の理由は,要するに,本件第1訂正後の請求項1ないし5に係る特許は,いずれも特許法29条2項に違反してなされたものである,とするものである。
3 訂正審決の確定 原告は,本訴係属中,平成14年5月14日付けで,本件明細書につき,特許請求の範囲の訂正を含む訂正の審判を請求した。特許庁は,これを訂正2002-39119号事件として審理し,その結果,平成14年12月11日に上記訂正(以下「本件第2訂正」という。)をすることを認める旨の審決(以下「本件訂正審決」という。)をし,これが確定した。
4 本件第1訂正前の特許請求の範囲(甲第2号証の1・特許公報に記載されたもの) 「【請求項1】被覆導線からなる線材を供給する線材供給機構と,線材供給機構から供給される線材を巻き回して偏向コイルを形成する金型とを備えた偏向コイルの巻線機において,線材供給機構から供給された線材の両側から線材の外周に当接または近接して配置される導電性部材と,これらの導電性部材を線材に圧着する手段と,線材の導電性部材圧着部に所定の電圧を印加する一対の第1の電極と,移動した導電性部材を第1の電極以外の場所に係止する手段と,この導電性部材を移動する手段と,この導電性部材と前記圧着手段により新たに線材に圧着された導電性部材との間に電圧を印加する一対の第2の電極とを備えるとともに,前記導電性部材を導電性の帯状連続部材で構成し,この帯状連続部材を前記圧着手段へ供給する手段と,帯状連続部材を所定の位置で切断する手段とを備えたことを特徴とする偏向コイルの巻線機。
【請求項2】前記帯状連続部材の一部を所定間隔で切り起こして折り曲げたフープ材で形成したことを特徴とする請求項1に記載の偏向コイルの巻線機。
【請求項3】前記導電性部材の移動手段が,移動機構を備えた線材供給機構である請求項1に記載の偏向コイルの巻線機。
【請求項4】前記導電性部材の移動手段が,移動機構と導電性部材の把持機構を備えた前記第1の電極である請求項1に記載の偏向コイルの巻線機。
【請求項5】前記新たに線材に圧着した導電性部材と金型との間で線材を切断する手段を備えた請求項1に記載の偏向コイルの巻線機。
【請求項6】前記圧着手段と前記第1の電極とを,軸方向の相対移動機構を備えた相対する一対の部材で構成した請求項1に記載の偏向コイルの巻線機。
【請求項7】被覆導線からなる線材に圧着部を圧着し,電圧の印加によりこの圧着部を被覆の内側に食い込ませ,所定位置で切断することで被覆導線と電気的に接触した電極を構成するフープ材からなる圧着用導電性部材であって,前記圧着部と,圧着時に線材が圧着部の外側へはみ出すのを阻止する爪とを,前記フープ材の一部を切り起こすことで所定間隔に形成したことを特徴とする圧着用導電性部材。」 5 本件第1訂正後の特許請求の範囲 「【請求項1】被覆導線からなる線材を供給する線材供給機構と,線材供給機構から供給される線材を巻き回して偏向コイルを形成する回転金型とを備えた偏向コイルの巻線機において,線材供給機構から供給された線材の両側から線材の外周に当接または近接して配置される導電性部材と,これらの導電性部材を線材に圧着し,かつ 線材の導電性部材圧着部に所定の電圧を印加する一対の第1の電極による圧着通電機構 と,移動した導電性部材を第1の電極以外の場所に係止する手段と,この導電性部材を移動する手段と,この導電性部材と前記圧着通電機構により新たに線材に圧着された導電性部材との間に電圧を印加する一対の第2の電極とを備えるとともに,前記導電性部材を1本の導電性の帯状連続部材で構成し,この帯状連続部材をその最先端部 が前記圧着通電機構 の第1の電極 の間に送り込まれるように供給する手段と,最先端部 が圧着通電機構 の第1の電極 の間に送り込まれている 帯状連続部材を所定の位置で切断する手段とを備えたことを特徴とする偏向コイルの巻線機。
【請求項2】前記帯状連続部材の一部を所定間隔で切り起こして折り曲げたフープ材で形成したことを特徴とする請求項1に記載の偏向コイルの巻線機。
【請求項3】前記導電性部材の移動手段が,移動機構を備えた線材供給機構である請求項1に記載の偏向コイルの巻線機。
【請求項4】前記導電性部材の移動手段が,移動機構と導電性部材の把持機構を備えた前記第1の電極である請求項1に記載の偏向コイルの巻線機。
【請求項5】前記圧着手段と前記第1の電極とを,軸方向の相対移動機構を備えた相対する一対の部材で構成した請求項1に記載の偏向コイルの巻線機。
【請求項6】被覆導線からなる線材に圧着部を圧着し,電圧の印加によりこの圧着部を被覆の内側に食い込ませ,所定位置で切断することで被覆導線と電気的に接触した電極を構成するフープ材からなる圧着用導電性部材であって,前記圧着部と,圧着時に線材が圧着部の外側へはみ出すのを阻止する爪とを,前記フープ材の一部を切り起こすことで所定間隔に形成したことを特徴とする圧着用導電性部材。」 (判決注・下線部が訂正部分である。また,請求項5を削除し,請求項6を請求項5に,請求項7を請求項6にそれぞれ繰り上げた。) 6 本件第2訂正後の特許請求の範囲 「【請求項1】「被覆導線からなる線材を供給する線材供給機構と,線材供給機構から供給される線材を巻き回して偏向コイルを形成する回転金型とを備えた偏向コイルの巻線機において,線材供給機構から供給された線材の両側から線材の外周に当接または近接して配置される導電性部材と,これらの導電性部材を線材に圧着し,かつ線材の導電性部材圧着部に所定の電圧を印加する一対の第1の電極による圧着通電機構と,移動した導電性部材を第1の電極以外の場所に係止する手段と,この導電性部材を移動する手段と,この導電性部材と前記圧着通電機構により新たに線材に圧着された導電性部材との間に電圧を印加する一対の第2の電極とを備えるとともに,前記導電性部材を導電性の帯状連続部材で構成し,この帯状連続部材をその最先端部が前記圧着通電機構の第1の電極の間に送り込まれるように供給する手段と,前記線材供給機構から 供給 された 線材 が前記最先端部 に挟み込まれた前記 帯状連続部材を所定の位置で切断する手段とを備えたことを特徴とする偏向コイルの巻線機。
【請求項2】前記帯状連続部材の一部を所定間隔で切り起こして折り曲げたフープ材で形成したことを特徴とする請求項1に記載の偏向コイルの巻線機。
【請求項3】前記導電性部材の移動手段が,移動機構を備えた線材供給機構である請求項1に記載の偏向コイルの巻線機。
【請求項4】前記導電性部材の移動手段が,移動機構と導電性部材の把持機構を備えた前記第1の電極である請求項1に記載の偏向コイルの巻線機。
【請求項5】前記新たに線材に圧着した導電性部材と金型との間で線材を切断する手段を備えた請求項1に記載の偏向コイルの巻線機。」 (判決注・下線部は,本件第1訂正とは別に,これに付加して訂正された部分である。なお,本件第2訂正では,本件第1訂正におけるのとは異なり,本件第1訂正前の請求項1の「前記導電性部材を導電性の帯状連続部材で構成し」を「前記導電性部材を一本の導電性の帯状連続部材で構成し」とする訂正,及び本件第1訂正前の請求項5を削除する訂正はなされていない。また,同訂正前の請求項6及び7が,本件第2訂正では削除されている。)
当裁判所の判断
1 上記当事者間に争いのない事実の下では,本件第1訂正後の本件特許の請求の範囲請求項1ないし5(本件第1訂正前の請求項1ないし4及び6)について,特許法29条2項に違反して登録された特許であることを理由に,その特許を無効にした審決(以下「本件無効審決」という。)の取消しを求める訴訟の係属中に,本件第1訂正後の請求項1ないし5につき,特許請求の範囲の文言に係る訂正を含む訂正の審判の請求がなされ,特許庁は,これを認める審決をし,これが確定したということができる。
本件無効審決は,これにより,結果として,本件第2訂正前の請求項1ないし4(本件第1訂正後の請求項1ないし4でもあり,同訂正前の請求項1ないし4でもある。)について,判断の対象となるべき発明を特定すべき特許請求の範囲の文言の認定を誤ったことになる。この誤りが上記各請求項についての本件無効審決の結論に影響を及ぼすことは明らかである。したがって,本件無効審決は,上記各請求項に係る部分については,取消しを免れない。
本件第2訂正前の請求項5(本件第1訂正後の請求項5であり,同訂正前の請求項6である。)は,本件訂正審決により削除されたので,本件無効審決のうち,これを無効とした部分の取消しを求める原告の訴えは,訴えの利益を欠くに至ったことが明らかであり,却下を免れない。
2 以上により,主文第1項掲記の限度で本訴請求を認容し,その余の請求に係る原告の訴えを却下することとし,訴訟費用は,原告勝訴の部分についても原告に負担させるのを相当と認めて,行政事件訴訟法7条,民事訴訟法64条ただし書きを適用して,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 山下和明
裁判官 阿部正幸
裁判官 高瀬順久