運営:アスタミューゼ株式会社
  • ポートフォリオ機能


追加

関連審決 無効2001-35048
関連ワード 進歩性(29条2項) /  容易に発明 /  相違点の認定 /  周知技術 /  技術常識 /  発明の詳細な説明 /  優先日 /  技術的意義 /  容易に想到(容易想到性) /  実施 /  加工 /  設定登録 /  請求の範囲 /  変更 / 
元本PDF 裁判所収録の全文PDFを見る pdf
元本PDF 裁判所収録の別紙1PDFを見る pdf
事件 平成 13年 (行ケ) 558号 審決取消請求事件
原告 株式会社神戸製鋼所
原告 日本化薬株式会社
両名訴訟代理人弁理士 梶良之
同 須原誠
同 市川ルミ
被告 ダイセル化学工業株式会社
訴訟代理人弁理士 古谷馨
同 溝部孝彦
同 古谷聡
同 持田信二
同 義経和昌
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 2003/06/17
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
主文 原告らの請求を棄却する。
訴訟費用は原告らの負担とする。
事実及び理由
当事者の求めた裁判
1 原告ら 特許庁が無効2001-35048号事件について平成13年11月2日にした審決中,特許第2862023号の請求項1,4ないし9に係る発明についての特許を無効とする,との部分を取り消す。
訴訟費用は被告の負担とする。
2 被告 主文と同旨
当事者間に争いのない事実等
1 特許庁における手続の経緯 原告らは,発明の名称を「ガス発生器」とする特許第2862023号の特許(平成7年9月25日出願(優先日平成6年9月30日,平成7年3月31日,平成7年6月26日。以下「本件各優先日」という。),平成10年12月11日設定登録。以下「本件特許」という。請求項の数は14である。)の特許権者である。
被告は,平成13年2月7日,本件特許を請求項1,2,4ないし9に関して無効にすることについて審判を請求した。
特許庁は,この請求を無効2001-35048号事件として審理した。原告は,この審理の過程で,特許請求の範囲の訂正を内容とする訂正(以下「本件訂正」という。)の請求をした。特許庁は,審理の結果,平成13年11月2日,「訂正を認める。特許第2862023号の請求項1,4ないし9に係る発明についての特許を無効とする。特許第2862023号の請求項2に係る発明についての審判請求は,成り立たない。」との審決をし,審決の謄本を同年11月14日に原告らに送達した。
2 本件訂正による訂正後の特許請求の範囲(以下,【請求項1】,【請求項4】ないし【請求項9】に係る発明を,それぞれ「本件発明1」,「本件発明4」などといい,本件発明1,5ないし9(本件発明4を除いたもの。)をまとめて呼ぶときには「本件各発明」という。別紙図面A参照) 【請求項1】内部にガス発生剤を収納し,該ガス発生剤からのガスが通過する方向に対して,順に破裂板と該破裂板が接する開口部とが設けられているガス発生器であって,前記ガス発生剤が,無機アジ化物を除く含窒素化合物を含む燃料と酸化剤の組み合わせであり,前記破裂板の引張り強さをA〔kgf/cm2〕,前記破裂板の厚みをt〔cm〕,破裂板が接する開口部の円相当径をD〔cm〕としたとき,下記の(1)式(判決注・以下「本件計算式」という。)を充足するように前記破裂板の厚みtと前記開口部の円相当径Dを設定したガス発生器。
t=B×D A ,但し,B=8〜40 〔kgf/cm2〕 ・・・(1) (【請求項2】,【請求項3】は省略。) 【請求項4】 前記ガスの前記ガス発生器内の最大圧力が100〔bar〕以下である請求の範囲第1項乃至第3項のいずれかに記載のガス発生器。
【請求項5】 前記破裂板の材質が金属箔,金属シート,黒鉛シート,耐熱性高分子シートからなる群から選ばれる1種又は2種以上である請求の範囲第1項乃至第4項のいずれかに記載のガス発生器。
【請求項6】 前記金属箔又は金属シートの材質が,ステンレス,アルミニウム合金,マグネシウム,チタン,チタン合金,銅,銅合金,ニッケル,ニッケル合金,亜鉛,亜鉛合金からなる群から選ばれる1種又は2種以上である請求の範囲第5項に記載のガス発生器。
【請求項7】 前記含窒素化合物がテトラゾール誘導体,グアニジン誘導体,アゾジカルボンアミド誘導体,ヒドラジン誘導体,トリアゾール誘導体の一種以上である請求の範囲第1項に記載のガス発生器。
【請求項8】 前記酸化剤が,硝酸塩,オキソハロゲン酸塩,金属酸化物からなる群から選ばれる1種又は2種以上である請求の範囲第1項に記載のガス発生器。
【請求項9】 内部にガス発生剤を収納し,該ガス発生剤からのガスが通過する方向に対して,順に破裂板と該破裂板が接する開口部とが設けられているガス発生器であって,前記ガス発生剤が,無機アジ化物を除く含窒素化合物を含む燃料と酸化剤の組み合わせであり,前記破裂板が,前記ガス発生剤からのガスによる前記ガス発生器内の最大圧力を制御するものであって,前記破裂板の引張り強さをA〔kgf/cm2〕 ,前記破裂板の厚みをt〔cm〕,破裂板が接する開口部の円相当径をD〔cm〕としたとき,下記の(1)式を充足するように前記破裂板の厚みtと前記開口部の円相当径Dを設定したガス発生器。
t=B×D A ,但し,B=8〜40 〔kgf/cm2〕 ・・・(1) 【請求項10】ないし【請求項14】は省略 3 審決の理由 (1) 別紙審決書写しのとおりである。要するに,本件各発明(本件発明1,5ないし9)は,特開平5-286406号公報(本訴甲第4号証,審判甲第1号証。以下「刊行物1」という。)に記載された発明(以下「引用発明1」という。
別紙図面B参照),特公平6-37159号公報(本訴甲第6号証,審判甲第10号証。以下「刊行物2」という。)に記載された発明(以下「引用発明2」という。)及び米国特許第4,369,079号明細書(本訴甲第7号証,審判甲第11号証。以下「刊行物3」という。)に記載された発明(以下「引用発明3」という。)並びに周知技術に基づき当業者が容易に発明をすることができたものであり,本件発明4は,特開昭50-90032号公報(本訴甲第5号証,審判甲第13号証。以下「刊行物4」という。)に記載された発明(以下「引用発明4」という。),引用発明2及び引用発明3並びに周知技術に基づき,当業者が容易に発明をすることができたものであり,本件特許は,請求項1,4ないし9のいずれについても,特許法29条2項に違反して特許されたものであるから,無効とすべきである,とするものである。
(2) 審決が,上記結論を導くに当たり,本件各発明と引用発明1との共通する,一致点及び相違点として認定したところは,次のとおりである。
一致点 「内部にガス発生剤を収納し,該ガス発生剤からのガスが通過する方向に対して,順に破裂板と該破裂板が接する開口部とが設けられているガス発生器であって, 前記破裂板の引張り強さをA〔kgf/cm2〕,前記破裂板の厚みをt〔cm〕,破裂板が接する開口部の円相当径をD〔cm〕としたとき,下記の(1)式を充足するように前記破裂板の厚みtと前記開口部の円相当径Dを設定したガス発生器。 t= B×D A ,但し,B=8〜28.6〔kgf/cm2〕 ・・・(1) の発明である点」 相違点 本件各発明では,「前記ガス発生剤が,無機アジ化物を除く含窒素化合物を含む燃料と酸化剤の組み合わせであるものであるのに対して,甲第1号証のもの(判決注・引用発明1)のガス発生粒に関しては,具体的な記載がない点 」(以下「相違点1」という。) (3) 審決が,上記結論を導くに当たり,本件発明4と引用発明4との一致点及び相違点として認定したところは,次のとおりである。
一致点 「内部にガス発生剤を収納し,該ガス発生剤からのガスが通過する方向に対して,順に破裂板と該破裂板が接する開口部とが設けられているガス発生器であって, 前記破裂板の引張り強さをA〔kgf/cm2〕,前記破裂板の厚みをt〔cm〕,破裂板が接する開口部の円相当径をD〔cm〕としたとき,下記の(1)式を充足するように前記破裂板の厚みtと前記開口部の円相当径Dを設定し,前記ガスの前記ガス発生器内の最大圧力が100〔bar〕以下であるガス発生器。 t= B×D A ,但し,B=10〜36 〔kgf/cm2〕 ・・・(1) の発明である点」 相違点 「本件請求項4に係る発明は,前記ガス発生剤が,無機アジ化物を除く含窒素化合物を含む燃料と酸化剤の組み合わせであるものであるのに対して,甲第13号証のもの(判決注・引用発明4)のガス発生剤は,アジ化系ガス発生剤である点」(以下「相違点2」という。)
原告ら主張の審決取消事由の要点
審決は,請求項1,5ないし9については,引用発明1の内容を誤認したことにより,本件各発明と引用発明1との一致点・相違点の認定を誤り(取消事由1,2),相違点1についての判断を誤ったものであり(取消事由3),また,請求項4については,引用発明4の内容を誤認したことにより,本件発明4と引用発明4との一致点・相違点の認定を誤り(取消事由4,5),相違点2についての判断を誤ったものであり(取消事由6),これらの誤りがそれぞれ結論に影響を及ぼすことは明らかであるから,違法として,取り消されるべきである。
1 取消事由1(引用発明1のアルミニウムフォイルを破裂板と認定した誤り) 審決は,引用発明1の「アルミニウムフォイル22」が,本件各発明の「破裂板」に相当すると認定した(審決書18頁3段,25頁2段,5段,26頁7段)。しかし,この認定は,誤りである。
本件各発明の「破裂板」は,本件特許の願書に添附した明細書及び図面(本件訂正後のもの。以下,「本件明細書」という。)の請求項1及び9に記載されているとおり,「ガス発生剤からのガスが通過する方向に対して」設けられているものである。「ガスが通過する」あるいは「破裂板」という請求項に記載されている言葉自体から,本件各発明の「破裂板」は,ガス発生剤に対し,フィルター又は空間を介して配置されるものに限定されているのであり,破裂板がガス発生剤に直接に接するような設置場所に配置されるものは,本件各発明から除外されている。
刊行物1には,「アルミニウムフォイル22は,ガス発生粒18を外気から,そして穿孔チューブ16に恐らく存在する粗面から保護」(甲第4号証【0010】)するものであると記載されている。刊行物1には,「アルミニウム製爆発フォイル22」(同【0010】)という表現は見られるものの,「爆発」という文言を含んでいるだけで,このものが破裂圧力を制御するということを述べる記載も,これを示唆する記載もない。引用発明1のアルミニウムフォイル22は,推進薬チューブ内で生成される,極めて高い温度の固体,液体等のガス燃焼生成物に直接に接するものである。アルミニウムフォイルは,その溶融温度が約500℃〜690℃であるから,極めて高い温度のガス燃焼生成物に接することによって消失するものであり,ガス圧によって破裂するものではないことが明白である。
このように,引用発明1のアルミニウムフォイル22は,本件各発明の「破裂板」に相当するものではないから,温度依存性の高い非アジ化系ガス発生剤を適切に燃焼させるような機能は有しない。
審決が,引用発明1のアルミニウムフォイル22が,本件発明1の「破裂板」に相当すると認定したことは,誤りである。
2 取消事由2(引用発明1のアルミニウムフォイルの引張り強さの認定の誤り) 審決は,引用発明1は,「甲第2号証(判決注・本訴甲第11号証)に示される技術常識をもってみれば,アルミニウム箔の厚みと引張り強さの積を孔の径で除した値は,約7.9〜28.6程度となる」(審決書18頁3段)と認定した。
しかし,この認定は,誤りである。
(1) 審決の上記認定は,引用発明1のアルミニウムフォイルの引張り強さを,「アルミニウムハンドブック第4版」(社団法人軽金属協会標準化総合委員会編,平成2年1月15日社団法人軽金属協会発行,本訴甲第11号証・審判甲第2号証。以下「甲11文献」という。)に基づいて5〜18kgf/mm2であると認定したことによるものである。しかし,甲11文献には,アルミニウム箔の用途・材質には種々のものがあり,用途にあった材質が選択されること,及び,材質によってその引張り強さは異なることが記載されているだけであり,破裂板用アルミニウム箔としてどのようなものが使用されるかについては,全く記載がない。
引用発明1のアルミニウムフォイル22は,前述のとおり,ガス発生粒18の保護(吸湿の防止,微粉化防止)に使用されるものであるにすぎない。この用途だけからアルミニウム箔を特定することは,不可能である。
このように,アルミニウム箔には,多種多様なものがあるにもかかわらず,審決は,引用発明1のアルミニウムフォイル22の引張り強さを,用途も材質も特定しないまま,5〜18kgf/mm2であると判断し,その結果,引用発明1の推進薬チューブについて,本件発明の請求項1に記載された本件計算式中のB値を,約7.9〜28.6kgf/cm2と認定したものであり,誤りである。
(2) 甲11文献には,「純度・合金組成」の項目に,「もっとも広く用いられているのが99.3%アルミニウムでJISでは1N30と記載されている。」(甲第11号証,172頁左欄(1))との記載,「(1)強さ」の項目に,「はくの引張り強さは,材質1N30の硬質材(H18)で15〜18kgf/mm2,軟質O材で5〜8kgf/mm2」(甲第11号証,173頁左欄(1))との記載がある。しかし,審決が,これを根拠として,技術常識上,アルミニウム箔の引張り強さは5〜18kgf/mm2である,と判断したとすれば,その判断は,合理的な根拠を欠くものである。
甲11文献には,上記記載のほかに,「3003材のH18硬質材で20〜24kgf/mm2・・・」(甲第11号証173頁左欄(1))との記載があり,また,「METALS HANDBOOK Desk Edition」(1984年11月初版発行,甲第12号証。以下「甲12文献」という。)には,「よく知られたフォイル合金は,1100,1145,1235,3003,5052及び5056である。合金2024,5052又は5056から造られる高強度のフォイルは,結合されたハニカムサンドイッチパネルに使用されるハニカムコアの生産に使用される。」(甲第12号証6・13頁左欄1段)との記載がある。アルミニウムフォイルとして,このうち,5052材,5056材も使用されており,5052-H18(90μm)の引っ張り強さは29.99又は30.51kgf/mm2であり(甲第13号証8頁表2.1),5056-H18材の引張り強さは44.5kgf/mm2である(甲第11号証33頁表5.2.1)。上記各引っ張り強さから,引用発明1における本件計算式のB値を計算すれば,B値はそれぞれ47.6,70.6となり,本件各発明の本件計算式におけるB値(8〜40)の範囲外である。
このように,アルミニウム箔については,少なくとも5〜44.5kgf/mm2の引張り強さのものが存在していることがその技術常識であるといえるのであるから,引用発明1のアルミニウムフォイルの引っ張り強さが5〜18kgf/mm2であるとする審決の判断は,誤りである。
もともと,インフレータ用破裂板は,その強さを意識して使用されるものであり,工業用の部類に入るべきものである。このようなインフレータ用破裂板に用いる箔材料として,1N30以外の種々の箔材料が排除されるべき合理的理由はない。
3 取消事由3(相違点1についての判断の誤り) (1) 審決は,本件各発明と引用発明1との相違点(相違点1)について, 「本件出願時点におけるガス発生剤としては,金属アジド及び酸化剤よりなるアジ化系ガス発生剤が知られると共に,甲第7,8,11号証(判決注・刊行物3)に見られるように,含窒素有機化合物と酸化剤の組み合わせからなるガス発生剤自体も周知のものであり,しかも,甲第10号証(判決注・刊行物2)には,「発生ガスを燃焼室56から燃焼室56に適当に取り付けられたガスバッグ(図示せず)中に導くための複数の孔68は,ハウジング12の全長および全周にわたって適当な間隔で穿設される。アルミホイル70または燃焼室56中で発生したガスにより破られる他の適当な材料の層はハウジング12の内壁を包み,膨張装置を密封する。貫通孔68は膨張装置ハウジング12の周面の1/2より少し小さい部分にわたって位置させてもよい。」(第4頁第7欄第6〜12行)及び「ガス発生材料は,燃焼率,無毒,および炎温度の要件に適合する材料であればよい。1つの使用可能な材料がシュネイター(Schnejter)等の米国特許第4,203,787号に記載されている。便利に使用できる他の材料がショー(Shaw)の米国特許第4,369,079号に記載されている。」(第4頁第7欄第48〜同頁第8欄第3行)と記載され,さらに甲第10号証に記載される米国特許第4,369,079号(甲第11号証)には,含窒素有機化合物であるテトラゾールと酸化剤の組み合わせからなるガス発生剤が記載されているのであるから,甲第10号証のものと同様に開口にアルミホイルを設けた燃焼室を用いる甲第1号証のもののガス発生剤として,周知の無機アジ化物を除く含窒素化合物を含む燃料と酸化剤の組み合わせからなるものの採用を試みることは,甲第10,11号証の記載に示唆されるというべきである。
しかも,上記相違点1は,ガス発生剤を無機アジ化物を除く含窒素化合物を含む燃料と酸化剤の組み合わせからなるものとする以上に,甲第1号証のものの構成を格別変更するものではなく,甲第1号証のものに周知のガス発生剤を採用することに格別の困難性を伴うものとは認められない。
よって,上記相違点1は,甲第1,10,11号証の記載及び周知の技術に基づいて,当業者が容易になしえたものと認める。」(審決書19頁4段〜20頁3段)と判断した。しかし,審決のこの判断は,誤りである。
(2) 引用発明1のアルミニウムフォイル22は,推進薬チューブ16の内側に設けられているのに対し,引用発明2のアルミフォイル70は,ハウジング12に設けられており,ガス圧によって破裂するものである。
引用発明1においては,ガス発生粒18が燃焼し,高温の固体,液体及びガス生成物を生産し,このガス生成物がアルミニウムフォイルを爆発させて消失させるのであり,アルミニウムフォイルの外側にガス生成物中の固体,液体を除去する工夫がなされている。これに対し,引用発明2においては,ガス生成物中の固体,液体がスクリーンパック66及びフィルターパック64で除去された後のガスのガス圧によりアルミニウムフォイルが破裂する。このように,引用発明1のアルミニウムフォイルと引用発明2のアルミニウムフォイルとは,設置の場所及び機能が異なるのである。それにもかかわらず,引用発明2のガス発生器に用いられるガス発生剤を,引用発明1のガス発生器に用いようとすることは,簡単には想到し得ないことというべきである。
引用発明2においては,ガス発生剤が特定されておらず,圧力依存性の高い非アジ化系ガス発生剤の燃焼制御をガス発生器で行うために破裂圧力を厳密に制御するための本件計算式を充足するような構成の開示も示唆もしていない。
刊行物3には,ガス発生器の構造に関する記載はない。
このように,引用発明1と引用発明2とでは,ガス発生器におけるアルミニウムフォイルの設置の場所及び機能が異なるにもかかわらず,引用発明1のガス発生剤として,周知の非アジ化系ガス発生剤の採用を試みることが,引用発明2及び3から示唆されると判断した審決は,誤りである。
4 取消事由4(引用発明4のアルミニウム箔を破裂板と認定した誤り) 審決は,引用発明4の「アルミニウム箔」が,本件発明4の「破裂板」に相当する(審決書23頁3段)と認定した。しかし,審決のこの認定は,誤りである。
本件発明4の「破裂板」は,本件明細書の請求項1に記載されているとおり,「ガス発生剤からのガスの通過方向に対して」設けられているものである。
「ガスが通過する」あるいは「破裂板」という請求項1に記載されている言葉自体から,本件発明4の「破裂板」は,ガス発生剤に対し,フィルター又は空間を介して配置されるものに限定されているのであり,破裂板がガス発生剤に直接に接するような設置場所に配置されるものは,本件発明4から除外されている。
これに対し,引用発明4のアルミニウム箔は,内筒の孔をふさぎ,その中に金属アジド系のガス発生剤5を内蔵せしめるものであるから,ガス発生剤の燃焼分解時には,活性かつ高温(金属アジドの酸化剤又は酸化剤と還元剤との組み合わせの場合,1200℃以上となる。)の金属残渣を比較的多量に含む生成物に直接に接することよって消失するものである。
引用発明2の「アルミニウム箔」は,本件発明4における,ガス発生剤からのガスの通過方向に対して設けられた「破裂板」に相当するものではないから,審決の上記認定は,誤っている。
5 取消事由5(引用発明4のアルミニウム箔の引張り強さの認定の誤り) 審決は,引用発明4は,「甲第2号証(判決注・本訴甲第11号証)に示される技術常識をもってみれば,アルミニウム箔の厚みと引張り強さの積を孔の径で除した値は,約10〜36程度となる」(審決書23頁3段)と認定した。しかし,この認定は,誤りである。
審決のこの認定は,引用発明4のアルミニウム箔の引張り強さを5〜18kgf/mm2であると認定したことによるものである。しかし,この認定が誤りであることは,上記取消事由2において述べたとおりである。
6 取消事由6(相違点2についての判断の誤り) 審決は,本件発明4と引用発明4との相違点(相違点2)について, 「本件出願時点におけるガス発生剤としては,アジ化系ガス発生剤が知られると共に,甲第7,8,11号証に見られるように,無機アジ化物を除く含窒素化合物を含む燃料と酸化剤の組み合わせからなるガス発生剤自体も周知のものであり,しかも,甲第10,11号証には,上述のとおり,開口にアルミホイルを設けた燃焼室において用いるガス発生剤として,無機アジ化物を除く含窒素化合物を含む燃料と酸化剤の組み合わせからなるガス発生剤を用いることが記載されているのであるから,甲第13号証のもののガス発生剤として,周知の無機アジ化物を除く含窒素化合物を含む燃料と酸化剤の組み合わせからなるものの採用を試みることは,甲第10,11号証の記載に示唆されるというべきである。 そして,甲第13号証のものに無機アジ化物を除く含窒素化合物を含む燃料と酸化剤の組み合わせからなるガス発生剤を適用することにより,ガスの前記ガス発生器内の最大圧力が上昇するものとは認められないとともに,上記相違点3は,その採用に当たり,ガス発生剤を無機アジ化物を除く含窒素化合物を含む燃料と酸化剤の組み合わせからなるものとする以上の格別の構成の変更を伴うものでもなく,格別困難性のある事項とは認められない。 よって,上記相違点3は,甲第13,10,11号証のもの及び周知の技術に基づいて,当業者が容易になしえたものと認める。」(審決書23頁末段〜24頁3段)と判断した。
しかし,審決のこの判断は,上記取消事由3において述べたのと同じ理由により,誤りである。
被告の反論の骨子
審決に,原告ら主張の誤りはない。
1 取消事由1(引用発明1のアルミニウムフォイルを破裂板と認定した誤り)について (1) 原告らは,本件各発明の「ガスが通過する」あるいは「破裂板」という請求項に記載されている言葉自体から,本件各発明の「破裂板」は,ガス発生剤に対し,フィルター又は空間を介して配置されるものに限定されているのであり,破裂板がガス発生剤に直接に接するような設置場所に配置されるものは,本件各発明から除外されている,と主張する。
しかし,原告らの主張は,本件明細書の記載も技術常識も無視するものである。本件明細書の記載と技術常識の下では,本件各発明は,次の(ア)ないし(オ)に記載した内容のものとして理解すべきである。
(ア) 本件各発明に係る請求項には,破裂板の取付位置についての記載はない。破裂板は,外側開口部と内部開口部のいずれに設けてもよく,ガス発生剤は,破裂板となるカップに入れてもよい。
(イ) ガス発生剤は,非アジ化系ガス発生剤であるということ以外に,ガス発生剤の種類(組成)については記載されていない。酸化剤として,鉄,マンガン等を含む金属酸化物も使用することができる。
(ウ) クーラント及びフィルターは,必須の構成ではなく,用いても,用いなくてもよい。用いるか用いないかは,ガス発生剤の種類などにより決めればよい。
クーラント及びフィルターを用いないときに外側開口部に破裂板を設けると,ガス発生剤と破裂板は直接に接することになる。
(エ) 破裂板の材質は特定されていない。
(オ) 本件計算式を充足するように破裂板の厚みtと開口部の円相当径Dを設定すること。
その結果,本件各発明には,ガス発生剤と破裂板とが直接に接するもの,したがって,ガスだけでなく,燃焼生成物である固体や液体も破裂板と接触するものも含まれることになる。
(2) 引用発明1のガス発生器は,乗員の安全を確保するために必要なエアバッグのためのものであり,エアバッグの膨張時間は通常30〜60ミリ秒であるから,ガス発生剤を30ミリ秒以内に燃焼させる必要がある。
そうであるから,エアバッグ用のインフレータである引用発明1の爆発チューブのアルミニウムフォイル22は,上記のように破裂圧力を制御するものであり,同時に外気,粗面からガス発生剤を保護するものであるということができる。
2 取消事由2(引用発明1のアルミニウムフォイルの引張り強さの認定の誤り)について 甲11文献に示される技術常識及び乙第8ないし13号証からすれば,審決が引用発明1のアルミニウムフォイル22の引っ張り強さを,5〜18kgf/mm2と認定し,引用発明1の爆発チューブのB値を約7.9〜28.6である,と認定したことに誤りはない。
3 取消事由3(相違点1についての判断の誤り)について 原告らは,引用発明1のアルミニウムフォイルと引用発明2のアルミニウムフォイルとは,設置の場所及び機能が異なるのであるから,引用発明2のガス発生器に用いられるガス発生剤を,引用発明1のガス発生器に用いることは容易に想到し得ない,と主張する。
しかし,本件各発明は,前記(ア)ないし(オ)のとおり理解すべきであるから,原告らの上記主張は誤りである。
4 取消事由4ないし6について 本件発明4についての審決の取消事由4ないし6は,それぞれ本件各発明についての取消事由1ないし3に対応するものである。取消事由1ないし3に述べたのと同じ理由により,原告らの主張は失当である。
当裁判所の判断
1 取消事由1(引用発明1のアルミニウムフォイルを破裂板と認定した誤り)について (1) 本件各発明の「破裂板」について (ア) 本件明細書の発明の詳細な説明には,本件各発明の「破裂板」とその設定位置について,次の記載がある(甲第2,第3号証)。
@ 「ガス発生剤が無機アジ化物を除く含窒素化合物を含む燃料と酸化剤の組み合わせであっても,破裂板の破裂圧力(引っ張り強さ)を厳密に設定することによって,ガス発生剤の燃焼速度を極めて安定して制御できることを見出して本発明を完成したものである。」(甲第2号証3頁5欄23行〜28行) A 「無機アジ化物を除く含窒素化合物を含む燃料と酸化剤の組み合わせである非アジ化系ガス発生剤を用いる場合,破裂板の材質の種類を問わず,破裂板の引張り強さをA〔kgf/cm2〕,前記破裂板の厚みt〔cm〕,破裂板が接する開口部の円相当径をD〔cm〕が(1)式を充足することによって,破裂板の破裂圧力を,100〔bar〕以下の所定値に厳密に制御でき,圧力依存性の高い非アジ化系ガス発生剤を適切に燃焼させる。その結果,ガス発生器の内圧を例えば100〔bar〕以下の所定値とし,ガス発生器の小型化を図ることが可能になる。」(同2頁5欄46行〜3頁6欄5行) B 「本発明に適用されるガス発生器は,内部にガス発生剤を収納し,該ガス発生剤からのガスが通過する方向に対して,順に破裂板と該破裂板が接する開口部とが設けられているものであればよい。そのようなガス発生器1としては第1図に示されるものがある。・・・燃焼室に収納されたガス発生剤7が着火させられガスが発生する。発生ガスはクーラント8によって冷却され,フィルター10によってスラグ成分が除かれる。燃焼室6のガスは容器2内の内部開口部9から外側開口部12に至る通過経路を経て放出される。この外側開口部12の内側に破裂板11が接触状態で配置され,ガスが通過する方向に対して順に破裂板11と該破裂板11が接する開口部12が設けられる。ガス出口である外側開口部12に破裂板11を設けると,ガス発生剤の燃焼による高熱の影響を受けにくい。また,クーラント8をフィルター10と共に最外室側に収納し,ガス発生剤7をカップに入れ,内部開口部9に接するカップを破裂板となるようにしてもよい。外側開口部12の破裂板11に加えて内部開口部9にも破裂板を設ける場合,内部開口部9の破裂板に対する(1)式のB値を,外側開口部12の破裂板に対する(1)式のB値より小さくする。すると,内部開口部9の破裂板が先に破れるものの,燃焼室6のガス圧の保持が確実になる。もちろん,外側開口部12の破裂板に代えて,内部開口部9の破裂板だけとすることもできる。」(5頁9欄15行〜10欄9行) C 「第3図の破裂板は容器102の外周の開口部の内側に設けられている。このように,ガス発生剤のガス圧を制御するためには,ガスが通過する方向に対して,順に破裂板と該破裂板が接する開口部とが設けられておればよい。ガス発生器のガスの出口を達成する開口部に破裂板を取り付けることが好ましが(判決注・「好ましいが」の誤記と認める。),容器内の燃焼室を壁で囲い,この壁に開口部を設け,この開口部に破裂板を設けるものであってもよい。また,ガス出口の開口部と上記した燃焼室の開口部の両方に破裂板を設けるものであってもよい。」(8頁15欄末行〜16欄23行) (イ) 本件明細書の発明の詳細な説明の上記記載並びに第1図,第3図及び第4図によれば,本件各発明の「破裂板」は,ガス発生器に設けられるものであって,ガス発生剤の燃焼生成物による加圧があったときに,ガス発生器における破裂板で閉塞される空間の内圧(以下「容器内圧」という。)のある値において「破裂」するものであり,その破裂時の圧力を調整することによって,ガス発生剤の燃焼速度(以下「ガス発生速度」という。)及び容器内圧を制御するという機能を奏するものである,と認められる。
そして,本件明細書の請求項1には,「ガス発生剤からのガスが通過する方向に対して,順に破裂板と該破裂板が接する開口部とが設けられているガス発生器」と規定するする以外には,本件発明1のガス発生器における破裂板の設定位置についての記載はない。この請求項1の記載と,本件明細書の発明の詳細な説明の上記B,Cの記載とによれば,本件各発明の「破裂板」は,ガス発生器の外側開口部と内部開口部のいずれかのみに設けてもよく,また,その両方に設けてもよいものであることが明らかである。内部開口部に破裂板を設けるときは,ガス発生剤をカップに入れ,内部開口部に接するカップを破裂板となるようにしてもよいものであり,本件明細書の発明の詳細な説明の上記Bの記載及び第1図によれば,ガス発生剤と破裂板となるカップとが接触するものをも包含するものと認められる。
本件明細書には,本件各発明の実施例3として,厚さ50μmのアルミニウム箔(A=900kgf/cm2)(判決注・9kgf/mm2)の破裂板が,実施例4として,厚さ100μmのアルミニウム箔(A=900kgf/cm2)の破裂板が記載されており(甲第2号証6頁11欄19行,同37行,甲第3号証),本件各発明の実施例の「破裂板」として,上記のような厚さ及び引張り強さのアルミニウム箔が例示されている。
(2) 引用発明1の「アルミニウムフォイル22」について (ア) 「アルミニウムフォイル22」及びその設定位置について,刊行物1には,次の記載がある。
@ 「エアーバッグ膨張装置10は2つの主要部材,すなわちガス発生装置12および外側ハウジング14を含んで構成される。ガス発生装置12は好ましく構成された実施例においては推進薬チューブ16を含んでなる。・・・この穿孔チューブ16は点火される前は複数の推進薬粒18を所定位置に保持している。また,外側プレフィルタースクリーン20および内側の0.0254mm(0.001インチ)厚のアルミニウム製爆発フォイル22の取付け基部として働く。・・・アルミニウムフォイル22は,ガス発生粒18を外気から,そして穿孔チューブ16に恐らく存在する粗面から保護している。」(甲第4号証【0010】) A 「正常な作動に際しては,推進薬粒18は導火装置34によって点火され,固体,液体およびガスの生成物を生産する。この固体,溶融スラグおよびガスはしかる後推進薬チューブ16からオリフィスおよびスクリーン20を通して流出し,そして一次冷却濾過段に進入する。そこで,これらは高圧シリンダー30の半径方向の内側壁面に衝突する。燃焼生成物は冷却され,図4に見られるように固体及び溶融スラグの付着物質60がこの一次冷却濾過段においてシリンダー30の内側壁を「メッキ」する。燃焼生成物は次にオリフィス31を通してシリンダー30を流出し,ハウジング14の後部壁部分40に衝突する。そこで,溶融したままのスラグ付着物62が固まり,ハウジング14の後部壁部分40の半径方向内側面をスラグ物質の薄い層で被覆する。残った燃焼生成物は次に高圧シリンダー12の回りを円周方向に移動して,最終フィルター44へ至る。この点において,燃焼生成物は比較的容易に微細メッシュスクリーンを有する最終フィルターへ至る。衝突濾過することによって,液体状態の非ガス生成物の殆どを膨張装置ハウジング14の後部壁40に沿って「メッキ」することで,比較的少ない量の固体粒子のみがガス流から軽量な最終フィルター44で除去されることが必要とされるのである。」(同【0014】) (イ) 引用発明1は,車両用のエアーバッグ膨張装置であり(甲第4号証【0001】,【0002】等),上記記載のとおり,その「アルミニウムフォイル22」は,その膨張装置の主要部材であるガス発生装置12の推進薬チューブ16の壁に穿たれた孔を塞ぐようにその壁の内側に取り付けられるものであって,「ガス発生粒18を外気から,そして穿孔チューブ16に恐らく存在する粗面から保護」するためのものでもあり,そして,刊行物1の図3によれば,空間やフィルタを介さずにガス発生剤と接触する位置に設けられていることが認められる。
また,引用発明1のガス発生装置12は,ガス燃焼生成物がアルミニウムフォイル22を通過した後に衝突する壁面と,その後に同燃焼生成物が通過するフィルタを備えた構造のものである。
(3) 以上によれば,本件各発明の「破裂板」は,その実施例として,上記のような厚さ及び引っ張り強さのアルミニウム箔が明示されており,また,その設置位置も,請求項1の記載と,本件明細書の発明の詳細な説明の上記B,Cの記載によれば,ガス発生器の外側開口部と内部開口部のいずれかのみに設けてもよいのであるから,引用発明1の,複数の推進薬粒18を所定位置に保持している穿孔チューブ16内側に取り付けられたアルミニウム製爆発フォイル22は,本件各発明の「破裂板」に相当するものと認められる。引用発明1の「アルミニウムフォイル22」が,本件発明1の「破裂板」に相当するとした審決の認定に誤りはない。
原告らは,本件各発明の「破裂板」は,ガス発生剤に対し,フィルター又は空間を介して配置されるものに限定されているのであり,破裂板がガス発生剤に直接に接するような設置場所に配置されるものは,本件各発明から除外されている,と主張する。しかし,本件各発明の「破裂板」の設置位置については,上記のとおり,その請求項(特許請求の範囲)において,特に限定されているわけではなく,本件明細書の発明の詳細な説明においては,ガス発生器の外側開口部と内部開口部のいずれかのみに設けてもよいと記載されているのであるから,ガス発生剤に対し,フィルター又は空間を介して配置されるもののみに限られないことが明らかである。引用発明1の推進薬チューブを有するガス発生装置も,「ガス発生剤からのガスが通過する方向に対して,順に破裂板と該破裂板が接する開口部とが設けられているガス発生器」ということができる。引用発明1と本件各発明とは,破裂板とガス発生剤との設定位置において相違するものではない。原告らの上記主張は採用することができない。
原告らは,引用発明1のアルミニウムフォイル22は,推進薬チューブ内で生成される極めて高い温度の固体,液体及びガス燃焼生成物に直接に接するものである,アルミニウムフォイルは,その溶融温度が約500℃〜690℃であるから,引用発明1におけるアルミニウムフォイルは,このように極めて高い温度のガス燃焼生成物に接して消失するものであって,破裂するものではないから,本件各発明の「破裂板」に相当するものではない,と主張する。
しかしながら,引用発明1のアルミニウムフォイル22が,高温の固体,液体等のガス燃焼生成物に直接接触し,消失するものであって,破裂するものではないとの原告らの主張を裏付ける証拠はない。また,原告らの上記主張は,本件各優先日当時の,ガス発生器についての,次の各公知文献に示されている技術常識,すなわち,ガス流出用開口を閉塞し,ガス発生剤に接触する位置に設定されているアルミニウム箔などの薄膜が,所定の内圧で破裂し,ガス発生速度ないし容器内圧を制御する機能を奏し,「破裂板」ということができるものである,ということにも反するものであり,採用することができない。
実公昭53-24022号公報(乙第6号証)には,そこに記載されているのが,「ガス発生器の壁面にガス噴出口を穿設すると共にガス噴出口を閉塞するように薄膜を添着し,・・・該貯蔵室内の圧力をより高めてガス発生剤の燃焼速度を速める」とともに,「該貯蔵室内の圧力が所望圧力以上になったときに前記薄膜を破裂させてエアバックを瞬時に膨張させるようにした」(1頁2欄12行〜22行)エアバック用ガス発生装置に関するものであること,内筒4に設けられた多数のガス噴出口はアルミニウム箔等の金属箔,あるいは,樹脂フィルムなどの薄膜9を添着(2頁3欄4行〜5行)して閉塞されることが記載され,その第1図には,ガス発生剤10と薄膜9とが接触している状態が示されている。また,特開平2-74442号公報(甲第10号証,審判甲第5号証)には,そこに記載されているのが,車両の乗務員用ガスクッション拘束装置の充填用ガス発生器に関するものであって,「燃料を満たされる燃焼室を持ち,発生されるガスの流出用開口を持つ壁により燃焼室が包囲され,燃料の燃焼過程の初めにこれらの開口が,燃焼室内の特定の圧力上昇に至るまで,破壊可能な蓋によって気密に閉塞されている」(2頁左上欄下から6行〜1行)ものであり,「始動の時点にガス発生器の固有温度に関係なく均一な圧力経過が得られるように」(同頁左下欄5行〜7行),「流出開口の全断面積が上昇する燃焼室圧力に関係して自動的に増大可能」(同欄9行〜11行)なものであり,圧力発生の際破壊可能な蓋は,例えば金属箔,により気密に閉鎖される(同頁右下欄4行〜5行)ことが記載され,そのFig.1には,燃料1と蓋7,11とが接触している状態が示されている。
原告らは,刊行物1には,「アルミニウムフォイル22はガス発生粒18を外気から,そして穿孔チューブ16に恐らく存在する粗面から保護」すると記載されるにすぎず,アルミニウムフォイル22が推進薬チューブの内圧を制御する機能を有する旨の記載も示唆もない,と主張する。しかし,引用発明1のアルミニウムフォイル22は,上記のとおり,本件各発明の「破裂板」に相当するということができ,ある容器内圧をもって破裂するものであるから,ガス発生粒18を保護する機能と同時に,ガス発生速度ないしガス発生器の内圧を制御する機能をも有するものであるということができる。原告の上記主張も失当である。
2 取消事由2(引用発明1のアルミニウムフォイルの引張り強さの認定の誤り)について 審決は,甲11文献に示される技術常識をもってみれば,引用発明1の推進薬チューブにおけるB値は約7.9〜28.6kgf/cm2程度であると認定した上で,引用発明1の「推進薬チューブ」は,本件計算式を満たすものであると認定した。
(1) 甲11文献に示される技術常識について 甲11文献には,次の記載がある。
「17.アルミニウムはく 17.1 アルミニウムはくの種類と用途 ・・・ (1) 純度・合金組成 通常純度が99.00%から99.99%の純アルミニウムのほか,特に強さを必要とするものには,マンガンやマグネシウムを添加した3003,3004合金が・・・はくに圧延される。
もっとも広く用いられるのが99.3%アルミニウムでJISでは1N30と記されている。99.7%は主として電線被覆用に,99.8%から99.9%は電解コンデンサー用にほぼ限られる。マンガン添加の3003および3004は,ホイル・コンテナーや冷暖房用のフィン材に用いられている。・・・ (2) 厚さ はくの厚さは,JISでは0.2mmを上限とし,薄いものは,0.006mm(6ミクロン)まである。
・・・ (3) 質別 アルミニウムはくを圧延したままの,加工硬化でかたくなった状態のはく(H18材)を用いるか,これを焼鈍して軟らかくなったはく(O材)を用いるかは,はく使用上考えておくべきことである。・・・O材は,出荷されるはくの80〜90%を占め,・・・H18材は,はく生産の10〜20%であるが,硬いはく,或いは外力でパチンときれいに破れるはくなどが欲しいときに用いる。・・・ 17.2 アルミニウムはくを使う製品の設計 ・・・ (1)強さ はくの引張り強さは,材質1N30の硬質材(H18)で15〜18kgf/mm2,軟質O材で5〜8kgf/mm2,マンガン添加のホイルコンテナーやフィン用3003材のH18硬質材で20〜24kgf/mm2,軟質O材で10〜13kgf/mm2である。」(甲第11号証172頁1行〜173頁左欄下から4行) 甲11文献の上記記載によれば,最も広く用いられているアルミニウム箔は,1N30であり,その強度は,硬質材(H18)で15〜18kgf/mm2,軟質O材で5〜8kgf/mm2であることが認められる。また,上記記載によれば,特に強さを必要とするものには,マンガンやマグネシウムを添加した3003,3004合金が圧延されたものがあり,これらはホイルコンテナやフィン用に使用されるもので,その強度は,H18硬質材で20〜24kgf/mm2,軟質O材で10〜13kgf/mm2であることも認められる。
(2) 刊行物1においては,推進薬チューブ16の内側に張られているアルミニウムフォイル22について,その厚さが0.0254mmと記載されているだけで,特に強さを必要とするアルミニウム箔を用いるべきであるとの記載はない(甲第4号証)。
(3) 以上によれば,審決が,引用発明1において使用されているアルミニウムフォイル22の引っ張り強さを,特に強さを必要とするものではなく,一般に広く使用されているアルミニウム箔の引っ張り強さであるとして,5ないし18kgf/mm2であると認定し(明示の認定はないものの,引用発明1におけるB値として審決の認定した数値から逆算すれば,この数値を認定していることが明らかである。),その上で,引用発明1の推進薬チューブについて,孔の径1.60mm,アルミニウムフォイルの厚み0.0254mmと,上記のアルミニウム箔の引っ張り強さ5ないし18kgf/mm2から,引用発明1における推進薬チューブ16のB値を約7.9〜28.6kgf/cm2と認定したことを特に誤りとすべき理由はない。審決は,その結果,引用発明1のB値は,本件各発明のB値の範囲に含まれると認定したものであり,審決のこの認定に誤りはない。なお,本件各発明は,B値が8〜40の範囲に含まれるものをすべて包含する発明であるから,引用発明1のもののB値が8〜40の範囲に含まれることが認められれば,これを両者の一致点と認定することができるのであり,引用発明1において,そのB値が8〜40のものすべてを開示している必要がないことはいうまでもないところである。
(4) 原告らは,甲11文献には,アルミニウム箔の用途・材質には種々のものがあり,用途にあった材質が選択されること,及び,材質によってその引張り強さは異なることが記載されているだけであり,ガス発生器の破裂板用アルミニウム箔としてどのようなものが適用されるかについては,全く記載がない,アルミニウムフォイルとして,5052材,5056材も一般に使用されており,5052-H18(90μm)の引っ張り強さは29.99又は30.51kgf/mm2であり(甲第13号証8頁表2.1),5056-H18材の引張り強さは44.5kgf/mm2である(甲第11号証33頁表5.2.1),上記各引っ張り強さから,引用発明1における本件計算式のB値を計算すれば,B値はそれぞれ47.6,70.6となり,本件各発明の本件計算式におけるB値(8〜40)の範囲外である,と主張する。
しかし,引用発明1のアルミニウムフォイル22について,特に強さを必要とするアルミニウム箔を使用すべきであるとの記載は,刊行物1にないことは上記認定のとおりである。
また,本件各発明におけるB値は,次項において述べるとおり,その下限値は,それ未満の場合は,燃焼速度が十分でないか未燃焼物が残るかのいずれかとなる値であり,換言すれば,ガス発生剤が完全燃焼し得る容器内圧であって,エアバッグへの適切なガス供給速度とすることができるガス発生速度が得られる容器内圧の最小値を示すものであり,また,その上限値は,これを超えると燃焼速度が速すぎてガス発生剤の容器が破壊するおそれがある値であって,換言すれば,容器が破裂する恐れがない容器内圧の上限値(以下「許容内圧」という。)を示すものである。
そして,引用発明1の推進薬チューブは,車両用のエアバッグのためのガス発生装置であるから,車両用のエアバッグのために適当とされるガス供給速度が得られ,そして,ガス発生剤が完全燃焼し,かつ,ガス発生器が破裂しないように,アルミニウム箔の引張り強さが設定されているものであって,その容器の強度が,本件各発明のものと比較して,格別のものに設定されているものではない,と認められる(甲第4号証。その詳細は,次項において述べる。)。引用発明1のB値は,この観点からも,本件各発明と同様に8ないし40の範囲内のいずれかの値であると推認するのが相当である。
引用発明1の推進薬チューブの内側に備えるアルミニウムフォイル22として,5052材あるいは5056材の上記引っ張り強さのものを使用するとなると,本件計算式におけるB値をはるかに超えることになり,許容内圧を超え,ガス発生剤の容器が破壊するおそれがあるものとなることは明らかであるから,引用発明1のアルミニウムフォイル22として,5052材あるいは5056材の強度のものを使用することがあることを前提とする原告らの上記主張は到底採用することができないのである。
(5) 本件各発明の本件計算式におけるB値の意義について,簡略に説明すれば,次のとおりである。
(ア) 本件各発明に係る「ガス発生器」は,「車両のエアバック用」(甲第2号証2頁3欄46行,甲第3号証)に使用するものであるから,エアバッグが急速かつ適正に膨張するガス速度でガスをエアバックに供給する機能を有することが要求される(甲第5号証1頁右下欄参照)。
この車両のエアバックに要求される適切なガス供給速度の制御を,本件各発明のように,「内部にガス発生剤を収納し,該ガス発生剤からのガスが通過する方向に対して,順に破裂板と該破裂板が接する開口部とが設けられているガス発生器」(請求項1)とし,破裂板を所定の内圧において破裂するように設定することによって行うことは,本件各優先日前によく知られたことである(乙第1号証【0009】〜【0011】,乙第6号証)。
ガス発生器の破裂板の破裂する圧力に影響する要素として,本件各優先日前に知られていたものとして,破裂板の厚さ(甲第9号証【0014】,【0027】,【0041】,【0042】),破裂板自体の強さ(乙第3号証【0008】)及び流出用開口の孔径(乙第3号証【0010】,【0011】,【0014】〜【0016】)が挙げられる。
そして,破裂板自体が弱いほど,すなわちその材質の強度(引っ張り強さ)が小さく,その厚みが薄いほど,破裂するときの容器内圧が小さく,開口部の孔径が大きいほど,破裂するときの容器内圧が小さいのであるから,これらの要素と容器内圧との関係を単純化した式で表すと,容器内圧は, (破裂板材質強度)×(破裂板厚み)/(開口部の孔径) となり,この式から「破裂板が破裂するときの容器内圧」が算定される。
これを本件計算式の記号(アルミニウム箔の厚みt,アルミニウム箔の引張り強さA及び円相当開口径D)で表すと, A×t/Dとなるから, k’×(破裂板が破裂する容器内圧)=A×t/D (k’は定数) と表すことができ,これは,本件各発明の本件計算式を変形した B=A×t/D と同じである。
上記各式から明らかなとおり,本件各発明の本件計算式は,破裂板が破裂するときの容器内圧に影響することが知られた要素を単純に数式化したものにすぎず,そのBは,「破裂板が破裂するときの容器内圧」に対応したものであると認められる(以下,Bを「破裂圧力」という。)。
(イ) 本件計算式のB値は,上記(ア)で示したとおり,「破裂板の破裂するときのガス発生器の容器内圧」に対応する値であると認められる。本件計算式におけるB値の範囲の技術的意義について,本件明細書における「(1)式において,B値が8未満の場合は燃焼速度が充分でないか未燃焼物が残ることになり,Bの値が40を越える場合は燃焼速度が速すぎてガス発生剤の容器が破壊する恐れがある。」(甲第2号証3頁5欄42行〜45行,甲第3号証)との記載からすれば,本件各発明で規定するB値の下限値は,それ未満の場合は「燃焼速度が充分でないか未燃焼物が残る」値であり,換言すれば,ガス発生剤が完全燃焼し得る容器内圧であって,エアバッグへの適切なガス供給速度とすることができるガス発生速度が得られる容器内圧の最小値を示すものであり,また,その上限値は,これを超えると「燃焼速度が速すぎてガス発生剤の容器が破壊する恐れがある」値であるから,容器が破裂する恐れがない容器内圧の上限値(許容内圧)を示すものである。
ガス発生速度は,容器内圧に依存するのであるから,破裂板を有するガス発生器においては,着火後破裂板の破裂前は,容器内圧が上昇し,その容器内圧に応じてガス発生速度が上昇して所定の速度に達することができる。本件各発明の「内部にガス発生剤を収納し,該ガス発生剤からのガスが通過する方向に対して,順に破裂板と該破裂板が接する開口部とが設けられているガス発生器」(請求項1),すなわち,破裂板を有するガス発生器,においては,破裂板の破裂圧力自体によって容器内圧を制御するのであるから,その破裂板の破裂圧力は,当然,燃焼が完全燃焼する容器内圧以上のものであり,破裂板が破裂した後エアバッグへの適切なガス供給速度とすることができるガス発生速度を与える容器内圧以上である値に設定されていることは当然である。
また,ガス発生器の容器の破裂は,容器自体の強度に依存し,容器内圧の最大値がその強度を超える場合に起こり得る。そして,容器内圧の最大値は,流路抵抗が無視し得る程度である場合には,破裂板の破裂圧力にほぼ一致し,流路抵抗が無視し得る程度を超える場合には,破裂板の破裂圧力より高くなる。そして,本件明細書には,「開口部の円相当径Dが極端に小さい場合には,ガス発生器内のガス圧が高くなりすぎるという不都合が生じるため,標準状態(273゜K,1気圧)でのガス発生量に対する開口部総面積が,0.143〔cm2/リットル〕以上とすることが望ましい。すなわち,開口部総面積が0.143〔cm2/リットル〕未満であると,開口部での流路抵抗によるガス圧の増加によって,破裂板によるガス圧の制御が有効でなくなる。この0.143〔cm2/リットル〕という数字は,種々の非アジ化系ガス発生剤の燃焼実験に基づいて求められた。」(甲第2号証3頁6欄19行〜28行,甲第3号証)との記載があることからすれば,本件各発明においては,上記流路抵抗を無視し得るほどに小さいものも含むとみることができ,この場合,本件各発明のB値の範囲の上限値は,容器内圧の最大値に近い数値をとるものであるということができる。
そして,この許容内圧は,ガス発生容器の強度によって規定されるものであるから,ガス発生剤がアジ化系であるか非アジ化系であるかにより変わるものではない。
(ウ) 本件明細書には,本件各発明のガス発生器の許容内圧に関し「(1)式を充足することによって,破裂板の破裂圧力を100〔bar〕以下の所定値に厳密に制御でき・・・ガス発生器の内圧を例えば100〔bar〕以下の所定値とし,ガス発生器の小型化を図ることが可能になる。」(甲第2号証3頁6欄1行〜5行,甲第3号証)との記載のほか,「ガス圧が100〔bar〕以下の場合には,耐圧がそれほど必要でないため,容器2を2重又は3重の円筒にせず,単なる円筒にすることもできる。」(甲第2号証5頁10欄13行〜16行,甲第3号証)との記載がある。
本件明細書の上記の記載とその実施例及び比較例2ないし4の具体的な容器内圧の最大値(実施例3の85℃の場合の95.5barが最大,比較例4の195.8barが最小(甲第2号証6頁表3,8頁16欄6行〜7行,甲第3号証))との記載も併せ見れば,本件各発明においては,許容内圧が100bar程度の強度のガス発生器を想定した場合の上限値としてB値の40が設定されたものと認められる。
従来の破裂板の破裂圧力によって容器内圧を制御するガス発生器における,容器の強度は100bar程度以下に設定されるものと認められる(例えば,引用発明4のものは54kg/cm2(53bar)である(甲第5号証4頁右上欄末行〜左下欄1行)。)。
このように,本件各発明の100bar程度の値は,破裂板の破裂圧力によって容器内圧を制御するガス発生器の強度として格別小さいものとは認めることはできず,したがって,B値の上限の40という値も格別小さいものであるとは認められない。以上からすれば,引用発明1の推進薬チューブ16においては,そのB値が上限値40を超えるものと認めることはできないのであり,その結果,引用発明1のアルミニウムフォイルとして,5052材及び5056材の引っ張り強さのものを使用することがあり得ないことは前記のとおりである。
3 取消事由3(相違点1についての判断の誤り)について (1) 引用発明1の推進薬チューブ16は,車両用のエアバッグのための破裂板と認められるアルミニウムフォイル22を備えたガス発生器である。
刊行物2には「ガス発生材料は,燃焼率,無毒,および炎温度の要件に適合する材料であればよい。1つの使用可能な材料がシュネイター(Schnejter)等の米国特許第4,203,787号に記載されている。便利に使用できる他の材料がショー(Shaw)の米国特許第 4,369,079号(判決注・刊行物3)に記載されている。」(甲第6号証4頁7欄48行〜8欄3行)と記載されている。この記載は,車両用のエアバッグのための破裂板を有するガス発生器において,車両用エアバッグのガス発生器のガス発生剤として知られた燃焼率,無毒,及び炎の温度の要件に適合する材料であれば,いずれのガス発生剤であってもこれを適用することができることを示唆するものである。そうである以上,本件各優先日前に周知であることに争いがない非アジ化系ガス発生剤(例えば,刊行物3に記載されるガス発生剤)を,引用発明1のガス発生装置のガス発生剤として使用することに,何ら困難性は認められない。
(2) 原告らは,引用発明1のアルミニウムフォイルと引用発明2のアルミニウムフォイルとは,設置の場所及び機能が異なるのであるから,引用発明2のガス発生器に用いられるガス発生剤を,引用発明1のガス発生器に用いることは通常想定しない,と主張する。
しかし,これらのガス発生器は,共に車両用のエアバッグのための破裂板を有するガス発生器であり,エアバッグの膨張に適切な範囲に対応するガス流出速度が得られ,ガス発生剤が完全燃焼し,かつ,容器が破裂しないという範囲の破裂板の破裂圧力としたものである点で軌を一にするものであり,また,このようなガス発生器における,ガス発生剤と破裂板との設定位置については,フィルターやクーラントを設けるか否か等も含めて様々な構成のものが既に知られているのであり(ガス発生剤と破裂板とが直接に接するものとしては引用発明1及び引用発明4,ガス発生剤と破裂板とがフィルターなどを介するものとしては,例えば甲第9号証など),その設置位置については,ガス発生剤及び破裂板の材料等に応じて当業者が必要に応じて改変をすることができる設計事項であると認められるから,これら破裂板とガス発生剤との位置関係が異なることが,特定のガス発生剤を引用発明1のものに適用することの妨げになるものとは認められない。
相違点1について,引用発明1ないし3及び周知の技術に基づいて当業者が容易になしえたものであるとした審決の判断に誤りはない。
4 取消事由4(引用発明4のアルミニウム箔を破裂板と認定した誤り)について 原告らの取消事由4の主張は,取消事由1と同趣旨の主張であり,採用することができない。その理由は,取消事由1において述べたのと同じである。
5 取消事由5(引用発明4のアルミニウム箔の引張り強さの認定の誤り)について 原告らの取消事由5の主張は,取消事由2と同趣旨の主張であり,採用することができない。その理由は,取消事由2において述べたのと同じである。
6 取消事由6(相違点2についての判断の誤り)について 原告らの取消事由6の主張は,取消事由3と同趣旨の主張であり,採用することができない。その理由は,取消事由3において述べたのと同じである。
結論
以上に検討したところによれば,原告らの主張する取消事由にはいずれも理由がなく,その他,審決には,これを取り消すべき誤りは見当たらない。そこで,原告らの本訴請求を棄却することとし,訴訟費用の負担について,行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 山下和明
裁判官 設樂隆一
裁判官 高瀬順久