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関連審決 無効2021-800078
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事件 令和 5年 (ネ) 10086号 特許権侵害差止請求控訴事件
令和6年3月27日判決言渡 令和5年(ネ)第10086号 特許権侵害差止請求控訴事件 (原審・東京地方裁判所令和4年(ワ)第9716号) 口頭弁論終結日 令和6年1月31日 5判決
控訴人(第1審被告) 株式会社東亜産業
同訴訟代理人弁護士 高橋雄一郎 10 同阿部実佑季
同 金森毅
被控訴人(第1審原告) neo ALA株式会社 15 同訴訟代理人弁護士 河合哲志
同訴訟代理人弁理士 長谷川芳樹
同 清水義憲
同 今村玲英子
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2024/03/27
権利種別 特許権
訴訟類型 民事訴訟
主文 20 1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は控訴人の負担とする。
3 原判決主文1、2項は、仮に執行することができる。
事実及び理由
全容
(略語は、原判決の例に従う。)25 第1 事案の要旨 本件は、発明の名称を「5-アミノレブリン酸リン酸塩、その製造方法及び 1 その用途」とする本件特許(特許第4417865号)の特許権者である被控 訴人が、控訴人による各控訴人製品の製造、譲渡等が特許権の侵害に当たると 主張して、控訴人に対し、その差止め等を求める事案である。
第2 当事者の求めた裁判 5 1 被控訴人の請求 (1) 控訴人は、原判決別紙1「被告製品目録」記載の各製品(各控訴人製品) を、いずれも製造し、譲渡し、又は譲渡の申出をしてはならない。
(2) 控訴人は、控訴人の占有する前項記載の製品をいずれも廃棄せよ。
【請求の法的根拠】10 (1)について 特許法100条1項に基づく差止請求 (2)について 同条2項に基づく廃棄請求 2 原審の判断及び控訴の提起15 原審は、@各控訴人製品はいずれも本件発明の技術的範囲に属する、A控訴 人主張の特許無効の抗弁(本件引用例〔特表2003-526637号公報、
乙2〕に基づく新規性の欠如)は理由がないとして、被控訴人の請求をいずれ も認容する判決をしたところ、控訴人がこれを不服として以下のとおり控訴し た。
20 【控訴の趣旨】 (1) 原判決を取り消す。
(2) 被控訴人の請求をいずれも棄却する。
第3 前提事実等 1 前提事実25 前提事実は、以下のとおり補正するほか、原判決「事実及び理由」第2の1 (2頁〜)に記載のとおりであるから、これを引用する。
2 (1) 控訴人が各控訴人製品の製造、譲渡等をしていた時期とされる「遅くとも 令和3年3月から現在まで」(3頁5行目及び8行目)をいずれも「遅くと も令和3年3月から令和5年12月25日頃まで」に改める(控訴人は、遅 くとも令和5年12月26日以降、各控訴人製品の製造、譲渡及び譲渡の申 5 出をしていない旨主張するため。)。
(2) 「無効審判請求」の項の末尾(5頁18行目)に行を改め次のとおり加え る。
「 本件審決取消訴訟に係る上記知財高裁判決に対し、控訴人が上告受理の 申立てをしたが、最高裁判所は令和5年10月5日に不受理決定をし、本10 件審判請求が成り立たないとした上記審決は確定した(甲18)。」 2 本件発明の概要 (1) 本件発明は新規の化学物質の発明とされ、その特許請求の範囲の請求項1 の記載は次のとおりである。
「 下記一般式(1)15 HOCOCH 2CH 2 COCH2 NH 2 ・HOP(O)(OR 1 )n (OH)2-n(1) (式中、R 1 は、水素原子又は炭素数1〜18のアルキル基を示し;nは0 〜2の整数を示す。)で表される5-アミノレブリン酸リン酸塩。」 (2) 本件発明の技術的特徴 本件明細書の記載は原判決別紙5「本件明細書」の記載のとおりであり、
20 これによれば、本件発明につき、次のような開示があることが認められる。
ア 本発明は、微生物・発酵、動物・医療、植物等の分野において有用な 5-アミノレブリン酸リン酸塩に関する発明である(【0001】)。
イ 5-アミノレブリン酸は、微生物・発酵分野、動物・医療分野及び植物 分野における様々な用途に有用であることが知られている一方、塩酸塩25 としてのみその製造方法が知られていた(【0002】、【000 3】)。しかし、5-アミノレブリン酸塩酸塩は塩酸を含んでいるため、
3 @製造過程等においては、気化した塩化水素による装置腐食等を考慮す る必要があり、A医薬の分野においては、経口投与時や皮膚への塗布の 場合に灼熱感を感じるような刺激性があるため、より低刺激性の5-ア ミノレブリン酸の塩が求められており、B植物分野においては、一般的 5 に使用される殺菌剤成分である硝酸銀等と混合すると、化学反応により 塩化銀の沈殿が発生して噴霧器のノズルが詰まる可能性があり、C水溶 液を果実に直接噴霧すると、塩化物イオンによって果実の着色が十分で ない場合があるという問題があった(【0004】、【0005】)。
ウ 本発明は、低刺激性の5-アミノレブリン酸の新規な塩を提供するこ10 とを目的とするものであり、本発明の発明者らは、陽イオン交換樹脂に 吸着した5-アミノレブリン酸を溶出させ、その溶出液をリン酸類と混 合することにより、上記要求が満たされる5-アミノレブリン酸リン酸 塩が得られることを見出し、本発明を完成させた(【0006】、【0 007】) 。
15 エ 本発明の5-アミノレブリン酸リン酸塩は、臭気が感じられず、その ため取り扱いやすい物質である上、皮膚や舌に対して低刺激性であり、
皮膚等への透過性も良好であることから、これを含有する組成物は光力 学的治療又は診断用薬として有用であるほか、水溶液にした場合の塩化 物イオン濃度が低いため、植物への投与において塩素被害が生じにくい20 という効果を奏する(【0013】)。
第4 争点及び当事者の主張 1 特許無効の抗弁に係る控訴人の主張の帰趨 控訴人は、特許無効の抗弁として、原審においては、@本件引用例記載の引 用発明に基づく新規性の欠如を主張していたところ、当審において、A乙1625 〜18の各論文記載の各発明に基づく新規性の欠如、B「The stability of 5-aminolevulinic acid in solution」と題する2002年発表の医学論文 4 (乙25)記載の発明に基づく新規性の欠如の主張を追加した。
しかし、上記@の無効理由は、本件審判請求において主張されていた無効理 由と同一であるところ、最終的に同請求を不成立とする審決が確定したこと (補正引用に係る前提事実(6))、上記Aの論文は、上記無効審判において技 5 術常識等を示す証拠として提出され、その内容が実質的に判断されていたこと から、控訴人は、令和6年1月31日の本件口頭弁論期日において、上記@及 びAに係る特許無効の抗弁を撤回した。
他方、上記Bに係る特許無効の抗弁に関しては、同期日において、当裁判所 が、時機に後れた攻撃防御方法(民事訴訟法297条157条1項)に当た10 るものとして却下する決定をした。
2 以上の経緯を通じて、当審における最終的な争点は、以下のとおりとなって いる。
(1) 各控訴人製品の本件発明の技術的範囲への属否(争点1、原審の争点@) (2) 差止め及び廃棄の必要性(争点2、当審において新たに争点化したもの)15 3 争点に関する当事者の主張 (1) 各控訴人製品の本件発明の技術的範囲への属否(争点1)について 争点1に関する当事者の主張は、下記のとおり当審における控訴人の補充 的主張を加えるほか、原判決「事実及び理由」第2の2(1)(5頁〜)に記 載のとおりであるから、これを引用する。
20 【控訴人の補充的主張】 ア 原判決は、本件発明の技術的範囲について、5-アミノレブリン酸リン 酸塩が「単離されていなくとも、また、それを含む製品においてそれが 高い濃度でなくとも、発明の効果を奏するといえる。」として、単離さ れた高純度のものに限定されないと判断した。
25 しかし、本件特許の特許請求の範囲に記載されているのは、5-アミ ノレブリン酸リン酸塩という物質である。
5 また、本件明細書には、5-アミノレブリン酸リン酸塩を光力学治療 又は診断剤(【0029】〜【0031】)、植物活性化剤(【003 2】)として使用することが開示されているが、「公知の条件で使用す ればよく」(【【0030】、【0032】)と記載されているだけで、
5 何らかの用途に用いる具体例、特に食品については開示されておらず、
発明の効果に関する記載(【0013】)では、「水溶液にした場合の 塩化物イオン濃度が低い」という構成が「塩素被害が生じにくくなる」 という効果と結びついており、純粋でないと発明の効果が生じにくいも のといえる。
10 このような特許請求の範囲の記載に基づき、明細書に添付した記載を 考慮すると、本件発明の技術的範囲は純粋な物質に限定して解釈される べきであり、原判決の判断は特許法70条1項、2項に反する。
イ 被控訴人は、本件特許の無効審判(無効2021-800078)の手 続において提出した本件上申書(乙8)では、5-アミノレブリン酸塩15 酸塩と5-アミノレブリン酸リン酸塩を明確に区別すべき旨を主張して いるが、物質としての構成が同一か否かは単離された高純度のものでな ければ分からないことからすれば、本件発明の5-アミノレブリン酸リ ン酸塩が単離された高純度のものに限定されないとする被控訴人の主張 は、無効審判における主張と矛盾するものであり、信義則に反する。
20 ウ 化合物自体が公知文献に明記されており、当該化合物を初めて製造でき たことに技術的意義が認められる物質特許の発明については、化合物自 体は公知であるから、その発明は新規性を欠くと解すべきであり、仮に 新規性を有するのであれば、その発明の技術的意義は当該化合物を製造 できたことについて認められるものであるから、その技術的範囲は、発25 明者が現実に発明した製造方法によって製造された物か、単離された高 純度の化合物に限定されるべきである。
6 そのように解さなければ、当該物質自体が公知であったにもかかわらず 製造方法を見出しただけで物質特許の広い権利による保護が受けられ、
製法特許との間のバランスが保たれない。
また、製法を知らずにその化合物を含む混合物を製造等したものが、そ 5 の製造等の後に成立した物質特許に基づく権利行使を受けることになり、
発明者実施者との間の公平が保たれない。
そして、各控訴人製品は、微生物によって生成されたアミノ酸粉末を用 いて製造されており、本件明細書に記載されるイオン交換樹脂を用いて 製造したものではないから、本件発明の技術的範囲に属さない。
10 (2) 差止め及び廃棄の必要性(争点2)について 争点2に関する当事者の主張は、下記の控訴人の当審における主張及び被 控訴人の反論のとおりである。
【控訴人の当審における主張】 控訴人は、令和5年12月26日以降、各控訴人製品を製造し又は製造15 する予定はなく、製造設備も在庫も有しておらず、各控訴人製品を輸入する こともなく、製造、譲渡及び譲渡の申出をすることはないから、被控訴人の 差止及び廃棄の請求は認められない。
控訴人のオンラインショップ(甲21〜23)の在庫表示は誤りであり、
在庫はなかった。
20 また、他のオンラインショップ(甲24〜27)の販売者は、いずれも 控訴人ではない(乙37〜43の8)。
【被控訴人の反論】 控訴人の主張には客観的な裏付けがないこと、控訴人は、現在もオンライ ンショップでイ号製品を販売し(甲21〜23)、5-アミノレブリン酸リ25 ン酸塩を原材料とする別製品を複数製造販売していること(甲28〜30)、
販売店が各控訴人製品の販売を継続していること(甲24〜27)、控訴人 7 は本件訴訟で侵害の成否を争っていることからすれば、控訴人が各控訴人製 品の製造販売を再開するおそれがあり、差止めの必要性がある。
第5 当裁判所の判断 当裁判所も、各控訴人製品は本件発明の技術的範囲に属するものであり、被 5 控訴人の請求はいずれも理由があると判断する。
その理由は、下記のとおり当審における控訴人の補充的主張等に対する判断 を付加するほか、原判決「事実及び理由」第3の2(4)(13頁〜)のとおり であるから、これを引用する。
1 各控訴人製品の本件発明の技術的範囲への属否(争点1)について10 (1) 控訴人は、本件特許の特許請求の範囲の記載に基づき、明細書の記載を考 慮すると、本件発明の技術的範囲は純粋な物質に限定して解釈されるべきで あると主張する。
しかし、本件特許の特許請求の範囲【請求項1】の記載は、化学物質の物 質特許であることを示すものであって、その技術的範囲が単離された高純度15 の物質に限定されることを直ちに意味するものではない。
そして、本件明細書には、本件発明の5-アミノレブリン酸リン酸塩につ いて、固体でも溶液でもよく、pH調整剤等によって調整された溶液でもよ いこと、水溶液には5-アミノレブリン酸リン酸塩以外の塩が含まれていて もよいこと(【0017】、【0018】)、光力学治療又は診断剤、皮膚20 外用剤、植物活性化剤など多様な用途があることが記載され(【0029】、
【0031】、【0032】)、光力学治療又は診断剤としての使用につい ての公知の条件を開示する複数の公開特許公報が挙げられ(【0030】)、
皮膚外用剤等の剤形にするために用いる薬学的に許容される担体として水、
結合剤等が挙げられ(【0031】)、「植物用途に使用する場合、一般的25 に使用される肥料成分等を含有してもよい」(【0032】)等記載されて いるのであって、「何らかの用途に用いる具体例」が数多く記載されるとと 8 もに、単離された高純度のものでなくとも発明の効果を奏することが開示さ れていることは明らかである。
「水溶液にした場合の塩化物イオンが低いため」(【0013】)との記 載については、従来から製造法が知られていた5-アミノレブリン酸塩酸塩 5 (【0005】)と比較したものであって、単離された高純度のものに限る 趣旨は窺えない。
控訴人の主張は理由がない。
(2) 控訴人は、本件特許の無効審判(無効2021-800078)の手続に おいて被控訴人が提出した本件上申書において、5-アミノレブリン酸塩酸10 塩と5-アミノレブリン酸リン酸塩を明確に区別すべき旨を主張しているこ とをもって、本件訴訟における被控訴人の主張と矛盾すると主張する。しか し、この主張は、本件上申書記載の被控訴人の上申内容を曲解するものであ って、その前提において失当である。この点の詳細は、原判決の「事実及び 理由」第3の2(4)のとおりである。
15 (3) 控訴人は、化合物自体が公知文献に明記されており、当該化合物を初めて 製造できたことに技術的意義が認められる物質特許の発明については、化合 物自体は公知であるから、その発明は新規性を欠くと解すべきであり、仮に 新規性を有するのであれば、その発明の技術的意義は当該化合物を製造でき たことについて認められるものであるから、その技術的範囲は、発明者が現20 実に発明した製造方法によって製造された物か、単離された高純度の化合物 に限定されるべきであると主張するが、以下に述べるとおり採用できない。
ア 発明が技術的思想創作であること(特許法2条1項参照)にかんがみ れば、特許出願前に頒布された刊行物(同法29条1項3号)に物の発 明が記載されているというためには、同刊行物に発明の構成が開示され25 ているだけでなく、当該刊行物に接した当業者が、思考や試行錯誤等の 創作能力を発揮するまでもなく、特許出願時の技術常識に基づいてその 9 技術的思想実施し得る程度に、当該発明の技術的思想が開示されてい ることを要する。
特に当該物が新規の化学物質である場合には、新規の化学物質は製造 方法その他の入手方法を見出すことが困難であることが少なくないから、
5 刊行物にその技術的思想が開示されているというためには、一般に、当 該物質の構成が開示されていることにとどまらず、その製造方法を理解 し得る程度の記載があることを要するというべきであり、刊行物に製造 方法を理解し得る程度の記載がない場合には、当該刊行物に接した当業 者が、思考や試行錯誤等の創作能力を発揮するまでもなく、特許出願時10 の技術常識に基づいてその製造方法その他の入手方法を見出すことがで きることが必要であるというべきである。
そして、本件において、公知文献である本件引用例に5-アミノレブ リン酸リン酸塩の製造方法に関する記載は見当たらず、乙16〜18の 各論文によっても、特許出願時の技術常識に基づいて当業者がその製造15 方法その他の入手方法を見出すことができたとは認められない(以上は 原判決「事実及び理由」第3の3(1)イ〔14頁〜〕に同じ。)。
イ 他方、本件明細書には、5-アミノレブリン酸リン酸塩の物質の構成が 開示されている(【0009】、【0014】〜【0016】)にとど まらず、当業者がその製造方法を理解し得る程度の記載があ るところ20 (【0007】、【0019】〜【0028】、【0034】〜【00 36】)、これは、新規の化学物質の発明である本件発明について、当 業者が実施し得る程度の発明の技術的思想を開示するものであって、単 なる製造方法としての技術的意義にとどまるものではない。
そして、特許が物の発明についてされている場合には、その特許権の25 効力は、当該物と構造、特性等が同一である物であれば、その製造方法 にかかわらず及ぶこととなる(最高裁平成24年(受)第1204号同 10 27年6月5日第二小法廷判決・民集69巻4号700頁参照)。
ウ なお、控訴人が指摘するような、本件特許の出願の際に製造等していた 者については先使用による通常実施権(特許法79条)により、本件特 許の出願後に製造方法等の発明をした者については通常実施権の設定の 5 裁定(同法92条)により、特許権者との利益の調整が図られることに なる。
(4) 以上のとおり、争点1(各控訴人製品の本件発明の技術的範囲への属否) に関する控訴人の主張は、控訴人の当審における補充的主張を踏まえても採 用できない。
10 2 差止め及び廃棄の必要性(争点2)について (1) 控訴人は、現時点で控訴人が各控訴人製品の製造、譲渡及び譲渡の申出 をするおそれはない旨主張する。
しかし、控訴人は、少なくとも令和元年3月から令和5年12月25日 頃まで各控訴人製品を日本国内で製造し、譲渡し、譲渡の申出をしていたこ15 と(上記第3の1)、控訴人は現に各控訴人製品が本件発明の技術的範囲に 属することを争っていること、控訴人が製造、譲渡等の能力等を有しないこ とが客観的証拠により的確に裏付けられているとはいえず、むしろ、控訴人 の主張によっても、控訴人は令和6年1月までに控訴人直営オンラインショ ップ(甲21)又は控訴人公式ショップ(甲22)に5件の注文を受け、う20 ち1件はキャンセルしたが、残り4件は「控訴人の管理を離れた流通ルート 上に最後に残っていたものを発送できた」というのであり(控訴人準備書面 (3) 5頁)、各控訴人製品の譲渡を行っていることからすれば、本件特許権 を侵害するおそれがあると認められ、これと異なる控訴人の主張は採用でき ない。
25 (2) この点に関連して、被控訴人は上記差止め及び廃棄請求について仮執行宣 言の申立てをしているところ、原審の段階であればともかく、現時点では仮 11 執行宣言を付することが必要かつ相当と認める。
3 結論 以上によれば、被控訴人の請求を全部認容した原判決は相当であり、本件控 訴は理由がないからこれを棄却することとし、また、原審の認容した差止め及 5 び廃棄請求について仮執行宣言を付すこととして、主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 宮坂昌利