運営:アスタミューゼ株式会社
  • ポートフォリオ機能


追加

関連審決 無効2002-35061
関連ワード 冒認出願(冒認) /  特許を受ける権利 /  承継 /  発明者 /  考案者 /  発明の詳細な説明 /  設定登録 / 
元本PDF 裁判所収録の全文PDFを見る pdf
事件 平成 15年 (行ケ) 217号 審決取消請求事件
原告A
被告B
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 2003/11/26
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
主文 原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
請求
特許庁が無効2002-35061号事件について平成15年4月24日にした審決を取り消す。
当事者間に争いのない事実等
1 特許庁における手続の経緯 被告は,発明の名称を「艶出し撥水剤」とする特許第925546号発明(昭和49年2月9日特許出願,昭和53年9月22日設定登録,以下「本件発明」といい,その特許を「本件特許」という。)の特許権者である。
原告は,平成14年1月7日,本件特許につき無効審判の請求をし,特許庁は,同請求を無効2002-35061号事件として審理した結果,平成15年4月24日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決をし,その謄本は,原告に送達された。
2 本件発明の要旨 別添審決謄本写しの「理由」の「1.手続の経緯・本件発明」に記載のとおりである。
3 審決の理由 審決は,別添審決謄本写し記載のとおり,本件発明は,その特許出願前に原告が発明をしていた発明について被告が冒認出願し,特許を受けたものであるから,特許法123条1項6号により無効とすべきである旨の原告(請求人)の主張に対し,本件発明は,その特許出願前に原告が発明をしていたと主張する発明と同じであるとはいえないから,請求人の主張及び証拠方法によっては,本件特許を無効とすることはできないとした。
原告主張の審決取消事由
1 本件発明は,その特許出願前に原告が発明をしていた発明と同じであるから,本件特許は,発明者でない者であってその発明について特許を受ける権利承継しないものの特許出願に対してされたものとして,無効とされるべきであるのに,審決は,この原告の主張を理由がないとする誤った認定判断をした(取消事由)ものであるから,違法として取り消されるべきである。
2 取消事由(冒認出願) 本件発明の艶出し撥水剤は,アミノ変性シリコーンオイルを主成分とするものであるところ,上記シリコーンオイルは「油」である。
他方,原告は,実用新案登録第1501677号考案(昭和52年6月21日出願,以下,「原告考案」という。甲2は,その実用新案公報である。)の実用新案権者兼考案者であるが,甲2には,「油膜」(1頁右欄5行目)と記載されている。また,原告は,特許第2566512号発明(平成4年11月24日特許出願,平成8年10月3日設定登録,以下「原告特許」という。甲3は,その特許公報である。)の特許権者兼発明者であるが,甲3には,「油膜」(発明の詳細な説明の段落【0002】),「ウィンドガラスの曇りを有効に防止する」(同,段落【0005】)と記載されている。
また,原告考案の出願は,代理人弁理士Cを介して行われたところ,同弁理士と被告とは顔見知りであり,親しい間柄である。
以上によれば,原告は,本件特許出願前に本件発明の艶出し撥水剤を発明していたことは明らかであり,本件特許出願は,被告の冒認出願であるから,本件特許は無効とされるべきである。
被告の反論
1 原告主張の審決取消事由はすべて否認ないし争う。
2 被告は,原告とは何ら接触がなく,冒認の余地は全くない。
当裁判所の判断
1 取消事由(冒認出願)について 原告は,原告考案及び原告特許の明細書に「油膜」及び「ウィンドガラスの曇りを有効に防止する」との記載があることを根拠として,本件発明が上記各明細書に記載されているかのような主張をするが,甲2及び甲3の記載による限り,そのように認めるべき根拠は見いだせない。
また,仮に,甲2及び甲3の記載内容とは別に,原告が艶出し撥水剤に関する何らかの発明をしていたとしても,そもそも,本件特許の出願日は昭和49年2月9日であるところ,原告考案の出願日は昭和52年6月21日,原告特許の出願日は平成4年11月24日であって,原告考案及び原告特許の出願の方が後であることからすれば,甲2及び甲3の存在は,本件発明の真の発明者が原告であることを何ら推認させるものではないというべきであり,他に原告主張に係る冒認出願の事実を認めるに足りる証拠はない。
2 以上のとおり,原告主張の取消事由は理由がなく,他に審決を取り消すべき瑕疵は見当たらない。
よって,原告の請求は理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 篠原勝美
裁判官 岡本岳
裁判官 早田尚貴