関連審決 |
不服2022-6919 |
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事件 |
令和
6年
(行ケ)
10039号
審決取消請求事件
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5 原告 中川製袋化工株式会社 同訴訟代理人弁理士 廣瀬隆行 同 関大祐 10 被告 特許庁長官 同指定代理人 神山茂樹 同 田口傑 同 田邉英治 15 同岩谷一臣 同 阿曾裕樹 |
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裁判所 | 知的財産高等裁判所 |
判決言渡日 | 2024/12/25 |
権利種別 | 特許権 |
訴訟類型 | 行政訴訟 |
主文 |
1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は、原告の負担とする。 20 事 実 及 び 理 由第1 請求特許庁が不服2022−6919号事件について令和6年3月8日にした審決を取り消す。 第2 事案の概要25 1 事案の要旨本件は、特許出願の拒絶査定に対する不服審判請求を不成立とした審決の取1消訴訟である。争点は、本件審決における進歩性についての認定判断の誤りの有無である。 2 特許庁における手続の経緯等? 原告は、発明の名称を「エンボスを有する袋」とする発明につき、令和25 年4月3日特許出願(特願2021−512339。以下「本件出願」という。なお、本願願書に添付した明細書及び図面を併せて「本願明細書」という。甲7)をしたが、令和4年2月7日付けで拒絶査定(甲12。発送日同月15日)を受けた。 ? 原告は、令和4年5月10日、拒絶査定不服審判請求(甲13。以下「本10 件審判請求」という。)をするとともに同日付け手続補正書(甲14)を提出した。 特許庁は、本件審判請求を不服2022−6919号事件として審理し、 令和5年8月30日に拒絶理由通知(甲15)を通知したことから、原告は、 これに対し、同年11月6日付け意見書(甲17)及び手続補正書(甲16。 15 以下、同手続補正書による補正を「本件補正」という。)を提出した。 特許庁は、令和6年3月8日「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決(以下「本件審決」という。)をし、その謄本は、同月26日に原告に送達された。 ? 原告は、令和6年4月24日、本件審決の取消しを求めて訴えを提起した。 20 3 特許請求の範囲の記載本件補正後の本件出願に係る特許請求の範囲の記載(請求項の数7)は、別紙「本件補正後の特許請求の範囲の記載」のとおりである(以下、これらの請求項に記載された発明を、請求項の番号を付して「本願発明1」などといい、 併せて「本願各発明」という。また、請求項中で用いられている(1)及び25 (3)の各番号は、本願明細書の図面中で用いられている番号を指す(以下同じ。)。)2このうち請求項1及び請求項7の記載は、次のとおりである(なお、請求項2から請求項6までは、請求項1の従属項である。)。 【請求項1】袋(1)であって、 5 前記袋(1)は、その一部又は全面に1つ又は連続した単位エンボス(3)を有し、 前記単位エンボス(3)は、複数の凹凸の列を含み、 前記単位エンボス(3)は、インクを用いずにロゴマークを表現したものであり、 10 前記複数の凹凸の列は、凹凸の周期が、0.1?以上1o以下のストライプ状であり、前記凹凸の高さは、0.1?以上0.1o以下である、袋。 【請求項7】1つ又は連続した単位エンボス(3)を有するフィルムであって、 前記単位エンボス(3)は、複数の凹凸の列を含み、 15 前記単位エンボス(3)は、インクを用いずにロゴマークを表現したものであり、 前記複数の凹凸の列は、凹凸の周期が、0.1?以上1o以下のストライプ状であり、前記凹凸の高さは、0.1?以上0.1o以下である、フィルム。 4 本件審決の理由の要旨20 ? 引用文献1及び引用発明拒絶理由通知(甲15)で引用され、本件出願前に頒布された文献(甲1。 特開昭63−19224号公報。以下「引用文献1」という。引用文献1の記載の抜粋は、別紙「引用文献1の記載(抜粋)」のとおりである。)には、 別紙「引用発明」記載の「引用発明1」及び「引用発明7」(以下、単に25 「引用発明1」、「引用発明7」などという。)が記載されている。 ? 本願発明1の進歩性の有無3?−1 本願発明1と引用発明1の一致点1及び相違点1(一致点1)「袋であって、 前記袋は、その表面に凹凸部位を有し、 5 前記凹凸部位は、複数の凹凸を含み、 前記凹凸部位は、インクを用いずにロゴマークを表現したものであり、 前記凹凸の高さは、1?以上である、袋」(相違点1)本願発明1の袋では、インクを用いずにロゴマークを表現したものが「単10 位エンボス(3)」であり、「袋(1)は、その一部又は全面に1つ又は連続した単位エンボス(3)を有し、前記単位エンボス(3)は、複数の凹凸の列を含み、」「前記複数の凹凸の列は、凹凸の周期が、0.1?以上1o以下のストライプ状であり、前記凹凸の高さは、0.1?以上0.1o以下である」のに対し、引用発明1の袋では、インクを用いずにロゴマークを表15 現したものが「梨地部位」であり、「手提げ袋8は、その表面に梨地部位を有し、前記梨地部位は、微少な凹凸が施され、」「前記微少な凹凸の高さは、 1?以上である」点?−2 本願発明1と引用発明1の相違点1についての判断ア 引用文献1の第3図によれば、袋の「一部又は全面」にロゴマーク等を20 表現したものとすることは、当業者が適宜なし得る設計事項である。 また、本件出願前に頒布された文献(甲2。特開昭55−158925号公報。以下「引用文献2」という。)には、別紙「引用文献2記載事項」の事項(以下「引用文献2記載事項」という。)が記載されているところ、 引用発明1と引用文献2記載事項は、フィルムに複数の凹凸によって図形25 を表現する点で技術が共通し、両者の凹凸は共に一対のローラで形成されるものであって、組合せの動機付けがあるから、引用発明1のインクを用4いずにロゴマークを表現した凹凸部位を、引用文献2記載事項の複数の波の列(ストライプ状の複数の凹凸の列)による表現をすることは当業者が容易になし得たものであり、本願発明1の「単位エンボス」は「ロゴマーク」を含むから、引用発明1に引用文献2記載事項を適用してロゴマーク5 を表現したものは、「ストライプ状」の「複数の凹凸の列」を含む「単位エンボス」ということができる。引用文献1の第3図の模様及び文字の組合せは種々の表現態様があるから、同表現は「1つ又は連続した単位エンボス」による表現といえる。 そして、引用発明1及び引用文献2記載事項の波形に係る高さ寸法は重10 複し、凹凸は共に一対のローラで形成されるから、引用発明1に引用文献2記載事項の各数値を採用することは可能であり、凹凸の上下限値をどの程度とするかは、ロゴマークの視認性向上など、数値範囲の最適化・好適化という当業者の通常の創作能力の発揮にすぎない。 イ 本願発明1の奏する作用効果は、引用発明1及び引用文献2記載事項の15 奏する作用効果から予測される範囲のものにすぎない。 ウ よって、本願発明1は、引用発明1及び引用文献2記載事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものである。 ? 本願発明7の進歩性の有無?−1 本願発明7と引用発明7の一致点2及び相違点220 (一致点2)「凹凸部位を有するフィルムであって、 前記凹凸部位は、複数の凹凸を含み、 前記凹凸部位は、インクを用いずにロゴマークを表現したものであり、 前記凹凸の高さは、1?以上である、フィルム」25 (相違点2)本願発明7のフィルムでは、インクを用いずにロゴマークを表現したもの5が「単位エンボス(3)」であり、「1つ又は連続した単位エンボス(3)を有」し、「前記単位エンボス(3)は、複数の凹凸の列を含み、」「前記複数の凹凸の列は、凹凸の周期が、0.1?以上1o以下のストライプ状であり、前記凹凸の高さは、0.1?以上0.1o以下である」のに対し、引5 用発明1のフィルムでは、インクを用いずにロゴマークを表現したものが「梨地部位」であり、「前記梨地部位は、微少な凹凸が施され、」「前記微少な凹凸の高さは、1?以上である」点?−2 本願発明7と引用発明7の相違点2についての判断ア 相違点2は、相違点1と実質的に同一であるから、同様の理由により、 10 相違点2に係る本願発明7の構成は、引用発明7及び引用文献2記載事項に基づいて当業者が容易になし得たことである。 イ 本願発明7の奏する作用効果は、引用発明7及び引用文献2記載事項の奏する作用効果から予測される範囲のものにすぎない。 ウ よって、本願発明7は、引用発明7及び引用文献2記載事項に基づいて15 当業者が容易に発明することができたものである。 ? 本願発明1及び本願発明7は、特許法29条2項により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 第3 原告の主張する審決取消事由(引用発明 1 に基づく進歩性判断の誤り)とこ20 れに対する被告の反論1 本願発明1の進歩性判断における阻害要因の有無(原告の主張)? 引用発明1において「梨地部位」は、必須の課題解決原理であり、これをストライプ状の複数の凹凸の列とすることには、阻害要因がある。 25 ? すなわち、引用発明1は、プラスチックフィルムの製造において「特別に印刷工程を設けなくとも、通常の製膜工程、製袋工程或いは製袋・充填工程6に組み込める簡易な図柄表現方法」という課題を解決するため「艶消し梨地部位と光沢ある平滑部位とのコントラストにより図柄を表すもの」であるから、引用発明1において「艶消し梨地部位」は必須の課題解決原理であり、 これをストライプ状の複数の凹凸の列とすることは、引用発明1の課題解決5 原理を没却するものである。したがって、引用発明1に引用文献2記載事項を組み合わせることには阻害要因がある。 ? ロール面等の押圧面に引用文献2のストライプ状の凹凸を形成することは、 梨地部位を形成することに比べて簡易に作成することができないから、簡易に図柄を表現しようとした当業者が引用文献2に接したとしても、引用発明10 1における梨地部位を、加工が大変なストライプ状の凹凸に替えることは容易に想到し得ず、引用文献2記載事項を採用することには阻害要因がある。 当業者は、プラスチックフィルム全体に波形を形成しようとする引用文献2記載事項を、局所的な図柄を梨地部位により表現しようとする引用発明1に採用しようとは思わないし、引用文献2のストライプ状の凹凸によって形15 成されるロゴマークと引用発明1の梨地部位は同様に見えるものでもない。 (被告の主張)? 引用発明1の梨地部位は、特別に印刷工程を設けなくても、通常の製膜工程、製袋工程又は製袋・充填工程に組み込める簡易な図柄表現方法として、ロール面等の押圧により1?以上の凹凸をフィルムに設けることによ20 り、光線が乱反射し、半透明、乳白色、艶消し状態に見える部位を設けるという技術的事項を採用したものである。一方、引用文献2のプレスロールによって50?〜0.2o程度の凹凸が形成されたプラスチックフィルムも、微小な凹凸がプラスチックフィルム表面に施されることにより光線が乱反射する。そうすると、このような1?以上の凹凸をフィルムに簡易25 に形成すべく、引用文献2における50?〜0.2o程度の凹凸をローラで形成し表現するという記載事項を引用発明1に採用することに阻害要因7はない。両者ともローラによって簡易にフィルムの表面に微小な凹凸を設けようというものであるから、引用発明1のインクを用いずにロゴマークを表現した凹凸部位を、引用文献2記載事項の複数の波の列(ストライプ状の複数の凹凸の列)による表現とした場合でも、袋のロゴマークは、引5 用発明1の梨地部位と同様に光線が乱反射して艶消し状態に見えることは明らかである。 ? 引用発明1の課題に鑑みれば、光線が乱反射し、半透明、乳白色、艶消し状態に見えるような微細な凹凸を設ければ足りることは明らかであり、引用文献2記載事項の複数の波の列によっても微小な凹凸がプラスチックフィル10 ム表面に設けられることで光線が乱反射するのであるから、「梨地」それ自体が必須の課題解決原理というものでもない。 2 本願発明1の進歩性判断における動機付けの有無(原告の主張)? 引用発明1は、梨地部位と平坦部位を組み合わせた押圧具を押し付けるこ15 とで、インクを用いずにロゴマークを表現した「梨地部位」と平坦部位を形成するのに対し、引用文献2記載事項は、並列した金属線を周回させ、密に巻いたプレスロールにより波付けを行うから、引用発明1の「梨地部位」を表現するために引用文献2記載事項を適用することはできず、組合せの動機付けはない。 20 ? すなわち、引用発明1の梨地部位は、一旦鏡面仕上げしたロール面等の押圧面を腐食処理や機械的処理により局部的に凹凸化して得られた押圧具を、 加熱軟化したフィルム面に押圧転写することで得られるのに対し、引用文献2記載事項は、プレスロールに金属線を周回させて、ぐるぐる巻きにすることにより、その表面形状をフィルムに転写するというものであって、ロゴマ25 ーク部分のみに金属線を密に並列させることを認識し得ないから、組合せの動機付けはない。 8数値も、引用文献2記載の凹凸の各数値は、金属線がプレスロールを周回し密に並列することで得られるのに対し、引用発明1は、特定のロゴマーク部分のみを「梨地部位」として表現するから、梨地部位を引用文献2記載事項の凹凸の各数値で表現する動機付けもない。 5 ? 引用文献2は、図柄を表現するものではなく、フィルム全体に波形を表現するものであるから、引用文献2記載事項を用いてフィルムを形成しても、 引用文献1の第2図の図柄を表すことはできず、組合せの動機付けはない。 (被告の主張)? 引用文献2の第9図D、Eの特定部位に凹凸を形成するには、当該部分に10 のみ金属線を密に並列させる必要はなく、引用文献2の第6図の切欠き部を有するプレスロール(54)(55)により実現される。すなわち、プレスロールに、原のままのシートとしたい箇所に対応する切欠き部を設けることにより、 当該切欠き部では、密接巻回されたピアノ線は切欠き部に入り込み、フィルムには接触しないため、必要な部位のみピアノ線をフィルムに接触させて凹15 凸を設けるという技術事項が記載されている。そして、両者ともローラによって簡易にフィルムの表面に微小な凹凸を設けようというものであるから、 引用発明1に引用文献2記載事項を組み合わせる動機付けはある。 ? 引用発明1と引用文献2記載事項は、高さの寸法が重複し、両者の凹凸がともに一対のローラで形成されることから、引用発明1に引用文献2記載事20 項の数値を採用することは可能である。 3 本願発明2から本願発明7までについて(原告の主張)本願発明7は本願発明1と同様の発明特定事項を有し、請求項2から請求項6までは請求項1を引用する。よって、本願発明2から本願発明7までは、引25 用発明1と引用文献2記載事項の組合せにより容易に発明することができたものではない。よって、本件審決の判断には誤りがある。 9(被告の主張)本願発明7は本願発明1と同様の発明特定事項を有するから、本願発明1と同様に判断される。また、特許法は、一つの特許出願に対し一つの行政処分としての特許査定又は特許審決をするから、他の請求項に係る発明について検討5 するまでもなく拒絶されるべきものとした本件審決の判断に誤りはない。 第4 当裁裁判所の判断1 当裁判所は、本件審決に判断の誤りはなく、原告の請求は理由がないものと判断する。その理由は、次のとおりである。 2 本願発明・本願補正発明について10 ? 本願明細書には、別紙「本願明細書の記載(抜粋)」(WO2020/204199A1。甲7)の記載がある。 ? 本願各発明の概要本願明細書の記載によれば、本願各発明は、エンボスを有する袋に関するものであり(段落【0001】。以下、特に断らない限り、【 】内の数字15 は本願明細書の段落番号を指す。)、記号(ロゴなど)やイラストを手提げ袋に描画することは、袋に関する情報を表現することができる一方(段落【0002】)、袋に記号やイラストを描画すると、インク等のコストがかかり、さらにはリサイクルの際に袋を構成する物質以外の物質が存在することとなって、リサイクルに適さず、また環境にやさしくないという課題があ20 る(段落【0004】)。 本願各発明は、この課題を解決するため、袋に対し、ロゴなどをエンボス加工することとしたものであり、エンボス加工であれば、袋に対し、インクを固着させる必要がないので、袋の製造コストを抑えることができ、しかもリサイクルしやすい袋を提供することができることとなる(段落【00025 5】)。本願各発明は、手提げ袋のほか、ごみ袋などの平袋を含むものであり、手提げ袋や平袋の主な素材は、樹脂(プラスチック)又は紙である。ま10た、好ましい袋は、エンボスが複数の凹凸の列を含むものであり、このような凹凸をあえて設けることで、ロゴ部分が乱反射し、視認しやすくなる。凹凸はストライプ状であってもよい(段落【0014】【0015】)。 本願各発明によれば、ロゴマークを印刷せずにエンボスにしたので、イン5 ク等を用いずに、ある記号のイメージを表示することができ、また、袋の原材料に関する情報を表記することができ、製造コストの軽減や環境にやさしい袋を提供することができる(段落【0011】)。それぞれのエンボスは、フィルム加工をする際に、エンボスの形状に応じた凹凸を有するローラを通過させることで容易に形成することができる。エンボスは、周囲の部分10 より、高くされている部位又は低くされている部位により、形成されればよい(段落【0019】)。 3 本願発明1の進歩性の有無? 本願発明1は、前記第2の3のとおり、本件補正後の本件出願に係る特許請求の範囲請求項1に記載された発明である。 15 ? 拒絶理由通知(甲15)で引用され、本件出願前に頒布された引用文献1には、別紙「引用文献1の記載(抜粋)」の記載がある。その概要は、次のとおりである。すなわち、従来技術において、プラスチックフィルムやプラスチック袋に図柄を表現する場合には、製膜、製袋工程とは別に印刷工程を設ける必要があり、また、印刷インクが保存期間中に溶出して内容物に悪影20 響を与えるおそれがあったため、プラスチックフィルムの製造において、特別に印刷工程を設けなくとも、通常の製膜工程、製袋工程或いは製袋・充填工程に組込める簡易な図柄表現方法が求められていた。引用文献1に記載された発明は、上記問題を解決するため、凹凸面と平滑面とを組合せた押圧具を使用し、プラスチックフィルムをその軟化温度で押圧具により押圧するこ25 とにより、艶消し梨地部位と光沢ある平滑部位とのコントラストにより図柄を表すものである。梨地部位とは、微少な凹凸がプラスチックフィルム表面11に施されて光線が乱反射し、半透明、乳白色、艶消し状態に見える部位をいい、具体的には、フィルムの厚さ方向及び平面方向に1?以上の凹凸があることが好ましいものである。また、押圧具としては、反対方向に同一周速で回転する一対のロール間をフィルムを加圧下に通過させる形式のものが好ま5 しい。本発明によれば、特に印刷工程を設けることなく、製袋工程、製膜工程、或いは製袋、充填工程に容易に組込める簡易な手段で必要な図柄をプラスチックフィルムに施すことができる。 これによれば、引用文献1には、別紙「引用発明」の引用発明1が記載されているものと認められ、その技術的意義は、特に印刷工程を設けることな10 く、凹凸面と平滑面とを組合せた押圧具として一対のロールを使用し、プラスチックフィルムをその軟化温度で押圧具により押圧することにより、艶消し梨地部位と光沢ある平滑部位とのコントラストによる図柄を表すというものである。 ? 本願発明1と引用発明1の対比15 本願発明1と引用発明1を比較すると、本件審決が認定したとおりの一致点及び相違点(前記第2の4?−1)があることが認められる。すなわち、 一致点は「袋であって、前記袋は、その表面に凹凸部位を有し、前記凹凸部位は、複数の凹凸を含み、前記凹凸部位は、インクを用いずにロゴマークを表現したものであり、前記凹凸の高さは、1?以上である、袋」であり、相20 違点は、次のとおりである。 (相違点1)本願発明1の袋では、インクを用いずにロゴマークを表現したものが「単位エンボス(3)」であり、「袋(1)は、その一部又は全面に1つ又は連続した単位エンボス(3)を有し、前記単位エンボス(3)は、複数の凹凸25 の列を含み、」「前記複数の凹凸の列は、凹凸の周期が、0.1?以上1o以下のストライプ状であり、前記凹凸の高さは、0.1?以上0.1o以下12である」のに対し、引用発明1の袋では、インクを用いずにロゴマークを表現したものが「梨地部位」であり、「手提げ袋8は、その表面に梨地部位を有し、前記梨地部位は、微少な凹凸が施され、」「前記微少な凹凸の高さは、 1?以上である」点5 ? 文献の記載事項本件出願前に頒布された引用文献2には、別紙「引用文献2の記載(抜粋)」の記載がある。これによれば、引用文献2には、別紙「引用文献2記載事項」記載の引用文献2記載事項が記載されているものと認められ、その技術的意義は、剛性であって、つる巻角ψをもった切欠き部及びそれに交叉10 する切欠き部を有する、又は、斑点状に多数の切り欠き部を有する円筒ロール(5c)上に金属線、例えばピアノ線(5p)を密接巻回してなるプレスロ−ルで波付けすることにより、波付けした部位と原のままのシートとによって格子状や斑点状の図柄を表すというものである。 ? 相違点1の容易想到性について15 ア 引用発明1のプラスチックフィルムを用いて製造した手提げ袋は、その表面に梨地部位を有し、梨地部位は、微少な凹凸が施され、梨地部位は、 印刷インクによる印刷工程を経ずに模様及び文字の組合せを表現したものであるところ、前記?のとおり、その技術的意義は、特に印刷工程を設けることなく、凹凸面と平滑面とを組合せた押圧具として一対のロールを使20 用し、プラスチックフィルムをその軟化温度で押圧具により押圧することにより、艶消し梨地部位と光沢ある平滑部位とのコントラストによる図柄を表すというものである。 また、引用文献2記載事項のプラスチックフィルムは、複数の波の列を用いて模様が表現されたものであり、複数の波の列は、波ピッチが50025 ?〜2o程度であり、波高さが50?〜0.2o程度であるところ、前記?のとおり、その技術的意義は、剛性であって、つる巻角ψをもった切欠13き部及びそれに交叉する切欠き部を有する、又は、斑点状に多数の切り欠き部を有する円筒ロール等の上に金属線、例えばピアノ線を密接巻回してなるプレスロ−ルで波付けすることにより、波付けした部位と原のままのシートとによって格子状や斑点状等の図柄を表すというものである。 5 そうすると、本願発明1及び引用発明1と引用文献2記載事項は、いずれもロールを使用してフィルムを押圧し加工するエンボス加工という同一の技術分野に属するものである。また、引用発明1の「梨地部位」と引用文献2記載事項の「複数の波の列」とは、いずれも印刷工程を設けることなく、フィルム表面上に微小な凹凸を形成することで模様を表現するとい10 う共通の作用、機能を有するものであって、本願発明1も、この点については同じである。したがって、本願発明1の属する分野における通常の技術知識及び技術手段を有するような当業者が、その有する通常の創作能力を発揮した場合において、引用発明1の「梨地部位」による模様の表現に替えて、引用文献2記載事項の「複数の波の列」による模様の表現を適用15 することは、容易であったというべきである。そして、本願発明1における「単位エンボス」とは、引用発明1に引用文献2記載事項を適用してロゴマークなどの模様を表現したものと解されるから、この場合において、 当該模様の表現を袋の一部又は全部に適用するかという点や、1つ又は連続した模様による表現とするかという点は、当業者が適宜なし得た設計事20 項にすぎない。 イ また、引用文献2記載事項の波の列は、波ピッチが500?〜2o程度、 波高さが、50?〜0.2o程度である一方、本願発明1の凹凸の列は、 凹凸の周期が0.1?以上1o以下、凹凸の高さが0.1?以上0.1o以下であり、両者は凹凸の周期500?〜1o、凹凸の高さ50?〜0.25 1oの範囲で重複する。そして、凹凸の周期及び高さは、数値範囲の上下限値をどの程度とするかは、模様に求められる視認性等に応じて当業者が14適宜選択し得るものである。したがって、引用発明1に引用文献2記載事項を適用するに当たり、凹凸の周期及び高さの数値範囲を本願発明1の数値範囲とすることも、当業者が必要に応じて適宜選択し得た設計事項ということができる。 5 ウ よって、相違点1に係る本願発明1の構成は、引用発明1及び引用文献2記載事項により、当業者が容易に想到し得たというべきである。 ? 原告の主張についてア 阻害要因について(ア) 原告は、引用発明1において「艶消し梨地部位」は必須の課題解決10 原理であり、これをストライプ状の複数の凹凸の列とすることは、引用発明1の課題解決原理を没却するものであるから、引用発明1に引用文献2記載事項を組み合わせることには阻害要因があるなどと主張する。 しかしながら、前記3?のとおり、引用発明1の「梨地部位」と引用文献2記載事項の「複数の波の列」は、いずれも印刷工程を設けること15 なく、フィルム表面上に微小な凹凸を形成することで模様を表現するという共通の作用、機能を有するものであるから、引用発明1の「梨地部位」による模様の表現に替えて、引用文献2記載事項の「複数の波の列」による模様の表現を適用したとしても、引用発明1における「特別に印刷工程を設けなくとも、通常の製膜工程、製袋工程或いは製袋・充填工20 程に組み込める簡易な図柄表現方法」という課題を解決し得るものといえる。 そうすると、引用発明1の「梨地部位」が必須の課題解決原理とまでいうことはできず、引用発明1に引用文献2記載事項を組み合わせることにつき、引用発明1の課題解決原理を没却するような阻害要因がある25 ということはできない。よって、原告の主張は前提を欠き、採用することはできない。 15(イ) 原告は、簡易に図柄を表現しようとした当業者が引用文献2に接したとしても、引用発明1における梨地部位を、加工が大変なストライプ状の凹凸に替え、あるいは、プラスチックフィルム全体に波形を形成しようとする引用文献2記載事項を、局所的な図柄を梨地部位により表現5 しようとする引用発明1に採用することは容易に想到し得ず、引用文献2記載事項を採用することには阻害要因があるなどと主張する。 しかしながら、引用文献2には、円筒ロールに切欠き部を設け、ピアノ線を密接巻回する場合に、円筒面の半径r 0よりも切欠き部における半径r1が小さくなる構成(引用文献2の第4図)が開示されており、 10 円筒ロール面上に密接巻回したピアノ線は、フィルムを押圧して波形を形成するが、切欠き部上に密接巻回したピアノ線は、フィルムを押圧しないため、フィルムは原のままのシートとなることから、フィルムには切欠き部を除いた円筒ロール面の形状に対応した波形が形成されるものと認められる。そして、この場合、円筒ロール面をロゴマーク等の局所15 的な模様とし、その他の部分を切欠き部としてピアノ線を密接巻回すれば、フィルムにロゴマーク等の局所的な模様に対応した波形が形成されることも、当業者が容易に想到し得るものといえる。 そうすると、当業者において、同一の技術分野に属し、共通の作用、 機能を有する引用発明1と引用文献2記載事項とを組み合わせることに20 ついて、阻害要因があるとはいえず、原告の主張を採用することはできない。 (ウ) 原告は、引用文献2のストライプ状の凹凸によって形成されるロゴマークと引用発明1の梨地部位は同様に見えるものでもないから、引用発明1と引用文献2記載事項を組み合わせることに阻害要因があるなど25 と主張する。 しかしながら、引用文献2の第9各図には「複数の波の列」であって16も視認可能な模様を表現し得ることが開示されており、引用文献2記載事項の「複数の波の列」による模様が、引用発明1の「梨地部位」の模様と同様の見え方でないとしても、前記のとおり、いずれも同一の技術分野に属し、共通の作用、機能を有するものといえる。 5 (エ) その他、本件に顕れたすべての証拠を検討しても、引用発明1と引用文献2記載事項とを組み合わせることについて阻害要因を認めることはできないから、原告の主張を採用することはできない。 イ 動機付けについて(ア) 原告は、引用文献2記載事項は、プレスロールに金属線を周回させ10 ることにより、その表面形状をフィルムに転写するというものであって、 ロゴマーク部分のみに金属線を密に並列させることを認識し得ないから、 組合せの動機付けはなく、また、数値も、引用文献2記載の凹凸の各数値は、金属線がプレスロールを周回し密に並列することで得られるのに対し、引用発明1は、特定のロゴマーク部分のみを梨地部位として表現15 するから、これを引用文献2記載事項で表現することは、当業者において容易に想到し得ないなどと主張する。 しかしながら、引用文献2記載事項において、円筒ロール面をロゴマーク等の局所的な模様とし、その他の部分を切欠き部としてピアノ線を密接巻回すれば、フィルムにロゴマーク等の局所的な模様に対応した波20 形が形成されること並びに凹凸の周期及び高さの数値範囲は模様に求められる視認性等に応じて当業者が適宜選択し得る設計事項であることはいずれも前記したとおりである。 (イ) したがって、原告の主張は前提を欠き、本願発明1の属する分野における通常の技術知識及び技術手段を有する当業者が、その有する通常25 の創作能力を発揮した場合に引用発明1及び引用文献2記載事項により相違点1に係る本願発明1の構成に容易に想到し得た旨の前記当裁判所17の認定及び判断を覆すに足りるものではない。 4 本願発明7の進歩性の有無なお、念のため、本願発明7の進歩性の有無についても判断する。 ? 本願発明7は、前記第2の3のとおり、本件補正後の本件出願に係る特許5 請求の範囲請求項7に記載された発明である。 ? 拒絶理由通知(甲15)で引用され、本件出願前に頒布された引用文献1には、別紙「引用文献1の記載(抜粋)」の記載があり、これによれば、引用文献1には、別紙「引用発明」の引用発明7が記載されているものと認められる。 10 ? 本願発明7と引用発明7の対比本願発明7と引用発明7を比較すると、本件審決が認定したとおりの一致点及び相違点(前記第2の4?−1)があることが認められる。すなわち、 一致点は「凹凸部位を有するフィルムであって、前記凹凸部位は、複数の凹凸を含み、前記凹凸部位は、インクを用いずにロゴマークを表現したもので15 あり、前記凹凸の高さは、1?以上である、フィルム」であり、相違点は、 次のとおりである。 (相違点2)本願発明7のフィルムでは、インクを用いずにロゴマークを表現したものが「単位エンボス(3)」であり、「1つ又は連続した単位エンボス(3)20 を有」し、「前記単位エンボス(3)は、複数の凹凸の列を含み、」「前記複数の凹凸の列は、凹凸の周期が、0.1?以上1o以下のストライプ状であり、前記凹凸の高さは、0.1?以上0.1o以下である」のに対し、引用発明1のフィルムでは、インクを用いずにロゴマークを表現したものが「梨地部位」であり、「前記梨地部位は、微少な凹凸が施され、」「前記微25 少な凹凸の高さは、1?以上である」点? 本願発明7と引用発明7の相違点2についての判断18相違点2は、相違点1と実質的に同一であるから、相違点1と同様の理由により、相違点2に係る本願発明7の構成は、引用発明1及び引用文献2記載事項に基づいて当業者が容易になし得たというべきである。 5 小括5 以上によれば、本願発明1及び本願発明7は、引用発明1及び引用文献2記載事項に基づき当業者が容易に発明できたものであるから、その余の点について判断するまでもなく、拒絶査定不服審判の請求を不成立とした本件審決の判断に誤りはない。 第5 結論10 よって、原告の請求は理由がないから、これを棄却することとして、主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第2部15裁判長裁判官20 清 水 響裁判官25 菊 池 絵 理19裁判官5 頼 晋 一20(別紙)本件補正後の特許請求の範囲の記載【請求項1】袋(1)であって、 5 前記袋(1)は、その一部又は全面に1つ又は連続した単位エンボス(3)を有し、 前記単位エンボス(3)は、複数の凹凸の列を含み、 前記単位エンボス(3)は、インクを用いずにロゴマークを表現したものであり、 前記複数の凹凸の列は、凹凸の周期が、0.1?以上1o以下のストライプ状であり、 前記凹凸の高さは、0.1?以上0.1o以下である、袋10 【請求項2】請求項1に記載の袋であって、 前記複数の凹凸の列は、凹凸の周期が、1?以上0.1o以下のストライプ状であり、 前記凹凸の高さは、1?以上10?以下であり、 プラスチック製である袋15 【請求項3】請求項1に記載の袋であって、 前記袋(1)は、その一部に、1つの単位エンボス(3)を有する、 袋【請求項4】20 請求項1に記載の袋であって、 前記ロゴマークは、日本有機資源協会によるバイオマスマーク、又は日本バイオプラスチック協会によるバイオマスプラのシンボルマークの形状を有する、袋【請求項5】請求項1に記載の袋であって、生分解性プラスチックからなる袋25 【請求項6】請求項1に記載の袋であって、 前記袋(1)は、その一部又は全面に、複数種類のロゴマークを表現した複数種類の単位エンボス(3)が連続したエンボスを有する、 袋30 【請求項7】1つ又は連続した単位エンボス(3)を有するフィルムであって、 前記単位エンボス(3)は、複数の凹凸の列を含み、 前記単位エンボス(3)は、インクを用いずにロゴマークを表現したものであり、 前記複数の凹凸の列は、凹凸の周期が、0.1?以上1o以下のストライプ状であり、 35 前記凹凸の高さは、0.1?以上0.1o以下である、フィルム以上4021(別紙)引 用 発 明【引用発明1】プラスチックフィルム5を用いて製造した手提げ袋8であって、 5 前記手提げ袋8は、その表面に梨地部位を有し、 前記梨地部位は、微少な凹凸が施され、 前記梨地部位は、印刷インクによる印刷工程を経ずに模様6及び文字の組合せ6’を表現したものであり、 前記微少な凹凸の高さは、1?以上である、手提げ袋810【引用発明7】梨地部位を有するプラスチックフィルム5であって、 前記梨地部位は、微少な凹凸が施され、 前記梨地部位は、印刷インクによる印刷工程を経ずに模様6及び文字の組合せ6’を表15 現したものであり、 前記微少な凹凸の高さは、1?以上である、プラスチックフィルム5以上2022(別紙)引用文献2記載事項プラスチックフィルムは、複数の波の列を用いて模様が表現されたものであり、 前記複数の波の列は、波ピッチが、500?〜2o程度であり、前記波高さが、50?〜5 0.2o程度である、プラスチックフィルム以上23(別紙)本願明細書の記載(抜粋)【技術分野】【0001】5 この発明は、エンボスを有する袋に関する。 【背景技術】【0002】例えば、特開2003−144216号公報には、手提げ袋が記載され、その段落[0014]には、記号やイラストを描画することが記載されている。記号(ロゴなど)やイ10 ラストを手提げ袋に描画することは、記号の持つ意味を表示でき、手提げ袋の美観を向上させ、袋に関する情報を表現することができる。 【発明の概要】【発明が解決しようとする課題】【0004】15 一方、袋に記号やイラストを描画すると、インク等のコストがかかり、さらにはリサイクルの際に袋を構成する物質以外の物質が存在することとなるため、リサイクルに適さず、また環境にやさしくない。 【課題を解決するための手段】【0005】20 上記の課題を解決するため、この発明は、袋に対し、ロゴなどをエンボス加工することとした。エンボス加工であれば、袋に対し、インクを固着させる必要がないので、袋の製造コストを抑えることができ、しかもリサイクルしやすい袋を提供できることとなる。つまり、この発明は、表示したいロゴマークなどを、インクで描くのではなく、エンボスにて形成した袋に関する。 25 【0006】この発明は、袋1に関する。袋1は、その一部又は全面に1つ又は連続したエンボス3を有する。そして、1つ又は連続したエンボスを構成する単位エンボスは、ロゴマークを含む。この発明の特徴のひとつは、ロゴマークにより、インクの代わりに袋の原材料情報や特長を表記することができる袋である点である。 30 【0007】好ましい袋1は、連続したエンボスが、袋の全面に存在するものである。 【0008】ロゴマークの例は、日本有機資源協会によるバイオマスマーク、又は日本バイオプラスチック協会によるバイオマスプラのシンボルマークの形状を有するものである。 35 【0009】好ましい袋1は、生分解性プラスチックからなる袋である。好ましい袋は、エンボス3が複数の凹凸の列を含むものである。 【0010】この明細書に記載されるある発明は、上記の袋を得るためのフィルムに関する。このフ40 ィルムは、1つ又は連続したエンボス3を有するフィルムであって、1つ又は連続したエ24ンボスを構成する単位エンボスは、ロゴマークを含む。 【発明の効果】【0011】この発明によれば、ロゴマークを印刷せずにエンボスにしたので、インク等を用いずに、 5 ある記号のイメージを表示できる。また、袋の原材料に関する情報を表記でき、製造コストの軽減や環境にやさしい袋を提供できる。 【図面の簡単な説明】【0012】【図1】 図1は、エンボスを有する袋を説明するための概念図である。 10 【図2】 図2は、複数の連続したエンボスを有する袋を説明するための概念図である。 【図3】 図3は、複数種類のロゴマークの形状を有するエンボスを有する袋を説明するための概念図である。 【図4】 図4は、全面にエンボスを設けた袋の設計図の例である。 【発明を実施するための形態】15 【0013】以下、図面を用いて本発明を実施するための形態について説明する。本発明は、以下に説明する形態に限定されるものではなく、以下の形態から当業者が自明な範囲で適宜修正したものも含む。 【0014】20 図1は、エンボスを有する袋を説明するための概念図である。図2は、複数の連続したエンボスを有する袋を説明するための概念図である。この発明は、袋1に関する。袋の例は手提げ袋である。もっとも、本発明は、手提げ袋に限定されず、ごみ袋、規格袋、キッチン袋などの平袋も含む。手提げ袋は、手提袋、手携袋、レジ袋、ファッション袋及び取っ手が紐状となっているループ袋などともよばれる。手提げ袋や平袋の主な素材が樹脂25 (プラスチック)又は紙である。手提げ袋は、本体部に荷物を収容し、把持部を把持することで、荷物を持ち運ぶことができるものである。特に好ましい袋は、プラスチック製(例えば、ポリエチレン製、ポリプロピレン製、PET製、ナイロン製、生分解性プラスチック製)のである。袋自体は、公知であるから公知の方法により製造できる。 【0015】30 袋の素材の例は、生分解性プラスチックである。生分解性プラスチックは公知である。 生分解性プラスチックの例は、ポリ乳酸、でんぷん、セルロース、PVA、PHBH、PBS又はポリカプロラクタンを主成分とするものである。好ましい袋は、エンボス3が複数の凹凸の列を含むものである。このような凹凸をあえて設けることで、ロゴ部分が乱反射し、視認しやすくなる。凹凸の例は、矩形状のものであってもよいし、複数の山部と谷35 部とを有するものであってもよい。凹凸はストライプ状であってもよい。凹凸がストライプ状の場合、凹凸の周期の例は、0.1?以上1o以下であり、1?以上0.1o以下であってもよい。凹凸の高さの例は、0.1?以上0.1o以下であり、1?以上10?以下であってもよい。 【0016】25図1及び図2に示されるように、袋1は、その一部又は全面に1つ又は連続したエンボス3を有する。そして、1つ又は連続したエンボスを構成する単位エンボスは、ロゴマークを含む、ロゴマークは、特定の記号であったり、イラストを意味する。ロゴマークの例は、日本有機資源協会によるバイオマスマーク、又は日本バイオプラスチック協会による5 バイオマスプラのシンボルマークの形状である。ロゴマークの別の例は、企業のハウスマークである。また、何か訴えたいメッセージがある場合、それをロゴマークとして、エンボスを形成してもよい。いずれにせよ、インクを用いず、エンボスにて表現することで、 環境にやさしく、リサイクルもしやすい袋を製造できる。また、袋には、上記のバイオマスマークやバイオマスプラのシンボルマークのように、使用原料を示す記号を表示するこ10 とがある。この発明では、そのような使用原料を示すものを印刷ではなく、エンボスにて表現できる。先に説明した通り、この発明の特徴のひとつは、ロゴマークにより、インクの代わりに袋の原材料情報や特長を表記することができる袋である点である。 【0018】図3は、複数種類のロゴマークの形状を有するエンボスを有する袋を説明するための概15 念図である。図3の例では、バイオマスマーク3a、バイオマスプラマーク3b、グリーンプラマーク3c、エコマーク3d及びプラスチック製容器包装識別マーク3eの形状を有するエンボスが形成されている。 【0019】それぞれのエンボスは、フィルム加工をする際に、エンボスの形状に対応した凹凸を有20 するローラを通過させることで容易に形成することができる。エンボスは、周囲の部分より、高くされている部位又は低くされている部位により、形成されればよい。エンボスは周囲の部分より、0.01o以上2o高いか又は低いことにより形成されてもよいし、0.1o以上1o以下高いか又は低いことにより形成されてもよい。 図1 図2 図3 図4253035 以上26(別紙)引用文献1の記載(抜粋)2.特許請求の範囲(1)微小な凹凸を有する梨地加工部位と平滑部位とにより表現された図柄が、表面に施5 されている梨地図柄付フィルムであって、該フィルムが単層で構成されているか又は積層体である梨地図柄付プラスチックフィルム。 (2)微小な凹凸を有する梨地加工部位と平滑部位とにより表現された図柄が、表面に施されている梨地図柄付フィルムであって、該フィルムが単層で構成されているか又は積層体である梨地図柄付プラスチックフィルムの端部を融着してなる梨地図柄付プラスチック10 袋。……3.発明の詳細な説明〔産業上の利用分野〕本発明は表面に微小な凹凸を施した艶消しの梨地部位と、平滑光沢部位とにより図柄を表現し、煩雑な印刷工程を排除して商店名、商品名などを表現したプラスチックフィルム、 15 袋及びその製法に関する。このプラスチックフィルム及び袋は、商店のサービス用手提げ袋、食品、医薬品、医療器具、雑貨等各種物品の包装、保護等に使用され、印刷工程を排除して図柄付プラスチックフィルム及び袋を製造することができる。 〔従来の技術〕駄菓子、青果などの食品、医薬品、医療器具、雑貨等の各種プラスチック製包装袋には、 20 商品名、商標図柄、製造業者名、販売業者名等を直接記入することが望ましい。又、食品や日用雑貨品を購入した場合に商店がサービスとして提供するプラスチック製手提げ袋に商店名を印刷することは営業上の効果が大きい。 〔発明が解決しようとする問題点〕しかしながら、プラスチックフィルムやプラスチック袋に図柄を表現する場合には、製25 膜、製袋工程とは別に印刷工程を設ける必要があり、印刷工程は製膜、製袋工程とは本質的に別種の工程であるため、装置、工程共に煩雑であるため必然的に高価になり、小規模業者の場合には印刷工程を省略しなければならないことがあった。また、印刷インクが保存期間中に溶出して内容物に悪影響を与えるおそれがあった。 そこで、プラスチックフィルムの製造において、特別に印刷工程を設けなくとも、通常30 の製膜工程、製袋工程或いは製袋・充填工程に組込める簡易な図柄表現方法が求められていた。 〔問題解決の手段〕本発明は上記問題を解決するため、プラスチックフィルムを、その軟化温度において表面に微細な凹凸面を設けた押圧具で押圧することにより、艶消し状の梨地が得られること、 35 及びこの梨地は該プラスチックフィルムの軟化温度において、平滑面で押圧すれば容易に光沢ある平滑面になることを利用して、凹凸面と平滑面とを組合せた押圧具を使用し、プラスチックフィルムをその軟化温度で押圧具により押圧することにより、艶消し梨地部位と光沢ある平滑部位とのコントラストにより図柄を表すものである。 本発明におけるプラスチックフィルムとしては、ポリエチレン系、ポリプロピレン系、ポ40 リエステル、ナイロン等特に限定はなく、比較的低温度で軟化し、凹凸面で押圧すること27により凹凸面が容易に転写されるものであれば使用できる。 ……また、フィルムは全体として透明なものも、着色したものも使用できる。……本発明に係る梨地部位とは、微少な凹凸がプラスチックフィルム表面に施されて光線が乱反射し、半透明、乳白色、艶消し状態に見える部位をいい、具体的には、フィルムの厚5 さ方向及び平面方向に1?以上の凹凸があることが好ましい。このような梨地部位は、一旦鏡面仕上げしたロール面等の押圧面を腐食処理や機械的処理により局部的に凹凸化して得られた押圧具を、加熱軟化したフィルム面に押圧、転写することにより得られる。 また、全面に梨地加工を施したフィルムを用いる方法もある。このフィルムを製袋したり、使用したりするに際し、希望する図柄を平滑面として突出させた押圧具を、軟化温度10 に加熱したフィルムに押圧させることによりフィルムの一部を平滑化し、希望する図柄を表す方法もある。 押圧具としては、反対方向に同一周速で回転する一対のロール間をフィルムを加圧下に通過させる形式のものが好ましい。この場合、一方のロールには梨地面と平滑面とによる図柄が表現されていることを要する。……15 〔作用〕本発明は、プラスチックフィルム面を、局部的に微小な凹凸面に加工して梨地艶消し化し、残余の部分に平滑な鏡面を押圧することにより得られた、艶消し部位と光沢部位とのコントラストにより図柄を表現するものである。このような図柄は、凹凸面と平滑面とを希望する図柄で表現した押圧具をプラスチックフィルムの軟化温度でプラスチックフィル20 ムに押圧するか、或いは全面を梨地加工したフィルムを、希望する図柄の平滑面を突出させた押圧具で押圧して透明化することにより得られる。 〔実施例〕第1図は本発明の1実施例の製造工程を示す説明図である。1、2は一対の回転ロールであり、1は全面平滑面であり、2は局部的に凹凸面3を有する150℃に加熱した加工25 ロールであり、互いに反対方向に同一周速度で回転している。4は加工ロール2の平滑面である。5はプラスチックフィルムであり、本実施例においては、淡青色に着色した低密度ポリエチレンフィルムと無色透明なポリエステルフィルムとの積層品を用い、低密度ポリエチレン層を加工ロール2で押圧した。6は凹凸面3によりフィルム4に設けられた梨地部位であり、7は平滑部位を示す。第2図は加工ロール2の展開図である。3は図形を30 表す梨地部位であり、3′は文字を表す梨地部位である。……第3図は、このようにして得たフィルムを用いて製造した手提げ袋8を示す。実線で表現した文字部分6´、模様部分6共に梨地部位である。9は手提げ袋の融着部である。 本実施例によれば、一対のロールを一回通過させるのみでプラスチックフィルムに梨地図柄を表現することができた。梨地部位と平滑部位との間に充分なコントラストがあるた35 め、図柄は充分に識別することができた。……〔効果〕本発明によれば、特に印刷工程を設けることなく、製袋工程、製膜工程、或いは製袋、 充填工程に容易に組込める簡易な手段で必要な図柄をプラスチックフィルムに施すことができる。 40 4.図面の簡単な説明28図面は本発明の実施例を示し、第1図……は本発明フィルムの加工方法を示す説明図、 第2図は加工ロールの展開図、第3図……は本発明フィルムを用いて製造した袋である。 図面中、符号1は回転ロール、2は加工ロール、3は凹凸面、4は平滑面、5はプラスチックフィルム、 5 6は梨地部位、7は平滑部位、8は手提げ袋、9は融着部である。 1015202530以上29(別紙)引用文献2の記載(抜粋)1.発明の名称 波形成形方法3.発明の詳細な説明5 本発明の一つの目的はプラスチツクフイルムの波形成形を簡易な装置を用いて高い精度の加工を行なうにある。…………本発明の更に他の目的は後記の詳細な説明の記載により遂次明らかとなるであろう。 硬質でその表面が平滑な金属線、例えばその代表的なものとして挙げうるピアノ線を平滑なプレスロール面上に巻回して形成される山谷が噛合つて回転可能である構成とは、周10 知のように1対のプレスロ−ルの表面速度が等しく、互に逆向きに回転駆動されるから、 上記ピアノ線の巻回は互に反対勝手のねじ山状になるように巻回する構成であることをいう。…………このように加工される前のフイルムは平坦で厚さ200〜20ミクロン(通常は前記したような目的には100〜25ミクロンていど)のものを上記条件下で成形せしめる15 ことにより成形後の波ピッチが0.5〜2ミリメートルていどのもので波高さが50ミクロン〜200ミクロン(相対誤差±数パーセント以下)ていどのものが得られた。 第1図に随って本発明方法の一実施態様を説明する。 (1)はフイルム、(2)は本波フイルムである。 フイルム(1)は1対のドラグロール(3 A 、 B)を通り巾出しロール(4)により巾方20 向の前記張力を与えられる。 ついで1対のピンチロール(3 C、 D)により平面を保たれ1対のプレスロール(5 A、 B)で波付けされる。 1対のプルロール(6 A、B)と、前記1対のドラグロール(3 A、B)間で前記長さ方向にフイルム張力が与えられる。 25 上記1対のプレスロール(5 A、B )直後に冷却装置(7 A、B)が配されて本波フイルム(2)の波形が固定される。……特許請求の範囲第4項記載の剛性であって切欠き部(5 J )を有する円筒ロール(5 c)上に金属線、例えばピアノ線(5 p)を密接巻回してなるプレスロ−ルの例について説明する。 30 第4図に示すように円筒ロール面上に切欠き部(5 J)を、上記円筒面の半径r 0、上記切欠き部(5 J )における半径r I 、ピアノ線(5 p )の半径を(1/2)dpとすれば、 (r0-rI)≧dp/2……(1)、式(1)を満足するように上記円筒ロール面(5 c)に設ける。……このようなプレスロールを符号(52)で示す。該切欠き部(5 J)は第5図に示すように円筒ロール(5 c)の中心線(CL)に平行かつ並列に設けることがで35 きる。このようにしてプレスロール(52)は作られる。また、第6図に示すようにつる巻角ψをもって並列的に設けることができる。……また第6図から極めて容易に、図中の点線表示を実線表示に変更したような、即わちつる巻角ψをもつた切欠き部(5 J)?5 J?に交叉する切欠き部(5 j )?5 j?…(図示せず)を更に設けることもでき、このようなブレスロールを(54)で示す。また斑点状40 に上記円筒ロール(5 c)面上に多数の切り欠き部(5 j)?5 j?…(ロール縦断面図上30では凹面となる)、を設けることもでき、このようなプレスロールを符号(55)で示すこととする。(図示せず。)……第9各図に各種の本波フイルムを示す。図中太線は谷(v)を細線は山(m)を白地は原のままのシート(s)を示す。第9(A)図に示す本波フイルム(21)はプレスロー5 ル(51)を、第9(B)図に示す本波フイルム(22)はプレスロール(52)を、第9(C)図示の本波フイルム(23)はプレスロール(53)を、第9(D)図示本波フイルム(24)はプレスロール(54)を、第9(E)図示本波フイルム(25)はプレスロール(55)を、それぞれ用いて得られる態様の例を示す。……4.図面の簡単な説明10 第1図は本発明の一実施例を示す側面要部略図……第5図はプレスロール(52)をうるための円筒ロール(5 c)正面略図、第6図はプレスロール(53)用円筒ロール(5c )正面略図、……第9(A〜E)図は本波フイルム(21〜25)の各種態様を示す部分正面図である。 15202530以上31 |
事実及び理由 | |
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全容
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