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事件 令和 6年 (行コ) 10007号 延長登録出願却下決定取消請求控訴事件
令和7年5月26日判決言渡 令和6年(行コ)第10007号 延長登録出願却下決定取消請求控訴事件(原審・ 東京地方裁判所令和5年(行ウ)第5008号) 口頭弁論終結日 令和7年3月10日 5判決
控訴人エフ・ホフマン―ラ・ロシュ・アクチェンゲゼルシャフト 10
同訴訟代理人弁護士 末吉剛
同 瀬戸一希
被控訴人国 15 処分行政庁特許庁長官
同 指定代理人市原麻衣
同 渡邊正幸
同 坂本千鶴子 20 同後藤優太
同 山本晃司
同 中島あんず
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2025/05/26
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
主文 1 本件控訴を棄却する。
25 2 控訴費用は、控訴人の負担とする。
3 この判決に対する上告及び上告受理申立てのための付加期間を301日と定める。
事実及び理由
控訴の趣旨
1 原判決を取り消す。
5 2 特許第6860652号の特許権に係る延長登録出願である特願2022 -700038号について、特許庁長官がした令和5年3月14日付け手続却 下処分を取り消す。
事案の概要
1 本件は、発明の名称を「医薬組成物」とする特許の特許権(以下、同特許を10 「本件特許」、その特許権を「本件特許権」といい、本件特許に係る発明を「本 件発明」という。)を有する控訴人が、本件特許権の通常実施権者が既に製造販 売承認を受けている医薬品の添付文書の改訂につき、独立行政法人医薬品医療 機器総合機構(以下「PMDA」という。 を通じて厚生労働大臣に届出をし ) (以 下、この改訂後の添付文書を「改訂後添付文書」といい、改訂前の添付文書を15 「改訂前添付文書」という。 、PMDAのウェブサイトに同改訂に関する情報 ) が掲載されたことに基づき、同掲載の日が処分を受けた日であるとして、本件 特許の登録日から同掲載の日の前日までが特許発明実施をすることができ なかった期間に当たるとして本件特許権の延長登録出願を行ったところ、特許 庁長官がこれを却下した(以下「本件却下処分」という。)ことから、本件却下20 処分には法令の解釈及び適用に関する誤りが存在して違法であると主張し、そ の取消しを求める事案である。
原判決は控訴人の請求を棄却したので、控訴人が原判決を不服として控訴し た。
2 前提事実、争点及び争点に関する当事者の主張は、次のとおり補正し、後記25 3のとおり当審における控訴人の主な補充主張を付加するほか、原判決「事実 及び理由」第2の2ないし4(原判決2頁15行目ないし14頁5行目)に記 2 載のとおりであるから、これを引用する。
(以下、略語は原判決の表記に従う。) ? 原判決2頁22行目の「ついて、」の次に「『効能又は効果』を『CD20 陽性の濾胞性リンパ腫』として(令和4年12月23日に、CD20陽性の 慢性リンパ性白血病(小リンパ球性リンパ腫を含む)を追加承認。甲11、
5 12) 」を加える。

原判決2頁25行目の末尾の次に次のとおり加える。
「本件承認は、CD20陽性の濾胞性リンパ腫を効能・効果とする新有効成 分含有医薬品として、再審査期間は8年とされた(甲9、11、12)。本件 承認のうち、『用法及び用量』の記載は、以下のとおりである。
10 『通常、成人には、オビヌツズマブ(遺伝子組換え)として1日1回100 0mgを点滴静注する。導入療法は、以下のサイクル期間及び投与サイクル 数とし、1サイクル目は1、8、15日目、2サイクル目以降は1日目に投 与する。維持療法では、単独投与により2ヵ月に1回、最長2年間、投与を 繰り返す。
15 @ シクロホスファミド水和物、ドキソルビシン塩酸塩、ビンクリスチン硫 酸塩及びプレドニゾロン又はメチルプレドニゾロン併用の場合 3週間を1サイクルとし、8サイクル A シクロホスファミド水和物、ビンクリスチン硫酸塩及びプレドニゾロン 又はメチルプレドニゾロン併用の場合20 3週間を1サイクルとし、8サイクル B ベンダムスチン塩酸塩併用の場合 4週間を1サイクルとし、6サイクル』 なお、本件承認に係る申請に当たり、中外製薬は、本件医薬品の『用法・ 用量』に投与速度(最大許容投与速度)を含めておらず、本件医薬品の投与25 速度自体は、本件承認における対象にはなっていない(本件承認に係る申請 に当たり、その添付資料〔薬機法施行規則40条1項〕である添付文書にお 3 ける投与速度(使用上の注意)の記載につき、本件承認における審査等の対 象となったとみるべきか否かについては当事者間に争いがあるが、投与速度 は『用法、用量』に記載されることもあり、その場合には審査及び承認の対 象となるが、上記のとおり、投与速度が本件承認の対象となっていないこと 5 により、本件医薬品の投与速度を後記の本件投与方法とすることについて、
一部変更承認〔改正前薬機法14条9項〕の手続を経ることなく、添付文書 の記載の改訂の届出〔後記本件届出等〕により行えることとなった点につい ては、当事者間に争いがない〔原審における令和6年1月31日付け被告答 弁書64頁 、原審における 令和6年5月17日付け 原告第1準備書面710 頁〕 ) 」 。。
原判決2頁26行目の「その」を「その一方で、本件承認に係る」と改め る。
? 原判決3頁10行目の「として、」の次に「本件承認に係る」を加え、同頁 12行目の冒頭から23行目の末尾までを次のとおり改める。
15 「これに対し、PMDAは、審査についての報告がなされた時点(平成30年 3月9日)において、CD20陽性濾胞性リンパ腫の患者における本件投与 方法の検討症例は極めて限られており、Grade3以上のインフュージョ ン・リアクションの発現率はリツキシマブ投与時と比較して本件医薬品投与 時で高い傾向が見られたこと、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫患者(DL20 BCL患者)と比較しても、インフュージョン・リアクションの発現率が高 い傾向が認められたことなどから、本件承認の申請に係るCD20陽性濾胞 性リンパ腫患者(FL患者)に本件投与方法を推奨する十分な情報は得られ ていないと考えた。そして、本件医薬品の投与速度については、国際共同第V 相試験(GALLIUM試験)及び海外第V相試験(GADOLIN試験)25 での設定(第1サイクル及び第2サイクル以降のいずれについても投与速度 は最大400mg/時とするもの)に基づき設定することが適切であり、また、
4 インフュージョン・リアクション発現時の対応、前投与も含めて当該試験で の設定内容を適切に注意喚起する必要があると判断し、そのように用法・用 量に関連する使用上の注意の項を設定するよう中外製薬に指示し、中外製薬 はこれに従う旨回答して、そのとおり添付文書を修正し、PMDAを通じて 5 厚生労働大臣に届出をした。当該添付文書(改訂前添付文書。甲 8。)は、平成 30年7月、PMDAのウェブページで公表された。本件医薬品は、同年8月 29日、薬価基準収載がされ、同日販売が開始された(甲11) 」 。
? 原判決5頁6行目の冒頭から11行目の末尾までを次のとおり改める。
「中外製薬は、改訂前添付文書の『用法及び用量に関する使用上の注意』につ10 いて、第1サイクルの投与でGrade3以上のインフュージョン・リアク ションが認められなかった場合の本件投与方法を記載すると共に、 副作用』 『 、
『重大な副作用』及び『その他の副作用』の欄に、国際共同第W相試験(M O40597試験(GAZELLE試験) の結果を加えて副作用の頻度を更 ) 新し、
『臨床成績』の項にCD20陽性濾胞性リンパ腫患者を対象に、本件医15 薬品を本件投与方法で静脈内投与した臨床試験(MO40597試験)の結 果を追記した内容に改訂すべく、令和3年10月、PMDAに対し、添付文書 改訂相談を行った(甲16)。」 ? 原判決7頁4行目の末尾の次に次のとおり加える。
「控訴人は、同登録願において、処分を特定する番号として本件承認に係る20 承認番号(23000AMX00488000)を記載した上で、処分は令 和3年12月9日付け掲載の医薬品添付文書改訂相談に基づく添付文書改訂 であるとし、処分の基礎となった臨床試験はMO40597試験[GAZE LLE試験]であるところ、同試験は、令和2年8月4日がデータカットオ フ日となっており、本件特許の登録日である令和3年3月30日以前に臨床25 試験が開始され、令和2年8月4日には試験が実施中であったから、特許登 録日から承認を受けた日(改訂後添付文書がPMDAのウェブサイトに掲載 5 された令和3年12月9日が処分を受けた日に相当するとする)の前日まで の8月8日が特許発明実施をすることができなかった期間であると主張し た。」 ? 原判決8頁15行目の「特許法施行令」を「平成29年政令第5号による 5 改正前の特許法施行令(以下『特許法施行令』という。 」と改める。
) ? 原判決13頁24行目の「同法施行令」を「特許法施行令」と改める。
3 当審における控訴人の主な補充主張 ? 原判決の事実認定の誤り(一部変更承認と本件届出等の共通性) ア 本件承認時点で実施することのできた内容10 本件承認の時点において、PMDAの指示により、最大投与速度の上限 が明確な数値によって定められた。当該上限を超える速度での投与は、禁 止されていた。
所定の行為や分量について、数字によって上限が定められ、当該上限内 の行為が許容されている場合、上限を超える行為は禁止されている。本件15 承認時点では、PMDAの指示により、本件医薬品の添付文書において、
投与速度を「最大400mg/時まで上げることができる」と記載されて いた(甲8、1頁右欄) したがって、
。 400mg/時を超える投与速度は、
禁止されていた。
本事案において、PMDAは、最大投与速度について、最大400mg20 /時という具体的かつ明確な数字によって上限を設定し、申請者に対して 当該数値を記載するよう指示した。この値を超えた投与速度は、当然に禁 止されていた。しかも、医療従事者において、当該投与速度の上限を遵守 することは容易であり、敢えて、その範囲を逸脱して投与することは想定 されていなかった。
25 本件承認の経緯は、PMDAが400mg/時を超える投与速度での投 与を禁止するという見解であったことを示している。しかも、その見解が 6 公的文書に掲載されたため、医療従事者もその見解を理解し従った。
本件承認の申請段階では、中外製薬は、本件投与方法も可能となるよう、
投与速度には特段の制約を設けていなかった。しかし、PMDAは、中外 製薬の希望に反し、その時点までに判明していた第III相試験の結果を 5 ふまえ、最大投与速度の上限を設けるよう指示した。この経緯は、PMD Aが最大投与速度の上限を超えた使用態様を禁止したこと(つまり、本件 投与方法を排除したこと)を示している。そして、この経緯(PMDAの 指示が含まれる。 は、
) 審査報告書及び添付文書という公的な文書に記載さ れた。
10 PMDAの見解は、形式上は、用法・用量に関する使用上の注意に関す るものである。しかし、PMDAは、用法・用量に関する使用上の注意を 用法・用量(薬機法14条2項3号にて承認審査事項として記載されてい る。)と一体的に審査・判断し、その修正を中外製薬に対し指示した。この 事情は、審査報告?及び?(甲9)において、
「用法・用量」の項目の中で15 用法・用量と使用上の注意とが判断されていることからも明らかである。
イ 本件届出等の意義 本件届出等には、臨床試験が必要とされた。PMDAは、臨床試験の結 果に基づいて、安全性などの承認拒否事由を審査した。したがって、本件 届出等は、一部変更承認の手続と同等である。
20 製造販売後臨床試験の成績に基づき添付文書の記載事項を変更する場 合(つまり、製造販売後臨床試験の成績に応じて使用態様を拡張する場合)、
製薬会社は、添付文書改訂相談によりPMDAの了承を得て、薬機法68 条の2の3に基づく届出を行い、その届出がPMDAに受理される必要が ある(本事案の場合の本件届出等)。そこで、中外製薬は、本件届出等を行25 った。つまり、中外製薬は、本件届出等なしに、添付文書の最大投与速度 の記載を変更して本件投与方法を可能にすることはできず、本件投与方法 7 が可能な添付文書にて本件医薬品を販売することもできなかった。
本件届出等の結果、添付文書の用法・用量に関連する使用上の注意の記 載が改訂され、投与速度の範囲が拡張された。かかる効果は、投与速度が 用法・用量に含まれている場合に、一部変更承認によってその範囲を拡張 5 する場合と同じである。
本件届出等では、製造販売承認後臨床試験の結果が用いられた。この臨 床試験の遂行に要する期間、労力及びコストは、一部変更承認の場合と変 わるところはない。しかも、PMDAは、製造販売承認後臨床試験に基づ き、有効性や安全性といった承認拒否事由の観点から実質的な審査を行い、
10 添付文書の改訂の可否を評価した。この点でも、本件届出等は、一部変更 承認の場合と変わるところはない。
前記のとおり、改訂前添付文書の下では、本件投与方法を含む使用態様 が禁止されていた。添付文書の改訂による投与速度の範囲の拡張は、実態 として、本件承認の際に当局から禁止されていた使用態様につき、禁止を15 解除するという効果を有する。
被控訴人の説明によっても、添付文書改訂相談から届出の受理に至るプ ロセスは、実態としては許可として運用されている。PMDAは、その判 断に従わない届出について、不受理の処分を行うことができる。
製造販売後臨床試験等の成績に基づく添付文書の改訂相談に際し、事前20 のPMDAへの相談を経ないで行われる届出について、PMDAは一切の 手続フローを定めていない。つまり、PMDAは、添付文書の改訂につき、
事前の相談を製薬会社が行わずに届出を行うことを全く想定していない。
実際、事前の相談を経ずに届出がされた例は存在しない。
さらに、PMDAが事前の相談で認めた内容と異なる内容や、PMDA25 の助言に従わずに届出が行われ、受理された例も存在しない。つまり、P MDAは、その助言に従った届出のみを受理している。
8 以上のとおり、添付文書改訂相談から届出の受理に至るプロセスは、実 態としては許可である。
これらの事情を踏まえれば、本件承認時において、添付文書の投与速度 を超える速度での投与は禁止されていた。そして、本件届出等により、上 5 記の禁止された投与態様が解除された。
原判決は、前記の事実の何れも看過した上で、誤った判断に至った。
? 争点?(本件届出等の特許法施行令2条2号イ該当性)についての原判決 の認定及び判断の誤り ア 一部変更承認と本件届出等とは実質的に同じである10 本件承認におけるPMDAによる用法・用量の審査と用法・用量に関連 する使用上の注意の指示とは、一体として行われた。その際に、最大投与 速度の上限が定められた。
本件届出等は、用法・用量に関連する使用上の注意における最大投与速 度の上限の引き上げ(つまり、使用態様の拡張)のために行われた。この15 状況下において、一部変更承認(改正前薬機法14条9項)と、本件届出 等(製造販売後臨床試験に基づく添付文書改訂相談から添付文書改訂の届 出の受理に至るプロセス)とは、以下の点で共通する。
・臨床試験の成績が手続の資料として必要とされる。
・薬事当局によって有効性及び安全性が審査される。
20 ・使用態様の許容範囲が拡張される。
添付文書改訂相談において、PMDAは、形式上は行政指導としての「助 言」を行うとしても、PMDAは、その了承に反した添付文書改訂の届出 を不受理にすることができる。つまり、添付文書改訂相談を経ない届出や 「助言」に従わない届出は、不受理の選択肢が留保されていることにより、
25 実質的に排除されている。本来、届出の不受理は、形式面での不備につい て用いられるべきものであるが、実態は異なる。
9 以上のとおり、製造販売後臨床試験の成績に基づく添付文書改訂相談に よる添付文書の改訂は、一部変更承認と実質的に同一の手続である。
イ 規制権限を有する当局からの「助言」は強制性を有する それに対し、被控訴人は、原審において、添付文書改訂相談制度での「助 5 言」の処分性を否定する根拠につき、
「助言」が形式的に行政指導であるこ とを主張するのみであった。原判決も、専らかかる形式的な点のみを理由 として、本件届出等の処分性を否定した。
しかし、規制権限を有する当局からの「助言」は、実際には強制力を有 することがある。規制権限を行使し得る立場の者から、規制権限を行使さ10 れ得る立場の者に対し「助言」が行われる場合、かかる両当事者の関係性 から、
「助言」は、多くの場面において、単なる行政指導を超えて実質的な 権限の行使としての側面を有する。
本件においても、実態として、当局は添付文書改訂の希望者をその助言 に従わせる権限を有している以上(例えば、不受理の選択肢)、添付文書改15 訂を希望する製薬会社は、その助言に反して添付文書改訂の届出を行うこ とはなく、まして、助言に反した添付文書にて医薬品を製造販売すること はできない。
それに加えて、被控訴人の説明によると、なおさら、添付文書改訂相談 制度の運用実態は、行政指導では説明できない。薬事当局は、添付文書改20 訂相談を経ずに改訂の届出がされる場合(直接届出)の手続フローを準備 していない。実際、被控訴人によっても、直接届出の事案は確認できない。
添付文書改訂相談での「助言」に従わずに届出がなされた事案は確認でき ず、まして受理された事案も確認できない。
この運用実態に照らせば、製薬会社が添付文書改訂相談を利用しかつP25 MDAの「助言」に従うことが、添付文書改訂には不可欠である。
ウ 承認取得者の権利義務に対する直接的な影響 10 原判決は、承認取得者による添付文書の改訂の届出及び当局による受理 は、権利義務に直接的に変更を生じるものではないと判断した。しかし、
この判断は誤っている。
添付文書の改訂の届出が薬事当局に受理されなければ、承認取得者は、
5 改訂後の添付文書にて医薬品を販売することはできない。つまり、薬事当 局の受理まで、承認取得者は、従前の添付文書を使用する義務を負い、薬 事当局の受理によって初めて、改訂後の添付文書を使用する権利を得る。
つまり、薬事当局による受理は、権利義務に直接的に変更を生じるもので ある。
10 原判決は、承認取得者がPMDAの「助言」に従わないとしても、改訂 後の添付文書による医薬品の販売は直ちに禁止されないと判断した。
しかし、この判断も誤っている。承認取得者にとっては、PMDAの「助 言」に従うことなく添付文書を改訂することはできない。まして、改訂さ れた添付文書の下で医薬品を販売することはできない。
15 原判決は、PMDAの「助言」に従った添付文書作成の義務も生じない と判断した。
しかし、この判断も誤っている。承認取得者が添付文書の改訂を望む場 合、PMDAの「助言」に従った改訂以外の選択肢は存在しない。
原判決は、PMDAの不受理の選択肢を無視している点で、誤っている。
20 エ 控訴人の主張を採用することは平成25年法律第84号等による薬事法 改正(以下「平成25年薬事法改正」という。)の趣旨を損なわない 平成25年薬事法改正では、添付文書を承認事項の一部にすることも議 論されたが、最終的には添付文書の届出義務化が採用された。その際の議 論として、添付文書の改訂に承認事項の一部変更申請を要する場合、速や25 かな改訂につながらず安全対策にマイナスにはたらくとの意見や、添付文 書を承認事項の一部とすると医療現場が委縮する(添付文書から少しでも 11 外れた医薬品の使い方をすると処罰されると捉えられる)との意見があっ た。原判決は、上記の事実認定に基づいて、控訴人の主張を採用すると平 成25年薬事法改正の趣旨を損なうことにもなりかねないと判断した。し かし、原判決の判断は誤っている。
5 平成25年薬事法改正では、安全性の観点から迅速に使用態様を制約す るか又は注意喚起する場合が議論されていたのであって、添付文書改訂相 談による使用態様の拡張は、当時の議論の対象外である。
さらに、当初の製造販売承認にて薬事当局が特定の使用態様を禁止して いる場合(例えば、本事案での本件投与方法)、医療現場での萎縮が生じる10 余地がない。原判決が、添付文書の記載事項外の使用態様に何ら制約がな いと判断したのだとすると、その判断は誤っている。医薬品は、原則とし て、添付文書の記載事項の範囲内で使用されるべきものである。
オ 平成30年に導入された添付文書改訂相談制度は平成25年薬事法改正 では議論されていない15 平成25年薬事法改正は、薬害肝炎事件を契機として始まり、市販後安 全対策の強化が柱の一つであった(乙4)。平成25年薬事法改正では、有 害事象の報告などにより安全性に懸念が生じた場合に使用態様を制限す るか又は安全性に関する注意を喚起することが想定されており、そのため に添付文書の迅速な改訂が望まれていた。
20 それに対し、製造販売後臨床試験の成績に基づく添付文書改訂相談の制 度では、使用態様が緩和される。つまり、添付文書改訂相談制度は、平成 25年薬事法改正での議論(使用態様の制約又は注意喚起)の対象外であ る。
しかも、添付文書改訂相談は、予期しない有害事象の報告により突発的25 に使用されるのではない。使用態様を緩和するためには、計画を立案して 臨床試験を行う必要があり、事前の準備に相当の時間を要する。つまり、
12 迅速な対応が求められているわけではない。
それに加え、添付文書改訂相談制度は、平成25年薬事法改正後(具体 的には、平成30年)に導入されたのであって、平成25年薬事法改正の 時点では議論されていなかった。
5 以上のとおり、平成25年薬事法改正の際の意見は、原判決の根拠とな るものではない。
カ 医療現場での不要な萎縮が生じない 原判決の判断は、添付文書の記載事項を承認事項としない場合には医療 現場での委縮は生じないことを前提にする。つまり、添付文書の記載事項10 から外れた使用態様も許容されていることを前提とする。
しかし、少なくとも本事案では、上記判断は前提において誤っている。
前述のとおり、本事案では、PMDAの指示により、数字によって明確に 投与速度の上限が定められていた。かかる場合、禁止されている範囲は明 確であり、かつその範囲内での投与をすることが容易であるため、医療現15 場等において、通常、その範囲外の態様で医薬品が使用されることは想定 されていない。つまり、添付文書の記載事項(具体的には、最大投与速度 の上限)から逸脱した使用態様は、そもそも生じていない。
以上のとおり、本件届出等が一部変更承認に該当すると評価しても、医 療現場での過剰な萎縮が生じるわけではない。
20 キ 控訴人の主張は平成25年薬事法改正の趣旨に適合する 添付文書の使用上の注意を外れた医薬品の使用について、刑事罰が科さ れているわけではない。しかし、その結果、医療事故が発生した際には、
医療現場は民事上又は刑事上の責任を負うことになり得る。その際、最高 裁判例(平成4年(オ)第251号同8年1月23日第三小法廷判決・民25 集50巻1号1頁。以下「平成8年最判」という。)における医療事故にお ける過失の判断基準などに基づき、医療現場の行為の責任が判断される。
13 つまり、添付文書の使用上の注意に沿わない使用態様が放任されているわ けではない。
とりわけ、本事案での本件承認時のように、科学的なエビデンスをふま えたPMDAの指示によって使用態様に明確な制約が加わった場合、その 5 範囲外での使用は、禁止されたものと解すべきである。そして、添付文書 改訂相談は、PMDAの関与の下、禁止されている使用態様につき、その 禁止を解除するための手続として運用されていると解すべきである。この ような解釈が、平成25年薬事法改正での医薬品の安全性の確保という趣 旨に適合する。
10 原判決は、添付文書改訂相談、添付文書の改訂の届出及びその受理にい たるプロセスの運用の実態及び本事案の具体的事情を無視している。さら に、原判決は、平成25年薬事法改正の趣旨を誤解している。その結果、
原判決は、争点?について誤った判断に至った。
? 争点?(本件届出等に対する特許法施行令2条2号イの類推適用の可否)15 についての原判決の認定及び判断の誤り ア 改正前特許法67条2項の「政令」 (特許法施行令2条2号)は限定列挙 であるとの原判決の判断 原判決は、特許法施行令が「処分」を限定列挙の趣旨で定めているから、
類推適用はできないとしているが、原判決には、同施行令を限定列挙と解20 する具体的理由は示されていない。
類推適用とは、一般に「法規に規定された事項の意味を法規にない類似 の事項に拡充する」類推解釈を通じ、
「ある事項に関する規定を他の類似し た事項」に適用することをいう(法令用語研究会『法律用語辞典 第4版』 1168頁(有斐閣、2012年))とされる。類推適用は、しばしば用い25 られている解釈手法であり、それを否定するのであれば、相応の根拠が示 されるべきである。しかし、原判決では、その根拠が何ら示されていない。
14 イ 投与速度を用法・用量にする場合と用法・用量に関連する使用上の注意 にする場合との公平性の欠如 投与速度について、添付文書の用法・用量に記載することも、用法・用 量に関連する使用上の注意に記載することも、何れも許容される。それに 5 もかかわらず、何れに記載するかによって、特許権の浸食の回復ができる か否かが左右されるとすれば、公平性を欠く。つまり、投与速度を用法・ 用量に含め、承認事項とする場合には、その上限の引き上げは一部変更承 認に該当し、延長登録が認められるにもかかわらず、用法・用量に関連す る使用上の注意に含める場合には、延長登録は認めらないとすると、その10 結論は公平性を欠く。
PMDAが、承認審査の過程において、投与速度の上限を定めるよう指 示し、それにより用法・用量に関連する使用上の注意にて上限の数値が明 示される場合、その上限を超えた使用は禁止される。この事情は、投与速 度が用法・用量に含まれる場合と同じである。さらに、承認取得者が、製15 造販売後臨床試験の成績に基づく添付文書改訂相談を経て、添付文書の改 訂により投与速度の上限を引き上げる場合、その手続及び効果は、一部変 更承認と同じである。
本来、特許法施行令の改正により、製造販売後臨床試験の成績に基づく 添付文書改訂相談を経た使用態様の拡張は、
「処分」として規定されるべき20 である。それにもかかわらず、平成30年の添付文書改訂相談制度の導入 の後も、改正が行われていない。この状況の下では、特許法施行令の不備 を補うため、類推適用が認められるべきである。
ウ 発明の奨励と第三者の自由な実施との調和が図られるべきである 原判決は、存続期間満了後の第三者による自由な実施を原則とし、延長25 登録制度はその例外と位置づけ、例外である存続期間の延長の対象は明文 の規定に限定するとの見解を採用したとも解される。つまり、原判決は、
15 存続期間満了後には第三者による自由な実施を重視したとも解される。
しかし、原判決の引用する最高裁平成10年(受)第153号同11年 4月16日第二小法廷判決・民集53巻4号627頁(以下「平成11年 最判」という。)に照らしても、上記の解釈は不適切である。存続期間の制 5 度は、発明の奨励のための特許権者の保護と、第三者への発明を利用する 機会の提供との両立を目的とする。平成11年最判にも「発明を奨励する と共に、第三者に対してもこの公開された発明を利用する機会を与え」と あるように、あくまで両者の「両立」が制度の目的である。第三者の発明 実施の機会が特許権者の保護よりも優先されるわけではない。
10 原判決は、存続期間について平成11年最判を引用し、存続期間延長制 度について最高裁平成21年(行ヒ)第326号同23年4月28日第一 小法廷判決・民集65巻3号1654頁(以下「平成23年最判」という。) を引用する。しかし、平成11年最判及び平成23年最判は、本事案とは 無関係である。平成11年最判での争点は、後発品メーカーが、先発品に15 係る特許権の存続期間中に、製造販売承認申請のために当該特許発明を実 施する場合、その実施が試験研究のための実施(特許法69条1項)に該 当するか否かであった。平成11年最判は、かかる場合を特許法69条1 項の「試験研究のための実施」に該当すると判断した。仮に、製造販売承 認申請のための特許発明実施を禁止してしまうと、製造販売承認申請の20 準備から承認を得るまでの期間、存続期間が延長されたに等しい。平成1 1年最判は、法的な根拠のない実質的な存続期間延長という不合理な結論 を避けるため、上記の判断を行った。本事案の事実関係は、平成11年最 判とは全く異なる。むしろ、本事案の特許権者は、発明を実施する機会を 奪われており、その期間は特許法の趣旨に照らし、回復されるべきである。
25 かかる結論こそ、平成11年最判の趣旨に適合する。
発明の実施が禁止された期間が存在する場合には、改正前特許法67条 16 2項の類推適用により、その期間を回復することは、同項の趣旨に適合す る。法的効果や審査内容の点で共通する手続で特許法上の保護が大きく異 なるとすれば、現行制度には重大な不備がある。
実際、延長登録の制度の趣旨について、原判決が引用する平成23年最 5 判も、「特許法67条2項の政令で定める処分を受けるために特許発明実施することができなかった期間を回復することを目的とする」としてい る。本事案において、事実上、本件特許が実施できなかった期間が存在す るため、類推適用は認められるべきである。類推適用を否定する原判決は、
むしろ平成23年最判の趣旨に反する結論に至っている。
10 原判決には、本件に特有の事情を看過した形式的な判断を行った点、類 推適用に関する控訴人の主張を不十分な理由で採用しなかった点、並びに 最高裁判決の誤った適用及びその趣旨に反する判断をした点で誤りがあ る。
以上のとおり、本件では特許法施行令2条2号イの直接適用または類推15 適用は認められるべきであり、本件処分は取り消されるべきである。
当裁判所の判断
1 当裁判所も、控訴人の請求は理由がないから棄却すべきであると判断する。
その理由は、当審における控訴人の主な補充主張も踏まえ、次のとおり補正し、
後記2のとおり当審における控訴人の主な補充主張に対する判断を付加する20 ほかは、原判決の「事実及び理由」中、第3の1ないし4(原判決14頁7行 目ないし17頁19行目)に記載のとおりであるから、これを引用する。
? 原判決14頁11行目の冒頭から同頁22行目の末尾までを次のとおり改 める。
「?ア 本件承認の内容は、前記第2の2?のとおりであり、本件承認は、
25 本件医薬品の投与速度(最大許容投与速度)をそもそも対象としてい ないのであるから、本件投与方法に係る添付文書の改訂を内容とする 17 本件届出等が、本件承認の一部変更(改正前薬機法14条9項)に当 たると解する余地はない。
イ 医薬品の製造販売業者は、添付文書を作成した上で、その届出及び 公表を行うことが義務付けられており、薬機法施行規則40条により、
5 製造販売業者は、製造販売承認申請時に、申請書類と併せて添付文書 を提出資料とすべきこととされている。しかし、添付文書自体は、製 造販売の承認の対象とはされていない。
すなわち、医薬品の製造販売に係る承認拒否事由は、薬機法14条 2項に規定されているところ、同項3号イ所定の『申請に係る医薬10 品・・・が、その申請に係る効能又は効果を有すると認められないと き』における『効能又は効果』は、疾病の予防、治療等における当該 医薬品の効能又は効果をいい、 効能又は効果を有すると認められない』 『 か否かは、医薬品そのものの性質に着目して判断されるものであるか ら、その判断に当たって、添付文書における記載の適否は考慮要素と15 はならない。
また、同号ロ所定の承認拒否事由は、『申請に係る医薬品・・・が、
その効能又は効果に比して著しく有害な作用を有することにより、医 薬品・・・として使用価値がないと認められるとき』とするところ、
そこにいう『使用価値』とは、『その効能又は効果に比して著しく有20 害な作用』を有するか否かにより判断されるものであることから、
『使 用価値がないと認められる』か否かは、医薬品そのものの性質に着目 して判断されるものであり、その判断に当たって、添付文書における 記載の適否は考慮要素とはならない。
このように、医薬品の製造販売の承認についての判断に当たり、添25 付文書における記載の適否は考慮要素とはならないのであって、承認 申請時に提出された添付文書は、製造販売の承認の審査時にPMDA 18 において確認を行い、その記載内容について助言等をすることがある にしても、これは必要に応じ行政指導として行われるものにとどまる。
本件承認に係る申請に当たっては、添付文書をPMDAに提出する ことが上記のとおり薬機法施行規則40条により義務付けられていた 5 ところ、中外製薬は、本件承認の申請に当たり、本件投与方法に係る 記載を、添付文書の『用法及び用量に関連する使用上の注意』に記載 していたものである。これに対し、PMDAは、審査報告時点(平成 30年3月9日。本件特許に係る優先日後、出願前)において、本件 承認の対象であるCD20陽性濾胞性リンパ腫につき、同患者におけ10 る本件投与方法の検討症例は極めて限られており、インフュージョン・ リアクションの発現率に高い傾向が見られたことや、びまん性大細胞 型B細胞リンパ腫患者と比較してインフュージョン・リアクションの 発現率が高い傾向が認められたことなどから、本件投与方法を推奨す る十分な情報は得られていないとし、インフュージョン・リアクショ15 ンの発現時の対応、前投与も含めてGALLIUM試験及びGADO LIN試験での設定内容を適切に注意喚起するよう求めたところ、中 外製薬はこれに従って、上記試験の設定内容を添付文書の使用上の注 意に記載することとしたものである。
このように、本件医薬品の投与速度については、もともと中外製薬20 において製造販売の承認の対象以外の事項として、添付文書の『用法 及び用量に関連する使用上の注意』に記載していたものであり、これ についてのPMDAの指示等も、承認申請に当たっての審査として行 われたものではなく、同記載が、製造販売承認の審査項目となったも のとも認められない。」25 ? 原判決14頁23行目の冒頭に「?」を加える。
? 原判決15頁6行目の「すなわち、」から11行目の末尾までを削り、同頁 19 6行目の「ものでもない。」の次を改行し、次のとおり加える。
「 厚生労働大臣が薬機法72条の4第1項に基づく監督権限を行使するの は、製造販売業者により届出(公表)された添付文書の記載内容が、
『当該 医薬品・・・に関する最新の論文その他により得られた知見に基づ』 (薬機 5 法68条の2第1項)かない不適切な内容であるために、
『この法律又はこ れに基づく命令の規定に違反する行為があった』といえる場合であり、か つ、これにより『保健衛生上の危害の発生又は拡大を防止するために必要 があると認めるとき』に限られる。
すなわち、添付文書改訂相談、その後の届出及びPMDAの受理は、そ10 れ自体によって製造販売業者の権利・義務に直接的に変更を生じるもので はない。
したがって、添付文書の記載事項の改訂に係る本件届出等をもって、本 件承認の内容を変更する改正前薬機法14条9項所定の処分であるとい うことはできない。
15 ? なお、本件医薬品を本件投与方法に沿って800mg/時以上の投与速 度等で投与することは、添付文書の改訂以前においても、本件承認の下に おいて、法令上禁止されていたものということはできず、そのこと自体は 平成8年最判の判示の趣旨をもっても左右されるものではない。そのため、
本件届出等による添付文書の改訂により、本件投与方法の使用の禁止が解20 除されたものでないことは明らかである。」 ? 原判決15頁12行目の「?」を「?」と改め、同頁20行目の「薬機法 改正」を「平成25年薬事法改正」と改める。
? 原判決17頁10行目の末尾の次に、以下のとおり加える。
「すなわち、延長登録の理由となる処分に関する特許法施行令の規定は、平25 成11年12月27日号外政令第430号により特許法施行令3条として規 定が置かれ、その後数度の改正を経て、平成27年1月28日号外政令第2 20 6号によりその規定が2条に移された後も、令和4年に至るまで度重なる改 正がされており、その度に規定が整備されてきたところ、控訴人主張に係る 規定が置かれることはなかったのであるから、特許権の存続期間終了後は何 人も自由にその発明を利用できるとするのが特許制度の根幹の一つであると 5 する平成11年最判の趣旨にも鑑みれば、みだりに同条の規定を拡張又は類 推して解釈すべきではない。」 2 当審における控訴人の主な補充主張に対する判断は、以下のとおりである。
? 控訴人は、前記第2の3?のとおり、原判決の事実認定には誤りがある旨 を主張する。
10 しかし、補正の上で引用した原判決第3の2?イのとおり、本件承認に関 連して、添付文書に係るPMDAの指示は行政指導により行われたものであ るから、PMDAの指示により本件医薬品の最大投与速度の上限が定められ た事実は存しない。また、補正の上で引用した原判決第3の2?及び?のと おり、本件届出等により、実施可能な投与速度の許容範囲が拡張されたもの15 でもないから、控訴人の主張はいずれも前提を欠くものである。
したがって、控訴人の上記主張は採用することができない。
? 控訴人は、前記第2の3?のとおり、争点?についての原判決の認定及び 判断は誤りである旨を主張する。
しかし、補正の上で引用した原判決第3の2のとおり、本件届出等が一部20 変更承認と実質的に同じものとはいえないし、PMDAの指示が強制力を有 するものとも認められない。
したがって、控訴人の上記主張は採用することができない。
? 控訴人は、前記第2の3?のとおり、争点?についての原判決の認定及び 判断は誤りである旨を主張する。
25 しかし、補正の上で引用した原判決第3の3のとおり、特許法施行令2条 2号に定める「処分」については限定列挙と解されるところであり、その改 21 正の経緯に鑑みても、平成30年の添付文書改訂相談制度の導入以後も控訴 人の主張するような改正が行われないことを、直ちに特許法施行令ないし現 行制度の不備と捉えるべきものとは解されない。
したがって、控訴人の上記主張は採用することができない。
5 3 その他、控訴人が縷々主張する内容を検討しても、当審における上記認定判 断(原判決引用部分を含む。)は左右されない。
4 結論 以上によれば、控訴人の請求は理由がないからこれを棄却すべきところ、こ れと同旨の原判決は相当であり、本件控訴は理由がない。
10 よって、主文のとおり判決する。