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審判番号(事件番号) データベース 権利
平成17行ケ10767審決取消請求事件 判例 特許
関連ワード 進歩性(29条2項) /  容易に発明 /  周知技術 /  公知技術 /  設定登録 /  訂正審判 /  請求の範囲 /  減縮 /  取消決定 / 
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事件 平成 15年 (行ケ) 233号 特許取消決定取消請求事件
原告 株式会社半導体エネルギー研究所
訴訟代理人弁理士 福田賢三
同 福田伸一
同 加藤恭介
被告 特許庁長官今井康夫
指定代理人 町田光信
同 平井良憲
同 大野克人
同 涌井幸一
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 2004/01/29
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
主文 1 特許庁が異議2002−70682号事件について平成15年4月16日にした決定を取り消す。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
全容
1 原告の請求 (1) 主文1項と同旨。
(2) 訴訟費用は被告の負担とする。
2 当事者間に争いのない事実 (1) 特許庁における手続の経緯 原告は,発明の名称を「アクティブ型表示装置およびビデオカメラ」とする特許第3222446号の特許(平成3年2月16日に出願された特願平3-77317号の一部を平成12年1月24日に新たな特許出願としたものである。平成13年8月17日設定登録,以下「本件特許」という。登録時の請求項の数は19である。)の特許権者である。
本件特許に対し,請求項1ないし19のすべてにつき,特許異議の申立てがあり,特許庁は,この申立てを,異議2002-70682号事件として審理した。原告は,この審理の過程で,平成14年9月17日,本件特許の出願に係る願書に添付した明細書の訂正の請求をした。特許庁は,上記事件につき審理し,その結果,平成15年4月16日,この訂正を認めた上で(以下「本件第1訂正」という。本件第1訂正により,請求項の数が13となった。),「特許第3222446号の請求項1ないし13に係る特許を取り消す。」(取り消された請求項に係る発明をまとめて「本件発明」という。)との決定をし,同年5月6日にその謄本を原告に送達した。
(2) 決定の理由 要するに,本件発明は,いずれも公知技術及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定に該当する,したがって,本件特許は,請求項1ないし13のいずれについても,この規定に違反して登録されたものである,ということである。
(3) 訂正審判の確定 原告は,本訴係属中に,本件特許の出願に係る願書に添付した明細書の訂正をすることについて審判を請求した。特許庁は,これを訂正2003-39166号事件として審理し,その結果,平成15年10月30日に訂正(以下「本件第2訂正」という。)をすることを認める旨の審決(以下「本件訂正審決」という。)をし,これが確定した。
3 本件第1訂正後の本件特許の特許請求の範囲 「【請求項1】ガラス基板上に形成され,チャネル形成領域がゲイト電極の下に設けられた薄膜トランジスタ,前記薄膜トランジスタの上に形成された平坦化膜および前記薄膜トランジスタのドレイン電極にコンタクトした透明導電膜でなる画素電極を有し, 前記ドレイン電極は,層間絶縁物の上に設けられ,且つ,該層間絶縁物に形成された第1のコンタクトホールを介して前記薄膜トランジスタのドレインに接続され, 前記画素電極は,前記平坦化膜の上に設けられ,且つ,該平坦化膜に形成された第2のコンタクトホールを介して前記ドレイン電極に接続され, 前記第2のコンタクトホールは,前記第1のコンタクトホールに重ならないことを特徴とするアクティブ型表示装置。 【請求項2】ガラス基板上に形成され,チャネル形成領域がゲイト電極の下に設けられた薄膜トランジスタ,前記薄膜トランジスタの上に形成された平坦化膜および前記薄膜トランジスタのドレイン電極にコンタクトした透明導電膜でなる画素電極を有し, 前記ドレイン電極は,層間絶縁物の上に設けられ,且つ,該層間絶縁物に形成された第1のコンタクトホールを介して前記薄膜トランジスタのドレインに接続され, 前記画素電極は,前記平坦化膜の上に設けられ,且つ,該平坦化膜に形成された第2のコンタクトホールを介して前記ドレイン電極に接続され, 前記第2のコンタクトホールは,前記第1のコンタクトホールに重ならず, 前記平坦化膜の上面から前記第2のコンタクトホールの内面にかけて湾曲した面を有することを特徴とするアクティブ型表示装置。 【請求項3】ガラス基板上に形成され,チャネル形成領域がゲイト電極の下に設けられた薄膜トランジスタ,前記薄膜トランジスタの上に形成された平坦化膜および前記薄膜トランジスタのドレイン電極にコンタクトした透明導電膜でなる画素電極を有し, 前記ドレイン電極は,層間絶縁物の上に設けられ,且つ,該層間絶縁物に設けられた第1のコンタクトホールを介して前記薄膜トランジスタのドレインに接続され, 前記画素電極は,前記平坦化膜の上に設けられ,且つ,該平坦化膜に設けられた第2のコンタクトホールを介して前記ドレイン電極に接続され, 前記第2のコンタクトホールは,前記第1のコンタクトホールに重ならず, 前記平坦化膜の上面から前記第2のコンタクトホールの内面にかけて前記第2のコンタクトホールの直径が連続的に小さくなり,かつ,湾曲した面を有することを特徴とするアクティブ型表示装置。 【請求項4】請求項1乃至請求項3のいずれか一において,前記層間絶縁物は酸化珪素膜であることを特徴とするアクティブ型表示装置。 【請求項5】請求項1乃至請求項4のいずれか一において,前記平坦化膜は有機樹脂からなることを特徴とするアクティブ型表示装置。 【請求項6】請求項1乃至請求項5のいずれか一に記載のアクティブ型表示装置は,アクティブ型液晶表示装置であることを特徴とするアクティブ型表示装置。 【請求項7】アクティブ型表示装置をビューファインダーに用いたカメラであって,前記アクティブ型表示装置は, ガラス基板上に形成され,チャネル形成領域がゲイト電極の下に設けられた薄膜トランジスタ,前記薄膜トランジスタの上に形成された平坦化膜および前記薄膜トランジスタのドレイン電極にコンタクトした透明導電膜でなる画素電極を有し, 前記ドレイン電極は,層間絶縁物の上に設けられ,且つ,該層間絶縁物に形成された第1のコンタクトホールを介して前記薄膜トランジスタのドレインに接続され, 前記画素電極は,前記平坦化膜の上に設けられ,且つ,該平坦化膜に形成された第2のコンタクトホールを介して前記ドレイン電極に接続され, 前記第2のコンタクトホールは,前記第1のコンタクトホールに重ならないことを特徴とするカメラ。 【請求項8】アクティブ型表示装置をビューファインダーに用いたカメラであって,前記アクティブ型表示装置は, ガラス基板上に形成され,チャネル形成領域がゲイト電極の下に設けられた薄膜トランジスタ,前記薄膜トランジスタの上に形成された平坦化膜および前記薄膜トランジスタのドレイン電極にコンタクトした透明導電膜でなる画素電極を有し, 前記ドレイン電極は,層間絶縁物の上に設けられ,且つ,該層間絶縁物に設けられた第1のコンタクトホールを介して前記薄膜トランジスタのドレインに接続され, 前記画素電極は,前記平坦化膜の上に設けられ,且つ,該平坦化膜に設けられた第2のコンタクトホールを介して前記ドレイン電極に接続され, 前記第2のコンタクトホールは,前記第1のコンタクトホールに重ならず, 前記平坦化膜の上面から前記第2のコンタクトホールの内面にかけて湾曲した面を有することを特徴とするカメラ。 【請求項9】アクティブ型表示装置をビューファインダーに用いたカメラであって,前記アクティブ型表示装置は, ガラス基板上に形成され,チャネル形成領域がゲイト電極の下に設けられた薄膜トランジスタ,前記薄膜トランジスタの上に形成された平坦化膜および前記薄膜トランジスタのドレイン電極にコンタクトした透明導電膜でなる画素電極を有し, 前記ドレイン電極は,層間絶縁物の上に設けられ,且つ,該層間絶縁物に設けられた第1のコンタクトホールを介して前記薄膜トランジスタのドレインに接続され, 前記画素電極は,前記平坦化膜の上に設けられ,且つ,該平坦化膜に設けられた第2のコンタクトホールを介して前記ドレイン電極に接続され, 前記第2のコンタクトホールは,前記第1のコンタクトホールに重ならず, 前記平坦化膜の上面から前記第2のコンタクトホールの内面にかけて前記第2のコンタクトホールの直径が連続的に小さくなり,かつ,湾曲した面を有することを特徴とするカメラ。 【請求項10】請求項7乃至請求項9のいずれか一において,前記層間絶縁物は酸化珪素膜であることを特徴とするカメラ。 【請求項11】請求項7乃至請求項10のいずれか一において,前記平坦化膜は有機樹脂からなることを特徴とするカメラ。 【請求項12】請求項7乃至請求項11のいずれか一に記載のアクティブ型表示装置は,アクティブ型液晶表示装置であることを特徴とするカメラ。 【請求項13】請求項7乃至請求項12のいずれか一に記載のカメラは,ビデオカメラであることを特徴とするカメラ。」 4 本件第2訂正後の本件特許の特許請求の範囲(下線部が本件第1訂正後のものと比較した場合の訂正箇所である。) 【請求項1】ガラス基板上に形成され,チャネル形成領域がゲイト電極の下に設けられた薄膜トランジスタ,前記薄膜トランジスタの上に形成された平坦化膜および前記薄膜トランジスタのドレイン電極にコンタクトした透明導電膜でなる画素電極を有し, 前記ドレイン電極は,層間絶縁物の上に設けられ,且つ,該層間絶縁物に形成された第1のコンタクトホールを介して前記薄膜トランジスタのドレインに直接接続され, 前記画素電極は,前記平坦化膜の上に設けられ,且つ,該平坦化膜に形成された第2のコンタクトホールを介して前記ドレイン電極に直接接続され, 前記第2のコンタクトホールは,前記層間絶縁物の上に位置 し,且つ,前記第1のコンタクトホールに重ならないことを特徴とするアクティブ型表示装置。 【請求項2】ガラス基板上に形成され,チャネル形成領域がゲイト電極の下に設けられた薄膜トランジスタ,前記薄膜トランジスタの上に形成された平坦化膜および前記薄膜トランジスタのドレイン電極にコンタクトした透明導電膜でなる画素電極を有し, 前記ドレイン電極は,層間絶縁物の上に設けられ,且つ,該層間絶縁物に形成された第1のコンタクトホールを介して前記薄膜トランジスタのドレインに直接接続され, 前記画素電極は,前記平坦化膜の上に設けられ,且つ,該平坦化膜に形成された第2のコンタクトホールを介して前記ドレイン電極に直接接続され, 前記第2のコンタクトホールは,前記層間絶縁物の上に位置 し,且つ前記第1のコンタクトホールに重ならず, 前記平坦化膜の上面から前記第2のコンタクトホールの内面にかけて湾曲した面を有することを特徴とするアクティブ型表示装置。 【請求項3】ガラス基板上に形成され,チャネル形成領域がゲイト電極の下に設けられた薄膜トランジスタ,前記薄膜トランジスタの上に形成された平坦化膜および前記薄膜トランジスタのドレイン電極にコンタクトした透明導電膜でなる画素電極を有し, 前記ドレイン電極は,層間絶縁物の上に設けられ,且つ,該層間絶縁物に設けられた第1のコンタクトホールを介して前記薄膜トランジスタのドレインに直接接続され, 前記画素電極は,前記平坦化膜の上に設けられ,且つ,該平坦化膜に設けられた第2のコンタクトホールを介して前記ドレイン電極に直接 接続され, 前記第2のコンタクトホールは,前記層間絶縁物の上に位置 し,且つ,前記第1のコンタクトホールに重ならず, 前記平坦化膜の上面から前記第2のコンタクトホールの内面にかけて前記第2のコンタクトホールの直径が連続的に小さくなり,かつ,湾曲した面を有することを特徴とするアクティブ型表示装置。 【請求項4】請求項1乃至請求項3のいずれか一において,前記層間絶縁物は酸化珪素膜であることを特徴とするアクティブ型表示装置。 【請求項5】請求項1乃至請求項4のいずれか一において,前記平坦化膜は有機樹脂からなることを特徴とするアクティブ型表示装置。 【請求項6】請求項1乃至請求項5のいずれか一に記載のアクティブ型表示装置は,アクティブ型液晶表示装置であることを特徴とするアクティブ型表示装置。 【請求項7】アクティブ型表示装置をビューファインダーに用いたカメラであって,前記アクティブ型表示装置は,ガラス基板上に形成され,チャネル形成領域がゲイト電極の下に設けられた薄膜トランジスタ,前記薄膜トランジスタの上に形成された平坦化膜および前記薄膜トランジスタのドレイン電極にコンタクトした透明導電膜でなる画素電極を有し, 前記ドレイン電極は,層間絶縁物の上に設けられ,且つ,該層間絶縁物に形成された第1のコンタクトホールを介して前記薄膜トランジスタのドレインに直接接続され, 前記画素電極は,前記平坦化膜の上に設けられ,且つ,該平坦化膜に形成された第2のコンタクトホールを介して前記ドレイン電極に直接接続され, 前記第2のコンタクトホールは,前記層間絶縁物の上に位置 し,且つ,前記第1のコンタクトホールに重ならないことを特徴とするカメラ。 【請求項8】アクティブ型表示装置をビューファインダーに用いたカメラであって,前記アクティブ型表示装置は, ガラス基板上に形成され,チャネル形成領域がゲイト電極の下に設けられた薄膜トランジスタ,前記薄膜トランジスタの上に形成された平坦化膜および前記薄膜トランジスタのドレイン電極にコンタクトした透明導電膜でなる画素電極を有し, 前記ドレイン電極は,層間絶縁物の上に設けられ,且つ,該層間絶縁物に設けられた第1のコンタクトホールを介して前記薄膜トランジスタのドレインに直接接続され, 前記画素電極は,前記平坦化膜の上に設けられ,且つ,該平坦化膜に設けられた第2のコンタクトホールを介して前記ドレイン電極に直接接続され, 前記第2のコンタクトホールは,前記層間絶縁物の上に位置 し,且つ,前記第1のコンタクトホールに重ならず, 前記平坦化膜の上面から前記第2のコンタクトホールの内面にかけて湾曲した面を有することを特徴とするカメラ。 【請求項9】アクティブ型表示装置をビューファインダーに用いたカメラであって,前記アクティブ型表示装置は, ガラス基板上に形成され,チャネル形成領域がゲイト電極の下に設けられた薄膜トランジスタ,前記薄膜トランジスタの上に形成された平坦化膜および前記薄膜トランジスタのドレイン電極にコンタクトした透明導電膜でなる画素電極を有し, 前記ドレイン電極は,層間絶縁物の上に設けられ,且つ,該層間絶縁物に設けられた第1のコンタクトホールを介して前記薄膜トランジスタのドレインに直接接続され, 前記画素電極は,前記平坦化膜の上に設けられ,且つ,該平坦化膜に設けられた第2のコンタクトホールを介して前記ドレイン電極に直接接続され, 前記第2のコンタクトホールは,前記層間絶縁物の上に位置 し,且つ,前記第1のコンタクトホールに重ならず, 前記平坦化膜の上面から前記第2のコンタクトホールの内面にかけて前記第2のコンタクトホールの直径が連続的に小さくなり,かつ,湾曲した面を有することを特徴とするカメラ。 【請求項10】請求項7乃至請求項9のいずれか一において,前記層間絶縁物は酸化珪素膜であることを特徴とするカメラ。 【請求項11】請求項7乃至請求項10のいずれか一において,前記平坦化膜は有機樹脂からなることを特徴とするカメラ。 【請求項12】請求項7乃至請求項11のいずれか一に記載のアクティブ型表示装置は,アクティブ型液晶表示装置であることを特徴とするカメラ。 【請求項13】請求項7乃至請求項12のいずれか一に記載のカメラは,ビデオカメラであることを特徴とするカメラ。」 5 当裁判所の判断 上記当事者間に争いのない事実によれば,本件第2訂正前の特許の請求の範囲(本件第1訂正後の特許請求の範囲)請求項1ないし13の記載に基づき,その発明を認定し,これを前提に,特許法29条2項の規定に違反して登録された特許であることを理由に,請求項1ないし13のすべてにつき本件特許を取り消した決定の取消しを求める訴訟の係属中に,当該特許に係る特許請求の範囲減縮を含む訂正の審判が請求され,特許庁は,これを認める審決(本件訂正審決)をし,これが確定したということができる。
決定は,これにより,結果として,上記請求項1ないし13のすべてについて判断の対象となるべき発明の要旨の認定を誤ったことになり,この誤りが上記各請求項のいずれについても決定の結論に影響を及ぼすことは明らかである。したがって,決定は,上記各請求項のすべてにつき,取消しを免れない。
6 以上によれば,本訴請求は理由がある。そこで,これを認容し,訴訟費用の負担については,原告に負担させるのを相当と認め,行政事件訴訟法7条,民事訴訟法62条を適用して,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 山下和明
裁判官 設樂隆一
裁判官 高瀬順久