関連審決 |
不服2022-6623 |
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事件 |
令和
6年
(行ケ)
10017号
審決取消請求事件
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原告 アーシャ ニュートリション サイエンシーズ インコーポレイテッド 同訴訟代理人弁護士 伊藤亮介、中野亮介 同訴訟代理人弁理士 稲葉良幸、山田拓、寺西千果、山中遥加 被告 特許庁長官 同指定代理人 磯貝香苗、加藤友也、松本陶子、海老原えい子、山根まり子 |
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裁判所 | 知的財産高等裁判所 |
判決言渡日 | 2025/01/21 |
権利種別 | 特許権 |
訴訟類型 | 行政訴訟 |
主文 |
1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 3 原告のため、この判決に対する上告及び上告受理申立てのための付加期間を30日と定める。 |
事実及び理由 | |
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請求
1 特許庁が不服2022-6623号事件について令和5年10月12日 にした審決を取り消す。 |
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事案の概要
第2-1 特許庁における手続の経緯等(当事者間に争いがない。) (1) 原告は、令和2年10月28日、発明の名称を「最適化された栄養処方 物、それらから目的に合わせた食事を選択するための方法、およびその使 用法」とする特許出願(特願2020-180582号、当初の請求項の数 52)をした。この出願(本願)は、以下の特許出願を順次分割して新たな 出願としたものである。 ・ 原々出願 平成23年10月14日を国際出願日とする特願2013- 534055号(優先権主張:平成22年10月14日・米国、同年11 月18日・米国) ・ 原出願 平成29年8月18日を出願日とする特願2017-1578 93号 (2) 原告は、令和3年4月9日付けで拒絶理由通知を受けたことから、その 意見書提出期間内である同年10月14日、特許請求の範囲を変更する手 続補正(本件補正1、補正後の請求項の数36)をしたが、同年12月21 日付けで本件拒絶査定を受けた。 (3) 原告は、令和4年5月2日、拒絶査定不服審判を請求するとともに、特許 請求の範囲を変更する手続補正(本件補正2、請求項の数36)をした。 (4) 特許庁は、上記審判請求につき、不服2022-6623号事件として 審理の上、令和5年10月12日、本件補正2を却下するとともに、「本件 審判の請求は、成り立たない。」との本件審決をし、その謄本は同月24日 原告に送達された(付加期間90日)。 (5) 原告は、令和6年2月21日、本件審決の取消しを求める本件訴訟を提 起した。 2第2-2 本願に係る発明の内容第 2-2(1) 特許請求の範囲(請求項1、18)の記載 ア 本件補正1による補正前の特許請求の範囲の記載(甲20) 【請求項1】 1以上の栄養処方物および1以上の処方物を使用するためのパッケージ、 ラベル付けおよび指示を含む、包装された製品であって、1以上の処方物 のうちの少なくとも1つは、異なる供給源からの、ω-6脂肪酸および抗 酸化剤の混合物を含み;1以上の処方物は、1〜40gのω-6脂肪酸お よび25mg〜10gの抗酸化剤の用量を集合的に提供し、抗酸化剤の用 量は、少なくとも5mgの1以上のポリフェノールを含む、前記製品。 【請求項18】 下記イの請求項18の下線部を除く記載のとおり。 イ 本件補正1による補正後の特許請求の範囲(下線部が変更部分) (甲4) 【請求項1】 1以上の栄養処方物、並びに前記1以上の栄養処方物を使用するための パッケージ、ラベルおよび指示を含む、包装された製品であって、前記1 以上の栄養処方物のうちの少なくとも1つは、異なる供給源からの、ω- 6脂肪酸および抗酸化剤の混合物を含み;前記1以上の栄養処方物は、平 均1日量で1〜40gのω-6脂肪酸および1日当たり25mg〜10g の抗酸化剤の用量を集合的に提供し、前記抗酸化剤の用量は、少なくとも 1日当たり5mgの1以上のポリフェノールを含む、前記製品。 【請求項18】 (i)前記製品が、0.0001〜100g/kg体重の量の栄養素を集 合的に提供する前記栄養処方物を含む;および/または (ii)前記製品が、個体の1日熱量の40〜80%を集合的に含む、個 体による1日消費量のための2〜20の1日処方物を含む;および/また 3 は (iii)前記製品が、タンパク質からの10〜50%のカロリー、脂質 からの15〜50%のカロリー、および炭水化物からの35〜85%のカ ロリーを含む;および/または (iv)前記製品が、個体のための1日微量養素の少なくとも50%を集 合的に送達する、個体による1日消費量のための2〜20の1日処方物を 含む;および/または (v)前記製品が、野菜または野菜ジュースパック、果物または果汁パッ ク、乾燥穀物パック、シリアルパック、マメ科植物、穀物、堅果、または 種子パック、食肉または魚介類パック、ハーブ、脂質、食事、軽食、添え 料理、サラダ、デザート、ミルク、粉末またはピューレ、またはヨーグル トパックのうちの少なくとも1つを含む;および/または (vi)前記製品が、慢性病状の予防または治療のための医薬を含む; 請求項1〜17のいずれか一項に記載の製品。 ウ 本件補正2による補正後の特許請求の範囲(下線部が変更部分) (甲7) 【請求項1】 上記イと同じ。 【請求項18】 (i)前記製品が、0.0001〜100g/kg体重の量の栄養素を集 合的に提供する前記栄養処方物を含む;および/または (ii)前記製品が、個体のカロリー摂取の少なくとも40%を集合的に 含む、個体の食事のバランスを取る2〜20の処方物を含む;および/ま たは (iii)前記製品が、タンパク質からの10〜50%のカロリー、脂質 からの15〜50%のカロリー、および炭水化物からの35〜85%のカ ロリーを含む;および/または 4 (iv)前記製品が、個体のための一連の微量養素の少なくとも50%を 集合的に送達する、前記微量養素のバランスを取るために相互に補完する 2〜20の処方物を含む;および/または (v)前記製品が、野菜または野菜ジュースパック、果物または果汁パッ ク、乾燥穀物パック、シリアルパック、マメ科植物、穀物、堅果、または 種子パック、食肉または魚介類パック、ハーブ、脂質、食事、軽食、添え 料理、サラダ、デザート、ミルク、粉末またはピューレ、またはヨーグル トパックのうちの少なくとも1つを含む;および/または (vi)前記製品が、慢性病状の予防または治療のための医薬を含む; 請求項1〜17のいずれか一項に記載の製品。 第 2-2(2) 本願に係る明細書とみなされる本願翻訳文等(甲3)には、別紙2の記 載があり、本願発明につき次の開示があると認められる。 ア 発明の技術分野 本発明は、栄養組成物及び栄養処方物分野に関する。特に、本出願は、 栄養素に由来する利点を最適化する目的に合わせた栄養プランの選択方法 に関する(【0002】。 ) イ 発明の背景 ヒトの健康のためのファイトケミカル、脂質等の栄養素の所要量は、非 常に繊細である。栄養素の相互作用が存在し、その健康上の有効範囲は狭 く、食事の型等によって変化する(【0003】。 ) 脂質、抗酸化剤、ファイトケミカル、ビタミン、ミネラル、微生物、又 はその組み合わせを含む処方物は、伝統的にはサプリメントとして提供さ れるか、栄養処方物又は局所処方物に無作為に添加される。酸化及び炎症 の両方が生理学において必要な役割を有するという事実を無視し、これら の抑制のために投与する現在のアプローチは、栄養素が不均衡又は過剰に 消費される(【0004】。 ) 5 相互作用、量及び消費者の見解での好みを保持するように適合させた天 然に存在する食品を消費者が消費するように導かれる目的に合わせた栄養 プログラム又は送達系を開発することが好ましい。広範な個人化のパラメ ータ及び中程度のコンプライアンス内で消費者は慢性疾患リスクを軽減す ることができ、より狭い個人化のパラメータ及びより高いコンプライアン スを用いて、より多くの健康上の利益を達成することができる。現在まで、 目的に合わせたプログラムは、特にファイトケミカル及び脂質の相互作用 および量に関して考案が困難であった(【0006】。 ) 最適なレベルの栄養素を提供する構成要素ベースの栄養処方物、目的に 合わせた食事及び食事プランが必要である。いくつかのこれらの栄養素は 食事プランで注目されることはまれであるが(例えば、ファイトケミカル)、 非常に大量又は非常に少量のかかる微量養素は食事中の別の有益な微量養 素に有害作用を及ぼし得る(【0008】。 ) ウ 課題を解決するための手段 本発明は、最適な効果が得られるように栄養素レベルのバランスが取れ ている消費者のための目的に合わせた食事の作製に関する(【0009】。 ) 栄養素を食事に無作為に添加する代わりに、一連の食事型の系列(例え ば、植物、食肉、または魚介類重視)並びに食事、年齢、サイズ、性別、 病状、家族歴及び気候などによって分類される消費パターンの系列を同定 し、各系列に合わせて栄養組成物を作製することが必要である(【001 0】。 )第2-3 本件審決の理由の要旨 本件審決は、下記(1)のとおり本願発明の要旨認定を行った上で、下記(2) 〜(4)のとおり、@本件補正1に係る法17条の2第3項違反(新規事項)、 A分割要件違反(出願日の不遡及)を前提とする引用発明1に基づく進歩 性の欠如、B引用発明2に基づく進歩性の欠如のいずれの理由によっても 6 本願は拒絶すべきものであると判断した。その要旨は別紙3のとおりであ る。 (1) 本件補正2の却下、本願発明の要旨認定 請求項18に係る本件補正2は、特許請求の範囲の減縮、請求項の削除、 誤記の訂正又は明りょうでない記載の釈明のいずれかを目的とするもので はなく、法17条の2第5項の規定に違反するから、法159条1項、53 条の規定により却下する。 したがって、本願に係る発明は、本件補正1により補正された特許請求 の範囲に記載された事項により特定されるものと認められる。 (2) 本件補正1に係る法17条の2第3項違反(新規事項) 本願発明の請求項1に記載された「前記1以上の栄養処方物は、平均1 日量で1〜40gのω-6脂肪酸および1日当たり25mg〜10gの抗 酸化剤の用量を集合的に提供し、前記抗酸化剤の用量は、少なくとも1日 当たり5mgの1以上のポリフェノールを含む」との技術的事項は、本願 翻訳文等の関係で新たな技術的事項を導入するものであり、法17条の2 第3項に規定する要件を満たしていない。 (3) 分割要件違反を前提とする引用発明1に基づく進歩性の欠如 ア 本願発明の請求項1に記載された「前記1以上の栄養処方物は、平均1 日量で1〜40gのω-6脂肪酸および1日当たり25mg〜10gの抗 酸化剤の用量を集合的に提供し、前記抗酸化剤の用量は、少なくとも1日 当たり5mgの1以上のポリフェノールを含む」との技術的事項は、原出 願翻訳文等の関係で新たな技術的事項を導入するものであるといえるので、 分割要件(原出願の出願当初の明細書等に記載された事項の範囲内である こと)を満たさず、本願の出願日は現実の出願日である令和2年10月2 8日である。 イ これを前提にすると、本願発明は、引用文献1記載の引用発明1に基づ 7 いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、法29条2項の 規定により特許を受けることができない。 (4) 引用発明2に基づく進歩性の欠如 本願発明は、引用文献2記載の引用発明2に基づいて当業者が容易に発明 をすることができたものであり、法29条2項の規定により特許を受ける ことができない。 第2-4 取消事由 (1) 本件補正2を却下した判断の誤り(取消事由1) (2) 本件補正1に係る法17条の2第3項違反(新規事項)の判断の誤り(取 消事由2) (3) 引用発明1に基づく本願発明の進歩性の判断の誤り(取消事由3) (4) 引用発明2に基づく本願発明の進歩性の判断の誤り(取消事由4) |
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当事者の主張
第3-1 取消事由1(本件補正2を却下した判断の誤り)について 【取消事由1:原告の主張】 (1) 平成5年法律第26号による改正によって設けられた法17条の2第5 項による補正の制限事項は、無効理由を定めるものではなく、迅速な審査 の妨げになるような補正を禁止する意図のものであることから、審査の妨 げにならないような補正については、許容すべきものである。審査基準に 鑑みても、実際になされた補正が、既に実施された調査の結果等を有効利 用できる範囲内の補正であれば、同項の規定を必要以上に厳格に適用すべ きではない。 (2) 本件拒絶査定までに審査された本願の請求項1には、製品に含まれる熱 量やカロリーの範囲に関して数値限定がなされていないことから、個体の 1日熱量の0〜100%の全ての数値の場合及び個体のカロリー摂取の0 8 〜100%の全ての数値の場合の発明を含むことになる。そのため、本件 拒絶査定までになされた請求項1に係る発明の調査においては、製品に含 まれる個体の1日熱量やカロリー摂取に関する全ての数値範囲をカバーす るような先行技術文献調査が行われたものと考えられる。本件拒絶査定ま でに行われた先行技術文献調査は、実質的に、本願の請求項1に係る発明 と、引用文献の開示内容とを比較することで行われているから、本願の請 求項1に係る発明の範囲を超えない範囲でなされた補正であれば、既にな された文献調査の結果等を有効利用できる範囲内でなされた補正に該当す る。本件補正2は、本願の請求項1の従属項である請求項18に対して行 ったものであり、本願の請求項1に係る発明の範囲を超える補正ではない ことから、既になされた文献調査の結果等を有効利用できる範囲内でなさ れた補正に該当し、本願の審査に何ら妨げとなるものではない。 【取消事由1:被告の主張】 本件補正2は、請求項18において、同補正前には「1日熱量の40〜 80%」とあったものを、「カロリー摂取の少なくとも40%」とするもの であるところ、かかる補正は、法17条の2第5項で補正の目的とし得る 事項として規定された「請求項の削除」 (1号) 「特許請求の範囲の減縮」 、 (2号)、「誤記の訂正」(3号)及び「明りょうでない記載の釈明」(4 号)のいずれにも該当しない。 以上の理由により本件補正2を却下した本件審決の判断に誤りはない。 第3-2 取消事由2(本件補正1に係る法17条の2第3項違反〔新規事項〕の判 断の誤り)について 【取消事由2:原告の主張】 (1) 「1日当たり25mg〜10gの抗酸化剤の用量を集合的に提供し、抗 酸化剤の用量は、少なくとも1日当たり5mgの1以上のポリフェノール を含む」点が新規事項の追加に当たらないことについて 9ア 本件審決は、本願翻訳文等からは、ポリフェノールや抗酸化剤の1日当 たりの量が個別に把握できるとしても、特定の成分の、特定量についての 記載を組み合わせて「1日当たり25mg〜10gの抗酸化剤の用量を集 合的に提供し、抗酸化剤の用量は、少なくとも1日当たり5mgの1以上 のポリフェノールを含む」というものを把握することはできないと判断し ている。 しかしながら、当該判断は、本願発明に係る栄養処方物が複数の微量養 素の組み合わせによって定義されるものであることを看過している。 イ 本願翻訳文等の記載に接した当業者は、「相互補完された(例えば、微 量養素に関して補完された)処方物」(【0037】)は制限された分量又 は用量の微量養素を集合的に提供すること、微量養素は「ポリフェノール、 植物ステロール、脂溶性ビタミン/物質A、D、E、K…」を含むこと 【0 ( 037】及び【0041】)、「ファイトケミカルは…抗酸化剤の性質…を 有」すること(【0059】)、及びポリフェノールが有意レベルの影響を 受けやすい栄養素として特に強調されていること(【0059】〜【006 5】 表1) 本願翻訳文等に明示的に記載されていることを理解できる。 、 が、 また、本願翻訳文等では、ポリフェノールがファイトケミカル及び抗酸化 剤の非限定的な例として記載され、ビタミンA、Eが脂質、抗酸化剤及びビ タミンの非限定的な例として記載されていることから、当業者であれば、 本願翻訳文等に記載された複数の微量養素が、それぞれ別個独立の栄養素 群として存在する関係ではなく、相互に重複する概念に包含された関係に あることが理解できる。 ウ 次に、栄養処方物の実施形態についてみると、ポリフェノールは抗酸化 剤の下位概念であり(【0080】)、αカロテン及びβカロテンはカロテ ノイドの下位概念であり(表1) カロテノイドは抗酸化剤の下位概念であ 、 る(【0080】)から、本願翻訳文等の【0159】では全抗酸化剤の1 10 日あたりの用量を用いて栄養処方物を特定し、【0037】、【0144】 及び【0158】ではより具体的な抗酸化剤であるポリフェノール、αカロ テン及びβカロテンの1日あたりの用量を用いて栄養処方物を特定してい ることが理解できる。そうすると、これらは、それぞれ別個独立の実施形態 である栄養処方物を記載しているのではなく、本願発明に係る栄養処方物 を全抗酸化剤によって特定している、又は抗酸化剤の下位概念に含まれる 具体的な微量養素(ポリフェノール、αカロテン、βカロテン等)の組み合 わせによって特定しているものと解される。微量養素の異なる組み合わせ によって特定された複数の実施形態が別個独立のものではないことは、上 述のとおり、複数の微量養素が相互に重複する概念であることから明らか である。 エ 抗酸化剤の容量についてみると、「1日当たり25mg〜10gの抗酸 化剤」は、本願翻訳文等の【0159】に例示された抗酸化剤の1日あたり の集合的な用量の下限値から上限値までを全て包含する範囲であり、「少な くとも5mgの…ポリフェノール」は、【0037】、【0144】及び【0 158】に例示された1日あたりの集合的なポリフェノールの下限値以上の 量を全て包含する範囲であるから、「1日あたり25mg〜10gの抗酸化 剤の用量を集合的に提供し、抗酸化剤の用量は、少なくとも1日当たり5m gの1以上のポリフェノールを含む」との記載は、単に特定の成分の特定量 に関する別々の記載を組み合わせたものではなく、ポリフェノールとその上 位概念である抗酸化剤とを、各々についてそれぞれ例示された数値から把握 できる最大範囲の1日あたりの集合的な用量を併記したものにすぎない。 また、抗酸化剤の用量のうちのポリフェノールの用量の調整が特に重要 であることは、以下のとおりである。実施例8から、本願発明の解決すべき 課題の一つが適正量のω-6脂肪酸を個体に送達することである。ω-6 脂肪酸は摂取後に【0080】記載の酸化反応により酸化されて、長鎖脂肪 11 酸及びエイコサノイドのようなω-6脂肪酸とは異なる生成物が形成され る可能性があるところ、生理活性物質を形成し、ω-6脂肪酸量を減少す るω-6脂肪酸の酸化反応のバランスを最適化するために、本願発明に係 る栄養処方物には、抗酸化剤が含まれているが 【0048】【0068】 ( 、 、 【0109】)、その中でも特にポリフェノールが重要である(【008 0】)。一方で、ポリフェノールは長鎖ω-6脂肪酸の形成を阻害する可能 性があり(【0059】)、ポリフェノールの過剰な摂取は、長鎖ω-6脂 肪酸の欠乏を招く懸念がある。【0212】及び【0213】の実施例8等 の記載からは、@被験体の女性が「ω-6の所要量を増加させる」「抗酸化 剤およびファイトケミカルの摂取量」が多かったこと、そのような ω-6 の体内での活性が阻害される状況下において、Aω-6脂肪酸がほとんど 含まれていなかったオリーブ油を食事における主たる脂肪分として摂取し たことによる ω-6脂肪酸の摂取不足だけでなく、B主たる脂肪分として 摂取したオリーブ油に豊富に含まれるファイトケミカルの一種であるポリ フェノールが有する長鎖ω-6脂肪酸の形成阻害作用もその一因であった ことが理解される。 オ 以上のような本願発明の抗酸化剤及びポリフェノールの1日あたりの集 合的な用量の数値範囲の関係からすれば、当業者は本願翻訳文等には、ポ リフェノールと抗酸化剤とをそれぞれ例示された数値の最大範囲の用量ず つ含む栄養処方物、すなわち「1日あたり25mg〜10gの抗酸化剤の 用量を集合的に提供し、抗酸化剤の用量は、少なくとも1日当たり5mg の1以上のポリフェノールを含む」栄養処方物が記載されていると理解で きる。 (2) 本願発明の栄養処方物により抗酸化剤がω-6脂肪酸とともに集合的に 提供されることが新規事項の追加に当たらないことについて ア 本件審決は、栄養処方物が「1日当たり25mg〜10gの抗酸化剤の 12 用量」を「平均1日量で1〜40gのω-6脂肪酸」とともに「集合的に提 供」すること(請求項1)について、「1日当たりの(抗酸化剤の)量が記 載されているからといって、それを『平均1日量で1〜40gのω-6脂 肪酸』とともに『集合的に提供』することまで自明であるとはいえない。」 としている。 しかしながら、当該判断は、本願発明に係る栄養処方物がω-6脂肪酸 及びポリフェノールを含む抗酸化剤の組み合わせによって定義されるもの である点を看過して行われたものである。 イ 本願翻訳文等には、抗酸化剤(【0079】、【0080】)及び脂質 (例えば、ω-6脂肪酸)(【0066】)が、本願発明に係る栄養処方物 により集合的に送達されることが記載されている。当業者は、ω-6脂肪 酸を適切に送達するため、本願発明に係る栄養処方物がω-6脂肪酸及び その酸化を調整する抗酸化剤の用量を組み合わせて定義されるものである ことを当然に理解できる。ω-6脂肪酸及び抗酸化剤(特にポリフェノー ル)の用量が重要であることが【0212】、【0213】等から理解でき ることは上述のとおりである。 ウ 次に、本願発明に係る栄養処方物に含まれるω-6脂肪酸及び抗酸化剤 の用量について検討すると、「平均1日量で1〜40gのω-6脂肪酸」 は、【0172】に例示されたω-6脂肪酸の集合的な平均一日量の下限値 から上限値までを全て包含する範囲であり、「1日当たり25mg〜10 gの抗酸化剤」は、【0159】に例示された抗酸化剤の用量の下限値から 上限値までを全て包含する範囲である。 エ 以上のような本願発明の抗酸化剤及びω-6脂肪酸の用量の数値範囲の 関係からすれば、「1日当たり25mg〜10gの抗酸化剤の用量」を「平 均1日量で1〜40gのω-6脂肪酸」とともに「集合的に提供」する栄養 処方物は、ω-6脂肪酸と抗酸化剤とを各々についてそれぞれ例示された 13 用量から把握できる最大範囲の用量ずつ含む栄養処方物と理解される。し たがって、当業者は本願翻訳文等には、ω-6脂肪酸と抗酸化剤とをそれ ぞれ例示された数値の最大範囲の用量ずつ含む栄養処方物、すなわち「平 均1日量で1〜40gのω-6脂肪酸および1日当たり25mg〜10g の抗酸化剤の用量を集合的に提供」する栄養処方物が記載されていると理 解することができる。 【取消事由2:被告の主張】(1) 本願翻訳文等の【0004】 【0006】 〜 の記載によれば、本願発明は、 「脂質、抗酸化剤等の栄養素の不均衡または過剰な送達を抑制し、系内の 生成物を消費者が利用できるような最適範囲で栄養素を送達させるために デザインされ、相互作用、量、および消費者の見解での好みを保持するよう に適合された天然に存在する食品を消費者が消費するように導かれる目的 に合わせた製品の提供」を課題とするものであると解されるところ、栄養 素の不均衡または過剰な送達の抑制がなされるべき栄養養素とその用量と して、「ポリフェノール」と「ω-6脂肪酸」の用量の組み合わせが、特に 重要であるとの認識は、本願翻訳文等には示されていない。 また、本願翻訳文等の【0079】、【0080】からは、摂取された 脂肪酸は、摂取後に(1)β酸化、(2)フリーラジカル媒介酸化、(3) 非酵素的酸化、(4)酵素的酸化を受け得、各反応を阻害するためには特 定の抗酸化剤が必要であることが理解できるが、【0080】に記載され たいずれの抗酸化剤が「ω-6脂肪酸」の反応阻害に適した「特定の」「抗 酸化剤」であるのかについては記載されていない。 さらに、本願翻訳文等全体をみても、特に、「ポリフェノール」と「ω -6脂肪酸」の用量の組み合わせが重要であると記載されていたと解すべ き理由は見当たらない。 加えて、本願翻訳文等には、異なる実施形態において、「抗酸化剤」、 14 「ポリフェノール」、「ω-6脂肪酸」の各成分の用量範囲が記載されて いるが(【0037】、【0144】、【0158】、【0159】、【0 172】)、「抗酸化剤」及び「ポリフェノール」と「ω-6脂肪酸」と を特定用量で組み合わせて集合的に提供することについては記載がない。 よって、本願翻訳文等には「ω-6脂肪酸」、「抗酸化剤」、「ポリフ ェノール」を、特定の用量で組み合わせて集合的に提供することは記載さ れていない。 (2) 実施例8をみても、「ω-6脂肪酸」及び「ポリフェノール」の用量が重 要であることは理解できない。 ア 実施例8の1は50歳の女性の症例に関するものであって、女性が閉経 後の菜食主義者であり、抗酸化剤及びファイトケミカルの摂取量が多く、 脂肪はほとんど摂取しておらず、食事中の脂肪は飽和脂肪(総脂肪の20% 未満)又は一不飽和脂肪(総脂肪の70〜90%)のいずれかであった(オ リーブ油が最も保有するという当時の学説に従うと主にオリーブ油)こと や、オリーブ油は75%が一不飽和油でありポリフェノールが豊富である こと、全ての脂肪酸は代謝経路では脂肪酸が同一の酵素について競合し、 抗酸化剤及びファイトケミカルがω-6の所要量を増加させることを挙げ、 「ω-6酸の欠乏が犯人のようであった。」としたものである。 また、実施例8の2は、主にオリーブ油及び堅果を使用した低脂肪食を 利用する30代半ばの菜食主義の女性の症例に関するものであり、ω-6 の増加及び/又は堅果及び種子並びに一定のファイトケミカルの離脱によ って症状を逆転させることができたというものである。 そうすると、実施例8から、菜食主義かつ低脂肪食の各被験体に現れた 諸症状は、「ω-6脂肪酸」の欠乏によって引き起こされたと推測されるこ とについては理解できる。 しかしながら、「ポリフェノール」に関しては、オリーブ油にはポリフ 15 ェノールが豊富であること及び「過剰なファイトケミカル(特に、ポリフェ ノール)もまた、疾患に寄与したかもしれない」ことが記載されているにと どまり、「ω-6脂肪酸」及び「ポリフェノール」の用量が重要であると理 解しうる記載はない。 オリーブ油に「ポリフェノールが豊富」に含まれていたとしても、オリ ーブ油100g中の100.0gの脂質からすれば、ごく微量である。一 方、本願翻訳文等の【0080】に「抗酸化剤」としてポリフェノールのほ かビタミンA、ビタミンC、ビタミンE等が挙げられるところ、実施例8の 各被験体はいずれも菜食主義者であって、野菜類から「抗酸化剤」として相 当量のビタミンA、ビタミンC、ビタミンEを摂取していたと解するのが 自然であって、低脂肪食ゆえほとんど摂取していない脂肪としてのオリー ブ油が「ポリフェノール」に富んでいたとしても、実施例8の被験体に現れ た諸症状が「ω-6脂肪酸」と「ポリフェノール」の相互作用に起因するも のであると理解することはできない。 よって、実施例8をみても「ω-6脂肪酸」及び「ポリフェノール」の 用量が重要であることは理解できない。 イ 原告は、実施例8に関し、本願翻訳文等の【0212】、【0213】 の記載から、ポリフェノールの摂取の用量について、健康に有益な用量と するためには、過剰な摂取にならないようにその摂取用量を調節すること が重要であると理解できる旨主張する。 しかし、実施例8では、各症状をもたらす原因がω-6の代謝産物であ るエイコサノイドの不足であることを実際に確かめた旨の記載はなく、エ イコサノイドが不足した原因がポリフェノールであるとの記載もなく、 「過 剰なファイトケミカル(特に、ポリフェノール)もまた、疾患に寄与したか もしれない。 なる記載により、 」 被験体に現れた諸症状の原因が過剰なファ イトケミカル(特に、ポリフェノール)である可能性について述べるにとど 16 まる。乙17によれば、ポリフェノールには多種多様な化合物群が知られ ており、本願翻訳文等の【0059】に、単に「一定のポリフェノール」が ω-6脂肪酸(リノール酸)から長鎖ω-6脂肪酸(アラキドン酸)への代 謝を阻害する可能性がある旨の記載があったとしても、このような阻害の 可能性が、オリーブ油が含有するポリフェノールにもあると理解すること はできないから、【0212】、【0213】の記載に【0059】の記載 を併せて考えても、被験体1及び2において、エイコサノイドの不足した 原因が、ポリフェノールにあると理解することはできない。 ウ 本願翻訳文等には、ω-6脂肪酸は摂取後に、【0080】に列挙され た類型(1)〜類型(4)のいずれの酸化反応により酸化される旨の記載が あり、この記載と、本願出願時における技術常識とを併せ考えれば、類型 (4)の酸化により、長鎖ω-6脂肪酸やエイコサノイドが形成される可 能性があることは理解されるものの、【0080】には、長鎖ω-6脂肪酸 やエイコサノイドを産出するω-6脂肪酸の類型(4)の酸化を阻害する 「特定の抗酸化剤」にポリフェノールが該当するのかどうか明らかにされ ているものではなく、本願翻訳文等には、ω-6脂肪酸を適正量に維持す るために、ω-6脂肪酸の酸化反応のバランスを最適化することについて の記載はない。 実施例8の、ω-6脂肪酸の代謝産物が不足することにより諸症状が現 れた旨の記載や、本願翻訳文等の【0083】の記載からみると、ω-6脂 肪酸の代謝よりもω-3脂肪酸の代謝が優先されるため、ω-6脂肪酸の 代謝産物が不足することの問題について着目していると解することはでき るが、ω-6脂肪酸を適正量に維持することや、ω-6脂肪酸の酸化反応 のバランスを最適化することについても記載されていたとまで解すること はできない。 原告の主張する「ω-6脂肪酸の酸化反応による生理活性物質である長 17 鎖脂肪酸及びエイコサノイドの形成のバランスを調整する」ことについて は本願翻訳文等に何ら記載がない。 本願翻訳文等の【0059】の記載をみても、どのようなポリフェノー ルがどの程度の量で長鎖ω-6脂肪酸の形成を阻害するのかについて具体 的な記載もないから、「ポリフェノールの過剰な摂取は、長鎖ω-6脂肪酸 の欠乏を招く懸念があるから、健康に有益な用量とするために、その摂取 用量は特に最適化する必要がある」と理解することはできないし、まして や本願翻訳文等に記載されたポリフェノールの用量が、上記のような最適 化の観点から調整された用量を意味すると理解することはできない。 第3-3 取消事由3(引用発明1に基づく本願発明の進歩性の判断の誤り)について 【取消事由3:原告の主張】 前記【取消事由2:原告の主張】において主張したところからすれば、本 件補正1により本願発明の請求項1に記載された技術的事項は、原出願翻 訳文等との関係において、新たな技術的事項ではない。よって、本願は適法 に分割されたものであり、その出願日は原々出願日である平成23年10 月14日に遡及するから、同日以後に頒布された刊行物である引用文献1 は、本願発明の先行技術文献には該当しない。 よって、引用文献1を主引用例として本願発明の進歩性が欠如すると判 断した本件審決は誤りである。 【取消事由3:被告の主張】 原出願翻訳文等の記載内容は、本願翻訳文等の記載内容と同じである。 そして、前記【取消事由2:被告の主張】のとおり、本願発明の「前記1 以上の栄養処方物は、平均1日量で1〜40gのω-6脂肪酸および1日 当たり25mg〜10gの抗酸化剤の用量を集合的に提供し、前記抗酸化 剤の用量は、少なくとも1日当たり5mgの1以上のポリフェノールを含 む」との技術的事項は、本願翻訳文等の全ての記載を総合することにより 18 導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項であるので、原 出願翻訳文等に記載された事項の範囲内であるとはいえない。 したがって、本願の出願日は現実の出願日である令和2年10月28日 であり、本願発明は引用文献1に記載された発明に基づいて当業者が容易 に発明をすることができたものであるとの本件審決の判断に誤りはない。 第3-4 取消事由4(引用発明2に基づく本願発明の進歩性の判断の誤り)について 【取消事由4:原告の主張】 (1) 本願発明が解決しようとする課題について 抗酸化剤、特にポリフェノール(これはファイトケミカルでもある。) は、脂質であるω-6脂肪酸の必要量に影響し、抗酸化剤自体が強力な性 質を有していることから、その摂取量に注意を要する栄養素であり、それ らの栄養素については、健康上有益な効果が得られる範囲が狭いため、そ の摂取する用量を適切に管理する必要がある。本願発明が解決しようとす る課題は、過剰な摂取が健康に害を与える可能性を有しているポリフェノ ールを含む抗酸化剤と、ω-6脂肪酸の摂取量の合計を、有益な効果が得 られる適切な摂取用量を設定するために具体的に制限するという技術的思 想に基づくものである。 (2) 相違点2-4の容易想到性の判断に誤りがあることについて ア 引用発明2は、あくまで栄養素として脂質であるω-3脂肪酸とω-6 脂肪酸に着目し、それらの用量や比率を調整して最適な組成物を製造しよ うとするものであり、引用文献2中には、ポリフェノールの適切な摂取用 量に関する記載や具体的なω-6脂肪酸、抗酸化剤、及びポリフェノール 混合物における各成分の用量に関する記載は存在しないし、ポリフェノー ルを含む抗酸化物質の過剰摂取を懸念することは何ら開示されておらず、 抗酸化剤の摂取量に上限を設けることも開示されていない。 そうすると、引用発明2と本願発明とはその課題も解決手段も異なるも 19 のである。 イ 本件審決は、引用発明2におけるポリフェノールの具体的な含有量を2 5mg〜10gとすることも設計事項であるとして、引用文献3を援用す る。 しかし、引用文献3の表1は、単にポリフェノールを一定量含有する組 成物を開示しているのみであって、当該組成物に含有される他の抗酸化剤 の量や他の組成物由来のポリフェノール量については何ら開示していない。 また、引用文献3には、ポリフェノールを含む抗酸化物質の過剰摂取を懸 念すること、抗酸化剤の摂取量に上限を設けることも開示されていない。 また、引用文献3記載の組成物は、下限値、上限値とも本願発明よりかな り大きく、健康上有益な効果が得られる範囲が狭い抗酸化剤などの栄養素 について、マイクログラム量での栄養素の制御により栄養素のバランスを 調整しようとする本願発明の技術的思想は開示されていない。 さらに、引用文献3は、「カテキン類又はポリフェノール類の含有量」を 「便臭の改善効果」や「栄養組成物の風味低下」や「収斂味」を感じさせな いことを目的として、調整しようとするものであり、課題、解決策において も、本願発明のものとは異なっている。このような場合、引用文献3に記載 された組成物に含有されたポリフェノールの用量は、相違点2-4の構成 にかかる引用発明2におけるポリフェノールの含有量に関して、「通常の 範囲内の設計事項」として具体的な含有量を設定することの具体例を示す ものではない。 ウ 本件審決は、ポリフェノールや抗酸化剤も含め、いかなる栄養成分であ れ、過剰に摂取すれば有害であることは技術常識であるとして、周知例1 及び周知例2を引用する。 しかし、周知例1の記載は抗酸化成分に関して「一度にたくさん摂り過 ぎると…可能性があるので注意を要する」といった漠然としたものであり、 20 抗酸化成分を過剰に摂取した場合に有害となるといった具体的な記載内容 やそのような内容を示唆する記載は認められない。 周知例2の記載も「大豆イソフラボンを…妊婦や子どもが毎日摂取した 場合、安全性や健康上の利益が科学的に証明できないという評価が…出さ れた」といったものに留まり、大豆イソフラボンを過剰に摂取する場合の 記載や過剰摂取の場合に有害となることを述べた記載でもなく、また、そ れらを示唆する記載でもない。 また、本件審決のいう技術常識を前提としても、各栄養成分について、 過剰な摂取量ではない、健康上有効な摂取量を認識するということは別問 題であり、「ω-6脂肪酸及びポリフェノールを含む抗酸化剤の用量を適 量に限定し、所望の効果を得ること」を「当業者が普通に予測する」ことが 可能であったとはいえない。 エ 本願の出願当時に開示されていた技術によれば、当業者は脂質やポリフ ェノール等について健康上有効な必要量又は摂取量を容易に知り得たもの とはいえず、また安全性が必ずしも確保できるとはいえないことが技術常 識であった。 本願の出願当時の技術常識を前提とすれば、当業者は、本願発明の課題 である、ω-6脂肪酸と、ポリフェノールを含む抗酸化剤の適切な投与量 を設定することについて、容易に想到できず、実際にそのような設定をす ることは容易ではなかった。 したがって、相違点2-4に係る本願発明の構成に当業者が想到するこ とについては、阻害要因が存在した。 【取消事由4:被告の主張】(1) 本願発明と引用発明2の課題について 本願発明の課題は、「脂質、抗酸化剤等の栄養素の不均衡または過剰な 送達を抑制し、系内の生成物を消費者が利用できるような最適範囲で栄養 21 素を送達させるためにデザインされ、相互作用、量、および消費者の見解で の好みを保持するように適合された天然に存在する食品を消費者が消費す るように導かれる目的に合わせた製品の提供」である。 一方、引用文献2の[0007]〜[0009]によれば、引用発明2 の解決しようとする課題は、栄養的に適切なω-3脂肪酸の存在下でω- 6脂肪酸のより有利な供給源を使用する組成物及び方法の使用に関し、生 体利用率を最適化する、抗酸化物質、ミネラル及び植物性化学物質を含む 他の栄養素と共にω-6脂肪酸及びω-3脂肪酸を送達する方法及び組成 物を提供することである。 そうすると、本願発明と引用発明2とは、脂質及び、抗酸化物質等の栄 養素を最適な範囲で送達する方法や組成物を提供するという共通の課題を 有する。 原告は、本願発明は、ω-6脂肪酸及び1以上のポリフェノールを含む 抗酸化剤の混合物を含み、有益な効果が得られる適切な摂取用量を設定す るためにその用量の範囲を制限するものであるから、引用発明2と本願発 明とは課題も解決手段も異なる旨主張するが、本願翻訳文等全体の記載か らみても、「ω-6脂肪酸」と「ポリフェノール」の用量が重要であったと の認識はなく、また、本願翻訳文等には「ω-6脂肪酸」、「抗酸化剤」、 「ポリフェノール」を、特定の用量で組み合わせて集合的に提供すること が記載されていないことは前記【取消事由2:被告の主張】のとおりであ る。 (2) ポリフェノール及び抗酸化剤の摂取量の上限について ア 引用文献2には、脂質、植物性化学物質、抗酸化物質等の均衡のとれた 成分を含有する組成物が記載されている([0037])。 しかるところ、ポリフェノールの1日当たりの摂取量は、通常であれば 5mg〜10gの範囲であり(乙4、5)、本願翻訳文等の【0080】に 22 抗酸化剤の例として挙げられたビタミンA、E、C、セレンについても、1 日当たりの摂取上限は10gよりもはるかに小さいことが通常であるとい える(乙6、7)。また、乙8〜11によれば、本願の出願日前において、 栄養組成物におけるポリフェノールの配合量を10gよりもはるかに小さ い値とすることは、ごく一般的に知られていたといえる。 そうすると、引用発明2において、抗酸化剤や抗酸化剤としてのポリフ ェノールを配合するにあたり、均衡のとれた成分を含有する組成物を構成 するという観点から、その配合量の上限値を、ポリフェノールの平均的な 一日の摂取量や各抗酸化剤の許容上限摂取量を勘案し、従来知られた栄養 組成物のポリフェノールの含有量を参考にしつつ「抗酸化剤の用量」の上 限値を「10g」以下とすることが当業者にとって格別困難であったとは いえない。 イ 引用文献3は、栄養組成物における抗酸化剤としてのポリフェノールの 具体的な含有量を25mg〜10gとすることを記載した文献の一例にす ぎない。 また、引用文献3も、乙8〜11同様、ポリフェノールの含有量を本願 発明と同程度にすることが一般的に知られていたことを示している。 原告は、引用文献3の組成物はヒト成人1人あたり1日800〜250 0kcal等とされるから、1日当たり2500kcalで投与された場 合には、茶カテキンとアントシアニンとして含有されるポリフェノールの みで12gとなり、10gを超過すると主張するが、引用文献3に記載の 栄養組成物は、通常食を摂ることが不可能な患者で、特に高齢者もしくは 要介護者への栄養補給の際に使用される栄養組成物であるところ(【00 02】)、1日当たり「2500kcal」の摂取とは、生活活動強度が適 度または高い、特定の者に必要とされるエネルギー所要量であって(乙1 3)、引用文献3の栄養組成物がそのような者に投与されることは想定さ 23 れておらず、原告の主張は失当である。 また、引用文献3に記載のポリフェノールは、ポリフェノールの効能【0 ( 022】 に着目して配合されるのであって、 ) その添加目的は引用発明2と 格別異ならない。 ウ 周知例1は、抗酸化成分を取り過ぎることが注意を要することであるこ とを述べ、周知例2は「大豆のイソフラボン」等を毎日摂取した場合の、食 品安全委員会からの評価を記載したものであって、いずれもポリフェノー ルや抗酸化剤に関して過剰摂取について注意喚起するものであるから、本 件審決における技術常識の認定に誤りはない。 エ 原告は、当業者は脂質やポリフェノール等について健康上有効な必要量 や摂取量を容易に知り得たものとはいえず、安全性が必ずしも確保できる とはいえないことが技術常識であったことを理由に、阻害要因を主張する が、本願翻訳文等においても、平均1日量で1〜40gのω-6脂肪酸お よび1日当たり25mg〜10gの抗酸化剤の用量を集合的に提供し、前 記抗酸化剤の用量は、少なくとも1日当たり5mgの1以上のポリフェノ ールを含む」ことが記載されていたといえないことは上述のとおりである。 また、本願翻訳文等には、ポリフェノールに関して、その有益な作用を得 るためにはどのような方策があり得るのか、抗酸化剤の使用が有用である か否かについては、何ら記載されておらず、かえって、【0158】や【0 159】には、抗酸化剤に関し配合量が多くてもよいと解される記載があ り、過剰な摂取に関して何らかの懸念が記載されているとする理由もない。 よって、阻害要因に関する原告の主張は前提を欠き、失当である。 |
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当裁判所の判断
第4-1 取消事由1(本件補正2を却下した判断の誤り)について第4-1(1) 上記取消事由の法的な意味は、いわゆる発明の要旨認定の誤りをいうも 24 のと理解されるが、本件補正2は請求項18の補正に関するものであって、 請求項1に係る本願発明を変更するものではない。そして、後記第 4-2 で 判断するとおり、請求項1に係る本願発明の進歩性が否定され、本願は拒 絶を免れないと解すべきであるから、取消事由1は、本件の結論に影響す るものではない。 第4-1(2) なお、念のため、本件補正2を却下した本件審決の判断の当否を検討す るに、請求項18に関する本件補正2は、「1日熱量の40〜80%」とあ ったものを、「カロリー摂取の少なくとも40%」と補正するものである が、このような補正は、法17条の2第5項で補正の目的とし得る事項と して規定された「請求項の削除」(1号)、「特許請求の範囲の減縮」(2 号)、「誤記の訂正」(3号)及び「明りょうでない記載の釈明」(4号) のいずれにも該当しないから、法159条1項において読み替えて準用す る法53条1項により却下すべきものである。これと同旨の本件審決の判 断に誤りはない。 この点につき、原告は、審査の妨げにならないような補正であれば法1 7条の2第5項を厳格に適用すべきでないなどと主張するが、法が明文で 要求する補正要件を無視するものであって、採用できない。 第4-2 取消事由4(引用発明2に基づく本願発明の進歩性の判断の誤り)について 取消事由2〜4の間に判断の論理的順序はないので、取消事由4を以下 で検討する。 第4-2(1) 引用文献2には別紙4の記載があり、本件審決の認定するとおりの引用 発明2を認定できること、本願発明と引用発明2の一致点及び相違点が本 件審決の認定するとおりであることは争いがない。なお、相違点2-1、同 2-2、同2-3を容易想到とした本件審決の判断は争われていない。 第4-2(2) 相違点2-4の容易想到性について ア 引用発明2は、医学的状態および予防のための改善された方法および治 25療に用いる改善された脂質組成物の提供([0007])という課題を解決するため、栄養的に適切なω-3脂肪酸の存在下でω-3脂肪酸のより有利な供給源を使用する組成物の使用に関し、生体利用率を最適化する、抗酸化物質、ミネラル及び植物性化学物質を含む他の栄養素と共にω-6脂肪酸及びω-3脂肪酸を送達する組成物を提供するものである([0008][0009])。 また、引用文献2には、配合物の不可欠な構成要素として、抗酸化物質等の含有量が多く、過剰なω-3を不要にすると考えられる他の特性を有するナッツ、種子等を含むため、ω-3脂肪酸に対して比較的高率のω-6脂肪酸を組み込むことができること([0021])、ナッツや種子によりポリフェノールが供給されること([0022])、異なる供給源に由来する補完的な栄養素間の相乗作用が組み込まれていてもよく、それにより、 過剰な場合には有害と考えられるナッツや種子に由来する特定の植物性化学物質の高濃度での送達が回避されること([0030])、脂質、植物性化学物質、抗酸化物質等の均衡のとれた成分を含有する組成物を食餌の成分としての食品中に加えることにより、完全に均衡のとれた食餌計画を構築すること([0037])、油、ナッツ、種子及びハーブは強力であることから、取扱説明書には、推奨される用量、回数及び最適化についての提案を含めてもよいこと([0038])が記載されている。 そして、引用文献2の実施例5(表12)では、「多様なレベルのω-3脂肪酸についての、年齢および性別に基づく脂質用量」のタイトルのもとに、ヒト対象が自身の食餌に最もふさわしい組成物を選ぶことができるようにω-3の強度を低、中および高に増やした場合の、年齢及び性別により設計された、総脂肪酸内容物についての用量範囲(単位:グラム)、一価不飽和脂肪酸対多価不飽和脂肪酸の比率範囲及び一価不飽和脂肪酸対飽和脂肪酸の比率範囲、ω-6脂肪酸含有量の範囲(単位:グラム)、ω-9 26 脂肪酸対ω-6脂肪酸の比率範囲、ω-6脂肪酸対ω-3脂肪酸の比率範 囲、ω-3脂肪酸含有量の範囲(単位:グラム)が示され、ω-6について は1〜35gの範囲に収まっている。 イ 1日最適量の脂肪酸を含む引用発明2の組成物におけるω-6脂肪酸用 量に関する前記アの引用文献2の表12の1〜35gという開示範囲に鑑 みれば、これを本願発明組成物の「平均1日量で1〜40gの ω-6脂肪 酸」という用量とすることは、当業者が適宜になし得たものである。 前記アのとおり、引用文献2には、その構成要素であるナッツや種子に 抗酸化物質やポリフェノールが含まれることが記載されており、ポリフェ ノールが抗酸化物質であることは、本願優先日前に周知であったといえる から、引用発明2の組成物において、抗酸化物質としてポリフェノールを 含ませることも、当業者が適宜なし得たものである。 そして、前記アのとおり、引用文献2には、脂質、植物性化学物質、抗 酸化物質等の均衡のとれた成分を含有する組成物とすべきことが示唆され ており([0037])、成分含有量を適量に設定すべきことは当然ともい えることから(ナッツに含まれるポリフェノールや植物性化学物質の過剰 摂取が有害となり得ることは[0030]、[0038]等で繰り返し指摘 されている。)、相違点2-4に係る本願発明の構成を採用することは、引 用文献3や、周知例1、2によるまでもなく、当業者が容易になし得た設計 的事項の範囲内といえる。 ウ この点、原告は、本願発明が解決しようとする課題は、過剰な摂取が健 康に害を与える可能性を有しているポリフェノールを含む抗酸化剤と、ω -6脂肪酸の摂取量の合計を、有益な効果が得られる適切な摂取用量を設 定するために具体的に制限するというものであるのに対し、引用発明2は、 栄養素として脂質であるω-3脂肪酸とω-6脂肪酸に着目し、それらの 用量や比率を調整して最適な組成物を製造しようとするものであり、本願 27 発明と引用発明2は課題において異なる旨主張する。 しかし、本願翻訳文等の【0008】〜【0010】によれば、本願発 明の課題は、「脂質、抗酸化剤等の栄養素の不均衡または過剰な送達を抑制 し、系内の生成物を消費者が利用できるような最適範囲で栄養素を送達さ せるためにデザインされ、相互作用、量、および消費者の見解での好みを保 持するように適合された天然に存在する食品を消費者が消費するように導 かれる目的に合わせた製品の提供」であると認められる。本願翻訳文等全 体をみても、1日あたりの摂取量について、ω-6脂肪酸について【017 2】に、抗酸化剤について【0159】に、ポリフェノールについて【01 58】に個別の記載があるにとどまり、ポリフェノールを含む抗酸化剤と、 ω-6脂肪酸の摂取量の合計を具体的に制限することについては記載も示 唆もない。 したがって、本願発明と引用発明2とは、脂質及び抗酸化物質等の栄養 素を最適な範囲で送達する方法や組成物を提供するという共通の課題を有 する。 エ また、原告は、本願の出願当時の技術常識から、当業者は脂質やポリフ ェノール等について健康上有効な必要量又は摂取量を容易に知り得たもの とはいえず、また安全性が必ずしも確保できるとはいえなかったこと、本 願発明の課題である、ω-6脂肪酸と、ポリフェノールを含む抗酸化剤の 適切な投与量を設定することについて、容易に想到できず、実際にそのよ うな設定をすることは容易ではなかったことから、相違点2-4にかかる 本願発明の構成に当業者が想到することについては、阻害要因が存在して いた旨主張する。 しかし、原告の主張する本願発明の課題を認めることができないことは 前記ウのとおりである。 また、前記ウのとおり、本願翻訳文等には、ω-6脂肪酸、抗酸化剤、 28 ポリフェノールの1日当たりの摂取量が具体的に関連付けられずに個別に 記載されているだけであり、ポリフェノールを含む抗酸化剤と、ω-6脂 肪酸の摂取量の合計を具体的に制限することについては記載も示唆もない という状況のもとでは、相違点2-4に係る本願発明の構成が、ω-6脂 肪酸と、ポリフェノールを含む抗酸化剤の適切な投与量を示しているもの ともいえず、原告の主張は前提を欠くものであって、当業者がω-6脂肪 酸、抗酸化剤及び抗酸化剤に含まれるポリフェノールの用量を適宜調整す ることで相違点2-4に係る本願発明の構成に想到することは容易であっ たものというほかはない。 第4-2(3) 有利な効果について ア 本願発明が解決しようとする課題は、前記第 4-2(2)ウのとおりである。 イ 本願翻訳文等の実施例8には「1.進行性核上性麻痺」として、50歳 の菜食主義の女性を被験体とした症例が記載されており、そこでは、菜食 主義者であるために摂取量の多い抗酸化剤およびファイトケミカルが ω- 6の所要量を増加させ、ω-6の欠乏が起こったことが、このような症例 の原因と想定する考え方と、過剰なファイトケミカル(特に、ポリフェノー ル)が疾患に寄与したかもしれない可能性が示されている。また、「2.筋 萎縮性側索硬化症」として、30代半ばの菜食主義の女性を被験体とした 症例が記載されており、そこでは、@筋萎縮性側索硬化症(ALS)様の症 状の発症に対し、栄養組成物の投与および ω-6を増加させた食事プラン の変更により、女性の症状は消失し、筋緊張が改善されたことが示された 上で、Aこの症例では、組織中の ω-6と比較した ω-3の量が身体によ って許容される比を超えていたという仮説が立てられ、菜食および堅果が 大量の抗酸化剤およびファイトケミカルに寄与していたので、被験体は、 ω-3レベルが中程度であるにもかかわらず、ω-6が欠乏するようにな り、ω-6の増加および/または堅果および種子、ならびに一定のファイ 29 トケミカルの離脱によって症状を逆転させることができたという見方が示 されている。しかし、これらについては、本願発明で具体的に特定する量的 関係により、上記の本願発明の課題に係る「病状または疾患の予防または 治療に最適な効果」たる有利な効果が奏されることについて、客観的に実 証した比較実験データ等は何ら開示されておらず、また、本願発明で特定 する量的関係の技術的意義を裏付け、当業者が課題に係る有利な効果を認 識できるような十分な根拠記載も見いだせない。 本願翻訳文等では、1日当たりの摂取量について、ω-6脂肪酸、抗酸化 剤、ポリフェノールについて個別の記載があるにとどまることは上述のと おりであり、実施例8から読み取れる可能性をもとに、本願発明で特定す る量的関係まで具体化し、課題に係る有利な効果が奏される根拠にもなり 得ない。 本願翻訳文等には、ファイトケミカルは抗酸化剤の性質を有し、ファイ トケミカルや抗酸化剤の中には、ポリフェノールが含まれること、ポリフ ェノールは、ω-6等の脂肪酸の所要量を増加させ、その形成を妨げる反 面、ω-3の所要量又は耐性を軽減し、その合成を増強すること(例えば、 一定のポリフェノールはその前駆体からの長鎖ω-3の合成を増強するが、 長鎖ω-6形成を妨害し得る)までは記載されているが 【0025】 【0 ( 、 059】、【0080】)、本願発明で特定する量的関係によって課題に係 る有利な効果がもたらされることを当業者が予見できることは記載されて いない。 ウ 引用文献2には、必須脂肪酸の代謝に抗酸化物質が関与する([000 5])ことも踏まえ、「本開示は、他の要素と関わりのある1つまたは複数 の脂質の不均衡と関連する医学的状態を予防および/または治療するため の組成物および方法に関する。より詳細には、本開示は、栄養的に適切な ω -3脂肪酸の存在下で ω-6脂肪酸のより有利な供給源を使用する組成物 30 および方法の使用に関する。本開示は、さらに、1つまたは複数の脂質の不 均衡に関連する医学的状態の予防および/または治療のための、ω-6お よび ω-3を毎日送達し、また、生体利用率を最適化する他の栄養素と共 にω-6脂肪酸およびω-3脂肪酸を送達する方法および組成物にも関す る。」([0008])との記載もあり、本願発明の効果は、課題に関わる 技術的思想が共通する引用発明2が奏する効果と比較しても有利なもので はない。 第4-2(4) まとめ 以上によれば、本願発明が引用発明2に基づいて容易に発明できたもの であるとした本件審決の判断に誤りはない。 第4-3 結論 以上のとおり、原告主張の取消事由4は理由がなく、取消事由2、3に ついて判断するまでもなく、本件審決に取り消すべき違法は認められない。 よって、原告の請求を棄却することとして、主文のとおり判決する。 |
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追加 | |
31別紙1略語一覧(略語)(意味)・法:特許法・本願翻訳文等:法36条の2第8項の規定により明細書及び特許請求の範囲とみなされる、本願に係る外国語書面の翻訳文(甲2、3)・原出願翻訳文等:法36条の2第8項の規定により明細書及び特許請求の範囲とみなされる、原出願に係る外国語書面の翻訳文(甲15、16)・本願優先日:原々出願に係る最先の優先日である平成22年10月14日・本件補正1:拒絶理由通知を受けて原告がした令和3年10月14日付け手続補正・本件補正2:拒絶査定不服審判請求と同時に原告がした令和4年5月2日付け手続補正(本件審決が「本件補正」と定義するもの)・本願発明:本件補正1による補正後の特許請求の範囲に記載された事項により特定される請求項1に係る発明・本件拒絶査定:本願について審査官が令和3年12月21日付けでした拒絶査定・本件審決:上記拒絶査定不服審判請求について特許庁が令和5年10月12日にした審決(本件訴訟の対象)・引用文献1:特表2013-541108号公報(原々出願に係る公表特許公報)(甲8)・引用発明1:引用文献1記載の発明・引用文献2:国際公開第2009/131939号(甲9)・引用発明2:引用文献2記載の発明・引用文献3:特開2003-313142号公報(甲11)・周知例1:荒井綜一外1名「機能性食品の研究-回顧と展望」日本乳酸菌学会誌、2007年18巻1号(甲12)・周知例2:唐木英明「学術からの発信毒性は量で決まる-パラケルサスの教え-」学術の動向2006年11巻5号(甲13)32別紙2本願翻訳文等の記載【0002】発明の技術分野本発明は、栄養組成物および栄養処方物分野に関する。特に、本出願は、栄養素に由来する利点を最適化する目的に合わせた栄養プランの選択方法に関する。より詳細には、本発明は、最適化されたレベルの栄養素(ファイトケミカル、抗酸化剤、ビタミン、ミネラル、脂質、タンパク質、炭水化物、プロバイオティクス(probiotics)、プレバイオティクス(prebiotics)、微生物、および繊維など)を含む組成物を提供する処方物および食品に関する。 【背景技術】【0003】発明の背景ヒトの健康のためのファイトケミカル、脂質、およびいくつかの他の栄養素の所要量は、非常に繊細である。多数の栄養素の相互作用が存在し、その健康上の有効範囲は狭く、食事の型および/または人口統計学的要因によって変化する。 【0004】脂質、抗酸化剤、ファイトケミカル、ビタミン、ミネラル、微生物、またはその組み合わせを含む処方物は、伝統的にはサプリメントとして提供されるか、栄養処方物または局所処方物に無作為に添加される。酸化または炎症の抑制がしばしば注目されているが、これは、酸化および炎症の両方が生理学において必要な役割を有するという事実を無視している。さらに、選択的、反復的、および過剰な抑制によって炎症の調節異常を引き起こして健康により大きな影響を及ぼし得る。したがって、現在のアプローチは不適切に管理された送達および/または過剰な送達の危険性があり、特に一定の脂質、抗酸化剤、ファイトケミカル、ビタミン、ミネラル、および微生物と共にパッケージングした天然の「栄養価が高い食品」(堅果、種子、油、穀物、マメ科植物、果物、野菜、 魚介類、ハーブ、およびスパイスなどの食品が含まれる)と組み合わせて有害であり得る。同様に、 ステロール、スタノール、カルシウム、ビタミンE、葉酸、ω-3、フラボノイドなどを富化した33機能性食品もまた、きちんとした理由付けはないが有害であり得る。現在のアプローチにより、これらの栄養素が不均衡または過剰に消費される。結果として、普及しているアプローチは、疾患の重荷を緩和しない。 【0005】現在まで、最適な結果を達成するように天然に存在する食品(堅果、種子、油、穀物、マメ科植物、果物、野菜、魚介類、ハーブ、およびスパイスなど)を適合させる方法は存在しない。代わりに添加物が注目されているが、しばしば過剰になる。現在、送達系内の累積栄養素が安全範囲内に保持されることがわかっている、系内の生成物を消費者が利用できるような最適範囲で栄養素を送達させるためにデザインされた送達系を作製する方法は存在しない。かかる系の開発が必要である。 【0006】従って、相互作用、量、および消費者の見解での好みを保持するように適合させた天然に存在する食品を消費者が消費するように導かれる目的に合わせた栄養プログラムまたは送達系を開発することが好ましい。さらに、プログラムは、プログラムによって提供された最適な栄養を破壊し得る食品の型および量について消費者を警告することが必要である。広範な個人化のパラメータおよび中程度のコンプライアンス内で消費者は慢性疾患リスクを軽減することができ、より狭い個人化のパラメータおよびより高いコンプライアンスを用いて、より多くの健康上の利益を達成することができる。現在まで、目的に合わせたプログラムは、特にファイトケミカルおよび脂質の相互作用および量に関して考案が困難であった。 【0007】プログラムは、消費者に融通性および利便性を付与することに基づいた構成要素またはモジュールであり得る。プログラム内の構成要素の選択を順守するほど有利になり得る。例えば、脂質の型および量は健康に重要であり、多数の要因によって変化し得る。したがって、消費者が管理のために毎日較正することは困難である。組成および量の両方が管理される必要がある。例えば、脂質所要量は、ある家族(25歳男性)については別の家族(3歳児)と比較して80グラムまたは720カロリーもの量であり得る。脂質が食品と均一に混合せず、そのようなものとして、各部分が34不均一な量で脂質を含み得るので、このことをさらに複雑にしている。したがって、所与の食品調製物内に脂質を補足する場合、各家族は少なすぎるか多すぎる脂質を消費し得る。同様に、男性は女性より大量の栄養素が必要であり得る。目的に合わせた食事構成要素系によって有効に解決され得る。 【0008】そのようなものとして、最適なレベルの栄養素(ファイトケミカル、抗酸化剤、ビタミン、ミネラル、脂質、タンパク質、炭水化物、プロバイオティクス、プレバイオティクス、微生物、および繊維など)を提供する構成要素ベースの栄養処方物、目的に合わせた食事および食事プランが必要である。いくつかのこれらの栄養素は食事プランで注目されることはまれであるが(例えば、ファイトケミカル)、非常に大量または非常に少量のかかる微量養素は食事中の別の有益な微量養素に有害作用を及ぼし得る。 【発明の概要】【課題を解決するための手段】【0009】本発明は、構成要素ベースの食事処方物およびプログラムの新規の開発ストラテジーに関する。 特に、本発明は、最適な効果が得られるように栄養素レベルのバランスが取れている消費者のための目的に合わせた食事の作製に関する。 【0010】一定の態様では、本発明は、例えば、高肉食、高植物食、および高魚介類食に基づいて個体を食事コホートに分類する。消費者は、一般に、メインの食品(赤肉、魚介類、または植物の食品など)に特定の好みがある。例えば、菜食主義者は、典型的には、高食肉消費者または高魚介類消費者と比較してより多くの野菜、穀物、およびマメ科植物を消費する。これらの食習慣は基本的栄養素を確立するのに役立ち、それにより有効な食事プログラムを開発することができる。栄養素を食事に無作為に添加する代わりに、一連の食事型の系列(例えば、植物、食肉、または魚介類重視)、ならびに食事、年齢、サイズ、性別、病状、家族歴、および気候などによって分類される消費パターンの系列を同定し、各系列に合わせて栄養組成物を作製することが必要である。 35【0015】別の態様では、本発明は、消費者が構成要素由来の栄養素が全体的にみると安全範囲内に維持されることがわかっている特定の食品または飲料の品目(ボトル入りジュース、バー、サラダ、食事(meal)など)を安全に選択することができるような加工済みまたは未加工の食品(例えば、 飲料、軽食、食事、デザート、シリアル、サラダ、添え料理、ソース、デザート、スプレッドなど)のモジュール/構成要素系であり得る栄養組成物を提供する。一定の実施形態では、かかる構成要素を、個体が頻繁に栄養相談を受けることなく都合よく栄養バランスを維持することができるように、本明細書中に記載の特定のコホートのために包装し印をつける。送達は、特定のコホートのためにデザインされたファイトケミカル、抗酸化剤、ビタミン、ミネラル、微生物、および繊維を含む新規の食事脂質プログラムの形態であり得る。このプログラムは、1日のスケジュールに適合させるために種々の1日量のスプレッド、オイルブレンド、ソース、ドレッシング、およびデザートを相互に補足することを含み、都合がよく、魅力的であり、且つ楽しみがあり得る。かかるプログラムは、栄養素(特に、ファイトケミカルおよび脂質)の不適切な取り込みおよび栄養素間の相互作用由来の有害作用の可能性および規模を最小にする。 【発明を実施するための形態】【0025】定義本明細書中で使用する場合、用語「ファイトケミカル」は、植物起源の任意の天然分子をいう。 ファイトケミカルは、果物、野菜、豆類、穀物、および他の植物中に見いだされる。用語「ファイトケミカル」および「植物栄養素」は、植物の有効成分を説明するために交換可能に使用される。 一般的に知られている植物栄養素またはファイトケミカルには、抗酸化剤、・・・ポリフェノール、 ・・・、およびビタミンEが含まれる(しかし、これらに限定されない)。栄養プランで調節することができるファイトケミカルおよび例示的供給源を、表1に列挙する。これらのファイトケミカル/供給源は、食事プランの構成中に調節され、その送達は、天然油、バター、マーガリン、堅果、 種子、ハーブ、ビタミン、およびミネラルの1つ、2つ、または3つの補完処方物によって実質的に調節される。任意選択的に、これらの処方物は、従来のサプリメント(経口投与用カプセルなど)36または局所用処方物の形態を取ることができる。 【0037】栄養プランおよび影響因子1つの態様では、本発明は、個体のために栄養プランをカスタマイズまたは選択する方法を提供する。栄養プランは、本明細書中に記載の一定の微量養素のバランスを取るために相互に補完する2〜約20(または2〜約10)種の栄養処方物を含む。一定の実施形態では、栄養プランは、4〜約12または4〜約10種の相互補完された(例えば、微量養素に関して補完された)処方物を含む。一定の実施形態では、1、2、または3つのこれらの処方物が(集合的に)一連の微量養素の少なくとも50%、少なくとも75%、または少なくとも90%を送達し、残りの処方物が基本的な食事に関する検討項目(例えば、タンパク質摂取量、炭水化物摂取量、および/またはカロリー摂取量など)に関してバランスを取る。脂質摂取もバランスが取られるが、微量養素処方物の送達によって部分的にバランスが取られる。実質的なレベルの微量養素を含む1、2、または3種の処方物について、3〜約10種の処方物のサブセットを、個体間の選択のために調製することができ、それにより、費用効果の高い個体化が可能である。例えば、特定の例では、微量養素を送達する処方物は、約5、10、15、20、45、70、95、115、140、または165mg/日のポリフェノール;および(それぞれ)約100、200、300、400、500、600、 700、800、900、または1000mcg/日の葉酸塩;植物ステロール(それぞれ)約150、200、250、300、350、450、550、650、750、または850mg/日;および約5、10、15、20、35、55、75、95、115、または135mcg/日のSe(それぞれ)を送達することができる。いくつかの実施形態では、これらの値は、10%または20%まで変化し得る。 【0041】有意レベルの影響を受けやすい栄養素(例えば、表1を参照のこと)(ポリフェノール、植物ステロール、脂溶性ビタミン/物質A、D、E、K、脂質、葉酸塩、およびSeなど)を有するリスト由来の食品品目を選択する。これらは調節されるべきである。有意レベルのこれらの微量養素を有する食品供給源は本明細書中に記載されており、当該分野で公知である。影響を受けやすい食品37品目の層または一部(例えば、ふすま、外皮、胚芽、または殻)を除去して有意レベルの微量養素を除去することができる場合、一部を除去し、食品品目をその基本的カテゴリー(例えば、マメ科植物または穀物)を使用して再分類する。いくつかの実施形態では、以下に記載の加工方法を使用して、栄養素の至適含有量または活性に到達させる。 【0048】いくつかの実施形態では、個体の食事コホートを、必須脂肪酸の消費および所要量によって少なくとも一部定義し、いくつかの実施形態では、植物ベース、食肉ベース、または魚介類ベースとしてコホートを定義することによって実施することができる。例えば、必須脂肪酸(EFA)およびその代謝産物、長鎖多価不飽和脂肪酸(LCPUFA)および種々のエイコサノイドは、ヒトの健康において重要な役割を果たす。一不飽和脂肪酸および飽和脂肪酸はまた、健康において有意な役割を果たす。しかし、後者はEFAおよびLCPUFAの活性および生物学的利用能を阻害し得る。性別は、性ホルモンおよび識別的遺伝子発現によってその脂質代謝能力が異なる。加齢によるホルモン状態の変化によっても、脂質所要量が変化し得る。さらに、多量栄養素のうちで脂質は酸化ストレスに最も感受性が高く、酸化ストレスは老化の最も可能性の高い原因の1つである。異なる抗酸化剤の相乗的および管理された使用はヒトの健康に有利である。脂肪酸消費の突然且つ大きな変動により、免疫応答(用量依存性)、神経細胞および筋細胞および神経伝達の興奮性ならびにアンドロゲン産生が変化し得る。従って、脂肪酸消費の突然且つ大きな変化が免疫不全および生理学的障害を引き起こし得る。 【0059】一般に、ファイトケミカルは、 (a)抗酸化剤の性質(脂質および他の分子の酸化を変化させる)を有し、 (b)大量またはいくつかの相互作用によって酸化促進剤に変化し得、 (c)遺伝子発現を調整し、細胞保護酵素、解毒酵素、および抗酸化酵素の適応タンパク質/遺伝子の合成を刺激し、 (d)ゲノムの完全性を維持し、 (e)細胞シグナル伝達経路および細胞膜、細胞質および核の酵素反応を調整し、 (f)細胞の過剰増殖および活動亢進を低下させ、遺伝的に不安定な細胞のアポトーシスを促進し、 (g)細胞膜内に蓄積して膜タンパク質およびイオンチャネルに影響を及ぼす細胞形状の変化および二重層材料の性質(二重層の厚さ、流動性、および弾性)の調整を引き起こ38し、 (h)炎症(例えば、NFkBの転写)を阻害し(炎症に関与する広範なサイトカイン遺伝子を調節するか(例えば、スルホラファン、クルクミン、ゼルンボン)、PPAR-γを活性化し、 )抗炎症遺伝子を調整してNFkBを阻害し得る(例えば、クルクミン、カプサイシン、ジンセノサイド、ヘスペリジン、およびリスベラトロール)(i)酸化および/または一定の炎症分子または;経路を過剰に抑制し、次いで、身体が代償機構を上方制御することができ、 (j)ミトコンドリア機能を阻害することができ、 (k)特にω-3および不均一または不適切な脂質と共に消費された場合にアシドーシスに導くことができ(キサントンはアシドーシスを引き起こすことが示されており、アシドーシスを引き起こす他のファイトケミカルが存在すること可能性が非常に高い)、 (l)脂質およびその代謝産物の代謝および活性を変化させることができ、 (m)ω-6およびいくつかの他の脂肪酸の所要量を増加させることができ、 (n)ω-3の所要量または耐性を軽減することができる(例えば、一定のポリフェノールはその前駆体からの長鎖ω-3の合成を増強するが、長鎖ω-6形成を妨害し得る)。 39【0060】【表1-1】40【0061】【表1-2】41【0062】【表1-3】【0063】42【表1-4】43【0064】【表1-5】44【0065】【表1-6】自然食品中のファイトケミカルならびにその既知または推定される活性に関する詳細については、Duke博士のファイトケミカルおよび民族植物学データベース(ウェブ上のars-grin.gov/duke/で利用可能)を参照のこと。 【0066】脂質および代謝産物一定の実施形態では、個体の食事コホートを、個体のω-3、ω-6、ω-9脂肪酸、および任意選択的に脂溶性ビタミン(A、D、E、およびKが含まれる)の消費および所要量によって少な45くとも一部を定義する。これらの実施形態では、個体に所要量のバランスを取るための栄養補助剤および/またはプログラムを提供する。基本的食事性コホートのための高食肉食、高植物食、および高魚介類食の至適レベルを本明細書中に開示している(表6〜8を参照のこと)。 【0067】脂質にはファイトケミカル群が含まれ、この群には、ω-3、-6、-9脂肪酸、他の脂肪酸、 ワックス、ステロール、脂溶性ビタミンA、D、E、およびKが含まれる。植物ステロールは脂質の小群であり、コレステロールに類似する200種を超えるステロイド化合物が植物中で見出されている。 【0068】ヒトの脂質に対する感受性の大部分は、必須脂肪酸(EFA)およびその代謝産物の作用に起因する。エイコサノイド(EFA代謝産物)種々の生理学的過程および病理学的過程は、(血管狭窄、 拡張、血圧調節、血小板凝集、および炎症の調整が含まれる)に関与する。一般に、AA起源のエイコサノイドは強い応答を生じるのに対して、EPA起源のエイコサノイドは弱い応答を生じる。 さらに、AA、EPA、およびDHAは、抗炎症性を有するリポキシン、レソルビン、およびノイロプロテクチンの前駆体である。LCPUFAがエイコサノイドによる多数の生物学的機能を調整するにもかかわらず、脂肪酸は、飲作用、イオンチャネル調整、および遺伝子調節において細胞膜の構成要素としての活性が高い。 【0079】酸化剤および抗酸化剤一定の実施形態では、個体の食事コホートを、個体の抗酸化剤の消費および所要量によって少なくとも一部を定義する。これらの実施形態では、個体に所要量のバランスを取るための栄養補助剤および/またはプログラムを提供する。基本的食事性コホートのための高食肉食、高植物食、および高魚介類食の至適レベルを本明細書中に開示している(表6〜8を参照のこと)。一定の実施形態では、コホートを、1つ以上のビタミンC、ビタミンE、および/またはセレン、鉄、銅、および/または亜鉛を食事から補足するか離脱させるようにデザインした処方物によって定義する。 【0080】46脂質代謝に関して、脂肪酸は、摂取後に以下のうちの任意の1つを受け得る:(1)エネルギー産生のための主なミトコンドリアおよびペルオキシソームのβ酸化、 (2)フリーラジカル媒介酸化(1つのフリーラジカルが多数の脂質分子を酸化することができる連鎖反応)(3)フリーラジ、 カル非依存性の非酵素的酸化、または(4)長鎖脂肪酸およびエイコサノイドなどの生理活性脂質産物を産生するための酵素的酸化。各酸化型から特定の生成物が形成され、各反応型を阻害するために特定の抗酸化剤が必要である。栄養プログラムは、抗酸化剤を含むことができる。抗酸化剤は、 他の分子の酸化を遅延または防止することが可能な分子である。抗酸化剤の非限定的な例には、予防酵素(スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)、カタラーゼ、およびグルタチオンペルオキシダーゼ(GSHpx)など)、ビタミンA、カロテノイド、ビタミンC、ビタミンE、セレン、フラボノイド、ラクトウルフベリー、クコ、ポリフェノール、リコペン、ルテイン、リグナン、補酵素Q10(CoQ10)、グルタチオン、またはその組み合わせが含まれる。 【0083】多くの抗酸化剤、ファイトケミカル、ビタミン、およびミネラルはPUFAの酸化(いくつかのミネラル(鉄および銅など)が酸化促進剤であるにもかかわらず)およびPG合成を抑制し、それにより、LA(すなわち、脂肪酸のω-6ファミリー)の必要性が増加し、ω-3脂肪酸の必要性または耐性を軽減する。酸化の減少はω-3ファミリーよりω-6ファミリーに影響を及ぼし、これは、ω-3ファミリーの代謝が優先されたためである。 【0109】脂肪酸およびファイトケミカルの組織貯蔵に依存して、慣習的な高長鎖ω-3脂肪酸または免疫抑制性もしくは抗炎症性のファイトケミカルの宿主からの供給の突然の離脱、またはω-6脂肪酸もしくは他の脂肪酸の突然の増加により、全身性炎症応答に関与する重篤な結果(毛細血管漏出、発熱、頻拍、頻呼吸)、多臓器機能不全(胃腸管、肺、肝臓、腎臓、心臓)、および関節組織の損傷を伴う無制限のサイトカイン応答を生じ得る。サイトカイン作用の突然の増加に加えて、他の要因(神経細胞および筋細胞の興奮性の突然の変化など)は、別の複雑性要因であり得る。かかる例では、宿主は、感染、心筋梗塞、卒中、および他の身体の化学反応に依存する乾癬の誘導、および感染性因子の存在に対して脆弱になり得る。脂肪酸の中程度の変動に起因する比較的軽度の発47現および別の健康的な条件下では、宿主は、神経伝達の変化、筋細胞および神経細胞の興奮性、ならびにエイコサノイドおよびアンドロゲンの変動に起因する睡眠障害、頭痛、筋痙攣、錯乱、メランコリー、および激怒を経験し得る。栄養ストラテジーとして、全ての食事による炎症調整の累積効果は、免疫系の自己制御が実質的に鈍いか、炎症が異常に調節される閾値未満であるべきである。 【0144】食事性コホートを、食事中の葉酸塩、ポリフェノール、植物ステロール、抗酸化剤、ビタミンA、 E、Seに基づいて定義することもできる。例えば、5、10、15、20、45、70、95、 115、140、または165mg/日超(または未満)の1つ以上のポリフェノール;および/または100、200、300、400、500、600、700、800、900、または1000mcg/日超(または未満)の葉酸塩;および/または150、200、250、300、350、450、550、650、750、または850mg/日超(または未満)の1つ以上の植物ステロール;および/または5、10、15、20、35、55、75、95、115、または135mcg/日超(または未満)のSeを使用して、食事性コホートを分類することができる。 【0158】いくつかの実施形態では、ポリフェノール、葉酸塩、植物ステロール、αカロテン、βカロテン、 βクリプトキサンチン、ベタイン、コリン、リコペン、およびルテイン/ゼアキサンチンが処方物中に含まれる。例えば、5、10、15、20、45、70、95、115、140、165、200、または300mg/日超(または未満)の1つ以上のポリフェノール;および/または100、200、300、400、500、600、700、800、900、または1000mcg/日超(または未満)の葉酸塩;および/または150、200、250、300、350、450、550、650、750、850、または1000mg/日超(または未満)の1つ以上の植物ステロール;および/または100、300、500、1000、3000、5000、8000、10000、12000、または14000mcg/日超(または未満)の1つ以上のカロテノイド;および/または25、50、100、200、400、500、または600mg/日超(または未満)のベタインおよび/またはコリン。いくつかの実施形態では、これらの範囲は、一48定のコホートの限度を示す。 【0159】いくつかの実施形態では、抗酸化剤、およびビタミンおよびミネラル(例えば、Se)が処方物中に含まれる。例えば、25、50、100、200、400、500、600、または1000mg/日、または1、2、4、6、8、または10g/日超(または未満)の抗酸化剤;および/または5、10、15、20、35、55、75、95、115、または135mcg/日超(または未満)のSeを使用することができる。 【0172】いくつかの実施形態では、栄養プログラムに従ったω-6脂肪酸の平均1日量は1〜40gの範囲である。実施形態では、ω-6脂肪酸の1日量は、1、2、5、10、15、20、25、30、35、または40g超(または未満)である。 【実施例】【0212】実施例8:神経障害に関する症例研究1.進行性核上性麻痺被験体ホストは50歳の女性で、その症状には歯の過敏症、筋肉量の低下、時折の呼吸困難、容易に紫斑ができること、軽度の不整脈、および排便困難が含まれていた。歯科医は、女性の過敏な歯に対する解決策として、50歳の時に抜歯して義歯と交換した。女性の他の各症状を個別に処置し、非脂質薬で処置した。60歳で女性は平衡感覚障害、複視(複視)、および不明瞭発話(slurryspeech)を発症した。最終的に、女性は骨折を伴う転倒をし始め、進行性核上性麻痺(PSP)(脳幹内の神経組織の喪失によって主に特徴づけられる神経疾患)と診断された。 次いで、被験体は歩行および発話が不可能になり、嚥下困難を発症した。女性は、67歳で肺炎により死亡した。 【0213】この女性は、4回の健康的な出産を経験し、50歳まで健康に生活し、女性の家族に神経疾患を発症した者はいなかった。50歳付近の女性の生活における変化についてのより綿密な試験によ49り、脂肪は心臓病を引き起こし、全ての脂肪が有害であるという1980年代の有力な学説のために、そのあたりの時期から女性の食事中の脂肪が著しく削減されていたことが明らかとなった。70歳代前半の女性の両親および48歳の兄弟は、心臓発作で亡くなっていた。それ故、脂肪の削減が心疾患の予防手段であり、当時脂肪は強い遺伝要素を有すると考えられた。しかし、ω-6脂肪酸およびω-3脂肪酸の両方が重篤に欠乏し始める時点まで脂肪を削減したという仮説が立てられる。女性は閉経後の菜食主義者であり、抗酸化剤およびファイトケミカルの摂取量が多く、脂肪はほとんど摂取しておらず、女性の食事中の脂肪は飽和脂肪(総脂肪の20%未満)または一不飽和脂肪(総脂肪の70〜90%)のいずれかであった(オリーブ油が最も保有するという当時の学説に従うと主にオリーブ油)。オリーブ油は75%が一不飽和油であり、ポリフェノールが豊富である。全ての脂肪酸は代謝経路で同一の酵素について競合し、抗酸化剤およびファイトケミカルがω-6の所要量を増加させるので、女性の症例では、ω-6酸の欠乏が犯人のようであった。ω-6の欠乏は、女性の初期症状からも明らかである。筋肉量にはω-6およびω-3のバランスをとる必要があり、ω-6誘導性ロイコトリエンの不足によって喘息様の呼吸の問題を引き起こすであろう(逆に過剰なロイコトリエンによっても喘息様症状を引き起こし得る)。ω-3の欠乏は不整脈に関連しており、ω-6由来のトロンボキサンの欠乏によって容易に紫斑ができるであろう。 ω-6由来のプロスタグランジンの不足は平滑筋の活動を妨害し、それ故、排便を妨害するであろう。エストロゲンおよびアンドロゲンが、本開示で仮定されるように、多価不飽和脂肪酸と類似の作用および利点を有するので、女性が閉経後であったという事実はω-6およびω-3の必要性をより重要にしていた。生殖ホルモンが低下する場合、身体は生理学的機能のためにω-6およびω-3に次第に依存する。過剰なファイトケミカル(特に、ポリフェノール)もまた、疾患に寄与したかもしれない。 【0214】2.筋萎縮性側索硬化症被験体は、主にオリーブ油および堅果を使用した低脂肪食を利用する30代半ばの菜食主義の女性であった。女性は、以下の筋萎縮性側索硬化症(ALS)様の症状を発症していた:手、腕、 脚、および発話に関する筋肉の筋力低下、筋肉の単収縮および痙攣、息切れ、および嚥下困難。女50性の左半身は右半身より重篤であった。栄養組成物の投与およびω-6を約12グラムに増加させた食事プランの変更により、女性の症状は消失し、筋緊張が改善され、症状の発症前より良好であった。この症例では、組織中のω-6と比較したω-3の量が身体によって許容される比を超えていたという仮説が立てられる。菜食および堅果が大量の抗酸化剤およびファイトケミカルに寄与していたので、被験体は、ω-3レベルが中程度であるにもかかわらず、ω-6が欠乏するようになった。ω-6の増加および/または堅果および種子、ならびに一定のファイトケミカルの離脱によって症状を逆転させることができた。 51別紙3本件審決の判断の要旨(注:下記文中の「本件補正」とは、本判決の定義でいう「本件補正2」を指す。)1本件補正の適法性について本件補正は、 「製品」に含まれる「個体のカロリー摂取」あるいは「一日熱量」に対する割合上限値を削除して、その数値範囲を広げる補正であるから、特許請求の範囲の減縮ではない。 また、本件補正は、請求項の削除、誤記の訂正又は明りょうでない記載の釈明のいずれかを目的とするものではない。 そうすると、本件補正は、法17条の2第5項の規定に違反するものであるから、法159条1項で読み替えて準用する法53条1項の規定により却下すべきものである。 これを前提として、令和3年10月14日付け補正後の請求項1に係る発明について検討する。 2新規事項の追加があるかについて本願翻訳文等からは、ポリフェノールや抗酸化剤の1日当たりの量が個別に把握できるとしても、「1日当たり25mg〜10gの抗酸化剤の用量を集合的に提供し、抗酸化剤の用量は、 少なくとも1日当たり5mgの1以上のポリフェノールを含む」ものが記載されているわけではなく、 「栄養処方物」が含み得るものとして、ポリフェノールや抗酸化剤以外にも多種多様なものが例示されており、ポリフェノールや抗酸化剤の量も、それぞれについて多数の数値が例示されているから、特定の成分の、特定量についての記載を組み合わせて「1日当たり25mg〜10gの抗酸化剤の用量を集合的に提供し、抗酸化剤の用量は、少なくとも1日当たり5mgの1以上のポリフェノールを含む」というものを把握することはできない。 1日当たりの量が記載されているからといって、それを「平均1日量で1〜40gのω-6脂肪酸」とともに「集合的に提供」することまで自明であるとはいえない。 したがって、請求項1に記載された「前記1以上の栄養処方物は、平均1日量で1〜40gのω-6脂肪酸および1日当たり25mg〜10gの抗酸化剤の用量を集合的に提供し、前記抗酸化剤の用量は、少なくとも1日当たり5mgの1以上のポリフェノールを含む」との技術的52事項は、本願翻訳文等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項といえる。 3分割不適法を前提とした引用文献1を主引用例とする本願発明の進歩性について請求項1記載の「前記1以上の栄養処方物は、平均1日量で1〜40gのω-6脂肪酸および1日当たり25mg〜10gの抗酸化剤の用量を集合的に提供し、前記抗酸化剤の用量は、 少なくとも1日当たり5mgの1以上のポリフェノールを含む」とのように「集合的に提供」することは、原出願翻訳文等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものであるから、分割は不適法である。 これを前提として、本願発明と引用発明1と比較すると、相違点1-1(本願発明は、 「1以上の栄養処方物、並びに前記1以上の栄養処方物を使用するためのパッケージ、ラベルおよび指示を含む、包装された製品」との特定を有するのに対し、引用発明1は、 「消費者による消費のための少なくとも1つのモジュールを含む栄養処方物」とされる点)、相違点1-2(本願発明における栄養処方物は、 「1以上の栄養処方物のうちの少なくとも1つは、異なる供給源からの、 ω-6脂肪酸および抗酸化剤の混合物を含み;前記1以上の栄養処方物は、平均1日量で1〜40gのω-6脂肪酸および1日当たり25mg〜10gの抗酸化剤の用量を集合的に提供し、 前記抗酸化剤の用量は、少なくとも1日当たり5mgの1以上のポリフェノールを含む」との特定を有するのに対し、引用発明1における栄養処方物は、 「前記栄養処方物は、健康上の利益を提供するように最適化されてバランスが取られる量および型のファイトケミカル、抗酸化剤、ビタミン、ミネラル、酸-塩基、脂質、タンパク質、炭水化物、プロバイオティクス、プレバイオティクス、微生物、繊維、および他の栄養素を含む」とされる点)が認められるが、いずれも当業者が容易し得たものである。また、本願発明には顕著な作用効果も認められない。 4引用文献2を主引用例とする本願発明の進歩性について(1)引用文献2から、次の引用発明2を認定することができる。 1日最適量の脂肪酸および植物性化学物質を含む哺乳動物対象のための脂質含有組成物であって、ω-6脂肪酸およびω-3脂肪酸を含む脂質含有組成物。 (2)引用発明2と本願発明の相違点53[相違点2-1]本願発明は、 「1以上の栄養処方物、並びに前記1以上の栄養処方物を使用するためのパッケージ、ラベルおよび指示を含む、包装された」との特定を有するのに対して、引用発明2においてはそのような特定を有さない点。 [相違点2-2]本願発明は、 「1以上の栄養処方物のうち少なくとも1つは、複数の異なる供給源から」と特定されているのに対し、引用発明2においては栄養処方物の由来は特定されていない点。 [相違点2-3]本願発明は、「抗酸化剤」を含むと特定されているのに対し、引用発明2は、「抗酸化剤」を含むとされていない点。 [相違点2-4]本願発明は、1以上の栄養処方物は「平均1日量で1〜40gのω-6脂肪酸および1日当たり25mg〜10gの抗酸化剤の用量を集合的に提供し、前記抗酸化剤の用量は少なくとも1日当たり5mgの1以上のポリフェノールを含む」のに対し、引用発明2は、そのような特定を有さない点。 (3)相違点の容易想到性の判断ア相違点2-1について引用文献2には、脂質配合物を1日用量で包装することや、製品の使用、リスク、警告量、推奨される用量、回数、最適化についての提案を含む取扱説明書を提供することが示されているから、引用発明2の組成物を、パッケージ、ラベル及び指示を含む、包装された製品の形態で提供することは、当業者が容易に想到し得たことである。 イ相違点2-2について引用文献2には、異なる供給源に由来する補完的な栄養素間の相乗作用が組み込まれていてもよいことや、異なる供給源による供給により特定成分の望ましくない高濃度での送達が回避されること等が示唆されているから、引用発明2の1以上の栄養処方物のうち少なくとも1つは、複数の異なる供給源に由来するものとすることは、設計的事項にすぎな54い。 ウ相違点2-3について引用文献2には、組成物がポリフェノールや抗酸化物質を含むことが示されている。 エ相違点2-4について引用文献2には、ω-6脂肪酸の用量範囲として、1〜35gの範囲内がふさわしい旨が示されているから、1日最適量の脂肪酸を含む引用発明2の組成物について、ω-6脂肪酸の用量を1〜40gとすることは、当業者が普通になし得たことである。 また、ポリフェノールが抗酸化作用を有することは周知であるから、引用発明2の組成物に、抗酸化物質としてポリフェノールを含ませることは当業者が容易に想到し得たことである。 引用文献2には、抗酸化物質を含めて均衡のとれた組成物とすべき旨が示唆され、また、 栄養成分や有効成分の含有量を適量に設定すべきことは当然ともいえるから、引用発明2の組成物に含ませるポリフェノールの含有量を適量に設定することは、当業者が普通に考慮すべき設計事項である。 その際の具体的な含有量を25mg〜10gとすることも、通常の範囲内の設計事項にすぎない(一例として、引用文献3)。 (4)顕著な効果について本願発明が、引用発明2から予測できない格別顕著な効果を奏するものとは認められない。 (5)請求人(原告)の主張について請求人は、本願発明は、ω-6脂肪酸と、ポリフェノールを含む抗酸化剤の合計の量とを具体的に制限する点で引用文献2とは異なる等の主張をするが、ポリフェノールや抗酸化剤も含め、いかなる栄養成分であれ、過剰に摂取すれば有害であることは、周知例1、周知例2にも示されるように技術常識であり、ω-6脂肪酸及びポリフェノールを含む抗酸化剤の用量を適量に限定し、所望の効果を得ることは、当業者が普通に予測することである。 55別紙4引用文献2の記載事項頁、段落は原文(甲9)により、日本語訳は、引用文献2のファミリーである特表2011-518223号公報(甲10)を参照しその段落を付した。本文中では甲10の段落で引用する。 (44頁)【特許請求の範囲】【請求項1】1日最適量の脂肪酸および植物性化学物質を含む哺乳動物対象のための脂質含有組成物であって、以下の群:前記対象の年齢、前記対象の性別、前記対象の食餌、前記対象の体重、前記対象の医学的状態、および前記対象の生活圏の気候から選択される1つまたは複数の要素に基づく組成物。 【請求項3】ω-6脂肪酸およびω-3脂肪酸をさらに含み、ω-6脂肪酸対ω-3脂肪酸の比率およびその量が、前記群から選択される1つまたは複数の要素に基づいて制御される、請求項1に記載の組成物。 (2頁、 [0005])【0005】証拠により、抗酸化物質、植物性化学物質、微生物、ビタミンおよびミネラル、他の食餌性要素(タンパク質および炭水化物など)、ならびに、ホルモンおよび遺伝子も、必須脂肪酸の代謝に関与することが示されている。 ・・・(3〜4頁、[0007]〜[0009])【0008】ω-3脂肪酸を増やしω-6脂肪酸の摂取を減らすことについての伝統的な強調は十分な解決策(relieves)とならないことが多いが、食餌的および人口統計学的な要素によりもたらされる不確実性がその理由である。したがって、改善された脂質組成物を使用する、医学的状態および予防のための改善された方法および治療が未だに必要とされている。 ・・・56【0009】本開示は、他の要素と関わりのある1つまたは複数の脂質の不均衡と関連する医学的状態を予防および/または治療するための組成物および方法に関する。より詳細には、本開示は、 栄養的に適切なω-3脂肪酸の存在下でω-6脂肪酸のより有利な供給源を使用する組成物および方法の使用に関する。本開示は、さらに、1つまたは複数の脂質の不均衡に関連する医学的状態の予防および/または治療のための、ω-6およびω-3を毎日送達し、また、生体利用率を最適化する他の栄養素と共にω-6脂肪酸およびω-3脂肪酸を送達する方法および組成物にも関する。・・・【0010】本開示の全般的な一実施形態は、最適量の脂肪酸、抗酸化物質、ミネラルおよび植物性化学物質を含む哺乳動物対象のための脂質含有組成物であって、該対象の年齢、性別、食餌、体重、身体活動、医学的状態および該対象の生活圏の気候を含む群から選択される1つまたは複数の要素に基づく組成物である。・・・(6頁、[0021]〜[0022])脂質配合物【0022】一態様では、本開示は、ω-6脂肪酸およびω-3脂肪酸両方の最適な1日送達量を維持しながら、ω-3脂肪酸に対して比較的高率のω-6脂肪酸を組み込む。高率を維持する1つの理由は、配合物の不可欠な構成要素として、抗酸化物質、ミネラルおよび植物性化学物質の含有量が多く、過剰なω-3を不要にすると考えられる他の特性を有するナッツ、種子およびナッツ油が組み込まれているからである。・・・【0023】本開示の一定の実施形態は、以下のうち1つまたは複数の補給を含む組成物を提供する:ビタミンA、B9(葉酸)、C、D、E;βカロテン、リコペン、アスタキサンチン、ルテイン、ゼアキサンチンなどの、アルカロイド、カロテノイド;モノフェノール;ケルセチン、ケンフェロールおよびレスベラトロールなどの、ポリフェノール、 ・・・ならびに、抗酸化物質および植物性化学物質全般。 ・・・一定の実施形態では、前述の栄養素のそれぞれは、油、バター、ナッツ、 種子、ハーブ、甘味料および他の食品などの天然の供給源により最適化される。 ・・・(7頁、[0025])57【0026】ピーナッツも、抗酸化物質の食餌性摂取に著しく貢献し、ブラックベリーおよびイチゴの抗酸化物質含有量に匹敵し、リンゴ、ニンジンまたはビートより抗酸化物質にはるかに富む。 ピーナッツは、ビタミンE(γ-およびα-トコフェロール)、ナイアシン、葉酸、タンパク質およびマンガンの良好な供給源である。ピーナッツは、高濃度の植物性化学物質ポリフェノール(レスベラトロールなど)も含有する。 (8頁、[0030])【0031】いくつかの実施形態では、異なる供給源に由来する補完的な栄養素間の相乗作用が組み込まれていてもよい。さらに、ナッツおよび種子は、良くも悪くも強力な結果を有することが公知であることから、異なる供給源を使用すると、過剰な場合には有害と考えられる特定の植物性化学物質の高濃度での送達が回避される。 ・・・(10頁、 [0032])【0035】・・・一定の実施形態では、完全な食餌は、脂肪酸、抗酸化物質、植物性化学物質、 ビタミンおよびミネラルに関して均衡のとれた組成物である。 ・・・(11頁、 [0036])投与【0037】いくつかの実施形態では、本明細書中で開示する脂質配合物を含む組成物は、経口的に許容される任意の形態で個体に投与できる。この脂質配合物は、1、2、3、4またはそれを超える相互補完的な1日用量で包装してもよい。 ・・・(12頁、 [0037]〜[0038])【0038】本明細書中で開示する均衡のとれた脂質組成物を使用して、いくつか例を挙げれば脂質、植物性化学物質、抗酸化物質、ビタミンの均衡のとれた成分を含有する組成物を食餌の成分としての食品中に加えることにより、完全に均衡のとれた食餌計画を構築してもよい。 ・・・【0039】各個体には、任意の医薬製品、栄養補給製品、または、摂取を意図した任意の製品の場合に通常見られるように、製品の使用およびリスクおよび警告量についての取扱説明書を提供してもよい。油、ナッツ、種子およびハーブは強力であることから、取扱説明書には、推奨される58用量、回数、および、最適化についての提案を含めてもよい。 ・・・(22頁、 [0059])実施例5.ω-3脂肪酸含有量を変えた配合物【0060】表12は、ヒト対象が自身の食餌に最もふさわしい組成物を選ぶことができる(この場合、その選択は、食餌中の抗酸化物質および植物性化学物質のレベルおよび/または医学的素因に基づいてもよい)ようにω-3の強度を低、中および高に増やした場合の、年齢および性別により設計された、総脂肪酸内容物についての用量範囲(単位:グラム)、一価不飽和脂肪酸対多価不飽和脂肪酸の比率範囲および一価不飽和脂肪酸対飽和脂肪酸の比率範囲、ω-6脂肪酸含有量の範囲(単位:グラム)、ω-9脂肪酸対ω-6脂肪酸の比率範囲、ω-6脂肪酸対ω-3脂肪酸の比率範囲、ω-3脂肪酸含有量の範囲(単位:グラム)を示すものである。 【0061】【表12】59 |
裁判長裁判官 | 宮坂昌利 |
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裁判官 | 本吉弘行 |
裁判官 | 岩井直幸 |