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関連審決 異議2002-72588
関連ワード 進歩性(29条2項) /  容易に発明 /  周知技術 /  発明の詳細な説明 /  参酌 /  実施 /  構成要件 /  設定登録 /  請求の範囲 /  取消決定 / 
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事件 平成 15年 (行ケ) 208号 特許取消決定取消請求事件
原告 三菱電機株式会社
同訴訟代理人弁理士 高瀬彌平
同 永井豊
被告 特許庁長官今井康夫
同指定代理人 稲積義登
同 森正幸
同 高橋泰史
同 涌井幸一
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 2004/01/28
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
主文 1 特許庁が異議2002−72588号事件について平成15年3月31日にした異議の決定を取り消す。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
事実及び理由
請求
主文同旨
事案の概要
1 争いのない事実 (1) 原告は、発明の名称を「液晶表示装置」とする特許第3276557号(平成8年5月23日出願、特願平8-128797号、平成14年2月8日設定登録。)の特許権(以下「本件特許」という。)を有する。
本件特許につき、訴外Aから、本件特許の請求項1ないし3に係る特許について特許異議の申立てがなされ、特許庁は、同申立てを、異議2002-72588号事件として審理した結果、平成15年3月31日、「特許第3276557号の請求項1ないし3に係る特許を取り消す。」との決定(以下「本件決定」という。)をし、その謄本は、同年4月21日、原告に送達された。
(2) 本件特許の請求項1ないし3記載の発明(以下「本件発明1」ないし「本件発明3」といい、これらを併せて「本件各発明」という。)の要旨は、本件決定に記載された以下のとおりである。
【請求項1】透明絶縁性基板上に複数本形成された走査電極配線と、この走査電極配線と交差する複数本の信号電極配線と、上記走査電極配線と信号電極配線の各交点に設けられた薄膜トランジスタと、この薄膜トランジスタに接続された透明導電膜よりなる画素電極を備えたTFTアレイ基板、透明電極およびカラーフィルタを有し、上記TFTアレイ基板の画像表示部の周辺部に形成されたシール領域において上記TFTアレイ基板に接合され、上記TFTアレイ基板との間に液晶を挟持する対向電極基板、上記TFTアレイ基板の画像表示部の周辺部に実装される走査電極駆動用集積回路および信号電極駆動用集積回路を備えた液晶表示装置であって、上記TFTアレイ基板の4辺中のいずれか1辺に、上記走査電極駆動用集積回路および信号電極駆動用集積回路にそれぞれ接続される走査電極側端子および信号電極側端子を並置すると共に、上記走査電極配線および信号電極配線と上記走査電極側端子及び信号電極側端子とを上記画像表示部周辺に形成される導電パターンによりそれぞれ接続し、かつ、上記画像表示部の角のシール領域において上記TFTアレイ基板と対向電極との間隔が均一に保たれるように、上記TFTアレイ基板上の走査電極側端子および信号電極側端子が並置された1辺と対向する辺の端部近傍に亘って上記導電パターンを引き回したことを特徴とする液晶表示装置。 【請求項2】走査電極側端子および信号電極側端子は、TFTアレイ基板の画像表示部の長辺のいずれか一辺に、同一方向に並置されていることを特徴とする請求項1記載の液晶表示装置。 【請求項3】走査電極駆動用集積回路は、TFTアレイ基板の画像表示部の長辺のいずれか一辺の両端部に配置され、走査電極配線用の導電パターンは上記画像表示部の両短辺から一方の長辺に向かって引き回されていることを特徴とする請求項2記載の液晶表示装置。
(3) 本件決定は、別紙異議の決定書写し記載のとおり、本件各発明が、特開平6-11721号公報(甲3、以下「引用例1」という。)に記載された発明(以下「引用発明1」という。)及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものであり、同法113条2号に該当するので取り消されるべきであるとした。
2 原告主張の本件決定の取消事由の要点 本件決定は、本件発明1の要旨を誤認したことにより、本件発明1と引用発明1との相違点bの判断を誤り(取消事由1)、その結果、本件発明1と同様に、
本件発明2及び3の進歩性の判断を誤った(取消事由2)ものであるから、違法として取り消されるべきである。
(1) 相違点bの判断誤り(取消事由1) ア 本件発明1の要旨について 本件決定は、本件発明1に関する請求項1(以下「本件請求項1」という。)の記載並びに特許明細書及び図面(甲2、以下「本件明細書等」という。)の記載【0011】に関して、「あたかも、本件発明1が、電極側端子が並置された1辺と反対側の辺の端部近傍に亘って導電パターンを引き回すとの技術内容を意味しているような記載がされているが、このような技術内容については、本件出願当初の明細書又は図面に一切記載がなく、また、本件明細書等においても、この技術内容に相当する具体的な実施例は何も記載されていないところからみて、本来は、「…電極側端子が並置された1辺と対向する画像表示部辺の外側端部近傍に亘って上記導電パターンを引き回した」ことを意図するものと認められる。いずれにせよ、上記の「電極側端子が並置された1辺と対向する辺の端部近傍」が本件図面の図1でいえば、その画像表示部1の上側角周辺部を意味しており、また、引用刊行物でいえば、図1における周縁部11のうち、符号31から出る線の終端部周辺に対応するものであることは明らかである。」(5頁)と判断するが、これは、相違点bに関する判断の前提となる本件発明1の要旨の認定を誤ったものである。以下、その根拠を詳述する。
本件発明1は、前示発明の要旨のとおり、「上記画像表示部の角のシール領域において上記TFTアレイ基板と対向電極との間隔が均一に保たれるように、上記TFTアレイ基板上の走査電極側端子および信号電極側端子が並置された1辺と対向する辺の端部近傍に亘って上記導電パターンを引き回したこと」とするものである。この構成要件のうち、「上記TFTアレイ基板上の走査電極側端子および信号電極側端子が並置された1辺」とは、TFTアレイ基板を構成する4辺のうち、走査電極駆動用集積回路に接続された走査電極端子及び信号用電極駆動用集積回路に接続された信号電極端子が並置されている1辺を指す。次に、「並置された1辺と対向する辺」とは、TFTアレイ基板を構成する4辺のうち、上記の1辺に対向する辺を指す。なぜなら、「対向」とは、辞書(甲5、広辞苑第3版1442頁)によれば、「互いにむきあうこと」を意味し、矩形の一辺に対向する辺とは、当然に同一矩形における互いに向き合った一辺、すなわち、当該一辺と平行関係を有する辺を指すことは明白である。さらに、「対向する辺の端部近傍」とは、
TFTアレイ基板の対向する辺の両端部近傍の画像表示部周辺を意味する。
以上のことから、本件発明1における導電パターンは、本件明細書等の図1(以下「本件図1」という。)に示すように、走査電極駆動用集積回路に接続された走査電極端子及び信号用電極駆動用集積回路に接続された信号電極端子が並置されたTFTアレイ基板の上側の辺から、同じくTFTアレイ基板の上記上側の辺に対向する下側の辺の端部近傍に亘って、つまり、左右両辺の周辺に沿って下側の辺の端部近傍に至るまで引き回されていることが一義的に理解できる。
これに対し、被告は、TFTアレイ基板の上側の辺と画像表示部の上側の辺とが対向する位置関係にあると判断し、本件請求項1の「対向する辺」とは、
本件図1のTFTアレイ基板の下側の辺ではなく、画像表示部の上側の辺であると主張するが、本件請求項1において、「辺」という構成要件は、上記に先行して「上記TFTアレイ基板の4辺中のいずれか1辺に」と記述されるように、TFTアレイ基板の辺に関してのみであり、画像表示部の辺は全く言及されていない。したがって、画像表示部の一辺が唐突に「対向する辺」として登場する被告及び本件決定の解釈は、論理的に困難を伴うものである。
イ 相違点bの判断について 本件決定は、本件発明1と引用発明1との相違点bについて、引用発明1では、「配線31が画像表示部角の外側近傍に配置されていることはその図1、
図3からみて明らかであり、この画像表示部角の外側近傍に配置されている配線31が、従来技術におけるダミー配線の機能を果たし、本件発明1と同様に、画像表示部の角のシール領域においてTFTアレイ基板と対向電極との間隔が均一に保たれるようにするのと作用効果を奏するものであることは明らかである」(5頁)と判断するが、誤りである。
すなわち、引用発明1で配線31が画像表示部の外側近傍に配置されているのは、上記認定のとおり、引用例1の図1における基板の下側の辺の両端部近傍のみであり、配線31は、基板の上側の辺の両端部に達していない。つまり、引用発明1では、配線(本件発明1でいう導電パターン)が基板の上側の辺の端部に達するようには引き回されていないため、上側端部領域には配線に相当するものが存在しない。
したがって、本件発明1と引用発明1では、基板上での導電パターン(配線)の引き回し方が大きく相違するため、本件発明1の効果である、画像表示部の角の近傍でのセルギャップの面内不均一に起因する表示不良を防止するという効果は、引用発明1では生じないのである。
(2) 本件発明2及び3の進歩性判断の誤り(取消事由2) 本件発明2及び3は、本件発明1を更に限定したものであるから、当業者が、本件発明1を容易に発明することができない以上、本件発明2及び3を容易に発明することができないことも同様であり、これらの発明についての本件決定も取り消されるべきである。
3 被告の反論の要点 本件決定の認定・判断は正当であり、原告主張の取消事由はいずれも理由がない。
(1) 取消事由1について ア 本件発明1における「画像表示部の角のシール領域において上記TFTアレイ基板と対向電極との間隔が均一に保たれるように、上記TFTアレイ基板上の走査電極側端子および信号電極側端子が並置された1辺と対向する辺の端部近傍に亘って上記導電パターンを引き回した」との技術内容は、TFTアレイ基板と対向電極との間隔(セルギャップ)を均一にするために、従来ダミー配線が必要であったところ、その部位に導電パターンを引き回すことにより、前記ダミー配線を不要とするというものであるから、本件請求項1において、「TFTアレイ基板と対向電極との間隔が均一に保たれるように」との記載の下に導電パターンを引き回す部位を規定している「電極側端子が並置された1辺と対向する辺の端部近傍」とは、従来、ダミー配線が設けられていた部位であることが明らかであり、当該部位は、本件決定が解釈したとおりの部位である。
このことは、本件特許の出願当初の明細書及び図面(乙1、以下「当初明細書等」という。)の記載並びに及び平成13年10月3日付手続補正書による手続補正(以下「本件補正」という。)の経緯を参照することにより、一層明瞭になる。
すなわち、当初明細書等の特許請求の範囲の請求項6に係る発明の作用効果が、段落【0014】の後半部に「また、導電パターンを画像表示部周辺部の端部にまで引き回し、TFTアレイ基板と対向電極基板との間隔が面内で均一に保たれるように形成したので、従来の液晶表示装置に設けられていたダミー配線が不要となる。」と記載され、この記載に関し、段落【0012】には、「さらに、本実施の形態による導電パターンは、画像表示部周辺部の端部にまで引き回され、TFTアレイ基板と対向電極基板との間隔が面内で均一に保たれるように形成されているので、図8に示す従来例の導電パターンで必要であったセルギャップを均一にするためのダミー配線31は不要となる。」と記載されている。これらの記載の意味するところは、その従来例を示す図8(本件明細書等の図8と同じ。)においてダミー配線31が設けられていた部分(これについて段落【0004】及び【0005】には「画像表示部1の角の近傍」と記載されている。)を、図1(本件明細書等の図1と同じ。)のように導電パターン12がカバーするので、従来の液晶表示装置に設けられていたダミー配線が不要となるということであり、上記請求項6において導電パターンを引き回す「画像表示部周辺部の端部」とは、図1における画像表示部の上側端部であることが理解される。
そして、本件補正の結果、当初明細書等における「走査電極配線および信号電極側配線とそれぞれ接続された導電パターンをTFTアレイ基板上の画像表示部周辺で引き回し、走査電極側端子と信号電極側端子をTFTアレイ基板の1辺に並置したので、パネルサイズを縮小することができ、マザーガラス基板からのパネル取り数を増やすことができる。また、パネルサイズの縮小により、ガラス基板上におけるパネル周囲の領域に余裕ができ、製造の歩留まり上有利である」とする請求項1に係る発明に、「導電パターンを画像表示部周辺部の端部にまで引き回し、TFTアレイ基板と対向電極基板との間隔が面内で均一に保たれるように形成したので、従来の液晶表示装置に設けられていたダミー配線が不要となる」という請求項6に係る発明の内容が取り込まれたものであるから、本件補正後の本件請求項1の「電極側端子が並置された1辺と対向する辺の端部近傍」の「端部」とは、
当初明細書等の請求項6に記載される「画像表示部周辺部の端部」のことであり、
また、当初明細書等の段落【0004】及び【0005】には、従来ダミー配線を設ける必要があった部位について「画像表示部1の角の近傍」との記載があるところから、本件発明1の「端部近傍」とは、「画像表示部周辺部の角の近傍」であることが明らかである。
なお、「画像表示部周辺部の角」は、4つあるわけであるが、本件発明1は、前記のとおり、従来必要であったダミー配線を不要とするものであるから、
導電パターンが引き回されるのは、ダミー配線が必要とされていた角だけであって、これは、本件図1でいえば上側の角、すなわち、TFT基板の電極側端子が並置された1辺と対向する角のみである。このことを明確にするために、本件補正に際して、「電極側端子が並置された1辺と対向する」との表現を用いたものと認められる。
以上のことから、本件発明1における「電極側端子が並置された1辺と対向する辺」とは、本件明細書の請求項2及び3に「画像表示部の長辺」、また、
請求項3に「画像表示部の両短辺」との記載がなされていることも考慮すれば、
「画像表示部の辺」であることが明らかである。本件発明1の「電極側端子が並置された1辺と対向する辺の端部近傍」とは、本来、「電極側端子が並置された1辺と対向する画像表示部辺の端部近傍」、あるいは、当初明細書等の請求項6の記載表現を用いるならば、「電極側端子が並置された1辺と対向する画像表示部周辺の端部近傍」とでも記載すべきところ、前者の「画像表示部辺」、あるいは、後者の「画像表示部周辺」を、単に「辺」と表現したものと考えられる。
イ 相違点bの判断について 以上のとおり、本件請求項1の「電極側端子が並置された1辺と対向する辺の端部近傍」とは、本件図1でいえば画像表示部1の上側角周辺部を意味すると解釈するのが妥当であるから、本件決定に記載のとおり、引用発明1との相違点bは格別のものとはいえず、作用効果において相違があるとする原告の主張は失当である。
(2) 取消事由2について 原告は、本件発明1についての本件決定の判断が誤りであるので、本件発明2及び3についての本件決定の判断も誤りである旨主張するが、上記のとおり、
本件発明1についての判断に誤りはなく、本件発明2及び3についての原告の主張も失当である。
当裁判所の判断
1 相違点bの判断誤り(取消事由1)について (1) 本件決定は、本件発明1と引用発明1との相違点bの判断を行う前提として、相違点bの構成に係る本件発明1の要旨について、「「電極側端子が並置された1辺と対向する辺の端部近傍」が本件図面の図1でいえば、その画像表示部1の上側角周辺部を意味しており、また、引用刊行物でいえば、図1における周縁部11のうち、符号31から出る線の終端部周辺に対応するものであることは明らかである。」(5頁)と判断し、本件発明1の「電極側端子が並置された1辺と対向する辺」が、「TFTアレイ基板の辺」ではなく、「画像表示部の辺」であると認定する(当事者間に争いがない。)。
しかしながら、本件発明1の要旨は、前示認定のとおり、「TFTアレイ基板の4辺中のいずれか1辺に、上記走査電極駆動用集積回路および信号電極駆動用集積回路にそれぞれ接続される走査電極側端子および信号電極側端子を並置すると共に、上記走査電極配線および信号電極配線と上記走査電極側端子及び信号電極側端子とを上記画像表示部周辺に形成される導電パターンによりそれぞれ接続し、
かつ、上記画像表示部の角のシール領域において上記TFTアレイ基板と対向電極との間隔が均一に保たれるように、上記TFTアレイ基板上の走査電極側端子および信号電極側端子が並置された1辺と対向する辺の端部近傍に亘って上記導電パターンを引き回したことを特徴とする液晶表示装置」であり、TFTアレイ基板が4辺であることを明示した上で、その1辺に、走査電極駆動用集積回路及び信号電極駆動用集積回路にそれぞれ接続される走査電極側端子及び信号電極側端子を並置するものであるから、これと「対向する辺」が、当該アレイ基板上の対向する辺であることは、極めて当然のことといわなければならない。このことは、特許請求の範囲の記載に基づいて、一義的に明確に理解できる技術事項であるから、発明の詳細な説明の記載等を参酌するまでもないことである(最高裁平成3年3月8日第2小法廷判決・民集45巻3号123頁参照)。
(2) 被告は、本件発明1における「電極側端子が並置された1辺と対向する辺」が、本件明細書の請求項2及び3に「画像表示部の長辺」、また、請求項3に「画像表示部の両短辺」との記載がなされていることも考慮すれば、「画像表示部の辺」であることが明らかであると主張する。
しかしながら、本件請求項1には、前示のとおり、TFTアレイ基板が4辺であることは明示されているが、画像表示部の「辺」に関する記載は皆無であり、被告が指摘するように、請求項2及び3で「画像表示部の辺」が問題となる場合には、「画像表示部の長辺」や「画像表示部の両短辺」として、その旨が明記されているわけであるから、単なる「辺」が「画像表示部の辺」であるとは、到底、
解することができない。
したがって、被告の上記主張を採用する余地はない。
また、被告は、本件特許の当初明細書等(乙1)の記載及び本件補正の経緯を参照すると、本件発明1が、従来の液晶表示装置に設けられていたダミー配線を不要とするために導電パターンを引き回したものであり、従来のダミー配線を設ける必要があった「画像表示部周辺部の角の近傍」が本件発明1の「端部近傍」に該当することが明らかであるから、「電極側端子が並置された1辺と対向する辺」が「画像表示部の辺」であると主張する。
しかしながら、「電極側端子が並置された1辺と対向する辺」がアレイ基板上の対向する辺であることは、前示のとおり、特許請求の範囲の記載に基づいて、一義的に明確に理解できる技術事項であるから、発明の詳細な説明の記載を参酌するまでもなく、まして、当初明細書等の記載や本件補正の経緯を参照するまでもないことである。
したがって、被告の上記主張は、その前提において誤りがあり、到底、採用することができない。
(3) 以上のとおり、本件決定が、本件発明1の「電極側端子が並置された1辺と対向する辺」を「画像表示部の辺」であると認定したことは誤りであり、このことを前提として、本件発明1の導電パターンの引き回し位置を認定して相違点bの判断を行ったことも誤りであるといわなければならない。
したがって、この点に関する原告の主張には理由があり、本件発明1の導電パターンの引き回し位置を、アレイ基板上の対向する辺の端部近傍として正しく認定した上で、相違点bの判断を行うべきものといえる。
2 本件発明2及び3の進歩性判断の誤り(取消事由2)について 前示のとおり、本件発明1に関する本件決定の相違点bの判断には誤りがあるから、これを前提とする本件発明2及び3に関する本件決定の判断(6頁)も、
誤りであるといわなければならない。
3 結論 そうすると、本件決定は、本件発明1の要旨の認定を誤った結果、本件各発明の相違点bに関する判断を誤ったものであり、この誤りが結論に影響を及ぼすことは明らかであるから、本件決定は、取消しを免れない。
よって、原告の本訴請求は理由があるからこれを認容することとし、主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 北山元章
裁判官 青柳馨
裁判官 清水節