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事件 令和 6年 (ネ) 10050号 発信者情報開示請求控訴事件
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裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2024/10/21
権利種別 著作権
訴訟類型 民事訴訟
判例全文
判例全文
令和6年10月21日判決言渡

令和6年(ネ)第10050号 発信者情報開示請求控訴事件

(原審 東京地方裁判所令和5年(ワ)第70071号)

口頭弁論終結日 令和6年9月9日

5 判 決



控 訴 人 有限会社プレステージ



同訴訟代理人弁護士 角 地 山 宗 行

10


被 控 訴 人 エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ

株式会社



同訴訟代理人弁護士 松 田 真

15 主 文

1 本件控訴を棄却する。

2 控訴費用は、控訴人の負担とする。

事 実 及 び 理 由

(本判決で用いる略語は、別に定めるほか、原判決の定めるものによる。)

20 第1 控訴の趣旨

1 原判決を取り消す。

2 被控訴人は、控訴人に対し、原判決別紙発信者情報目録記載(本件発信者情

報)の各情報を開示せよ。

第2 事案の概要

25 1 事案の要旨

? 本件は、原判決別紙著作物目録記載の動画(本件動画)の著作権を有す

1
る控訴人(1審原告。以下「原告」という。)が、電気通信事業者である被

控訴人(1審被告)に対し、氏名不詳の発信者(本件発信者ら)において、

ファイル交換ソフトウェアであるビットトレントを利用し、本件動画を複製

して作成された動画ファイルを複製及び送信可能化したことにより、本件動

5 画に係る原告の著作権(複製権、公衆送信権)を侵害したことが明らかであ

ると主張して、特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情

報の開示に関する法律(プロバイダ責任制限法)5条1項に基づき、本件発

信者情報の開示を求める事案である。

? 原審は、本件発信者らが、本件動画を複製した動画ファイルのピースを

10 自己の端末にダウンロードして複製した上で、これをアップロード(送信

可能化)したと認めることはできないから、原告の本件動画に係る複製権、

公衆送信権が侵害されたことが明らかであるとは認められないとして、原

告の請求を棄却した。

これに対し、原告が、原判決を不服として控訴した。

15 2 前提事実、争点及び争点に関する当事者の主張は、当審における原告の補充

的主張を後記3のとおり付加するほかは、原判決の「事実及び理由」中、第2

の2から4まで(原判決1頁21行目から6頁10行目まで)に記載のとおり

であるから、これを引用する。

3 当審における原告の補充的主張(争点1(権利侵害の明白性)について)

20 本件調査において使用された本件ソフトウェアは,ビットトレントネットワ

ークにおいてハッシュ値により本件動画と同内容であることが特定された動

画ファイルをダウンロードすべく,ビットトレントネットワークに接続し、

本件発信者らとの間で PIECE(subpiece)通信まで行っている。

したがって、本件調査において本件発信者らからダウンロードしたピースは

25 再生不能であるものの,本件発信者らがアップロードしていたのは,本件動

画を複製した動画ファイルのピースであるから、原判決の判断は誤っている。

2
第3 当裁判所の判断

1 当裁判所も、原告の請求は理由がないと判断する。その理由は、次のとおり

当審における原告の補充的主張に対する判断を示すほか、原判決の「事実及び

理由」中、第3(原判決6頁11行目から7頁10行目まで)に記載のとおり

5 であるから、これを引用する。

2 原告は、本件調査においては、ハッシュ値により本件動画の複製物である動

画ファイルが特定されており、本件発信者らから同ファイルのピースをダウン

ロードする直前の通信である PIECE(subpiece)通信まで行っているから、本

件発信者らによる複製権及び公衆送信権の侵害は明らかである旨主張する。

10 しかし、前記引用した原判決の前提事実のとおり、本件調査においては、本

件発信者らとの間で PIECE(subpiece)通信が行われ、動画ファイルのピース

をダウンロードするとともに、同通信開始時点のタイムスタンプや保有するピ

ースの数等がデータベースに記録されるところ、このダウンロードされた各動

画ファイルのピースは、原告において再生することができなかったというので

15 ある。

そうすると、PIECE(subpiece)通信を経て本件発信者らからダウンロード

した動画ファイルのピースが本件動画の複製物であることについては疑義があ

り、ダウンロード元である本件発信者らの端末において、本件動画の複製物が

複製されて保管され、送信可能化されていたか否かについても疑義が残ること

20 になるから、原告提出の各証拠(甲1から14まで)をすべて考慮しても、本

件については、プロバイダ責任制限法5条 1 項1号の「権利が侵害されたこと

が明らかである」との要件を充足する事実を認めるに足りない。

第4 結論

よって、原判決は相当であり、本件控訴は理由がないから棄却することとし

25 て、主文のとおり判決する。

知的財産高等裁判所第2部

3
裁判長裁判官

5 清 水 響




裁判官

10 菊 池 絵 理




裁判官

15 頼 晋 一




4