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追加

関連審決 不服2022-11554
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事件 令和 5年 (行ケ) 10110号 審決取消請求事件
5
原告 ケアストリーム・デンタル・テク ノロジー・トプコ・リミテッド 10 同訴訟代理人弁理士 高岡亮一 小田直 岩堀明代 高橋香元 15 被告特許庁長官
同 指定代理人石井哲 松本隆彦 後藤亮治 渡邉純也 20 冨澤武志
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2024/06/27
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
主文 1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
3 この判決に対する上告及び上告受理申立てのための25 付加期間を30日と定める。
事実及び理由
請求
特許庁が不服2022-11554号事件について令和5年5月15日にした 審決を取り消す。
事案の概要
5 1 特許庁における手続の経緯等 (1) 原告は、名称を「カラーテクスチャを伴う口腔内OCT」とする発明につい て平成29年(2017年)6月29日を国際出願日とする特許出願(特願201 9-572468、以下「本願」という。甲2)をした。
(2) 原告は、本願につき、令和4年3月17日付け拒絶査定を受けたので、同年10 7月26日、拒絶査定不服審判(不服2022-11554)を請求した(甲4)。
(3) 特許庁は、令和5年5月15日、「本件審判の請求は、成り立たない。」とす る審決(以下「本件審決」という。)をし、その謄本は、同年6月6日、原告に送達 された(出訴期間90日付加)。
(4) 原告は、同年10月3日、本件審決の取消しを求めて本件訴えを提起した。
15 2 特許請求の範囲の記載 本願に係る特許請求の範囲は、令和3年11月16日に手続補正された請求項1 〜22からなり、その請求項15の記載は、次のとおりである(甲3。以下、本願 の請求項15に係る発明を「本願発明」 下記のとおり本願発明にA〜Fの記号を付 、
して分説された各構成要件のうちDに係る構成要件を「構成要件D」という。また、
20 本願に係る明細書及び図面を併せて「本願明細書」という。 。
) 【請求項15】 A 画像データを取得するための方法であって、
B 口腔内表面サンプルに関して、光コヒーレンス断層撮影(OCT)データを 取得することと、
25 C 前記口腔内表面サンプルからカラー反射率画像コンテンツを取得すること と、
2 D 登録を通じてまたは登録を通じずに前記カラー反射率画像とOCTデータ コンテンツとを結合することと、
E 結合されたカラー反射率画像およびOCTデータコンテンツをディスプレ イ上に描画することと、
5 F を備える、方法。
3 本件審決の理由 (1) 理由の要旨 本件審決の理由の要旨は、本願発明は、その国際出願日前に頒布された甲1(米 国特許出願公開第2008/0062429号明細書)に記載された発明(以下「引10 用発明」という。)から当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法 29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
(2) 引用発明の認定 甲1には、
「プローブ位置決めステップ170において、オペレータは、撮像されるべき歯15 に対してプローブを位置決めし、
領域撮像ステップ180において、プローブが位置決めされると、オペレータは 領域画像の取得を開始し、1以上の領域画像が生成されて、白色光画像124、蛍 光画像120及び合成画像134が、領域画像としてディスプレイの画面上に表示 され、
20 関心領域の識別ステップ185が実行され、
マーカ位置決めステップ190において、ライブウィンドウ126上に表示され た領域画像である白色光画像124に十字線152が提示され、十字線152は領 域画像上の光軸の位置を示し、十字線152に対して位置決めされるマーカ146 が設けられ、マーカ146は走査範囲やラインスキャンの方向を特定し、また、オ25 ペレータによって再配置することができ、
OCT領域特定ステップ200では、オペレータは、ラインスキャン又はエリア 3 スキャンのどちらが所望されるかどうか、同様に、方向、スキャン開始位置、スキャ ン内のポイント数、及び領域にわたるスキャンの合計回数を指定し、
ステップ210でOCTスキャンが取得され、OCT画面は、それらが生成され る順序で、蛍光画像120、白色光画像124及び合成画像134とともに表示画 5 面上に表示され、OCT画像の画像データ、及び、領域画像のうちのいずれかは、
コンピュータシステムで見られるもののような適切な記憶装置に記憶し、
記憶されたデータに基づいて、OCT画像データを有意義な方法でオペレータに 表示するために、合成画像134上に配置されたマーカ146中に、歯に登録され OCT技術を用いてスキャンされたスキャンラインを示す指標線158が置かれ、
10 指標線158に対応するOCTスキャン画像144も表示し、オペレータは、指標 線158を再配置して、個々のOCTスキャンラインをシーケンスすることができ、
OCTスキャン画像144は、指標線158の位置に応じて変化する、方法。」の発 明(引用発明)が記載されていると認められる。
(3) 本願発明と引用発明との対比15 本願発明と引用発明を対比すると、引用発明の「白色光画像124」と「OCT スキャン」は、
「マーカ146」の位置を介して互いの位置関係が対応付けられてい るといえ、そのことは、本願発明の「結合する」ことに相当する。
本願発明の構成要件Dの「登録を通じてまたは登録を通じずに」は、
「登録を通じ て」と「登録を通じずに」のいずれかであることを特定するものであると解される20 が、
「登録を通じる」場合と「登録を通じない」場合の二つの場合以外の「場合」が 存在するとは考えられないことから、
「登録を通じてまたは登録を通じずに」との特 定事項の有無により、本願発明の特定事項は実質的に何も変わらないものといえる。
(4) 一致点及び相違点の認定 本願発明と引用発明は、次の一致点と相違点を有する。
25 (一致点) 「画像データを取得するための方法であって、口腔内表面サンプルに関して、光 4 コヒーレンス断層撮影(OCT)データを取得することと、前記口腔内表面サンプ ルから反射率画像コンテンツを取得することと、登録を通じてまたは登録を通じず に前記反射率画像とOCTデータコンテンツとを結合することと、結合された反射 率画像およびOCTデータコンテンツをディスプレイ上に描画することと、を備え 5 る、方法。」である点。
(相違点) 反射率画像が、本願発明においては、
「カラー反射率画像」であるのに対し、引用 発明においては、「白色光画像124」であるものの、「カラー」画像であることは 特定されていない点。
10 (5) 容易想到性の判断 引用発明は、
「染色された領域」や「アマルガム」処置された領域を区別して認識 するものであるところ、そのために、色の情報が有効であることは、本願出願時に おける技術常識である。そして、物体表面からカラー反射率画像コンテンツを取得 することは、通常のカラー撮像装置にみられるように周知の技術である。
15 そうすると、引用発明の「白色光画像124」をカラー反射率画像とすることは、
当業者であれば容易になし得ることである。
当事者の主張
1 取消事由1(本願発明及び引用発明の認定誤り) (1) 原告の主張20 ア 本願発明の認定について 本件審決は、本願発明の「登録を通じてまたは登録を通じずに」との特定事項の 有無により、本願発明の特定事項は実質的に何も変わらないと認定している。しか し、そのような認定は「前記カラー反射率画像とOCTデータコンテンツとを結合 すること」を明細書よりも拡張して解釈しているものであり、失当である。
25 本願発明の「結合すること」とは、
「2Dカラー画像」と「3D OCTボリュー ム」を「マッピング」する程度の意味を有するものであって、
「結合すること」をそ 5 のように認定しなかった本件審決には誤りがある。
引用発明の認定について 本願発明は、「登録を通じてまたは登録を通じずに前記カラー反射率画像とOC Tデータコンテンツとを結合することと」の構成を有するのに対して、引用発明は、
5 「オペレータに表示することができる複数の」2次元の「領域画像」と、3次元の 「一つのOCTスキャン画像」を一つの画面上に単純に「配置」しているにすぎな いものであり、本願発明の上記構成を有しない。
(2) 被告の主張 ア 本願発明の認定について10 本願発明の「登録を通じてまたは登録を通じずに前記カラー反射率画像とOCT データコンテンツとを結合すること」 「一方のデータを他方のデータ空間に記し は、
載せることを介して前記カラー反射率画像とOCTデータコンテンツとを結び合わ せて一つにすること」又は「一方のデータを他方のデータ空間に記し載せることを 介さずに前記カラー反射率画像とOCTデータコンテンツとを結び合わせて一つに15 すること」を意味するといえ、それら二つの場合以外の場合が存在することは考え られない。
「マッピング」の通常の意味や本願明細書の記載によると、
「カラー反射率画像と OCTデータコンテンツとを結合すること」とは、
「カラー反射率画像とOCTデー タコンテンツとを結び合わせて一つにすること」を意味すると解される。また、請20 求項15及び本願明細書の記載を踏まえれば、本願発明の「結合すること」が、原 告主張のように「2Dカラー画像」と「3D OCTボリューム」を「マッピング」 することに限定して解すべき事情があるとはいえない。
引用発明の認定について 引用発明は、
「マーカ146」の位置を介して「OCTスキャン」と「白色光画像25 124」とを結び合わせて一つにしているものであり、
「白色光画像124」を含む 「領域画像」と「OCTスキャン画像144」とは、一つの画面上に単純に「配置」 6 しているものではなく、
「指標線158」を介して、一体として描画/操作可能な状 態となっているものであるから、原告の主張は引用発明を正解するものではなく根 拠がない。
2 取消事由2(相違点の看過及び容易想到性の判断の誤り) 5 (1) 原告の主張 上記1のとおり、本件審決は、本願発明及び引用発明の認定を誤っており、これ に起因して、相違点を看過しているから、本願発明を容易に発明できるとした点も 誤りである。
(2) 被告の主張10 争う。
当裁判所の判断
1 本願発明について (1) 本願明細書(甲2)の記載 本願明細書には次の記載がある(下記記載中に引用する図のうち図1、図5につ15 いては別紙のとおりである。 。
) 【発明の詳細な説明】 【技術分野】 【0001】 本開示は、一般に、光コヒーレンス断層撮影撮像のための方法および装置に関し、
20 より具体的には、OCTコンテンツと相関付けられたカラー反射率画像を取得する ための方法および装置に関する。
【背景技術】 【0002】 光コヒーレンス断層撮影(OCT)は、サンプルの奥行構造を特徴化する高解像25 度の断面断層画像を取得するために干渉計原理を利用する非侵襲性撮像技術である。
人体組織の体内撮像に特に適しているため、OCTは、たとえば眼科学、皮膚病学、
7 腫瘍学、および他の分野において、ならびに耳鼻咽喉科(ENT)および歯科用撮 像においてなど、生物医学研究および医療撮像用途の範囲における有用性を示して いる。
【0007】 5 OCT撮像全体の1つの欠点は、走査表面に関する対応するカラー画像の欠如で ある。OCT撮像は、干渉計効果および信号振幅から得られた奥行データを提供す るので、OCT再構成とともに利用可能な関連するカラーコンテンツは存在しない。
歯科用表面マッピングの場合、施術者は、OCT出力から口腔内特徴の全体形状お よび輪郭のみを得る。OCT測定データに対応する利用可能なカラーテクスチャ情10 報は存在しない。
【0008】 カラーテクスチャコンテンツをOCT再構成と結合する機能は、たとえば歯の視 覚化、シェードマッチング、歯および支持構造の区分化、病害検出、および特徴認 識などのタスクを改善するために役立つ。したがって、OCT奥行情報およびカラー15 テクスチャデータの両方を提供する撮像装置に利点があることが分かる。
発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0009】 本開示の目的は、画像診断技術を進歩させること、およびOCT走査データに相20 関付けられたカラーテクスチャ情報を提供する必要性に対処することである。本明 細書における特定の典型的な方法および/または装置の実施形態は、口腔内撮像用 途に関して、カラーテクスチャ取得をOCTサンプリングと結合する装置および方 法を提供する。
【0012】25 本開示の別の態様によると、画像データを取得するための方法であって、
口腔内表面サンプルに関して、光コヒーレンス断層撮影(OCT)データを取得 8 することと、
口腔内表面サンプルからの反射率画像コンテンツを取得することと、
反射率画像とOCTデータコンテンツとを結合することと、
結合された反射率画像およびOCTデータコンテンツをディスプレイ上に描画 5 することと を備える方法が提供される。
【0030】 図1の概略図を参照すると、色データがOCT走査データに固有的に登録された、
結合されたOCT走査およびカラー画像取得のための撮像装置100が示される。
10 撮像装置100は、OCTおよびカラー画像コンテンツを結合し、同じ導光部品を 共有することができる、撮像のための2つの光路を有する。
【0035】 図1〜3の構成の各々において、CLED信号検出およびOCT信号検出は同期 され、サンプルプローブ30およびそのスキャナ24との間で、サンプルアーム内15 の同じ光路を共有する。この配置は、多色画像コンテンツのOCTデータへの固有 的登録をもたらす。
【0043】 図5は、結合されたOCTおよびカラー走査スキームを模式的に示す。スキャナ 24は、各点82においてサンプルSへの色光ビームおよびOCT光ビームの両方20 を2次元(x、y)ラスタ走査において操舵し、x∈[0、L-1]はx走査軸に 沿ってインデックスされる。直交成分であるy∈[0、M-1]は、y走査軸に沿っ てインデックスされる。3つの反射率値(R(x、y)、G(x、y)、B(x、y)) を有する色信号および奥行方向における寸法N(N個のデータ点の場合)を有する OCT信号I OCT (x、y)は、各走査位置(x、y)に対応して取得される。
25 【0058】 留意すべき点として、図1〜6Hに関して説明した構成は、カラーテクスチャ 9 データのOCTデータへの固有的登録をもたらす。サンプルアーム内の同じ光路が 共有されるため、2つの異なる種類のデータを互いに登録するために追加の処理は 必要ではない。
【0059】 5 結合されたOCTおよびカラーテクスチャ撮像のための代替アプローチ 結合されたOCTおよびカラーテクスチャ画像データの必要性を満たす代替ア プローチは、必要な画像コンテンツを取得するためにカラープレビューカメラと結 合されたOCTスキャナを用いる。この代替アプローチを用いる場合、カラーテク スチャデータをOCT走査コンテンツに登録するために処理が必要である。図9A10 〜9Eは、この特徴を提供する撮像装置200の様々な実施形態を示す。
【0065】 カラーテクスチャのOCT撮像データへの登録 カラープレビューカメラと結合するOCTスキャナを用いる撮像装置の場合、反 射率画像からのカラーテクスチャのOCT奥行特徴化データへの登録は、撮像プロ15 セス中に取得された様々な相互関連データを用いて行われ得る。
【0071】 A走査線の対応する表面点へのカラーテクスチャ付着は、図5を参照して上述し たカラーテクスチャマッピングまたは相関方法と同様に行われる。反射率値 (x、
(R y)、G(x、y)、B(x、y))を有する色信号および奥行方向における寸法N(N20 個のデータ点の場合)を有するOCT信号I OCT (x、y)が、各走査位置(x、
y)に対応して取得される。これらの(R(x、y)、G(x、y)、B(x、y)) 値は、横方向に沿って対応するI OCT (x、y)データに登録され得る。
(2) 本願発明の内容 以上によると、本願発明は、次のとおりのものということができる。
25 本願発明は、光コヒーレンス断層撮影撮像のための方法に関し、より具体的には、
OCTコンテンツと相関付けられたカラー反射率画像を取得するための方法に関す 10 るものである。 【0001】 。
( ) 光コヒーレンス断層撮影(OCT)は、サンプルの奥行構造を特徴化する高解像 度の断面断層画像を取得するために干渉計原理を利用する非侵襲性撮像技術である ところ(【0002】 、歯科用表面マッピングの場合、施術者は、OCT出力から口 ) 5 腔内特徴の全体形状および輪郭のみを得るが、OCT測定データに対応する利用可 能なカラーテクスチャ情報は存在しなかった(【0007】 。
) カラーテクスチャコンテンツをOCT再構成と結合する機能は、たとえば歯の視 覚化、シェードマッチング、歯および支持構造の区分化、病害検出、および特徴認 識などのタスクを改善するために役立つものである 【0008】 ことを踏まえて、
( )10 本願発明は、画像診断技術を進歩させること、及び、OCT走査データに相関付け られたカラーテクスチャ情報を提供する必要性に対処すること、のそれぞれを目的 とする(【0009】 。
) そこで、上記課題を解決するために、上記第2の2の本願発明の構成とした(【0 012】 。
)15 本願発明に係る光コヒーレンス断層撮影撮像のための方法は、OCTおよびカ ラー画像コンテンツを結合し、同じ導光部品を共有することができる撮像装置10 0を用いて実施され(【0030】 、撮像装置100のスキャナ24は、走査点82 ) においてサンプルSへの色光ビームおよびOCT光ビームの両方を2次元(x、y) ラスタ走査において操舵し、3つの反射率値(R(x、y)、G(x、y)、B(x、
20 y))を有する色信号および奥行方向における寸法N(N個のデータ点の場合)を有 するOCT信号I OCT (x、y)は、各走査位置(x、y)に対応して取得される (【0043】 。
) このような方法は、カラーテクスチャデータのOCTデータへの固 有的登録をもたらし、2つの異なる種類のデータを互いに登録するために追加の処 理は必要ない(【0035】 【0058】 。
、 )25 また、本願発明に係る方法の代替アプローチは、必要な画像コンテンツを取得す るためにカラープレビューカメラと結合されたOCTスキャナを用いるもの(【0 11 059】 【0065】 、 )であって、反射率値(R(x、y)、G(x、y)、B(x、
y))を有する色信号および奥行方向における寸法N(N個のデータ点の場合)を有 するOCT信号I OCT(x、y)が取得され、これらの(R(x、y)、G(x、y)、
B(x、y))値は、横方向に沿って対応するI OCT(x、y)データに登録される 5 (【0071】 。
) 2 引用発明について 甲1によると、本件審決のとおり、第2の3(2)の引用発明を認定することがで きる。
3 取消事由1(本願発明及び引用発明の認定誤り)について10 (1) 本願発明の認定について ア 構成要件Dの「登録を通じてまたは登録を通じずに」の技術的意義について 本願発明における「カラー反射率画像とOCTデータコンテンツ」の「結合」に おいて、本願明細書には、
「カラー反射率画像とOCTデータコンテンツ」が同じ光 路を共有して取得され固有的登録がもたらされる形態では、
「登録」するための追加15 の処理が必要ではなく(【0035】【0058】 、一方で、代替的アプローチであ 、 ) る前記光路が共有されていない形態では「登録」を行うこと(【0059】【006 、
5】)が記載されているところ、前者の形態が本願発明の「登録を通じずに」に、後 者の形態が「登録を通じて」に、それぞれ該当する形態であると認められる。
そうすると、引用発明の特定事項が、少なくとも「前記カラー反射率画像とOC20 Tデータコンテンツとを結合すること」を満たすのであれば、そのような特定事項 は「登録を通じてまたは登録を通じずに」のいずれか一方を必ず満たすものといえ る。
したがって、
「登録を通じてまたは登録を通じずに」の有無により本願発明の特定 事項は実質的に何も変わらないとした本件審決の認定は、原告主張のように本願明25 細書を拡張して行われたものとはいえず、誤りがあるとはいえない。
構成要件Dの「結合すること」の技術的意義について 12 原告は、
「結合すること」の技術的意義について、「結合すること」とは「2Dカ 「 ラー画像」と「3D OCTボリューム」を「マッピング」する程度の意味を有す るもの」と主張する。そして、原告は、
「マッピング」は、3次元立体画像の表面に 2次元画像を対応付け、一つの立体画像として表示するもの、いわゆる「テクスチャ 5 マッピング」を意味する旨を主張する。
しかしながら、本願発明に係る特許請求の範囲の記載において、
「カラー反射率画 像とOCTデータコンテンツ」のそれぞれにおけるデータの次元については何ら特 定されているとはいえない。このことを踏まえると、
「カラー反射率画像」と「OC Tデータコンテンツ」は2次元と3次元のデータを含むものといえるものの、原告10 が主張するように、特定の次元のデータのみに限定されているものと解する事情は 見いだせない。そうすると、原告の主張は、特許請求の範囲の記載に基づかないも のであり、採用することができない。
一方で、本願明細書には、
「本開示の目的は、画像診断技術を進歩させること、お よびOCT走査データに相関付けられたカラーテクスチャ情報を提供する必要性に15 対処すること」【0009】 、及び「値(R(x、y) ( ) 、G(x、y)、B(x、y)) が対応するI OCT (x、y)測定値にマッピング」 【0044】 ( )との記載があり、
それらに照らすと、本願発明における「結合すること」 (マッピング)は、座標(x、
y)ごとに、R、G、Bの各値とI OCT 測定値を相関付ける(対応させる)ことを意 味するが、表示する際の画像の形態を限定するものではないと解釈するのが自然で20 ある。
以上によると、本願発明の「結合すること」 「互いの位置関係が対応付けられ」 を、
ることに相当するとした本件審決の認定に誤りがあるとはいえない。
(2) 引用発明の認定について 原告は、本願発明の「結合すること」が「テクスチャマッピング」を意味するも25 のであり、引用発明は「オペレータに表示することができる複数の」2次元の「領 域画像」と、3次元の「一つのOCTスキャン画像」を一つの画面上に単純に「配 13 置」しているにすぎないことを前提として、引用発明は、本願発明における構成要 件Dのテクスチャマッピングに関する構成を備えていない旨を主張する。
しかしながら、本願発明の「結合すること」に関する認定は、上記(1)イのとおり であるほか、引用発明は、
「白色光画像124」上に配置された「マーカ146」に 5 より特定された「走査範囲やラインスキャンの方向」で「OCTスキャンが取得」 され、
「マーカ146」の「指標線158に対応するOCTスキャン画像144」を 表示し得るものであることに照らすと、前記「OCTスキャン画像144」と「白 色光画像124」は、一つの画面上に単純に配置しただけのものではなく、
「マーカ 146」の位置を介して座標ごとに互いの値が対応付けられ、結び合わされるもの10 といえる。
したがって、原告の上記主張は前提を欠くものであって採用することができず、
本件審決の認定に誤りがあるとはいえない。
(3) 小括 上記(1)及び(2)のとおり、本願発明又は引用発明の認定に誤りがあるとする原告15 主張に理由がなく、本件審決に誤りがあるとはいえない。
4 取消事由2(相違点の看過及び容易想到性の判断の誤り)について 上記3で説示したとおり、本件審決における本願発明及び引用発明の認定に誤り があるとはいえないから、本件審決で判断されていない新たな相違点が存在すると はいえず、これを前提とした容易想到性についての原告の主張は前提を欠くものと20 いえる。
よって、本件審決に誤りがあるとはいえない。
結論
以上のとおり、原告主張の取消事由はいずれも理由がなく、本件審決にこれを取 り消すべき違法は認められない。
25 したがって、原告の請求は棄却されるべきものであるから、主文のとおり判決す る。
14
裁判長裁判官 5本多知成