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事件 令和 5年 (行ウ) 5004号 特許料納付書却下処分取消請求事件
5原告 株式会社コンピュータ・システム研究所
同訴訟代理人弁護士 岩永利彦
被告国 処分行政庁特許庁長官
同 指定代理人橋本政和 10 同安實涼子
同 多田百合
同 澤ア哲哉
同 及川麻衣
同 稲垣若菜 15 同大谷恵菜
同 中島あんず
裁判所 東京地方裁判所
判決言渡日 2024/02/29
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
主文 1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
20 事 実 及 び 理 由第1 請求特許庁長官が、特許第6127102号の特許権に係る第5年分の特許料納付書について、令和4年12月1日付けでした手続却下の処分を取り消す。
第2 事案の概要25 1 特許庁長官は、令和4年12月1日付けで、原告に対し、同年3月22日付け提出に係る第05年分の特許第6127102号(以下「本件特許」といい、
1本件特許に係る特許権を「本件特許権」という。)に関する特許料及び割増特許料納付手続において、所定の期間内に手続をすることができなかったことにつき正当な理由があるとはいえず、特許法(令和3年法律第42号による改正前のもの。以下「旧特許法」といい、同改正後のものを「新特許法」という。)5 112条の2第1項所定の要件を満たさないとして、同法18条の2第1項本文に基づき却下する処分(以下「本件却下処分」という。)をした。
本件は、原告が、本件却下処分は違法であると主張して、その取消しを求める事案である。
2 関連法令の定め10 別紙関連法令の定めのとおりである。
3 前提事実(証拠等の記載のないものは当事者間に争いがない。なお、証拠を摘示する場合には、特に記載のない限り、枝番を含むものとする。)? 当事者原告は、発明の名称を「建築物品質評価装置、その方法、プログラムおよ15 び記憶媒体」とする発明につき、出願日を平成23年11月15日とする出願(特願2011−249770)を行い、平成27年9月29日、同特許出願の分割出願(特願2015−192293)を行った。同分割出願の結果、平成29年4月14日、本件特許権(特許第6127102号)の設定登録がされ、原告は、本件特許の特許権者となった。
20 ? 本件却下処分に至る経緯等ア 原告は、本件特許権について、第1年分から第4年分までの特許料を納付した。
しかしながら、本件特許権については、第5年分の特許料(以下「本件特許料」という。)の納付期限である令和3年4月14日までに、同年分25 の特許料の納付はされず、その追納期間(以下「本件追納期間」という。)の末日である同年10月14日までにも、同年分の特許料等の納付はされ2なかった。
イ 原告は、令和4年3月22日付けで、特許庁長官に対し、本件特許に係る特許料納付書(以下「本件特許料納付書」という。甲16。)を提出するとともに、本件追納期間内に特許料等を納付することができなかったこ5 とについて正当な理由がある旨記載した回復理由書(甲17)を提出した(甲17、弁論の全趣旨)。
これに対し、特許庁長官は、令和4年7月6日付けで、原告に対し、上記期間徒過について、弁理士が本件特許料追納期限を見過ごしたことによるものであり、旧特許法112条の2第1項の「正当な理由」があると10 はいえないから、同法18条の2第1項本文の規定により却下すべきものである旨の通知(以下、当該却下理由が記載された却下理由通知書を「本件通知書」という。乙1)をした。
原告は、令和4年9月13日付けで、特許庁長官に対し、弁明書(甲18)を提出したが、特許庁長官は、同年12月1日付けで、本件通知書に15 記載した理由は解消されていないとして、本件却下処分をした(乙2)。
? 本件訴訟の提起原告は、令和5年4月21日、本件却下処分の取消しを求める本件訴訟を提起した(当裁判所に顕著な事実)。
4 争点20 ? 旧特許法112条の2第1項の「正当な理由」の有無(争点1)? 旧特許法112条の2第1項の適用の可否(争点2)? 信義則違反の有無(争点3)第3 争点に関する当事者の主張1 争点1(旧特許法112条の2第1項の「正当な理由」の有無)について25 (原告の主張)? 原告は、本件特許の出願及び本件特許料の納付管理業務を、A弁理士(以3下「本件弁理士」という。)に委任して行っていたところ、特許庁長官は、
本件通知書において、本件弁理士が本件特許料の納付を行うことができないほどの病状にあったという事情(以下「本件事情」という。)は認められないと判断している。
5 しかしながら、@本件弁理士は、令和4年2月14日、原告に対し、「今は鬱がひどく対応ができません」とSMSで連絡しており(甲9)、それ以前にもうつ病である旨話していたこと(甲11)、Aその後、原告は本件弁理士と全く連絡が取れないこと、B本件弁理士の後輩は、本件弁理士は介護業務の副業がコロナ禍で不振になり、うつ病に罹患したのではないかと述べ10 ていること(甲14)、C本件弁理士と連絡が取れない以上、診断書の取得は不可能であるところ、上記のとおり診断書を補う様々な証拠が存在することからすれば、本件事情が存在することは明らかであり、本件事情が存在する以上、「正当な理由」はあるといえる。
? また、特許庁は、新型コロナウイルス感染症の影響を受けた手続について、
15 その手続期間の末日が令和5年5月8日以前の場合は、証拠書類の提出は必須にしないと定めている(甲19)。そして、本件弁理士がうつ病を発症したのは、新型コロナウイルス感染症の感染を恐れた顧客が本件弁理士の副業の店舗に通わなくなり、それによって当該副業が不振を極めたからであり、
本件は、新型コロナウイルス感染症の影響を受けた手続であるといえる。
20 したがって、特許庁長官が証拠書類である診断書の提出を求めることは、
自ら定めた上記規律に反し、違法で不当なものである。
? 被告は、本件弁理士が本件追納期間及びその後において、手続の代理を行っていた根拠として証拠(乙11の5、6、乙12の1、2)を提出するが、
これらは出願番号等が黒塗りであるから、成立の真正を争う。
25 (被告の主張)? 旧特許法112条の2第1項の「正当な理由があるとき」とは、特許権者4(代理人を含む。)として、相当な注意を尽くしていたにもかかわらず、客観的にみて追納期間内に特許料等を納付することができなかったときをいうものと解するのが相当である。
本件弁理士は、本件追納期間(令和3年4月15日から同年10月14日5 まで)の期間内において、令和3年9月21日には原告を商標登録出願人とする商標の登録料を特許庁に納付し(乙11の2)、同月28日には原告を特許権者とする特許(2件)の特許料等を特許庁に納付している(乙12の3、4)。また、本件弁理士は、本件追納期間中の同年10月10日、特許庁に対し、3件の出願に係る手続補正書や意見書を提出している(乙10の10 1ないし4、7)。さらに、本件弁理士は、本件追納期間後も、同年10月26日から令和4年3月22日にかけて、特許料等の納付(乙11の1、乙12の1、2)、特許出願の出願審査請求(乙10の5)、商標登録料の納付(乙11の3ないし6)、商標権移転登録の申請(乙13)、特許の出願(乙10の6)を行っている。したがって、本件弁理士は、本件追納期間15 中も、その後も、弁理士として現に業務を行っていたのであるから、特許料等を納付することができないと認められる客観的事情があったことは全くうかがわれない。
? 原告は、本件弁理士が重度のうつ病を患っていた旨主張するが、本件追納期間における本件弁理士の精神的状態を裏付ける客観的な証拠を一切提出20 していないから、うつ病に罹患していたとは認められない。
また、仮に本件弁理士がうつ病に罹患していたとしても、上記で述べた事情からすれば、特許料の納付の妨げとなる程度のものであったとはいえず、
本件追納期間内に追納することができなかったといえる客観的な事情があるとはいえない。
25 ? 原告が成立の真正を争う証拠(乙11の5、6、乙12の1、2)は、本件弁理士が特許庁のインターネット出願ソフトを用いて提出し、特許庁内部5のシステムに登録された商標登録料納付書及び特許料納付書の各データをプリントアウトしたものである。そして、いずれの申請データについても登録専門官による修正はされておらず、これらの書証は、いずれも真正に成立した文書である。
5 2 争点2(旧特許法112条の2第1項の適用の可否)について(原告の主張)? 最高裁令和3年(受)第2050号同5年1月30日第二小法廷判決・民集77巻1号86頁(以下「令和5年最高裁判決」という。)は、法令の施行日が経過していなくても、必要性等に応じて新法の遡及適用ができる旨判10 示したものである。この点、旧特許法112条の2第1項は、「正当な理由」があるときに追納できると定めていたのに対し、新特許法は、「故意」に納付しなかった場合には追納できないと定めたものであり、このような救済(権利回復)の要件緩和は、早急に求められていたものである。そうすると、
新特許法の施行日が経過していない場合でも、同法の遡及適用を行う必要性15 は高かったといえる。そして、新特許法は、令和3年5月21日に公布され、
令和5年4月1日に施行されているところ、本件追納期間の末日は、令和3年10月14日であるから、本来、本件は、既に公布されていた新特許法が適用されるべき事案である。それにもかかわらず、本件却下処分は、新特許法の上記「故意」基準に基づいて判断していないから、違法なものである。
20 ? また、新特許法の「故意」基準の方が、旧特許法の「正当な理由」基準よりも国民の利益に資するものであるところ、新特許法の附則2条8項(以下「附則2条8項」という。)は、いわゆる経過措置の規定であって、新特許法の適用を一定期間留保するものである。このような留保は、専ら国家権力である特許庁に新法対応を準備させるという点を重視したものであり、特許25 庁の便宜を図ることを目的とする附則2条8項は、公共の福祉に合致せず、
違憲、無効である。
6上記のとおり、そもそも立法目的が不当ではあるが、この点を措くとしても、公布日から2年を超えない範囲内の施行日というのは、インターネット等が活用できる現代において、あまりに長期間であり、規制手段としての合理性と必要性のいずれも肯定することができない。
5 したがって、附則2条8項は、立法目的が公共の福祉に合致せず不当であり、規制手段として合理性と必要性のいずれも肯定することができないから、
憲法29条2項に反し、無効である。そして、附則2条8項が無効である以上、本件には、新特許法を適用すべきである。
(被告の主張)10 ? 令和5年最高裁判決は、経過措置が設けられていない事案において、改正省令の施行前の権利侵害に係る情報開示請求について改正省令を適用したものであるから、新特許法のように経過措置が設けられた場合について、射程が及ばないことは明らかである。
? 附則2条8項は、新特許法112条の2第1項の適用を受けるに当たって、
15 新たに回復手数料の納付を要するものとされ、手数料額等を定める政令や手数料徴取のためのシステムの整備等する必要があったことから設けられたものである。こうした政令やシステムの整備等がなく、納付すべきこととされた手数料額すら定まらずに新特許法112条の2第1項が適用されるとすれば、大きな混乱を招くことは明らかである。したがって、附則2条8項20 は、このような合理的根拠に基づき設けられているものであって、何ら違憲の瑕疵を帯びる規定ではない。
3 争点3(信義則違反の有無)について(原告の主張)? 上記のとおり、本件では、新特許法が既に公布されていたにもかかわらず、
25 同法の附則2条8項の経過措置により、新特許法が適用されない結果、原告が救済されないとすれば、信義則違反となることは明らかである。したがっ7て、附則2条8項の適用は信義則違反であるから、新特許法を適用すべきである。
? また、被告は、本件却下処分に際しては、医師の診断書がないから本件事情が認められない旨述べていたにもかかわらず、本件訴訟に至って、病状は5 「正当な理由」の考慮要素の一つにすぎないと述べて原告の信頼を裏切ったのであるから、被告が「正当な理由」がないと主張することは、信義則上許されない。
(被告の主張)? 原告は、新特許法が既に公布されていたことをもって信義則が適用される10 旨主張するが、経過措置の意義を無視するものであって、主張自体失当である。
? 特許庁は、医師の診断書があれば「正当な理由」を認めるという姿勢をとったことはないから、信義則違反をいう原告の主張は理由がない。
第4 当裁判所の判断15 1 争点1(旧特許法112条の2第1項の「正当な理由」の有無)について旧特許法112条の2第1項にいう「正当な理由があるとき」とは、特許権者(代理人を含む。)として相当な注意を尽くしていたにもかかわらず、
客観的にみて追納期間内に特許料等を納付することができなかったときをいうものと解するのが相当である。
20 これを本件についてみると、本件特許料の納付期限は令和3年4月14日まで、その追納期限は同年10月14日まで(以下、当該追納期間を「本件追納期間」という。)であるところ、後掲証拠及び弁論の全趣旨によれば、
本件弁理士は、本件追納期間中において、令和3年9月21日、原告を商標登録出願人とする商標の登録料を特許庁に納付し(乙11の2)、同月2825 日、原告を特許権者とする2件の特許の特許料等を特許庁に納付し(乙12の3、4)、同年10月10日、特許庁に対し、原告を特許権者とする2件8の特許の出願に係る手続補正書及び意見書を提出するとともに、1件の商標出願に係る手続補正書を提出していること(乙10の1ないし4、7)、そして、本件弁理士は、本件追納期間後にも、同月26日、原告を特許出願人とする特許料を特許庁に納付していること(乙11の1)、同月29日、原5 告を商標登録出願人とする商標の登録料を特許庁に納付するとともに、原告を請求人とする特許に係る出願審査請求書を特許庁に提出していること(乙10の5、乙11の3)、同年11月24日、原告を登録義務者とする商標権移転登録申請書を提出していること(乙13)、同月30日、特許料を特許庁に納付していること(乙12の1)、同年12月13日、原告を特許出10 願人とする特許出願をしていること(乙10の6)、同月30日、原告等を商標登録出願人とする商標の登録料を特許庁に納付していること(乙11の4、5)、令和4年2月10日、特許料を特許庁に納付していること(乙12の2)、同年3月22日、商標の登録料を特許庁に納付していること(乙11の6)、以上の事実が認められる。
15 上記認定事実によれば、本件弁理士は、本件追納期間である令和3年4月15日から同年10月14日までの間、特許庁に対し、商標の登録料や特許料等を納付し、手続補正書等の必要書面を提出していたことが認められるほか、本件追納期間後も、商標の登録料や特許料等を納付したり、出願審査請求書や商標権移転登録申請書を提出したり、特許の出願をしたりしていたこ20 とが認められる。
これらの事情を考慮すると、本件弁理士は、本件特許料に係る本件追納期間等において、別件の特許料、登録料等を現に納付していたのであり、本件特許料に限り納付できなかった客観的事情を認めることはできない。
したがって、本件弁理士は、相当な注意を尽くしていたにもかかわらず、
25 客観的にみて追納期間内に特許料等を納付することができなかったということはできない。
9? これに対し、原告は、本件弁理士がうつ病である旨述べていたことや、連絡が取れなくなったことなどからすれば、本件弁理士が本件特許料の納付を行うことができないほどの病状にあったという事情(本件事情)が認められるから、「正当な理由」がある旨主張する。しかしながら、本件弁理士が原5 告主張に係る病状にあったことを認めるに足る診断書その他の客観的証拠はなく、かえって、本件弁理士による別件特許料の納付状況等に照らせば、
原告の主張を踏まえても、本件弁理士において客観的にみて本件追納期間内に本件特許料を納付することができなかったものということはできない。
また、原告は、特許庁長官が診断書の提出を求めることは、新型コロナウ10 イルス感染症の影響を受けた手続において証拠書類の提出は必須にしないとの自らの定めに反し、違法である旨主張する。しかしながら、診断書提出の有無にかかわらず、本件弁理士による別件特許料の納付状況等に照らせば、
本件弁理士において客観的にみて本件追納期間内に本件特許料を納付することができなかったものとはいえないことは、上記において説示したとおり15 である。そうすると、原告の主張は、上記判断を左右するものとはいえない。
さらに、原告は、被告提出に係る書証(乙11の5、6、乙12の1、2)には黒塗り部分があるため、申請データが偽造や捏造されたと主張して、これらの書証につき成立の真正を争うものの、証拠(乙14ないし18)及び弁論の全趣旨によれば、上記各書証は、特許庁のインターネット出願ソフト20 を用いて提出されて特許庁内部のシステムに登録されたデータを印刷したものであり、本件全証拠によっても申請データが偽造や捏造された事情をうかがうことはできず、上記各書証は真正に成立したものと認めるのが相当である。
したがって、原告の主張は、いずれも採用することができない。
25 2 争点2(旧特許法112条の2第1項の適用の可否)について? 原告は、令和5年最高裁判決と同様に、附則2条8項等の定めにかかわら10ず、新特許法を適用すべきであり、本件はその必要性が高い事案である旨主張する。
しかしながら、原告引用の令和5年最高裁判決は、経過措置等の規定が置かれていなかった事案に係るものであり、経過措置の規定が置かれている本5 件とは、明らかに事案を異にするものである。そして、経過措置の規定が置かれている以上、原告主張に係る必要性にかかわらず、本件事案には、上記規定に基づき旧特許法が適用されるものと解するのが相当である。
したがって、令和5年最高裁判決は本件に適切ではなく、原告の主張は、
採用することができない。
10 ? また、原告は、経過措置の規定である附則2条8項等につき、専ら国家権力である特許庁に新法対応を準備させるという点を重視したもので立法目的が不当である上、公布日から2年を超えない範囲内の施行日というのは長期間であるから、憲法29条2項に反し、無効であると主張する。
そこで原告の主張を踏まえて検討すると、財産権に対する規制が憲法2915 条2項にいう公共の福祉に適合するものとして是認されるべきものであるかどうかは、規制の目的、必要性、内容、その規制によって制限される財産権の種類、性質及び制限の程度等を比較考量して判断すべきものである(最高裁平成12年(オ)第1965号、同年(受)第1703号同14年2月13日大法廷判決・民集56巻2号331頁)。
20 これを本件についてみると、経過措置とは、社会生活における従来の秩序が新しい秩序に円滑に移行するように配慮を加える必要から設けられるものであり、附則2条8項等についても、手数料額等を定める政令や手数料徴取のためのシステムの整備等をする必要性などから定められたものである。
そうすると、経過措置の規定である附則2条8項等の目的は正当なもので25 あり、施行期日を定める規定も上記にいう整備等の期間として相当なものといえるから、これらを置いたことが必要性又は合理性に欠けるものとはいえ11ないことは、明らかである。
したがって、原告の主張は、附則2条8項等の趣旨目的を正解するものとはいえず、採用することができない。
3 争点3(信義則違反の有無)について5 原告は、新特許法が既に公布されていたにもかかわらず、附則2条8項等を適用して旧特許法が適用されることは、信義則違反であり、また、被告が本件却下処分に際し医師の診断書を求めていたにもかかわらず、被告が当該病状につき、旧特許法112条の2にいう「正当な理由」の考慮要素の一つにすぎないと本件訴訟で主張することは、信義則に反する旨主張する。
10 しかしながら、上記認定に係る本件弁理士の活動状況及び附則2条8項等の趣旨目的に鑑みると、原告の主張は、いずれも前記判断を左右するものとはいえない。
したがって、原告の主張は、採用することができない。
4 まとめ15 その他に、原告提出に係る準備書面及び証拠を改めて検討しても、本件弁理士の活動状況及び附則2条8項等の趣旨目的に鑑みると、前記判断を左右するに至らない。したがって、原告の主張は、いずれも採用することができない。
以上によれば、本件却下処分は適法であるものと認めるのが相当であり、原告の請求は、理由がない。
20 第5 結論よって、主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第40部25裁判長裁判官12中 島 基 至5 裁判官小 田 誉 太 郎裁判官古賀千尋は差支えのため、署名押印することができない。
10 裁判長裁判官中 島 基 至13(別紙)関連法令の定め5 【旧特許法】(特許料追納)第112条 特許権者は、第108条第2項に規定する期間又は第109条若しくは第109条の2の規定による納付の猶予後の期間内に特許料を納付することができないときは、その期間が経過した後であつても、その期間の経過後10 6月以内にその特許料追納することができる。
2 前項の規定により特許料追納する特許権者は、第107条第1項の規定により納付すべき特許料のほか、その特許料と同額の割増特許料を納付しなければならない。
3 前項の割増特許料の納付は、経済産業省令で定めるところにより、特許印紙15 をもつてしなければならない。ただし、経済産業省令で定める場合には、経済産業省令で定めるところにより、現金をもつて納めることができる。
4 特許権者が第1項の規定により特許料追納することができる期間内に、第108条第2項本文に規定する期間内に納付すべきであつた特許料及び第2項の割増特許料を納付しないときは、その特許権は、同条第2項本文に規定す20 る期間の経過の時にさかのぼつて消滅したものとみなす。
5 特許権者が第1項の規定により特許料追納することができる期間内に第108条第2項ただし書に規定する特許料及び第2項の割増特許料を納付しないときは、その特許権は、当該延長登録がないとした場合における特許権の存続期間の満了の日の属する年の経過の時にさかのぼつて消滅したものとみ25 なす。
146 特許権者が第1項の規定により特許料追納することができる期間内に第109条又は第109条の2の規定により納付が猶予された特許料及び第2項の割増特許料を納付しないときは、その特許権は、初めから存在しなかつたものとみなす。
5(特許料追納による特許権の回復)第112条の2 前条第4項若しくは第5項の規定により消滅したものとみなされた特許権又は同条第6項の規定により初めから存在しなかつたものとみなされた特許権の原特許権者は、同条第1項の規定により特許料追納するこ10 とができる期間内に同条第4項から第6項までに規定する特許料及び割増特許料を納付することができなかつたことについて正当な理由があるときは、経済産業省令で定める期間内に限り、その特許料及び割増特許料追納することができる。
2 前項の規定による特許料及び割増特許料追納があつたときは、その特許権15 は、第108条第2項本文に規定する期間の経過の時若しくは存続期間の満了の日の属する年の経過の時にさかのぼつて存続していたもの又は初めから存在していたものとみなす。
【新特許法】20 附則(施行期日)第1条 この法律は、公布の日から起算して1年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。ただし、次の各号に掲げる規定は、当該各号に定める日から施行する。
25 一〜二 (略)三 第1条中特許法……第112条第2項及び第4項から第6項までの改正規15定……公布の日から起算して6月を超えない範囲内において政令で定める日四 (略)五 第1条中特許法……第112条の2第1項の改正規定……公布の日から起算して2年を超えない範囲内において政令で定める日5(特許法の一部改正に伴う経過措置)第2条 第1条の規定(前条第5号に掲げる改正規定に限る。)による改正後の特許法(以下「第5号改正後特許法」という。)第36条の2第6項の規定は、
同号に掲げる規定の施行の日(以下「第5号施行日」という。)以後に特許法10 第36条の2第5項の規定により取り下げられたものとみなされる特許出願について適用し、第5号施行日前に同項の規定により取り下げられたものとみなされた特許出願については、なお従前の例による。
2〜6 (略)7 第1条の規定(前条第3号に掲げる改正規定に限る。)による改正後の特許15 法(次項において「第3号改正後特許法」という。)第112条第2項ただし書の規定は、同号に掲げる規定の施行の日(以下「第3号施行日」という。)前に特許法第108条第2項に規定する期間又は第1条の規定(前条第2号、
第3号及び第5号に掲げる改正規定を除く。)による改正前の特許法第109条若しくは第109条の2の規定による納付の猶予後の期間を経過した場合20 であって、これらの期間内に特許料の納付がなかったときについては、適用しない。
8 第5号改正後特許法第112条の2第1項の規定は、第5号施行日以後に第3号改正後特許法第112条第4項から第6項までの規定により消滅したもの又は初めから存在しなかったものとみなされる特許権について適用し、第525 号施行日前に第1条の規定(前条第3号に掲げる改正規定に限る。)による改正前の特許法第112条第4項から第6項まで又は第3号改正後特許法第11612条第4項から第6項までの規定により消滅したもの又は初めから存在しなかったものとみなされた特許権については、なお従前の例による。
以上17
事実及び理由
全容