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関連ワード 進歩性(29条2項) /  容易に発明 /  設定登録 /  拒絶査定 /  訂正審判 /  請求の範囲 /  減縮 /  訂正明細書 /  取消決定 / 
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事件 平成 13年 (行ケ) 525号 特許取消決定取消請求事件
原告 タイガー魔法瓶株式会社
訴訟代理人弁理士 大浜博
被告 特許庁長官太田 信一郎
指定代理人 会田博行
同 大野克人
同 橋本康重
同 宮川久成
同 伊藤三男
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 2003/06/30
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
主文 特許庁が平成11年異議第70410号事件について平成13年10月2日にした決定を取り消す。
訴訟費用は被告の負担とする。
事実及び理由
請求
主文と同旨
当事者間に争いのない事実
1 特許庁における手続の経緯 (1) 原告は,名称を「ボトル」とする特許第2783189号発明(平成7年4月14日特許出願,平成10年5月22日設定登録,以下「本件発明」といい,この特許を「本件特許」という。)の特許権者である。
その後,請求項1〜3,5,6に係る本件特許につき特許異議の申立てがされ,同申立ては,平成11年異議第70410号事件として特許庁に係属したところ,原告は,平成11年7月26日付け訂正請求書及び平成12年6月23日付け手続補正書により,本件特許出願の願書に添付した明細書(以下「訂正前明細書」という。)の特許請求の範囲の記載等を訂正する旨の訂正請求(以下「本件訂正請求」といい,その明細書を「訂正明細書」という。)をした。
特許庁は,同特許異議事件について審理した上,平成13年10月2日,「特許第2783189号の請求項1ないし3,5,6に係る特許を取り消す。」との決定(以下「本件決定」という。)をし,その謄本は,同年10月25日,原告に送達された。
(2) 原告は,本件決定の取消しを求める本訴提起後の平成15年3月5日,本件明細書の特許請求の範囲の記載等を訂正する旨の訂正審判の請求をしたところ,特許庁は,同請求を訂正2003-39047号事件として審理した上,同年4月15日,上記訂正を認める旨の審決(以下「本件訂正審決」という。)をし,その謄本は,同月28日,原告に送達された。
2 特許請求の範囲の記載 (1) 訂正前明細書の特許請求の範囲の記載(以下【請求項1】〜【請求項6】に係る発明を「本件発明1」〜「本件発明6」という。) 【請求項1】外壁(11)と内壁(12)間を真空とした金属製真空二重壁構造を有する容器体(1)と前記内壁(12)の開口部(13)を密栓する栓体(2)とを備え,前記開口部(13)を容器体(1)の胴部内径とほぼ同径の広口とし,前記内壁(12)の開口部形成部分に,栓体(2)を螺合する雌ネジ(14)と栓体(2)の栓パッキン(23)の栓座となる環状の膨出部(15)とをそれぞれ一体形成し,前記栓体(2)に,前記容器体(1)内の空所(16)と外気とを連通させる空気通路(24)と,該空気通路(24)を開閉する弁体(3)と,該弁体(3)を外部から開弁操作して外気と連通させる弁体操作手段(4)とを設け,前記容器体(1)の上縁外周部に,口当て部となる小径段差部(17)を形成した,ことを特徴とするボトル。
【請求項2】空気通路(24)を,容器体(1)内の液体(W)を注出するための注出通路(28)とした,ことを特徴とする請求項1記載のボトル。
【請求項3】外壁(11)と内壁(12)間を真空とした金属製真空二重壁構造を有する容器体(1)と前記内壁(12)の開口部(13)を密栓する栓体(2)とを備え,前記開口部(13)を容器体(1)の胴部内径とほぼ同径の広口とし,前記内壁(12)の開口部形成部分に,栓体(2)を螺合する雌ネジ(14)と栓体(2)の栓パッキン(23)の栓座となる環状の膨出部(15)とをそれぞれ一体形成し,前記栓体(2)に,前記容器体(1)内の空所(16)と外気とを連通させる空気通路(24)と,該空気通路(24)を開閉する弁体(3)とを設け,該弁体(3)として,前記空所(16)の圧力が所定レベル以下の負圧になったときにのみ開弁するような圧力作動弁を採用し,前記容器体(1)の上縁外周部に,口当て部となる小径段差部(17)を形成した,ことを特徴とするボトル。
【請求項4】 空気通路(24)を,ストロー(6)を栓体(2)の上方から容器体(1)内まで挿入させ得るような上下方向の直線上に形成し,弁体(3)として,前記ストロー(6)を挿入した際に該ストロー(6)で押圧されて下方に退避するフラップ状の弁を採用した,ことを特徴とする請求項3記載のボトル。
【請求項5】 栓体(2)に,口当て部となる小径段差部(17)の外側を被覆するカバー部(22a)を設けた,ことを特徴とする請求項1〜4のうちのいずれか1つに記載のボトル。
【請求項6】 容器体(1)の外壁(11)の上部外面に肩リング(10)を無理嵌めによって取付け,該肩リング(10)に口当て部となる小径段差部(17)を形成した,ことを特徴とする請求項1〜5のうちのいずれか1つに記載のボトル。
(2) 訂正明細書の特許請求の範囲の記載 【請求項1】外壁(11)と内壁(12)間を真空とした金属製真空二重壁構造を有する容器体(1)と前記内壁(12)の開口部(13)を密栓する栓体(2)とを備え,前記開口部(13)を容器体(1)の胴部内径とほぼ同径の広口とし,前記内壁(12)の開口部形成部分に,栓体(2)を螺合する雌ネジ(14)と栓体(2)の栓パッキン(23)の栓座となる環状の膨出部(15)とをそれぞれ一体形成し,前記栓体(2)は,栓本体(21)と該栓本体(21)の上部を被覆して外装体をなすカバ一体(22)を有して,前記容器体(1)内の空所(16)と外気とを連通させる空気通路(24)と,該空気通路(24)を開閉する弁体(3)と,該弁体(3)を外部から開弁操作して外気と連通させる弁体操作手段(4)とを設け,前記容器体(1)の上縁外周部に,口当て部となる小径段差部(17)を形成し,前記空気通路(24)を,容器体(1)内の液体(W)を注出するための注出通路(28)として,該注出通路(28)の注出口を前記カバー体(22)の表面位置に形成したことを特徴とするボトル。 【請求項2】外壁(11)と内壁(12)間を真空とした金属製真空二重壁構造を有する容器体(1)と前記内壁(12)の開口部(13)を密栓する栓体(2)とを備え,前記開口部(13)を容器体(1)の胴部内径とほぼ同径の広口とし,前記内壁(12)の開口部形成部分に,栓体(2)を螺合する雌ネジ(14)と栓体(2)の栓パッキン(23)の栓座となる環状の膨出部(15)とをそれぞれ一体形成し,前記栓体(2)は,栓本体(21)と該栓本体(21)の上部を被覆して外装体をなすカバー体(22)を有して,前記容器体(1)内の空所(16)と外気とを連通させる空気通路(24)と,該空気通路(24)を開閉する弁体(3)とを設け,該弁体(3)として,前記空所(16)の圧力が所定レベル以下の負圧になったときにのみ開弁するような圧力作動弁を採用し,前記空気通路(24)を,前記栓本体(21)と前記カバ一体(22)との間に形成される栓本体内空所(52)に形成して,前記容器体(1)の上縁外周部に,口当て部となる小径段差部(17)を形成した,ことを特徴とするボトル。 【請求項3】空気通路(24)を,ストロー(6)を栓体(2)の上方から容器体(1)内まで挿入させ得るような上下方向の直線上に形成し,弁体(3)として,前記ストロー(6)を挿入した際に該ストロー(6)で押圧されて下方に退避するフラップ状の弁を採用した,ことを特徴とする請求項2記載のボトル。 【請求項4】栓体(2)に,口当て部となる小径段差部(17)の外側を被覆するカバー部(22a)を設けた,ことを特徴とする請求項1〜3のうちのいずれか1つに記載のボトル。 【請求項5】容器体(1)の外壁(11)の上部外面に肩リング(10)を無理嵌めによって取付け,該肩リング(10)に口当て部となる小径段差部(17)を形成した,ことを特徴とする請求項1〜4のうちのいずれか1つに記載のボトル。
(3) 本件訂正審決に係る訂正後の特許請求の範囲の記載(注,訂正部分を下線で示す。) 【請求項1】外壁(11)と内壁(12)間を真空とした金属製真空二重壁構造を有する容器体(1)と前記内壁(12)の開口部(13)を密栓する栓体(2)とを備え,栓体(2)を取外 せば 前記容器体 (1)をそのまま コップ として使用 し得る構成 のボトル であって ,前記開口部(13)を容器体(1)の胴部内径とほぼ同径の広口とし,前記内壁(12)の開口部形成部分に,栓体(2)を螺合する雌ネジ(14)と栓体(2)の栓パッキン(23)の栓座となる環状の膨出部(15)とをそれぞれ一体形成し,前記栓体(2)は,前記雌ネジ (14 )と螺合する 雄ネジ (25 )を形成 した 栓本体 (21 )と該栓体本体 (21 )の上部 を被覆する カバー 体(22 )を有して ,且つ,前記容器体(1)内の空所(16)と外気とを連通させるとともに液体注出通路兼用 とされしかもその 上部開口 が前記 カバー体(22 )の上面位置 に開口 する 空気通路(24)と,該空気通路(24)の 下部開口 を開閉する弁体(3)と,該弁体(3)を外部から開閉 弁操作して開弁時 には前記容器内空所 (16 )を外気と連通させる一方閉弁時 には 前記容器内空所 (16)と外気 との 連通 を遮断 するほか 前記空気通路 (24 )の上部開口 を閉塞 する 弁体操作手段(4)とを設け,前記容器体(1)の上縁外周部に,口当て部となる小径段差部(17)を形成したことを特徴とするボトル。
【請求項2】外壁(11)と内壁(12)間を真空とした金属製真空二重壁構造を有する容器体(1)と前記内壁(12)の開口部(13)を密栓する栓体(2)とを備え,前記開口部(13)を容器体(1)の胴部内径とほぼ同径の広口とし,前記内壁(12)の開口部形成部分に,栓体(2)を螺合する雌ネジ(14)と栓体(2)の栓パッキン(23)の栓座となる環状の膨出部(15)とをそれぞれ一体形成し,前記栓体(2)に前記容器体(1)内の空所(16)と外気とを連通させる空気通路(24)と,該空気通路(24)を開閉する弁体(3)とを設け,該弁体(3)として,前記空所(16)の圧力が所定レベル以下の負圧になったときにのみ開弁するような圧力作動弁を採用し,前記容器体(1)の上縁外周部に,口当て部となる小径段差部(17)を形成したボトルであって,前記空気通路(24)を,ストロー(6)を栓体(2)の上方から容器体(1)内まで挿入させ得るような上下方向の直線上に形成し,前記弁体(3)として,前記ストロー(6)を挿入した際に該ストロー(6)で押圧されて下方に退避するフラップ状の弁を採用した,ことを特徴とするボトル。(注,上記(1)の【請求項4】〔上記特許異議の申立ての対象外〕と同一の請求項であると認める。) 【請求項3】栓体(2)に,口当て部となる小径段差部(17)の外側を被覆するカバー部(22a)を設けた,ことを特徴とする請求項1〜2のうちのいずれか1つに記載のボトル。
【請求項4】容器体(1)の外壁(11)の上部外面に肩リング(10)を無理嵌めによって取付け,該肩リング(10)に口当て部となる小径段差部(17)を形成した,ことを特徴とする請求項1〜3のうちのいずれか1つに記載のボトル。
3 本件決定の理由 本件決定は,訂正明細書の請求項1に係る発明は,実願平3-1323号(実開平5-1435号)のCD-ROM(本訴甲4,審判甲1,以下「刊行物1」という。)及び実願平3-64434号(実開平5-18438号)のCD-ROM(本訴甲5,審判甲2,以下「刊行物2」という。)に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり,同請求項2に係る発明は,刊行物1及び実公昭54-5383号公報(本訴甲6,審判甲3,以下「刊行物3」という。)に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり,同請求項4に係る発明は,刊行物1,2に記載された発明,あるいは刊行物1,3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり,同請求項5に係る発明は刊行物1,2及び実願平5-24293号(実開平6-81963号)のCD-ROM(本訴甲7,審判甲4,以下「刊行物4」という。)に記載された発明,あるいは刊行物1〜4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから,訂正明細書の請求項3に係る発明について検討するまでもなく,本件訂正請求は,同法120条の4第3項で準用する同法126条4項の規定に適合しないから認められないとし,本件発明の要旨を訂正前明細書の特許請求の範囲の記載(上記2の(1))のとおり認定した上,本件発明1,2は,刊行物1,2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり,本件発明3は,刊行物1,3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり,本件発明5は,刊行物1〜3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり,本件発明6は,刊行物1〜4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本件発明1〜3,5,6は,同法29条2項の規定により特許を受けることができないものであり,その特許は,拒絶査定をしなければならない特許出願に対しされたものであり,特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則14条の規定に基づく特許法等の一部を改正する法律の一部の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)4条1項,2項の規定により,取り消されるべきものであるとした。
当事者の主張
1 原告 本件決定が,本件発明の要旨を訂正前明細書の特許請求の範囲の記載(上記第2の2(1))のとおり認定した点は,本件訂正審決の確定により特許請求の範囲の記載が上記第2の2(3)のとおり訂正されたため,誤りに帰したことになる。そして,この瑕疵は本件決定の結論に影響を及ぼすものであるから,本件決定は違法として取り消されるべきである。
2 被告 本件訂正審決の確定により特許請求の範囲の記載が上記のとおり訂正されたことは認める。
当裁判所の判断
本件訂正審決の確定により,本件特許に係る明細書の特許請求の範囲の記載が上記第2の2(3)のとおり訂正されたことは当事者間に争いがなく,この訂正によって,特許請求の範囲減縮されたことは明らかである。
そうすると,本件決定が,本件発明の要旨を,訂正前明細書の特許請求の範囲の記載(上記第2の2(1))のとおり認定したことは,結果的に誤りであったことに帰し,これが本件決定の結論に影響を及ぼすことは明らかであるから,本件決定は,瑕疵があるものとして取消しを免れない。
よって,原告の請求は理由があるから認容することとし,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 篠原勝美
裁判官 岡本岳
裁判官 早田尚貴