運営:アスタミューゼ株式会社
  • ポートフォリオ機能


追加

関連ワード 進歩性(29条2項) /  容易に発明 /  容易に想到(容易想到性) /  設定登録 /  訂正審判 /  請求の範囲 /  減縮 /  取消決定 / 
元本PDF 裁判所収録の全文PDFを見る pdf
事件 平成 14年 (行ケ) 651号 特許取消決定取消請求事件
原告 富士ゼロックス株式会社
訴訟代理人弁理士 佐藤清孝,前川純一,牛久保学
被告 特許庁長官太田信一郎
指定代理人 畑井順一,森正幸,高橋泰史,林栄二
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 2003/05/08
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
主文 特許庁が異議2001−73406号事件について平成14年11月14日にした決定を取り消す。
訴訟費用は各自の負担とする。
事実及び理由
原告の求めた裁判
主文第1項同旨の判決。
事案の概要
1 特許庁における手続の経緯 原告が特許権者である本件特許第3178530号「表示記憶媒体,画像書き込み方法および画像書き込み装置」は,平成9年11月18日に出願された特願平9-317049号の一部を特許法44条1項の規定により,平成12年10月5に新たな特許出願としたものであって,平成13年4月13日に設定登録された。その後,異議2001-73406号の特許異議の申立てにおいて取消理由通知があり,その指定期間内である平成14年5月7日に訂正請求がされた結果,平成14年11月14日に,「訂正を認める。特許第3178530号の請求項1ないし9に係る特許を取り消す。」との決定があり,その謄本は同月30日原告に送達された。
原告は,決定の取消しを求める本訴提起後の平成15年2月10日,本件特許につき特許請求の範囲減縮等を目的とする訂正審判の請求をし(訂正2003-39021号),平成15年3月25日に訂正を認める旨の審決(訂正審決)があって確定した。
2 平成14年5月7日訂正請求後の特許請求の範囲 【請求項1】少なくとも一方が透明の一対の基板間に,それぞれ可視光中の互いに異なる色光を選択反射するコレステリック液晶によって構成された複数の表示層が積層され,複数の表示層の外部の画像書き込み装置から前記積層された複数の表示層に電界が印加されることによって画像が書き込まれるとともに,前記電界の印加後の無電界下では複数の前記コレステリック液晶表示層が前記電界の電界強度に応じて全てプレーナー相の状態または全てフォーカルコニック相の状態のいずれかを選択的に呈するように前記複数の表示層が構成されたことを特徴とする表示記憶媒体。
【請求項2】 請求項1の表示記憶媒体において,前記複数の表示層が,400〜500nmの波長域にピークを有する色光を選択反射する表示層,500〜600nmの波長域にピークを有する色光を選択反射する表示層,および600〜700nmの波長域にピークを有する色光を選択反射する表示層によって構成されたことを特徴とする表示記憶媒体。
【請求項3】 請求項1または2の表示記憶媒体において,前記複数の表示層は,それぞれ,コレステリック液晶の連続相中に高分子のネットワークが形成されたPNLC構造であることを特徴とする表示記憶媒体。
【請求項4】 請求項1または2の表示記憶媒体において,前記複数の表示層は,それぞれ,高分子マトリックス中にコレステリック液晶が分散されたPDLC構造であることを特徴とする表示記憶媒体。
【請求項5】 請求項1〜4のいずれかの表示記憶媒体において,前記複数の表示層のそれぞれが,互いに同じ色光を選択反射し,かつ互いに螺旋ねじれ方向が逆のコレステリック液晶によって構成された2つの表示層からなることを特徴とする表示記憶媒体。
【請求項6】 請求項1〜5のいずれかの表示記憶媒体において,前記一対の基板が,可とう性を有することを特徴とする表示記憶媒体。
【請求項7】 請求項1〜6のいずれかの表示記憶媒体において,一方の基板側に共通電極が設けられたことを特徴とする表示記憶媒体。
【請求項8】 請求項1〜7のいずれかの表示記憶媒体に画像を書き込む方法において,外部の画像書き込み装置から,前記積層された複数の表示層に,少なくとも,セレクト期間と,その後の無電界の表示期間とによって構成され,そのセレクト期間での電界強度Esが,前記複数の表示層のコレステリック液晶を全て同じ相状態に変化させる電界強度となる書き込み信号を印加することを特徴とする画像書き込み方法。
【請求項9】 請求項1〜7のいずれかの表示記憶媒体に画像を書き込む装置において,表示記憶媒体の外部から,前記積層された複数の表示層に,少なくとも,セレクト期間と,その後の無電界の表示期間とによって構成され,そのセレクト期間での電界強度Esが,前記複数の表示層のコレステリック液晶を全て同じ相状態に変化させる電界強度となる書き込み信号を印加することを特徴とする画像書き込み装置。 3 訂正審決による訂正後の本件特許の特許請求の範囲 【請求項1】 少なくとも一方が透明の一対の基板間に,それぞれ可視光中の互いに異なる色光を選択反射するコレステリック液晶によって構成された複数の表示層が積層され,複数の表示層の外部の画像書き込み装置から前記積層された複数の表示層に電界が印加されることによって画像が書き込まれるとともに,前記複数の表示層の,それぞれのプレーナー相とフォーカルコニック相の相変化のしきい電界強度のうちの最も大きい値Eth1と,前記複数の表示層の,それぞれのフォーカルコニック相とホメオトロピック相の相変化のしきい電界強度のうちの最も小さい値Eth2とが,Eth1 【請求項2】〜【請求項9】は,前記2の項に記載のものと同じ。
4 決定の理由の要点 平成14年5月7日訂正請求後の本件発明1,2,4,5,6,8,9は,下記刊行物1及び2記載の発明から,本件発明3は下記刊行物1〜3記載の発明から,本件発明7は下記刊行物1,2及び4記載の発明から,それぞれ容易に想到し得るものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
刊行物1:特開平9-160066号公報 刊行物2:特開平7-287214号公報 刊行物3:特開平2-84616号公報 刊行物4:特開平9-197381号公報 5 訂正審決の理由の要点 訂正後の請求項1〜9に係る発明は,上記刊行物1〜4記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから,特許出願の際独立して特許を受けることができるものである。
原告主張の決定取消事由
決定は,訂正審決による訂正前の請求項に基づき本件発明の要旨を認定し,特許を取り消すべきものとしているが,訂正審決により特許請求の範囲減縮等を目的とする訂正が認められたことによって,本件発明の要旨を結果的に誤認したことになり違法となったものである。
当裁判所の判断
原告主張の事由により決定は取り消されるべきものであり,本訴請求は理由がある。よって,訴訟費用の負担につき行訴法7条,民訴法62条を適用して,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 塚原朋一
裁判官 塩月秀平
裁判官 古城春実