関連審決 | 無効2002-35071 |
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関連ワード | 承継 / 技術的思想 / 進歩性(29条2項) / 容易に発明 / 一致点の認定 / 相違点の判断 / 上位概念 / 技術常識 / 発明の詳細な説明 / 優先日 / 参酌 / 置き換え / 容易に想到(容易想到性) / 実施 / 加工 / 構成要件 / 設定登録 / 請求の範囲 / 変更 / |
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事件 |
平成
14年
(行ケ)
451号
審決取消請求事件
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原告 国産ラセン管株式会社 訴訟代理人弁理士 小池晃 同 田村榮一 同 伊賀誠司 同 藤井稔也 被告兼承継前被告株式会社東京螺旋管製作所及び同東洋螺旋管工業株式会社訴訟 承継人 株式会社テクノフレックス・トーラ (旧商号)株式会社テクノフレックス 被告 株式会社昭和螺旋管製作所 被告 株式会社オクダソカベ3名訴訟代理人弁護士 安田有三 同 弁理士 川上宣男 |
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裁判所 | 東京高等裁判所 |
判決言渡日 | 2003/12/03 |
権利種別 | 特許権 |
訴訟類型 | 行政訴訟 |
主文 |
原告の請求を棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 |
事実及び理由 | |
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請求
特許庁が無効2002-35071号事件について平成14年7月23日にした審決を取り消す。 |
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当事者間に争いのない事実
1 特許庁における手続の経緯等 原告は,名称を「導管の迂回配管装置及び迂回配管方法」とする特許第3215666号発明(平成10年6月22日特許出願〔国内優先日・平成9年6月30日〕,平成13年7月27日設定登録,以下,「本件発明」といい,その特許を「本件特許」という。)の特許権者である。 被告ら並びに被承継人株式会社東京螺旋管製作所及び同東洋螺旋管工業株式会社は,平成14年2月28日,本件特許のうち請求項1,3及び4に係る特許につき無効審判の請求をし,無効2002-35071号事件として特許庁に係属した。特許庁は,上記事件につき審理した結果,同年7月23日,「特許第3215666号の請求項1,3,4に係る発明についての特許を無効とする。」との審決をし,その謄本は,同年8月2日,原告に送達された。 なお,被承継人株式会社東京螺旋管製作所及び同東洋螺旋管工業株式会社は,本件訴訟提起後の平成15年1月6日,被告株式会社テクノフレックス・トーラ(同日付けで商号変更,旧商号は「株式会社テクノフレックス」)に吸収合併されたため,被承継人らの訴訟上の地位は,同被告によって包括承継された。 2 願書に添付した明細書(以下「本件明細書」という。)の特許請求の範囲の請求項1,3及び4の記載 【請求項1】道路の敷設経路上に存在する既設の埋設障害物に対してその両側にそれぞれ端部を臨ませて,上記道路に掘削された敷設溝内に敷設されるとともに内部に流体が流れる導管と, 少なくとも,ラセン管と,このラセン管の両端にそれぞれ一体に連結された接続管と,上記ラセン管の外周部にその全長に亘って巻回されるブレードとからなり,上記埋設障害物を迂回して上記導管の端部と接続されるに足る長さを有するラセン管部材とから構成され, 上記ラセン管部材は,上記ラセン管が上記敷設溝に連続して上記埋設障害物を迂回してその周辺領域に所定の幅で掘削された迂回敷設溝内に導かれて湾曲されるとともに,上記接続管が相対する上記導管の端部とそれぞれ接続されることにより上記埋設障害物を迂回配管して埋設されることを特徴とする導管の迂回配管装置。 【請求項3】道路の敷設経路上に存在する既設の埋設障害物に対して,その両側にそれぞれ端部を臨ませて上記道路に所定の幅で掘削された敷設溝内に導管が敷設され, 少なくとも,ラセン管と,このラセン管の両端にそれぞれ一体に連結された接続管と,上記ラセン管の外周部にその全長に亘って巻回されるブレードとからなり,上記埋設障害物を迂回して上記導管の端部と接続されるに足る長さを有するラセン管部材が用いられ, 上記ラセン管部材は,上記ラセン管が上記敷設溝に連続して上記埋設障害物を迂回してその周辺領域に所定の幅で掘削された迂回敷設溝内に導かれて湾曲されるとともに,上記接続管を相対する上記導管の端部とそれぞれ接続することにより上記埋設障害物を迂回配管して埋設されることを特徴とする導管の迂回配管方法。 【請求項4】道路に設けられた下水マンホールを挟んで所定の掘削幅を以って上記道路に敷設溝を掘削するとともに,上記下水マンホールの周囲に所定の掘削幅を以って周辺領域に迂回敷設溝を掘削し, 上記下水マンホールに対して,その両側にそれぞれ端部を臨ませて上記敷設溝内にそれぞれ水道管を敷設し, 少なくとも,ラセン管と,このラセン管の両端にそれぞれ一体に連結された接続管と,上記ラセン管の外周部にその全長に亘って巻回されるブレードとからなり,上記下水マンホールを迂回して上記水道管の端部と接続されるに足る長さを有するラセン管部材が用いられ, 上記ラセン管部材の上記ラセン管を,上記下水マンホールに対して上記周辺領域内で迂回するように導いて湾曲させるとともに,上記接続管を相対する上記水道管の端部とそれぞれ接続した後に埋土を行うことにより上記下水マンホールを迂回する水道管の迂回配管を行うことを特徴とする導管の迂回配管方法。 (以下,上記請求項1,3及び4に係る発明を,それぞれ「本件発明1」,「本件発明3」及び「本件発明4」という。) 3 審決の理由 審決は,別添審決謄本写し記載のとおり,本件発明1,3及び4は,その出願前に頒布された特開平8-42751号公報(甲3,以下「刊行物1」という。)及び実願平5-23071号(実開平6-80971号)のCD-ROM(甲4,以下「刊行物2」という。)に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,上記各発明についての特許は,特許法29条2項の規定に違反してされたものであり,同法123条1項2号に該当し,無効とすべきものであるとした。 |
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原告主張の審決取消事由
審決は,刊行物1記載の発明(以下「刊行物1発明」という。)の認定を誤った結果,本件発明1と刊行物1発明との一致点の認定を誤るとともに相違点を看過した(取消事由1)ものであり,また,刊行物2記載の発明(以下「刊行物2発明」という。)の認定をも誤った結果,本件発明1と刊行物1発明との相違点に関する判断を誤った(取消事由2)ものであり,さらに,本件発明3及び本件発明4に係る容易想到性の認定判断を誤った(取消事由3,4)ものであるから,取り消されるべきである。 1 取消事由1(本件発明1と刊行物1発明との一致点の認定の誤り及び相違点の看過) (1) 審決は,刊行物1(甲3)には,「道路の敷設経路上に存在する既設の埋設管に対してその両側にそれぞれ端部を臨ませて,上記道路に掘削された敷設溝内に敷設されるとともに内部に水道水が流れる給水配管と,上記埋設管を迂回して上記給水配管の端部と接続されるユニット管装置10とから構成され,上記ユニット管装置10は,ベローズ14とその外周部に巻回されるブレード16と接続金具20からなるフレキシブル管12と,可撓性(注,「可撓製」とあるのは誤記と認める。)のある波形管34とからなり,上記ユニット管装置10は,上記埋設管を迂回してその周辺領域に所定の幅で掘削された迂回敷設溝内に導かれて湾曲されるとともに,上記給水配管の端部とそれぞれ接続されることにより上記埋設管を迂回配管して埋設される給水配管の迂回配管装置」の発明が記載されていると認定した(審決謄本9頁第5段落)が,誤りである。 ア 審決は,上記のとおり,刊行物1発明には,敷設溝内において,既設の埋設管の両側に給水配管の端部を「臨ませる」との技術的思想が記載されていると認定している。 ところで,「臨ませる」とは,「目の前にする」との意味であり(甲10,広辞苑第3版),「近い」,「近傍」等の語と同義又は類義であるが,刊行物1(甲3)の段落【0017】,【0021】,【0023】及び【0025】には,ユニット管装置10は,フレキシブル管12の部分では極めて高い可撓性を有するが,波形管34は作業者が手で容易に曲げることができる程度の可撓性を有しておらず,直管36は可撓性を有していないこと,直管部分36で切断して使用することが記載されている。そうすると,作業者が手で容易に曲げることのできない程度の可撓性しか有していない波形管34や可撓性を有していない直管36を有するユニット管装置10は,曲げる箇所に制限を受けるために,既設の埋設管の近傍に臨まされた給水配管の端部と接続することは極めて困難であり,おのずと埋設管から離れた位置で給水配管の端部で接続することとなる。したがって,刊行物1には,埋設障害物に給水配管の端部を臨ませるとの技術的思想は開示されていない。 イ 審決は,「道路の敷設経路上に既設の埋設管に対して,給水配管に上記ユニット管装置を施工する場合,上記埋設管を迂回してその周辺領域を所定の幅で掘削することは技術常識であるから,このことは,甲第1号証(注,刊行物1)に記載されているに等しい事項である」(審決謄本9頁第4段落)とした上で,上記のとおり,刊行物1発明には,「埋設管を迂回してその周辺傾城に所定の幅で掘削された迂回敷設溝」との技術的思想が記載されていると認定している。 しかしながら,「周辺」とは,「まわり」の意味であり(甲10,広辞苑第3版),「埋設障害物の周辺領域」とは,埋設障害物の周囲を指すところ,上記のとおり,ユニット管装置10は,フレキシブル管12の部分では極めて高い可撓性を有するが,波形管34や直管36の部分では,フレキシブル部分ほど可撓性を有していないから,ユニット管装置10を用いる場合,その両端の接続部分を,既設の側溝や埋設管の周辺領域を含む更に広い領域にわたって敷設溝を設ける必要がある。したがって,刊行物1には,「埋設管を迂回してその『周辺領域』に所定の幅で掘削された迂回敷設溝」との技術的思想が開示されているとはいえない。 また,刊行物1(甲3)の段落【0002】,図8及び図9には,埋設障害物や側溝の下側に配管する構成,すなわち道路に埋設された水道管本管と家等が建てられた私有地内の止水栓とを接続する給水配管の構成が記載されている。そして,水道管本管と止水栓とをつなぐ給水配管の私有地への引き込み工事の場合には,埋設障害物を下側に迂回する敷設溝を設けるものであるから,そこから,埋設障害物の周囲に沿って「幅」方向に迂回するとの技術的思想を導き出すことはできない。したがって,刊行物1には,「埋設管を迂回してその周辺領域に『所定の幅』で掘削された迂回敷設溝」との技術的思想が記載されているに等しいとする審決の認定は誤りである。 ウ 上記アのとおり,ユニット管装置10は,フレキシブル管12の部分では極めて高い可撓性を有するが,波形管34は作業者が手で容易に曲げることができる程度の可撓性を有しておらず,直管36は可撓性を有していないのであるから,敷設溝に敷設するときには,フレキシブル管の部分では大きく曲がり,波形管の部分ではフレキシブル管の部分に比べ小さく曲がった状態となる。しかしながら,審決は,ユニット管装置10が異なる曲率で曲がることについて何ら認定していない。 エ また,ユニット管装置10は,迂回配管工事の現場において直管部分を切断するものとされているが,審決は,この点についても何ら認定していない。 (2) 審決は,上記(1)のとおり,刊行物1発明の認定を誤った結果,本件発明1と刊行物1発明との一致点の認定を誤るとともに,その認定に係る相違点1(審決謄本11頁第3段落)以外の以下の相違点を看過したものである。 ア 道路に掘削された敷設溝内に敷設されるとともに内部に流体が流れる導管において,本件発明1が,道路の敷設経路上に存在する既設の埋設障害物に対してその両側にそれぞれ端部を臨ませるものであるのに対して,刊行物1発明においては,導管の端部が埋設障害物から離れて位置する点。 イ 迂回敷設溝において,本件発明1が,迂回敷設溝が埋設管を迂回してその周辺領域に所定の幅で掘削され,そこにラセン管部材を湾曲させて配設するものであるのに対して,刊行物1発明においては,迂回敷設溝が埋設障害物の周辺領域を含む更に広い領域にわたって埋設障害物の位置より深く形成される点。 ウ 本件発明1の導管が水道管本管等の太径の導管であるのに対して,刊行物1発明においては,水道管本管から私有地内の止水栓へ引き込み配管を行う際に用いる給水配管である点。 2 取消事由2(本件発明1と刊行物1発明との相違点の判断の誤り) (1) 刊行物2発明の認定の誤り 審決は,刊行物2発明を,「既設の障害物2に対してその両側にそれぞれ端部を臨ませて,内部にガスが流れる管1と,上記障害物2を迂回して上記管1の端部と接続される蛇腹管3とから構成され,蛇腹管3は障害物を迂回して上記管1の端部と接続されるに足る長さを有し,接続体4が相対する上記管1の端部とそれぞれ接続された配管構造」と認定した(審決謄本10頁下から第3段落)が,誤りである。 ア 刊行物2(甲4)の段落【0004】,【0011】及び【0012】には,障害物2を迂回するために,ガス管(配管用炭素鋼鋼管)や,電縫管(機械構造用炭素鋼鋼管)の代わりに蛇腹管3を用い,管1との接続に接続体4を用いることが記載されているところ,そこでいう「ガス管」は,俗称であり,現在の技術常識において,内部に通すものは特に限定されていない。例えば,既存のガス管は,家屋等における電気配線等のために電気ケーブルを内部に通すために用いられている(甲12〜14)。また,ガス等の流体を流す場合には,管1や蛇腹管3に内圧による力が加わることから,管の接続部分からのガス漏れ等を防止するためにも,接続部分の強度や密閉性を高める必要があるところ,刊行物2の接続構造は,段落【0014】及び【0015】によれば,ねじ止めとシーラント剤を用いるものであり,強度的に弱いものであるから,ガス等の流体を流すためのものではなく,家屋等における電気配線等のために電気ケーブルを内部に通すために用いられるものである。したがって,審決の「内部にガスが流れる管1」との認定は誤りである。 イ なお,刊行物2の図1からも明らかなように,刊行物2発明は,道路等に埋設する埋設管の配管構造ではなく,埋設されない露出管の配管構造であり,段落【0016】の記載からみて,配管構造は,蛇腹管3を現場で切断し必要な長さとして,接続体4を用いて管1との接続をすることを前提としているものと認められるが,審決は,これらの点を認定していない。 (2) 相違点の判断の誤り 審決は,本件発明1と刊行物1発明との相違点1として,「埋設障害物を迂回する上記管部材において,本件発明1が,ラセン管と,このラセン管の両端にそれぞれ一体に連結された接続管と,上記ラセン管の外周部にその全長に亘って巻回されるブレードとからなり,上記導管の端部と接続されるに足る長さを有し,この構成により該管部材が上記敷設溝に連続して上記接続管が相対する上記導管の端部とそれぞれ接続されるのに対し,甲第1号証(注,刊行物1)記載の発明が,ラセン管(ベローズ14)とその外周部に巻回されるブレード(16)と接続金具20とからなるフレキシブル管12と,波形管34とからなる点」を認定した(審決謄本11頁第3段落)上,「甲第2号証(注,刊行物2)には,既設の障害物2に対してその両側にそれぞれ端部を臨ませて,内部に流体(ガス)が流れる導管(管1)と,上記障害物を迂回して上記導管(管1)の端部と接続される管部材(蛇腹管3)とから構成され,管部材(蛇腹管3)は障害物を迂回して上記導管(管1)の端部と接続されるに足る長さを有し,接続管(接続体4)が相対する上記導管(管1)の端部とそれぞれ接続された迂回配管装置(配管構造)が記載されている」から,刊行物1発明のユニット管装置10を,刊行物2記載のように導管の端部と接続されるに足る長さの管部材(蛇腹管3)に置き換え,更にその際,刊行物1に記載されているラセン管(ベローズ14)とその外周部に巻回されるブレード(16)からなるラセン管(フレキシブル管12)を用いた上,両端に接続管を一体に設けることは,当業者であれば容易になし得ることにすぎず,本件発明1は,刊行物1発明及び刊行物2発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである旨判断した(同11頁第4,第5段落)が,誤りである。 ア 刊行物2発明は,上記(1)イのとおり,埋設管に関する技術ではなく,露出管に関する技術であり,刊行物1発明とは技術分野を異にし,共通の技術課題を有するものではないから,両者を組み合せることはできない。 また,刊行物2発明は,電気ケーブルを保護するための電線管に関する技術であり,その当業者は電気工事業者である。これに対し,本件発明1における当業者は水道工事業者である。水道工事業者と電気工事業者とでは,それぞれの属する技術分野を異にするから,刊行物2は,本件発明に関する引用文献として用いることができるものではない。 イ 本件発明1のラセン管部材は,ラセン管と接続管とブレードとが一体的に取り扱われるものであり,敷設時に切断されることなく迂回敷設溝に配設され,迂回敷設溝内において連続するように全体が湾曲されるものである。これに対し,刊行物1のユニット管装置10は,上記1(1)エのとおり,敷設時に直管部分で所定長に切断するものであり,また,刊行物2の蛇腹管3も,上記(1)イのとおり,敷設時に切断した後給水配管と接続されるものであるから,いずれにおいても迂回配管に用いるラセン管部材を切断することなく使用するとの技術的思想は示されていない。したがって,刊行物1発明と刊行物2発明とを組み合わせたとしても,本件発明1のように,迂回配管に用いるラセン管部材を切断することなく使用するとの技術的思想を導き出すことはできない。 3 取消事由3(本件発明3に係る容易想到性の認定判断の誤り) 本件発明3は,本件発明1と発明のカテゴリーが相違するだけであるから,その構成は,本件発明1と同様である。したがって,上記1及び2のとおり,本件発明1に関する誤った認定判断を前提とする審決の本件発明3に係る容易想到性の認定判断も誤りである。 4 取消事由4(本件発明4に係る容易想到性の認定判断の誤り) (1) 本件発明4は,本件発明1の導管を水道管とし,埋設障害物を下水マンホールとしたものであるところ,上記1及び2のとおり,本件発明1に関する誤った認定判断を前提とする審決の本件発明4に係る容易想到性の認定判断も誤りである。 また,審決は,本件発明4について,「下水マンホールも下水等の埋設管も,水道管を配管する際の埋設障害物であることは,当業者にとって技術常識であり,甲第1号証(注,刊行物1)記載の埋設障害物を下水マンホールとすることは当業者であれば容易に思い付くことである」(審決謄本12頁第6段落)と判断したが,誤りである。 (2) 刊行物1及び刊行物2のいずれにも,下水マンホールの周辺領域に掘削された迂回敷設溝にラセン管とブレードと接続管が一体のラセン管部材の全体を湾曲させて配設するとの技術的思想は全く示唆されていない。 また,本件発明4は,ラセン管部材を用いて,水道管本管が下水マンホールを迂回できるようにするものである。水道管本管は,大量の水道水を流す必要があり,給水配管に比べて太径であり,内圧による力も大きくなる。さらに,水道管本管は,道路の中央側に設けられるものであることから,土荷重の外,車両荷重も給水配管より大きくなる。そこで,水道管本管は,強度を高めるため,給水配管に比べ厚く形成されている。このような特徴を有する水道管本管の迂回配管に用いる本件発明4のラセン管部材は,刊行物1の給水配管の迂回に用いるユニット管装置1より当然に太径であり強度も高くなっている。同様に,刊行物2の露出管である蛇腹管3よりも太径であり強度も高くなっている。このように,本件発明4は,水道管本管の下水マンホールの迂回に適用するものであり,給水配管の側溝等の迂回に用いる刊行物1や露出管の迂回に用いる刊行物2とは,適用する管の種類を異にするものである。 |
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被告らの反論
審決の認定判断は正当であり,原告主張の取消事由はいずれも理由がない。 1 取消事由1(本件発明1と刊行物1発明との一致点の認定の誤り及び相違点の看過)について (1) 刊行物1発明は,フレキシブル管12並びに波形管34又は(及び)直管36から構成されるユニット装置10を採用し,そのフレキシブル管12により埋設管を迂回して曲折配管を構成するものである。また,刊行物1(甲3)には,「ユニット管装置10」として,「フレキシブル管12と直管36」(図1(b)),「フレキシブル管12と波形32を有する波形管34」(図1(a))あるいは「フレキシブル管12,直管36及び同波形管34」の3態様が記載されている。 審決は,ユニット管装置10の上記3態様のうち,その1態様である「フレキシブル管12と波形管34」(図1(a))を採り上げ,同「ユニット管装置10」と本件発明1の「ラセン管部材」とは「管部材」である点で一致するとしたものであり,誤りはない。 (2) 本件発明1と刊行物1発明の対比は,本件発明1の構成のレベルで行うべきである。すなわち,本件発明1の「導管」は,1例として水道管本管から分岐して私有地に引き込みを行う給水配管を含み,「ラセン管部材」(ラセン管11,ブレード13,接続管12)は,刊行物1発明の「ユニット管装置10に用いるフレキシブル管12(ベローズ14,ブレード16,接続金具20)」と同一であり,両者とも埋設管等を迂回させるものであって,その湾曲について曲率に限定はないから,審決の一致点の認定に誤りはなく,相違点の看過もない。 2 取消事由2(本件発明1と刊行物1発明との相違点の判断の誤り)について 刊行物1(甲3)記載の「ユニット管装置10」に採用されるフレキシブル管12は,埋設障害物(埋設管)を迂回するためのものであるが,フレキシブル管12の長さが「迂回全長長さ」を有しているかどうかは,刊行物1には明記されていないから,この点で本件発明1と刊行物1発明とは一応は相違する。しかしながら,刊行物2には,管部材(蛇腹管3)を「迂回全長長さ」にすることが記載されているから,刊行物1のフレキシブル管の長さを同じく「迂回全長長さ」にすることは,当業者の容易にし得る自明事項にすぎない。刊行物1発明において,フレキシブル管は障害物を迂回するために波形管(図8)に代わるものとして採用されたものであるから,その長さを「迂回全長長さ」にすることは当然予定された自明事項である。したがって,これと同旨の審決の判断に誤りはない。 3 取消事由3(本件発明3に係る容易想到性の認定判断の誤り)について この点に関する審決の認定判断に誤りはない。 4 取消事由4(本件発明4に係る容易想到性の認定判断の誤り)について 本件発明4は,本件発明3における「埋設障害物」を「下水マンホール」に,また,同「導管」を「水道管」にそれぞれ限定した「導管の迂回配管方法」である。これに対し,刊行物1発明のユニット管装置を組み合わせた配管は,水道水等の給水配管,すなわち水道管であるから,審決が本件発明4と刊行物1発明との一致点1に加えて,一致点2「本件発明4が,流体が流れる導管を水道管とした点」を認定したことに誤りはない。 審決は,本件発明4と刊行物1発明との相違点3として,「埋設障害物が,本件発明4は下水マンホールであるのに対し,甲第1号証記載の発明(注,刊行物1発明)は埋設管である点」(審決謄本12頁第5段落)を認定した上,下水マンホールが刊行物1における「埋設管(迂回すべき障害物)」等の一つの周知な態様であって,このような周知な態様を限定する点に格別の発明は存在しないと判断したものであり,誤りはない。 |
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当裁判所の判断
1 取消事由1(本件発明1と刊行物1発明との一致点の認定の誤り及び相違点の看過)について (1) 原告は,刊行物1発明の認定の誤りとして,まず,刊行物1発明においては,ユニット管装置は可撓性の低い波形管や可撓性を有さない直管を有するから,既設の埋設管の近傍に臨まされた給水配管の端部と接続することは極めて困難であるとした上,刊行物1発明につき,敷設溝内において,既設の埋設管の両側に給水配管の端部を「臨ませる」との技術的思想が開示されているとした審決の認定の誤りを主張する。 そこで検討すると,上記主張の前提として,原告は,「臨ませる」とは,「目の前にする」との意味であり(甲10,広辞苑第3版),「近い」,「近傍」等の語と同義又は類義であると主張するが,もとより,どの程度の近さを指すかは明らかでないし,ごく接近した状態のみを指すものと認めることはできない。したがって,刊行物1発明のユニット管装置を,埋設障害物に給水配管を臨ませた状態での迂回配管に利用することが極めて困難であるとすることはできないから,原告の主張は,その前提において失当である。 また,刊行物1(甲3)には,「本発明(注,刊行物1発明)は,上記従来の問題点に鑑みてなされたものであり,その目的は,フレキシブル管と波形管及び直管を選択的に,あるいは同時に継手接続し,ある程度の長さの給水管を形成させることにより,フレキシブル管により,極めて柔軟性があり,自在な芯だし作業,変位性,曲げ部分の形成に対応できると共に,運搬性,収納性も良好なユニット管装置を提供することにある」(段落【0004】),「フレキシブル管を構成単位として使用しているので管装置全体として極めて可撓性,柔軟性に富むので実際の配管作業における芯だし作業,大きな曲がり部分を要するような配管作業においても簡単に施工できる」(段落【0006】),「フレキシブル管自体が可撓性に優れるので芯だしや曲折配管などが自在にでき,数メートルづつの鉛管などを接続しつつ配管作業を行う場合に比較して飛躍的に作業性,施工性が向上する。・・・フレキシブル管を用いるので配管全体でも大きな曲がり部分を形成でき」(段落【0036】)ると記載されており,これらの記載によれば,刊行物1発明におけるユニット管装置は,フレキシブル管を構成単位として使用しているため,可撓性,柔軟性に富み,曲折配管が自在にできるものであると認めることができる。 そうすると,刊行物1発明においても,ユニット管装置は,その可撓性,柔軟性により,埋設障害物に給水配管の端部を臨ませた状態で使用することができるものと解されるから,この点に関する審決の認定に誤りはなく,原告の上記主張は採用することができない。 (2) 原告は,また,刊行物1発明は,道路に埋設された水道管本管と私有地内の止水栓とを接続する給水配管の構成に関するものであり,かつ,ユニット管装置10はそれほど高い可撓性を有していないのであるから,刊行物1発明においては,「埋設障害物を迂回してその『周辺領域』に『所定の幅』で掘削された迂回敷設溝」との技術的思想は開示されていないとし,これを肯定した審決は誤りである旨主張する。 そこで検討すると,原告の上記主張のうち,刊行物1発明のユニット管装置の可撓性を問題とする部分については,上記(1)で説示したことが,ほぼそのまま妥当する。すなわち,原告は,「周辺領域」を極めて狭い範囲内のものと理解した上で,上記ユニット管装置は,本件発明1のラセン管部材に比べ可撓性,柔軟性に劣るものであるから,原告のいう「周辺領域」を含む,より広い範囲で迂回敷設溝を設ける必要がある旨主張するものと解されるが,原告も自認するとおり,「周辺」とは「まわり」という意味であり(甲10),原告主張のようにごく狭い範囲に限定すべき理由はないし,上記(1)で説示したとおり,刊行物1発明のユニット管装置も可撓性,柔軟性に富み,曲折配管が自在にできるものであるから,原告の主張は失当であるというほかはない。 次に,原告の上記主張のうち,迂回敷設溝を「所定の幅」で掘削するとの点を問題とする部分については,原告は,本件発明1における「埋設障害物を迂回してその周辺領域に所定の幅で掘削された迂回敷設溝」とは,マンホールその他の上下方向に延在する埋設障害物の周囲に沿って水平方向に迂回する溝に限定されることを前提としているものと解される。しかしながら,本件明細書(甲2の1)の発明の詳細な説明に「【従来の技術】例えば,道路等には,水道管や下水道或いはガス管,電線ケーブル等の多くの地下施設が埋設されるとともに,例えば清掃用や保守用のために適当な間隔でそれぞれのマンホールが設置されている。したがって,水道管等の配管工事においては,しばしば既設の埋設障害物を迂回して導管を敷設する工事が行われる」(段落【0002】),「【発明の実施の形態】以下,本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。図面に示した導管の迂回配管装置及び迂回配管方法の実施の形態は,図1に示すように上述した従来例と同様に,既設の下水マンホール2に対して水道管1を迂回配管して敷設する場合に適用したものである。勿論,本発明は,かかる水道管1の下水マンホール2に対する迂回配管ばかりでなく,敷設経路上に埋設された既設のガス管や各種ケーブル及びこれらのマンホール等の埋設障害物の迂回配管にも適用される。また,本発明は,水道管1の迂回配管工事ばかりでなく,中水導管や下水管の迂回配管工事にも適用される。さらに,本発明は,上水や下水等の液体が流れる導管ばかりでなく,都市ガスや冷却ガス等の気体或いは粉体,粒体,ゲル状体等の固体からなる流体が流れる導管の迂回配管工事にも適用される」(段落【0020】)と記載されているように,本件発明1の構成要件である埋設障害物としては,マンホールのように上下方向に延在する障害物以外に,ガス管や各種ケーブルなど水平方向に延在する障害物もあることは明らかである。そうすると,本件発明1の迂回敷設溝が上下方向に延在する埋設障害物の周囲に沿って水平方向に迂回する溝であると限定することはできない。この点について,原告は,「幅」という語を根拠に,本件発明1の迂回敷設溝は水平方向に迂回する溝に限定されると主張するようであるが,本件のような「溝の『幅』」というような用例においては,「幅」という語が用いられているからといって,その溝が水平方向に延びるものであるか,上下方向に延びるものであるかは一義的に確定されるものではなく,本件明細書の上記記載を参酌すれば,本件発明1の解釈としては,上下方向へ迂回する溝を含む意味で用いられているものと解するのが相当である。 また,原告は,刊行物1発明においては,道路に埋設された水道管本管と家等が建てられた私有地内の止水栓とを接続する給水配管の構成が記載されているものであり,水道管本管と止水栓とをつなぐ給水配管の私有地への引き込み工事の場合には,埋設障害物を下側に迂回する敷設溝を設けるものであるから,そこから,埋設障害物の周囲に沿って「幅」方向に迂回するとの技術的思想を導き出すことはできないとして,刊行物1発明における埋設障害物からはマンホールその他の上下方向に延在する障害物は除外される旨主張する。しかしながら,刊行物1の記載からは,対象となる埋設障害物につき,そのような限定を加えるべき根拠は何ら見いだすことができないし,刊行物1発明を上下方向に延在する障害物に適用することを妨げるような技術上の障害も特段見当たらないから,原告の主張は採用することができない。 そうすると,本件発明1と刊行物1発明とは,その溝が上下方向に掘削されたものであると水平方向に掘削されたものであるとを問わず,埋設障害物の周囲に掘削された所定幅の迂回敷設溝内に敷設されるものである点で一致するということができるから,この点に関する審決の一致点の認定に誤りはなく,原告の上記主張は採用の限りではない。 (3) 原告は,審決における刊行物1発明の認定の誤りとして,上記第3の1(1)のウ及びエのとおり主張しているが,このうち,ウの点(刊行物1発明のユニット管装置が異なる曲率で曲がること)については,審決は,本件発明1と刊行物1発明との相違点として,ラセン管部材とユニット管部分との構成が異なるとの事実を認定しているのであるから(審決謄本11頁第3段落),格別問題とならないと解される。また,エの点(刊行物1発明のユニット管装置においては直管部分を切断するものとされていること)については,原告は,本件発明1と刊行物1発明との相違点としては特段の主張をしておらず,取消事由2(相違点の判断の誤り)における原告の主張(上記第3の2(2)イ)に収れんされるところであるので,後に改めて検討することとする(後記2(2))。 (4) 原告は,さらに,審決が刊行物1発明の認定を誤ったことを前提として,上記第3の1(2)のア〜ウのとおり,相違点の看過を主張するが,ア及びイの点については,上記(1)及び(2)で判断したとおり,審決の刊行物1発明についての認定に誤りはなく,原告主張の相違点自体が存在しないから,進んで,ウの点,すなわち,相違点として,「本件発明1の導管が水道管本管等の太径の導管であるのに対して,刊行物1発明が,水道管本管から私有地内の止水栓へ引き込み配管を行う際に用いる給水配管である点」があるのに,これを看過した旨の主張について検討すると,本件明細書の特許請求の範囲の記載においては,本件発明1は,内部に流体が流れる導管としか規定されておらず,太径であるとは記載されていない。加えて,本件明細書の発明の詳細な説明には,上記(2)のとおり,本件発明1の導管として,水道管のみならず,中水導管,下水管,さらに,都市ガスや冷却ガス等の気体或いは粉体,粒体,ゲル状体等の固体からなる流体が流れる導管が含まれることが記載されている(段落【0020】)のであるから,本件発明1の導管は水道管本管等の太径の導管であるとする原告の上記主張は,本件明細書の記載に基づかないものであって失当である。そして,刊行物1発明の導管は,内部に流体の流れる導管であるから,結局,原告主張の上記相違点は存在せず,この点に関する原告の主張も採用の限りでない。 なお,原告は,本件発明1及びそれを前提とする本件発明3について,本件明細書の特許請求の範囲に記載された「既設の埋設障害物」は「下水マンホール」であり,「導管」は「水道管本管」であるとも主張するが,本件発明1及び3の「導管」及び「既設の埋設障害物」をその主張のように限定して解釈することができないことは前示のとおりであり,原告の上記主張は失当である。 (5) 以上のとおり,原告の取消事由1の主張は理由がない。 2 取消事由2(本件発明1と刊行物1発明との相違点の判断の誤り)について (1) 原告は,刊行物2(甲4)の管は,ガス等の流体を流すためのものではなく,家屋等における電気配線等のために電気ケーブルを内部に通すために用いられるものであり,また,埋設管に関する技術ではなく,露出管に関する技術であるから,刊行物1発明と刊行物2発明とは技術分野を異にするものであって組み合わせることができないとし,さらに,刊行物1発明のユニット管装置及び刊行物2発明の蛇腹管は敷設時に切断されるものであるから,刊行物1発明と刊行物2発明とを組み合わせたとしても,本件発明1のように,迂回配管に用いるラセン管部材を切断することなく使用するとの技術的思想を導き出すことはできないとして,審決の相違点1に関する判断は誤りである旨主張する。 そこで検討すると,刊行物2(甲4)には,「【考案が解決しようとする課題】ところが,前記した従来の方法では夫々に問題がある。即ち,ベンダーによって管を直接曲げて接続する方法では,管径25φ以下の細い管の場合さほど困難ではないが,ガス管(配管用炭素鋼鋼管)のように硬い管や,比較的柔らかい電縫管(機械構造用炭素鋼鋼管)でも38φを越える径になると曲げ角度が30度程度に規制される等加工が困難となる。したがって前記したように障害物23を迂回するための手段としては無理がある」(段落【0004】)と記載されており,実施例における管が電気ケーブルを内部に通すためのものであるとしても,上記「ガス管」という用語自体から,内部に流体(ガス)を流す管が示唆されているものと解することができる。 また,仮に,原告の主張するとおり,刊行物2の管が内部に流体を流す管ではなく,埋設管でもないとしても,刊行物1発明と刊行物2発明とは配管構造という上位概念で一致し,可撓性のある管により障害物を迂回するとの課題・構成においても共通しているのであるから,両者を組み合わせることができないとする理由はないというべきである。 (2) 原告は,また,刊行物1発明のユニット管装置及び刊行物2発明の蛇腹管は敷設時に切断することが前提となっていると主張するが,そもそも刊行物2には蛇腹管を敷設時に切断する旨の記載は見当たらない上,仮に,原告主張のとおりであるとしても,刊行物2において,蛇腹管が障害物を迂回して管の端部と接続されるに足りる長さを有しており,接続体によって相対する管の端部とそれぞれ接続された配管構造が記載されていることは明らかであり,その際,迂回するに足りる長さが既知であれば,あらかじめ蛇腹管をその長さに設定しておき,現場で切断することなく接続できるようにすることは当然のことである。他方,本件発明1においても,ラセン管部材を切断することなく使用するのであれば,事前に迂回するに足りる長さを知った上で,あらかじめラセン管部材をその長さに設定していると解さざるを得ないのであるから,この点において両者に実質的な差異はない。そして,現場において切断する必要がなければ,あらかじめ両端に接続体を蛇腹管等の部材と一体にして設けることも,当業者にとって設計的事項にすぎないというべきである。 (3) そうすると,本件発明1は,刊行物1発明及び刊行物2発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものというべきであるから,審決の相違点1に関する判断に誤りはなく,原告の取消事由2の主張は理由がない。 3 取消事由3(本件発明3に係る容易想到性の認定判断の誤り)について 原告主張の取消事由3は,本件発明1に関する審決の認定判断の誤りを前提とするものであるところ,その前提を欠くことは上記1及び2のとおりであるから,取消事由3の主張は理由がない。 4 取消事由4(本件発明4に係る容易想到性の認定判断の誤り)について (1) 原告主張の取消事由4のうち,本件発明1に関する審決の認定判断に誤りがないことは上記1及び2で判示したとおりであるので,以下,本件発明4に固有の主張について検討すると,審決は,本件発明4と刊行物1発明とを対比して,一致点2として,「本件発明4が,流体が流れる導管を水道管とした点」を,相違点3として,「埋設障害物が,本件発明4は下水マンホールであるのに対し,甲第1号証記載の発明(注,刊行物1発明)は埋設管である点」をそれぞれ認定した(審決謄本12頁第4〜第5段落)上,上記相違点3について,「下水マンホールも下水等の埋設管も,水道管を配管する際の埋設障害物であることは,当業者にとって技術常識であり,甲第1号証(注,刊行物1)記載の埋設障害物を下水マンホールとすることは当業者であれば容易に思い付くことである。したがって,本件発明4は,本件発明1と同様に甲第1号証及び甲第2号証(注,刊行物2)記載の発明に基いて当業者であれば容易に発明をすることができたものである」と判断した(同頁第6〜第7段落)。 (2) これに対し,原告は,刊行物1及び刊行物2のいずれにも,下水マンホールの周辺領域に掘削された迂回敷設溝にラセン管とブレードと接続管が一体のラセン管部材の全体を湾曲させて配設するとの技術的思想は全く示唆されていないし,水道管本管の迂回配管に用いる本件発明4のラセン管部材は,刊行物1の給水配管の迂回に用いるユニット管装置10及び刊行物2の露出管である蛇腹管3よりも太径であり強度も高くなっているとして,本件発明4の容易想到性を肯定した審決の判断は誤りである旨主張する。 しかしながら,本件発明4に係る特許請求の範囲の記載においては,対象となる導管は「水道管」と規定されており,水道管本管であるとする原告の主張は,本件明細書の記載に基づかない主張であって失当である。そして,刊行物1発明における給水配管も水道管であるから,審決における上記一致点2の認定に誤りはない。 また,上記1(2)において判示したとおり,刊行物1記載の埋設障害物としてマンホールその他の上下方向に延在する障害物を除外すべき特段の理由もないから,刊行物1には,ユニット管装置10が上下方向に延在する埋設障害物の周囲に沿って水平方向に迂回することについても開示されているものと認められる。そうすると,埋設障害物をマンホールとした刊行物1発明のユニット管装置に,刊行物2発明を組み合わせて,導管の端部と接続されるに足りる長さのフレキシブル管により形成した上,両端にそれと一体にした接続管を設けることは,当業者が容易に想到し得ることであるから,上記相違点3に関する審決の判断に誤りはない。 (3) 以上によれば,原告の取消事由4の主張は理由がない。 5 以上のとおり,原告主張の取消事由はいずれも理由がなく,他に審決を取り消すべき瑕疵は見当たらない。 よって,原告の請求は理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。 |
裁判長裁判官 | 篠原勝美 |
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裁判官 | 岡本岳 |
裁判官 | 早田尚貴 |