関連審決 | 異議2000-74040 |
---|
関連ワード | 発明者 / 進歩性(29条2項) / 容易に発明 / 一致点の認定 / 相違点の判断 / 周知技術 / 翻訳文 / 分割出願 / 数値限定 / 容易に想到(容易想到性) / 特許発明 / 設定登録 / 請求の範囲 / 取消決定 / 異議申立 / |
---|
元本PDF | 裁判所収録の全文PDFを見る |
---|
事件 |
平成
13年
(行ケ)
583号
特許取消決定取消請求事件
|
---|---|
原告 コニカ株式会社 訴訟代理人弁理士 稲葉良幸,大貫敏史,野田義親,弁護士 森ア博之,佐藤真 太郎,清水真紀子,荻野敦史,三谷英弘 被告 特許庁長官太田信一郎 指定代理人 関川正志,東次男,小林信雄,高橋泰史,林栄二 |
|
裁判所 | 東京高等裁判所 |
判決言渡日 | 2003/05/08 |
権利種別 | 特許権 |
訴訟類型 | 行政訴訟 |
主文 |
特許庁が異議2000−74040号事件について平成13年11月8日にした決定を取り消す。 訴訟費用は被告の負担とする。 |
事実及び理由 | |
---|---|
原告の求めた裁判
主文第1項同旨の判決。 |
|
事案の概要
1 特許庁における手続の経緯 原告が特許権者である本件特許第3038428号「放射線画像情報読取装置」に係る出願は,昭和63年1月29日に出願された特願昭63-19231の分割出願であって,平成12年3月3日に特許の設定登録がされ,その後その特許請求の範囲における請求項1,2に係る発明について特許異議の申立て(異議2000-74040)があり,平成13年6月25日に訂正請求がなされた。この特許異議申立てについて平成13年11月8日,「訂正を認める。特許第3038428号の請求項1ないし2に係る特許を取り消す。」との決定があり,その謄本は同月28日原告に送達された。 2 本件発明の要旨(訂正後のもの) 【請求項1】放射線画像が記録された放射線画像変換パネルを読み取って,複数の画素からなる画像データを得る読取手段と, 前記読み取った画像データを前記放射線画像の縦方向及び横方向について同一の間引き率で間引く間引き手段と, 前記間引き手段にて間引かれた画像データの頻度分布に基づいて,前記放射線画像に応じた前記画像データに対する階調処理条件を求める手段と,を有すること特徴とする放射線画像情報読取装置。 【請求項2】前記間引き手段は,前記読み取った画像データを1/4から1/32に間引くことを特徴とする請求項1に記載の放射線画像情報読取装置。 (請求項1末行の「こと特徴とする」は,訂正後特許請求の範囲の原文記載のまま) 3 決定の理由 決定は,請求項1,2に係る発明は,下記刊行物1(異議甲第3号証,本訴甲第3号証)に記載された発明と周知慣用されている技術とに基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,請求項1,2に係る発明の特許は,特許法29条2項の規定に違反してなされたものである,と判断している。その要点は,以下のとおりである。 刊行物1: 書籍:「SPIE,Vol.767,Medical Imaging(1987)(1987年発行) 著者:Hartwig Blume and Kenji Kamiya タイトル:Auto-ranging and normalization versus histogram modifications forautomatic image processing of digital radiographs (1) 請求項1に係る発明についての決定の判断(対比) 請求項1に係る発明と刊行物1に記載された発明とを対比すると,刊行物1には,ディジタル放射線画像の自動画像処理技術,すなわち,放射線画像が記憶された輝尽性蛍光体イメージング・プレートをレーザにより粗く走査して先読みし,該読み取った画像に基づいてヒストグラムを作成し画像を解析し,画像の処理条件を求めることが記載されており,明らかに,刊行物1に記載された「輝尽性蛍光体のイメージング・プレート」,及び「ヒストグラム」は,請求項1に係る発明の「放射線画像が記録された放射線画像変換パネル」,及び「画像データの頻度分布」に相当する。 また刊行物1には,2048×2048の画素からなるオリジナル画像を縮小することにより,1024×1024画素の画像を得,これを表示すること,及び輝尽性蛍光体イメージング・プレートを粗く走査することにより,256×256の画素を得,これをコリメータのエッジ評価に用い,次にヒストグラムの作成に用いることが記載されているから,刊行物1には,画像データを前記放射線画像の縦方向及び横方向について同一の間引き率で間引くことが記載されていることは,明らかである。 さらに,刊行物1には,ヒストグラムを解析することにより,注目している解剖学的領域をデイスプレイの所定部分に割り当てることが記載されており,注目画像領域をディスプレイの特定領域に割り当てることは,画像処理条件を求めることに相当する。 そうすると,請求項1に係る発明と刊行物1に記載された発明との間には,次の一致点,相違点がある。 (一致点) 放射線画像が記録された放射線画像変換パネルを読み取って,複数の画素からなる画像データを得る読取手段と, 画像データを前記放射線画像の縦方向及び横方向について同一の間引き率で間引く間引き手段と, 前記間引き手段にて間引かれた画像データの頻度分布に基づいて,前記放射線画像に応じた画像処理条件を求める手段と,を有すること特徴とする放射線画像情報読取装置。 (相違点) 請求項1に係る発明は,画像を読み取った後に間引き,該間引かれた画像データについて階調処理条件を求めるのに対し,刊行物1に記載された発明は,画像を読み取る際に,粗く走査することにより画像データを間引き,該間引かれた画像データについて画像処理条件を求める点。 (判断) 上記相違点について判断するに, 先ず,画像に対する処理条件を効率的且つ高速に求めるために,元の画像を間引いた縮小画像を生成し,該縮小された画像に基づいて階調処理条件を求めるという技術事項は,特開昭62-97533号公報,特開昭61-118087号公報(異議甲第4号証),及び特開昭56-116182号公報(異議甲第5号証)にその旨の記載があるとおり,当技術分野においては周知慣用されている事項である。 次に,画像データを間引くに際し,読み取りと同時に又は読み取った後に間引きを実行することにより再度の読み取り実行を不必要とすることも周知である。 この点については,例えば,特開昭62-97533号公報(5頁左上欄14行〜右上欄1行),特開昭61-118087号公報(異議甲第4号証),及び特開昭56-116182号公報(異議甲第5号証)を参照されたい。 そして,請求項1に係る発明が,画像を読み取った後に間引き,該間引かれた画像データについて階調処理条件を求めることにより,上記周知慣用の事項から予測できない格別の作用効果を奏するとも認められない。 したがって,画像処理条件を特に階調処理条件とすること,及び画像を読み取った後に間引き処理を実行するようにすることは,当業者が格別の発明力を要することなく適宜なし得ることである。 (2) 請求項2に係る発明についての決定の判断(対比) 請求項2に係る発明と,刊行物1に記載された発明とを対比すると,前記相違点に加えて,次の点で相違する。 (相違点) 請求項2に係る発明は,読み取った画像データを1/4から1/32に間引くのに対し,刊行物1に記載された発明は,1/2(1024/2048)又は1/8(256/2048)に間引く点。 (判断) 上記相違点について判断するに, 請求項2に係る発明において,いわゆる間引き率を1/4〜1/32に数値限定する点に,格別の臨界的意義は認められず,間引き率をいかなる値に設定するかは,目的とする各処理条件に応じて当業者が適宜定め得る微細な設計事項にすぎない。 |
|
原告主張の決定取消事由
1 一致点の認定の誤り (1) 請求項1,2に係る発明において,「放射線画像が記録された放射線画像変換パネルを読み取って,複数の画素からなる画像データを得る」という動作は一回である。この読み取った画像データは適正な階調処理がされることにより,診断等にそのまま用いられるが,その画素数が全体の階調処理条件を求めるには膨大なため,請求項1,2に係る発明では,この「画像データを放射線画像の縦方向及び横方向について同一の間引き率で間引」き,「間引かれた画像データの頻度分布に基づいて」,「放射線画像に応じた画像データに対する階調処理条件を求める」こととしている。すなわち,読取りを一度のみで済ませる一方において,「間引かれた画像データ」を使用することによって階調処理条件を求める際の演算処理の負担を抑えている点で,優れた作用効果を示すものである。 (2) 刊行物1の「2048×2048の画素からなるオリジナル画像を縮小することにより,1024×1024画素の画像を得,これを表示すること」は,請求項1,2に係る発明の「同一の間引き率で間引くこと」を開示するものではなく,まして示唆するものでもない。すなわち,刊行物1の371頁"Image acquisition and processing"の欄に," Because of the display limitations, the original pixel matrix of nominally 2048 x 2048 was reduced to a 1024 x 1024 matrix for all simulations"と記載されており,この部分に該当する訳語は,異議申立人の翻訳文によれば「ディスプレーの制限のため公称2048×2048のオリジナル画像マトリックスは,すべてのシミュレーションに関して1024×1024に縮小された」となっている。刊行物1には画像のサイズが2048×2048の画像マトリックスから1024×1024に減じられた点が記載されているのみである。大きな画素数の画像から小さな画素数の画像を取り出すためには,複数のピクセルに演算を施して一画素にしたり,元の画像マトリックスの任意の部分を切り取ったり,中央部分を取り出したりする等,様々な方法が考えられるが,刊行物1は縮小の方法についての開示はない。 (3) 刊行物1の「輝尽性蛍光体イメージング・プレートを粗く走査することにより,256×256の画素を得,これをコリメータのエッジ評価に用い,次にヒストグラムの作成に用いること」も,請求項1,2に係る発明の「間引く」こととは異なる。この点について,刊行物1の372頁第2パラグラフに,"the imaging plate is coarsely scanned by a 1.8 mm wide, low-intensity laser beam before the actual reading process. An image with nominally 256 x 256 pixels is generated "と記載されており,この部分に該当する訳語は,異議申立人の翻訳文によれば「本当の読取プロセスの前に,1.8mm大,低強度のレーザービームによりイメージング・プレートが粗く走査される。公称256×256画素の画像が生じる」となっている。この低強度の,大口径(1.8mm大)のレーザビームによる粗い走査には,請求項1,2に係る発明の「間引く」という動作が入っていない。つまり刊行物1の読取りは,本読みより大きな面積で読み取ってそれを一つの画素に反映させるため,そもそも全体の画素が少ないのであり,細かい画像データの多くの画素からところどころ省く,という「間引く」処理が入っていない。 2 相違点の判断の誤り 決定が引用した特開昭62-97533号公報(甲第2号証),特開昭61-118087号公報(甲第4号証)及び特開昭56-116182号公報(甲第5号証)には,いずれも,「画像に対する処理条件を効率的かつ高速に求めるために,元の画像を間引いた縮小画像を生成し,該縮小された画像に基づいて階調処理条件を求めるという技術事項」は記載されていない。決定は,この記載のあることを前提として,請求項1,2に係る発明と刊行物1記載の発明との間の相違点の容易想到性を判断しているが,誤りである。また,上記各公報には,請求項1,2に係る発明でいう「縦方向及び横方向について同一の間引き率で間引」いて,この「間引かれた画像データの頻度分布に基づいて放射線画像に応じた画像データに対する階調処理条件を求める」ことが開示又は示唆されているものでもない。 3 請求項2に係る発明に関する判断の誤り 処理すべき画素数が少ない方がハード的にも処理時間的にも効果がある一方,あまりに画素数を縮小しすぎるとオリジナルの画像データの画像状態が変化してしまうことから,本件発明者は,各間引き率における累積頻度分布の比較検討を行った末に,請求項2に係る発明において規定されているような間引き率の数値限定に想到したものである。請求項2に係る発明の間引き率の数値限定に格別の臨界的意義は認められず,間引き率の設定は目的とする各処理条件に応じて当業者が適宜定め得る微細な設計事項にすぎない,とした決定の認定判断は誤りである。 4 手続の瑕疵 決定は,特開昭62-97533号公報(甲第2号証)を周知慣用事項であることを示すための筆頭の文献として挙げている。しかし,原告には,この文献について意見を述べる機会が与えられていなかった。この点で,決定には重大な手続上の瑕疵がある。 |
|
決定取消事由に対する被告の反論
1 一致点の認定の誤りの主張に対して (1) 刊行物1に記載された発明は,本読みすれば2048×2048個の画素からなるオリジナル画像を得るところを,輝尽性蛍光体イメージングプレートを縦横方向につき8画素に1画素の割合で粗く走査して先読みし,256×256個の画素からなる小さいサイズの画像を得て,この画像に基づいてコリメータのエッジ評価とヒストグラムの作成等を行い,画像を解析し,画像の処理条件を求めている。 これは,(i) コリメータのエッジ評価とヒストグラムの作成等には,2048×2048個の画素からなる大きなオリジナル画像は必要なく,縦横方向に1/8の割合で縮小した256×256個の画素からなる画像で十分であること,(ii) 走査の時点で粗く読み,縦横方向それぞれにおいて,8画素に1画素の割合でオリジナル画像を読み取って画像を間引き走査し間引き画像を得ていることを示すものである。 刊行物1に記載された発明は,本読みにて得られる2048×2048個の画素からなるオリジナル画像をメモリに記憶し,該メモリに記憶されたオリジナル画像を縦横方向に2画素に1画素の割合で間引いて1024×1024個の画素からなる画像を得,この1024×1024個の画素からなる画像を表示用の画像としてディスプレー装置に表示している。 これは,(i) 本読み時には,2048×2048個の画素からなるオリジナル画像を得,このオリジナル画像をメモリに記憶していること,(ii) ディスプレー装置に表示するときには,このメモリに記憶されたオリジナル画像を縦横方向に2画素に1画素の割合で間引き,1024×1024個の画素から成る表示用の間引き画像を得て,この1024×1024個の画素からなる表示用の間引き画像をディスプレー装置に表示していることを示すものである。 このように,刊行物1には,(i) 走査の段階であらかじめ間引き,間引き画像を得ること,及び(ii) メモリに記憶してからその後間引き,間引き画像を得ることの2つの概念が明瞭に示されているのである。 以上のとおり,刊行物1には,間引きの概念,間引かれた画像データ,及び間引かれた画像データから画像処理条件を求めることが,示されていることは明らかである。 (2) 下記特許公報によれば,メモリに記憶した後に間引き画像を得ること,及び,走査の段階で間引き画像を得ることの2つの技術的事項が,本件出願前既に当業者には周知慣用されていた事実が裏付けられる。 特開昭62-202676号公報(乙第1号証) 特開昭60-252944号公報(乙第2号証) 特開昭62-212887号公報(乙第3号証) 特開昭60- 31355号公報(乙第4号証) 特開昭61-150467号公報(乙第5号証) 特開昭62-241081号公報(乙第6号証) これらには,メモリに記憶した後に画像を間引き,縮小した画像データを得ることが記載されている。特に,乙第1号証に記載された発明は,医用原画像データを画像劣化を伴うことなく間引いて圧縮された医用画像データを作るものであり,乙第2号証に記載された発明は,原画像データをディスプレイ装置に表示できるサイズにまで間引いて縮小画像を作りディスプレイ装置に表示するものである。そして,乙第3及び第4号証に記載された発明は,画像の縮小率を任意に設定し該縮小率に基づいて元の画像データを間引くことにより縮小された間引き画像を得るものである。乙第5,第6号証には,走査の段階で間引き画像を得ることが記載されている。 以上のとおり,間引きの概念,間引かれた画像データを得ることは,本件出願前既に当業者には周知であった。 2 相違点の判断の誤りの主張に対して 決定は,メモリに記憶された2048×2048個の画素からなるオリジナル画像から間引きにより得られるサイズの小さい1024×1024個の画素からなる表示用の画像,又は,先読み時に8画素に1画素の割合で粗く走査することにより得られるサイズの小さい256×256個の画素からなる画像解析用の画像を,「縮小画像」と呼んだのであり,「縮小画像」の意味は,オリジナル画像に比べてサイズが小さい画像であるという意味である。 請求項1に係る発明においても,オリジナル画像を間引くことによりサイズの小さい画像を得て,このサイズの小さい画像を解析することにより,オリジナル画像の階調処理条件を求めているのであるから,オリジナル画像に対してサイズの小さい画像を得るという意味において,請求項1に係る発明も「縮小画像を生成している」のである。 3 手続の瑕疵の主張に対して 特開昭62-97533号公報は,本件特許公報の段落【0016】において,原告が自ら従来例として挙げているものである。原告は,その記載内容については当然熟知しているはずである。 |
|
当裁判所の判断
1 刊行物1に記載の事項 (1) 刊行物1(甲第3号証)には,以下の記載のあることが認められる。 (ア)「 Image acquisition and processing The images used here have been acquired with a Philips Computed Radiography system(PCR). This system employs Fuji stimulable phosphor imaging plates and a Fuji scanning laser image reader system. The PCR auto-ranging function which is being discussed in the next paragraph was disabled for acquiring the images. After digitization, the unprocessed images were transferred to a VAX 780 computer. The VAX provided greater flexibility in programming the simulated processing tasks, even though most of the processing a1gorithms are also resident on the PCR system. For convenience, the processed images were not transferred back to the PCR display station, but were presented on a 1024 x 1024 pixel Ramtek display from where they were photographed for this paper. Because of the display limitations, the original pixel matrix of nominally 2048 x 2048 was reduced to a 1024 x 1024 matrix for all simulations. The images are displayed in the conventional way: high brightness or high pixel levels correspond to high x-ray attenuation. Similarly, the histgrams are plotted as a function of brightness values.」(371〜372頁) 「 画像取得及び処理 ここで用いられる画像はフィリップス・コンピューテッド・ラジオグラフィー・システム(PCR)で取得された。このシステムはフジの輝尽性蛍光体イメージング・プレート及びフジの走査レーザ画像読取システムを用いている。次のパラグラフで議論されているPCR自動照準機能は画像取得に対しては不可能とされた。デジタル化の後に,未処理画像がVAX780コンピュータに転送された。VAXは,処理アルゴリズムの大部分がPCRシステムにも内在しているにもかかわらず,シミュレートされる処理タスクをプログラミングする際の大きな柔軟性を備えた。簡便のため,処理済み画像はPCRディスプレー・ステーションへ戻すように転送されなかったが,この論文向けに画像を撮影するための1024×l024画素のラムテック・ディスプレー上に提示された。ディスプレーの制限のため,公称2048×2048のオリジナル画素マトリックスは,すべてのシミュレーションに関して1024×l024マトリックスに縮小された。 画像は従来の方法で表示され,高輝度又は高ピクセルレベルは高X線減衰に対応する。同様に,ヒストグラムが輝度値の関数としてプロットされる。」 (イ)「In order to define the medically useful data span, the imaging plate is coarsely scanned by a 1.8 mm wide, low-intensity laser beam before the actual reading process. An image with nominally 256 x 256 pixels is generated. This image is firstly evaluated regarding collimator edges. If, because of collimation, only a fraction of the imaging plate had been directly exposed, the following analysis concentrates on the field within the collimation boundaries, otherwise, data from the entire imaging plate are analyzed. Next, a histogram of this pre-read image is compiled(Fig. 2). The histgram is evaluated regarding maxima and minima within pre-defined search ranges and under given threshold conditions which characterize the boundaries of the clinically useful data span. Desired extrema, search ranges, and threshold levels are provided by the data base according to examination, projection,and diagnostic specifiers. (By means of threshold levels, for instance, the disturbing effects of highly attenuating marking letters can be eliminated.) From the histogram analysis, two parameters are derived for the actual reading operation of the imaging plate(Fig.3): The sensitivity of the photomultiplier which detects the stimulated luminescence and the gain of an amplifier just in front of the A/D converter. Then, in the subsequent reading operation, only the medically useful data span (in the example of Fig. 2 between Smin2 and Smax2) is digitized. Having acquired the image by this detector auto-ranging procedure, we can predict where on the digital data scale certain anatomical details are placed. And, provided no major image processing operation was applied, we can assign, by means of non-linear mapping functions, specific anatomical regions to certain portions of the available display range (i.e., define their contrast at desirable brightness levels)(Fig. 4).」(372頁) 「医学的に有用なデータ・スパンを確定するために,本当の読取プロセスの前に,1.8mm大,低強度のレーザービームによりイメージング・プレートが粗く走査される。公称256×256画素の画像が生じる。この画像は最初にコリメータのエッジに関して評価される。もし,コリメーションのため,イメージング・プレートの一部のみが直接的に露出されたならば,それ以降の解析はコリメーション境界内の領域に集中し,そうでなければ,全イメージング・プレートからのデータが解析される。 次に,この先読み画像のヒストグラムが編集される(Fig.2)。このヒストグラムはあらかじめ決められたサーチ範囲内で,かつ医学的に有用なデータ・スパンの境界を特徴づける所与のスレシュホールド条件の下で,最大値及び最小値に関して評価される。所望の極値,サーチ範囲及びスレシュホールド・レベルは,検査,投影及び診断を特定する情報に従って,データベースにより供給される。(例えば,スレシュホールド・レベルの手段により,高減衰マーキング文字の擾乱効果を除去することができる。)ヒストグラム解析から,イメージング・プレートの本読み動作のために,2つのパラメータが導出される(Fig.3)。輝尽発光を検出するフォトマルティプライアの感度,及びA/D変換器の直前にある増幅器のゲインである。そして,続く読取り動作において,医学的に有用なデータ・スパンのみ(Fig.2の例においてSmin2とSmax2との間)がデジタル化される。 この検出器自動照準手順により画像を取得すれば,ディジタル・データ・スケール上のどこに所定の解剖学的ディテールが位置しているかを我々は予測することができる。そして,大きな画像処理演算が施されない場合でも,我々は,非線形マッピング関数の手段により,特定の解剖学的領域を利用可能なディスプレー範囲の所定部分に割り当てることができる(すなわち,それらのコントラストを所望の輝度レベルにおいて定める)(Fig.4)。」 (2) なるほど上記(ア)のとおり,刊行物1には「簡便のため,処理済み画像はPCRディスプレー・ステーションへ戻すように転送されなかったが,この論文向けに画像を撮影するための1024×l024画素のラムテック・ディスプレー上に提示された。ディスプレーの制限のため,公称2048×2048のオリジナル画像マトリックスは,すべてのシミュレーションに関して1024×l024マトリックスに縮小された。」との記載があるが,縮小の手法についての特定記載はない。被告が主張するように,画像のサイズが2048×2048の画素マトリックスから1024×1024の画素マトリックスに縮小させるためには,縦方向及び横方向について2画素に1画素の割合で間引くことでも実現ができるものと認められるが,これは一つの縮小のための手法にすぎない。他方で,原告が挙げる,複数の画素に演算を施して一画素にしたり,元の画素マトリックスの任意の部分を切り取ったり,中央部分を取り出したりする等,様々な縮小の手法もあり,これらは刊行物1での縮小に採用することができるものと認められるから,「刊行物1には,画像データを前記放射線画像の縦方向及び横方向について同一の間引き率で間引くことが記載されていることが明らかである」ということはできない。 また,刊行物1には,メモリに記憶させることについて記載及び間引き処理についての記載がないから,被告主張のように,「(i) 本読み時には,2048×2048個の画素からなるオリジナル画像を得,このオリジナル画像をメモリに記憶していること,(ii) ディスプレー装置に表示するときには,このメモリに記憶されたオリジナル画像を縦横方向に2画素に1画素の割合で間引き,1024×1024個の画素から成る表示用の間引き画像を得て,この1024×1024個の画素からなる表示用の間引き画像をディスプレー装置に表示していることを示すものである。」と認めることはできない。 なお,上記(ア)にある,縮小されて得られた1024×1024の画素マトリックスの縮小された画像データは,ディスプレーに表示されるためのものであって,画像データに対する画像処理条件を求めるために使用するものでないものと認められる。 (3) 本読みでの2048×2048個の画素と先読みでの256×256個の画素とについて,その画素の数だけについて着目すれば,先読みは,本読みの縦及び横方向について8画素に対し,1画素の割合となるということはできるが,刊行物1に記載されているのは,先読みは,輝尽性蛍光体イメージング・プレートを低強度の,大口径(1.8mm大)のレーザビームによる粗い走査,すなわち,本読みに比べて大きな面積(縦及び横方向につき8画素分で64画素分の面積)で走査し,読み取っていることだけであって,この記載から,8画素に1画素の割合でオリジナル画像のデータを間引いて読み取っていることを示すものとはいえない。 そうすると,本読みの前に,1.8mm大,低強度のレーザービームによりイメージング・プレートが粗く走査させている動作は,読取手段での動作であり,刊行物1には画像データを間引く間引き手段は存在しないから,刊行物1には,読み取った後の画像データを「間引く」という概念が入っていないものと認められる。 2 一致点認定の誤り 決定が,請求項1に係る発明(ひいては請求項2に係る発明)と刊行物1に記載の発明との間の一致点を認定する前提として,「刊行物1には,画像データを前記放射線画像の縦方向及び横方向について同一の間引き率で間引くことが記載されていることは,明らかである」と認定しているが,上記説示のとおり,刊行物1に「間引き」の概念が記載されていないから,この認定は誤りである。したがって,決定が,刊行物1に「間引く」概念があることを前提にして,「画像データを前記放射線画像の縦方向及び横方向について同一の間引き率で間引く間引き手段と,前記間引き手段にて間引かれた画像データの頻度分布に基づいて,前記放射線画像に応じた画像処理条件を求める手段と,を有する」と,請求項1,2に係る発明と刊行物1に記載の発明との間の一致点を認定したのも,誤りである。 3 周知技術の認定の可否 被告は,乙第1号証(特開昭62-202676号公報),乙第2号証(特開昭60-252944号公報),乙第3号証(特開昭62-212887号公報),乙第4号証(特開昭60-31355号公報),乙第5号証(特開昭61-150467号公報),乙第6号証(特開昭62-241081号公報)を提出し,メモリに記憶した後に間引き画像を得ること,及び,走査の段階で間引き画像を得ることの2つの技術的事項が,本件特許発明の出願前既に当業者には周知慣用されていたと主張している。 しかし,上記乙号各証によって,少なくとも請求項1,2に係る発明である放射線画像情報読取りの技術分野において,被告主張の技術的事項が周知慣用のものであったものと認めることはできない。上記一致点認定の誤りに関する構成,すなわち,元の画像を間引いた縮小画像を生成し,該縮小された画像に基づいて階調処理条件を求めるとの構成は,請求項1,2に係る発明の基本的な構成をなしていることにもかんがみると,本訴においては,これら乙号各証に記載のところから,請求項1,2に係る発明に関する進歩性判断の前提となる周知慣用の事項を認めることはできない。 |
|
結論
以上のとおりであって,決定は刊行物1記載の発明と請求項1,2に係る発明との間の一致点の認定を誤り,その結果刊行物1記載の発明との対比において請求項1,2に係る発明の進歩性判断を誤ったものであるから,原告主張の手続の瑕疵について判断するまでもなく,決定は取り消されるべきである。 |
裁判長裁判官 | 塚原朋一 |
---|---|
裁判官 | 塩月秀平 |
裁判官 | 田中昌利 |