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関連ワード 承継 /  特定承継 /  設定登録 /  移転登録 / 
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事件 平成 16年 (ワ) 19763号 特許権移転登録抹消登録手続請求事件
原告A
被告 株式会社ハッピー・ツリー
同訴訟代理人弁護士 河嶋昭
裁判所 東京地方裁判所
判決言渡日 2005/11/30
権利種別 特許権
訴訟類型 民事訴訟
主文 1 本件各訴えをいずれも却下する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
請求
1 被告は,原告に対し,別紙特許権目録記載1の特許権について,特許庁平成16年7月14日受付第003971号(同月29日登録)本権の移転登録の抹消登録手続をせよ。
2 被告は,原告に対し,別紙特許権目録記載2の特許権について,特許庁平成16年7月14日受付第003971号(同月29日登録)本権の移転登録の抹消登録手続をせよ。
3 原告が,平成16年7月29日から平成17年2月23日までの間,別紙特許権目録記載1及び2の各特許権の特許権者であったことを確認する。
事案の概要
本件は,別紙特許権目録記載1及び2の各特許権(以下「本件各特許権」という。)について,原告から被告に対する本権の移転登録(以下,単に「移転登録」という。)がされ,その後,被告から再度,原告に対する移転登録がされている状況において,原告が,本件各特許権が被告に移転した事実はないとして,@被告に対する移転登録の抹消登録手続及びA登録上,被告が特許権者とされていた平成16年7月29日から平成17年2月23日までの間,原告が特許権者であったことの確認を求めたのに対し,被告が,本案前の答弁として,本件各訴えは,訴えの利益がなく不適法であるとして却下を求め,仮に,訴えの利益が認められるとしても,本件各特許権は被告に譲渡され,本件各特許権についての移転登録は適法にされた旨主張して争っている事案である。
1 前提となる事実等(争いがない。) (1) 原告は,別紙特許権目録記載1の特許権(以下「本件特許権1」という。)について,平成7年7月28日に設定登録を受けて特許権者となり,別紙特許権目録記載2の特許権(以下「本件特許権2」という。)について,平成12年10月6日に設定登録を受けて特許権者となった。
(2) 本件各特許権について,平成16年7月29日,特定承継を原因として,被告に対する各移転登録(特許庁平成16年7月14日受付第003971号,以下「本件各移転登録」という。)がされた。
(3) 本件各特許権について,平成17年2月23日,再度,原告に対する移転登録(特許庁平成16年9月2日受付)がされた(弁論の全趣旨)。
2 争点 (1) 訴えの利益の有無(争点1) (2) 本件各特許権の被告に対する移転の有無及び本件各移転登録の有効性(争点2) 3 争点に対する当事者の主張 (1) 争点1(訴えの利益の有無)について (被告の主張) 本件各訴えは,訴えの利益がなく,不適法である。
(原告の反論) 被告の主張は争う。
(2) 争点2(本件各特許権の被告に対する移転の有無及び本件各移転登録の有効性)について (被告の主張) 仮に,本件各訴えについて,訴えの利益が認められるとしても,以下のとおり,本件各特許権は被告に移転されたものである。
ア 原告は,平成14年9月25日,米国法人であるグローバルエーインクとの間で,本件各特許権を含む原告保有の各特許権をグローバルエーインクに譲渡する旨を合意した。同合意によれば,同日から6か月以内に,グローバルエーインクが原告に6000万円を支払った時点で,前記各特許権がグローバルエーインクに譲渡されることとされた。
その後,平成15年1月22日までに,グローバルエーインクは,原告に対し,合計8545万8397円を支払った。
イ グローバルエーインクは,平成15年3月10日,被告との間で,本件各特許権を譲渡する旨の合意をした。
被告は,同合意に基づいて,平成16年7月14日,本件各特許権の移転登録手続を申請して,同月29日に本件各移転登録を得た。
(原告の反論) ア 被告の主張は否認する。
イ 原告被告間で,本件各特許権を譲渡する合意はなく,被告に対する本件各移転登録は,偽造書類によってされたものであり,無効である。
争点に対する判断
1 争点1(訴えの利益の有無)について (1) 前記前提となる事実及び弁論の全趣旨によれば,原告は,本件特許権1について平成7年7月28日に設定登録を受け,本件特許権2について平成12年10月6日に設定登録を受け,それぞれ特許権者になったこと,本件各特許権については,平成16年7月29日,特定承継を原因として,被告に対する本件各移転登録がされているが,平成17年2月23日に,再度原告に対する移転登録がされていることが認められる。
(2) そこで,まず,被告に対する本件各移転登録の抹消登録手続を求める訴えについて検討すると,原告が求めているのは,本件各特許権に基づく,妨害排除請求類似の移転登録の抹消登録手続請求であると解されるところ,当該訴えは,権利行使の妨げとなるものを排除する必要がある場合に認められるものであるから,真実とは異なる権利変動を示す登録が過去にされていたとしても,現在の登録名義が現在の権利関係に一致している場合には,特段の事情がない限り,過去の登録を抹消することを求める法律上の利益がないというべきである。本件では,本件各特許権について,いったん被告を権利者とする本件各移転登録がされたものの,その後,原告に再度移転登録がされているのであるから,登録上被告が権利者であるとの状態はすでに消滅しているものである。
そして,被告は,仮に本件各訴えについて訴えの利益が肯定された場合,登録上被告が権利者とされていた平成16年7月29日から平成17年2月23日までの間の本件各特許権の帰属について,前記争点2における主張記載のとおり,自己に帰属すると主張するものであるが,他に民事上の法律的な主張をするものではない。また,原告においても,前記期間の登録上の権利者が被告とされていたことを是正すべき法律上の利益があることを主張せず,本件記録上,他にこれを認めることもできない。
以上のことからすると,被告に対する本件各移転登録の抹消登録手続を求める訴えは,訴えの利益を欠くものといわざるを得ない。
(3) 次に,原告が,平成16年7月29日から平成17年2月23日までの間,本件各特許権の特許権者であったことの確認を求める訴えについて検討すると,この訴えは,過去の一定期間の権利関係の確認を求めるものであり,特段の事情がない限り,即時確定の利益を欠くものとして,訴えの利益が否定されるべきである。
そして,被告は,前記(2)のとおり,仮に本件各訴えについて訴えの利益が肯定された場合,この間の本件各特許権の帰属について,自己に帰属すると主張するものであるが,現在の権利関係についての主張をするものではなく,他に民事上の法律的な主張をするものでもない。また,原告においても,前記期間,特許権が原告にあることの確認を求める法律上の利益があることを主張せず,本件記録上,他にこれを認めることもできない。
そうすると,原告が,前記期間において,本件各特許権の特許権者であったことの確認を求める訴えも,訴えの利益を欠くものと解される。
2 小括 そうすると,他の点を論ずるまでもなく,本件各訴えは,訴えの利益を欠く不適法なものであるから,いずれも却下されるべきである。
結論
以上の次第で,本件各訴えをいずれも却下することとし,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 清水節
裁判官 山田真紀
裁判官 東崎賢治