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関連ワード 製造方法 /  29条1項3号 /  容易に発明 /  発明の詳細な説明 /  優先権 /  国内優先権 /  設定登録 /  訂正審判 /  請求の範囲 /  減縮 /  取消決定 / 
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事件 平成 14年 (行ケ) 573号 特許取消決定取消請求事件
原告 東芝ライテック株式会社
訴訟代理人弁理士 和泉順一
被告 特許庁長官太田信一郎
指定代理人 三輪學
同 江藤保子
同 高橋泰史
同 宮川久成
同 伊藤三男
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 2003/06/09
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
主文 特許庁が異議2001−72135号事件について平成14年10月1日にした決定を取り消す。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
請求
主文と同旨
当事者間に争いのない事実
1 特許庁における手続の経緯 (1) 原告は,名称を「ランプ装置およびランプ装置製造方法」とする特許第3132660号発明(平成12年1月27日出願,国内優先権主張日平成11年1月28日及び同年3月9日,平成12年11月24日設定登録。以下「本件発明」といい,その特許を「本件特許」という。)の特許権者である。
その後,本件特許につき特許異議の申立てがされ,同申立ては,異議2001-72135号事件として特許庁に係属した。原告は,平成14年4月2日,本件特許出願の願書に添付した明細書(以下「本件明細書」という。)の特許請求の範囲及び発明の詳細な説明の記載について訂正の請求(以下「本件訂正請求」という。)をした。特許庁は,上記事件につき審理した結果,同年10月1日,「特許第3132660号の請求項1ないし10に係る特許を取り消す。」との決定(以下「本件決定」という。)をし,その謄本は,同月19日,原告に送達された。
(2) 原告は,同年11月14日,本件決定の取消しを求める本件訴えを提起した後,平成15年2月18日,本件明細書の特許請求の範囲の【請求項1】,【請求項3】及び【請求項10】を削除し,これに伴い,【請求項2】を【請求項1】と,【請求項4】ないし【請求項9】をそれぞれ【請求項2】ないし【請求項7】とした上,特許請求の範囲及び発明の詳細な説明等の記載の訂正(以下「本件訂正」という。)をする訂正審判の請求をし,特許庁は,同請求を訂正2003-39031号事件として審理した結果,同年3月25日,本件訂正を認める旨の審決(以下「訂正審決」という。)をし,その謄本は,同年4月5日,原告に送達された。
2 本件明細書の特許請求の範囲の記載 (1) 特許査定時のもの(以下,【請求項1】〜【請求項10】に係る発明を「本件発明1」〜「本件発明10」という。) 【請求項1】第1および第2の導線を導出するランプ本体と; アイレット,このアイレットを貫通する第1の導線とこの第1の導線の周囲を覆うようにアイレットから一体的にかつ筒状に突出したアイレットの一部とが溶融することによりアイレットに凸形状に形成された溶接部および第2の導線が電気的に接続されたシェルを有し,ランプ本体に装着される口金と; を具備していることを特徴とするランプ装置。
【請求項2】第1および第2の導線を導出するランプ本体と; アイレット,このアイレットを貫通する第1の導線とこの第1の導線の周囲を覆うようにアイレットから一体的にかつ筒状に突出したアイレットの一部とが溶融することによりアイレットに凸形状に形成された溶接部,第2の導線が電気的に接続されたシェルおよびアイレットをシェルから互いに電気的に絶縁して支持する絶縁部材を有し,ランプ本体に装着される口金と; を具備していることを特徴とするランプ装置。
【請求項3】第1および第2の導線を導出するランプ本体と; 一面が略平坦状に形成されるとともに平坦部の略中央に凹部が形成されたアイレット,このアイレットの凹部内に形成されており,アイレットの一部と第1の導線とが溶融することにより互いの材料が混合してアイレットに凸形状に形成された溶接部,この溶接部の周面と凹部の内面とによって断面が略V字状で溶接部を囲む円環状の周溝および第2の導線が電気的に接続されたシェルを有し,ランプ本体に装着される口金と; を具備していることを特徴とするランプ装置。
【請求項4】溶接部は,アイレットの凹部の開口面とほぼ同等の高さを有していることを特徴とする請求項3記載のランプ装置。
【請求項5】溶接部は,アイレットの凹部の開口面から約1.5mm以下の高さで突出していることを特徴とする請求項3記載のランプ装置。
【請求項6】凸形状の溶接部は,表面が曲面で構成されていることを特徴とする請求項1ないし5いずれか一記載のランプ装置。
【請求項7】ランプ本体は,筒状の基体と,前記基体内に収納され,第1および第2の導線を導出する点灯回路と,点灯回路を保持する保持体と,保持体に装着される蛍光ランプとを含んで構成されていることを特徴とする請求項1ないし6いずれか一記載のランプ装置。
【請求項8】平坦部を有しこの平坦部の略中央に平坦部を貫通する貫通口を有して平坦部から突出した筒部が形成されたアイレットを一側に有し,他側に筒状のシェルを有する口金に対し,第1の導線をアイレットに電気的に接続し,第2の導線をシェルに電気的に接続し,口金をランプ本体に装着するステップと; 第1の導線の先端部をアイレットの貫通口に挿通させた状態で筒部と導線とを互いに溶融して溶接するステップと; からなることを特徴とするランプ装置製造方法
【請求項9】アイレットと第1の導線との接続は,第1の導線を筒部に挿通させた状態で,筒部を側方から圧潰して導線を固定した後に溶接されることを特徴とする請求項8記載のランプ装置製造方法
【請求項10】アイレットは,平坦部の略中央に凹部が形成され,筒部はこの凹部内に形成され,筒部の周面と凹部の内面とによって断面が略V字状で筒を囲む円環状の周溝部が形成されていることを特徴とする請求項8または9記載のランプ装置製造方法
(2) 本件訂正に係るもの(訂正部分には下線を付す。) 【請求項1】第1および第2の導線を導出するランプ本体と; 一面が略平坦状 に形成 されるとともに 略中央 に凹部 が形成 された アイレット,このアイレットを貫通する第1の導線とこの第1の導線の周囲を覆うようにアイレットの凹部中央から一体的にかつ筒状に形成 されて アイレット の一面 よりも 上方に突出して 断面 が略V字状 の周溝部 を形成 する 筒部 とが 筒部 を側方 から 圧潰 することにより 第1の導線 を固定 した 状態 で溶融することによりアイレットに凸形状に形成された溶接部,第2の導線が電気的に接続されたシェルおよびアイレットをシェルから互いに電気的に絶縁して支持する絶縁部材を有し,ランプ本体に装着される口金と; を具備していることを特徴とするランプ装置。
【請求項2】溶接部は,アイレットの凹部の開口面とほぼ同等の高さを有していることを特徴とする請求項1記載のランプ装置。
【請求項3】溶接部は,アイレットの凹部の開口面から約1.5mm以下の高さで突出していることを特徴とする請求項1記載のランプ装置。
【請求項4】凸形状の溶接部は,表面が曲面で構成されていることを特徴とする請求項1ないし3いずれか一記載のランプ装置。
【請求項5】ランプ本体は,口金 が取付 けられる 筒状の基体と,前記基体内に収納され,第1および第2の導線を導出する点灯回路と,点灯回路を保持する保持体と,保持体に装着される蛍光ランプとを含んで構成されており,口金 は基体 とシェル との 間で第2の導線 を挟持 した 状態 でシェル を基体 にかしめて 取付 けられていることを特徴とする請求項1ないし4 いずれか一記載のランプ装置。
【請求項6】平坦部を有しこの平坦部の略中央に凹部 が形成 されるとともにこの 凹部中央 から 一体的 にかつ 貫通口 を有して 筒状 に形成 されて 平坦部 よりも 上方に突出して 断面 が略V字状 の周溝部 を形成 する 筒部が形成されたアイレットを一側に有し,他側に筒状のシェルを有する口金に対し,第1の導線を筒部の貫通口 に挿通させた 状態 で,筒部 を側方 から 圧潰 することにより 第1の導線 を固定 して アイレットに電気的に接続し,第2の導線をシェルに電気的に接続し,口金をランプ本体に装着するステップと; 第1の導線の先端部をアイレットの貫通口に挿通させた状態で筒部と導線とを互いに溶融して溶接するステップと; からなることを特徴とするランプ装置製造方法
【請求項7】少 なくとも 3つ以上 のポンチ を用いることで 筒部 を側方 から 圧潰して 導線 を固定 する ことを特徴とする請求項6 記載のランプ装置製造方法
3 本件決定の理由 本件決定は,本件訂正請求に係る訂正について,願書に添付した明細書に記載された事項の範囲内の訂正であるとは認められないから,特許法120条の4第3項において準用する同法126条2項の規定に適合しないので,訂正は認められないとして,本件発明の要旨を,特許査定時の本件明細書の特許請求の範囲記載のとおりと認定した上,本件発明1及び2は,実願昭47-128119号(実開昭49-82574号)のマイクロフィルム(以下「刊行物1」という。)に記載された発明であり,本件発明3及び4は,刊行物1及び特開昭56-30247号公報(以下「刊行物2」という。)に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり,本件発明5は,刊行物1,2及び「JIS C 7709-1 電球類の口金・受金及びそれらのゲージ並びに互換性・安全性 第1部 口金」(財団法人日本規格協会平成9年7月31日第1刷発行,以下「刊行物3」という。)に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり,本件発明6は,請求項1及び2を引用した発明については刊行物1に記載された発明であり,請求項3ないし5を引用した発明については刊行物1ないし3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり,本件発明7は,刊行物1ないし3及び特開平10-106488号公報(以下「刊行物4」という。)に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり,本件発明8及び9は,刊行物1及び特開平8-190867号公報(以下「刊行物5」という。)に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり,本件発明10は,刊行物1,2及び5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本件発明1〜10は,特許法29条1項3号又は同条2項の規定により特許を受けることができないものであり,本件特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものであるから,同法113条2号に該当し,取り消されるべきものであるとした。
原告主張の決定取消事由
本件決定が,本件発明の要旨を特許査定時の本件明細書の特許請求の範囲記載(第2の2(1))のとおりと認定した点は,訂正審決の確定により特許請求の範囲が上記(第2の2(2))のとおり訂正されたため,誤りに帰したことになる。したがって,本件決定は本件発明の要旨の認定を誤った違法があり,取り消されなければならない。
被告の主張
訂正審決により本件明細書の特許請求の範囲が上記のとおり訂正されたことは認める。
当裁判所の判断
訂正審決により本件明細書の特許請求の範囲が上記のとおり訂正されたことは当事者間に争いがなく,本件訂正によって,本件明細書の特許請求の範囲減縮されたことが明らかである。
そうすると,本件決定が本件発明の要旨を特許査定時の本件明細書の特許請求の範囲記載のとおりと認定したことは,結果的に本件発明の要旨の認定を誤ったこととなり,この誤りが本件決定の結論に影響を及ぼすことは明らかであるから,本件決定は取消しを免れない。
よって,原告の請求は理由があるからこれを認容し,訴訟費用は,原告の申立て等本件訴訟の経過にかんがみ,原告に負担させることとして,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 篠原勝美
裁判官 岡本岳
裁判官 長沢幸男