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審判番号(事件番号) データベース 権利
平成19ネ10010特許権侵害差止等請求控訴事件 判例 特許
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平成10行ケ132審決取消請求事件 判例 特許
関連ワード 発明者 /  技術的思想 /  進歩性(29条2項) /  同一技術分野(同一の技術分野) /  公知技術 /  上位概念 /  下位概念 /  技術的範囲 /  出願公開 /  技術常識 /  発明の詳細な説明 /  化学構造 /  遡及 /  優先権 /  分割出願 /  実質的に同一 /  クレーム /  技術的意義 /  容易に想到(容易想到性) /  信義則 /  禁反言 /  実施 /  間接侵害 /  構成要件 /  汎用品 /  業として /  差止請求(差止) /  侵害 /  請求の範囲 /  減縮 /  合理的な理由 / 
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事件 平成 14年 (ワ) 9503号 特許権侵害差止等請求事件
原告 ピーイーコーポレイション(エヌワイ)
訴訟代理人弁護士 花岡巖
同 木崎孝
同 森岡誠
補佐人弁理士 山本秀策
同 森下夏樹
被告 日本バイオ・ラッドラボラトリーズ株式会社
訴訟代理人弁護士 鈴木修
同 深井俊至
同 木村 耕太郎
補佐人弁理士 伊藤茂
同 江尻 ひろ子
同 深澤憲広
裁判所 東京地方裁判所
判決言渡日 2003/04/14
権利種別 特許権
訴訟類型 民事訴訟
主文 1 被告は,別紙物件目録記載の装置を輸入,販売してはならない。
2 被告は,その占有に係る別紙物件目録記載の装置のうち,解析コンピュータ及びカラープリンターを除く部分を廃棄せよ。
3 原告のその余の請求を棄却する。
4 訴訟費用は被告の負担とする。
5 この判決は,第1項及び第4項に限り,仮に執行することができる。
事実及び理由
請求
1 被告は,別紙物件目録記載の装置を輸入,販売してはならない。
2 被告は,その占有に係る別紙物件目録記載の装置を廃棄せよ。
事案の概要
本件は,核酸増幅反応モニター装置に関する特許権を有する原告が,ポリメラーゼ連鎖反応(以下「PCR」という。)による核酸増幅を解析するための装置を輸入,販売している被告に対して,被告が上記装置を輸入,販売することは,原告の有する上記特許権の侵害に当たるとして,上記特許権に基づき,その輸入,販売の差止め等を求めている事案である。
1 争いのない事実等 (1) 原告は,次の特許権(以下「本件特許権」といい,特許請求の範囲の請求項1の発明を「本件発明」という。)を有している。
特許番号 第3136129号 発明の名称 核酸増幅反応モニター装置 出願日 平成4年5月6日 登録日 平成12年12月1日 優先権主張日 平成3年5月2日 優先権主張国 米国 特許請求の範囲 別紙特許公報の該当欄記載のとおり(以下,同公報掲載の明細書を「本件明細書」という。) (2) 本件発明を構成要件に分説すると,次のとおりとなる。
A 複数の熱循環にわたって核酸増幅反応をモニターするための装置であって, B 1又は複数の核酸増幅反応混合物を収容するための支持体を有する熱循環器 C 及び前記1又は複数の核酸増幅反応混合物に光学的に連係される光学系を有し, D ここで該光学系は,前記1又は複数の核酸増幅反応混合物を閉じたままで各反応混合物からの光シグナル測定するために作用し得る検出器を有し, E これにより,複数の循環期間にわたって各光学シグナルの循環依存的変化を測定することが可能である ことを特徴とする装置。
(3) 本件発明に係る特許出願(以下「本件特許出願」という。)は,平成4年(1992年)5月6日にされた出願(特願平4-158454号。以下「原出願」という。)からの分割出願である。
ア 分割直前の原出願の明細書(以下「原出願明細書」という。乙1)の「特許請求の範囲」の請求項11は,以下のとおりである。
「試料中の標的核酸の増幅中,二重鎖核酸の増加を監視するに際し, (a) 前記試料と,DNA結合試剤であって,二重鎖核酸に結合した場合に検出可能な信号を与え,該信号は該試剤が未結合の場合に該試剤により与えられる信号と区別可能であることをもって特徴付けられるDNA結合試剤とを含んでなる増幅反応混合物を用意し, (b) 工程(a)の混合物により生じる前記信号の量を測定し, (c) 前記混合物を前記標的核酸の増幅条件下で処理し,そして, (d) この処理工程(c)の間に混合物により生じる前記信号の量を測定する, 工程を含んでなる二重鎖核酸増大の監視方法」 イ 原出願に係る発明は,前記のアに,原出願の明細書の「特許請求の範囲」の請求項13,14及び18項の内容を加えて整理すると,以下のとおりとなる(なお,加えた部分に下線を施した。)。
「試料中の標的核酸の増幅中,二重鎖核酸の増加を監視するに際し, (a) 前記試料と,DNA結合試剤であって,二重鎖核酸に結合した場合に検出可能な信号を与え,該信号は該試剤が未結合の場合に該試剤により与えられる信号と区別可能であることをもって特徴付けられるDNA結合試剤とを含んでなるポリメラーゼ連鎖反応(PCR)混合物を用意し, (b) 工程(a)の混合物により生じる前記信号の量を,光ファイバおよび分光螢光測定装置を使用して 測定し, (c) 前記混合物を前記標的核酸の増幅条件下で処理し,そして, (d) この処理工程(c)の間に混合物により生じる前記信号の量を,光ファイバ及び分光螢光測定装置を使用して,PCR中継続的 に測定する, 工程を含んでなる二重鎖核酸増大の監視方法」 ウ 上記のとおり整理した原出願に係る発明を,構成要件に分説すると,次のとおりとなる。
A’ 試料中の標的核酸の増幅中,二重鎖核酸の増加を監視するに際し, B’ 前記試料と,DNA結合試剤であって,二重鎖核酸に結合した場合に検出可能な信号を与え,該信号は該試剤が未結合の場合に該試剤により与えられる信号と区別可能であることをもって特徴付けられるDNA結合試剤とを含んでなるポリメラーゼ連鎖反応(PCR)混合物を用意し, C’ 工程B’の混合物により生じる前記信号の量を,光ファイバおよび分光螢光測定装置を使用して測定し, D’ 前記混合物を前記標的核酸の増幅条件下で処理し,そして, E’ この処理工程D’の間に混合物により生じる前記信号の量を,光ファイバ及び分光螢光測定装置を使用して,PCR中継続的に測定する, 工程を含んでなる二重鎖核酸増大の監視方法 (5) 被告は,業として,別紙物件目録記載の製品(以下「被告製品」という。
被告製品のうち,別紙物件目録添付の第1図面に記載された光学系及び熱循環器等からなり,かつ,被告製品から解析用コンピュータ及びカラープリンタを除いた装置を「被告装置」という。)を輸入,販売している。
(6) 被告装置の構成は以下のとおりである。
@ 複数の熱循環にわたってリアルタイムでPCRによる核酸増幅を解析するための装置である。
A 熱循環器(サーマルサイクラー部)がある。
B 該熱循環器の中には,核酸増幅反応混合物(PCRで増幅させる標的核酸,標的核酸に結合した場合に蛍光を発する蛍光試薬,核酸増幅用試薬等を含む水溶液)を収容するための96個のウェル(各ウェルの容量は0.2ml)を有するサンプルプレートがある。
C 装置内部に光源(タングステンハロゲンランプ),励起フィルター,ミラー,測定フィルター,インテンシファイアー,CCDカメラからなる光学モジュール部がある。
D 光源から発せられた光は,励起フィルターを通過し,ミラーを介してサンプルプレートのウェルに照射される。
E 光を照射されたサンプルプレートのウェル内の標的核酸は,蛍光試薬で標識されているので,PCRで標的核酸が増幅するに伴って増大した蛍光が発せられ,その蛍光は,ミラーを経て,測定フィルターを通過し,インテンシファイアーによって光電子増幅され,CCDカメラで検出される。
F D項及びE項のCCDカメラによる光学シグナルの検出は,サンプルプレートを閉じたままで行われるので,複数のサイクル(循環期間)にわたってサイクル依存的な光学シグナルの変化を測定することが可能である。
2 争点 (1) 被告装置は,本件発明の構成要件C,Dの「光学系」を有するか。
(2) 本件特許には,明らかな無効理由が存在するか。
ア 本件発明は,進歩性が欠如しているか。
分割出願には,原出願に係る発明と本件発明とが同一であるとの違法があるか。
分割出願には,本件発明の構成が原出願明細書に記載されていない事項を含んでいるとの違法があるか。
(3) 被告製品全体を差止められるか。
3 争点に関する当事者の主張 (1) 被告装置は,本件発明の構成要件C,Dの「光学系」を有するか。(争点(1)) (原告の主張) ア 本件発明の構成要件C,Dの「光学系」とは,通常の解釈どおり,光の屈折・反射などの性質を利用して光を伝達する系を意味するのであって,光の伝達のために光ファイバーなどの物理的連結物を用いる場合のみならず,反射鏡等を利用して光を伝達する場合を含む。また,本件明細書には,CCDを備えた蛍光測定装置を除外するような趣旨の記載は全くない。
被告は,本件明細書に具体的に開示された構成を超えて本件発明の技術的範囲を認めるべきではない旨主張する。しかし,「光学的に連係される光学系」の意義は,一義的に明確であること,当業者は,本件発明の「光学的に連係される光学系」の文言から,出願時の技術常識を考慮した上で当該機能を有する具体的な構成を把握できることから,これを本件明細書の実施例に開示された構成に限定する必要はなく,被告の主張は理由がない。
被告は,本件特許出願の後願である乙2の出願(以下「本件後願」という。)の明細書の記載を根拠として,本件発明の「光学系」の意味を,光ファイバーを使用した装置からなる光学系に限定すべきであり,CCDを使用した光学系を含まないものに限定すべきである旨主張する。しかし,後願の記載により先願のクレーム範囲が減縮されることはあり得ないこと,本件後願の明細書は,光ファイバーを有する装置を開示しているだけで,本件発明の技術的範囲が光ファイバーを有するものに限られる旨の記載は一切ないこと,本件発明と本件後願の発明とは,特許請求の範囲の記載が明らかに異なることから,被告の上記主張は失当である。
イ 対比 以上のとおり,構成要件C,Dにおける「光学系」は,CCDを備えたものを含む(光ファイバーを使用しているものに限定されない。)。これに対し,被告装置の構成は,前記争いのない事実等のとおりCCDを備えた検出器を使用するから,被告装置は,構成要件C,Dの「光学系」を具備する。
(被告の反論) ア 本件発明の構成要件C,Dの「光学系」は,以下のとおりの理由により,光ファイバー及び分光蛍光測定装置からなる光学系に限定され,同分光蛍光測定装置における「検出器」にはCCDは含まれないと解すべきである。
まず,本件明細書には,本件発明に係る装置の構造について,既存の蛍光測定装置を付属の光ファイバーを使用してPCR装置に適用し,反応チューブの上端を切除して,光ファイバーリードの先端をエポキシで接着したことしか開示されていない(【0119】,【0120】)。
次に,本件発明と発明者及び当初の出願人が同一である本件後願の発明は,「複増幅反応の同時観測および分析方法」であり,核酸増幅反応混合物からの蛍光シグナルをリアルタイムで検出することにより定量を行なうための装置である点で本件発明と共通しているところ,本件後願の明細書は,公知技術として,本件特許の優先権主張の基礎となる米国出願に言及し,当該米国出願に記載された装置は光学系として光ファイバーを使用するのに対し,本件後願の発明に係る装置は光ファイバーを使用せず,かつ,光学系としてCCDカメラを使用するという点で優れていると強調している。すなわち,本件特許出願及び本件後願の当初出願人は,上記米国出願に係る装置が光ファイバーを有する装置に限られると理解しているからこそ,本件後願の明細書中でその旨記載し,さらに光ファイバーの不要なCCDカメラを使用した装置の優位性を主張している。そして,同一技術分野における同一出願人に係る先願と後願が存在する場合,後願の内容は,先願の発明の技術的範囲の解釈に影響を与えることは特許法の原則である。したがって,本件発明の技術的範囲は,本件後願に係る発明以前の発明,すなわち,光学系として光ファイバーを使用する態様に限定されたものとして解釈されるべきである。本件発明は光ファイバーを使用する態様に限定されるものではないとの原告の主張は,本件後願について特許を求める態度と矛盾するものであり,信義則ないし禁反言に反し許されない。
イ 対比 被告装置は,CCDを使用し,光ファイバーを用いていないので,構成要件C,Dの「光学系」を具備しない。
(2) 本件発明は,進歩性が欠如しているか。(争点(2)ア) (被告の主張) ア 公知技術 (ア) 熱循環器について 「熱循環器」であるサーマルサイクラーが本件特許の優先権主張日当時に公知であったことは,本件明細書の記載において当然の前提とされている。このことは,平成2年当時に原告らが販売していた熱循環器(サーマルサイクラー)のパンフレット(乙3)からも明らかである。
(イ) 蛍光測定装置について 蛍光測定装置が本件特許の優先権主張日当時に公知であったことは,本件明細書に実施例[として【0119】に「Spex-Fluorolog-2」蛍光測定装置及び付属の光ファイバー(Spexカタログ番号1950)を使用する実施例が開示されていることや,「Spex-Fluorolog-2」蛍光測定装置のパンフレット(乙4)及び同蛍光測定装置の付属品である光ファイバー(カタログ番号1950)のパンフレット(乙5,6)から明らかである。
イ 蛍光測定装置をPCRに適用することの容易性について (ア) 「Spex-Fluorolog-2」のようなの蛍光測定装置を,光ファイバーによりサーマルサイクラーと接続してPCRのリアルタイム測定に応用することは,当業者であれば容易に想到し得る。その理由は以下のとおりである。
a 蛍光測定装置の付属品の光ファイバーのカタログ(乙5)に,「生化学(中略)に従事しておられる研究者の皆様は,このアクセサリーに興味がおありでしょう」と示唆されている。
b 蛍光測定装置の付属品の光ファイバーのカタログ(乙5)に,「250ないし900ナノメートル」の間の波長領域に対応すると記載されているところ,優先権主張日当時PCRに最も典型的に用いられる蛍光試料であったエチジウムブロマイド(本件明細書【0013】参照)の蛍光波長は,検出波長として570ナノメートルに設定することが可能であった(本件明細書【0073】,【0119】)。
c 蛍光測定装置の付属品の光ファイバーのカタログ(乙5)に,対応する温度領域として「マイナス30℃ないし200℃」とあり,これは,@94℃程度での熱変性,A50℃から60℃程度でのアニーリング,B72℃程度での伸長を一つのヒートサイクルとするPCRをカバーするのに十分な温度領域である。
d 乙4に示されるような蛍光測定装置は,そもそもリアルタイム測定に使用されるものである。例えば,ヨーロッパ特許出願公開公報(第0266881A2号)(乙7)及び「BioTechniques」8巻3号296-308頁に掲載された「生細胞のリアルタイム複数波長蛍光の画像化」と題する論文(乙8)中には,反応ウェル中に蛍光測定装置の光ファイバープローブを挿入して,反応中の検体からの蛍光を測定することが記載されている。これらの記載は,蛍光測定装置がリアルタイム測定に使用されるものであることを示している。
e 仮に,「複数の熱循環にわたってリアルタイムに核酸増幅反応物を測定すること」に進歩性が認められるとしても,それは原出願明細書の特許請求の範囲に記載された発明の進歩性の根拠にはなり得ても,本件発明の進歩性の根拠にはなり得ない。
(イ) これに対して,原告は,以下のとおり主張するが,いずれも失当である。
a まず,原告は,本件特許の優先権主張日以前は,PCRによる核酸増幅反応の定量は,PCR反応の終了後に電気泳動を行い,その後に,蛍光染料を用いて染色を行い,写真撮影することによって行われるのが技術常識であって,その限りではPCRによる核酸増幅反応の測定のための蛍光測定装置の必要性はなかったから,本件特許の優先権主張日当時,当業者がPCRによる核酸増幅反応の定量に蛍光測定装置を用いることは容易に想到できなかったと主張する。
しかし,生化学の分野において,もともとリアルタイム測定に用いられていた蛍光測定装置をPCRの用途に用いることが当業者にとって容易に想到し得たか否かが問題なのであって,電気泳動後の写真撮影という別個の方法を取り得たか否かは,直接的な問題点ではないから,原告の主張は失当である。
b また,原告は,本件特許の優先権主張日当時,複数の熱循環にわたってリアルタイムに核酸増幅反応物を測定するという発想自体がなかったと主張する。しかし,「複数の熱循環にわたってリアルタイムに核酸増幅反応物を測定する」ことは,蛍光測定装置をPCRの用途に用いることの必然的帰結であって,「複数の熱循環にわたってリアルタイムに核酸増幅反応物を測定するという発想」がなかったから蛍光測定装置をPCRの用途に用いることを容易に想到できなかったというのは,議論が逆である。
c さらに,原告は,PCRのような核酸増幅反応分野においては,複数の熱循環により生成した核酸増幅反応混合物を評価するためには,核酸増幅反応後の試料を電気泳動にかける必要があるという技術常識が存在していたにもかかわらず,この技術常識を打破した点に本件発明の進歩性が見出されると主張する。
しかし,本件発明においても特異的に増幅された二本鎖DNA(標的核酸)を,非特異的に増幅された二本鎖DNAと区別して定量するためには電気泳動が必要であり,本件発明において,打破された技術常識など何ら存在しないし,また,「複数の熱循環」という構成及び「核酸増幅反応混合物」という構成は,PCR反応に当然に伴う構成であって,蛍光測定装置をPCRの用途に応用することについて,何らの妨げにもならない。
d 原告は,本件発明が予定する核酸増幅反応における測定は,周期的に標的核酸の化学構造が劇的に変化する条件を前提とするのに対して,乙7及び乙8におけるリアルタイム測定は,測定時に生細胞が死ぬことのない極めて穏やかな条件を前提としているから,当業者は,乙7及び乙8のような蛍光測定装置をPCRに適用することを容易に想到することはできないと主張する。
しかし,PCRの環境が周期的に標的核酸の化学構造が劇的に変化する環境であるというのは,二本鎖DNAが熱変性(熱により2本の一本鎖に分かれる)し,プライマーが結合(アニーリング)し,DNA鎖が伸長するために適切な反応条件であるということを意味しているにすぎず,蛍光測定装置のユーザーがPCRへの適用を思い止まるような過酷な環境ではない。つまり,蛍光測定装置をPCRに適用することについて,例えば光ファイバーケーブルの先端が熱で溶けてしまうなどの具体的障害があったわけではなく,生細胞とPCRの熱環境の相違などは,蛍光測定装置をPCRに適用することの容易想到性の判断において,全く影響のないことである。
したがって,原告の上記主張は失当である。
ウ 以上のとおり,本件発明は,本件特許の優先権主張日である平成3年(1991年)5月2日当時に我が国においても公知であったサーマルサイクラー(請求項1の「熱循環器」に相当)と,同様に公知であった蛍光測定装置(請求項1の「光学系」に相当)とを単に組み合わせたものにすぎず,両者を組み合わせることは当業者が容易に想到し得ることであるから,特許法29条2項に違反して登録されたものであり,明らかな無効理由を有する。
(原告の反論) ア 本件特許の優先権主張日当時,被告が示すいずれの公知例によっても,本件発明の独自の構成,すなわち,蛍光測定装置のような検出器と核酸重合反応を行う際に使用される熱循環器とを組み合わせ,そして,この検出器が核酸増幅反応混合物を閉じたままで各反応混合物からの光シグナルを測定できるという構成を容易に想到できたとはいえない。特に,複数の熱循環にわたって核酸増幅反応混合物を閉じたままで各反応混合物からの光シグナルを測定するという構成を想到することは容易でなかった。
本件特許の優先権主張日前は,PCRによる核酸増幅反応物の定量は,PCR反応の終了後に電気泳動を行い,その後に,蛍光染料(例えば,エチジウムブロマイド)を用いて染色を行い,写真撮影をすることによって行われるのが技術常識であったから,PCRによる核酸増幅反応の測定のために蛍光測定装置は必要なかった。
また,本件特許の優先権主張日当時においては,複数の熱循環にわたってリアルタイムに核酸増幅反応物を測定するというリアルタイムPCR法の発想自体がなかったのであるから,仮に,蛍光測定装置と熱循環器とを組み合わせた装置を考案したとしても,結局,その組合せ装置の熱循環器部分でPCRを行った後に蓋を開けて試料を取り出し,その組み合わせ装置の蛍光測定装置部分にその試料を移動して蛍光を測定するという組合せ装置を想到するにすぎない。したがって,本件特許の優先権主張日当時,当業者は,本件発明の構成のうち,核酸増幅反応混合物を閉じたままで各反応混合物からの光シグナルを測定するという構成を容易に想到することはできなかった。
したがって,そもそも,PCRによる核酸増幅反応の定量に蛍光測定装置を用いることを想到することは,容易であったとはいえない。
イ この点について,被告は,以下のとおり主張するが,いずれも理由がない。すなわち, a 被告は,本件発明の容易想到性の根拠として,乙5の「生化学(中略)に従事しておられる研究者の皆様は,このアクセサリーに興味がおありでしょう」との記載,「250ないし900ナノメートル」という対応波長領域の記載,「マイナス30℃ないし200℃」という対応温度領域の記載を挙げる。
しかし,乙5は,広範な技術分野において汎用的に使用される蛍光測定装置の付属品である光ファイバーのカタログにすぎず,PCR法については全く記載がない。本件特許の優先権主張日前は,PCRによる核酸増幅反応物の定量は,PCR反応の終了後に電気泳動を行い,その後に,蛍光染料(例えば,エチジウムブロマイド)を用いて染色を行い,写真撮影をすることによって行われるのが技術常識であったから,広範な技術分野において汎用的に使用される蛍光測定装置の付属品である光ファイバーのカタログに,当該光ファイバーで測定可能な波長領域及び当該光ファイバーが使用可能な温度領域が記載され,それがPCR生成物の測定をカバーし得るものであったとしても,上記技術常識に反して,当該光ファイバーを使ってPCR反応生成物の測定をリアルタイムで行うことの動機付けとなることはない。
したがって,被告の上記主張は失当である。
b また,被告は,乙7,乙8を根拠として,乙4のような蛍光測定装置は,そもそもリアルタイム測定に使用されるものであると主張する。
しかし,本件発明の特徴は,単なるリアルタイム測定ではなく,核酸増幅反応後の試料を電気泳動にかける必要があると考えられていた従来の技術常識を打破して,複数の熱循環にわたる核酸増幅反応混合物のリアルタイム測定を可能にした点にある。また,本件発明が予定する核酸増幅反応における測定は,周期的に標的核酸の化学構造が劇的に変化する条件を前提とするのに対して,乙7,8における測定は,測定時に細胞が死ぬことのない,つまり生細胞の細胞膜及び細胞内小器官の構造が破壊されず,タンパク質が変性しないような極めて穏やかな条件を前提としており,同じリアルタイム測定であっても,複数の熱循環にわたる核酸増幅反応混合物のリアルタイム測定の示唆にはならない。
したがって,被告の上記主張は失当である。
(3) 分割出願には,原出願に係る発明と本件発明とが同一であるとの違法があるか。(争点(2)イ) (被告の主張) 本件出願は,原出願から分割出願されたものである。本件発明と原出願に係る発明とは,以下のとおりの理由により,実質的に同一であるから,上記分割出願は,特許法44条1項分割出願の要件を充たさない。したがって,本件特許の出願日は原出願の出願日に遡及しないことになり,本件発明は,特許法39条1項の要件を充たさず,進歩性も認められないから,明らかな無効理由が存在する。
ア 原出願に係る発明と本件発明との一致点 (ア) 原出願に係る発明は,核酸増幅を行う際の増幅反応を監視する発明であり,核酸増幅反応が「複数の熱循環にわたって」行われることは,原出願に係る発明の「ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)中継続的に」との構成から明らかであるから,原出願に係る発明の構成要件D’の「前記混合物を前記標的核酸の増幅条件下で処理」するとは,「複数の熱循環にわたる核酸増幅反応」を行うことを実質的に意味している。したがって,原出願に係る発明の構成要件D’の「前記混合物を前記標的核酸の増幅条件下で処理」するための手段は,本件発明の構成要件Bの「熱循環器」に相当する。
(イ) PCRはもともと複数の熱循環にわたるものであるから,原出願に係る発明の構成要件E’の「PCR中継続的に測定する」とは,「複数の熱循環にわたって」核酸増幅反応をモニターすることと同義である。したがって,原出願に係る発明における,構成要件C’は反応前の輻射光を測定し,構成要件E’は構成要件D’での反応後の輻射光を測定し,それにより二重鎖核酸の増大を監視しているから,本件発明の構成要件Eの「光学シグナルの循環依存的変化を測定する」と実質的に同一である。
(ウ) 原出願に係る発明の構成要件C’及びE’の「混合物により生じる前記信号の量を,光ファイバおよび分光螢光測定装置を使用して(測定する)」は,これは反応容器からの信号を光ファイバーを通じて分光蛍光測定装置という検出器に導入することを意味しているから,反応容器,光ファイバー,検出器は「光学的に連係」されていなければならない。したがって,原出願に係る発明の構成要件C’及びE’は,本件発明の構成要件C及びDと同一である。
イ 原出願に係る発明と本件発明との相違点とその検討 (ア) 相違点 原出願に係る発明と本件発明とは,原出願に係る発明は,本件発明の構成要件Bの「核酸増幅反応混合物を収容するための支持体」との点,及び構成要件Dの「閉じたままで」との点が明確にされていない点で相違する。
(イ) 相違点の検討 a 本件発明の構成要件Bの「核酸増幅反応混合物を収容するための支持体」について 本件発明に係る装置は「試料」,すなわち「核酸」の増幅反応をモニターする装置であるから,「試料」である「核酸」自体が混合物中に含まれることは自明である。また,核酸自体は光シグナルを発することがないので,そのような光シグナルを発生する「結合試剤」を混合物中に含めること,さらにこの混合物を増幅反応に供するため,その反応に必要な他の要素,例えば「増幅用試薬」(ポリメラーゼ酵素など)を混合物中に含めることもまた自明である。したがって,原出願に係る発明の構成要件B’の「ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)混合物」は,本件発明の構成要件Bの「核酸増幅反応混合物」と実質的に同一である。
また,原出願に係る発明の構成要件B’には,単に「ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)混合物を用意」することしか記載されていないが,構成要件B’で用意されたPCR混合物は,その後の構成要件D’の処理を行うために,必ずPCR反応を行うための装置に収容する工程を経なければならないから,原出願に係る発明の構成要件B’には,PCR混合物をPCR反応を行うための支持体に収容する工程を必然的に内包するものと考えるべきである。
したがって,原出願に係る発明の構成要件B’は,本件発明の「支持体を有する」という構成を実質的に包含する。
b 本件発明の構成要件Dの「閉じたままで」について 原出願に係る発明の構成要件E’において「PCR中継続的に測定」することが記載されていることに照らすならば,原出願に係る発明において,仮に,反応容器を「開いて」測定するのであれば,PCRを中断せざるを得ず,「PCR中継続的に測定」するというその技術的課題を達成できないことになる。
したがって,原出願に係る発明でも,反応容器を「開くことなく」測定を行っていなければならない。
ウ これに対して,原告は,以下のとおり主張するが,原告の主張はいずれも理由がない。
(ア) 原告は,原出願に係る発明は,反応開始前の標的核酸の信号量と反応終了後の標的核酸の信号量とを比較し,増幅が行われたか否かを確認するものにすぎないのに対して,本件発明は,PCR反応中継続して信号量を測定でき,しかも,どれだけ増えたかの定量まで行えるものである点において,相違すると主張する。
しかし,原出願に係る発明は,単に,反応開始前の標的核酸の信号量と反応終了後の標的核酸の信号量を比較し,増幅が行われたか否かのみを確認するものではなく,また,本件明細書の【0122】に「螢光は,最終値が25℃における初期値の3倍以上に増大した」と記載されているように,本件発明においても反応開始前の標的核酸の信号量を測定していることは明らかである。
(イ) また,原告は,本件発明では,検出器に具体的な限定がないのに対し,原出願に係る発明では「分光螢光測定装置」との限定があること,本件発明では,光学系に具体的な限定がないのに対し,原出願に係る発明では,光学系は「光ファイバー」に限定されている点において相違すると主張する。
しかし,前記のとおり,本件発明における「光学系」は光ファイバーを備え,検出器は分光蛍光測定装置に限定して解釈すべきであるから,上記のような相違点はない。また,仮に,本件発明の「光学系」を上記のように限定解釈すべきでないとしても,このように限定しない構成は,原出願に係る発明の構成の上位概念であり,原出願に係る発明が下位概念であり分割出願に係る本件発明が上位概念である場合は,分割要件との関係では同一発明と考えるべきであるから,本件出願は,特許法44条1項分割出願の要件を充たさない。
(原告の反論) 原出願に係る発明と本件発明とは,以下の点で相違する。そして,これらの相違点は,当業者によって明白な技術的思想の差異として把握されるものであるから,両発明に実質的な同一性は認められない。したがって,本件特許出願は適法な分割出願であるから,その出願日は原出願の出願日に遡及する。
ア 原出願に係る発明では,増幅反応開始前の信号の量を測定する構成要件C’が必須とされているのに対して,本件発明では,増幅反応前の測定に関する構成が一切ない。
イ 原出願に係る発明では,「複数の熱循環にわたって」との構成がないのに対して,本件発明には同構成が存在する。
この点,被告は,原出願に係る発明の構成要件E’に「PCR中継続的に測定する」との構成があることを理由に原出願に係る発明にも「複数の熱循環にわたって」との構成があると主張する。
しかし,「PCR中継続的に測定する」とは,一定期間測定を続けることを意味するのであって,測定期間が複数の熱循環にわたるかどうかには関わらないのであるから,「PCR中継続的に測定する」ことと,「複数の熱循環にわたって」核酸増幅反応をモニターすることとは相違する。
したがって,被告の上記主張は失当である。
ウ 原出願に係る発明には,「核酸増幅反応混合物を閉じたままで」との構成が存在しないのに対して,本件発明には同構成が存在する。
この点,被告は,反応容器を開いて測定すると,「PCR中継続的に測定する」(複数の熱循環にわたることを前提としている。)ことができなくなるから,原出願に係る発明においても「核酸増幅反応混合物を閉じたままで」の構成がある旨主張する。
しかし,原出願に係る発明における「継続的に測定」とは,複数の熱循環にわたるものではなく,増幅反応開始前の測定結果と,増幅反応時の測定結果とを比較することを前提としている。そして,増幅反応開始前の測定時と増幅反応中の測定時との2回の測定の際に混合物が閉じられていれば,充分に「PCR中継続的に測定」することができるから,複数の熱循環にわたって混合物を閉じておく必要性はない。
したがって,原出願に係る発明においては,「核酸増幅反応混合物を閉じたままで」との構成は一切認められず,被告の上記主張は失当である。
エ 本件発明においては,複数の熱循環にわたって核酸増幅反応混合物を閉じたままで測定を行うことにより,PCR反応の複数のサイクルにわたる増幅の様子をリアルタイムで容易にかつ高精度で観察すること,及び試料中の微量の標的DNAを高精度で定量することなどが可能になる。
したがって,「複数の熱循環にわたって」及び「核酸増幅反応混合物を閉じたままで」との構成の組合せは,本件発明の技術的思想の本質的部分であり,本件発明は,これらの構成のない原出願に係る発明とは明らかに異なる。
オ 本件発明では,検出器に具体的な限定がないのに対し,原出願に係る発明では「分光螢光測定装置」との限定がある。
カ 本件発明では,光学系に具体的な限定がないのに対し,原出願に係る発明では,光学系は「光ファイバー」に限定されている。
キ 本件発明では,「核酸増幅反応混合物」の構成に限定がないのに対し,原出願に係る発明では,DNA結合試剤の特定が行われている。
(4) 分割出願には,本件発明の構成が原出願明細書に記載されていない事項を含んでいるとの違法があるか。(争点(2)ウ) (被告の主張) 仮に,本件出願と原出願とが実質的に同一でないとされた場合には,原出願明細書(乙1)には,本件発明の構成のすべてが記載されているとはいえない。
したがって,本件特許出願は不適法な分割出願であり,本件特許出願の出願日は原出願の出願日に遡及しない。本件発明は,特許法39条1項の要件を充たさず,進歩性も認められないから,本件発明には,明らかな無効理由が存在する。
(原告の反論) 本件発明の構成要件は,すべて原出願明細書に記載されているので,本件特許出願は適法な分割出願である。
(5) 被告製品全体を差止められるか。(争点(3)) (原告の主張) 被告製品のうちの解析用コンピュータ及びカラープリンターは,被告装置にのみ使用されることが前提となっており,カタログ上も,解析用コンピュータ及びカラープリンターを除いて測定機器を販売する扱いはされていない。
したがって,解析用コンピュータ及びカラープリンターも差止めの対象となる。
(被告の主張) 被告製品のうちの解析用コンピュータ及びカラープリンターは汎用品であって,顧客の便宜のために被告製品の中に含めて販売しているにすぎない。顧客が希望すれば,被告製品から解析用コンピュータ及びカラープリンターを除外して販売する用意がある。
したがって,解析用コンピュータ及びカラープリンターは,差止めの対象とはならない。
当裁判所の判断
1 被告装置は,本件発明の構成要件C,Dの「光学系」を有するか。(争点(1)) (1) 構成要件C,Dの「光学系」の意義 ア 「光学系」とは,一般的に,「望遠,拡大,分光などの目的で,レンズ,反射鏡などを組み合わせた機器系」(「広辞苑」第5版)を意味する。本件明細書中には,「光学系」の語に関して,一般的な意味と異なる特別の意味に理解すべきことを示唆する記載はない(甲2)。そうであるとすると,構成要件C,Dの「光学系」は,上記の一般的な意味である「望遠,拡大,分光などの目的で,レンズ,反射鏡などを組み合わせた機器系」を意味し,CCDを備えた検出器を含む他,光学的な連携手段として光ファイバーを備えていないものも含むことになる。
イ これに対して,被告は,本件明細書には,光ファイバーを使用した光学系しか開示されていないから,本件発明における「光学系」は光ファイバーを使用した光学系に限定して解釈すべきであると主張する。
しかし,証拠(乙8)及び弁論の全趣旨によれば,本件特許の優先権主張日前に,光ファイバーを使用せず,CCDを備えた光学系が当業者に広く知られていた事実が認められ,本件明細書には「表面または容器が加熱および冷却可能な分光螢光測定装置においては,光ファイバは不要である。光ファイバは,サーモサイクラと分光螢光測定装置とが独立して装置される場合に必要となる。」(15欄43〜46行)と記載されていることに照らすならば,当業者は,本件発明のおける「光学系」について,光ファイバーを使用しないものを含む趣旨であることを容易に理解できたものと認められるから,構成要件C,Dにおける「光学系」を,光ファイバーを使用した光学系に限定して解釈すべき理由はない。
したがって,被告の上記主張は採用できない。
また,被告は,本件後願の明細書において,本件特許の優先権主張の基礎となった米国出願の明細書に記載された装置が光学系として光ファイバーを使用するのに対し,本件後願の発明に係る装置は光ファイバーを使用せず,かつ,光学系としてCCDカメラを使用するという点で優れていると強調していることから,本件発明の技術的範囲は,光学系として光ファイバーを使用し,かつ,CCDカメラを使用しないものに限定され,本件においてこれに反する主張をすることは信義則等に反し許されないと主張する。
しかし,本件発明の技術的範囲は,本件明細書の特許請求の範囲の記載に基づいて定めることを要し,その際に発明の詳細な説明の記載や図面を斟酌することはできるが,本件特許出願と別個の特許出願である本件後願の明細書の記載を斟酌することには合理的な理由がない。また,仮に本件発明における「光学系」の意義について,本件後願の明細書の記載において異なる説明がされていたとしても,本件においては,その点が禁反言の原則や信義側に反するということもできない。
したがって,被告の上記主張は理由がない。
(2) 対比 被告装置は,装置内部に光源(タングステンハロゲンランプ),励起フィルター,ミラー,測定フィルター,インテンシファイアー,CCDカメラからなる光学モジュール部を有し(構成C),光源から発せられた光は,励起フィルターを通過し,ミラーを介してサンプルプレートのウェルに照射される(構成D)のであるから,構成要件Cの「(核酸増幅反応混合物)に光学的に連係される光学系を有し」を充足する。また,被告装置においては,光を照射されたサンプルプレートのウェル内の標的核酸は,蛍光試薬で標識されているので,PCRで標的核酸が増幅するに伴って増大した蛍光が発せられ,その蛍光は,ミラーを経て,測定フィルターを通過し,インテンシファイアーによって光電子増幅され,CCDカメラで検出される(構成E)のであるから,被告装置は,構成要件Dの「該光学系は,・・・(各反応混合物からの)光シグナル測定するために作用し得る検出器を有し」を充足する。
したがって,被告装置は,構成要件C,Dの「光学系」を充足する。
(3) 小括 弁論の全趣旨によれば,被告装置は本件発明の構成要件A,B,Eを充足する。したがって,被告装置は,本件発明の技術的範囲に属する。
なお,被告は,本件明細書で開示されているものは,複数のチューブでそれぞれ進行しているPCR反応からの蛍光信号を同時にリアルタイムで測定する装置ではないのに対し,被告装置は,サンプルプレート上の96のすべてのウェルについて同時に蛍光信号を読み取るのであるから,被告装置は,技術思想において本件発明とは全く異なり,本件発明の技術的範囲に含まれない旨主張する。
しかし,本件明細書の特許請求の範囲には,複数の核酸増幅反応混合物の核酸増幅反応を同時に測定することを除外する記載は一切なく,上記のとおり,被告装置は本件発明の構成要件をすべて充足する以上,被告装置が本件発明の技術的範囲に含まれないと解することはできないから,被告の上記主張は失当である。
2 本件発明は,進歩性が欠如しているか。(争点(2)ア) (1) 乙3ないし乙8記載の技術と本件発明の対比 本件発明は,熱循環器のパンフレット(乙3)記載の技術に「Spex-Fluorolog-2」蛍光測定装置のパンフレット(乙4),同蛍光装置の付属品である光ファイバーのパンフレット(乙5,6),ヨーロッパ特許出願公開公報(第0266881A2号)(乙7)及び「BioTechniques」8巻3号296-308頁に掲載された「生細胞のリアルタイム複数波長蛍光の画像化」と題する論文(乙8)記載の技術を組み合わせることによって当業者が容易に想到し得た発明であるといえるか否かについて判断する(なお,本件全証拠によっても,乙3ないし6の各パンフレットが,本件特許の優先権主張日である平成3年5月2日より前に発行されたことを認めるに足りない。しかし,以下においては,この点をさておいて検討する。)。
ア 乙3記載の技術と本件発明との対比 乙3では,1又は複数の核酸増幅反応混合物を収容するための支持体を有する熱循環器が開示されており,同構成において乙3と本件発明(構成要件B)とは共通する。
しかし,本件発明と乙3とは,本件発明が,@複数の熱循環にわたって核酸増幅反応をモニターするための装置であること(構成要件A),A1又は複数の核酸増幅反応混合物に光学的に連係される光学系を有すること(構成要件C),B光学系は,前記1又は複数の核酸増幅反応混合物を閉じたままで各反応混合物からの光シグナル測定するために作用し得る検出器を有すること(構成要件D),C複数の循環期間にわたって各光学シグナルの循環依存的変化を測定することが可能であること(構成要件E)という各構成を有しているのに対し,乙3では上記各構成を有していない点で相違する。
イ 乙4ないし8記載の技術内容 (ア) 乙4ないし8には以下の記載がある。すなわち, a 乙4には,「フルオロログ-2 分光蛍光計システム」,「世界で最も鋭敏な分子計数分光蛍光計」,「励起及び放射のピークに分光計を合わせることにより,フルオロログ-2システムは蛍光を時間の関数としてモニターすることができます。これによって,フルオロログ-2システムを反応-速度の判定に用いることができるので,蛍光種の形成又は崩壊をモニターすることができます。」,「フルオロログ-2付属品 光ファイバー・サンプル・アクセサリー1950」との記載がある。
b 乙5には,「新しいSPEX1950光ファイバー・アクセサリーは,フルオロログ-2分光蛍光計システムと共に,250ないし900ナノメートルの間の波長領域の光ファイバーによるリモートセンシングに用いることができます。このアクセサリーの主な利点は,試料を分光蛍光計の試料格納部に入れる必要がないことです。」,「蛍光の強度の変化を,(中略)モニターします。」,「試料格納部に入れることのできない試料に遠隔放射を行います。」,「オンラインの品質管理又は検査工程のおいて蛍光強度の変化をモニターします。」との記載がある。
c 乙7には,「複数アッセイのための方法及び装置であって,サンプル混合物の少なくとも二つの構成要素を,異なるピーク吸光特性及び/又はピーク放射光特性を有する蛍光物質のそれぞれのマーカーにより標識する。一例において,ディファレンシャルに目印をつけた標的構成要素を有するサンプル混合物を,光ファイバーにより,光照射手段及び複数の検出手段,光学システム中に組み込んだフィルターを結合したスキャニングヘッドを介して光を照射して,マーカーの異なる吸光特性及び/又は放射光特性に対するそれぞれの検出器の反応を適合させる。」,「幼児性疾患抗体試験又はその他の対比に関する標準的方法と平行して,複数-蛍光アッセイを行うことにより,疾患の進行をかなりの正確性をもって追跡することができる。」,「低温蛍光において,驚くほどに多数のタンパク質及びその他のより複雑な分子は,低温で自発的に蛍光発光し,そして蛍光の波長及び時間経過は,蛍光を引き起こす特定のタンパク質の重要な指標である。」との記載がある。
d 乙8には,「イメージインテンシファイアー,ビデオカメラ,顕微鏡及びコンピュータを融合して少量光デジタルビデオ画像を作成することにより,生細胞から可視的情報を定量化するためのわくわくするような可能性を提供する。」,「光学経路は,Figure1に図示する。蛍光体の励起は,標準的なエピ蛍光を介する。励起波長は,Osram XB075キセノン光源から,標準的なNikon“フィルターキューブ”中に含まれるバンドパスフィルター(a)により選択され,熱安定的に制御された環境チャンバーのガラス底及び顕微鏡対物レンズを介して2色性ミラー(c)により細胞に対して投影される。蛍光は,対物レンズ,2色性ミラー及び放射光フィルター(b)を介して戻ってきて,顕微鏡の側面あカメラポートに導かれる。第1放射光フィルター(b)を通過してきた2種の色素からの放射光を,Nikon“マルチ画像モジュール”内に設置した第22色性ミラー(d)により分離する;長波長は,ミラーそしてバリアフィルター(f)を通過し,そしてインテンシファイアー/カメラ#2の中に入る;短波長は,代にバリアフィルター(e)へ向けて反射され,インテンシファイアー/カメラ#1の中に入る。」との記載がある。
(イ) 前記(ア)からすれば,乙4ないし8には,光学系により生細胞等の生物学的試料をリアルタイムで測定することについての技術を開示していることが認められる。
(2) 容易想到性についての判断 前記のとおり,乙7,8にはフルオロログ-2分光蛍光計システムを生細胞等の試料をリアルタイムで測定するために使用することが示唆されているが,上記分光蛍光計システムにより核酸増幅反応をリアルタイム測定することを示唆する記載はなく,上記分光蛍光計システム及び付属の光ファイバーのカタログ(乙4ないし6)にも同様の記載はない。また,証拠(甲2,7,乙3)及び弁論の全趣旨によれば,本件特許の優先権主張日前には,PCRによって増幅させた標的核酸(PCR生成物)の定量について,電気泳動により試料中の標的核酸とそれ以外の核酸,不純物を分離して検出したり,標的核酸をプローブを用いて補足した後に検出したりするなどの方法が知られ,PCR後に標的核酸を検出する方法が技術常識であったこと,PCR中にPCR生成物である標的核酸を検出する方法は知られていなかったことが認められる。さらに,本件明細書には,PCR中にPCR生成物を検出するために,DNA結合性染料などの挿入試剤を「核酸増幅反応混合物」に含ませる必要がある(9欄21ないし22行)が,挿入試剤が,PCRで核酸を増幅するための試剤である核酸ポリメラーゼに対する阻害効果を持つことが多くの文献中に記述されている(6欄30ないし46行)と記載されている。
以上の点を総合すると,乙7,8に上記のような示唆があったとしても,本件特許の優先権主張日前には,PCRによるPCR生成物の定量については,PCR中にこれを検出する方法は知られておらず,PCR後に標的核酸を検出する方法が技術常識であったのであり,しかも,PCR中にPCR生成物を検出するための挿入試剤は核酸複写を阻害することが知られていたのであるから,乙3記載の技術(前記DNA増幅システム)と乙4ないし8記載の技術(光学系により生細胞等の生物学的試料をリアルタイムで測定することについての技術)とを組み合わせることは当業者にとって容易に想到し得ることではなかったと認めるのが相当である。
(3) 小括 そうすると,本件発明は進歩性を欠くとは認められない。本件特許に無効理由が存在することが明らかであるとする被告の前記主張は理由がない。
3 分割出願には,原出願に係る発明と本件発明とが同一であるとの違法があるか。(争点(2)イ) (1) 原出願に係る発明と本件発明との相違点 両者を対比すると,以下のとおりの相違点がある。
ア 本件発明は,複数の熱循環にわたって核酸増幅反応をモニターする装置であり(構成要件A),複数の循環期間にわたって各光シグナルの循環依存的変化を測定することが可能である(構成要件E)が,原出願に係る発明は,このような構成を有していない。
この点について,被告は,原出願に係る発明は,「前記信号の量を,・・・PCR中継続的に測定する」(構成要件E’)ものであるところ,PCRはもともと複数の熱循環にわたるから,「PCR中継続的に測定する」とは,複数の熱循環にわたってPCR反応を測定することを意味し,これは本件発明の「複数の熱循環にわたって核酸増幅反応をモニターする」と実質的に同一であると主張する。
しかし,PCR反応によりPCR混合物から生じる信号をその「PCR反応中継続的に測定する」とは,一定時間測定を継続することを意味するのみで,複数の熱循環にわたる測定のみならず,1回の熱循環における測定も含むものであるから,本件発明の「複数の熱循環にわたって」測定することとは技術的意義が異なり,両者を実質的に同一であるということはできない。
したがって,被告の上記主張は採用できない。
イ また,原出願に係る発明は,「前記試料と,DNA結合試剤であって,二重鎖核酸に結合した場合に検出可能な信号を与え,該信号は該試剤が未結合の場合に該試剤により与えられる信号と区別可能であることをもって特徴付けられるDNA結合試剤とを含んでなるポリメラーゼ連鎖反応(PCR)混合物を用意し」(構成要件B’),「工程B’の混合物により生じる前記信号の量を,光ファイバおよび分光螢光測定装置を使用して測定し」(構成要件C’),「前記混合物を前記標的核酸の増幅条件下で処理し」(構成要件D’),「この処理工程D’の間に混合物により生じる前記信号の量を,光ファイバ及び分光螢光測定装置を使用して,PCR中継続的に測定する」(構成要件E’)というものであり,PCR反応前にPCR混合物から生じる信号の量を測定することを必須の構成としている。これに対して,本件発明は,PCR反応前にPCR混合物から生じる信号を測定することを必須の構成としていない。
したがって,この点においても,本件発明は原出願に係る発明と相違する。
(2) 小括 以上によれば,本件発明は,原出願に係る発明と同一とはいえない。したがって,両者が同一であることを前提として本件特許に無効理由があるとする被告の主張は理由がない。
4 分割出願には,本件発明の構成が原出願明細書に記載されていないとの違法があるか。(争点(2)ウ) 当裁判所は,本件発明に係る装置の具体的な構成が,原出願明細書に記載されていると解する。その理由は以下のとおりである。
(1) 構成要件Aについて 原出願明細書には,「本発明によれば,増幅生成物の生成が,反応の進行中において監視され得る。結合試剤により生成される信号の検出装置は,増幅の前,途中および後において信号の検出,測定および定量に使用され得る。・・・本発明の好ましい実施態様において,PCR生成物を標識するために,螢光DNA結合染料が使用され・・・得られる螢光が,二重鎖DNAの量の増大と共に増加する。」(16欄39ないし48行)と,「例[において,・・・信号生成が・・・測定される」(17欄2ないし4行),「PCRの好適な方法において,増幅反応は自動化工程として実施される。・・・本発明は,試料操作,チューブの開放,または周期反応の中断なしに,48の試料すべてにおいてPCR生成物の検出を可能にする。」(17欄12ないし18行)と,例[に関して,「図5は,DNAを含まないPCR反応の結果を示す。図5Aは,サーモサイクラが25℃から始動し,螢光が温度が94℃まで上昇するに従って低下し,温度が50℃に低下した場合に再度螢光が上昇することを示している。このパターンは,サーモサイクラが再び25℃に達するまで残るサイクルについて繰り返され,螢光は,出発時の値にほぼ戻った。図6は,適切な標的DNAを含むPCR反応の螢光プロフィールを示す。50℃における螢光強度は,二重鎖DNA量の増加を反映してサイクル依存的な増大を示している。30サイクル完了後,サーモサイクラが25℃に戻った際に,螢光は,最終値が25℃における初期値の3倍以上に増大した。」(32欄7ないし19行)と,それぞれ記載されている。
原出願明細書の上記各記載及び図5,6によれば,原出願明細書には,原出願に係る発明を実施するために,「複数の熱循環にわたって核酸増幅反応をモニターするための装置」(構成要件A)を使用する例が記載されているといえる。
(2) 構成要件Bについて 原出願明細書には,「PCRの好適な方法において,増幅反応は自動化工程として実施される。現実利用可能なサーモサイクラーは,48個の反応チューブを保持し得る加熱ブロックを使用している。・・・本発明は・・・48の試料すべてにおいてPCR生成物の検出を可能にする。・・・48ウェルのサーモサイクラの記述は,本発明のこの側面を例示する役割をはたしている。」(17欄12ないし30行)と,「該反応物を,0.5mlポリエチレンチューブ内に設定した。」(31欄32ないし33行),「該反応物をサーモサイクラ内に設置した。」(31欄39行)と,それぞれ記載されている。
原出願明細書の上記各記載によれば,原出願に係る発明を実施するための前記(1)の装置は,「1又は複数の核酸増幅反応混合物を収容するための支持体を有する熱循環器」(構成要件B)を備えていることが記載されているといえる。
(3) 構成要件Cについて 原出願明細書には,「例[は・・・オンラインPCR検出方法を示すもので,光ファイバリードが,加熱/冷却ブロック中のPCRチューブに直接に励起光を入力するために使用されている。同じ光ファイバが,帰還螢光輻射を値が読取られる分光螢光測定装置に戻すために使用されている。」(17欄6ないし11行),「好適な光学系は,光源からの励起光を反応チューブに導き,各チューブからの輻射光を測定する。」(17欄18ないし20行)と,「表面または容器が加熱および冷却可能な分光螢光測定装置においては,光ファイバは不要である。光ファイバは,サーモサイクラと分光螢光測定装置とが独立して装置される場合に必要となる。」(17欄42ないし45行)と,例[に関して,「付属の光ファイバ・・・を備えたSpex-Fluorolog-2螢光測定装置を,500nmの励起光を〜3.4nmのバンド幅をもって放射するように設定した。GG435nm遮断フィルタを,2次光除去のために使用した・・・。該放射光を,〜13.6nmのバンド幅をもって570nmにて検出した。OG530フィルタ(530nm遮断)を,励起光除去のために使用した。」(31欄18ないし27行)と,それぞれ記載されている。
原出願明細書の上記各記載によれば,原出願明細書には,原出願に係る発明を実施するための前記(1)の装置が,「前記1又は複数の核酸増幅反応混合物に光学的に連係される光学系を有し」ている(構成要件C)ことが記載されているといえる。
(4) 構成要件Dについて 原出願明細書には,「例[において,・・・信号生成が,反応試験管を開くことなく測定される」(17欄2ないし4行)と,「例[は,・・・光ファイバリードが,加熱/冷却ブロック中のPCRチューブに直接に励起光を入力するために使用されている。同じ光ファイバが,帰還螢光輻射を値が読取られる分光螢光測定装置に戻すために使用されている。」(17欄6ないし11行)と,それぞれ記載されている。
原出願明細書の上記各記載によれば,原出願明細書には,原出願に係る発明を実施するための前記(1)の装置の光学系が,「前記1又は複数の核酸増幅反応混合物を閉じこめたままで各反応混合物からの光シグナル測定するために作用し得る検出器を」有する(構成要件D)ことが記載されているといえる。
(5) 構成要件Eについて 原出願明細書には,「本発明によれば,増幅生成物の生成が,反応の進行中において監視され得る。結合試剤により生成される信号の検出装置は,増幅の前,途中および後において信号の検出,測定および定量に使用され得る。・・・本発明の好ましい実施態様において,PCR生成物を標識するために,螢光DNA結合染料が使用され・・・得られる螢光が,二重鎖DNAの量の増大と共に増加する。」(16欄39ないし48行)と,「PCRの好適な方法において,増幅反応は自動化工程として実施される。・・・本発明は,試料操作,チューブの開放,または周期反応の中断なしに・・・PCR生成物の検出を可能にする。」(17欄12ないし18行)と,例[に関して,「図5は,DNAを含まないPCR反応の結果を示す。図5Aは,サーモサイクラが25℃から始動し,螢光が温度が94℃まで上昇するに従って低下し,温度が50℃に低下した場合に再度螢光が上昇することを示している。このパターンは,サーモサイクラが再び25℃に達するまで残るサイクルについて繰り返され,螢光は,出発時の値にほぼ戻った。図6は,適切な標的DNAを含むPCR反応の螢光プロフィールを示す。50℃における螢光強度は,二重鎖DNA量の増加を反映してサイクル依存的な増大を示している。30サイクル完了後,サーモサイクラが25℃に戻った際に,螢光は,最終値が25℃における初期値の3倍以上に増大した。」(32欄7ないし19行)と,それぞれ記載されている。
原出願明細書の上記各記載及び図5,6によれば,原出願明細書には,原出願に係る発明を実施するための前記(1)の装置は,「複数の循環期間にわたって各光学シグナルの循環依存的変化を測定することが可能である」(構成要件E)ことが記載されているといえる。
(6) 小括 以上のとおり,原出願明細書には,原出願に係る発明を実施するための装置であって,本件発明の構成要件AないしEを備えたものが記載されているから,原出願明細書には本件発明に係る装置が具体的構成を示して記載されているといえる。
5 被告製品全体を差止められるか(争点(3))について 前記のとおり,被告装置は本件発明の技術的範囲に属する。そこで,差止めの対象となる被告製品の範囲について検討する。証拠(甲3,乙10)及び弁論の全趣旨によれば,被告は,顧客の便宜のため,被告装置と解析用コンピュータ及びカラープリンタ等を併せて被告製品として販売していること,被告製品中の解析コンピュータ及びカラープリンターは,汎用品を用いていることが認められる。
まず,被告が輸入,販売行為について不作為義務を負う範囲については,被告製品全体であるとするのが相当である(なお,主文1項の趣旨について付言する。被告製品のうち,解析コンピュータ及びカラープリンターは,汎用製品であるから,これらのみの販売は本件特許権の侵害又は間接侵害に当たることはあり得ない。解析コンピュータ又はカラープリンターを販売する行為は許される。) 次に,被告が廃棄義務を負う対象は,本件特許権を侵害している部分,すなわち,被告製品のうちの解析コンピュータ及びカラープリンターを除く部分であるとするのが相当である(ただし,廃棄請求を認める部分の仮執行宣言については,相当でないからこれを付さないこととする。)。なお,訴訟費用は,全体を被告に負担させることとした。
6 よって,主文のとおり判決する。
追加
物件目録(1)iCycleriQリアルタイムPCR解析システムMC(4波長システム)(2)iCycleriQリアルタイムPCR解析システムDC(2波長システム)(3)iCycleriQリアルタイムPCR解析システムSC(1波長システム)[添付図面の説明]第1図は,各装置共通の全体外観写真である。
第2図は,各装置の内部の光学モジュール部及びサンプルプレートの概略図である。
目録添付図面
裁判長裁判官 飯村敏明
裁判官 榎戸道也
裁判官 佐野信
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