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関連審決 異議2019-70146
異議2019-701046
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事件 令和 6年 (行ケ) 10019号 特許取消決定取消請求事件
5
原告大日本印刷株式会社
同訴訟代理人弁護士 柏延之
同 二枝翔司 10 同訴訟代理人弁理士 岡村和郎
同 藤枡裕実
同 中村直人
同 豊本泰央
同 大井香澄 15
被告特許庁長官
同 指定代理人藤井眞吾
同 金丸治之
同 天野貴子 20 同木原裕二
同 須田亮一
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2024/12/25
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
主文 1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
25 事 実 及 び 理 由【略語】本判決で用いる略語は、別紙1「略語一覧」記載のとおりである。
1第1 請求特許庁が異議2019−70146号事件について、令和6年1月23日にした決定を取り消す。
第2 事案の概要5 1 特許庁における手続の経緯等(当事者間に争いがない。)(1) 本件特許の設定登録原告は、発明の名称を「ポリエステル樹脂組成物の積層体」とする発明について、平成29年12月6日に特許出願をし(特願2017−234463号) 令和元年7月5日に本件特許に係る特許権の設定登録を受け、 (請求項の10 数14)、同月24日に特許掲載公報が発行された。この出願は、以下の特許出願を順次分割して新たな出願としたものである。
・原々出願 平成22年10月29日を出願日とする特願2010−244721号・原出願 平成28年3月14日の出願(分割出願)に係る特願2016−15 49799号(2) 異議申立て及び第1次決定(特許取消決定)ア 本件特許(全請求項)について、令和元年12月20日に特許異議の申立てがされ、特許庁は、同申立てを異議2019−701046号事件として審理を行った。
20 イ 特許庁は、令和2年6月2日付けで、特許第6547817号公報(甲1)を主引用例とする進歩性欠如等を内容とする取消理由を通知し、原告は、これに対し、同年8月7日、意見書を提出した。
ウ 特許庁は、令和3年1月26日付けで、引用文献4を主引用例とする進歩性欠如を内容とする取消理由の通知(第1次決定予告)をし、原告は、こ25 れに対し、同年3月29日、訂正請求書及び意見書を提出し、同年4月23日、補正書を提出して上記訂正請求書による訂正請求を補正した(前件訂2正、訂正後の請求項の数22)。
エ 特許庁は、令和4年3月22日に、前件訂正を認めず、引用文献4を主引用例とする進歩性欠如があるとして、「特許第6547817号の請求項1ないし14に係る特許を取り消す。 との決定」 (第1次取消決定)をした。
5 (3) 前訴判決による第1次取消決定の取消しア 原告は、令和4年4月28日、知的財産高等裁判所に第1次取消決定の取消しを求める取消決定取消訴訟を提起した(同裁判所令和4年(行ケ)第10030号)。
イ 知的財産高等裁判所は、令和5年3月9日、第1次取消決定が前件訂正10 を認めなかった判断には誤りがあるとして、第1次取消決定を取り消す旨の判決(前訴判決)をし、同判決は確定した。
(4) 再度の異議手続及び本件決定(再び特許取消決定)ア 特許庁は、令和5年5月19日付けで、引用文献4を主引用例とする進歩性欠如のほか、新たに引用文献7を主引用例とする進歩性欠如を加えた15 内容の取消理由の通知(第2次決定予告)をし、原告は、その訂正請求期間内である同年7月24日、本件特許の特許請求の範囲を訂正(本件訂正)する旨の訂正請求をした(訂正後の請求項の数28)。
イ 特許庁は、令和6年1月23日、本件訂正を認めた上、「特許第6547817号の請求項1〜28に係る特許を取り消す。 との本件決定をし、
」 同20 決定は同年2月6日原告に送達された。
(5) 原告は、令和6年3月7日、本件決定の取消しを求める本件訴えを提起した。
2 本件特許に係る発明の内容(1) 特許請求の範囲の記載25 請求項1を以下に、請求項2以下を別紙2に掲げる。
【請求項1】3少なくとも2層を有する積層体であって、
第1の層が、2軸延伸樹脂フィルムからなり、前記2軸延伸樹脂フィルムを構成する樹脂組成物が、ジオール単位とジカルボン酸単位とからなるポリエステルを主成分として含み、前記ポリエステルが、前記ジオール単位がバ5 イオマス由来のエチレングリコールであり、前記ジカルボン酸単位が化石燃料由来のテレフタル酸であるバイオマス由来のポリエステルと、前記ジオール単位が化石燃料由来のエチレングリコールであり、前記ジカルボン酸単位が化石燃料由来のテレフタル酸である化石燃料由来のポリエステルとを含んでなり、前記2軸延伸樹脂フィルム中に前記バイオマス由来のポリエステル10 が90質量%以下含まれ、
第2の層が、化石燃料由来の原料を含む樹脂材料からなり、且つ、バイオマス由来の原料を含む樹脂材料を含まないことを特徴とする、積層体。
(2) 本件明細書の記載事項及び願書添付図面の抜粋を、別紙3に掲げる。これによれば、本件明細書には、次のような開示があることが認められる。
15 ア この発明は、植物由来の原料から得られたバイオマスポリエステル樹脂組成物からなる層を有する積層体に関し、より詳細には、バイオマス由来のエチレングリコールをジオール成分として用いたポリエステルを含む樹脂組成物からなる第1の層を有する積層体に関する(【0001】)。
イ 近年、循環型社会の構築のため、材料分野においてもエネルギーと同様20 に化石燃料からの脱却が望まれており、いわゆるカーボンニュートラルで再生可能であるバイオマスの利用が注目されている(【0003】)。
ウ この発明は、バイオマスエチレングリコールを用いたカーボンニュートラルなポリエステルを含む樹脂組成物からなる層を有し、従来の化石燃料から得られる原料から製造された積層体と機械的特性等の物性面で遜色な25 い積層体を提供することを課題とする(【0008】)。
エ この発明は、「第1の層」及び「第2の層」の「少なくとも2層を有する4積層体」の構成により、上記本件発明の目的を達成するものである。
「第1の層」 「2軸延伸樹脂フィルムからなり、
は 前記2軸延伸樹脂フィルムを構成する樹脂組成物が、ジオール単位とジカルボン酸単位とからなるポリエステルを主成分として含み、前記ポリエステルが、前記ジオール5 単位がバイオマス由来のエチレングリコールであり、前記ジカルボン酸単位が化石燃料由来のテレフタル酸であるバイオマス由来のポリエステルと、
前記ジオール単位が化石燃料由来のエチレングリコールであり、前記ジカルボン酸単位が化石燃料由来のテレフタル酸である化石燃料由来のポリエステルとを含んでなり、前記2軸延伸樹脂フィルム中に前記バイオマス由10 来のポリエステルが90質量%以下含まれ」た層である。また、
「第2の層」は「化石燃料由来の原料を含む樹脂材料からなり、且つ、バイオマス由来の原料を含む樹脂材料を含まない」層である(【0009】)。
オ 本件発明の構成を採ることにより、カーボンニュートラルな樹脂からなる層を有する積層体を実現し、化石燃料の使用量を大幅に削減し、環境負15 荷を減らすことができる。また、本件発明のポリエステル樹脂組成物の積層体は、従来の化石燃料から得られる原料から製造されたポリエステル樹脂組成物の積層体と比べて、機械的特性等の物性面で遜色がないポリエステル樹脂組成物を用いているため、従来のポリエステル樹脂組成物の積層体を代替することができる(【0020】)。
20 3 本件決定の理由の要旨(詳細は別紙4「本件決定の理由」を参照。本件で争点となっている部分のみ記載。)(1) 訂正の許否について本件訂正は、いずれも特許請求の範囲減縮すること(一部の請求項については、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載25 を引用しないものとすること)を目的とするものであり、その他法定の要件を充足するものであるから、これを認める。
5(2) 特許法113条2号の特許取消理由について本件決定が取り上げている特許取消理由は、以下のものである。
(取消理由) (対象請求項)取消理由1 引用文献4を主引用例とす 請求項1〜9、13、14、1る進歩性欠如 7、20、21、23、27、28取消理由2 引用文献7を主引用例とす 請求項1〜28る進歩性欠如ア 取消理由1についての判断本件発明1〜9、13、14、17、20、21、23、27、28は、
5 引用発明Aに、引用文献5記載事項等を適用することにより、それぞれ当業者が容易に発明することができたものである(引用発明Aに適用すべきものは、引用文献5記載事項のほか、別紙7【本件各請求項の発明特定事項及び取消理由】a〜dのとおりである。)。
イ 取消理由2についての判断10 本件発明は、引用発明Bに引用文献5記載事項等を適用することにより、
それぞれ当業者が容易に発明することができたものである(引用発明Bに適用すべきものは、引用文献5記載事項のほか、別紙7【本件各請求項の発明特定事項及び取消理由】e〜qのとおりである。)。
4 本件決定取消事由15 (1) 引用文献4を主引用例とする本件発明の進歩性の判断の誤り(本件決定取消事由1)(2) 引用文献7を主引用例とする本件発明の進歩性の判断の誤り(本件決定取消事由2)(3) 手続違背(本件決定取消事由3)20 第3 当事者の主張61 本件決定取消事由1(引用文献4を主引用例とする本件発明の進歩性の判断の誤り)について【原告の主張】(1) 引用発明Aの認定に誤りがあること5 本件決定は、別紙4の1のとおり引用発明Aを認定した。
しかし、知的財産高等裁判所平成28年(行ケ)10182号・平成28年(行ケ)10184号平成30年4月13日特別部判決(いわゆるピリミジン事件大合議判決)によれば、引用発明の特定に関する技術的要素に関して膨大な数の選択肢を有する場合には、特定の選択肢に係る具体的な技術的思10 想を積極的あるいは優先的に選択すべき事情がない限り、当該刊行物の記載から当該特定の選択肢に係る具体的な技術的思想を抽出することはできず、
これを引用発明と認定することはできないとされている。
この点、引用文献4の【0022】、【0023】では、ガスバリア性積層フィルムを構成する「基材」や「加工方法」として様々なものが開示されてお15 り、その中から2軸延伸とポリエステル樹脂の組み合わせを積極的あるいは優先的に選択すべき事情はない。
ヒートシール樹脂層についても、【0151】において、課題解決に必須ではなく任意的な層であることが明らかにされている。
その上、引用文献4の技術的課題は、優れたガスバリア性を有しつつ透明20 性を備え、耐衝撃性にも優れる、ガスバリア性積層フィルム及びその製造方法を提供することであって(【0010】、【0011】等)、基材となる樹脂の種類や製法、ヒ一トシール性樹脂層の有無やその素材に重きが置かれておらず、引用発明Aとして認定された組み合わせに係る技術的思想を積極的あるいは優先的に選択すべき事情は何ら見出せない。
25 したがって、本件決定の引用発明Aの認定に誤りがあり、その結果、本件発明1と引用発明Aの一致点・相違点の認定にも誤りがあるから、引用発明A7の認定の誤りは、本件決定の結論に影響を及ぼす。
(2) 本件発明1と引用発明Aの相違点についての判断に誤りがあること本件決定の認定する引用発明Aを前提としても、本件決定における本件発明1と引用発明Aの相違点についての判断に誤りがある。
5 ア 相違点A−1について引用発明Aの「2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム」のPET樹脂として引用文献5記載のバイオマス由来のポリエチレンテレフタレートを適用する動機付けはない。
原出願日当時、引用文献5に記載されたカーボンニュートラルという概10 念は、各用途に求められるPETの性能を犠牲にしてまで達成しなければならない周知の課題あるいは技術常識であると認識されてはいなかった。
少なくともポリエステル樹脂に関しては、バイオマス原料に由来する様々な不純物の影響により、従来の化石燃料由来のPETの代用としてはその実用化が特に困難と考えられていたというのが技術常識である(甲115 7の【0007】、【0008】、甲18の【0006】)。
さらに、@引用文献4では、透明性の維持が重要な課題となっているところ、原出願日当時、バイオマス資源由来のエチレングリコールの不純物による着色の問題は解消していなかったこと(甲18の【0006】)、A引用発明Aにおいては、基材が2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィ20 ルムからなるところ、甲17の【0008】において、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂フィルムにおいて、不純物の存在によりフィルムの均一性が損なわれ、成型性に悪影響を及ぼすことが示唆されていること(その他甲27〜29)、B引用発明Aでは、高い耐熱性が求められるところ(【0010】)、甲19の【0005】によれば、本件優先日25 後においても、バイオマスPETにおいて耐熱性の問題が解決できていなかったと考えられること、C引用発明Aでは、ガスバリア性を重要な課題8とするところ、本件優先日後に公開された甲15の【0007】では、バイオマス由来のポリエステルを用いるとガスバリア性能に著しい影響を来すことが示唆され、また、甲21の【0062】では、バイオマス由来のポリエステル樹脂において密度ムラや結晶化度の偏在が生じやすいという課題5 が存在したことが記載されているところからすると、引用発明に相違点1の構成を適用する動機付けはなく、むしろ阻害要因がある。
なお、本件決定は、引用文献5の【0011】の、従来の化石資源由来のPETに比べ何ら遜色を有するものではなくフィルムや成型物などの用途に使用することができる旨の記載や、【0024】の、シート、フィルムの10 場合も必要に応じて延伸して製品とする旨の記載を、容易想到性を認める根拠としている。しかし、これらは実施例に基づくものではなく、少なくとも技術的な検証もなく誇張した記載である。すなわち、トウモロコシ由来のPETの融点が石化由来のPETより10℃低く加工しにくいこと、不純物が存在すること、着色しやすいことが知られていたので(甲49)、バ15 イオマス由来のPETが化石資源由来のPETに比べ遜色を有しないとの【0011】の記載は誤りである。また、引用文献5の【0031】では短繊維を得たことが記載され、これは長繊維は作成できないことを示唆するものとも考えられるところ、色や異物量の面で相対的に品質の低いフレークは短繊維を用途とする業者などに出荷されるとされ(甲50)、また、短20 繊維は湾曲しているのでフィルムとしての使用には不向きである。
被告は、上記の問題は精製処理等で純度を高めることで容易に解決できるかのように主張するが、その根拠とする乙9(特開2009−13094号公報)は、拒絶理由通知において実施可能要件違反、サポート要件違反の指摘を受け、拒絶査定を受けているから信用性がない。エチレングリコ25 ールからPET樹脂などのポリエステルの製造に関しては、極めて高い純度が必要となり、高い純度を得られなければ耐熱性、成型性等において不9都合が生ずること(甲69〜71) 特にバイオマス由来の材料で不純物の、
除去をすることが極めて困難であったこと(甲72、73)、蒸留を何回繰り返してもエチレングリコール等の濃度上昇には限界が存在すること(甲74)から、被告の主張が技術的に誤っていることは明らかである。
5 イ 相違点A−2について本件決定においては、カーボンニュートラルを意識しながらも、第1層のみバイオマス由来の原料を用い(しかも、より普及が進んでいたバイオマスポリエチレンではなく、加工性に問題のあるバイオマスポリエステルを使い) 第2層においては、
、 敢えて化石燃料由来の原料を含む樹脂材料か10 らなり、バイオマス由来の原料を含む樹脂材料を含まない態様とすることについて、その論理付けがなされていない。
ウ 顕著な作用効果について本件明細書の実施例1〜3においては、本件発明の構成を満たす積層体が、既存のポリエステルフィルムからなる層を有する積層体と比較しても15 遜色ない物性を有することが示されている。
引用文献5で評価されているのが、本件発明で問題となる2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムとは加工方法の異なる短繊維化やボトル化の加工性と重合性のみであること、バイオマスポリエステルを用いた場合、不純物の存在により成形加工が困難になり、特に延伸フィルムなどに20 おいて活用できるような性能を充足することは困難であるという本件優先日当時の技術常識に鑑みれば、本件発明における上記の効果は、その構成から当業者が予測することができた範囲を超えるものである。
(3) 本件発明2〜9、14の進歩性の判断に誤りがあること本件発明2〜9、14は本件発明1を直接又は間接に引用することから、
25 本件決定の本件発明1の進歩性の判断に誤りがある以上、本件発明2〜9、
14の進歩性の判断にも誤りがある。
10(4) 本件発明13の進歩性判断の誤りがあることア 本件発明13はラミネートチューブであるところ、引用文献4にはラミネートチューブとして用いることの開示も示唆もなく、また、ガスバリア性の付与を主たる課題とする引用文献4の目的とも相容れない。
5 イ 積層体発明の進歩性の判断については、積層体設計の基本思想が理解されるべきである。
すなわち、@まず用途を決め、A次にかかる用途のために必要な物性を見出し、B最後に、かかる物性を満たすために、層を加えていく、といった思考方法を採るのが通常である。そして、Bの層構成の設計において、強度10 等の物理的性質は主に基材層により、ヒートシール性といった化学的性質はシーラント層により主にもたらされる。
換言すれば、?用途と性質及び層構成は密接不可分であり、?さらに、求める用途、性質が出発点であって「転用」という思考は存在せず(それよりも一から層を作り直す) ?その上、
、 簡単にある層を別の層に「置き換える」15 などという思考方法も一般的ではなく、?これに加え、無目的に層を加える等という思想は、コスト面からも通常の設計思想に反するといえる。
特にラミネートチューブに用いる積層体に関しては、通常のラミネートフィルムとはその求められる物理的性質が大きく異なり、その層構成や層全体の厚さなども大きく異なるため、ラミネートフィルムからラミネート20 チューブへの転用は物理的にも不可能である。ラミネートチューブに用いられる層は通常のラミネートフィルムに用いられるものよりかなり層が厚くなるし、その求められる特性(自立性、強いコシ、柔軟性、丈夫さ、復元性)に応じ、層構成の中心に、「骨材」と呼ばれる頑丈なフィルムを一枚挟むという特有の構成が採用され、この「骨材」には、HDPE(高密度ポリ25 エチレン)などの比較的密度が高く、PETフィルムをラミネート加工する際のPEとは、求められる特性も全く異なる樹脂が用いられる。
11その他、バイオマスにおいては、透明性、成形性、耐熱性、ガスバリア性などに支障を来たすことが想定されるのであるから、ラミネートフィルムをラミネートチューブの用途に転用し、かつそのPETに関して、厚さ5〜12.13μmという薄い(ゆえに、二軸延伸を行った場合の成形性など5 フィルムとしての根本的な性能の劣化がより懸念される)二軸延伸バイオマスPETを用いることは、動機付けが何ら見出せないし、その技術的観点から明確な阻害要因が存在する。
(5) 本件発明17、21、28の進歩性の判断に誤りがあることア 本件決定は、相違点A17−2に関し、引用発明Aの認定根拠の記載か10 ら、ナイロン樹脂からなる樹脂層や無機物または無機酸化物からなる層などを含んでいないことが明らかであるにも拘らず、「引用発明Aは、そのような層を含むか特定されていない」などと恣意的に本件発明17に近づけて認定している点において妥当でない。
イ 主にガスバリア性を志向した引用発明Aにシャンプーやリンスの詰め替15 え用スタンディングフィルム特有の構成である「PET/ Al/ONy/L−LDPE」を採用すること動機づけがなく、さらに、耐衝撃性を高めるには、無機酸化物の蒸着膜に含有されている【0055】記載の物質の含有量を調整するのであって、ナイロン(のみ)からなる層を設けることに関しては、むしろ阻害要因があるといえる。
20 ウ よって、本件発明17、21、28が引用発明Aに対して進歩性を有することは明らかである。
(6) 本件発明20、23、27の進歩性の判断に誤りがあることア 相違点A20−1につき、ポリエチレンテレフタレートフィルムをバイオマス由来のポリエチレンかつ2軸延伸フィルムとすることに阻害要因が25 あることは前記のとおりである。
イ 相違点A20−2について、引用文献4にはポリプロピレンに関する記12載は存在するものの、ポリエチレンと比較してポリプロピレンの融点は高く、そのヒートシール性能が劣ることから、ヒートシール性樹脂という用途で、敢えてエチレン−α−オレフイン共重合体のフィルムに代えてポリプロピレン樹脂フィルムを用いる動機づけは見出せない。
5 【被告の主張】(1) 引用発明Aの認定に誤りがないこと原告の引用に係るいわゆるピリミジン事件特別部判決は、引用発明の特定に関する技術的要素に関して、一般式における膨大な選択肢があった事案で、
本件とは異なる。
10 引用文献4の実施例1〜11には、ガスバリア性積層フィルムの基材が2軸延伸PETであることが記載され(【0174】〜【0222】)、課題解決手段に係る特許請求の範囲の請求項1を引用する請求項4にも、ガスバリア性積層フィルムの「基材」を2軸延伸ポリエステル系樹脂フィルムとすることが記載され、【0022】から始まるガスバリア性積層フィルムを構成す15 る「基材」の説明においても、
【0023】 「ポリエチレンテレフタレート、
にポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂」が例示され、続く【0024】には、特に、ポリエステル系樹脂のフィルムないしシートを使用することが好ましいとされているから、引用文献4には、2軸延伸PETフィルムである基材が記載されているといえる。
20 したがって、本件決定における引用発明Aの認定に誤りはない。
(2) 本件発明1と引用発明Aの相違点についての判断に誤りがないことア 相違点A−1について「石油資源の枯渇を抑制し、地球温暖化の原因物質である大気中の二酸化炭素の増加を抑制すること」は本件優先日当時の一般的な課題であり、
25 本件発明1は、
「バイオマス由来のポリエステルが90質量%以下含まれ」とし、微量のバイオマス由来の原料とするものを含むものでもよい発明で13あるし、本件特許の出願当時、政府主導でバイオマス利用やバイオマスマーク等に関する施策が存在し、本件発明1は、当該施策に沿って、その一部のバイオマス化を図った「積層体」というべき発明であるから、一般的な課題に基づき、引用発明Aのいずれかの樹脂層をバイオマス由来の原料を用5 いるものとすることの動機付けは十分にある。
また、引用文献5には、「バイオマス由来エチレングリコール」として、
「インディアグライコール社(インド)製のエチレングリコール」(【0030】)という本件発明の実施例(本件明細書【0028】)と同一の市販品を原料として用いること、石油由来PETと遜色なくシート及びフィル10 ムや成形物として使用できること(【0011】)、物性や透明性を確保するための留意事項(【0021】)、更に「シート、フィルムの場合も繊維製造に準じて、細長いノズル孔から溶融PETを押し出し、必要に応じて延伸して製品とする。」(【0024】)ことも記載されている。
原告は、バイオマス由来のポリエステルには、透明性、成型性、耐熱性、
15 ガスバリア性で問題があるから、引用発明Aの樹脂層をバイオマス由来の原料を用いるものとすることには阻害事由がある旨主張するが、引用文献4は、ガスバリア性を付与するための「アルミニウム箔」や「無機酸化物」の存在によって透明性が損なわれることを問題としたものであって、透明性を備えていればよく、高い透明性までは要求されないし、耐熱性につい20 ても、食品によっては必要となる性能であって必須ではない。
また、仮にバイオマス由来の成分を用いることによって樹脂組成物の性能等が一定程度損なわれることがあるとしても、当業者は、これを補うために調整等を試みるのが通常であるといえるから(例えば、不純物等を含むバイオマス資源から製造したエチレングリコールを精製処理することで25 純度を高めることにつき乙9)、阻害要因があるとはいえない。
イ 相違点A−2について14前記アのとおり、一般的な課題や周知の技術課題に基づき、引用発明Aのいずれかの樹脂層をバイオマス由来の原料を用いるものとすることの動機付けは十分にある。いずれかの層をバイオマス由来とすることで、製品としてのバイオマス化が達成できるから、引用発明Aの2層の樹脂層のう5 ち、1層のみをバイオマス由来のものとし、他の層を従来からの石油燃料由来のものとすることは、当業者が容易になし得た設計事項である。
ウ 顕著な作用効果について本件発明1は、バイオマスEGについて、不純物を含むので適切ではないとされている(甲49)長春大成集団製のものなどを使用した態様も含10 まれており、「既存の化石燃料由来のポリエステルフィルムからなる層を有する積層体と比較しても遜色ない物性を有するという」効果は、特許請求の範囲の記載に基づくものではない。
本件明細書の実施例でも、引用文献5でも、インディアグライコール社製のバイオマスEGが用いられていることは前記のとおりであり、バイオ15 マスPETに関し、自ずと本件発明1と同じ効果が得られるといえる。
また、本件発明1の効果は、「従来の化石燃料から得られる原料から製造されたポリエステル樹脂の積層体」 「機械的特性等の物性面で遜色ない」とという点(【0020】)であるが、その点は、引用文献5の【0011】の記載から予測可能である。
20 (3) 本件発明2〜9、14の進歩性の判断に誤りがないこと本件決定の本件発明1の進歩性の判断に誤りはなく、本件発明2〜9、14の進歩性の判断にも誤りはない。
(4) 本件発明13の進歩性の判断に誤りがないことア 包装用積層材において、ガスバリア性を有する樹脂フィルムを有するラ25 ミネートチューブは、例えば、乙14、15に示されるように周知技術である。
15イ 原告が【原告の主張】(4)イで主張する積層体における基本的な設計思想のうち??についていえば、積層体の商用開発段階の説明であって、ある積層体が存在した際に、そのフィルムをどの用途に用いるか、すなわち、内容物を何とするかを検討する際には、はるかに自由な発想が許容される。
5 また、当業者の開発の過程が原告主張のとおりだとしても、開発のヒントとして、先行技術文献の記載を参酌することは自然なことであり、用途を転用する発想を抱くことを妨げる理由はない。2軸延伸PETとポリエチレンを積層したラミネートフィルムをシート成形品、ラベル材料、蓋材、ラミネートチューブなどに用いることは、乙10〜15に示されるように周10 知であること、本件明細書においても、内容物や層構成を何ら特定することなく「積層体が、積層フィルム、包装用袋、シート成形品、ラベル材料、
蓋材、ラミネートチューブ、または包装製品である」(【0019】)としていることとも整合している。
原告が主張する積層体における基本的な設計思想のうち、??について15 いえば、開発のヒントとして、先行技術文献の記載を参酌することは自然なことであり、目的に応じて層を置換、追加するなどの設計変更は、当業者の通常の創作能力の発揮である。
本件明細書中では、その層構成や用途を限らず汎用的に用いられる技術として記載されているといえ、用途、その用途のために必要な物性、そのよ20 うな物性を満たすために加えるべき層を開示してはいないし、
【0071】に記載された層構成と、【0073】に記載された用途との対応関係は示されておらず、積層体の用途と層構成(あるいは当該層構成に要求される性質)の関係を示唆する記載もない。
(5) 本件発明17、21、28の進歩性の判断に誤りがないこと25 ア 引用発明Aの包装材用積層材は、ラミネート用接着剤層とヒートシール性樹脂層との間に樹脂フィルムを挟持し得るものであるから 【0161】( 、
16【0162】)、本件決定の相違点A17−2の認定に誤りはない。
イ 原告の主張は、引用発明Aがスタンディングパウチ用のものであることを前提にしているが、引用文献4の【0171】に記載されたスタンディングパウチは、包装用袋の形態の一例として挙げられたものにすぎない。
5 また、引用文献4の上記【0161】、【0162】の記載から、中間層は強度や耐突き刺し性等を向上させるために設けられるものであり、そのための強靱な樹脂フィルムの例としてポリアミド系樹脂すなわちナイロンが挙げられていることから、引用文献4に記載された「耐衝撃性」の課題解決にナイロンが寄与することが理解できる。
10 (6) 本件発明20、23、27の進歩性の判断に誤りがないことア 相違点A20−1につき、ポリエチレンテレフタレートフィルムをバイオマス由来のポリエチレンかつ2軸延伸フィルムとすることに阻害要因がないことは上述のとおりである。
イ 相違点A20−2について、本件決定においては、引用発明Aの「ヒート15 シール性樹脂層」の「ポリオレフィン系の樹脂」として、引用文献4の【0151】に例示された「ポリプロピレン」を採用することを容易想到としたものであって、原告が主張するように「エチレン−α−オレフイン共重合体のフィルム」 「ポリプロピレン樹脂フィルム」や に代えてポリプロピレンを用いることを容易想到としたものではない。
20 2 本件決定取消事由2(引用文献7を主引用例とする進歩性判断の誤り)について【原告の主張】(1) 引用発明Bの認定に誤りがあることア 引用文献7には、PETからなるポリエチレンテレフタレート・フィル25 ムに、PEをラミネートする旨の記載はあるが、積層する旨の記載はない。
被告はラミネートと積層は同義である旨主張するが、引用発明の認定は17引用文献の記載に忠実にされるべきであり、ラミネートと積層が同義であるか否かにかかわらず、引用文献7の記載を離れ本件発明に近づけて認定することは許されない。
イ 本件決定における引用発明Bの構成中「テレフタル酸とエチレングリコ5 ールとの縮重合物であるポリエチレンテレフタレート(PET)からなるポリエチレンテレフタレート・フィルムに、PEを積層した、ラミネートフィルム」の認定は、その具体的な設計思想が開示された「ポリエチレンテレフタレートの耐ガスバリアー性をより一層改良するために、PVDCのコーティングをしたり、PEのラミネートをする方法で耐熱性の向上と、ヒ10 ートシール性の付与を行っている」という記載部分に基づくもの解される。
引用文献7の493〜496頁の表1〜3(なお、以下、「表1」は、特記しない限り493頁〜494頁のものをいう。 に鑑みれば、
) ポリエチレンテレフタレートに関して、延伸配向の表記がない「PET」と延伸配向後の状態である「OPET」とが明確に使い分けられて用いられているから、
15 単に「PET」と記載されている場合には、(二軸)延伸をしないものであると考えるのが合理的と考えられるところ、483頁1〜3行にはポリエチレンテレフタレートが(二軸)延伸フィルムであるとの記載がなく、また、引用文献7の表1にも「PET/PE」としか記載されていないことから、少なくともここでのポリエチレンテレフタレート(PET)は無延伸の20 ものを意味していると考えるのが合理的である。
ウ 以上を前提とすると、引用発明Bは、
「テレフタル酸とエチレングリコールとの縮重合物であって無延伸のポリエチレンテレフタレート(PET)からなるポリエチレンテレフタレート・フィルムに、PEをラミネートした、ラミネートフィルム。」25 と認定されるべきであり、相違点B−1の認定にも誤りがあることになる。
したがって、本件決定の引用発明Bの認定に誤りがあり、その結果、本件18発明1と引用発明Bの一致点・相違点の認定にも誤りがあるから、引用発明Bの認定の誤りは、本件決定の結論に影響を及ぼす。
(2) 本件発明1と引用発明Bの相違点についての判断に誤りがあること本件決定の認定する引用発明Bを前提としても、相違点についての判断に5 誤りがある。
ア 相違点B−1について引用文献7は、食品用途に適した積層構造を示すのみであり、カーボンニュートラルなど全く意識されていないので、引用発明7に引用文献5記載事項を適用する動機付けはない。
10 また、引用発明Bのような食品用途においては、透明性は特に重要な課題であるが、バイオマス原料には透明性、成型性、耐熱性、ガスバリア性等に問題があったこと、引用文献5の【0011】、【0024】は容易想到性を認める根拠とならないことは前記1【原告の主張】(2)アのとおりである。
15 以上のことから、相違点B−1を当業者が容易に想到し得たとはいえない。
イ 相違点B−2について前記1【原告の主張】(2)イで相違点A−2について主張したところと同旨である。
20 ウ 顕著な作用効果について前記1【原告の主張】(2)ウと同旨である。
(3) 本件発明2〜9、14の進歩性の判断に誤りがあること本件発明2〜9、14は本件発明1を直接又は間接に引用することから、
本件決定の本件発明1の進歩性の判断に誤りがある以上、本件発明2〜9、
25 14の進歩性の判断にも誤りがある。
(4) 本件発明10〜13の進歩性の判断に誤りがあること19本件発明10は「シート成形品」、本件発明11は「ラベル材料」、本件発明12は「蓋材」であり、いずれも特有の物性が求められる特殊な用途に用いることを決めてから層構成を設計しなければならないのであるから、積層体をかかる用途に「転用」することなどは極めて想到困難である。
5 本件発明13はラミネートチューブであるところ、ラミネートフィルムをラミネートチューブへと転用することは当業者の通常の発想ではないこと、
そのような転用は物理的にも不可能であることは前記1【原告の主張】(4)イのとおりであることに加え、そのような転用は引用文献7から何らの示唆も見出せず、むしろ、表1では、用途として「歯みがきチューブ」に適した層構10 成として挙げられているのは、「PE/紙/PE/Al/PE」の層構成のみであり、その設計思想が、引用発明Bの積層構造「PET/PE」と全く異なることからすれば、引用発明Bの層構成は、ラミネートチューブの用途に適していないという反対教示が存在するといえる。
(5) 本件発明15の進歩性の判断に誤りがあること15 本件発明15は、訂正前請求項1及び4を独立項とした上で、「積層体」について「但し、該積層体上に無機酸化物の蒸着膜が設けられ、その蒸着膜上にガスバリア性塗布膜が設けられてなるものを除く」という構成を加えている。
したがって、本件決定の本件発明1の進歩性の判断に誤りがある以上、本件発明15の進歩性の判断にも誤りがある。
20 (6) 本件発明16の進歩性の判断に誤りがあること本件決定は、相違点B16−4に関し、引用発明Bの「ラミネートフィルム」を、「医薬品、食品及びシャンプーの包装用途」以外に用いることは適宜なし得たとしている。
引用文献7の483頁1〜3行の記載は、その文脈から食品用途に関する25 ものであるし、また、PET/PEが記載された引用文献7の表1は、「ラミネートフィルムの主な用途と構成例」と題する表であり、積層体の用途と層20構成に対応関係があることが明確に記載されており、「PET/PE」の欄を見ても、食品の包装を中心とした様々な用途が記載されているが、同じ食品包装用途内においてすら、食品によって用途の適否がある。
また、引用文献7にはラミネートフィルムの層構成が用途(内容物の種類)5 によって要求される諸機能に応じる形で設計されるとされており、積層体の技術分野において、既存の層構成を他の用途に「転用」することは想定されていないことは前記1【原告の主張】(4)イのとおりである。
加えて、相違点B−1に関して主張したとおり、バイオマスPETを採用した場合には、透明性、成形性、耐熱性、ガスバリア性などに支障を来たすこ10 とが想定されるから、引用発明Bのフィルムについて、医薬品、食品及びシャンプーの包装用途以外の用途であって、かつそのようなフィルムとしての根本的な性能が劣化しても用い得る用途を探査するのは、その動機付けが見出せないばかりか、仮にそのような思想に至ったとしても、当業者といえども過度な試行錯誤を要する。
15 なお、被告は、PETにPEを積層したラミネートフィルムが、医薬品、食品、シャンプー以外に使用され得るものであるとして乙10〜17を提出するが、「PETとPEを積層したラミネートフィルム」のように、引用文献7の記載から抽出可能とはいえない発明を認定し 、かつ、引用文献7に具体的に開示された技術内容を不当に抽象化していることと相俟って、実質的な主20 引用文献の差し替えに該当するか、少なくとも、本件決定における進歩性欠如の論理の差し替えに該当する。メリヤス事件大法廷判決(最高裁大法廷昭和51年3月10日判決・民集30巻2号79頁)の趣旨に鑑み、これらの書証は本件の審理対象とすべきではない。
(7) 本件発明17、18、21、28の進歩性の判断に誤りがあること25 本件決定認定の相違点B17−2、相違点B17−3は、引用文献7から、
ナイロン樹脂からなる樹脂層や無機物または無機酸化物からなる層などを含21んでいないことが明らかであるにもかかわらず、「引用発明Bは、そのような層を含むか特定されていない」と恣意的に本件発明17に近づけて認定している。
引用文献8や引用文献9には、「PET/Al/ONy」の層構成の記載で5 はなく、「PET/Al/ONy/L−LDPE」の層構成が記載されているにすぎない。この点、積層体は特定の目的のために全体として技術的意味のある層構成が設計されるのであるから、それらの技術的課題の相違などを全て抽象化し「PET/Al/ONy」が周知技術周知技術3)であるなどと認定することはできない。さらに、「PET/Al/ONy/L−LDPE」10 という層構成は、シャンプーやリンスなどの詰め替え用スタンディングパウチに特有の構成であり、食品包装に関する引用発明Bにおいて、このような特異な構成を採用する動機付けがない。なお、被告が「PET/Al/ONy/L−LDPE」という層構成が本件出願前から食品包装の分野でも利用されていたとして提出する乙18は、異議手続において全く審理、判断されて15 おらず、乙10〜17同様、本件で判断の対象とされるべきではない。
本件発明18、21、28に関しても、「ナイロン樹脂からなる樹脂層」を用いることに関し、概ね同様の議論が当てはまる。
(8) 本件発明19の進歩性の判断に誤りがあること引用文献7には、本件発明19に記載の積層構造は開示されておらず、引20 用発明Bの層構成を本件発明19のように改変しなければならない具体的な設計思想も示されていない。
本件決定は、相違点B19−3(ナイロン樹脂からなる樹脂層)、相違点B19−4(アルミニウム箔からなる第3の層)につき容易想到とするが、闇雲に層を加えていくというのが、当業者の合理的な設計思想とはいえない。そ25 の上、本件決定では、引用発明Bの用途や目的との関係で、これらの層を敢えて加えなければならない理由や具体的な設計思想について何ら検討されてい22ない。
相違点19−5(層構造)の判断について、本件決定は、引用文献7の表1における「PET/ONylon/Al/CPP」という構成を根拠とするが、当該構成例はレトルト食品にのみ好適に用いられる。引用発明Bの積層5 フィルムは、レトルト用途に用いることは想定されておらず、このような用途が全く重複しない層構成を引用発明Bに適用する動機付けは見いだせない。
本件決定のように「PET/ONylon/Al/CPP」の構成から「PET/ONylon/Al」の構成のみを取り出すことは、ヒートシール性を失わせることに他ならず、その用途に照らしても明確な阻害要因がある。
10 加えて、仮に引用発明Bにおいて「PET/ONylon/Al」を採用した場合には、「PET/ONylon/Al/PE」の層構成になり、またレトルト用途に用いられると考えられるが、PEはCPPと比較して明らかにレトルト性に劣っており、「PET/ONylon/Al/CPP」の場合と比較して十分な耐レトルト性能(耐熱性能)を発揮できないことが容易に予測15 され、この点においても阻害要因が存在する。
被告がレトルト食品の包装用途においても、「PET/ONy/Al/CPP」の層構成、「PET/ONy/Al/LLDPE」の層構成は並列し得るとして提出する乙19は、異議手続において全く審理、判断されておらず、
乙10〜18同様、本件で判断の対象とされるべきではない。なお、引用発明20 Bはそもそも、「ポリエチレンテレフタレートの耐ガスバリアー性をより一層改良するために、・・・PEのラミネートをする」という設計思想に基づくものであって、引用文献7の表1に記載の「PET/ONy/Al/CPP」とも、乙19の「PET/ONy/Al/LLDPE」とも、設計思想は全く相容れないものである。単に「PET」と「(抽象的な意味での)PE」を用25 いているという共通点があるのみで、引用文献Bに基づいて「PET/ONy/Al/LLDPE」に容易想到というのは、本件発明19の構成ありき23の後知恵である。
(9) 本件発明20、23、27の進歩性の判断に誤りがあること本件発明20、23、27に共通する「第2の層」について「ポリプロピレン樹脂からなる樹脂層である」という構成を加えている。
5 本件決定における相違点B20−2(バイオマスEG)の認定は、引用発明BにおけるPEは「耐熱性の向上と、ヒートシール性の付与」のための層であり、ポリプロピレン樹脂からなる樹脂層などを含んでいないにもかかわらず、
「引用発明Bは、そのような層を含むか特定されていない」などと恣意的に本件発明20に近づけて認定をしている点において不当である。
10 引用発明Bの「PE」(ヒートシール性の付与のための層であり、最も内側〔内容物側〕になければならない。)と、引用文献7の表1の「PET/PE/CPP」 「PE」の (接着剤層。基材層とシーラント層の間に設けられる。)は、事実上全く性質の異なる層を表すものといえ、「PET/PE」の積層体のPE側にCPPの層を付加して「PET/PE/CPP」とすることはあ15 り得ない。
(10) 本件発明22の進歩性の判断に誤りがあること相違点B22−3の認定に関し、引用文献7における引用発明Bの認定根拠の記載から、ポリプロピレン樹脂からなる樹脂層などを含んでいないことが明らかであるにもかかわらず、「引用発明Bは、そのような層を含むか特定20 されていない」などと恣意的に本件発明22に近づけて認定している点において妥当でない。
その他、前記(9)のとおりである。
(11) 本件発明24の進歩性の判断に誤りがあること相違点B24−5について、引用発明Bがラミネートチューブに関するも25 のでないことが明らかであるにもかかわらず「引用発明Bはそのような特定がなされていない点」などと恣意的に本件発明24に近づけて認定している24点において妥当でない。ラミネートフィルムをラミネートチューブへと転用することは当業者の通常の発想ではないこと、そのような転用は物理的にも不可能であり、引用文献7にはむしろ反対教示があること、このような転用をした上、そのPETに関して、厚さ5〜12.13μmという薄い二軸延伸5 バイオマスPETを用いることは、動機付けが何ら見出せないし、阻害要因が存在することは前記1【原告の主張】(4)イ、前記(4)のとおりである。
(12) 本件発明25の進歩性の判断に誤りがあること本件決定において、本件発明25の「医薬品、食品及びシャンプーの包装用途のものを除く」という構成の容易想到性の判断に誤りがあることは、前記10 (6)のとおりである。
(13) 本件発明26の進歩性の判断に誤りがあること本件決定において、本件発明26の「前記2軸延伸樹脂フィルムが5〜12.13μmの厚みを有し、 という構成の容易想到性の判断に誤りがあるこ」とについては、前記(11)で本件発明24について主張したとおりである。
15 (14) 本件発明27の進歩性の判断に誤りがあること「第2の層」について「ポリプロピレン樹脂からなる樹脂層である」という構成を加えている点の容易想到性の判断に誤りがあることについては、前記(9)で本件発明20について主張したことが概ね同様に当てはまる。また、
「前記2軸延伸樹脂フィルムが5〜12.13μmの厚みを有し、 という構成の」20 容易想到性の判断に誤りがあることについては、前記(11)で本件発明24について主張したことが概ね当てはまる。
【被告の主張】(1) 引用発明Bの認定に誤りがないこと原告は、本件決定において、 「ポリエチレンテレフタレート フィルムに、
@ ・25 PEを積層した」と認定した点(「PEをラミネートした」と認定していない点)、Aポリエチレンテレフタレートを無延伸のものと認定していない点を25問題とする。
しかし、引用文献7ではラミネートフィルムは「層」を重ねたものとして記載されていること、また、「ラミネートフィルム」は「積層フィルム」と同義語である(乙8)ことから@は理由がなく、本件決定では引用発明Bにおける5 PETフィルムを延伸されたものとして認定していないし、一方、引用文献7ではPETフィルムを無延伸とすることについては記載も示唆もないから、
Aについても理由がない。
(2) 本件発明1と引用発明Bの相違点についての判断に誤りがないことア 相違点B−1について10 一般的な課題に基づき、引用発明Bのいずれかの樹脂層をバイオマス由来の原料を用いるものとすることの動機付けは十分にあること、引用文献5に本件発明の実施例と同一の市販品を原料として用いること、石油由来PETと遜色なくシート及びフィルムや成形物として使用できること、物性や透明性を確保するための留意事項、更に「シート、フィルムの場合も繊15 維製造に準じて、細長いノズル孔から溶融PETを押し出し、必要に応じて延伸して製品とする。」(【0024】)ことも記載されていること、仮にバイオマス由来の成分を用いることによって原告の主張するように透明性、成型性、耐熱性、ガスバリア性等が一定程度損なわれることがあるとしても、当業者は、これを補うために調整等を試みるのが通常であるといえ20 ることは前記1【被告の主張】(2)アのとおりである。
したがって、当業者にとって、相違点B−1に係る本件発明1の構成とすることは容易に想到し得たものであり、また、阻害要因もない。
イ 相違点B−2についていずれかの層をバイオマス由来とすることで、製品としてのバイオマス25 化が達成できることを踏まえると、引用発明Bの2層の樹脂層のうち、一層のみをバイオマス由来のものとし、他の層を従来からの石油燃料由来の26ものとすることは、当業者が容易になし得た設計事項である。
ウ 顕著な作用効果について前記1【被告の主張】(2)ウと同旨である。
(3) 本件発明2〜9、14の進歩性の判断に誤りがないこと5 本件決定の本件発明1の進歩性の判断に誤りはなく、本件発明2〜9、14の進歩性の判断にも誤りはない。
(4) 本件発明10〜13の進歩性の判断に誤りがないこと用途を転用する発想を抱くことを妨げる理由はないことは前記1【被告の主張】(4)イのとおりである。
10 (5) 本件発明15の進歩性の判断に誤りがないこと本件決定の本件発明1の進歩性の判断に誤りはなく、本件発明15の進歩性の判断にも誤りはない。
(6) 本件発明16、25の進歩性の判断に誤りがないこと用途を転用する発想を抱くことを妨げる理由はなく、また、目的に応じて15 層を置換、追加するなどの設計変更は、当業者の通常の創作能力の発揮であることは前記1【被告の主張】(4)イのとおりである。
また、引用文献7の表1に挙げられた「用途」はあくまでも「主な」ものであるし、また例えば、PETにPEを積層したラミネートフィルムが、医薬品、食品、シャンプー以外に使用され得るものであること(乙10、14〜120 7)からすると、引用発明Bの「ラミネートフィルム」を、「医薬品、食品及びシャンプーの包装用途」以外に用いることは適宜なし得たものである。
(7) 本件発明17、18、21、28の進歩性の判断に誤りがないこと引用文献8、9には、「PET/Al/ONy/L−LDPE」という層構成が記載されており、この層構成は当業者に周知のものであるから、その25 うちの「PET/Al/ONy」という層構成も当業者に周知のものといえる。また、用途を転用する発想を抱くことを妨げる理由はなく、また、目的27に応じて層を置換、追加するなどの設計変更は、当業者の通常の創作能力の発揮であるから、「PET/Al/ONy/L−LDPE」という層構成に接した当業者は、自由な発想でその層構成に着目し、転用、設計変更等をすることができる。また、本件発明17の構成、すなわち「少なくとも3層を5 有し、第1の層、第3の層、及び第2の層をこの順に含んでなる積層体」に合わせて、周知技術3を3層で認定した点にも何ら問題はない。
「PET/Al/ONy/L−LDPE」という層構成は、乙18に示されるように本件出願前から食品包装の分野でも利用されており、シャンプーやリンスなどの詰め替え用スタンディングパウチに特有の構成ではない。
10 (8) 本件発明19の進歩性の判断に誤りがないこと引用文献7には、ラミネートフィルムのシーラント層に適用するフィルムとして、LLDPEやポリプロピレンが挙げられている。
さらに、乙19に示されるように、レトルト食品の包装用途においても、
「PET/ONy/Al/CPP」の層構成、「PET/ONy/Al/L15 LDPE」の層構成は並列し得るものとして知られており、CPP(ポリプロピレン)のみならず、LLDPE(ポリエチレン)もレトルト食品の包装用途に用いられているのである。
そうすると、引用発明Bにおいて、ポリエステルフィルム、2軸延伸ナイロンフィルム、アルミニウム箔の順に積層するという周知の積層構造のよう20 にして、相違点B19−5に係る本件発明19の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものである。
(9) 本件発明20、23、27の進歩性の判断に誤りがないこと目的に応じて層を置換、追加するなどの設計変更は、当業者の通常の創作能力の発揮であり、引用発明Bのラミネートフィルムに、化石燃料由来の原25 料を含みバイオマス由来の原料を含まないCPP(無延伸ポリプロピレン)の層を加えることは、当業者が容易に想到できたことである。その際に、目28的とする積層体に適するように、積層体を構成する各層の物性を調整することは、当業者が当然行うことであり、引用発明Bの「PE」と、引用文献7の表1の「PET/PE/CPP」の「PE」の性質が異なることは阻害要因とはなり得ない。
5 (10) 本件発明22の進歩性の判断に誤りがないこと前記(9)のとおりである。
(11) 本件発明24、26の進歩性の判断に誤りがないこと前記1【被告の主張】(4)イ、前記(4)のとおりである。
3 本件決定取消事由3(手続違背)について10 【原告の主張】(1) 第1次決定予告についてア 特許庁は、特許異議申立てに係る手続の詳細について、同庁のウェブページにおいて、「特許異議の申立てのフロー図(詳細版)」を示して公表しており、特許異議申立てにおいては、通常、最初の取消理由通知と決定の予15 告で最低でも2回の意見書、訂正請求書を提出する機会が与えられる実務が確立している。そして、上記フローチャートによれば、決定の予告がなされるのは、最初の取消理由通知において指摘された取消理由が解消されない場合のみであって、最初に通知された取消理由とは全く異なる理由で決定の予告がなされることは想定されていない。また、行政手続法12条120 項及び2項から、一度付与された特許権を取り消すような不利益な処分をする場合には、特段の事情がない限り、自ら公表した手続に反して特許権者に不利な手続を行い得ない。
第1次決定予告は、最初の取消理由の通知と主引用例自体が全く異なる新たな取消理由を指摘するものであるから、上記フローチャートにおける25 通知した取消理由により特許を取り消せると判断できない場合に該当する。
なお、審判便覧においても、早期に最終的な判断を示すことが求められ29る異議申立の趣旨に鑑み、職権による証拠の収集が許されるのは、取消理由として採用された主引用例に加えて技術常識を裏付ける公知文献を参酌する必要がある場合に加えて、審判官が極めて容易に入手することができる証拠に限られ、また、申立書で述べていない新たな取消理由の主張が厳5 しく制限されていることや、異議申立ての期間が公報発行から6か月に制限されていること等の観点から、刊行物等提出により提供され、現に審判体の手元にある証拠ですら、原則証拠として採用すべきでないとされている。1回目の取消理由通知に対して原告が意見書を提出後、引用文献4を主引用例とする進歩性欠如を理由とする2回目の取消理由通知まで約5か10 月もの時間を要しており、引用文献4が「審判官が極めて容易に入手することができる証拠」に当たらないことは明らかである。
仮に新たに取消理由を通知される場合であっても、決定の予告ではない最初の取消理由通知がなされるべきである。
以上からみて、新たな取消理由のみに基づき決定の予告を行った点は審15 判官としての裁量を著しく逸脱した手続であり、決定の結論に影響する。
イ 新たな取消理由のみに基づいて決定の予告を行うことが許されるとしても、その特殊事情に鑑み、新たな決定の予告を行うことにより、意見書、訂正請求書提出の機会を担保する必要があった。本件ではこのような手続もとられていない。
20 (2) 第2次決定予告について第2次決定予告は、前訴判決後に、令和2年1月24日の異議申立期間後3年以上経過した後に、更に全く新たな取消理由として引用文献7に基づく進歩性欠如を指摘してされたものである。
この手続においても、通常2回の意見書、訂正請求書提出の貴重な防御の25 機会のうち1回分が不当に?奪された上に、本件特許を全て取り消すという、
被申立人にとって最も不利益な処分が下されている。この点、少なくとも、引30用文献4に基づく取消理由が指摘されていない請求項に関しては、引用文献7が新たに引用されなければ特許が維持されていたことになるのであるから、
これが新たに引用されたことによる影響は甚大である。
これが認められるなら、異議申立期間経過後も、審判官の裁量により、特許5 権者は延々と新たな取消理由に対して対応しなければならないことになる。
そのような事態は、発明を保護と利用のバランスを図ることにより産業の発展に寄与せんとする特許法の法目的(1条)の趣旨に著しく反する上、「特許の早期安定化を図る」という異議申立の趣旨に著しく反し、第2次決定予告は審判官としての裁量を著しく逸脱した手続であり、決定の結論に影響する。
10 【被告の主張】(1) 第1次決定予告について本件における訴訟物は本件決定の違法性一般であって、第1次取消決定の違法性は本件訴訟の訴訟物ではないから、原告の主張は前提を欠く。
(2) 第2次決定予告について15 ア 特許法120条の5において、同じ取消理由を「取消理由通知」と、それに続く「決定の予告である取消理由通知」と2回通知しなければならないことは規定されていない。
行政手続法12条は、特許法195条の3により、特許法に基づく処分には適用されない。
20 特許庁の審判便覧により、特許異議申立てにおいては、2回目の取消理由通知が、原則、「決定の予告」となることは周知されている。
イ 本件決定に先立ち、第1次決定予告、第2次決定予告という形で引用文献4に基づく取消理由を複数回通知しているから、引用文献4に基づく取消理由に対して1回しか意見書、訂正請求書による防御の機会が与えられ25 ないことにはならない。
ウ 第2次決定予告において新たに引用文献7を引用したことは、原告の訂31正請求によって増項された新たな請求項に対して特に通知が必要となったことによるものである。また、引用文献7は、「食品包装便覧」という図書の性質上、当該技術分野における当業者にとって周知性が極めて高く、さらに、前訴において、乙6として、2軸延伸PETフィルム層及び樹脂層は5 従来からありふれた積層体であることを示す例として現に挙げていたものである。
エ 特許異議事件における職権探知は、その事件が公益に及ぼす影響、職権探知をすることによる審理遅延の可能性、職権探知の結果としての真実発見の可能性等を総合的に考慮し、事案に応じて合議体が決定すべきもので10 ある。本件発明は、用途・分野について何ら特定せず、「第1の層」及び「第2の層」を有する全ての積層体とするいわゆるオープンクレームに該当し、
「第1の層」及び「第2の層」の「少なくとも2層を有する積層体」において、特にバイオマスEGを含むPETを一部に含むというだけの、極めて広範囲な発明であり、第三者に多大な影響を及ぼす蓋然性が高い特許であ15 る。そうすると、公益のバランスを図るという視点から、より慎重に判断すべきものとして、職権探知を尽くすことは権利付与を司る特許庁の責務といえ、第2次決定予告について裁量権の濫用はない。
第4 当裁判所の判断1 本件決定取消事由2(引用文献7を主引用例とする進歩性判断の誤り)につ20 いて最初に、全請求項を対象とする取消理由2に係る判断の誤りを言う本件決定取消事由2から判断する(これが認められない場合、本件決定取消事由1は判断を要しないこととなる。)。
(1) 引用発明Bの認定について25 引用文献7には別紙5の記載があり、本件決定が認定するとおりの引用発明Bを認めることができる。
32原告は、本件決定が引用発明Bについて「ポリエチレンテレフタレート・フィルムに、PEを積層した」とものと認定した点(「PEをラミネートした」と認定していない点)を誤りである旨主張するが、引用文献7では、ラミネートフィルムの構成を最外層、中間層、最内層としており、これが積層体を構成5 することは明らかである。また、一般的な文献である乙8(実用包装用語事典、昭和57年6月15日発行)では、ラミネートフィルムの同義語として「積層フィルム」を挙げている。原告は、引用発明の認定は引用文献の記載に忠実にされるべきであり、ラミネートと積層が同義であるか否かにかかわるものではない旨主張するが、引用文献の記載内容を理解するのに一般的な文10 献を参酌できない理由はなく、採用できない。
また、原告は、本件決定が引用発明Bにおけるポリエチレンテレフタレートを無延伸のものと認定していない点を問題とするが、本件決定が引用文献7で参照した箇所(480〜487頁、490〜505頁、517〜525頁)の記載は、その内容からみても、無延伸PETのみを前提としているとも15 認められないから、本件決定の認定が誤りであるとはいえない。
(2) 本件発明1の進歩性についてア 相違点B−1について(ア) 引用文献5には別紙6の記載があり、それによれば、本件決定が認定するとおりの引用文献5記載事項を認めることができる。
20 引用文献5には、従来のPETは、限りある資源である石油を原材料としたものである上、焼却廃棄された場合、二酸化炭素が空気中に放出されるため、地球温暖化の一因となること(【0003】)が記載されているところ、石油資源の枯渇を抑制し、また、地球温暖化の原因物質である大気中の二酸化炭素の増加を抑制することは、原出願の時点において、
25 文献を示すまでもなく一般的な課題であったものと認められ、また、そのために生物由来のバイオマス原料の活用も推進されていた(甲36、
33乙4〜6)。
そして、引用文献5では、【0011】で「ポリマー物性としては従来の化石資源由来のPETに比べ何ら遜色を有するものではないため、繊維、不織布、シート、フィルムや成型物などの用途に使用することができ」5 ること、【0024】で「シート、フィルムの場合も繊維製造に準じて、
細長いノズル孔から溶融PETを押し出し、必要に応じて延伸して製品とする」ことが記載されており、当業者は、実施例に用いられている市販のバイオマスEG(【0030】)を用い「繊維製造に準じて」「必要に応じて延伸して」支障なく薄いフィルムにできることを把握するものと10 いうことができる。
そうすると、当業者は、上記一般的な課題を解決するため、引用発明Bに引用文献5記載事項を適用する動機付けがあるものというべきである。
(イ) 原告は、引用発明Bのような食品用途においては、透明性は特に重要な課題であるが、バイオマス原料には透明性、成型性、耐熱性、ガスバリ15 ア性等に問題があったから、引用発明Bにバイオマス由来のPETを適用するには阻害要因がある旨主張する。
しかし、これらは、原出願時に、当業者が適宜対応しうる範囲のものであった。すなわち、原出願日前の文献である乙9には、バイオマス原料の含む不純物に由来する問題について、【0001】、【0004】、【020 007】、【0008】及び【0021】〜【0026】に、バイオマスから生成されるグリコール類について、2段以上の精製処理をすることで純度が99%以上になることが記載されている。甲17には、バイオマス由来のポリエステルを延伸成形する際にポリエステル中の不純物量を低減させて末端カルボキシル基量を所定値以下とすることで成形加工25 性の問題を解決できること(【0010】)及びその具体的数値(【0083】〜【0084】、【0086】)が記載されている。甲18には、
34バイオ材料由来のエチレングリコール中の黄色物質がポリエステル中に移動してポリエステルの色調を黄色にする(【0006】)との問題に対し、当該グリコールを加熱し、続いて活性炭を利用した濾過工程により、
光透過性に優れたバイオ材料由来のグリコールを得る製造方法(【005 10】 を採用することで、
) 石油から得られるグリコールを使って生産されるポリエステルチップと同等レベルの色調のポリエステルチップが得られること(【0026】、実施例10、12、13)が記載されている(熱性能、紡糸評価、染色性も同等レベル。)。甲28には、基材中の異物を低減するために、基材フィルムの成形の際に、素材である熱可塑性10 樹脂を溶融状態で精密濾過することにより 【0042】【0085】 、
( 、 )透明性に優れた二軸延伸積層フィルムが得られること 【0108】【0( 、
114】)が記載されている。
原告は、乙9は、拒絶理由通知において実施可能要件違反、サポート要件違反の指摘を受け、拒絶査定を受けている旨主張するが、上記判断を15 左右するものではない。
(ウ) また、原告は、トウモロコシ由来のPETの融点が石化由来のPETより低く加工しにくいこと、不純物が存在すること、着色しやすいことが知られていたので、引用文献5の上記【0011】の記載は誤りであり、
【0031】では品質が低く湾曲してフィルムとしての使用には不向き20 な短繊維を得たことが記載されているにすぎない旨主張する。
しかし、不純物の存在等については適宜対処が可能であることは前記(イ)のとおりである。また、引用文献5の【0031】では、得られた未延伸糸条(長繊維)を延伸等処理したものを切断して短繊維を得ていることに照らし、延伸処理は可能というべきで、バイオマスPETを用い25 て肉厚300μmで良好な透明性をもつボトルが得られ、従来の石油由来のPETに比べて重合性や樹脂加工性の点で遜色なく良好であること35が記載されている(【0033】、【0035】、【0036】)。
原告の主張する各種の問題点は、量産の段階で考慮するべき事情とはなり得ても、引用発明Bに引用文献5記載事項を適用しようと試みること自体を妨げる事情とはいえない。
5 以上のとおりであって、透明性、成型性、耐熱性、ガスバリア性等の問題を理由に、引用発明Bにバイオマス由来のPETを適用するには阻害事由があるとの原告の主張は採用できない。本件発明2以下の進歩性の判断の誤りに関する同様の主張も採用できない。
イ 相違点B−2について10 原告は、本件決定にカーボンニュートラルを意識しながら、第1層のみバイオマス由来の原料を用い、第2層において化石燃料由来の原料を含み、
バイオマス由来の原料を含む樹脂材料を含まない態様とすることについての論理付けがない旨主張する。
しかし、いずれかの層にバイオマス由来の原料を用いればカーボンニュ15 ートラルに資するところ、具体的に引用発明Bのどの層にバイオマス原料を用いた樹脂材料を適用するかは、当業者が適宜選択し得たことである。
また、原告は、バイオマス由来の原料として、より普及が進んでいたバイオマスポリエチレンではなく、加工性に問題のあるバイオマスポリエステルを使用することについても問題があるとするが、バイオマスポリエステ20 ルを使用することが可能であることが引用文献5から理解できることは前記アのとおりである。
ウ 顕著な作用効果について原告は、バイオマスポリエステルを用いた場合、そこに不可避的に含まれる不純物の存在により延伸フィルムなどにおいて活用できるような性能25 を充足することは困難であるという当時の技術常識に鑑みれば、本件発明の構成を満たす積層体が、既存のポリエステルフィルムからなる層を有す36る積層体と比較しても遜色ない物性を有するという本件発明の効果は、その構成から当業者が予測することができる範囲を超える旨主張する。
しかし、引用文献5には、バイオマス由来のPETが、ポリマー物性や重合性、樹脂加工性の面で従来の化石資源由来のPETに比べ遜色を有する5 ものではないことが記載されていたこと、バイオマスの不純物を除去し、
加工性や透明性を確保する技術も知られていたこと(甲17、18、乙9)は前記のとおりであり、本件発明の効果が当業者の予測の範囲を超えるものと認めることはできない。
エ まとめ10 以上によれば、本件決定の本件発明1の進歩性の判断には誤りはない。
(3) 本件発明2〜9、14、15の進歩性について(1)のとおり本件決定における本件発明1の進歩性の判断に誤りはなく、本件発明1を直接又は間接的に引用する本件発明2〜9、14、訂正前請求項1及び4を独立項とした上で、「積層体」について「但し、該積層体上に無機15 酸化物の蒸着膜が設けられ、その蒸着膜上にガスバリア性塗布膜が設けられてなるものを除く」という構成を加えた本件発明15の進歩性についての本件決定の判断にも誤りはない。
(4) 本件発明10〜13の進歩性についてア 原告は、用途を決め、当該用途のために必要な物性を見出し、当該物性を20 満たすために、層を加えていくという積層体の設計思想に鑑みると、積層を、いずれも特有の物性が求められる「シート成形品」(本件発明10)、
「ラベル材料」(本件発明11)、「蓋材」(本件発明12)といった用途に「転用」することは極めて想到困難である旨主張する。
しかし、本件発明1は、第1の層と第2の層を含む積層体において、特に25 第1の層にバイオマス由来のPETを適用することにより、化石燃料の使用を大幅に削減し、環境負荷を減らすとの目的を達成するものであり、当37該目的を達成し得る積層体を、オープンクレーム形式により一般的・抽象的に特定したものであり(本件明細書の【0071】に「本発明の積層体の層構成については、第1の層および第2の層をそれぞれ少なくとも1層有するものであれば、特に限定されず、従来の積層フィルムと同様の層構成5 であってもよい。」とあるとおりである。)、本件発明2〜28は、実質的には、オープンクレーム形式で特定された本件発明1に係る積層体について、適用し得る用途、各層に付与し得る特徴や追加し得る層を特定したものである。そして、本件明細書には、用途、その用途のために必要な物性、
そのような物性を満たすために加えるべき層が具体的に開示されていない10 し、【0071】に列挙された層構成と、【0073】に列挙された用途との対応関係も示されておらず、積層体の用途と層構成の関係を示唆する記載もないところからすれば、本件発明2〜28についての進歩性の判断においては、引用発明Bに上記各用途、特徴、追加し得る層を適用することが容易想到であるか否かを、公知の文献や周知技術等に基づいて、一般論の15 範囲で検討すれば足りるというべきである。
そして、乙10〜12によれば、2軸延伸PETとポリエチレンの積層構造を含むラミネートフィルムをシート成形品、ラベル材料、蓋材に用いることは周知の技術であることが認められ、引用発明Bをこれらの用途に適用することは、当業者が適宜なし得たことであると認められるから、本20 件発明10〜12の進歩性を認めることはできない。
イ 原告は、ラミネートフィルムをラミネートチューブへと転用することは当業者の通常の発想ではないこと、そのような転用は物理的にも不可能であり、引用文献7で「歯みがきチューブ」に適した層構成として挙げられている層構成が引用発明Bの層構成と異なることを理由に、本件発明13の25 進歩性が認められる旨主張する。
しかし、乙13〜15によれば、PETとポリエチレンの積層構造を含38むラミネートチューブは周知であるから、引用発明Bの積層体を周知のラミネートチューブの構成に適用することは当業者が適宜なし得たことであり、原告の主張は採用できない。
(5) 本件発明16、25の進歩性について5 原告は、引用文献7は食品包装に関するものである旨主張するが、PETとポリエチレンの積層構造を含むラミネートフィルムを、練り歯磨き、化粧品、糊、絵の具、電子部品包装用カバーテープ、CDの包装用途に用いることは周知である(乙10、14〜16)。そうすると、引用発明Bを「医薬品、
食品、シャンプーの包装用途」以外の用途に適用し、相違点B16−4、相違10 点B25−4に係る構成とすることは、当業者が適宜なし得たことである。
原告は、上記各書証の提出について、本件決定が引用文献7の記載から抽出可能とはいえない発明を認定し、引用文献7に具体的に開示された技術内容を不当に抽象化していることと相俟って、実質的な主引用文献の差し替えに該当するか、少なくとも、進歩性欠如の論理の差し替えに該当する旨主張15 する。しかし、本件決定の引用発明Bの認定に誤りがなく、また、前記(4)アのとおり、本件明細書は、オープンクレーム形式で特定された本件発明の積層体に適用し得る用途、その用途のための必要な物性、そのような物性を満たすために加えるべき層等を具体的に開示していないことに鑑みれば、これとの対比に必要な限度で引用発明Bを特定したことについても誤りはない。
20 そして、上記各書証は、本件決定が「周知である」と認定した事項に関して、
原出願日における技術常識を示すために挙げた文献にとどまるものである。
そうすると、被告による上記各書証の提出は、実質的な主引用文献の差し替えに当たらないことはもちろん、進歩性欠如の論理の差し替えにも該当しない。したがって、上記各書証を本件で採用することについて問題はなく、他の25 発明の進歩性の判断の関係で提出された乙11〜13、17〜19についても同様である。
39(6) 本件発明17、18、21、28の進歩性についてPET/アルミニウム箔/ナイロン/ポリエチレンを含む層構成は周知のものであるから(引用文献8、9)、PETとポリエチレンの積層構造を含む引用発明Bにおいて、当該周知の層構成をふまえ、PETとポリエチレンの5 間にナイロン樹脂層及び無機(酸化)物層を追加し、相違点B17−2及び相違点B28−3並びに相違点B17−3、相違点B18−3及び相違点B21−3に係る構成とすることは、当業者が適宜なし得たことである。
原告は、@引用文献7には、ナイロン樹脂からなる樹脂層や無機物又は無機酸化物からなる層などを含んでいないことが明らかであるのに、本件決定10 認定の相違点B17−2、相違点B17−3は、恣意的に本件発明17に近づけて認定している、A積層体は特定の目的のために全体として技術的意味のある層構成が設計されるのであるところ、引用文献8、9には「PET/Al/ONy」の層構成の記載ではなく、「PET/Al/ONy/L−LDPE」の層構成が記載されているにすぎないから、「PET/Al/ONy」が15 周知技術周知技術3)であると認定することはできない旨主張する。しかし、@に関しては、引用文献Bに「ナイロン樹脂からなる樹脂層や無機物または無機酸化物からなる層」が記載されていない場合に、本件発明と引用発明Bの相違点として、「ナイロン樹脂からなる樹脂層や無機物または無機酸化物からなる層」を含むか特定されていないと認定することに誤りがあるとは20 いえない(したがって、他の発明との関係でも、引用文献Bに記載のされていない事項について、引用発明Bには当該事項を含むか「特定されていない」点を、引用発明Bとこれらの請求項に係る発明との相違点と認定した本件決定の判断にも誤りはないから、以後この点に関する原告の主張について個別に言及はしない。)。Aに関していえば、引用文献8、9には「PET/Al/25 ONy/L−LDPE」という層構成が記載されており、この層構成は当業者に周知のものであるから、そのうちの「PET/Al/ONy」という層構40成も当業者に周知のものした本件決定の判断に誤りはない。全体として技術的意味のある層構成の設計(設計思想)を開示しているわけではないオープンクレームとしての本件発明1の性格からすれば、引用発明Bに追加し得る層を適用することが容易想到であるか否かを、公知の文献や周知技術等に基5 づいて、一般論の範囲で検討すれば足りることは前記(4)アのとおりである。
(7) 本件発明19の進歩性についてPET/ナイロン/アルミニウム箔/ポリプロピレンの層構成や、PET/ナイロン/アルミニウム箔/ポリエチレンの層構成は、乙19に記載されたものであり、PET/ナイロン/アルミニウム箔をこの順に積層した層構10 成は、広く用いられているものといえる。そうすると、当該層構成を引用発明Bに適用することで、相違点B19−5に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
相違点B19−3の容易想到性については相違点B17−2と、相違点B19−4の容易想到性については相違点B17−3と同様である。
15 (8) 本件発明20、22の進歩性についてPET/ポリエチレン/無延伸ポリプロピレンの層構成は、引用文献7の表1にも記載された構成であり、引用発明BのPET/ポリエチレンの層構成に、ポリプロピレン樹脂からなる第2の層を追加し、相違点B20−2、相違点B22−3に係る構成とすることは、当業者が適宜なし得たことである。
20 原告は、引用発明Bの「PE」と、引用文献7の表1の「PET/PE/CPP」の「PE」は、事実上全く性質の異なる層を表す旨主張するが、上記の判断枠組に鑑みれば、上記表1に層構成が開示されていることをもって十分である。
(9) 本件発明23、26の進歩性について25 ラミネートチューブにおける2軸延伸PETフィルムの厚さとして、例えば12μmのもの(乙14、15)が知られていることからみて、5〜12.4113μmという厚み範囲は普通に取り得るものと理解できる。そうすると、
引用発明BのPETフィルムの厚さを5〜12.13μmとし、相違点B23−2、相違点B26−2に係る構成とすることは、当業者が適宜なし得たことである。
5 相違点B23−3の容易想到性については相違点B20−2と同様である。
(10) 本件発明24の進歩性について相違点B24−2の容易想到性については相違点23−2と同様であり、
ラミネートフィルムをラミネートチューブへと転用することの容易想到性については前記(4)イのとおりである。
10 (11) 本件発明27の進歩性について相違点B27−2の容易想到性については相違点B23−2と同様であり、
相違点B27−4の容易想到性については相違点B20−2と同様である。
(12) まとめ以上のとおりであって、本件発明が引用発明Bに基づいて容易に発明でき15 たとする本件決定の判断に誤りはない。
2 本件決定取消事由3(手続違背)について(1) 第1次決定予告について第1次決定予告は第1次取消決定の前提としてされたものであるところ、
第1次取消決定は前訴判決によって取り消されているのであり、第1次決定20 予告に関する手続違背は本件決定の結論に影響を及ぼすものではない。
(2) 第2次決定予告についてア 原告は、第2次決定予告が、前訴判決後に、令和2年1月24日の異議申立期間後3年以上経過した後に、全く新たな取消理由として引用文献7に基づく進歩性欠如を指摘してされたものである旨主張する。
25 しかし、第2次決定予告は、前件判決により差し戻された異議手続において、前件訂正により増項された請求項15〜22を含む同訂正後の発明42に対してされたものであり、当該発明について、新たな取消理由が生じていないかを確認するために職権審理を行うことは、瑕疵のある状態で特許が維持されることを防ぐ意味で権利の早期安定化に資することであり、その結果、新たな取消理由(引用文献7を主引用例とする取消理由2)が加え5 られたとしても、特許法120条の2に規定される審判官の裁量の範囲内である。
イ 原告は、引用文献7を主引用例とする進歩性欠如の取消理由(取消理由2)に対しては、2回の意見書、訂正請求書提出の機会が与えられておらず、これは、特許庁が公表している「特許異議の申立てのフロー図(詳細10 版)」に示されている確立した実務と異なる取扱いであり、意見書、訂正請求書提出の貴重な機会のうち1回分が不当に剥奪された旨主張する。
この主張の法的な意味について、まず特許法120条の5第1項違反をいう趣旨だとすれば、同項は「2回の意見書、訂正請求書提出の機会」を保障するものでないから、失当である。
15 また、原告の主張中には、行政手続法12条1項、2項違反をいう部分もあるが、同条を含む行政手続法第2章の規定は、特許法195条の3により、特許法に基づく処分への適用が除外されているから、やはり失当である。
もっとも、仮に、原告が主張するように、公表された手続に沿った「確立20 した実務」に反する取扱いが行われたとすれば、いわゆる平等原則違反の問題を生ずる可能性は否定できないので、以下、この観点から検討する。
ウ 特許庁の審判便覧67−05.5P「取消理由通知(決定の予告)」(甲37)には、「無効審判においては、特許庁と裁判所の間の『キャッチボール現象』・・・を防止するため、平成23年改正により、『審決の予告』を25 行って訂正の機会を与えると共に、審決取消訴訟係属中の訂正審判の請求を禁止した。特許異議の申立てにおいても、取消決定訴訟係属中の訂正審43判の請求は禁止されている(特§126A)ため、取消理由の通知後に、再び特許を取り消すべき旨の判断となったときは、取消理由通知(決定の予告)を特許権者に送付することで、再度訂正の機会を与えることとする。/こうすることにより、1回目の取消理由通知と、取消理由通知(決定の予5 告)とでそれぞれ1回の訂正の機会が与えられ、審判合議体の判断を踏まえた訂正の機会を二度与えられることが担保されることとなる。」との説明があり、これに沿った「特許異議の申立てのフロー図(詳細版)」(甲22)が特許庁によって公表されている。
しかし、本件の特許異議申立ての手続を通じて、原告に対しては、最初の10 取消理由通知、第1次決定予告、第2次決定予告の3回の取消理由通知がされ、原告は、2回にわたって訂正請求の権利を現実に行使している。本件の取扱いが審判便覧及びフロー図で説明されている取扱いに反するものとはいえない。
この点、個別の取消理由に着目した場合、引用文献4を主引用例とする15 進歩性欠如の取消理由(取消理由1)は、第1次決定予告及び第2次決定予告の2回にわたって取消理由通知がされている一方、引用文献7を主引用例とする進歩性欠如の取消理由(取消理由2)は、第2次決定予告の段階で新たに職権によって取り上げられた取消理由であり、取消理由通知が1回しか行われていていないことは、原告の主張するとおりである。しかし、上20 記審判便覧及びフロー図には、そのような個別の取消理由に着目した説明があるわけではない上、特許法120条の5第1項がそもそも2回の取消理由通知(最初の取消理由通知と決定予告の取消理由通知)を要求するものでないことは前述のとおりであって、このことも踏まえて検討すると、
上記審判便覧の記載及びフロー図の理解として、特許異議申立ての手続の25 過程で新たな取消理由(主引用例)が取り上げられた場合にも、各取消理由ごとに必ず2回の取消理由通知を行うという趣旨まで含むものと解するこ44とはできない。特許異議申立事件の典型的な進行である、異議申立人の提出した引用文献に基づいて最終的な進歩性の判断が行われる場合であれば、
同じ取消理由について、最初の取消理由通知と決定予告の取消理由通知の2回の取消理由通知が行われることになると解され(上記審判便覧及びフ5 ロー図は、そのような場合を想定したものと理解できる。)、その限度で、
実務運用が確立しているとしても、本件のような場合にまで、原告の主張に係る「確立した実務」が存在すると認めるに足りる証拠はない。
この点に関する原告の主張は理由がない。
(3) よって、本件決定取消事由3(手続違背)は採用できない。
10 3 結論以上によれば、原告主張の本件決定取消事由2及び3は理由がないから、本件決定取消事由1について判断するまでもなく、本件特許は取り消されるべきものであり、本件決定にこれを取り消すべき違法は認められない。よって、原告の請求を棄却することとして、主文のとおり判決する。
15 知的財産高等裁判所第4部裁判長裁判官宮 坂 昌 利20 裁判官本 吉 弘 行裁判官岩 井 直 幸2545別紙1 略語一覧(略語) (意味)【本件特許関係】5 ・本件特許:原告を特許権者とする特許第6547817号・本件発明:本件特許の請求項1〜28に係る発明の総称(本件訂正後のもの)請求項の番号に応じ、
「本件発明1」等という。
・本件明細書:本件特許に係る明細書【本件異議申立手続関係】10 ・第1次決定予告:本件特許に係る異議2019−701046号事件で、特許庁が令和3年1月26日付けでした取消理由通知(決定の予告)(甲5)・前件訂正:原告の令和3年3月29日付け訂正請求書及び同年4月23日付け補正書に係る本件特許の特許請求の範囲の訂正(甲6、8)・第1次取消決定:上記異議事件について特許庁が令和4年3月22日にした特許取消決定(甲15 40)・前訴判決:第1次取消決定に対し、原告が提起した取消決定取消請求訴訟(知的財産高等裁判所令和4年(行ケ)第10030号)について、同裁判所が令和5年3月9日にした同決定を取り消す判決(甲41)・第2次決定予告:前訴判決による差戻後の前記異議事件で、特許庁が令和5年5月19日付け20 でした取消理由通知(決定の予告)(甲42)・本件訂正:原告の令和5年7月24日付け訂正請求に係る本件特許の特許請求の範囲の訂正(甲43)・本件決定:上記異議事件について特許庁が令和6年1月23日にした特許取消決定(本件訴訟の対象)25 【引用文献関係】・引用文献4:特開2007−210208号公報(甲12)46・引用発明A:引用文献4に記載された発明として本件決定が認定した内容(別紙4)・引用文献5:特開2009−91694号公報(甲13)・引用文献5記載事項:引用文献5に記載された事項として本件決定が認定した内容(別紙4)・引用文献6:特開2009−67467号公報5 ・引用文献7:社団法人日本包装技術協会「食品包装便覧」第1版、昭和63年3月1日発行(甲38、48、乙1)・引用発明B:引用文献7に記載された発明として本件決定が認定した内容(別紙4)・引用文献8:特開2003−182745号公報(乙2)・引用文献9:特開2000−318752号公報(乙3)10 ・周知技術3:引用文献8及び9から認められる「最外層のポリエチレンテレフタレートの層に続いて、アルミニウム箔、二軸延伸ナイロンフィルムの順に積層すること。」という本件特許の出願日前に周知の技術1547別紙2 本件特許の特許請求の範囲の記載(請求項2以下)【請求項2】前記樹脂組成物が、ジオール単位が化石燃料由来のジオールまたはバイオマス由来のエチレングリコールであり、ジカルボン酸単位が化石燃料由来のジカルボン酸であるポリエステルのリサ5 イクルポリエステルをさらに含んでなる、請求項1に記載の積層体。
【請求項3】前記樹脂組成物が、前記リサイクルポリエステルを、樹脂組成物全体に対して5〜45質量%含んでなる、請求項2に記載の積層体。
【請求項4】10 前記樹脂組成物が添加剤をさらに含んでなる、請求項2または3に記載の積層体。
【請求項5】前記樹脂組成物が、前記添加剤を、樹脂組成物全体に対して5〜50質量%含んでなる、請求項4に記載の積層体。
【請求項6】15 前記添加剤が、可塑剤、紫外線安定化剤、着色防止剤、艶消し剤、消臭剤、難燃剤、耐候剤、
帯電防止剤、糸摩擦低減剤、離型剤、抗酸化剤、イオン交換剤、および着色顔料からなる群から選択される1種または2以上である、請求項4または5に記載の積層体。
【請求項7】無機物または無機酸化物からなる第3の層をさらに有する、請求項2〜6のいずれか一項に記20 載の積層体。
【請求項8】請求項2〜7のいずれか一項に記載の積層体を備える、積層フィルム。
【請求項9】請求項1〜7のいずれか一項に記載の積層体を備える、包装用袋。
25 【請求項10】請求項1〜7のいずれか一項に記載の積層体を備える、シート成形品。
48【請求項11】請求項1〜7のいずれか一項に記載の積層体を備える、ラベル材料。
【請求項12】請求項1〜7のいずれか一項に記載の積層体を備える、蓋材。
5 【請求項13】請求項1〜7のいずれか一項に記載の積層体を備える、ラミネートチューブ。
【請求項14】請求項2〜7のいずれか一項に記載の積層体を備える、包装製品。
【請求項15】10 少なくとも2層を有する積層体であって、
第1の層が、2軸延伸樹脂フィルムからなり、前記2軸延伸樹脂フィルムを構成する樹脂組成物が、ジオール単位とジカルボン酸単位とからなるポリエステルを主成分として含み、添加剤をさらに含んでなり、前記ポリエステルが、前記ジオール単位がバイオマス由来のエチレングリコールであり、前記ジカルボン酸単位が化石燃料由来のテレフタル酸であるバイオマス由来のポリ15 エステルと、前記ジオール単位が化石燃料由来のエチレングリコールであり、前記ジカルボン酸単位が化石燃料由来のテレフタル酸である化石燃料由来のポリエステルとを含んでなり、前記2軸延伸樹脂フィルム中に前記バイオマス由来のポリエステルが90質量%以下含まれ、
第2の層が、化石燃料由来の原料を含む樹脂材料からなり、且つ、バイオマス由来の原料を含む樹脂材料を含まないことを特徴とする、積層体(但し、該積層体上に無機酸化物の蒸着膜が設20 けられ、その蒸着膜上にガスバリア性塗布膜が設けられてなるものを除く)。
【請求項16】少なくとも2層を有する積層体であって、
第1の層が、2軸延伸樹脂フィルムからなり、前記2軸延伸樹脂フィルムを構成する樹脂組成物が、ジオール単位とジカルボン酸単位とからなるポリエステルを主成分として含み、添加剤を25 さらに含んでなり、前記添加剤が、可塑剤、紫外線安定化剤、着色防止剤、艶消し剤、消臭剤、
難燃剤、耐候剤、帯電防止剤、糸摩擦低減剤、離型剤、抗酸化剤、イオン交換剤、および着色顔49料からなる群から選択される1種または2以上であり、前記ポリエステルが、前記ジオール単位がバイオマス由来のエチレングリコールであり、前記ジカルボン酸単位が化石燃料由来のテレフタル酸であるバイオマス由来のポリエステルと、前記ジオール単位が化石燃料由来のエチレングリコールであり、前記ジカルボン酸単位が化石燃料由来のテレフタル酸である化石燃料由来のポ5 リエステルとを含んでなり、前記2軸延伸樹脂フィルム中に前記バイオマス由来のポリエステルが90質量%以下含まれ、
第2の層が、化石燃料由来の原料を含む樹脂材料からなり、且つ、バイオマス由来の原料を含む樹脂材料を含まないことを特徴とする、積層体(但し、該積層体上に無機酸化物の蒸着膜が設けられ、その蒸着膜上にガスバリア性塗布膜が設けられてなるもの、並びに、医薬品、食品及び10 シャンプーの包装用途のものを除く)。
【請求項17】少なくとも3層を有し、第1の層、第3の層、及び第2の層をこの順に含んでなる積層体であって、
前記第1の層が、2軸延伸樹脂フィルムからなり、前記2軸延伸樹脂フィルムを構成する樹脂15 組成物が、ジオール単位とジカルボン酸単位とからなるポリエステルを主成分として含み、前記ポリエステルが、前記ジオール単位がバイオマス由来のエチレングリコールであり、前記ジカルボン酸単位が化石燃料由来のテレフタル酸であるバイオマス由来のポリエステルと、前記ジオール単位が化石燃料由来のエチレングリコールであり、前記ジカルボン酸単位が化石燃料由来のテレフタル酸である化石燃料由来のポリエステルとを含んでなり、前記2軸延伸樹脂フィルム中に20 前記バイオマス由来のポリエステルが90質量%以下含まれ、
前記第2の層が、化石燃料由来の原料を含む樹脂材料からなり、且つ、バイオマス由来の原料を含む樹脂材料を含まない、ナイロン樹脂からなる樹脂層であり、
前記第3の層が、無機物または無機酸化物からなることを特徴とする、積層体。
【請求項18】25 少なくとも3層を有し、第1の層、第3の層、及び第2の層をこの順に含んでなる積層体であって、
50前記第1の層が、2軸延伸樹脂フィルムからなり、前記2軸延伸樹脂フィルムを構成する樹脂組成物が、ジオール単位とジカルボン酸単位とからなるポリエステルを主成分として含み、添加剤をさらに含んでなり、前記ポリエステルが、前記ジオール単位がバイオマス由来のエチレングリコールであり、前記ジカルボン酸単位が化石燃料由来のテレフタル酸であるバイオマス由来の5 ポリエステルと、前記ジオール単位が化石燃料由来のエチレングリコールであり、前記ジカルボン酸単位が化石燃料由来のテレフタル酸である化石燃料由来のポリエステルとを含んでなり、前記2軸延伸樹脂フィルム中に前記バイオマス由来のポリエステルが90質量%以下含まれ、
前記第2の層が、化石燃料由来の原料を含む樹脂材料からなり、且つ、バイオマス由来の原料を含む樹脂材料を含まない、ナイロン樹脂からなる樹脂層であり、
10 前記第3の層が、アルミニウム箔からなることを特徴とする、積層体。
【請求項19】少なくとも3層を有し、第1の層、第2の層、及び第3の層をこの順に含んでなる積層体であって、
前記第1の層が、2軸延伸樹脂フィルムからなり、前記2軸延伸樹脂フィルムを構成する樹脂15 組成物が、ジオール単位とジカルボン酸単位とからなるポリエステルを主成分として含み、添加剤をさらに含んでなり、前記添加剤が、可塑剤、紫外線安定化剤、着色防止剤、艶消し剤、消臭剤、難燃剤、耐候剤、帯電防止剤、糸摩擦低減剤、離型剤、抗酸化剤、イオン交換剤、および着色顔料からなる群から選択される1種または2以上であり、前記ポリエステルが、前記ジオール単位がバイオマス由来のエチレングリコールであり、前記ジカルボン酸単位が化石燃料由来のテ20 レフタル酸であるバイオマス由来のポリエステルと、前記ジオール単位が化石燃料由来のエチレングリコールであり、前記ジカルボン酸単位が化石燃料由来のテレフタル酸である化石燃料由来のポリエステルとを含んでなり、前記2軸延伸樹脂フィルム中に前記バイオマス由来のポリエステルが90質量%以下含まれ、
前記第2の層が、化石燃料由来の原料を含む樹脂材料からなり、且つ、バイオマス由来の原料25 を含む樹脂材料を含まない、ナイロン樹脂からなる樹脂層であり、
前記第3の層が、アルミニウム箔からなることを特徴とする、積層体。
51【請求項20】少なくとも2層を有する積層体を備える積層フィルムであって、
第1の層が、2軸延伸樹脂フィルムからなり、前記2軸延伸樹脂フィルムを構成する樹脂組成物が、ジオール単位とジカルボン酸単位とからなるポリエステルを主成分として含み、前記ポリ5 エステルが、前記ジオール単位がバイオマス由来のエチレングリコールであり、前記ジカルボン酸単位が化石燃料由来のテレフタル酸であるバイオマス由来のポリエステルと、前記ジオール単位が化石燃料由来のエチレングリコールであり、前記ジカルボン酸単位が化石燃料由来のテレフタル酸である化石燃料由来のポリエステルとを含んでなり、前記2軸延伸樹脂フィルム中に前記バイオマス由来のポリエステルが90質量%以下含まれ、
10 第2の層が、化石燃料由来の原料を含む樹脂材料からなり、且つ、バイオマス由来の原料を含む樹脂材料を含まない、ポリプロピレン樹脂からなる樹脂層であることを特徴とする、積層体を備える、積層フィルム。
【請求項21】少なくとも3層を有し、第1の層、接着層、及び第2の層をこの順に含んでなる積層体を備え15 る積層フィルムであって、
前記第1の層が、2軸延伸樹脂フィルムからなり、前記2軸延伸樹脂フィルムを構成する樹脂組成物が、ジオール単位とジカルボン酸単位とからなるポリエステルを主成分として含み、添加剤をさらに含んでなり、前記ポリエステルが、前記ジオール単位がバイオマス由来のエチレングリコールであり、前記ジカルボン酸単位が化石燃料由来のテレフタル酸であるバイオマス由来の20 ポリエステルと、前記ジオール単位が化石燃料由来のエチレングリコールであり、前記ジカルボン酸単位が化石燃料由来のテレフタル酸である化石燃料由来のポリエステルとを含んでなり、前記2軸延伸樹脂フィルム中に前記バイオマス由来のポリエステルが90質量%以下含まれ、
前記第2の層が、化石燃料由来の原料を含む樹脂材料からなり、且つ、バイオマス由来の原料を含む樹脂材料を含まない、ナイロン樹脂からなる樹脂層であることを特徴とする、積層体を備25 える、積層フィルム。
【請求項22】52少なくとも2層を有する積層体を備える積層フィルムであって、
第1の層が、2軸延伸樹脂フィルムからなり、前記2軸延伸樹脂フィルムを構成する樹脂組成物が、ジオール単位とジカルボン酸単位とからなるポリエステルを主成分として含み、添加剤をさらに含んでなり、前記添加剤が、可塑剤、紫外線安定化剤、着色防止剤、艶消し剤、消臭剤、
5 難燃剤、耐候剤、帯電防止剤、糸摩擦低減剤、離型剤、抗酸化剤、イオン交換剤、および着色顔料からなる群から選択される1種または2以上であり、前記ポリエステルが、前記ジオール単位がバイオマス由来のエチレングリコールであり、前記ジカルボン酸単位が化石燃料由来のテレフタル酸であるバイオマス由来のポリエステルと、前記ジオール単位が化石燃料由来のエチレングリコールであり、前記ジカルボン酸単位が化石燃料由来のテレフタル酸である化石燃料由来のポ10 リエステルとを含んでなり、前記2軸延伸樹脂フィルム中に前記バイオマス由来のポリエステルが90質量%以下含まれ、
第2の層が、化石燃料由来の原料を含む樹脂材料からなり、且つ、バイオマス由来の原料を含む樹脂材料を含まない、ポリプロピレン樹脂からなる樹脂層であることを特徴とする、積層体を備える、積層フィルム(但し、該積層体上に無機酸化物の蒸着膜が設けられ、その蒸着膜上にガ15 スバリア性塗布膜が設けられてなるものを除く)。
【請求項23】少なくとも3層を有する積層体を備える積層フィルムであって、
第1の層が、2軸延伸樹脂フィルムからなり、前記2軸延伸樹脂フィルムが5〜12.13μmの厚みを有し、前記2軸延伸樹脂フィルムを構成する樹脂組成物が、ジオール単位とジカルボ20 ン酸単位とからなるポリエステルを主成分として含み、前記ポリエステルが、前記ジオール単位がバイオマス由来のエチレングリコールであり、前記ジカルボン酸単位が化石燃料由来のテレフタル酸であるバイオマス由来のポリエステルと、前記ジオール単位が化石燃料由来のエチレングリコールであり、前記ジカルボン酸単位が化石燃料由来のテレフタル酸である化石燃料由来のポリエステルとを含んでなり、前記2軸延伸樹脂フィルム中に前記バイオマス由来のポリエステル25 が90質量%以下含まれ、
第2の層が、化石燃料由来の原料を含む樹脂材料からなり、且つ、バイオマス由来の原料を含53む樹脂材料を含まない、ポリプロピレン樹脂からなる樹脂層であり、
第3の層が、無機物または無機酸化物からなることを特徴とする、積層体を備える、積層フィルム。
【請求項24】5 少なくとも2層を有する積層体を備えるラミネートチューブであって、
第1の層が、2軸延伸樹脂フィルムからなり、前記2軸延伸樹脂フィルムが5〜12.13μmの厚みを有し、前記2軸延伸樹脂フィルムを構成する樹脂組成物が、ジオール単位とジカルボン酸単位とからなるポリエステルを主成分として含み、添加剤をさらに含んでなり、前記ポリエステルが、前記ジオール単位がバイオマス由来のエチレングリコールであり、前記ジカルボン酸10 単位が化石燃料由来のテレフタル酸であるバイオマス由来のポリエステルと、前記ジオール単位が化石燃料由来のエチレングリコールであり、前記ジカルボン酸単位が化石燃料由来のテレフタル酸である化石燃料由来のポリエステルとを含んでなり、前記2軸延伸樹脂フィルム中に前記バイオマス由来のポリエステルが90質量%以下含まれ、
第2の層が、化石燃料由来の原料を含む樹脂材料からなり、且つ、バイオマス由来の原料を含15 む樹脂材料を含まないことを特徴とする、積層体を備える、ラミネートチューブ(但し、該積層体上に無機酸化物の蒸着膜が設けられ、その蒸着膜上にガスバリア性塗布膜が設けられてなるものを除く)。
【請求項25】少なくとも2層を有する積層体を備える包装製品であって、
20 第1の層が、2軸延伸樹脂フィルムからなり、前記2軸延伸樹脂フィルムを構成する樹脂組成物が、ジオール単位とジカルボン酸単位とからなるポリエステルを主成分として含み、前記ポリエステルが、前記ジオール単位がバイオマス由来のエチレングリコールであり、前記ジカルボン酸単位が化石燃料由来のテレフタル酸であるバイオマス由来のポリエステルと、前記ジオール単位が化石燃料由来のエチレングリコールであり、前記ジカルボン酸単位が化石燃料由来のテレフ25 タル酸である化石燃料由来のポリエステルとを含んでなり、前記2軸延伸樹脂フィルム中に前記バイオマス由来のポリエステルが90質量%以下含まれ、
54第2の層が、化石燃料由来の原料を含む樹脂材料からなり、且つ、バイオマス由来の原料を含む樹脂材料を含まないことを特徴とする、積層体を備える、包装製品(但し、該積層体上に無機酸化物の蒸着膜が設けられ、その蒸着膜上にガスバリア性塗布膜が設けられてなるもの、並びに医薬品、食品及びシャンプーの包装製品を除く)。
5 【請求項26】少なくとも2層を有する積層体を備える包装製品であって、
第1の層が、2軸延伸樹脂フィルムからなり、前記2軸延伸樹脂フィルムが5〜12.13μmの厚みを有し、前記2軸延伸樹脂フィルムを構成する樹脂組成物が、ジオール単位とジカルボン酸単位とからなるポリエステルを主成分として含み、添加剤をさらに含んでなり、前記ポリエ10 ステルが、前記ジオール単位がバイオマス由来のエチレングリコールであり、前記ジカルボン酸単位が化石燃料由来のテレフタル酸であるバイオマス由来のポリエステルと、前記ジオール単位が化石燃料由来のエチレングリコールであり、前記ジカルボン酸単位が化石燃料由来のテレフタル酸である化石燃料由来のポリエステルとを含んでなり、前記2軸延伸樹脂フィルム中に前記バイオマス由来のポリエステルが90質量%以下含まれ、
15 第2の層が、化石燃料由来の原料を含む樹脂材料からなり、且つ、バイオマス由来の原料を含む樹脂材料を含まないことを特徴とする、積層体を備える、包装製品(但し、該積層体上に無機酸化物の蒸着膜が設けられ、その蒸着膜上にガスバリア性塗布膜が設けられてなるものを除く)。
【請求項27】少なくとも2層を有する積層体を備える包装製品であって、
20 第1の層が、2軸延伸樹脂フィルムからなり、前記2軸延伸樹脂フィルムが5〜12.13μmの厚みを有し、前記2軸延伸樹脂フィルムを構成する樹脂組成物が、ジオール単位とジカルボン酸単位とからなるポリエステルを主成分として含み、添加剤をさらに含んでなり、前記添加剤が、可塑剤、紫外線安定化剤、着色防止剤、艶消し剤、消臭剤、難燃剤、耐候剤、帯電防止剤、
糸摩擦低減剤、離型剤、抗酸化剤、イオン交換剤、および着色顔料からなる群から選択される125 種または2以上であり、前記ポリエステルが、前記ジオール単位がバイオマス由来のエチレングリコールであり、前記ジカルボン酸単位が化石燃料由来のテレフタル酸であるバイオマス由来の55ポリエステルと、前記ジオール単位が化石燃料由来のエチレングリコールであり、前記ジカルボン酸単位が化石燃料由来のテレフタル酸である化石燃料由来のポリエステルとを含んでなり、前記2軸延伸樹脂フィルム中に前記バイオマス由来のポリエステルが90質量%以下含まれ、
第2の層が、化石燃料由来の原料を含む樹脂材料からなり、且つ、バイオマス由来の原料を含5 む樹脂材料を含まない、ポリプロピレン樹脂からなる樹脂層であることを特徴とする、積層体を備える、包装製品。
【請求項28】少なくとも3層を有する積層体を備える包装製品であって、
第1の層が、2軸延伸樹脂フィルムからなり、前記2軸延伸樹脂フィルムが5〜12.13μ10 mの厚みを有し、前記2軸延伸樹脂フィルムを構成する樹脂組成物が、ジオール単位とジカルボン酸単位とからなるポリエステルを主成分として含み、前記ポリエステルが、前記ジオール単位がバイオマス由来のエチレングリコールであり、前記ジカルボン酸単位が化石燃料由来のテレフタル酸であるバイオマス由来のポリエステルと、前記ジオール単位が化石燃料由来のエチレングリコールであり、前記ジカルボン酸単位が化石燃料由来のテレフタル酸である化石燃料由来のポ15 リエステルとを含んでなり、前記2軸延伸樹脂フィルム中に前記バイオマス由来のポリエステルが90質量%以下含まれ、
第2の層が、化石燃料由来の原料を含む樹脂材料からなり、且つ、バイオマス由来の原料を含む樹脂材料を含まない、ナイロン樹脂からなる樹脂層であり、
第3の層が、無機物または無機酸化物からなることを特徴とする、積層体を備える、包装製品。
202556別紙3 本件明細書の記載事項及び図面【技術分野】【0001】5 本発明は、植物由来の原料から得られたバイオマスポリエステル樹脂組成物からなる層を有する積層体に関し、より詳細には、バイオマス由来のエチレングリコールをジオール成分として用いたポリエステルを含む樹脂組成物からなる第1の層を有する積層体に関する。
【背景技術】【0003】10 近年、循環型社会の構築を求める声の高まりとともに、材料分野においてもエネルギーと同様に化石燃料からの脱却が望まれており、バイオマスの利用が注目されている。バイオマスは、二酸化炭素と水から光合成された有機化合物であり、それを利用することにより、再度二酸化炭素と水になる、いわゆるカーボンニュートラルな再生可能エネルギーである。昨今、これらバイオマスを原料としたバイオマスプラスチックの実用化が急速に進んでおり、汎用高分子材料である15 ポリエステルをこれらバイオマス原料から製造する試みも行われている。
発明の概要】【発明が解決しようとする課題】【0007】本発明者らは、ポリエステルの原料であるエチレングリコールに着目し、従来の化石燃料から20 得られるエチレングリコールに代えて、植物由来のエチレングリコールをその原料としたポリエステルは、従来の化石燃料から得られるエチレングリコールを用いて製造されたポリエステルと、
機械的特性等の物性面で遜色ないものが得られるとの知見を得た。さらに、このようなバイオマス由来のポリエステルからなる層を有する積層体も、従来の化石燃料から得られる原料からなる積層体と、機械的特性等の物性面で遜色ないものが得られるとの知見を得た。本発明はかかる知25 見によるものである。
【0008】57したがって、本発明の目的は、バイオマスエチレングリコールを用いたカーボンニュートラルなポリエステルを含む樹脂組成物からなる層を有する積層体を提供することであって、従来の化石燃料から得られる原料から製造された積層体と機械的特性等の物性面で遜色ないポリエステル樹脂フィルムの積層体を提供することである。
5 【課題を解決するための手段】【0009】本発明による積層体は、少なくとも2層を有するものであって、
第1の層が、2軸延伸樹脂フィルムからなり、前記2軸延伸樹脂フィルムを構成する樹脂組成物が、ジオール単位とジカルボン酸単位とからなるポリエステルを主成分として含み、前記ポリ10 エステルが、前記ジオール単位がバイオマス由来のエチレングリコールであり、前記ジカルボン酸単位が化石燃料由来のテレフタル酸であるバイオマス由来のポリエステルと、前記ジオール単位が化石燃料由来のエチレングリコールであり、前記ジカルボン酸単位が化石燃料由来のテレフタル酸である化石燃料由来のポリエステルとを含んでなり、前記2軸延伸樹脂フィルム中に前記バイオマス由来のポリエステルが90質量%以下含まれ、
15 第2の層が、化石燃料由来の原料を含む樹脂材料からなり、且つ、バイオマス由来の原料を含む樹脂材料を含まないことを特徴とするものである。
【0019】本発明の態様においては、積層体が、積層フィルム、包装用袋、シート成形品、ラベル材料、
蓋材、ラミネートチューブ、または包装製品であることが好ましい。
20 【発明の効果】【0020】本発明によれば、少なくとも2層を有する積層体において、第1の層が、2軸延伸樹脂フィルムからなり、前記2軸延伸樹脂フィルムを構成する樹脂組成物が、ジオール単位とジカルボン酸単位とからなるポリエステルを含み、前記ポリエステルが、前記ジオール単位がバイオマス由来25 のエチレングリコールであり、前記ジカルボン酸単位が化石燃料由来のテレフタル酸であるバイオマス由来のポリエステルと、前記ジオール単位が化石燃料由来のエチレングリコールであり、
58前記ジカルボン酸単位が化石燃料由来のテレフタル酸である化石燃料由来のポリエステルとを含んでなり、前記2軸延伸樹脂フィルム中に前記バイオマス由来のポリエステルが90質量%以下含まれることで、カーボンニュートラルな樹脂からなる層を有する積層体を実現できる。したがって、従来に比べて化石燃料の使用量を大幅に削減することができ、環境負荷を減らすことが5 できる。また、本発明のポリエステル樹脂組成物の積層体は、従来の化石燃料から得られる原料から製造されたポリエステル樹脂組成物の積層体と比べて、機械的特性等の物性面で遜色がないポリエステル樹脂組成物を用いているため、従来のポリエステル樹脂組成物の積層体を代替することができる。
【図面の簡単な説明】10 【0021】【図1】本発明による積層体の一例を示す模式断面図である。
【図2】本発明による積層体の一例を示す模式断面図である。
【図3】本発明による積層体の一例を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】15 【0028】バイオマス由来のエチレングリコールは、バイオマスを原料として製造されたエタノール(バイオマスエタノール)を原料としたものである。例えば、バイオマスエタノールを、従来公知の方法により、エチレンオキサイドを経由してエチレングリコールを生成する方法等により、バイオマス由来のエチレングリコールを得ることができる。また、市販のバイオマスエチレングリコ20 ールを使用してもよく、例えば、インディアグライコール社から市販されているバイオマスエチレングリコールを好適に使用することができる。
【0071】<層構成>本発明の積層体の層構成については、第1の層および第2の層をそれぞれ少なくとも1層有す25 るものであれば、特に限定されず、従来の積層フィルムと同様の層構成であってもよい。また、
例えば、PET/PE(PEF)、PET/CPP、PET/CNY、PET/PET/PE、
59PET/PET/CPP、PET/AL/PE、PET/AL/CPP、PET/ONY/PE、
PET/ONY/CPP、ONY/PET/PE、ONY/PET/CPP、PET/PVA/PE、PET/PVA/CPP、PET/PVC/PE、PET/PVC/CPP、PET/AL/ONY/PE、PET/AL/ONY/CPP、PET/ONY/AL/PE、PET/O5 NY/AL/CPP、PET/紙/PE、PET/紙/CPP、紙/AL/PET/PE、紙/AL/PET/CPP、およびOPP/PET/AL/OPP等が挙げられる。また、バリアフィルムと積層してもよい。例えば、PET/AL蒸着PET/CPP、ONY/透明蒸着PET/CPP、およびPET/AL蒸着CPP等が挙げられる。なお、各略称の名称は、以下のとおりである。PET:ポリエチレンテレフタレート、PE:ポリエチレン、PEF:ポリエチレン10 フィルム、CNY:無延伸ナイロン、ONY:延伸ナイロン、AL:アルミニウム箔、CPP:未延伸ポリプロピレン、OPP:二軸延伸ポリプロピレン、PVA:ポリビニルアルコール、PVC:ポリ塩化ビニル。
【0073】<用途>15 本発明による積層体は、包装製品、各種ラベル材料、蓋材、シート成型品、ラミネートチューブ等の用途に好適に使用することができ、特に、積層フィルムまたは包装用袋(例えば、ピロー袋、スタンディングパウチや4方パウチ等のパウチ)が好ましい。積層体の厚さは、その用途に応じて、適宜決定することができる。例えば、5〜500μm、好ましくは10〜300μm程度の厚みのフィルムないしシート状の形態で用いられる。
20 他の態様本発明は、バイオマスエチレングリコールを用いたカーボンニュートラルなポリエステルを含む樹脂組成物からなる層を有する積層体を提供することであって、従来の化石燃料から得られる原料から製造された積層体と機械的特性等の物性面で遜色ないポリエステル樹脂フィルムの積層体を提供することである。
25 本発明の更なる他の態様による積層体は、少なくとも2層を有するものであって、
第1の層が、ジオール単位とジカルボン酸単位とからなるポリエステルを主成分として含んで60なる樹脂組成物からなり、前記樹脂組成物が、ジオール単位がバイオマス由来のエチレングリコールであり、ジカルボン酸単位が化石燃料由来のジカルボン酸であるポリエステルを、樹脂組成物全体に対して、50〜95質量%含んでなり、
第2の層が、化石燃料由来の原料を含む樹脂材料からなることを特徴とするものである。
5 本発明の更なる他の態様においては、前記樹脂組成物が、ジオール単位が化石燃料由来のジオールまたはバイオマス由来のエチレングリコールであり、ジカルボン酸単位が化石燃料由来のジカルボン酸であるポリエステルからなる樹脂製品をリサイクルして得られるポリエステルをさらに含んでなることが好ましい。
本発明の更なる他の態様においては、前記樹脂組成物が、前記リサイクルして得られる10 ポリエステルを、樹脂組成物全体に対して、5〜45質量%含んでなることが好ましい。
本発明の更なる他の態様においては、前記化石燃料由来のジカルボン酸がテレフタル酸であることが好ましい。
本発明の更なる他の態様においては、前記樹脂組成物が添加剤をさらに含んでなることが好ましい。
15 本発明の更なる他の態様においては、前記添加剤を、樹脂組成物全体に対して5〜50質量%含んでなることが好ましい。
本発明の更なる他の態様においては、前記添加剤が、可塑剤、紫外線安定化剤、着色防止剤、
艶消し剤、消臭剤、難燃剤、耐候剤、帯電防止剤、糸摩擦低減剤、離型剤、抗酸化剤、イオン交換剤、および着色顔料からなる群から選択される1種または2以上であることが好ましい。
20 本発明の更なる他の態様においては、前記ポリエステル中の全炭素に対して、放射性炭素(C14)測定によるバイオマス由来の炭素の含有量が、10〜19%であることが好ましい。
本発明の更なる他の態様においては、第1の層が2軸延伸されてなる樹脂フィルムであることが好ましい。
本発明の更なる他の態様においては、無機物または無機酸化物からなる第3の層をさらに有す25 ることが好ましい。
本発明の更なる他の態様においては、積層体が、積層フィルムまたは包装用袋であることが好61ましい。
本発明の更なる他の態様によれば、少なくとも2層を有する積層体において、第1の層が、ジオール単位とジカルボン酸単位とからなるポリエステルを主成分として含んでなる樹脂組成物からなり、前記樹脂組成物が、ジオール単位がバイオマス由来のエチレングリコールであり、ジ5 カルボン酸単位が化石燃料由来のジカルボン酸であるポリエステルを、樹脂組成物全体に対して、
50〜95質量%含んでなることで、カーボンニュートラルな樹脂からなる層を有する積層体を実現できる。したがって、従来に比べて化石燃料の使用量を大幅に削減することができ、環境負荷を減らすことができる。また、本発明のポリエステル樹脂組成物の積層体は、従来の化石燃料から得られる原料から製造されたポリエステル樹脂組成物の積層体と比べて、機械的特性等の物10 性面で遜色がないポリエステル樹脂組成物を用いているため、従来のポリエステル樹脂組成物の積層体を代替することができる。
【図1】15 【図2】【図3】6263別紙4 本件決定の理由(本件訴訟において独立して具体的に争われている事項に限る)1 引用発明Aの認定引用文献4には下記の引用発明Aが記載されている。
5 「ガスバリア性積層フィルム、印刷層、ラミネート接着剤層、ヒートシール性樹脂層を順次設けた包装用積層材であって、
ガスバリア性積層フィルムは、基材が2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムからなり、基材上に無機酸化物の蒸着膜が設けられ、その蒸着膜上にガスバリア性塗布膜が設けられ、
10 ガスバリア性塗布膜上にヒートシール性樹脂層が設けられている、
ヒートシール性樹脂層がポリオレフィン系樹脂からなる、包装用積層材。
」2 引用文献5記載事項の認定引用文献5には、以下の引用文献5記載事項が記載されている。
「石油資源の枯渇を抑制し、地球温暖化の原因物質である大気中の二酸化炭素の増加を抑制す15 る手段として、従来のような石油系由来の原料のみからなるPETに替えて、生物産生のバイオマス素材を原料としたPETを提供するもので、シート、フィルムに用いられるポリエチレンテレフタレートであって、バイオマス由来のエチレングリコールをジオール単位とし、石油由来のテレフタル酸をジカルボン酸単位とするバイオマス由来のPETと、石油由来のエチレングリコールをジオール単位とし、石油由来のテレフタル酸をジカルボン酸単位とする化石資20 源由来のPETをブレンドし、細長いノズル孔から溶融PETを押し出し、延伸して製品とすること。」3 引用発明Bの認定引用文献7には、以下の引用発明Bが記載されている。
「テレフタル酸とエチレングリコールとの縮重合物であるポリエチレンテレフタレート(PE25 T)からなるポリエチレンテレフタレート・フィルムに、PEを積層した、ラミネートフィルム。」644 引用文献4を主引用例とする本件発明の進歩性について(1) 本件発明1についてア 本件発明1と引用発明Aの一致点及び相違点[一致点A]5 「少なくとも2層を有する積層体であって、
2軸延伸樹脂フィルムからなり、前記2軸延伸樹脂フィルムを構成する樹脂組成物が、
ジオール単位とジカルボン酸単位とからなるポリエステルを主成分として含む第1の層と、
樹脂材料からなる層を有する、積層体。」10 [相違点A−1]第1の層の樹脂組成物について、本件発明1は、
「ジオール単位とジカルボン酸単位とからなるポリエステルを主成分として含み、前記ポリエステルが、前記ジオール単位がバイオマス由来のエチレングリコールであり、前記ジカルボン酸単位が化石燃料由来のテレフタル酸であるバイオマス由来のポリエステルと、前記ジオール単位が化石燃料由来15 のエチレングリコールであり、前記ジカルボン酸単位が化石燃料由来のテレフタル酸である化石燃料由来のポリエステルとを含んでなり、前記2軸延伸樹脂フィルム中に前記バイオマス由来のポリエステルが90質量%以下含まれ」ているものであるのに対し、引用発明Aは、「2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムからな」るものである点。
[相違点A−2]20 樹脂材料からなる層」について、本件発明1は「化石燃料由来の原料を含む樹脂材料からなり、且つ、バイオマス由来の原料を含む樹脂材料を含まない」「第2の層」であるのに対し、引用発明Aは「ポリオレフィン系樹脂からなる」「ヒートシール性樹脂層」である点。
イ 相違点の容易想到性に対する判断25 [相違点A−1について]石油資源の枯渇を抑制し、地球温暖化の原因物質である大気中の二酸化炭素の増加を抑65制することは、出願時において、文献を示すまでもなく一般的な課題であり、その解決のために、石油由来の原料からなるポリエチレンテレフタレートを減らして、生物由来のバイオマス素材を原料としたポリエチレンテレフタレートに置換することには動機付けがあり、バイオマス由来のエチレングリコールをジオール単位とし石油由来のテレフタル酸5 をジカルボン酸単位とするバイオマス由来のポリエチレンテレフタレートと、石油由来のエチレングリコールをジオール単位とし石油由来のテレフタル酸をジカルボン酸単位とする化石燃料由来のポリエチレンテレフタレートをブレンドして、化石燃料由来の原料からなるポリエチレンテレフタレートの使用を減らす、引用文献5記載事項を採用することは、当業者が容易に想到することができた。
10 [相違点A−2について]ポリオレフィン系樹脂材料の多くは化石燃料由来であってバイオマス由来の原料を含まないものが一般的であったから、引用発明Aの「ポリオレフィン系樹脂からなる」「ヒートシール性樹脂層」を、「化石燃料由来の原料を含む樹脂材料からなり、且つ、バイオマス由来の原料を含む樹脂材料を含まない」ものとすることは、当業者が適宜なし得た。
15 (2) 本件発明2〜9について(略)(3) 本件発明13、14について(一致点・相違点A−1〜A−7の容易想到性の認定判断につき略)本件発明13、14と引用発明Aとは、相違点A1〜A−7のほか、引用発明Aの「包20 装用積層材」が、「ラミネートチューブ」又は「包装製品」に用いることが特定されていないことで相違するが、これらは包装材料の用途として出願前に周知の用途であり、当業者が適宜なし得たことである。
(4) 本件発明17についてア 本件発明17と引用発明Aの一致点及び相違点(以下、本件発明17以下と引用発明A25 の一致点、実質的に争点となっていない相違点につき記載を省略する。)[相違点A17−2]66本件発明17は、「化石燃料由来の原料を含む樹脂材料からなり、且つ、バイオマス由来の原料を含む樹脂材料を含まない、ナイロン樹脂からなる樹脂層であ」る「第2の層」を含むのに対し、引用発明Aは、そのような層を含むか特定されていない点。
イ 相違点の容易想到性に対する判断(なお、以下、相違点の記載を省略したものは相違点5 の判断についても省略する。)引用文献4には、ラミネート接着剤層とヒートシール性樹脂層の間に、耐突き刺し性を向上させるために機能する中間層を設けること、この中間層の樹脂として「ポリアミド系樹脂」が例示されている。
引用発明Aにおける「ラミネート接着剤層」と「ヒートシール性樹脂層」の間の中間層10 の材料として何を用いるかは、要求される機能に応じて当業者が適宜選択するものであるところ、突き刺し強さ等の機械的特性に優れることが知られる「ポリアミド系樹脂」である「ナイロン樹脂」を採用することは、当業者が容易に想到し得た。
(5) 本件発明20についてア 本件発明20と引用発明Aの一致点及び相違点15 [相違点A20−1]第1の層の樹脂組成物について、本件発明20は、「ジオール単位とジカルボン酸単位とからなるポリエステルを主成分として含み、前記ポリエステルが、前記ジオール単位がバイオマス由来のエチレングリコールであり、前記ジカルボン酸単位が化石燃料由来のテレフタル酸であるバイオマス由来のポリエステルと、前記ジオール単位が化石燃料由来の20 エチレングリコールであり、前記ジカルボン酸単位が化石燃料由来のテレフタル酸である化石燃料由来のポリエステルとを含んでなり、前記2軸延伸樹脂フィルム中に前記バイオマス由来のポリエステルが90質量%以下含まれ」ているものであるのに対し、引用発明Aは、
「2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムからな」るものである点。
[相違点A20−2]25 「樹脂材料からなる層」について、本件発明20は「化石燃料由来の原料を含む樹脂材料からなり、且つ、バイオマス由来の原料を含む樹脂材料を含まない、ポリプロピレン樹67脂からなる樹脂層である」「第2の層」であるのに対し、引用発明Aは「ポリオレフィン系樹脂からなる」「ヒートシール性樹脂層」であって、樹脂が特定されていない点。
イ 相違点の容易想到性に対する判断[相違点A20−1について]5 相違点A1−1に対する判断に同じ。
[相違点A20−2について]「ポリプロピレン」はヒートシール性樹脂層に広く用いられる樹脂である。また、出願前流通するポリプロピレンは、化石燃料由来の原料からなりバイオマス由来の原料を含まないものが一般的であったから、引用発明Aの「ポリオレフィン系樹脂からなる」「ヒ10 ートシール性樹脂層」を、「化石燃料由来の原料を含む樹脂材料からなり、且つ、バイオマス由来の原料を含む樹脂材料を含まない」「ポリプロピレン樹脂からなる樹脂層」、
とすることは、引用発明Aを具体化するにあたり、当業者が適宜なし得た。
(6) 本件発明21についてア 本件発明21と引用発明Aの一致点及び相違点15 [相違点A21−3]本件発明21は、「化石燃料由来の原料を含む樹脂材料からなり、且つ、バイオマス由来の原料を含む樹脂材料を含まない、ナイロン樹脂からなる樹脂層である」「第2の層」を含むのに対し、引用発明Aは、そのような層を含むか特定されていない点。
イ 相違点の容易想到性に対する判断20 相違点A17−2に対する判断に同じ。
(7) 本件発明23についてア 本件発明23と引用発明Aの一致点及び相違点[相違点A23−3]「樹脂材料からなる層」について、本件発明23は、「化石燃料由来の原料を含む樹脂材25 料からなり、且つ、バイオマス由来の原料を含む樹脂材料を含まない、ポリプロピレン樹脂からなる樹脂層であ」る「第2の層」であるのに対し、引用発明Aは「ポリオレフィン68樹脂からなる」「ヒートシール性樹脂層」であって、樹脂が特定されていない点。
イ 相違点の容易想到性に対する判断相違点A20−2に対する判断に同じ。
(8) 本件発明27について5 ア 本件発明27と引用発明Aの一致点及び相違点[相違点A27−4]「樹脂材料からなる層」について、本件発明27は「化石燃料由来の原料を含む樹脂材料からなり、且つ、バイオマス由来の原料を含む樹脂材料を含まない、ポリプロピレン樹脂からなる樹脂層である」「第2の層」であるのに対し、引用発明Aは「ポリオレフィン10 樹脂からなる」「ヒートシール性樹脂層」であって、樹脂が特定されていない点。
イ 相違点の容易想到性に対する判断相違点A20−2に対する判断に同じ。
(9) 本件発明28についてア 本件発明28と引用発明Aの一致点及び相違点15 [相違点A28−3]本件発明28は、「化石燃料由来の原料を含む樹脂材料からなり、且つ、バイオマス由来の原料を含む樹脂材料を含まない、ナイロン樹脂からなる樹脂層であ」る「第2の層」を有するのに対し、引用発明Aは、そのような層を含むか特定されていない点。
イ 相違点の容易想到性に対する判断20 相違点A17−2に対する判断に同じ。
5 引用発明Bを主引用例とする本件発明の進歩性について(1) 本件発明1についてア 本件発明1と引用発明Bの一致点及び相違点[一致点]25 「少なくとも2層を有する積層体であって、
樹脂フィルムからなり、前記樹脂フィルムを構成する樹脂組成物が、ジオール単位とジ69カルボン酸単位とからなるポリエステルを主成分として含む第1の層と、
樹脂材料からなる層を有する、積層体。
」[相違点B−1]第1の層について、本件発明1は、「2軸延伸樹脂フィルムからなり、前記2軸延伸樹5 脂フィルムを構成する樹脂組成物が、ジオール単位とジカルボン酸単位とからなるポリエステルを主成分として含み、前記ポリエステルが、前記ジオール単位がバイオマス由来のエチレングリコールであり、前記ジカルボン酸単位が化石燃料由来のテレフタル酸であるバイオマス由来のポリエステルと、前記ジオール単位が化石燃料由来のエチレングリコールであり、前記ジカルボン酸単位が化石燃料由来のテレフタル酸である化石燃料由来のポ10 リエステルとを含んでなり、前記2軸延伸樹脂フィルム中に前記バイオマス由来のポリエステルが90質量%以下含まれ」ているものであるのに対し、引用発明Bは、「テレフタル酸とエチレングリコールとの縮重合物であるポリエチレンテレフタレート(PET)からなるポリエチレンテレフタレート・フィルム」である点。
[相違点B−2]15 「樹脂材料からなる層」について、本件発明1は「化石燃料由来の原料を含む樹脂材料からなり、且つ、バイオマス由来の原料を含む樹脂材料を含まない」「第2の層」であるのに対し、引用発明Bは「PE」の層である点。
イ 相違点の容易想到性に対する判断[相違点B−1について]20 引用発明Bにおけるポリエチレンテレフタレート(PET)からなるポリエチレンテレフタレート・フィルムについて、基材として強靭さと寸法安定性を得るために2軸延伸したものを用いることに格別の困難性はない。PETは、化石燃料由来の原料から製造されるのが通常であるところ、石油資源の枯渇や、二酸化炭素の増加を抑制するという上述の一般的な課題であり、引用発明Bの「ポリエチレンテレフタレート・フィルム」の材料と25 して、バイオマス由来のポリエステルに代替する動機付けがある。
バイオマス由来のエチレングリコールをジオール単位とし石油由来のテレフタル酸を70ジカルボン酸単位とするポリエチレンテレフタレートと、石油由来のエチレングリコールをジオール単位とし石油由来のテレフタル酸をジカルボン酸単位とする化石燃料由来のポリエチレンテレフタレートをブレンドし溶融させ、延伸してフィルムとする、引用文献5記載事項を参照して、引用発明Bのポリエチレンテレフタレート・フィルムの樹脂材料5 とすることは容易に想到することができた。
[相違点B−2について]本件特許の出願前、流通する樹脂材料は、化石燃料由来の原料からなりバイオマス由来の原料を含まないものが一般的であったから、引用発明Bの「PE」、すなわちポリエチレンを、「化石燃料由来の原料を含む樹脂材料からなり、且つ、バイオマス由来の原料を10 含む樹脂材料を含まない」ものとすることは、引用発明Bを具体化するにあたり、当業者が適宜なし得た。
(2) 本件発明2〜9、14、15について(略)(3) 本件発明10〜13について15 ア 本件発明10〜13と引用発明Bの一致点について[一致点]本件発明1と引用発明Bの一致点に同じ。
[相違点]相違点B1〜8のほか、本件発明10〜13の用途はそれぞれ「シート成形品」「ラベ、
20 ル材料」「蓋材」であるのに対し、引用発明Bの積層体の用途は特定されていない点。

イ 相違点の容易想到性に対する判断前記アの本件発明10〜13の各用途は、包装フィルムの用途として本件特許に係る出願前に周知の用途であり、当業者が適宜なし得た。
(4) 本件発明16について25 ア 本件発明16と引用発明Bの一致点及び相違点(以下、本件発明16以下と引用発明Bの一致点、実質的に争点となっていない相違点につき記載を省略する。)71[相違点B16−4]「少なくとも2層を有する積層体」について、本件発明16は「(但し、該積層体上に無機酸化物の蒸着膜が設けられ、その蒸着膜上にガスバリア性塗布膜が設けられてなるもの、並びに、医薬品、食品及びシャンプーの包装用途のものを除く)」ものであるのに対5 し、引用発明Bはそのような特定がなされていない点。
イ 相違点の容易想到性に対する判断「無機酸化物の蒸着膜が設けられ、その蒸着膜上にガスバリア性塗布膜が設けられ」るものでないラミネートフィルムは、文献を挙げるまでもなく周知の技術である。
また、引用発明Bの「ラミネートフィルム」の用途について、引用文献7には、食品工10 業、医薬品工業に限らず、「他の諸産業分野」でも用いられてきた旨記載されており、引用発明Bの「ラミネートフィルム」を、「医薬品、食品及びシャンプーの包装用途」以外に用いることは適宜なし得た。
(5) 本件発明17についてア 本件発明17と引用発明Bの一致点及び相違点15 [相違点B17−2]本件発明17は、「化石燃料由来の原料を含む樹脂材料からなり、且つ、バイオマス由来の原料を含む樹脂材料を含まない、ナイロン樹脂からなる樹脂層」である「第2の層」を含むのに対し、引用発明Bは、そのような層を含むか特定されていない点。
[相違点B17−3]20 本件発明17は、
「無機物または無機酸化物からなる」「第3の層」を含むのに対し、引用発明Bは、そのような層を含むか特定されていない点。
イ 相違点の容易想到性に対する判断[相違点B17−2について]引用発明Bのラミネートフィルムにおいて、包装材料として求められる機械的強度に対25 応するために、引張り強さ、衝撃強さ、引裂き強さ、破裂強さ、突刺し強さなどの諸特性がプラスチックフィルム中でも最も強い分野に属するとされるナイロンフィルムを積層72することは、適宜なし得た。
[相違点B17−3について]酸素バリア性が良いとされる、アルミニウム箔や、アルミニウムなどの真空蒸着層という無機物または無機酸化物からなる層を選択して、積層することは、適宜なし得た。
5 (6) 本件発明18についてア 本件発明18と引用発明Bの一致点及び相違点[相違点B18−3]本件発明18は、「化石燃料由来の原料を含む樹脂材料からなり、且つ、バイオマス由来の原料を含む樹脂材料を含まない、ナイロン樹脂からなる樹脂層」である「第2の層」10 を含むのに対し、引用発明Bは、そのような層を含むか特定されていない点。
イ 相違点の容易想到性に対する判断相違点B17−2の容易想到性に対する判断に同じ。
(7) 本件発明19についてア 本件発明19と引用発明Bの一致点及び相違点15 [相違点B19−3]本件発明19は、「樹脂組成物」が「添加剤をさらに含んでなり、前記添加剤が、可塑剤、紫外線安定化剤、着色防止剤、艶消し剤、消臭剤、難燃剤、耐候剤、帯電防止剤、糸摩擦低減剤、離型剤、抗酸化剤、イオン交換剤、および着色顔料からなる群から選択される1種または2以上であ」るのに対し、引用発明Bはその点不明である点。
20 [相違点B19−4]本件発明18は、
「アルミニウム箔からなる」「第3の層」を含むのに対し、引用発明Bは、そのような層を含むか特定されていない点。
[相違点B19−5]「積層体」について、本件発明19は「少なくとも3層を有し、第1の層、第2の層、
25 及び第3の層をこの順に含んでなる積層体」であるのに対し、引用発明Bは「テレフタル酸とエチレングリコールとの縮重合物であるポリエチレンテレフタレート(PET)から73なるポリエチレンテレフタレート・フィルムに、PEを積層した、ラミネートフィルム」である点。
イ 相違点の容易想到性に対する判断[相違点B19−3について]5 相違点B17−2の容易想到性に対する判断に同じ。
[相違点B19−4について]相違点B17−3の容易想到性に対する判断に同じ。
[相違点B19−5について]引用文献7には二軸延伸ナイロン、アルミニウム箔の順に積層することが記載され、ポ10 リエステルフィルム(本件発明19の「第1の層」、二軸延伸ナイロンフィルム(本件発)明19の「第2の層」、アルミニウム箔(本件発明19の「第3の層」) )の順に積層することは、ラミネートフィルムの積層構造として、広く用いられる周知の構造といえる。引用発明Bのラミネートフィルムの集成構成は、内容品の性状、包装作業、包装機械、包装体が実際にさらされる状況などに応じて決められ、ナイロンフィルムとアルミニウム箔を15 積層することが、適宜なし得るものであり、その積層順を上記周知の積層構造のようにして、相違点B19−5に係る本件発明19の構成とすることは、当業者が容易に想到し得た。
(8) 本件発明20についてア 本件発明20と引用発明Bの一致点・相違点20 [相違点B20−2]本件発明20は、「化石燃料由来の原料を含む樹脂材料からなり、且つ、バイオマス由来の原料を含む樹脂材料を含まない、ポリプロピレン樹脂からなる樹脂層」である「第2の層」を含むのに対し、引用発明Bは、そのような層を含むか特定されていない点。
イ 相違点の容易想到性に対する判断25 引用発明Bのラミネートフィルムにおいて、第1の層であるPETとPEの積層構成に加えて、CPP(無延伸ポリプロピレン)の層を積層することは、引用文献7に記載され74るように、一般に汎用される積層構成であり、当業者が容易に想到し得た。
(9) 本件発明21についてア 本件発明21と引用発明Bの一致点・相違点[相違点B21−3]5 本件発明21は、「化石燃料由来の原料を含む樹脂材料からなり、且つ、バイオマス由来の原料を含む樹脂材料を含まない、ナイロン樹脂からなる樹脂層」である「第2の層」を含むのに対し、引用発明Bは、そのような層を含むか特定されていない点。
イ 相違点の容易想到性の判断相違点B17−2の容易想到性に対する判断に同じ。
10 (10) 本件発明22についてア 本件発明22と引用発明Bの一致点・相違点[相違点B22−3]本件発明22は、「化石燃料由来の原料を含む樹脂材料からなり、且つ、バイオマス由来の原料を含む樹脂材料を含まない、ポリプロピレン樹脂からなる樹脂層」である「第215 の層」を有するものであるのに対し、引用発明Bは、そのような層を含むか特定されていない点。
イ 相違点の容易想到性に対する判断相違点B20−2の容易想到性に対する判断に同じ。
(11) 本件発明23について20 ア 本件発明23と引用文献Bの一致点・相違点[相違点B23−2]本件発明23の「前記2軸延伸樹脂フィルムが5〜12.13μmの厚みを有」するのに対し、引用発明Bのポリエチレンテレフタレート・フィルムの厚みは特定されていない点。
25 [相違点B23−3]本件発明23は、「化石燃料由来の原料を含む樹脂材料からなり、且つ、バイオマス由75来の原料を含む樹脂材料を含まない、ポリプロピレン樹脂からなる樹脂層」である「第2の層」を有するものであるのに対し、引用発明Bは、そのような層を含むか特定されていない点。
イ 相違点の容易想到性に対する判断5 [相違点B23−2について]引用発明Bのポリエチレンテレフタレート・フィルムの厚みをどの程度とするかは当業者が適宜決め得ることであるところ、ポリエチレンテレフタレート・フィルムの厚みとして「5〜12.13μmの厚み」は、引用文献4、引用文献6に示されるように特別なものではない。
10 [相違点B23−3について]相違点B20−2の容易想到性に対する判断に同じ。
(12) 本件発明24についてア 本件発明24と引用発明Bの一致点・相違点について[相違点B24−2]15 本件発明24の「前記2軸延伸樹脂フィルムが5〜12.13μmの厚みを有」するのに対し、引用発明Bのポリエチレンテレフタレート・フィルムの厚みは特定されていない点。
[相違点B24−5]「少なくとも2層を有する積層体を備えるもの」について、本件発明24は「ラミネー20 トチューブ」であるのに対し、引用発明Bはそのような特定がなされていない点。
イ 相違点の容易想到性に対する判断[相違点B24−2について]相違点B23−2の容易想到性に対する判断に同じ。
[相違点B24−5について]25 ラミネートフィルムの用途として、ラミネートチューブに用いることは本件特許の出願前に周知の用途であり、引用発明Bの「ラミネートフィルム」をラミネートチューブに用76いることは、当業者が適宜なし得た。
(13) 本件発明25についてア 本件発明25と引用発明Bの一致点・相違点について[相違点B25−4]5 「少なくとも2層を有する積層体を備えるもの」について、本件発明25は「(但し、
該積層体上に無機酸化物の蒸着膜が設けられ、その蒸着膜上にガスバリア性塗布膜が設けられてなるもの、並びに医薬品、食品及びシャンプーの包装製品を除く)」ものであるのに対し、引用発明Bはそのような特定がなされていない点。
イ 相違点の容易想到性に対する判断10 相違点B16−4の容易想到性に対する判断に同じ。
(14) 本件発明26についてア 本件発明26と引用発明Bの一致点・相違点について[相違点B26−2]本件発明26の「前記2軸延伸樹脂フィルムが5〜12.13μmの厚みを有」するの15 に対し、引用発明Bのポリエチレンテレフタレート・フィルムの厚みは特定されていない点。
イ 相違点の容易想到性に対する判断相違点B23−2の容易想到性に対する判断に同じ。
(15) 本件発明27について20 ア 本件発明27と引用発明Bの一致点・相違点について[相違点B27−2]本件発明27の「前記2軸延伸樹脂フィルムが5〜12.13μmの厚みを有」するのに対し、引用発明Bのポリエチレンテレフタレート・フィルムの厚みは特定されていない点。
25 [相違点B27−4]本件発明27は、「化石燃料由来の原料を含む樹脂材料からなり、且つ、バイオマス由77来の原料を含む樹脂材料を含まない、ポリプロピレン樹脂からなる樹脂層」である「第2の層」を有するものであるのに対し、引用発明Bは、そのような層を含むか特定されていない点。
イ 相違点の容易想到性に対する判断5 [相違点B27−2について]相違点B23−2の容易想到性に対する判断に同じ。
[相違点B27−4について]相違点B20−2の容易想到性に対する判断に同じ。
(16) 本件発明28について10 ア 本件発明28と引用発明Bの一致点・相違点について[相違点B28−3]本件発明28は、「化石燃料由来の原料を含む樹脂材料からなり、且つ、バイオマス由来の原料を含む樹脂材料を含まない、ナイロン樹脂からなる樹脂層」である「第2の層」であるのに対し、引用発明Bは、そのような層を含むか特定されていない点。
15 イ 相違点の容易想到性に対する判断相違点B17−2の容易想到性に対する判断に同じ。
78別紙5 引用文献7の記載事項480ページ14行〜483ページ3行(8) ポリエステルフィルム5 1) 概要ポリエステルフィルムとして広く用いられているものは、不飽和ポリエステルではなく、
熱可塑性ポリエステルである。
その代表的なものとしては、テレフタル酸とエチレングリコールとの縮重合物であるポリエチレンテレフタレート(PET)であり、共重合成分としてイソフタル酸やポリ10 ブチレンテレフタル酸(PBT)などがある。
・・・特に、フィルム・シートは透明で、強靭であり、可塑剤のような成分を含んでいないため、広く磁気テープを中心としての用途も広がり、食品業界でも使用がレトルトパウチの開発と共に拡大した。
15 2) 製造法と特性・・・ポリエチレンテレフタレート・フィルムの特性としては、優れた透明さと強靭さとが特筆される。フィルム・シートの強靭さと寸法安定性を出すためには、2軸延伸によって配向させた後、ヒートセットして作られる。
・・・20 ポリエチレンテレフタレートの耐ガスバリアー性をより一層改良するために、PVDCのコーティングをしたり、PEのラミネートをする方法で耐熱性の向上と、ヒートシール性の付与を行っている。・・・484ページ1行〜486ページ23行25 (9) ナイロン1) 概要79ナイロンは化学的な構造から言えば、ポリアミド類という事となるが、DuPont社の商品名が余りに有名になりすぎたため、ナイロンは、一般名として使用されるようになった。
2) 製法と特性5 ・・・ナイロンフィルムの一般的特性は強い強度と耐薬品性、バリアー性が他のフィルムと比較して平均して優れている事が挙げられる。
フィルムとしての特性を更に詳しく述べると、多くのナイロンフィルムは2軸延伸されることによって、配向、結晶化度が上昇し、無延伸フィルムよりも強度、ガスバリア10 ー性が向上する。
代表的な機械的特性として、引張り強さ、衝撃強さ、引裂き強さ、破裂強さ、突刺し強さなどの諸特性はプラスチックフィルム中でも最も強い分野に属する。
・・・490頁31行〜501頁34行15 1−1−3 ラミネートフィルム1955年ポリエチレンのエクストクルージョンコーティングが包装材料の製造方法として日本でも実用化されるようになって以来、ラミネートフィルムは包装機械、およびその周辺設備の進歩と相まって、食品工業、医薬品工業、あるいは他の諸産業分野で、その各々の包装現場が要求する機能や作業性に応じる形で多様化しつつ、改良が積み重ねられ、発展してきた。
20 高分子フィルムは気体や水や有機溶媒を比較的透過しやすく、包装材料として使用する場合には、その他にも要求される諸機能が多岐に渡るので、単体フィルムで満足されないことが多く、
2つ以上の材料を組合わせて各材料の欠点を補いつつ優れた特性を保有する集成材、ラミネートフィルムとして適用されるのが一般である。
・・・25 ラミネートフィルムの構成内容品の性状、包装作業、包装機械、包装体が実際にさらされる状況などいろいろな設計80条件に応じ、ラミネートフィルムの各素材料の基本物性はもとより、複合後のいろいろな環境下での挙動、長期に渡る実用実績、衛生性、コストパフォーマンスなど考慮しつつ、ラミネートフィルムとしての集成構成や複合加工方法が決められる。ラミネートフィルムの一般的構成は最外層に弾性率が高く、寸法安定性のよい2軸延伸フィルムやセロファン、紙など5 が適用され、中間層には酸素バリアー性のよいポリ塩化ビニリデン共重合体のフィルムやコート層、エチレンビニルアルコール共重合体、アルミニウム箔、アルミニウムやシリカの真空蒸着層などが適用される。最内層はヒートシール性や超音波シール性のあるシーラント材である。このシール層に適用される材料は多種多様で、各種のオレフィンポリマー、オレフィン共重合体、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体、ポリブタジエン、コポリ10 エステル系など広範である。・・・基材フィルムはバラツキの少ない印刷ピッチ長を保守することを要求されたり、ラミネート工程で接着剤を塗工し、80〜120℃の熱風オーブン中を表3に示した値より大きいテンションで走行するので、伸び率が小さいことが重要である。ラミネートフィルムのシーラント層に適用するフィルムについても、低伸び率で加工に供することが複合構成の品質において重要で、低伸長下での加工が可能な品質を素材料フィ15 ルムの製造工程に求めることが多い。
ラミネートフィルムのシーラント層に組み込まれるポリマーは、主としてα−オレフィン、α−オレフィン相互の共重合体、エチレンと各種ビニルモノマーとの高圧条件下でのラジカル共重合体である。
・・・20 酢酸ポレオフィンの押出しコーティングは接着剤の薄膜(いわゆるプライマー、アンカー剤で厚さ0.1〜1.0μ)をコートされた基材フィルムになされるのが一般的である。
押出しコーティングが実用化された当初から有機チタン化合物が応用されてきた。有機チタン(例えばTi−(O−C3H7)4)は、基材フィルムおよびメルトの双方に十分なる極性基が存在する場合はメルトの温度が低くても両者の間にキレート結合を形成し、接着効25 果を発揮する。
81522頁33行〜525頁5行(7) 食品包装用蒸着フィルムの使用法および具体例・・・ 現在包装蒸着用に使用されているプラスチックフィルムの代表的なものは、ポリエステル(PET)、二軸延伸ポリプロピレン(OPP)、無延伸ポリプロピレン(CPP)、二軸5 延伸ナイロン(Ny) ポリエチレン、 (PE) ヒートシーラブル二軸延伸ポリプロピレン、

Kコート二軸延伸ポリプロピレンである。他にはセロファン、紙などである。ここで表6に各種フィルムの構成例とその用途例を示す。
1) ポリエステル(PET)ポリエステルフィルムは強靭で耐熱性に優れ、適度の滑り性と透明性を有し、可塑10 剤や安定剤を含まず、含水率は少ない蒸着適性の最も優れたフィルムである。表3、
4、5からも明らかなように、蒸着フィルムは高い防湿性と酸素遮断性を示す。安定した蒸着適性と蒸着密度強度、高いバリアー性のため、菓子、お茶、粉末食品などに多く使用されている。
・・・15 5) 二軸延伸ナイロン(ONy)蒸着ナイロンフィルムは、透明性、優れた機械的強度の面で包装材に最近用いられるようになってきた。用途としてはガス充填、保香性、耐ピンホール性の要求される内容物や包装形態の分野であるが、吸湿性があるため蒸着加工、構成については注意しなければならない。
202582835101584別紙6 引用文献5の記載事項【背景技術】【0002】ポリエチレンテレフタレート(以下、PETと略記することがある。)は、機械的強度、化学5 的安定性、透明性等に優れ、かつ、安価であり、各種の繊維、シート、フィルム、容器等として世界中で最も多く使用されている合成樹脂素材のひとつである。
【0003】ところで、PETは従来、石油から得られるナフサを接触改質、熱分解して得られるキシレン、エチレンを粗原料とし、キシレン→パラキシレン→テレフタル酸、およびエチレン→エチ10 レンオキシド→エチレングリコールといった経路で得られたテレフタル酸(以下、TPAと略記することがある。
)とエチレングリコール(以下、EGと略記することがある。
)をエステル化反応後、重縮合反応させて製造されている。このように、従来のPETは、限りある貴重な化石資源である石油を原材料としたものである。さらに、従来のPETは、焼却廃棄された場合、本来化石資源中に封じ込められていた炭素が二酸化炭素となって空気中に放出されるた15 め、新たに発生する二酸化炭素により温室効果が増長されることとなり、地球温暖化の一因となっている。
【0004】これに対し、バイオマスの起源である植物は、太陽エネルギーと二酸化炭素および水から光合成により澱粉やセルロースなどの植物バイオマスを作ることができる。こういったバイオマ20 スを出発原料として活用すれば石油資源の使用量を抑制することができ、例えばバイオマス由来の炭素をPETの原料として利用すれば、これが使用後焼却処理して炭酸ガスと水に分解されたとしても、それらは再び光合成によって植物に取り込まれることになり、究極のリサイクルシステムが構築できることになる。すなわち、バイオマス原料を用いた分、温室効果ガスである二酸化炭素の新たな増加を抑制できることになる。このことは最近「カーボンニュートラ25 ル」と称されているものであり、将来の望ましい姿であるとされている。
【0005】85現在、バイオマス由来の化学物質としては、トウモロコシ、サトウキビ、サツマイモなどから得られる澱粉や糖分を微生物で発酵させて得られたバイオマスエタノールが知られている。ポリエステル原料として使用可能なバイオマス由来物質としては、バイオマスエタノールを原料としたエチレングリコールやバイオマス由来の1,3−プロパンジオール・・・などがある。
5 【0006】また、バイオマス由来物質を原料としてなるポリエステルは、化学構造的には従来の石油材料起源のポリエステルとなんら変わらないため、ポリエステルとしての優れた物性はそのまま維持されている。
【発明が解決しようとする課題】10 【0007】本発明は、石油資源の枯渇を抑制し、地球温暖化の原因物質である大気中の二酸化炭素の増加を抑制する手段として、従来のような石油系由来の原料のみからなるPETに替えて、生物産生のバイオマス素材を原料としたPETを提供しようとするものである。
【発明の効果】15 【0010】また、本発明のPETは、放射性炭素の測定によるところのバイオマス由来の炭素を10%以上含有したものであるため、PET素材としての石油資源の消費を削減できるものであり、
また、焼却廃棄にあたっても大気中への二酸化炭素の純増を、抑制することができる。
【0011】20 本発明のPETは、ポリマー物性としては従来の化石資源由来のPETに比べて何ら遜色を有するものではないため、繊維、不織布、シート、フィルムや成型物などの用途に使用することができ、自動車内装材用途においても好適に使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】【0013】25 本発明のPETとしては、放射性炭素(炭素14)測定によるところのバイオマス由来炭素を、ポリマー中の全炭素に対して10.0%以上含有していることが必要である。また、上限86としては、25.0%以下であることが好ましく、より好ましくは24.0%以下であり、さらに好ましくは23.4%以下である。
【0014】本発明のPETとしては、既述のとおり、エチレンテレフタレートを主たる繰り返し単位と5 するものであるが、例えば、エチレンテレフタレートのみからなる場合、ポリマーを構成する炭素は、テレフタル酸モノマーで8原子、エチレングリコールモノマーで2原子存在し、テレフタル酸とエチレングリコールが1:1のモル比で反応したものとなる。ここで、テレフタル酸をバイオマス原料から誘導することは、現状では技術的な確立はなされていない。したがって、バイオマス由来のPETとしては、石油由来のテレフタル酸とバイオマス由来のエチレン10 グリコールの組み合わせとなり、バイオマス由来のエチレングリコールのみを使用したPETでは、計算上バイオマス由来の炭素の含有割合は20.0%となる。また、上記エチレングリコールのうち、50モル%をバイオマス由来、残り50モル%を石油由来のエチレングリコールとした場合、得られるPET中のバイオマス由来炭素の含有割合は10%となる。或は、100%バイオマス由来のエチレングリコールからなるPETと100%化石資源由来からなる15 PETとのブレンド又は共重合体についても、バイオマス由来炭素の含有割合は10.0%となる。
【0016】したがって、本発明のPETとしては、該バイオマス由来炭素の含有割合が10%未満である場合、得られるポリエステルとしては、石油資源の使用量削減や温室効果ガスの排出抑制の20 面では効果が乏しいものとなる。また、該含有割合が25.0%を超える場合については、共重合成分が過多となるため、本来のPETの物性が損なわれる虞があり、好ましくない。
【0023】また、本発明のPETとしては、求められる物性を損なわない範囲で、酸化チタン粉末のようなダル化剤、蛍光増白剤、その他の染料、顔料、難燃化剤、紫外線吸収剤、吸湿剤、熱安定25 化剤、抗菌剤、防カビ剤、消臭剤などの配合剤を含んでいてもよい。
【0024】87次に、本発明のPETの加工法について説明する。
本発明のPETを用いて繊維を製造する場合、300℃近い高温で溶融したPETをノズル孔から押し出し、冷却した糸条を延伸し、必要に応じて切断し、あるいはそのまま巻き取って製品とする。シート、フィルムの場合も繊維製造に準じて、細長いノズル孔から溶融PETを押5 し出し、必要に応じて延伸して製品とする。
【0027】本発明におけるバイオマス由来炭素を含むPETは、従来の石油由来のPETが使用されている、いずれの用途分野においても置き換えは可能であるが、近年、積極的にバイオマス由来の素材を採用しようとしている自動車内装材に適用することがより好ましい。
10 【実施例】【0030】(実施例1)ビス(β−ヒドロキシエチル)テレフタレート及びその低重合体の存在するエステル化反応器に、テレフタル酸およびバイオマス由来エチレングリコールである、インディア グライコ15 ール社(インド)製のエチレングリコールとのモル比1/1.6のスラリーを連続的に供給し、温度250℃、圧力50hPaGの条件で反応させ、滞留時間を8時間として平均重合度7の低重合体を連続的に得た。この低重合体60kgを重合反応器に仕込み、酸成分1モルに対して、重合触媒として1.7×10−4モルの三酸化アンチモン、熱安定剤として1.5×10−4モルのリン酸トリエチルを加え、重合反応器中を減圧にして、最終的に圧力0.67hP20 a、温度280℃で、2時間溶融重合を行い、[η]0.62のPETを得た。
【0031】このPETのチップを減圧乾燥した後、通常の紡糸装置を用いて、紡糸温度を280℃、総吐出量を313g/分として溶融紡糸した。紡出糸状を冷却した後、引き取り速度1000m/分で引き取って未延伸糸状を得た。得られた糸状を集束し、11万デシテックスのトウにし25 て、延伸倍率3.3倍、延伸温度80℃で延伸し、170℃のヒートドラムで熱処理してから押し込み式クリンパーを使用して捲縮を付与した後、長さ51mmに切断して、単糸繊度3.883デシテックス、強度4.5cN/dtex、伸度38%の短繊維を得た。この短繊維のバイオマスバイオマス由来炭素の混合割合を測定したところ20.0%であった。
【0033】(実施例3)5 実施例 1 と同様にして溶融重合を行い、[η]0.62のPETを得た。
次に、重合反応器の減圧を窒素ガスで常圧に戻し、酸成分1モルに対して8.5×10−4モルのトリポリリン酸を添加し、20分間撹拌後、チップ化した。次いで、このチップを回転式固相重合装置に仕込み、1.33hPaの減圧下、温度70℃で、2時間予備乾燥を行い、引続き、温度130℃で、6時間結晶化及び乾燥を行った後、230℃に昇温し、10時間固相10 重合して、
[η]0.88のPETを得た。このPETを用い、シリンダー各部及びノズルの温度を280℃、スクリュー回転数100rpm、射出時間8秒、冷却時間10秒、金型温度20℃に設定した射出成形機(日精エーエスビー製ASB−50HT型)でプレフォームを成形した。次いで、このプレフォームを110℃の雰囲気下、ブロー圧力2MPaで延伸ブロー成形し、胴部平均肉圧300μm、内容積1Lのボトルとし、引き続いて160℃に設定した金15 型内で圧縮緊張下、10秒間ヒートセットすることで透明性の良好なボトルを得た。このボトルのバイオマスバイオマス由来炭素の混合割合を測定したところ20.0%であった。
【0035】【表1】20 【0036】89実施例1〜3及び比較例1についての樹脂特性並びに評価結果を表1に示した。
実施例1〜3については、バイオマス由来のモノマー成分としてエチレングリコールを使用し、バイオマス由来含有量が規定範囲にあり、いずれの場合も重合性や樹脂加工性の面で、従来の石油由来のPETに比べ遜色なく、良好なものであった。一方、比較例1は、バイオマス5 由来成分を含有していないため、従来の石油由来PETに該当するものであり、重合性や樹脂加工性に問題はないが、環境負荷が大きな物質である点で、本願発明の趣旨にはそぐわないものである。
90別紙7 本件各請求項の発明特定事項及び取消理由91
事実及び理由
全容