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関連審決 異議2000-73352
関連ワード 頒布された刊行物 /  進歩性(29条2項) /  容易に発明 /  クレーム /  特許出願日 /  数値限定 /  非容易 /  特許発明 /  交換 /  設定登録 /  請求の範囲 /  変更 /  取消決定 /  異議申立 / 
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事件 平成 14年 (行ケ) 96号 特許取消決定取消請求事件
原告 株式会社丸徳基業
原告 東洋ロックソイル株式会社
原告ら訴訟代理人弁理士 久保司
被告 特許庁長官太田信一郎
指定代理人 鈴木憲子,田中弘満,大野克人,林栄二
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 2003/05/08
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
主文 原告らの請求を棄却する。
訴訟費用は原告らの負担とする。
事実及び理由
原告らの求めた裁判
「特許庁が異議2000-73352号事件について平成14年1月15日にした決定を取り消す。」との判決。
事案の概要
本件は,後記本件発明の特許権者である原告らが,特許異議の申立てを受けた特許庁により本件特許を取り消すとの決定がされたため,同決定の取消しを求めた事案である。
なお,本件発明の明細書(甲1)では「オーガ」,刊行物1(甲3)及び同2(甲4)では「オーガー」と記載されているが,本判決では,前者に準じ,刊行物1及び2などを引用する場合を含め,すべて「オーガ」と統一して表記する。
1 前提となる事実等 (1) 特許庁における手続の経緯 (1-1) 本件特許(特許に係る発明を「本件発明」という。) 特許権者:原告ら(特許設定登録時の特許権者は原告株式会社丸徳基業であったが,平成12年4月10付け登録により,特許権の一部が原告東洋ロックソイル株式会社に移転された。) 発明の名称:「掘削工法」 特許出願日:平成4年9月1日(特願平4-259144号) 特許権設定登録日:平成11年12月24日 特許番号:第3015842号 (1-2) 本件手続 特許異議事件番号:異議2000-73352号 異議の決定日:平成14年1月15日 決定の結論:「特許第3015842号の請求項1に係る特許を取り消す。」 決定謄本送達日:平成14年2月4日(原告らに対し) (2) 本件発明の要旨「【請求項1】 先端に掘削刃を設けたケーシングを回転させながら切り込み,このケーシング内にオーガスクリューを該ケーシングと反対向きに回転させて掘削する掘削工法において,ケーシングは本体管の先端に掘削刃を有するケーシングヘッドを嵌着するものであり,オーガヘッドの長さはこのケーシングヘッドの長さより数十センチメートル短いものとし,オーガスクリューのオーガヘッドの掘削刃は前記ケーシング先端の掘削刃より数センチメートル〜十数センチメートル引っ込むようにケーシングをわずかに先行させて切り込むことを特徴とする掘削工法。」 (3) 決定の理由 決定の理由は,【別紙】の「異議の決定の理由」に記載のとおりである。要するに,本件発明は,刊行物1(特公昭63-25130号公報,本訴甲3)及び刊行物2(特開昭60-133189号公報,本訴甲4)に記載された周知発明,刊行物2に記載された発明並びに審判甲1-1(本訴甲7-1-1)及び審判甲2-1(本訴甲7-2-1)の取合図に基づいて製作され本件特許の出願前に販売された掘削機に係る公知の発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本件発明の特許は,特許法29条2項の規定に違反してなされたものである,というものである。
2 原告らの主張(決定取消事由)の要点 (1) 取消事由1(周知発明の認定の誤り) 本件発明は,オーガヘッドの掘削刃の先端をもってケーシング先端の掘削刃との相対的位置を図るものと具体化されているが,刊行物2記載のものは,オーガ等の掘削手段先端部とケーシング先端により相対的位置関係が記載されており,本件発明のように掘削刃をもって比較するか否か不明である。また,本件発明では,オーガスクリューのオーガヘッドの掘削刃は,ケーシング先端の掘削刃より数センチメートル〜十数センチメール引っ込むようにケーシングをわずかに先行させて切り込むものであるが,刊行物2では,従来技術に関し,ケーシング内のオーガ等の掘削手段先端部を,ケーシング先端から10〜20cm程度ケーシング内に挿入した状態で掘削が行われていることが記載されているものの,十センチメール以下の数センチメートルの部分については示されていない。
よって,決定は,周知発明として,「刊行物1,2には,『先端に掘削刃を設けたケーシングを回転させながら切り込み,このケーシング内にオーガスクリユーを該ケーシングと反対向きに回転させて掘削し,ケーシングは本体管の先端に掘削刃を有するケーシングヘッドを嵌着するものであり,オーガスクリューのオーガヘッドの掘削刃は前記ケーシング先端の 掘削刃 より 引っ込むようにケーシングをわずかに先行させて切り込む掘削工法』という周知の技術(以下,「周知発明」という。)が記載されている。」と認定しているが,誤っており,「先端に掘削刃を設けたケーシングを回転させながら切り込み,このケーシング内にオーガスクリユーを該ケーシングと反対向きに回転させて掘削し,ケーシングは本体管の先端に掘削刃を有するケーシングヘッドを嵌着するものであり,オーガスクリューのオーガヘッドの先端は前記ケーシング先端より引っ込むようにケーシングをわずかに先行させて切り込む掘削工法」というように認定されるべきである。
(2) 取消事由2(公知発明との認定の誤り) 決定は,甲7-1-1(審判甲1-1)及び甲7-2-1(審判甲2-1)の取合図に基づいて製作された掘削機が,本件特許の出願前に販売され公知の発明となったと認められるとするが,確たる証拠に基づいた認定ではなく,誤っている。
(3) 取消事由3(進歩性の判断の誤り) (3-1) 本件発明の特徴は,「ケーシングは本体管の先端に掘削刃を有するケーシングヘッドを嵌着するものであり,オーガヘッドの長さはこのケーシングヘッドの長さより数十センチメートル短いものとし,」という構成(第1構成要素)と,「オーガスクリューのオーガヘッドの掘削刃は,前記ケーシング先端の掘削刃より数センチメートル〜十数センチメートル引っ込むようにケーシングをわずかに先行させて切り込む」という構成(第2構成要素)の両方を取り入れたことにある。
本件発明の工法に使われる掘削機械の組立てセットでは,まず,オーガスクリューの先端にオーガヘッドを取り付け,次に,ケーシングの本体管の先端にケーシングヘッドを取り付ける。この取付段階において,「ケーシングは本体管の先端に掘削刃を有するケーシングヘッドを嵌着するものであり,オーガヘッドの長さはこのケーシングヘッドの長さより数十センチメートル短いものとした」点は,重要である。なぜなら,オーガヘッドの長さは,ケーシングヘッドの長さより短い方が,後でケーシングヘッドをケーシングの本体管の先端に取り付けやすいからである。そして,安全性の点から,オーガヘッドを地上から浮かす距離は少ない方がよく,また,ボルト止め等の作業を行う点から,オーガスクリューにオーガヘッドを接合する接合部は,ケーシングヘッドを嵌着する前のケーシングの本体管の先端から十分下方に突出することが望ましい。このために,オーガヘッドとケーシングヘッドの長さの差は,オーガヘッドの掘削刃とケーシング先端の掘削刃の先端の差のように数センチメートル〜十数センチメートルでは十分でなく,本件発明のように数十センチメートルの差が必要である。
以上の取り付けが完了した後では,「ケーシングヘッドの中にオーガヘッドが常に位置するように配慮すること」,「ケーシングヘッド4bの中にオーガヘッド2の全てが入るように配慮すること」になる。
オーガヘッドのオーガスクリューへの接合部とケーシングヘッドのケーシングの本体管への接合部のそれぞれの接合部は,いずれも掘削の力の負荷に対して脆弱な箇所となりやすく,その位置を横に重なることなく上下にずらすことで,力の負荷に対する強度的な配慮も行うことができる。
第1要素は装置としての構成要素であり,第2の要素は工法としての構成要素であるとしても,掘削機械を組立てセットして第2の要素の工法を行うのに,第1要素の装置としての構成要素は,オーガスクリューのオーガヘッドの掘削刃は前記ケーシング先端の掘削刃より数センチメートル〜十数センチメートル引っ込むようにするという位置決め等のために必要不可欠なものであり,これが前記効果に繋がる。このように,位置決め等で必要不可欠なものであることをもって,第1要素と第2要素に相関関係がある。
(3-2) 第1要素と第2要素を組み合わせることは,容易ではない。
甲7-1-1及び甲7-2-1の取合図に基づいて製作された掘削機は伸縮ケーシングと記載された部分のものであり,ケーシングの長さが伸縮するものである。
そして,本件発明の出願前に販売された掘削機は,本件発明のごとく,ケーシング長さとオーガスクリューの長さが固定された関係にあるような掘削機ではない。
このようなケーシングの長さが伸縮する掘削機が販売されたとしても,使用に際しては通常の使用法のように,オーガスクリューのオーガヘッドの掘削刃は,ケーシング先端の掘削刃より先行させていくことがほとんどであり,本件発明のように,オーガスクリューのオーガヘッドの掘削刃は,前記ケーシング先端の掘削刃より数センチメートル〜十数センチメートル引っ込むようにケーシングをわずかに先行させて切り込むということに直接結び付くものではない。
甲7-1-1及び甲7-2-1には,掘削刃先端までの長さが720oのオーガヘッドと,掘削刃取付部までの長さが1300oのケーシングヘッドが図示されており,オーガヘッドの長さを,掘削刃の長さを含まないケーシングヘッドの長さより,580o短いものとしているクィックジョイントケーシング取合図が描かれていて,このような装置が販売され,公知となったとしても,その使用法は,オーガスクリューのオーガヘッドをケーシングヘッドより先行させることも可能であり,本件発明のようにオーガスクリューのオーガヘッドの掘削刃は,前記ケーシング先端の掘削刃より数センチメートル〜十数センチメートル引っ込むようにケーシングをわずかに先行させて切り込むということを特定させるものではない。
甲7-1-1及び甲7-2-1の図面作成者である株式会社サンテック(以下「サンテック」という。)は,製品の使われ方について確認しておらず,特に,ケーシングの長さが伸縮する掘削機であるので,前記本件発明の第1要素と第2要素を組み合わせることについて示唆する証拠はない。
(3-3) 以上を総合すれば,本件発明は,周知発明,刊行物1,刊行物2に記載された発明及び公知の発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものではなく,本件発明の特許は,特許法29条2項の規定に違反するものではない。
3 被告の主張の要点 (1) 取消事由1(周知発明の認定の誤り)に対して 刊行物2(甲4)には,従来技術について,「岩盤等にケーシング先端及びオーガ先端が当たった場合にも,ケーシング先端の切削刃によって…」(2頁左上欄)という記載があり,「オーガ」とは,刃先の付いた先端部をロッドの先につけたものであるから,オーガ先端とケーシングの先端には当然掘削刃が設けられていると解される。したがって,刊行物2において,オーガの先端とケーシングの先端との相対的位置を掘削刃をもって比較して,決定のように周知発明を認定したことに何ら誤りはない。 (2) 取消事由2(公知発明との認定の誤り)に対して 本件証拠に照らせば,決定において「甲第1号証-1(本訴甲7-1-1)及び甲第2号証-1(本訴甲7-2-1)の取合図に基づいて製作された掘削機が,本件特許の出願前に販売され公知の発明となったと認められ」と認定したことに誤りはない。
(3) 取消事由3(進歩性の判断の誤り)に対して (3-1) オーガヘッド,ケーシングヘッドの取り付けの段階においては,安全性の点から,オーガヘッドを地上から浮かす距離は少ない方がよく,また,オーガスクリューにオーガヘッドを接合する接合部は,ケーシングヘッドを嵌着する前のケーシングの本体管の先端から下方に突出している方がボルト止め等の作業をしやすく,これがために,オーガヘッドとケーシングヘッドの長さの差は,オーガヘッドの掘削刃とケーシング先端の掘削刃の先端の差のように数センチメートル〜十数センチメートルでは十分ではなく,本件発明のように数十センチメートルの差が必要と考えられる。つまり,「ケーシングは本体管の先端に掘削刃を有するケーシングヘッドを嵌着するものであり,オーガヘッドの長さはこのケーシングヘッドの長さより数十センチメートル短いものとし,」という第1要素は,ただ単にオーガヘッドの長さとケーシングヘッドの長さを規定したにすぎず,取り付けの段階においては重要であるかもしれないが,そのような第1要素を有した構成のものを用意したからといって,直ちに第2要素のように「オーガスクリューのオーガヘッドの掘削刃は,前記ケーシング先端の掘削刃より数センチメートル〜十数センチメートル引っ込むようにケーシングをわずかに先行させて切り込む」ことになるわけではなく,第2要素は,掘削時における両者の位置関係を規定するのであるから,第1要素と第2要素の間に相関関係があるとはいえない。
次に,原告らは,掘削機について「本件発明のごとく,ケーシング長さとオーガスクリューの長さが固定された関係にあるような掘削機」と主張しているが,本件発明において,使用される掘削機がそのような掘削機であるとの限定はなく,仮にあったとしても,ケーシングの本体管の先端とオーガスクリューのロッド先端との位置関係の限定もなく,第1要素を有した構成のものを用意したからといって,直ちに第2要素に必要な構成に固定されて組み立てられるわけではないから,第1要素と第2要素の間に相関関係があるとはいえない。
(3-2) 上記のように,第1要素と第2要素の間に相関関係があるとはいえず,第1要素と第2要素を組み合わせることの必然性はないから,決定においても,第1要素と第2要素を組み合わせることの容易性について何ら述べていない。
なお,決定においては,甲7-1-1及び甲7-2-1の取合図に基づいて製作された掘削機は,本件発明と周知発明との相違点bである「本件発明では,オーガヘッドの長さはケーシングヘッドの長さより数十センチメートル短いものとしているのに対し,周知発明では,そのような限定がない点。」に関して引用して検討し,「周知発明の掘削機として,上記公知の発明の掘削機を採用して,上記相違点bにおける,本件発明の構成のようにすることは,当業者が適宜なし得ることにすぎない。」としたのであって,上記取合図に基づいて製作された掘削機をもって,第1要素と第2要素を組み合わせることの容易性について述べているのではない。
(3-3) 本件発明の進歩性を否定した決定の判断に誤りはない。
当裁判所の判断
1 取消事由1(周知発明の認定の誤り)について 原告らは,周知発明の認定について,刊行物2(甲4)における「掘削手段先端部」,「ケーシング先端」を「掘削刃」に相当するものとして認定したことの誤りなどを主張する。
そこで,検討するに,刊行物2(甲4)には,次の記載がある。
「ケーシング内のオーガ等の掘削手段先端部を,ケーシング先端とほぼ同一面とした状態か,若しくはわずか10〜20p程度ケーシング内に挿入した状態で掘削が行われているため,例えば,地盤中の玉石等の転石にケーシング先端及びオーガ先端が当たった場合,オーガの回転に伴ってこの転石も共に回転し,オーガによる掘削及び土砂の排出が全く行われなくなり杭孔の掘削が不可能となっている。
また,岩盤等にケーシング先端及びオーガ先端が当たった場合にも,ケーシング先端の切削刃によって岩盤はコアー状に円切りされて,このコアー状の岩石が上記同様オーガの回転により同方向に共回りしてこれ以上の掘削が不可能となっていた。」(1頁右欄〜2頁左上欄)。
上記の「地盤中の玉石等の転石にケーシング先端及びオーガ先端が当たった場合」,「また,岩盤等にケーシング先端及びオーガ先端が当たった場合にも,ケーシング先端の切削刃によって」等の記載からすると,上記の記載は,ケーシング及びオーガの先端に取付けられた切削刃の切削力の低下を問題としていることは明らかである。したがって,「10〜20p程度ケーシング内に挿入した状態で」における「10〜20p」は,ケーシング先端とオーガ先端の切削刃間の距離であることは明らかである。
よって,原告ら主張の取消事由1は理由がない。
2 取消事由2(公知発明との認定の誤り)について (1) 原告らは,甲7-1-1及び甲7-2-1の取合図に基づいて製作された掘削機が本件特許の出願前に製造(完成)され,丸泰土木株式会社(以下「丸泰土木」という。)に販売(納入)されたことの立証はなく,公知の発明となったとの認定は誤りであると主張する。
(2) 検討するに,取合図である甲7-1-1及びその受注票である甲7-1-2,並びに取合図である甲7-2-1及びその受注票である甲7-2-2〜4が書証として提出されており,これらと甲8(上記掘削機を丸泰土木から受注したというサンテックの代表取締役であるAの陳述書の部分)及び甲10(審判手続におけるAに対する証人尋問の結果が記載された書面)を総合すれば,本件特許の出願前にサンテックが丸泰土木から掘削機を受注し,甲7-1-1の取合図(甲7-1-2の受注に対応)及び甲7-2-1の取合図(甲7-2-2〜4の各受注に対応。
各受注内容が同一のため取合図は共通)を作成したことは,明らかである。
一方,確かに,原告らの主張するとおり,上記取合図に記載された各掘削機が製造(完成)されたこと,販売(納入)されたことを示す納入書,受領書,代金の請求書,領収書等(各控えも含む)は,提出されていない。
しかしながら,前記甲10によれば,Aは,サンテックにおいて,甲7-2-4の受注に対応する甲7-2-1の取合図に記載の掘削機を製造し,平成2年9月10日に葛西陸運を使って丸泰土木に納品したこと(甲7-2-4の運送方法欄の記載),同じ取合図に基づく各掘削機(甲7-2-2〜3の受注に対応)及び甲7-1-1の取合図に基づく掘削機(甲7-1-2の受注に対応)についても製造し,日付は明確ではないが,丸泰土木が引き取りに来て引き渡したものと思われること,これらの掘削機の納入後に丸泰土木が現場で使用していることをAの命を受けた技術担当ので社員であるBが確認していることなどを述べており,これに前掲書証を総合すれば,本件特許の出願前に,甲7-1-1及び甲7-2-1の取合図に基づく各掘削機が製造(完成)され,これらが丸泰土木に販売(納入)され,使用されたことを認めることができる。
甲10におけるAの供述は,上記の点について明確に供述しているほか,納品した掘削機が現場で確実に動くかどうかを確認し,クレーム処理などにも役立てるために,Bに現場での掘削機の使用状況を確認させることにしていること,受注後にキャンセルになった場合には,受注票にキャンセルと書き込むことにしていること(上記受注票は,いずれもキャンセルとの記載はない。)など具体的な根拠をもって述べられており,信用に値するものである。そして,上記Aの供述の上記関係部分は,納入書(控え)である乙1,図面台帳である乙2-1〜3(甲10,7-1-1,7-2-1,7-3-1及び弁論の全趣旨により,各原本の存在及び成立を認めることができる。)によって裏付けられるものである。
なお,製品の納入書(納品書),代金の請求書及び領収書(各控えを含む)並びに製造のための資材等の仕入れ関係の伝票は,書証とされていないが,甲10によれば,Aは,審判における尋問の席に持参していると述べており,弁論の全趣旨によれば,審判の当事者がこれらの書面を証拠とする手続をしなかっただけであり,持参した書面の一部及び図面台帳は,特許庁審判官により原本が確認されたことが認められる。そうすると,上記各書面が書証とされていない事実をもってしても,前記掘削機の製造,販売に関する認定を覆すには足りないというべきである。
(3) 以上によれば,甲7-1-1(審判甲1-1)及び甲7-2-1(審判甲2-1)の取合図に基づいて製作された掘削機が,本件特許の出願前に販売され,公知の発明となったとの決定の認定は,是認し得るものであって,誤りはない。よって,原告ら主張の取消事由2は理由がない。
3 取消事由3(進歩性の判断の誤り)について (1) 原告らは,本件発明の特徴は,「ケーシングは本体管の先端に掘削刃を有するケーシングヘッドを嵌着するものであり,オーガヘッドの長さはこのケーシングヘッドの長さより数十センチメートル短いものとし,」という構成(第1構成要素)と,「オーガスクリューのオーガヘッドの掘削刃は,前記ケーシング先端の掘削刃より数センチメートル〜十数センチメートル引っ込むようにケーシングをわずかに先行させて切り込む」という構成(第2構成要素)の両方を取り入れたことにあるとして,上記第1と第2の構成要素の間には重要な相関関係があると主張する。
しかしながら,第2の構成要素が要求している構造的構成は,「オーガヘッドの掘削刃はケーシング先端の掘削刃より数センチメートル〜十数センチメートル引っ込む」ようにした状態で掘削作業ができることであり,明らかに第1の構成要素の規定する寸法関係とは無関係である。したがって,原告らが,第1の構成要素にあるケーシングヘッドとオーガヘッドの寸法関係を採用することが重量物であるオーガヘッドの取付作業の安全性を確保するために重要であると主張する点は,首肯できるものの,第1と第2の構成要素の間には重要な相関関係があるという原告らの主張は,採用することができない。
(2) 原告らは,第1の構成要素と第2の構成要素を組み合わせることが容易でないことをるる主張する。
しかし,第1の構成要素と第2の構成要素の間には,特別な相関関係はなく,別異の構成要素であることが明らかであることは,前判示のとおりである上,決定は,第1の構成要素と第2の構成要素を組み合わせることが容易であると判断したものではないので,いずれにしても,第1の構成要素と第2の構成要素を組み合わせの非容易性をいう原告らの主張は,前提を欠くものといわざるを得ない。
(3) 決定は,刊行物2が相違点aにおける本件発明の構成(第2の構成要素に相当)に対応する構成を有しているとして,周知発明において,ケーシングを先行させて地盤中に切り込むに際し,刊行物2に記載された従来技術を採用して行うことは当業者が適宜なし得ることにすぎないと判断し,さらに,周知発明の掘削機として,甲7-1-1及び甲7-2-1に記載の公知の発明の掘削機を採用することにより,相違点bにおける本件発明の構成(第1の構成要素に相当)のようにすることは,当業者が適宜なし得ることにすぎないと判断し,本件発明の進歩性を否定したものであって,その判断は是認し得るものである。
原告らの上記主張は,いずれも採用することができず,取消事由3も理由がない。
4 結論 以上のとおり,原告らの決定取消事由の主張は理由がないので,原告らの請求は棄却されるべきである。
追加
【別紙】異議の決定の理由異議2000-73352号事件,平成14年1月15日付け決定(下記は,上記決定の理由部分について,文書の書式を変更したが,用字用語の点を含め,その内容をそのまま掲載したものである。)理由1.本件発明特許第3015842号に係る出願は、平成4年9月1日の出願であって、平成11年12月24日に特許権の設定登録がなされたもので、その請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、特許明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。
「【請求項1】先端に掘削刃を設けたケーシングを回転させながら切り込み、このケーシング内にオーガスクリューを該ケーシングと反対向きに回転させて掘削する掘削工法において、ケーシングは本体管の先端に掘削刃を有するケーシングヘッドを嵌着するものであり、オーガーヘッドの長さはこのケーシングヘッドの長さより数十センチメートル短いものとし、オーガースクリューのオーガヘッドの掘削刃は前記ケーシング先端の掘削刃より数センチメートル〜十数センチメートル引っ込むようにケーシングをわずかに先行させて切り込むことを特徴とする掘削工法。」2.引用刊行物等記載の発明平成13年10月10日付けの取消理由において周知例として引用した、本件特許出願前に頒布された刊行物である、特公昭63-25130号公報(異議申立人が提出した甲第6号証、以下「刊行物1」という。)、及び、特開昭60-133189号公報(同じく甲第4号証、以下「刊行物2」という。)には、いずれにも、「先端に掘削刃を設けたケーシングを回転させながら切り込み、このケーシング内にオーガスクリューを該ケーシングと反対向きに回転させて掘削し、オーガースクリューの掘削刃は前記ケーシング先端の掘削刃より引っ込むようにケーシングをわずかに先行させて切り込む掘削工法」が記載されており、また、刊行物1には、オーガスクリューは掘削刃を設けたオーガヘッドを有すること、及び、刊行物2には、ケーシングを本体管の先端に掘削刃を有するケーシングヘッドを嵌着するものとすることも記載されていて、かつ、本件特許出願前に周知の技術であるから、刊行物1,2には、「先端に掘削刃を設けたケーシングを回転させながら切り込み、このケーシング内にオーガスクリューを該ケーシングと反対向きに回転させて掘削し、ケーシングは本体管の先端に掘削刃を有するケーシングヘッドを嵌着するものであり、オーガースクリューのオーガヘッドの掘削刃は前記ケーシング先端の掘削刃より引っ込むようにケーシングをわずかに先行させて切り込む掘削工法」という周知の技術(以下、「周知発明」という。)が記載されているといえる。さらに、刊行物2には、従来、ケーシング内のオーガー等の掘削手段先端部を、ケーシング先端から10〜20cm程度ケーシング内に挿入した状態で掘削が行われていることが記載されてる。
同じく、先の取消理由において引用し、平成13年9月6日に行われた証人尋問により、異議申立人が提出した甲第1号証-1及び甲第2号証-1の取合図に基づいて製作された掘削機が、本件特許の出願前に販売され公知の発明となったと認められ、甲第1号証-1及び甲第2号証-1には、掘削刃先端までの長さが720mmのオーガヘッドと、掘削刃取付部までの長さが1300mmのケーシングヘッドが図示されており、オーガヘッドの長さを掘削刃の長さを含まぬケーシングヘッドの長さより580mm短いものとしているクイックジョイントケーシング取合図が描かれている。
3.対比・判断本件発明と上記周知発明とを比較すると、両者は、先端に掘削刃を設けたケーシングを回転させながら切り込み、このケーシング内にオーガスクリューを該ケーシングと反対向きに回転させて掘削し、ケーシングは本体管の先端に掘削刃を有するケーシングヘッドを嵌着するものであり、オーガースクリューのオーガヘッドの掘削刃は前記ケーシング先端の掘削刃より引っ込むようにケーシングをわずかに先行させて切り込む掘削工法の点で一致し、次の点で、相違している。
a.本件発明では、オーガスクリューのオーガヘッドの掘削刃は、ケーシング先端の掘削刃より数センチメートル〜十数センチメール引っ込むようにケーシングをわずかに先行させて切り込むのに対し、周知発明では、どれくらい引っ込むようにケーシングを先行させて切り込むのか数値限定されていない点。
b.本件発明では、オーガヘッドの長さはケーシングヘッドの長さより数十センチメートル短いものとしているのに対し、周知発明では、そのような限定がない点。
しかしながら、刊行物2には、従来、ケーシング内のオーガー等の掘削手段先端部を、ケーシング先端から10〜20cm程度ケーシング内に挿入した状態で掘削が行われていることが記載されており、これは、上記相違点aにおける、本件発明の構成に対応するから、周知発明において、ケーシングを先行させて地盤中に切込むに際し、刊行物2に記載された従来技術を採用して行うことは当業者が適宜なし得ることにすぎない。
一方、上記したように、異議申立人株式会社豊栄アーキテックス(外9名)が提出した、甲第1号証-1及び甲第2号証-1には、オーガヘッドの長さを掘削刃の長さを含まぬケーシングヘッドの長さより580mm短いものとしているクイックジョイントケーシング取合図が描かれており、特許権者が、平成13年12月25日付け特許異議意見書で述べている、ケーシングヘッドの刃、いわゆるケーシングビットの最長(150mm)、最短(107mm)いずれの刃を取り付けた場合でも、オーガヘッドの長さはケーシングヘッドの長さより数十センチメートル(730〜687mm)短いものとなり、かつ、甲第1号証-1及び甲第2号証-1の取合図に基づいて製作された掘削機が、本件特許の出願前に販売され公知の発明となったと認められるから、周知発明の掘削機として、上記公知の発明の掘削機を採用して、上記相違点bにおける、本件発明の構成のようにすることは、当業者が適宜なし得ることにすぎない。
したがって、本件発明は、上記周知発明、刊行物2に記載された発明及び上記公知の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。
なお、特許権者は、平成13年12月25日付け特許異議意見書で、「甲第1号証-1及び甲第2号証-1の取合図に基づいて製作された掘削機は伸縮ケーシングと記載された部分のものであり、ケーシングの長さが伸縮するものである。そして本件発明の出願前に販売された掘削機は、甲第1号証-1及び甲第2号証-1の取合図ににおいて掘削の全体が一つの図面として記載された掘削機、すなわち、本特許発明のごとく、ケーシング長さとオーガスクリューの長さが固定された関係にあるような掘削機ではない。」(第4頁第17〜23行)と述べているが、本件発明においてそのような限定はなされていない。また、「本特許発明の特徴は、「ケーシングは本体管の先端に掘削刃を有するケーシングヘッドを嵌着するものであり、
オーガーヘッドの長さはこのケーシングヘッドの長さより数十センチメートル短いものとし、」(以下第1要素という)という構成と、「オーガースクリューのオーガヘッドの掘削刃は前記ケーシング先端の掘削刃より数センチメートル〜十数センチメートル引っ込むようにケーシングをわずかに先行させて切り込む」(以下第2要素という)という構成の相関関係にあり、その効果として、(1)セットまたは交換の際のオーガヘッドのオーガースクリューへの取り付け、および、ケーシングヘッドのケーシングへの取り付けの容易性と(2)それぞれの接合部がかさならないようにして、力の負荷に対する強度的な配慮が得られる。」(第4頁第2〜12行)と述べているが、第1要素は、装置としての構成要素であり、第2の要素は、
工法としての構成要素であり、それらの間にどのような相関関係があるのか不明であるし、かつ、上記したように、本件発明において、ケーシング長さとオーガスクリューの長さが固定された関係にあるような掘削機であるとの限定もない以上、特許権者の主張は採用できない。
4.むすび以上のとおりであるから、本件発明についての特許は、拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認める。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
平成14年1月15日
裁判長裁判官 塚原朋一
裁判官 古城春実
裁判官 田中昌利
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