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関連審決 不服2000-16608
関連ワード 特許を受ける権利 /  進歩性(29条2項) /  容易に発明 /  一致点の認定 /  相違点の判断 /  周知技術 /  発明の詳細な説明 /  名義変更 /  容易に想到(容易想到性) /  実施 /  拒絶査定 /  請求の範囲 /  変更 / 
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事件 平成 14年 (行ケ) 212号 審決取消請求事件
原告 株式会社サンセイアールアンドディ
訴訟代理人弁理士 上野登、畠山文夫
被告 特許庁長官太田信一郎
指定代理人 藤井靖子、二宮千久、大野克人、林栄二
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 2003/04/24
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
主文 原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
原告の求めた裁判
特許庁が不服2000-16608号事件について平成14年3月25日にした審決を取り消す、との判決。
事案の概要
1 特許庁における手続の経緯 名称を「パチンコ遊技機における図柄表示制御装置」とする発明について、訴外株式会社三星(出願人)は、平成10年2月16日に特許出願(平成10年特許願第51551号、「本願」という。)をし、拒絶査定を受けたので、これに対して審判を請求した(不服2000-16608号事件)が、特許庁は、平成14年3月25日、「本件審判の請求は成り立たない。」との審決をし、その審決謄本を同年4月3日、出願人に送達した。原告は、審決後、本訴提起前に出願人から本願に係る特許を受ける権利の譲渡を受けた者である(平成14年3月27日特許庁長官に対し出願人名義変更届提出)。
2 本願発明の要旨 本願発明は、平成11年4月1日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲によると、次のとおりである(請求項1の発明を「本願発明」という。)。
「1.遊技盤面に設けられる図柄表示装置の停止図柄によって遊技者に特別の利益が発生するパチンコ遊技機において、「大当たり」図柄が確定した後、前記図柄表示装置の表示画面上に遊技者に対してクイズの解答を要求する表示パターンを設定表示するクイズ画面表示制御手段が設けられることを特徴とするパチンコ遊技機における図柄表示制御装置。」(請求項2ないし5の記載省略) 3 審決の理由の要点 本願発明は、引用例1(「パチンコ必勝ガイド爆裂年鑑’98」平成10年2月9日白夜書房発行。甲4)に記載された発明(引用発明)及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない。したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
原告主張の審決取消事由
1 取消事由1(本願発明と引用発明との一致点の認定の誤り) 審決は、引用例1における「CRギャルズ7」なるパチンコ遊技機にかかる記載及び図面によれば、引用例1には、「遊技盤面に設けられる図柄表示装置の停止図柄によって遊技者に特別の利益が発生するパチンコ遊技機において、「大当たり」図柄が確定した後、前記図柄表示装置の表示画面上に遊技者に対してジャンケンゲームを要求する表示パターンを設定表示する確率変動画面表示制御手段が設けられるパチンコ遊技機における図柄表示制御装置」が記載されていると認定した上、本願発明と引用発明とを対比すると、「両者は「パチンコ遊技機における図柄表示制御装置」の発明であって、「大当たり」図柄が確定した後に図柄表示装置の表示画面上に、引用発明では「ジャンケンゲーム」、本願発明では「クイズ」という、いずれも遊技者に対して参加を要求する表示パターンを設定表示する構成において一致する。」と認定したが、以下のとおり誤りである。
(1)本願発明は、クイズを出題し、遊技者に解答を要求する直接参加型のゲームを取り入れたものであるのに対し、引用例1のジャンケンゲームは、遊技者はただ画面を見ているだけであるから、遊技者に対してゲームへの参加を要求するものではない。したがって、審決が、引用例1について、「大当たり」図柄が確定した後、上記図柄表示の表示画面上に遊技者に対してジャンケンゲームを要求する表示パターンを表示する確率変動画面表示制御手段が設けられていると認定したことは誤りであり、このような誤認に基づく一致点の認定も誤りである。
(2)本願発明では、「大当たり」図柄の組み合わせによって確率変動への移行が決まるのに対し、引用例1では、「大当たり」中のジャンケンゲームで6回のうち5勝すれば確率変動に移行するのであり、同じ「大当たり」が発生した後の興趣を向上させるといっても、両者は異なる。
2 取消事由2(相違点の判断の誤り) (1)審決は、本願発明と引用発明とを対比して、「大当たり」図柄が確定した後、上記図柄表示装置の表示画面上に設定表示して遊技者に対して参加を要求する表示パターンが、「本願発明は、クイズの解答を要求するものであるのに対し、引用発明では、ジャンケンゲームを要求するものである点」を相違点と認定した。そして、周知技術A及び周知技術Bを認定した上で、上記相違点について、「パチンコ遊技機の技術分野において、「大当たり」が発生した後も遊技者が興趣を持ち続けることができ、より娯楽性が高くなるようにするという課題・目的は、前記周知技術Aに示されるように当業者が熟知しているところであるから、これと共通する作用目的を達成する引用発明において、「大当たり」図柄が確定した後に図柄表示装置の表示画面上に設定表示する表示パターンとして、引用発明に示される遊技者に対して参加を要求する「ジャンケンゲーム」を要求する表示パターンに代えて、
同様に遊技者に対して参加を要求する表示パターンである、前記周知技術Bに示されるクイズの解答を要求する表示パターンを採用して、相違点にかかる本願発明の構成のようにすることは、当業者が容易に想到できるものと認められる。」と判断した。
しかしながら、周知技術A及びBについての審決の認定には、以下のとおり誤りがある。
(2)審決が、図柄表示装置にクイズの解答を要求する表示パターンを表示することが周知技術(周知技術B)である証拠として挙げた刊行物のうち、特開平8-196707号公報(甲5)の数式問題は、遊技者に数式問題の解答を要求するものではないから、クイズといえるものではない。また、特開平8-10408号公報(甲6)には、クイズがいかにして誰に対して行われるかが記載されておらず、
遊技者に対してクイズの解答を要求する構成を導き出せるものではない。
(3)審決は、「大当たり」が発生した後も遊技者が興趣を持ち続けるようにすることを課題・目的に、「大当たり」が発生した後に図柄表示装置の表示画面上に遊技者が楽しめる画面を表示することは、周知技術(周知技術A)であるとして、
特開平7-100251号公報(甲8)、特開平7-148319号公報(甲9)、特開平7-148321号公報(甲7)を挙げているが、これらの周知技術をもってしても、前記引用例1及び甲第5、第6号証に記載の構成が本願発明の構成と相違する以上、本願発明の構成が導き出されるものではない。
被告の反論の要点
1 取消事由1(一致点の認定の誤り)に対して (1)本願発明のゲームは、その詳細な説明によれば、図柄表示装置の表示画面上に、間違い探し、シルエット当て等のクイズ問題が表示されるというものである。遊技者は、出題された問題に対し自らが考えた解答を何らかの手段を操作して遊技機に対して応答することを強制されるものではなく、興味がわけば、頭の中で解答を考えあるいは楽しめばよいものである。したがって、遊技者の考えた解答はその後の遊技に影響を及ぼすものではなく、これを遊技者による直接的な遊技参加が行われるものとはいい難い。本願発明でいう遊技者に対して解答を要求するゲームとは、図柄表示装置の表示画面に遊技者が思考を働かせることのできる問題が提供され、遊技者が興味をもつと、それについて考えるといった程度のものにすぎない。
一方、引用例1のジャンケンゲームは、興味を感じれば、遊技者が「じゃんけんゲーム」の一方の当事者として、「グー」、「パー」、「チョキ」のいずれだろうかと思考を働かせ、表示画面を見るものである。引用例1中の画面説明で、「といっても打ち手はただ画面を見ているだけである。」と記載しているのは、「グー」、「パー」、「チョキ」のうち遊技者が考えた解答を自ら何らかの手段を操作して遊技機に対して応答する必要はなく、遊技機の制御により次の画面に進んでいくといっているだけである。
本願発明のゲームは遊技者の興味に応じて任意にクイズの解答を考えさせる画面を、引用例1のゲームは遊技者の興味に応じて任意に出すジャンケンを考えさせる画面を、それぞれ提供しているものであり、任意にクイズの解答を考えさせる画面が遊技者に対して参加を要求するものなら、任意にジャンケンを考えさせる画面も遊技者に対して参加を要求するものということができる。遊技者に興味をもたせ、
思考を働かさせるものである点において、両者に差異はない。
(2)本願発明は、その詳細な説明において、「大当たり」図柄の組合せが通常図柄か特定図柄かによって確率変動に移行するかどうかが決定されると記載されているが、当該記載にかかる構成は発明を特定するために必要な事項として特許請求の範囲に記載されているものではないから、これに基づいて引用発明との相違をいう原告の主張は、特許請求の範囲の記載に基づかないものであって、失当である。
引用例1のものの確率変動判定時期がいつであるかは明らかではないが、確率変動判定前の画面であっても、本願発明の実施例のごとく確率変動判定後の画面であっても、遊技者の参加を要求するゲームの表示は、「大当たり」図柄が確定した後の画面の展開を興味をもって遊技者に注視させ遊技者を飽きさせないようにすることを狙ったものであり、ゲームの表示によって遊技者の興趣が盛り上がるという作用効果において差異はない。
2 取消事由2(相違点の判断の誤り)に対して (1)周知技術Bについて 特開平8-196707号公報(甲5)には、「【0039】・・・先ず図3(a)に示すように、絵柄合せ遊技が開始されると、可変表示手段20のメイン絵柄表示領域21に数式問題(図中では3+6=?)がメイン絵柄として表示される。その一方、サブ絵柄表示領域22には、複数の解答者たるキャラクター(図中では3人の子供)がサブ絵柄として登場する。【0040】次に図3(b)に示すように、メイン絵柄表示領域21には、前記数式問題に代わって3つの解答(図中では3つ並びの数字)が前記各キャラクターの思考結果に見立てられて、上下方向に連続的に流れる如くスクロール表示される。このときサブ絵柄表示領域22では、各キャラクターが例えば考え込む表情をしたり、腕組みする等、その状況に応じて前記メイン絵柄の表示変化過程を盛り上げるような動きをする。」と記載されている。遊技者は、クイズとともに表示される考え込む表情をしたり、腕組みするキャラクタと一体となってクイズに対する解答を考え、考えた答えが出現するように願うことでゲームに参加している。したがって、クイズの解答を要求する表示パターンを表示するようにした構成は、上記文献に記載されている。そして、上記文献に記載のものも、遊技者に対して参加を要求するクイズを表示することによって興趣が盛り上がるという作用効果を奏している。
特開平8-10408号公報(甲6)には、【0020】欄に、「背景画像は、
キャラクタが移動を開始するスタート位置、キャラクタが到達しうる複数のゴール位置、スタート位置とゴール位置の間には、障害物、分岐路、クイズ、競争、格闘等の勝敗結果が得られる場面など、進路を決定する選択肢が設定され、」と記載されている。当たりを得るためにはキャラクタが当たりを導出するゴール位置に到達することが必要であり、遊技者は画面に設定されたスタート位置からゴール位置までのキャラクタの移動経路を興味を持って追い、その間に進路を決定する選択肢としてクイズが設定されていれば、クイズの答えを考えるだろうことは想像に難くないので、クイズの解答を要求する表示パターンを表示するようにした構成は、甲第6号証に記載されている。そして、上記文献に記載のものも、遊技者に対して参加を要求するクイズを表示することによって、興趣が盛り上がるという作用効果を奏している。
(2)周知技術Aについて 特開平7-100251号公報(甲8)には、大当りの発生中に、ラウンドの進行に応じて電気的可変表示装置3に海外の各国を旅行するストーリの画像を国別に順次表示することが開示されている。 特開平7-148319号公報(甲9)には、大当たり中に特別表示(スポーツシーン)の画像を表示することを開示されている。特開平7-148321号公報(甲7)には、大当たり中に遊技情報やテレビのニュース速報等を表示することが開示されている。
このように、上記各公報は、いずれも「大当たり」発生後も遊技者が興趣を持ち続けられるようにパチンコ機の図柄表示装置に遊技者が楽しめる画面を表示することを開示しており、この技術が周知の技術であることを示している。
(3)容易性判断について 「大当たり」発生後も遊戯者が興趣を持ち続けるようにするという周知の技術課題があり、それを達成するための図柄表示装置に遊戯者が楽しめる画面を表示することも周知技術であり、引用例1も、同じ目的・課題を達成するものであるから、
引用例1の遊技者に対して解答を要求する表示パターンに従来からパチンコ機で周知技術のクイズの解答を要求する表示パターンを適用することは、当業者にとって困難ではない。
当裁判所の判断
1 取消事由1(一致点の認定の誤り)について 原告は、本願発明は、クイズを出題し、競技者にクイズの解答を要求する直接参加型ゲームを取り入れたものであるのに対し、引用例1のジャンケンゲームは、遊技者はただ画面を見ているだけであるから遊技者の直接参加を要求するものではなく、両者はこの点で相違すると主張する。
(1)本願明細書(平成11年4月1日付け手続補正書による補正後のもの。甲3)には、【発明の実施の形態】の欄に、クイズ画面表示について、以下のように記載されている。
「・・・「大当たり」図柄が確定すると、・・・、その間、前記連続作動回数の6ラウンド目には、クイズ画面表示制御によってクイズが出題される。」【0051】 「・・・連続作動回数の7ラウンド目には、前記図11にて出題したクイズの問題に対応する図柄が表示される。そして、その後解答が表示され、7ラウンド目が終了するまで繰り返し表示される。この実施例では、左右の図柄の間違い探しの問題が出題され、その解答が表示される例が示されている」【0052】 (2)上記記載によれば、本願発明の実施の形態とされるものにおいては、「大当たり」図柄の確定後、クイズの問題が画面上に出題されるが、遊技者はこのクイズに対して何らかの能動的な対応をすること(例えば解答ボタンを押す等)を要求されるわけではなく、また、クイズの結果が遊技の進行に対して何らかの影響を与えるものでもない。
そうすると、本願発明の特許請求の範囲の記載における「遊技者に対してクイズの解答を要求する」とは、遊技機に対し機械的操作を伴う応答をすることを遊技者に要求するようなものに限られるわけではなく、遊技者が思考を働かせることのできる問題を提供し、遊技者が興味を持てばその問題について思考を働かせ解答を考えさせる、という程度のものも含むというべきである。
そして、本願明細書の発明の詳細な説明中の、「本発明の解決しようとする課題は、遊技盤面に設けられる図柄表示装置が「大当たり」が発生した後も遊技者が興趣を持ち続けることができるよう、クイズ画面あるいは著作キャラクタを切換表示するようにした、より娯楽性の高いパチンコ遊技機における図柄表示制御装置を提供することにある。」【0005】、「【発明の効果】・・・請求項1に記載の図柄表示装置によれば、「大当たり」の発生に伴って・・・大入賞口が作動し、例えば連続作動回数が6ラウンド目と12ラウンド目になると、クイズ解答を要求する表示パターンが表示されることによって、「大当たり」が発生して興ざめしがちな遊技状況のアクセントとなると共に、今後の変動に対する遊技者の更なる興趣をかきたてることになり、」【0071】等の記載に照らすと、本願発明における「遊技者に対してクイズの解答を要求する表示パターン」とは、「大当たり」の状態で遊技への興趣を失いがちな遊技者の興味を引くような映像を順次提示するという目的のために提示されるものであって、その表示パターンによって表示される画面が「クイズ画面」であるという点に特段の技術的な意義はないというべきである。
(3)一方、引用例1(甲4)には、「CRギャル図7」なるパチンコ遊技機が記載されており、その説明文「数字が三つ揃いとなって大当たりになれば、ゲーム中にセクシーギャルとのジャンケンが始まる。といっても打ち手はただ画面を見ているだけである。」、「全部で6回勝負することになっているので、うち5回以上勝てば確変突入&継続だ。」、「大当たり中の野球拳で確変か否かが決定される斬新なゲーム性となっている。」等の記載から、引用発明においては、大当たりが発生した後、画面上で「セクシーギャルとのジャンケンゲーム(野球拳)」が進行するという設定の画像が表示されると認められる。同遊技機の遊技者は、ジャンケンゲームに直接関与するわけではなく、ジャンケンゲームの映像を注視しているだけであるが、ジャンケンゲームに勝ち越すと遊技の確率が変動して遊技者に有利な状態に至るため、ジャンケンゲームが「今後の変動に対する遊技者の更なる興趣をかきたてる」ことになる。
(4)審決は、引用例1について、「「大当たり」図柄が確定した後、前記図柄表示装置の表示画面上に遊技者に対してジャンケンゲームを要求する表示パターンを設定表示する」ものであると認定し、「遊技者に対して参加を要求する表示パターン」を本願発明と引用発明の一致点として挙げた。確かに、引用例1のジャンケンゲームでは、遊技者がボタンを操作するなどしてジャンケンゲームに参加するものではないから、「遊技者に対してジャンケンゲームを要求する」との表現は必ずしも適切ではない面があるが、本願発明における「クイズの解答を要求する表示パターン」も、遊技者に対しボタン操作等を伴うクイズへの参加を遊技者に要求するものに限らず、遊技者の興味を惹くことによって画面を注視させるようなものを含むことは前記(2)に述べたとおりであるから、本願発明の「クイズの回答を要求するパターン」と引用例1の「ジャンケンゲーム」とは、思考をは働かせたり興味を持って画面を注視するという意味での遊技者の「参加」を誘うものであるという点において、一致するということができる。したがって、審決が本願発明において設定表示される表示パターンと引用例1の表示パターンとが共に「遊技者の参加を要求する」ものであるとして、この点を両者の一致点としたことに、誤りはない。
なお、原告は、引用例1のジャンケンゲームが「大当たり」後の確率変動判定に利用されるものであり、本願発明の「大当たり状態確定後の表示」とは態様が異なると主張するが、特許請求の範囲の記載に基づいて両者を比較するとき、両者とも「大当たり」図柄が確定した後の表示であることは同じであるから、両者が異なるということはできない。
したがって、原告主張の取消事由1は理由がない。
2 取消事由2について (1)周知技術Bについて 特開平8-196707号公報(甲5)には、特定の数式問題(例えば3+6=?)がメイン絵柄として表示され、サブ絵柄領域には複数の回答者たるキャラクター(例えば3人の子供達)が登場し、解答を考えるという構成が記載されている(【0016】、【0017】)。これは、図柄表示装置の表示画面に遊技者が思考を働かせることのできる問題を提供し、遊技者の遊技への興味を持続させるという点で、本願発明と変わるところはない。また、特開平8-10408号公報(甲6)にも、被告が主張するように、遊技者に対してクイズを表示することが記載されているということができる。これらのことから、遊技者に対し、遊技者の思考を働かせ興味を持続させる画面を表示するという意味での「遊技者の参加」を要求する表示パターンとしてクイズの解答を要求する表示パターンを採用することは、周知技術であると認めることができる。したがって、審決の周知技術Bの認定に誤りはない。
(2)周知技術Aについて 特開平7-100251号公報(甲8)には、「大当たり」の発生中に、海外の各国を旅行するストーリの画像を国別に順次表示することが開示され、特開平7-148319号公報(甲9)には、「大当たり」中に特別表示(スポーツシーン)が開示され、特開平7-148321号公報(甲7)には、「大当たり」中に遊技情報やテレビのニュース速報等を表示することが開示されている。
これらはいずれも「大当たり」中の遊技者の興趣を保ち続けようとする目的で表示されるものであることは明らかであり、本願発明のゲーム及びその解答の表示と同じ目的で表示されるものである。したがって、審決の周知技術Aの認定に誤りはない。
(3)容易性判断について 以上のとおり、審決の周知技術A及びBの認定には誤りがないから、審決が、
「パチンコ遊技機の技術分野において、「大当たり」が発生した後も遊技者が興趣を持ち続けることができ、より娯楽性が高くなるようにするという課題・目的は、
前記周知技術Aに示されるように当業者が熟知しているところであるから、これと共通する作用目的を達成する引用発明において、「大当たり」図柄が確定した後に図柄表示装置の表示画面上に設定表示する表示パターンとして、引用発明に示される遊技者に対して参加を要求する「ジャンケンゲーム」を要求する表示パターンに代えて、同様に遊技者に対して参加を要求する表示パターンである、前記周知技術Bに示されるクイズの解答を要求する表示パターンを採用して、相違点にかかる本願発明の構成のようにすることは、当業者が容易に想到できるものと認められる。」と認定判断したことに誤りはない。
原告主張の取消事由2は、理由がない。
3 結論 以上のとおり、原告主張の取消事由はいずれも理由がないから、原告の請求は棄却されるべきである。
裁判長裁判官 塚原朋一
裁判官 塩月秀平
裁判官 古城春実