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関連審決 審判1998-35443
関連ワード 進歩性(29条2項) /  容易に発明 /  技術常識 /  優先権 /  容易に想到(容易想到性) /  実施 /  構成要件 /  設定登録 /  請求の範囲 /  判決の拘束力 / 
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事件 平成 14年 (行ケ) 99号 審決取消請求事件
原告 ジョンソンエレクトリック ソシエテ アノニム
訴訟代理人弁護士 中村稔,辻居幸一,相良由里子,弁理士 今城俊夫
被告 マブチモーター株式会社
訴訟代理人弁理士 大川譲,森田寛
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 2003/10/14
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
主文 原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
この判決に対する上告及び上告受理申立てのための付加期間を30日と定める。
事実及び理由
原告の求めた裁判
「特許庁が平成10年審判第35443号事件について平成13年10月23日にした審決を取り消す。」との判決。
事案の概要
1 特許庁における手続の経緯 (1) 原告は,名称を「永久磁石直流モータ」とする発明について,1986年(昭和61年)4月21日にイギリス国においてした特許出願ほか2件の特許出願に基づく優先権を主張して,昭和62年4月21日に特許出願をし,その特許は平成9年9月12日に設定登録された(本件特許第2694949号)。
(2) 被告は,平成10年9月11日,原告を被請求人として,本件特許のうち明細書の特許請求の範囲の請求項1〜3に記載された発明(本件発明)に係る特許につき無効審判の請求をし,平成10年審判第35443号事件として審理され,平成11年12月27日,審判請求は成り立たないとする審決(第1次審決)があった。
(3) 被告は,第1次審決を不服として,東京高等裁判所に対し審決取消請求訴訟を提起し,平成12年(行ケ)第84号事件として審理された結果,平成13年3月14日に「特許庁が平成10年審判第35443号事件について平成11年12月27日にした審決を取り消す。」との判決(第1次判決)があった。
(4) 本件無効審判請求につき再度審理が行われ,平成13年10月23日に「特許第2694949号の特許請求の範囲の請求項1〜3に記載された発明についての特許を無効とする。」との審決があり,その謄本は同年11月2日原告に送達された。
2 本件発明の要旨 (1) 請求項1発明の要旨 カン状のモータケーシング,このモータケーシングを閉じるエンドキャップ,モータケーシング内に取り付けた永久磁石,モータケーシングとエンドキャップとにより支持されたベアリングに支えられたモータシャフト,永久磁石に向き合ってモータシャフトに取り付けられたアーマチャ・コアとアーマチャ巻線とを備え,アーマチャ・コアはアーマチャ巻線を巻いた拡大頭部を有する複数の半径方向に延びる磁極を有し,隣合う磁極は巻線を施す巻線トンネルを形成し,隣合う頭部を分離している狭い空間は半径方向に巻線トンネルを開いている,巻線を施したアーマチャ,このアーマチャのコアの一端に隣接してモータシャフトに取り付けられ,アーマチャ巻線に接続された接続部片をそれぞれが有する複数のセグメントを備える整流器,エンドキャップが支持しているモータ端子,エンドキャップが支持しており,整流器と滑り接触してモータ端子をアーマチャ巻線へ電気的に接続するブラシを含むブラシギヤ及び整流器に隣接してアーマチャのコアの端に,アーマチャのコアの半径方向外周に取り付けられたファンを備え,このファンはアーマチャのコアの端に当たる環状プレートと,この環状プレートにより支持されアーマチャのコアから離れて軸方向に延び整流器の接続部片の周囲空間内に入り込むが,接続部片から半径方向に離されている複数の半径方向に延びるファンブレードと,磁極間のそれぞれの巻線トンネルに沿って軸方向に環状プレートから延びてファンをアーマチャのコアの半径方向外周に固定する複数の取付けタブとを有することを特徴とした永久磁石直流モータ。
(2) 請求項2発明の要旨 アーマチャのコアへのファンの固定を助けるためタブに少なくとも部分的に接着剤を塗布した請求項1に記載の永久磁石直流モータ。
(3) 請求項3発明の要旨 磁極の頭部間の巻線トンネルの狭い開口にタブが入り込んで摩擦係合している請求項1若しくは2に記載の永久磁石直流モータ。
3 審決の理由の要点 本件請求項1〜3に記載の発明は,下記審判甲第1〜第4号証の記載に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものである。理由の詳細は,別紙審決の理由のとおりである。
記 審判甲第1号証:実願昭55-190928号(実開昭57-111068号公報)の願書に添付した明細書及び図面を撮影したマイクロフイルム(本訴甲第6号証)) 審判甲第2号証:旧東ドイツ特許公報DD一213798(1984年(昭和59年)9月19日発行)(本訴甲第7号証) 審判甲第3号証:昭和14年実用新案出願公告第15552号公報(本訴甲第8号証) 審判甲第4号証:実願昭54一018528号(実開昭55一120288号)の願書に添付した明細書及び図面を撮影したマイクロフィルム(本訴甲第9号証)
原告主張の審決取消事由
1 前提問題(第1次判決の拘束力) 第1次判決は,第1次審決が着目した「デッドスペースである『整流器の接続部片の周囲空間』にファンブレードを配置してこれを有効活用するとの目的」に照らし,第1次審決が進歩性判断の根拠とした,相違点(イ)の構成要素Aの前段部分における,この環状プレートにより支持されアーマチャのコアから離れて軸方向に延び整流器の接続部片の周囲空間内に入り込むという構成についてのみ判断したものであって,相違点(イ)の構成要素Aの後段部分における,接続部片から半径方向に離されている複数の半径方向に延びるファンブレードという構成には,触れていない。第1次判決は,デッドスペースの活用とはおよそ関係のない,接続部片から半径方向に離されている複数の半径方向に延びるファンブレードという構成については,判断していない。
本訴において,かかる構成と審判甲第1号証〜第3号証記載の発明との相違に基づき,原告が本件発明の進歩性を主張することが妨げられる理由はない。
2 取消事由1(審判甲第1号証記載の発明に関する認定の誤り) (1) 本件発明は,前述のとおり,永久磁石直流モータにおいて,アーマチャのコアの側に整流器に隣接してその周囲に環状空間を形成し,低圧区域をつくって,火花の発生のため最も高温となる整流器の周囲全体の空気層を軸方向に沿って効率良く吸い込み,モータケーシングの窓を通して放出することにより,整流器全体を効率良く冷却するという目的を達成するものである。本件発明のこのような目的については,審判甲第1号証記載の発明においては開示も示唆もない。したがって,審判甲第1号証記載の発明は本件発明と同一の課題に基づく解決方法を開示したものではない。
(2) また,審判甲第1号証記載の発明は,本件発明の目的と異なる整流器の冷却という目的を有するため,構成上,「ファンブレードをアーマチャのコアから離れて軸方向に延び整流器の接続部片の周囲空間内に入り込む」点だけでなく,ファンブレードが,「接続部片から離されて,中央開口に連通する空間を形成している」点においても異なっている。また,ファンは「中央開口を有する環状プレート」を有している。したがって,審判甲第1号証記載の発明に基づきファンの構造及び配置を本件発明の構成要件I(注)のような構成を採用することは,当業者が適宜採用することのできる設計事項ということはできない。
(注) 原告が本件発明の構成要件を分節したうち,次の構成を指す。
I)整流器に隣接してアーマチャのコアの端に,アーマチャのコアの半径方向外周に取り付けられたファンを備え,このファンは I(1)アーマチャのコアの端に当たり,中央開口を有する環状プレートと, I(2)この環状プレートにより支持されアーマチャのコアから離れて軸方向に延び整流器の接続部片の周囲空間内に入り込むが,接続部片から半径方向に離されて,中央開口に連通する空間を形成している複数の半径方向に延びるファンブレードと, I(3)磁極間のそれぞれの巻線トンネルに沿って軸方向に環状プレートから延びてファンをアーマチャのコアの半径方向外周に固定する複数の取付けタブとを有すること。
(3) 審決は,本件発明と審判甲第1号証記載の発明が「整流器に隣接してアーマチャのコアの端に,アーマチャのコアの半径方向外周に取り付けられたファンを備える」点において一致すると認定するが,審判甲第1号証記載の発明においては,ファンは整流器に直接接触して(嵌め込まれて)いるのであって,整流器に隣接して設けられているのではない。本件発明に係る整流器の冷却作用を有するためには,ファンは整流器に隣接していなければならず,決して直接接触して(嵌め込まれて)はならないのである。
(4) 以上のとおり,審決は,本件発明との対比において,審判甲第1号証記載の発明を誤って認定したものである。
3 取消事由2(審判甲第2号証記載の発明に関する認定の誤り) 前述のとおり,審判甲第2号証記載の発明は本件発明の構成要件Iを有していない。したがって,審判甲第2号証記載の発明における「ファン構成及び取り付け手段」を審判甲第1号証記載の発明と組み合わせたとしても本件発明を構成することはできない。
4 取消事由3(審判甲第3号証記載の発明に関する認定の誤り) 前述のとおり,審判甲第3号証は交流による誘導電動機であり,整流器を備えていない。したがって,審判甲第3号証記載の発明は,本件発明に係る整流器との関係でのファンの構造及び配置,すなわち本件発明に係る環状プレートとファンブレードの構造及び配置を開示ないし示唆するものではない。審判甲第3号証記載の発明は本件発明の構成要件Iを有していないのであるから,審判甲第3号証記載の発明における「ファン構成及び取り付け手段」を審判甲第1号証記載の発明を組み合わせたとしても,本件発明を構成することはできない。
以上のとおり,審決は審判甲第3号証記載の発明の認定を誤ったものである。この認定の誤りは審決の結論に影響を及ぼすべきものであるから,審決は取り消されるべきである。
5 取消事由4(進歩性判断の誤り) (1) 審判甲第2号証記載の発明は,ファンは,整流子側コイルに隣接しており,「整流器に隣接して」取り付けられていないし,また,「中央開口を有する環状プレート」を有しておらず,さらに,ファンブレードは,「整流器の接続部片の周囲空間内に入り込」んで環状プレートの「中央開口に連通する空間を形成」していない。審判甲第2号証記載の発明を審判甲第1号証記載の発明と組み合わせる必然性はなく,また,これを組み合わせたとしても,本件発明を構成することはできない。
また,審判甲第3号証記載の発明は交流による誘導電動機の発明であり,整流器は開示されていない。このような整流器の開示されていない審判甲第3号証記載の発明のうちファンの構成を整流器を有する永久磁石直流モータに組み合せる必然性はない。
(2) よって,審決が本件発明の進歩性の判断を誤ったことは明らかであるから取り消されるべきである。
6 取消事由5(顕著な作用効果を看過したことの誤り) (1) 審決は,本件発明の顕著な作用効果を看過したものである。すなわち,本件発明は,永久磁石直流モータにおいて,アーマチャのコアの側に整流器に隣接してその周囲に環状空間を形成し,低圧区域をつくって,火花の発生のため最も高温となる整流器の周囲全体の空気層を軸方向に沿って効率良く吸い込み,モータケーシングの窓を通して放出することにより,整流器全体を効率良く冷却するという顕著な作用効果を奏するものである。原告の実施した甲第10号証の実験では,本件発明に係るファンは審判甲第1号証記載の発明のファンに比し整流器の温度は摂氏10度も低くなることが確認されている。
いずれの審判甲号証においても,このような本件発明の作用効果は開示ないし示唆されていない。したがって,本件発明の整流器の冷却に係る作用効果は当業者の予測し得ない顕著な作用効果を奏するものであり,本件発明が進歩性を有することは明らかである。
(2) また,このような整流器の冷却に係る作用効果により,本件発明ではファンブレードをサーモプラスチックではなく,安価でかつモールドしやすい普通のプラスチックで形成することができるので,製作コストが著しく安くなる。このような作用効果についても,本件発明の構成によりもたらされる整流器の冷却作用に伴う作用効果であるから,本件発明の作用効果といえる。
整流器の冷却に係る作用効果によりファンブレードをサーモプラスチックではなく普通のプラスチックで形成することができるという点についても,いずれの審判甲号証についても開示ないし示唆はなく,当業者が予測し得ないものである。この点からみても,本件発明が当業者の予測し得ない顕著な作用効果を奏し,進歩性を有することは明らかである。
当裁判所の判断
1 取消事由1〜4について (1) 審判において,被告(請求人)は,審判甲第1号証記載の発明との間の,ファンの構成及び取付手段に関する相違点(イ)として, @ アーマチャのコアの端に当たる環状プレートと, A この環状プレートにより支持されアーマチャのコアから離れて軸方向に延び整流器の接続部片の周囲空間内に入り込むが,接続部片から半径方向に離されている複数の半径方向に延びるファンブレードと, B 磁極間のそれぞれの巻線トンネルに沿って軸方向に環状プレートから延びてファンをアーマチャのコアの半径方向外周に固定する複数の取付けタブとを有する, との点を挙げつつも,これらは審判甲第2号証あるいは審判甲第3号証に記載されているように公知の技術にすぎないことを主張していた(甲第2号証の第1次判決別紙審決(第1次審決)11〜12頁)。
これに対し,第1次審決は,本件発明(取消事由は請求項1〜3発明を区別していないが,以下の取消事由1〜4に関する説示中で「本件発明」というときは,請求項1発明を指す。請求項2,3の発明に関する独自の主張はないので,これらに関する判断も,請求項1発明に関してと同様である。)については構成要件@ABに区分できないことを主位的な理由として,審判甲第2,第3号証記載の発明を審判甲第1号証に組み合わせることはできないとし,予備的な理由として,相違点(イ)の本件発明の構成は,構成要件Aの点で当業者が容易に想到し得たとすることはできないと判断した(第1次審決24〜29頁)。
第1次判決は,まず第1次審決の主位的な理由を誤りと判断した上,相違点(イ)の構成要件Aの構成は,審判甲第1号証(第1次審決でいう引用例1)記載の発明に基づいて当業者が容易に想到することができるものであると認定判断し,上記予備的な理由も誤りであると判断している。この後者の判断において,相違点(イ)のうちAの後段部分が除外されているとの原告主張を裏付けるべき説示は,第1次判決において見当たらない。
なるほど,Aの後段部分における,接続部片から半径方向に離されている複数の半径方向に延びるファンブレードとの構成に関しては,原告主張のように第1次判決において明示的に説示されているものではない。しかし,第1次取消訴訟においては,相違点(イ)のうちAの容易想到性が前段,後段共に一体となって審理されていることは,第1次判決の判決文に照らして明らかであり,原告もこの点に関して特段の主張をしているものではない。審判の被請求人である原告としては,相違点(イ)のうちAの容易想到性を否定する主張として,その後段の構成については容易想到でなかったと主張することもできたはずである。したがって,本訴において,原告が,相違点(イ)のうちAの後段の構成の容易想到性を否定する主張をすることは,第1次判決の拘束力に反するものとして,許されない。
(2) 取消事由1〜4は,第1次判決の拘束力に従ってした相違点(イ)のAの構成の容易想到性に関する審決の認定判断の誤りを主張するものであり,理由がない。
2 取消事由5(顕著な作用効果を看過したことの誤り)について (1) 甲第10号証「技術研究報告書」の温度試験結果(6,7頁)は,「両方のモータの温度上昇率は同じであるが,「目を開けた」羽根車の最終温度は元の羽根車の温度より約10度低い。「目を開けた」羽根車がその系から多くの熱を運び去っていることを証明している。」というものであり,上昇温度対時間の図には,横軸140秒で,縦軸元の羽根車約160℃,「目を開けた」羽根車約145℃が記載されている。
しかしながら,審判甲第1号証(甲第6号証)には,「第7図はモータを駆動した際,刷子及び整流子の温度上昇を時間的に測定した測定曲線図である。第7図に示す実験においては,モータは出願人の会社において生産されているマブチモータのRS-750S Longを使用した。この場合の測定条件としては電圧9.6V,700g-pのトルク計負荷を使用した。スタート後5分で電流は15.3〜16.1A,回転数は16,070〜17,260r.p.m,出力は115〜124Wとなった。なお,A曲線は冷却ファンのないモータの場合,B曲線は整流子6が存在しない側に冷却ファンを取付けてファンの外径を27.5φとした場合,C曲線は本考案にかかるモータで整流子6の非摺動円筒部に冷却ファン16をもうけ該ファンの外径を38φとした場合に対応している。
この結果,冷却ファンを取付けないAの場合には,カーボン刷子が著しく摩耗し,整流子は著しく変色し,刷子温度は急上昇してスタート後10分で170℃に達し,使用に耐えなくなったため運転を中止した。次に冷却ファンを整流子6の存在しない側に取り付けたBの場合でも,カーボン刷子の摩耗がひどく,整流子は変色し,刷子温度はスタート後10分で150℃となり20分では160℃となり使用に耐えないものとなったため20分で運転を中止するにいたった。これに対し,本考案にかかる整流子の非摺動円筒部に冷却ファンをもうけたCの場合にはスタート後2分で刷子温度70℃,4分で78℃,6分で79℃,10分で80℃に上昇したが,それ以後は殆んど温度は上昇することなく,80℃一定に保ち,1時間を連続運転しても温度には変化が認められず,しかも刷子,整流子共に全然変化は見られなかった。以上詳述した如く,本考案は冷却ファンを整流子の非摺動円筒部に取り付けた構成としたので,冷却空気を直接整流子に吹き付けることができる。そして,従来のモータのように固定子の高さだけ冷却ファンが小さく制限されることなく,冷却ファンの外径はモータ・ケースの内径内で許される最大限の寸法とすることができるので,十分な冷却風量を得られる。」(9頁17行〜11頁17行) との記載があり,審判甲第1号証に記載された発明の羽根車は,第7図横軸10分以降,縦軸80℃であり,冷却空気を整流子に直接吹き付けることができるというものである。
以上のとおり,審判甲第1号証の上記記載によれば,審判甲第1号証記載の発明では,設計によっては80℃となり得るものと認められるのに対し,本件発明の冷却ファンでは,145℃の冷却効果以外を示す証拠はないので,本件発明の冷却ファンの方が冷却能力が優れているとはいえない。
また,審判甲第3号証に記載された発明の冷却ファンは,その構造からすると,ファンブレードの中央開口に連通する空間は低圧になり,ファンブレードに空気が吸い込まれることは,明らかであるから,審判甲第1号証に記載された発明に審判甲第3号証の冷却ファンを採用することにより,ファンブレードの中央開口に連通する空間は低圧になり,ファンブレードに空気が吸い込まれることは予想されるものといえる。
(2) そして,審判甲第1号証に記載された発明の整流器の温度は80℃と低温とすることができ,低温であれば,冷却ファンも,技術常識に基づき,ファンのファンブレードをサーモプラスチックではなく,安価でかつモールドしやすい普通のプラスチックで形成することができるものということができる。
(3) よって,取消事由5も理由がない。
結論
以上のとおり,原告主張の審決取消事由は理由がないので,原告の請求は棄却されるべきである。
裁判長裁判官 塚原朋一
裁判官 塩月秀平
裁判官 古城春実