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審判番号(事件番号) データベース 権利
平成19ワ31700職務発明対価請求事件 判例 特許
平成19ネ10008職務発明対価支払等請求控訴事件 判例 特許
平成19ワ12522職務発明の対価請求事件 判例 特許
平成19ワ12655特許を受ける権利の確認等請求事件 判例 特許
関連ワード 特許を受ける権利 /  協議 /  有用性 /  秘密保持義務 /  共同研究 /  先願主義 /  出願公開 /  共同出願 /  共有 /  薬事法 /  存続期間 /  優先日 /  製造承認 /  対象製品 /  実施 /  実施料 /  同意 /  実施権 /  実施許諾(実施の許諾) /  設定登録 /  移転登録 /  対価 /  請求の範囲 /  拡張 /  変更 / 
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事件 平成 14年 (ワ) 4893号 特許権持分移転登録手続等請求事件
原告A
訴訟代理人弁護士 山本忠雄
同 中橋紅美
被告 旭化成株式会社
訴訟代理人弁護士 三宅 雄一郎
裁判所 大阪地方裁判所
判決言渡日 2003/09/09
権利種別 特許権
訴訟類型 民事訴訟
主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
請求
1 被告は、原告に対し、別紙特許権目録2記載の特許権について持分2分の1の特許権持分移転登録手続をせよ。
2 別紙特許権目録2記載の特許権について、別紙被告製品目録2の医薬製剤の販売に関し、原告被告間の昭和54年4月1日付け契約の補足として締結された昭和61年12月1日付け契約に基づく、被告の原告に対する実施対価支払義務が同特許権の存続期間満了日まで存続することを確認する。
事案の概要
本件は、原告が、被告との間で締結した昭和54年4月1日付け研究委託契約及びこれを補足する昭和61年12月1日付け対価契約に基づき、被告に対し、@別紙特許権目録1及び2の発明は、いずれも同研究委託契約の成果であるにもかかわらず、同目録2記載の特許権につき被告のみが特許権者として登録されているとして、その持分2分の1の特許権持分移転登録手続を、A上記契約に基づき、別紙特許権目録2記載の特許権について、別紙被告製品目録2の医薬製剤の販売に関し、被告の原告に対する実施対価支払義務が同特許権の存続期間満了日まで存続するにもかかわらず、被告がこれを争っているとして、同支払義務の存続確認をそれぞれ請求した事案である。
(基本的事実) 1(1) 原告は、薬理学の研究者であり、昭和53年1月1日にB大学医学部教授(薬理学)に就任し、昭和62年8月1日にC大学医学部教授(薬理学)に移籍した後、平成10年8月25日、同大学医学部教授(薬理学)を辞任した(甲11)。
(2) 被告(平成13年1月1日変更前の商号「旭化成工業株式会社」)は、各種化学製品を製造・販売し、医薬品事業も行っている株式会社である。
2(1) 原告は、昭和54年4月1日付けで、被告との間で、循環器系を中心とした新規医薬品の開発を目的として、被告を委託者、原告を受託者とする次の内容を含む研究委託契約を締結した(甲1、以下「原契約」という。)。
委託事項 @ 新規化合物の創製に関する指導 A 前号に基づき被告が製造した新規化合物についての薬理学的研究並びに医薬品としての開発、商業化評価の指導 (1条1項) 委託期間 原契約締結の日から2年間(2条) 委託費 合計1000万円(1年度当たり500万円、3条) 成果の取扱い 委託期間中及び委託期間終了後1年以内に取得される本件研究に関する発明及び考案について特許及び実用新案の登録を受ける権利(原契約にいう「本件特許」)は、すべて原告と被告の共有とする(5条1項)。
医薬品開発 本件研究において特定薬効及び毒性を総合評価した結果、医薬品として有望と原告及び被告が認める化合物が出現した場合、当該品の具体的な開発の取扱い、指導料等については、原告と被告が協議し、別途契約を締結する(6条)。
商業化の権利 本件特許を含む本件研究成果及び医薬品開発の結果を商業化する権利(薬事法に基づく許認可の取得及び製造販売を含む一切の用途)はすべて被告に帰属する(7条1項)。被告が本件特許の有効期間内においてこれを実施する場合、被告は、原告に対し、別途協議の上、定める金額を支払う(7条2項)。
(2) 原契約の契約延長につき、原告被告間で、次のとおり、覚書が交わされた(乙4の1〜5、甲2)。
昭和56年4月1日付け(延長期間1年、委託費500万円) 昭和57年4月1日付け(延長期間1年、委託費800万円) 昭和58年4月1日付け(延長期間1年、委託費800万円) 昭和59年4月2日付け(延長期間1年、委託費800万円) 昭和60年4月1日付け(延長期間1年、委託費800万円) 昭和61年4月1日付け(延長期間1年、委託費800万円) 3 原告は、昭和61年12月1日付けで、被告との間で、原契約7条2項対価支払について、次の内容の対価契約を締結した(甲3(ただし、契印のない別表1を除く。)、乙1、以下「対価契約」という。) (1) 定義 「本件特許権」 原契約に基づき、原告被告共同名義で出願した日本国特許出願が特許権として設定登録された場合の当該特許権及び同日本国特許出願に対応する外国特許出願が特許権として設定登録された場合の当該特許権をいう。
対象製品」 本件特許権のいずれかの特許請求の範囲に含まれる医薬製剤をいう(1条)。
(2) 対価 ア 被告が本件特許権を実施した場合又は第三者に実施許諾した場合、原契約7条2項に基づき、当該本件特許権の存続する期間中、原告に、次の実施料を支払う(3条1項)。
@ 日本国内で被告又はその実施権者が販売した対象製品については、その正味売上高の2% A 海外で被告の実施権者が販売した対象製品については、その正味売上高の1% イ 被告又は被告の日本国内における実施権者が、海外の第三者に対象製品又はその原体を輸出し、かかる第三者が海外で対象製品を販売した場合、
被告は、原告に対し、次の実施料を支払う(3条2項)。
@ 当該対象製品販売国に本件特許権が存在するときは、当該国で販売した対象製品の正味売上高についてのみその1% A 当該国に本件特許権が存在しないときは、被告の当該第三者への輸出価格(日本港船積価格)についてのみ1% (3) 期間 対価契約締結の日から本件特許権がすべて存続しなくなるまで(5条)。
4(1) 別紙特許権目録1及び2記載の各特許権(以下、それぞれ「本件特許権1」、「本件特許権2」という。)について、各登録名義人欄記載の者が特許権者として登録がされている。
(2) 被告の製造する別紙被告製品目録記載の各医薬品(以下、それぞれ商品名のとおり、「エリル注」、「エリル注S」という。)について、エリル注は平成7年9月18日に発売され、エリル注Sも平成11年5月14日に薬価収載され、その後、発売されている。エリル注(一般名・塩酸ファスジル)及びエリル注S(一般名・塩酸ファスジル水和物)は、いずれも、くも膜下出血術後の脳血管れん縮及びこれに伴う脳虚血症状の改善という効能を有する蛋白リン酸化酵素阻害剤である(甲5の1、2) エリル注は、本件特許権1の発明を実施するものであり、エリル注Sは、
本件特許権2の発明のみならず、本件特許権1の発明も実施するものである。
(3) 被告は、原契約及びこれを補足する対価契約に基づき、本件特許権2について、エリル注Sの販売に関し、被告の原告に対する実施対価支払義務が存在することを争っている。
(争点)― 原契約の終了時期 (原告の主張) 1 次の事実によれば、原契約が終了したのは、平成8年3月31日である。
(1) 原契約の更新について、原告被告間で書面が取り交わされたのは昭和61年4月1日付け契約延長に関する覚書(甲2)が最後である。しかし、契約の締結に関しては、原告は全くの素人であり、被告側も研究者レベルの者が担当していたため、原契約の延長について深く議論することなどなかった。実際上も、契約延長に関する覚書の作成は、期間満了となるたびごとに厳格に行われていたわけではない。特に昭和61年4月1日付け覚書(甲2)が実際に作成されたのは昭和61年夏ころのことであり、かつ、その際、原告は以前の原契約延長に関する覚書にまとめて押印した。また、本来、原告は契約書の作成には印鑑登録をした実印を用いるにもかかわらず、昭和60年4月1日付け覚書(乙4の5)の原告名下の押印は実印によるものではないから、通常の状況で作成されたものではない。
(2) 新薬を開発する企業において、その薬効や副作用を医師や患者に示すことも重要な義務の1つであり、新薬を開発した企業は、新薬の薬効等について医師に十分な情報を提供する必要がある(医師も、新薬の薬効等を十分に理解しない限り、これを採用することはできない。)から、臨床研究等の段階においても、基礎研究、すなわち、薬物の生体における研究の必要性はむしろ増大する。実際、原告は、被告の臨床研究等の段階での研究会に頻繁に呼び出され、新薬の薬効等につき教示してきた。原告は、原契約による発明物であるエリル(塩酸ファスジル)の臨床試験チームに対し、なぜ脳血管れん縮にエリルが治療効果を発揮するかという学問的根拠を明らかにし、臨床試験チームに理論的根拠を与える役割を果たしてきた。臨床研究等の段階においても、臨床医と薬理研究者とが共同で議論を重ね相互に補完して、初めて新薬の誕生に至るのであって、本件においても、原契約の目的として「新規化合物の創製」のみならず「医薬品としての開発」等までが明記されている。したがって、原契約の成果であるエリル注につき製造承認がなされた平成7年度まで、原契約が存続していたというべきである。
被告が対価契約を締結したのは、被告がMRIという当時では数億円もの医療機器をD病院に納入しようとして、他社と競合しており、原告が被告にD病院を紹介するのであれば、原告との間で対価契約を締結してもよいと考えたからにすぎない。現に、原告は、被告担当者にD病院理事長を紹介したことがある。原告側の弁護士の関与としては、被告作成の原契約書案と対価契約書案を交付されたときに、友人の弁護士に無料相談をしたことがある程度である。
(3) 原契約所定の被告の原告に対する研究委託費(奨学寄付金)の支払は、
エリル注の承認がされ薬価収載された平成7年度分まで続けられていた。原告が在籍していた当時の大学研究室では研究費が足りず、被告からの支払が貴重な財源であったから、原告としては、被告の支払が続いていることが原契約の継続の証左と考えていた。なお、研究委託費名目のものも、その実質は奨学寄付金(使途用途につき企業側が制限を加えることができず、大学側がその裁量で自由に使用できる性質の金員)であって、昭和62年度以降に被告から支払われた金員の性格が変更されたことはない。なお、奨学寄付金は、大学に納付され、大学の経理に係るものであって、原告がこれを私的に流用したことは一切ない。平成8年度の200万円は、原告の関与する学会への寄付を被告に依頼したところ、被告がこれに応じたものにすぎない。
(4) 被告の主張1(4)の昭和62年4月1日以降に原告が被告から日当又は指導料を受け取ったことは認める。しかし、それ以前においても、原告が出張したときや被告関係の講演を行ったときは、被告から5〜10万円程度の謝礼が必ず支払われていた。また、各地で開催された臨床試験の説明会に原告が出張した際も、
被告に費用を負担してもらったこともある。
(5) 被告の主張1(5)の秘密保持義務規定が原契約にあることは認めるが、
その余は否認する。原告による他社との共同研究は、被告との共同研究とは無関係であり、かつ、既に全世界の研究者に公表された事実に基づいて行われたものであるから、原告に秘密保持義務違反はない。
(6) 平成8年までは、従前と同様に、原告被告の共著論文が発表されている。当該論文の内容に原告の影響があり、これがなければ論文として成立しないと共著者が考えたからこそ、原告の名前が共著者として入ったものである。少なくともC大学医学部においては、著作に全く関与しなかった者の名前を共著者として列記することはあり得ないから、被告の主張1(6)は否認する。
2(1) したがって、本件特許権2(出願年月日平成8年6月10日)の発明も、原契約の委託期間終了(平成8年3月31日)後1年以内に取得される本件研究に関する発明であるから、原契約5条1項に基づき、原告と被告との共有とされるべきである。その実施品であるエリル注Sの販売に関しても、原契約7条2項及びこれを補足する対価契約に基づき、本件特許権2の存続期間満了日まで、被告の原告に対する対価支払義務が存続するというべきである。
(2) 仮に被告の主張する時期(昭和62年3月31日)に原契約が終了したとしても、エリル注Sは、エリル注とは1/2水和物であるという違いがあるのみで、
その製品情報概要の効能等の記載は全く同一であるから、本件特許権2は、本件特許権1と全く同一の化学物質で薬効も全く同じ物質特許であるというべきである。
したがって、本件特許権2の基礎となった発明も、原契約終了以前に原告の関与の下になされたというべきであるから、その特許を受ける権利は、原契約5条1項により、原告と被告との共有となる。
(被告の主張) 1 次の事実によれば、原契約が終了したのは、昭和62年3月31日である。
(1) 原契約は期間の定めのある契約であり、自動延長の規定もない。そこで、原告と被告は、期間延長の必要性を認めたときは、上記基本的事実2(2)のとおり、原契約延長に関する格別の合意文書を1年ごとに交わしてきた。しかし、被告は、昭和62年4月1日以降はその必要がないものと考え、原契約を延長しないこととし、その合意文書も作成しなかった。原告は、被告以外の多数の製薬会社と研究委託契約を締結しており、契約書を作成せずに重大な合意をすることはなかったし、被告との契約内容について十分に理解していた。
(2) 昭和62年4月1日以降は原契約延長の必要がないと被告が考えたのは、次の事情による。すなわち、原契約は、原告の専門分野とするいわゆる基礎研究に関するものであるところ、昭和61年には、原契約に基づく基礎研究がすべて終了し、臨床試験段階へ進むことが確実となり、臨床を専門外とする原告からの助言等は必要でなくなっていた。そして、この対象物質が医薬品として有望であると考えられたため、原告と被告は、基礎研究が終了し、次の段階である医薬品として商品化された場合の利益配分について、原契約7条2項に基づき、対価契約を締結することとしたのである。対価契約の締結時には、原告側の弁護士も立ち会っていた。
(3) 昭和62年4月1日以降は、原告に研究委託費を支払ったことはない。
被告が昭和62年4月1日以降、(原告に対してではなく)C大学に対して一定の金額の支払をしていた事実はあるが、これは研究委託費ではなく、奨学寄付金である。被告が奨学寄付金を支払ったのも次の理由によるにすぎない。すなわち、被告は、昭和61年秋ころから、基礎研究が終了した以上、次年度以降は原契約を延長しない旨を原告に申し入れており、原告も原契約の終了自体には異論がなかった。
ところが、原告は、原契約6条に基づく「指導料」につき別途契約を締結して、これまでと同額以上の支払を継続せよと被告に要求してきた。これを被告が拒絶するや、原告は、大学研究者という優越的地位を利用して、今後の被告の研究の進行を妨害する旨の発言をするなどして、金銭支払の継続を迫り続けた。そこで、被告は、やむを得ず、これまで支払ったことのないC大学薬理学講座宛に800万円の奨学寄付金の支払を開始することとした。その後も、原告から同額の支払の継続を強く要求されたため、被告はやむなくこれを支払い続けてきた。被告としては、このような対価性のない支払をできる限り早く中止したいと考えていたところ、平成7年9月にエリル注を販売するに至り、対価契約に基づき、原告への実施料の支払が開始されることとなった。そこで、被告は、平成8年度以降の奨学寄付金の支払の中止を原告に提案したが、原告から支払の継続を強く要求されたため、やむなく200万円に限ってこれに応じた。平成9年度以降については、奨学寄付金の支払は一切ない。
(4) 昭和62年4月1日以降に原告が臨床試験に関する研究会に参加した場合、被告は、日当又は指導料の名目で5万5555円又は11万1111円(源泉徴収分10%を考慮して定められた金額であるから、その実質は報酬である。)を原告に支払っている。原契約の存続期間中は、このような金員の授受は、定額の研究委託費の中に含まれると考えられており、全くなかったことであるから、原告も原契約の終了を認識していたはずである。
(5) 原契約には、その委託期間中及び委託期間終了後3年間は、原告及び被告は、相手方の同意がない限り、本件研究の事実及び実施により知り得た一切の秘密知識を第三者に漏洩しない(8条1項)旨が定められているところ、平成10年9月8日付け朝日新聞(乙6の1)によれば、「(平成3年に)E社の研究者は原告から新薬の共同研究を持ちかけられた。当時、原告が大手企業と開発した『脳血管れん縮』治療薬が臨床試験を終え、注目を集めていた。原告は、その新薬の分子構造の一部を変えた『類似薬』の開発を持ちかけた。」とあり、上記記事中の『脳血管れん縮』治療薬とはエリル注のことである。したがって、原告が本件研究の秘密情報を他社に開示したということは、原告の認識としても、原契約が既に終了し、
原契約8条1項の秘密保持期間も経過したということにほかならない。他方、本件研究に関する合計31件の特許出願のうち、原契約終了(昭和62年3月31日)後1年以内のものは原告と被告との共同出願(17件)とされているが、原契約終了1年経過後は、本件特許権2以外のものについても、すべて被告の単独出願(14件)とされているから、被告も昭和62年3月31日に原契約が終了したと認識していた。
(6) 原告の主張1(6)の原告の名前のある共著論文の発表の事実は認めるが、共著とした経緯は次のとおりである。すなわち、医学論文については、当該研究や著作に全く関与しなかった者の名前を共著者の1人として列記掲載する傾向がある。本件の原告についても、非礼の回避、しっぺ返しの回避、寄贈(祝儀)著者等の理由から、共著者とされたにすぎず、論文に共著者として名前を掲載されることは、必ずしもその論文への関与の実態を示すものではない。
2(1) したがって、本件特許権2(出願年月日平成8年6月10日)の発明は、原契約が終了した(昭和62年3月31日)1年経過後に取得されたものであるから、原告との共有とされるはずはない。また、この点について、被告の原告に対する対価支払義務も生じるはずはない。
(2) 本件特許権2の発明を含む水和物が発明されたのは、平成7年6月及び平成8年3月のことであるから、その特許を受ける権利が原告との共有になるはずがない。原告の主張2(2)について反論すれば、エリル注とエリル注Sとは、製薬原体の規格が異なっているものの、医薬品製剤としては同一性の認められるものであるから、製品情報概要における効能等の記載が一致することは当然である。しかし、本件特許権2は効能等に関する特許ではなく、全く別の観点(1/2水和物とすることによる温度安定性と打錠性)から与えられた特許であるから、その意味において、エリル注とエリル注Sとは同一の物ではない。
争点(原契約の終了時期)に対する当裁判所の判断
1(1) 原契約が、新規化合物の創製それ自体にとどまらず、新規医薬品としての開発に至るまでを広くその射程に入れるものであったことは、原契約の契約条項に照らし、明らかである。そして、通常、医薬品の開発には、研究開始から10年ないし15年の年月を要することも認められる(甲6、原告本人〔速記録2頁〕)から、医薬品の研究開発が頓挫しない限り、原契約は、当初の委託期間(2年)の定めにかかわらず、ある程度の期間延長を予定していたものと推認される。
(2) しかし、医薬品の研究開発には大別して@探索・基礎研究、A前臨床試験、B臨床試験、C申請・承認手続の各段階がある(甲6)ところ、その経歴(甲11添付の履歴書参照)に照らし、薬理学を専門とする原告(甲11)の指導が果たす役割というのも、医薬品の研究開発が進行するにつれて、順次低減するものと考えられる。このことは、医薬品として有望な新規化合物が出現した場合に、原契約の当初予定した利益状況が変動することから、原契約6条が、原告被告間の協議により別個の契約を改めて締結することを予定していることからも窺われる。同様に、ひとたび医薬品の開発に至った場合、医薬品事業を営む被告において莫大な利益を収めるにもかかわらず、原告がこの利益の分配に与ることなく、せいぜい所定の研究委託費の支払を受けるにとどまるとすることは公平を欠くことになり、やはり原契約の当初予定した利益状況が変動することから、原契約7条2項も、被告が原契約の研究に関する発明等を実施する場合に、原告が支払を受けるべき金額につき、原告被告間の協議により別個の契約を締結することを予定している。
(3) もとより、原告被告間の協議により別途の契約締結を予定する事態が発生した場合であっても、原契約の契約条項上、直ちに原契約を終了させる旨の記載が全く見当たらないことに照らすと、原契約は、本件のように原告被告間の協議による新たな契約(対価契約)が別途締結された場合、原契約を延長する余地を一切否定するものとはいえない。そこで、以下、この観点から、昭和62年4月1日以降も原契約の延長がされたか否かを検討する。
2 上記基本的事実に証拠(乙9のほか後掲各書証、証人F、原告本人(ただし、後記信用しない部分を除く。))及び弁論の全趣旨を総合すれば、次の事実が認められる。
(1) 原契約は、@新規化合物の創製に関する指導と、A前号に基づき被告が製造した新規化合物についての薬理学的研究並びに医薬品としての開発、商業化評価の指導を原告への委託事項とするものであったが、その委託期間は2年間と規定されており、同契約を自動更新する旨の契約条項は設けられていなかった(甲1)。
そこで、被告は、原契約の委託期間が終了するころに、原告との間で、原契約を更新する趣旨で、契約延長に関する覚書を作成してきた(乙4の1〜5、甲2)。具体的には、被告は、委託期間の満了する毎年3月ころになって、原告との間で、原契約の延長に関する交渉を開始していた。これに対し、原告は、毎年のように、研究委託費の増額(1000万円)と研究委託費の支払先変更(原告の関与する会社)を要請していた。被告は、研究委託費の増額要求については、昭和57年度の原契約延長に際し、800万円への増額に応じた(乙4の2)ものの、原告の希望する支払先の変更は違法であるから応じられない旨を原告に説明するなどして、原告の説得に時間を要していた。
そのため、両者が直ちに合意に至ることはなく、原告被告間で原契約延長の合意が成立するのは毎年4月ないし6月にまでずれ込むことが多く、その各覚書の作成日の記載も、実際に合意が成立した日ではなく、その始期を遡らせたものであった。もっとも、各覚書が作成された昭和61年度分までのものに関する限り、
被告から原告に原契約の延長をしない旨を申し入れることは一切なかった。
(以上の認定に対し、原告は、契約の素人であり、昭和61年4月1日付け覚書(甲2)の作成に際し、以前の原契約延長に関する覚書にまとめて押印した旨を主張し、これに沿う原告本人の供述もある。しかし、原告は、被告以外の複数の製薬会社との間で本件と同様の契約を締結する(甲9、乙7の8)など、この種の契約締結に関する限り、相応の取引経験を有する者ということができる。特に、原告も自認する弁護士に対する相談の点や研究委託費の増額及び研究委託費の支払先変更の要求の点は、契約条件に関する原告の関心の高さが窺われるところであって、
原告が契約条項の記載に何ら注意を払っていなかったとは考えられない。他方、被告にとっても、原契約の延長が相応の研究委託費の負担を意味し、特に昭和57年度については原契約の内容が被告の経済的負担を加重する方向に変更されているのであるから、会社組織としての被告がこのような契約内容の重大な変更を書面を取り交わすことなく、漫然と決定していたとも考え難い。個々の覚書(乙4の1〜5、
甲2)の体裁を比較しても、各契約条項の記載は微妙に異なり、特にその作成日の記載を年度初めとはせずに「4月2日」とするもの(乙4の4)や、原告名下の押印が異なるものも存する(乙4の5)など、同一機会に一括して作成されたものとはいえず、むしろ各年度ごとに逐一作成されたものと考えるのが自然である。以上のような点に照らせば、原告本人の上記供述は信用することができず、この点に関する原告の主張も採用することができない。) (2) 本件特許権1の発明は、研究委託事項の1つであった新規化合物に関する発明であり、被告は、昭和60年4月2日、原告との共同で特許出願した(甲4の1)。また、本件特許権1の実施品に相当するエリル注の前臨床試験も、昭和60年半ばに開始されることとなった(甲6)。昭和61年10月9日には、本件特許権1の出願公開がされるに至った(甲4の1)。
このような段階に至り、本件特許権1の発明の実施品(エリル注)の製造販売が開始される可能性が高くなってきたため、被告は、その際の原告に対する対価の支払を新たに取り決めておく必要があるものと考え、原契約7条2項に基づき、原告との交渉を開始した。被告としては、原告の貢献度を考慮して、その実施料率を1%未満とすることを提案したが、原告が、被告の上層部に対して2%の実施料率を直接要求するなどした結果、原告の要求が最終的に受け入れることとなった。原告と被告は、昭和61年の年末までに、対価契約を締結するに至った(甲3(ただし、契印のない別表1を除く。)、乙1)。
他方、被告は、対価契約を締結する段階に至った以上、原告との原契約をもはや維持しておく必要はないものと考えて、原告に対し、昭和62年3月31日をもって原契約の延長をしない旨を伝えた。これに対し、原告は、原契約に基づく800万円の委託費の支払がなくなることに強い抵抗を示し、例えば、原契約6条に基づく指導料等の形で、これまでと同額の金員の支払を続けるように要求した。
途中、原告がC大学医学部教授(薬理学)に移籍したこともあって、この交渉は長引いていた。
被告は、研究指導料又は臨床指導料等の名目により200万円ないし300万円程度の金銭の支払を短期間に限って支払うことも提案したが、原告に受け入れられなかった。そこで、被告は、昭和62年10月27日付け書面(乙10)をもって、エリル注の臨床段階における原告の関与についての指導料及びエリル注とは別の全く新たな化合物の開発研究の委託という名目で、合計500万円程度を支払う譲歩案を原告に提案するに至った。しかし、原告は、支払の名目については特に固執する態度を示さなかったものの、自己の要求金額(これまでと同額の800万円)を下回ることには絶対に応じない意思を明らかにした上、更なる増額をも要求し、被告が原告の要求を拒否する場合は弁護士による交渉を開始することも辞さない強硬な姿勢を明らかにした。しかも、原告は、自己の要求を記載した昭和62年11月14日付け書面(乙11)を、被告担当者ではなく、被告の代表取締役副社長(乙1の被告代表者名参照)に宛てて送付していた。
原告に譲歩案を拒絶され、上層部への直談判まで行われた被告としては、
折しもエリル注の臨床試験がC大学の関係者を中心として開始されたことであり、
同大学教授である原告との間で紛争が生ずることは回避したいと考え、また、原告の要求の主眼が、新規化合物の共同研究の継続よりも、専ら金銭面にあると考えたことから、結局、原契約延長に関する覚書を取り交わすことも、譲歩案として示した新たな研究委託契約を締結することもしないまま、C大学薬理学研究室への研究助成としての奨学寄付金という名目で、従前と同額の800万円を支払うことを決定した。
(以上の認定に対し、原告は、被告による対価契約の締結が高額の医療機器の購入斡旋の便宜を図ったことに基づくかのように主張するが、本件全証拠によっても、これを認めるに足りない。また、原契約の延長をしない旨の申入れはなかった旨の原告本人の供述もあるが、証人Fの証言や当時の交渉状況を示す書面(乙10、11)の内容に照らし、信用することができない。) (3) 被告は、昭和62年度以降、上記(2)の奨学寄付金として毎年800万円の支払を続けてきた。しかし、エリル注について、平成7年6月30日に製造承認がされ、同年9月18日に発売が開始されるに至り(甲5の1)、対価契約に基づく被告の原告に対する実施料の支払が開始されることとなったため、被告は、この奨学寄付金の支払も平成7年度をもって中止しようと考え、その旨を原告に申し入れた。ところが、原告からは、この段階に至っても、奨学寄付金の支払の継続を要求してきたため、被告は、大幅に減額した金員(200万円)を平成8年度に限って支払うこととした。平成9年度以降については、上記のような奨学寄付金は一切支払われていない。
本件特許権1について、対価契約に基づき、被告から原告に支払われた実施料は次のとおりであり、合計1億4606万円に達していた。被告としては、エリル注Sについても本件特許権1に係る発明の実施品に当たる関係にあることから、本件特許権1の存続期間満了日までは、今後も、原告への当該実施料の支払を続ける予定である。
平成 8年度 1856万円 平成 9年度 2254万円 平成10年度 2301万円 平成11年度 2319万円 平成12年度 2263万円 平成13年度 2359万円 平成14年度 1254万円 (4) もっとも、原告も、原契約の契約延長に関する覚書が交わされなくなった後は何もしなかったというわけではなく、臨床試験段階に入るに際し、C大学脳外科のほか他大学の教授を被告に紹介したり(甲10、乙11)、エリル注のマーケティング活動の一環としての講演を引き受け、その発売記念講演記録集に同医薬品に関する講演録の掲載(甲10)も認めたり、被告作成の医師向けプロモーションビデオにも出演する(甲15)など、一定の協力を続けてはいた。また、平成8年ころまでは、被告研究者のほか原告を共著者の1人として掲げた論文が発表されたこともあった(甲17)。
(5) 他方、本件特許権2の発明が特許出願されるに至ったのは、平成8年6月10日(ただし、優先日は平成7年7月3日)のことであった。平成9年3月18日に、その出願公開がされた後、平成11年3月19日には登録されるに至った(甲7の1、2)。他方、その実施品であるエリル注Sが医薬品の製造承認を受けたのは、平成11年3月15日(甲5の2、乙3)のことであり、薬価収載されるに至ったのも同年5月14日のことであった(甲5の2)。
3(1) 上記2認定の事実によれば、原告と被告は、従前、原契約延長に関する覚書を取り交わしておきながら、昭和62年4月1日以降は同様の覚書を作成することは一切なかったのであり、被告としては、原契約の延長をすることなくこれを期間満了により終了させようと意図していたものである。確かに、原告からの強い要求を受け、被告が、従前と同額の金員(800万円)を、昭和62年4月1日以降も原告に支払ってきた事実は認められるが、原告の真に意図するところは金銭的な要求であって、原契約の存続それ自体には深い関心がなかったものといわざるを得ない。被告も、支払金額の増額等を何度も求める原告の交渉態度や、新たな研究委託契約の締結という研究者にとって相応の価値を有するとも思われる譲歩案を専ら金銭的な理由により拒否された交渉経緯等から、原告の真意を知るに至り、原告の他の研究者に対する影響力を考慮して、無用の紛争を回避する趣旨から、奨学寄付金という別個の名目により、原告の金銭支払の要求に応じたものにすぎないと推認される。したがって、このように従来の研究委託費とは異なる趣旨の金員が被告から原告に支払われ続けたからといって、黙示にせよ原契約の延長があったと推認することはできない。
(2) もとより、昭和62年4月1日以降において、エリル注の開発につき原告の貢献が皆無であるといえないことは上記2で判示したとおりであるが、その貢献内容も、証拠上認定し得るのは、臨床を専門とする大学関係者の紹介やエリル注に関する対外的な説明があったにとどまるのであるから、既に対価契約を締結し(原告への実施料の支払が現実的なものとして将来予定されたことになる。)、かつ、
奨学寄付金という名目にせよ、原告に決して少なくない金銭的譲歩までした被告に、なお原契約を存続させようとする合理的理由も窺われない以上、この程度の原告の寄与をもって原契約が延長されたと推認するには足りない。
(3) なお、原告は、原告と被告研究者との共著論文の存在を原契約延長の根拠の1つとして主張し、その前提事実自体は認められる。しかし、各論文の記載内容が本件に関連するものか否かは措くとしても、原告の名は多数の著者の中の1人として掲げられているにすぎないものも散見される(甲17)のであって、当該論文の発表時における原告の関与が大きなものであったと直ちにいうことはできない。
むしろ昭和62年3月31日まで原契約が存続していた限度では当事者間に争いがなく、その間の原告の功績が大きなものであったことは否定できないところ、エリル注の発売時期(平成7年9月18日)と前後して、臨床の観点からだけではなく薬理学の観点から種々の論文が発表されるに際し、過去に大きな功績のあった原告の名が挙げられたとしても、格別不自然ということはできない。したがって、上記の共著論文の存在をもって、原告の主張する平成7年度(平成8年3月31日)まで原契約が存続していたと推認することもできない。他に原告が縷々主張する事実は、原契約が延長されることなく昭和62年3月31日で終了したことと相容れないというほどのものではないから、仮にそれらの事実が認められるとしても、原契約が延長されたと推認するには足りない。
(4) したがって、原契約は、昭和61年4月1日付け原契約延長に関する覚書(甲2)の作成を最後に延長されることはなかったというべきであるから、同覚書所定の研究委託期間の終期である昭和62年3月31日の経過をもって、期間満了により終了したと解するのが相当である。
4(1) 原告は、原契約が昭和62年3月31日の経過により終了したとしても、
本件特許権2の発明の実施品でもあるエリル注Sは、1/2水和物という相違点を除き、本件特許権1の発明の実施品であるエリル注と全く同一であるから、本件特許権2の基礎となった発明も、本件特許権1と同様に、原契約終了以前に原告の関与の下になされたというべきであって、その特許を受ける権利は、原契約5条1項により、原告と被告との共有となる旨を主張する。
確かに、エリル注及びエリル注Sの各製品情報概要(甲5の1、2)を対比すれば、組成・性状が相違することを別とすれば、その効能・効果、用法・用量、
使用上の注意、取扱い上の注意の点は、ほぼ同一であることが認められる。
(2) しかし、本件特許権1に係る発明(甲4の1)は、「血管拡張剤および高血圧症予防治療剤に関するもの」であり(同特許公報1欄20行〜21行)、「本発明で提供される一般式(T)で示される化合物およびその薬学的に許容される酸付加塩は、強力な血管平滑筋弛緩作用、血流量増加作用、血圧降下作用を示し、血管拡張剤および高血圧症予防治療剤として有用な物質である」(同7欄43行〜8欄3行)こと、「従来の技術(中略)に比べ、薬理効果は強く、一方、毒性は弱く、本発明化合物が循環器官用薬として有用性の高い化合物である」(同8欄37行〜40行)ことが認められて特許査定を受けたものである。
これに対し、本件特許権2(甲7の1)に係る発明は、「安定性に優れた性質を有し、かつ製造において簡便に得られる1-(5-イソキノリンスルホニル)ホモピペラジン〔1-(5-isoquinolinesulfonyl)homopiperazine〕塩酸塩の新規な1/2水和物に関する」ものである(同特許公報1欄11行〜2欄1行)。従来技術の1つとして本件特許権1の実施品であるエリル注があることを前提とした上で(同2欄3行〜15行)、「塩酸ファスジルを錠剤化するに当って良好なものとして、新規な塩酸ファスジル・3水和物を見い出し(特願平7-163341号明細書)」(同3欄31行〜34行)たものの、「塩酸ファスジル3水和物を保存する場合、40℃以下に温度管理することが必要となり、現実的には非常に難しく、保存及び製造上の問題があり、安定性の良好なものが求められていた」(同4欄4行〜7行)ことから、この課題を解決するための手段として、その特許請求の範囲記載の構成を備えた塩酸ファスジルの1/2水和物を見い出したことによって完成された発明である(同4欄9行〜36行)。つまり、本件特許権2の発明の「塩酸ファスジル1/2水和物は、塩酸ファスジル3水和物に比較して、温度に対して安定性も良く、保存及び製造上問題の無い結晶形」(同9欄28行〜30行)である点で独自の効果を奏し、特許性が肯定されて特許査定を受けたものと認められ、本件特許権1と同様の薬効の点に特許性があったわけではない。
そして、本件特許権2の従来技術の1つに位置づけられた塩酸ファスジル・3水和物(特願平7-163341号明細書)は、この点に関する被告の主張も斟酌すれば、平成7年6月ころに特許出願されたものと認められ、先願主義の下では、一般に特許出願に近接した時点に発明されたものと推認される(本件において、特許出願をことさら遅らせる特段の事情は窺われないから、本件特許権1の発明と同時期に発明された旨の原告本人の供述や陳述書(甲11)は信用することができない。)ことも考えると、本件特許権2の発明(その優先日は平成7年7月3日である。甲7の1)は、その特許出願手続に要する期間を考慮しても、平成7年ころに発明されたと推認するのが相当である。
(3) したがって、本件特許権2の発明は、原契約が終了し1年が経過した後に発明されたものであるから、原契約5条1項によっても、原告がその特許を受ける権利共有することはないというべきである。また、原契約7条2項は、同5条1項の適用により原告と被告との共有とされるべき特許権についての規定であり、これを受けて締結された対価契約も同じ趣旨に出たものであるから、本件特許権2について、エリル注Sの販売に関し、原契約や対価契約に基づき、被告の原告に対する対価支払義務が発生することもないというべきである。
結論
以上によれば、原告の請求は、いずれも理由がない。
追加
特許権目録1特許番号第1795364号発明の名称血管拡張剤出願年月日昭和60年4月2日登録年月日平成5年10月28日登録名義人原告、被告2特許番号第2899953号発明の名称1-(5-イソキノリンスルホニル)ホモピペラジン塩酸塩1/2水和物出願年月日平成8年6月10日登録年月日平成11年3月19日登録名義人被告被告製品目録1商品名エリル注一般名塩酸ファスジル承認番号(07AM)0541承認年月日平成7年6月30日2商品名エリル注S一般名塩酸ファスジル水和物承認番号21100AMZ00380000承認年月日1999年(平成11年)3月15日
裁判長裁判官 小松一雄
裁判官 田中秀幸
裁判官 守山修生