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事件 令和 4年 (ワ) 9521号 特許権侵害差止等請求事件
5
原告 株式会社日本触媒
同代表者代表取締役
同訴訟代理人弁護士 小松 陽一郎
同 藤野 睦子 10 同 千葉あすか
同 福永 聡
同 本田 輝人
同訴訟代理人弁理士 森下 夏樹
同 ?谷 剛志 15
被告 株式会社カネカ
同代表者代表取締役
同訴訟代理人弁護士 飯島 歩
同 井窪 保彦 20 同 黒田薫
同 三品 明生
同 上田 亮祐
裁判所 大阪地方裁判所
判決言渡日 2024/02/26
権利種別 特許権
訴訟類型 民事訴訟
主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。
25 2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
請求
1 被告は、別紙被告製品目録記載の樹脂を製造し、販売し、輸出し又は販売の申 出をしてはならない。
2 被告は、前項記載の樹脂及びその半製品(別紙被告製品説明書記載の各構造を 5 具備しているが製品として完成するに至らないもの)を廃棄せよ。
3 被告は、原告に対し、10億円及びこれに対する令和4年11月10日から支 払済みまで年3パーセントの割合による金員を支払え。
事案の概要
1 本判決における略称10 (1) 本件特許(権):特許第4974971号の特許(に係る特許権) (2) 本件明細書:本件特許に係る明細書 (3) 本件発明1、本件発明6:本件特許の特許請求の範囲請求項1、同6の発明 (総称して本件各発明) (4) 被告製品:別紙被告製品目録記載の樹脂15 (5) 被告方法:被告製品の製造方法 (6) UVA:紫外線吸収剤 (7) 被告UVA:被告製品に使用されるUVA (8) 乙1文献:国際公開番号WO2006/112223(同文献に記載の発明 は乙1発明)20 (9) 乙2文献:特表2002-543265号公報(同文献に記載の発明は乙2 発明) 2 訴訟物 被告製品の製造販売等及び被告製品の製造方法の使用が本件特許権(請求項1 及び同6)の侵害であることを前提とする、原告の被告に対する次の各請求25 (1) 特許法100条1項に基づく、被告製品の製造販売等の差止請求 (2) 同条2項に基づく、被告製品及びその半製品の廃棄請求 2 (3) 民法709条に基づく、10億円(損害金の一部)及びこれに対する行為の 後日から支払済みまでの民法所定の割合による遅延損害金の支払請求 3 前提事実(争いのない事実及び証拠により容易に認定できる事実) (1) 当事者 5 原告及び被告は、いずれも合成樹脂事業等を目的とする株式会社である。
(2) 本件特許権 原告は、本件特許権を有している(甲1、2)。本件特許の書誌的事項は次の とおりであり、本件明細書は、別紙特許公報のとおりである。
ア 特許番号 特許第4974971号10 イ 発明の名称 熱可塑性樹脂組成物とそれを用いた樹脂成形品および偏 光子保護フィルムならびに樹脂成形品の製造方法 ウ 出願日 平成20年6月13日 エ 優先日 平成19年6月14日、同年8月1日 オ 登録日 平成24年4月20日15 (3) 構成要件の分説 ア 本件発明1 1A:ラクトン環構造、無水グルタル酸構造、グルタルイミド構造、N-置 換マレイミド構造および無水マレイン酸構造から選ばれる少なくとも1 種の環構造を主鎖に有する熱可塑性アクリル樹脂と、
20 1B:ヒドロキシフェニルトリアジン骨格を有する、分子量が700以上の 紫外線吸収剤と、
1C:を含み、
1D:110℃以上のガラス転移温度を有する 1E:熱可塑性樹脂組成物。
25 1F:ここで、前記ヒドロキシフェニルトリアジン骨格は、トリアジンと、
トリアジンに結合した3つのヒドロキシフェニル基とからなる骨格((2 3 -ヒドロキシフェニル)-1,3,5-トリアジン骨格)である。
イ 本件発明6 6A:ラクトン環構造、無水グルタル酸構造、グルタルイミド構造、N-置 換マレイミド構造および無水マレイン酸構造から選ばれる少なくとも1 5 種の環構造を主鎖に有する熱可塑性アクリル樹脂と、
6B:ヒドロキシフェニルトリアジン骨格を有する、分子量が700以上の 紫外線吸収剤と、
6C:を溶融混合して、
6D:110℃以上のガラス転移温度を有する熱可塑性樹脂組成物を得る、
10 6E:熱可塑性樹脂組成物の製造方法
6F:ここで、前記ヒドロキシフェニルトリアジン骨格は、トリアジンと、
トリアジンに結合した3つのヒドロキシフェニル基とからなる骨格((2 -ヒドロキシフェニル)-1、3、5-トリアジン骨格)である。
(4) 被告製品・被告方法の構成等15 ア 被告製品は、構成要件1B以外の本件発明1の構成要件をいずれも充足す る。
イ 被告方法は、構成要件6B以外の本件発明6の構成要件をいずれも充足す る。
ウ 被告UVAの分子式は、「C42H57N3O6」である。
20 (5) 被告の行為 被告は、遅くとも平成25年以降、被告製品の製造、販売、輸出及び販売の 申出を行った(甲3)。
4 争点 (1) 被告製品・方法が「分子量が700以上の紫外線吸収剤」を使用したものと25 して、構成要件1B、同6Bを各充足するか(争点1・請求原因) (2) 被告製品及び被告方法が本件各発明と均等なものとして侵害となるか(争点 4 2・請求原因) (3) 本件各発明に乙1発明を主引例とする進歩性欠如の無効理由があるか(争点 3・抗弁) (4) 原告の被った損害の額(争点4・請求原因) 5 第3 争点に関する当事者の主張 1 争点1(被告製品及び被告方法が「分子量が700以上の紫外線吸収剤」を使 用したものとして、構成要件1B、同6Bを各充足するか)について 【原告の主張】 (1) 分子量の計算方法10 本件明細書には、UVAの分子量が整数値で表記されているが、分子量や原 子量の数値の表記に関する説明はないから、分子量及び原子量の数値は、出願 時の技術常識によって解釈すべきである。
技術常識である「JISハンドブック49化学分析 2007」 (甲8)によ れば、整数値を求める場合、通常小数点1桁を四捨五入することとなる。また、
15 「理化学辞典(第5版)(甲9)によれば、原子量の総和である分子量を算出 」 する際、原子量自体に概数値である整数値を用いるべきではないこととなる。
UVAのように比較的大きな分子の場合、原子量に整数値を用いると正確な分 子量を算出できない。
(2) 被告UVAの分子量20 被告UVAは、分子式C42H57N3O6であるから、炭素原子42個、水素原 子57個、窒素原子3個、酸素原子6個で構成されるところ、前記JISハン ドブック記載の原子量(小数点2桁まで。C(12.01)、H(1.01)、
N(14.01)、O(16.00))に、被告UVAを構成する各元素の原子 数を乗じて足し合わせ、その分子量を算出すると、700.02と算出され、
25 これを四捨五入して整数値とすると700となる。
理化学辞典記載の平均原子量(C(12.0107)、H(1.00794)、
5 N(14.00674) O 、 (15.9994)に基づいて算出しても、699. 9186と算出され、これを四捨五入して整数値とすると700となる。
(3) (2)を裏付ける事情 被告UVAと同じ分子式のUVA(株式会社ADEKA製「LA-F70」 5 (製品名アデカスタブ))の分子量は、製品案内等において「700」であると されている。
被告の「光学フィルム」の発明に係る公開特許公報(甲13)にも、UVA である「LA-F70」の分子量が699.9であると記載されており、これ を四捨五入して整数値とすると「700」となる。
10 (4) まとめ 以上より、被告UVAの分子量は「700以上」であって、被告製品は構成 要件1Bを充足し、被告方法は構成要件6Bを充足する。
【被告の主張】 (1) 被告UVAの分子量について15 特許請求の範囲及び本件特許明細書において、UVAの分子量は全て整数値 で記載されているから、構成要件1B及び同6Bの「分子量が700以上」と は、整数値である原子量の概数値を用いて計算したときに、分子量が700以 上となることを指すものである。
被告UVAを構成する元素の原子量の整数の概数値は、炭素が12、水素が20 1、窒素が14、酸素が16であるから、被告UVAの分子量は、当該整数値 に原子の個数を乗じた数の和である699となる。
よって、被告製品は構成要件1B(分子量が700以上)を充足せず、被告 方法は構成要件6Bを充足しない。
(2) 原告の主張する計算方法は、分子量が700以上となるように恣意的に丸め25 の桁を選択したものであって、技術常識に基づくものではないし、その方法に よる分子量の計算結果は、本件明細書で示される他のUVAの分子量とも整合 6 しない。
2 争点2(被告製品・被告方法が本件各発明と均等なものとして侵害となるか) について 【原告の主張】 5 仮に、被告UVAの分子量が699であり、文言侵害が成立しないとしても、
次のとおり、均等侵害が成立する。なお、均等侵害の成立要件のうち、第4要件 及び第5要件は、被告が主張立証すべきである。
(1) 第2要件(作用効果の同一性) 構成要件1B及び同6BにおけるUVAの分子量が「700以上」であるこ10 とは、本件各発明の発明特定事項となっている。しかし、本件特許明細書には、
好ましい上限数値に触れた記載はあるが下限に触れた記載はなく、
「UVA(B) は2種以上の化合物の混合物であってもよく、この場合、主成分である化合物 の分子量が700以上であればよい。 との記載もある。
」 そして、被告UVAの 分子量が699である場合、構成要件1B及び同6B記載の分子量の下限値と15 の差は700分の1にすぎない。そうすると、被告製品は本件発明1と、被告 方法は本件発明6と、それぞれ同一の作用効果を奏する。
(2) 第3要件(置換容易性) 被告製品は構成要件1B以外の本件発明1の全ての構成要件を充足し、被告 方法は構成要件6B以外の本件発明6の全ての構成要件を充足する。また、被20 告は、本件特許の公開特許公報の公開日(平成21年3月12日)後の平成2 5年から被告製品を製造販売するところ、製造時において販売されていた被告 UVAと同一の分子量を有するアデカスタブを入手することは可能であった。
よって、置換容易性がある。
(3) 第1要件(非本質的部分)25 本件発明1及び同6の作用効果は、各構成要件が有機的に結合してもたらさ れるところ、上記(1)のとおり、被告製品及び被告方法は構成要件1B及び同 7 6B以外の構成要件を充足し、各発明と同一の作用効果を奏する。また、本件 明細書において、UVAの分子量の上限はかなり大きいとされ、UVAを混合 物とした場合に主成分の分子量が700以上であればよいと記載されている ことに加え、従来技術と比較すると、構成要件1B及び同6Bの「700」と 5 は、分子量が十分大きいUVAを用いるという発明の技術的思想を示す一指標 にすぎず、厳格な技術的意義はない。よって、本件発明1及び同6の本質的部 分は、分子量が十分に大きいという上位概念として認定されるべきであるから、
被告UVAの分子量が699であること(分子量1の違い)は本件各発明の非 本質的部分といえる。
10 【被告の主張】 本件各発明は、後記のとおり進歩性を欠くものであり、新たに特有の技術的思 想を開示するものではなく、その貢献の程度は限りなく小さい。そうすると、各 発明の本質的部分は、特許請求の範囲の記載と同一であるというべきであり、被 告UVAの分子量(699)が700を下回ることは、各発明の本質的部分にお15 ける相違点である。よって、均等侵害の第1要件を満たすとはいえず、均等侵害 は成立しない。
3 争点3(本件各発明に乙1発明を主引例とする進歩性欠如の無効理由があるか) について 【被告の主張】20 (1) 本件発明1について ア 乙1発明の構成 乙1文献には、次の乙1発明の構成が開示されている。
1a:下記一般式(略)で表されるラクトン環構造を主鎖に有する熱可塑 性(メタ)アクリル樹脂と、
25 1b:トリアジン系UVAと、
1c:を含み、
8 1d:上記(メタ)アクリル樹脂にUVAを添加した樹脂組成物のガラス 転移温度が112℃以上である 1e:偏光子保護フィルム。
1f:ここで、前記トリアジン系UVAは、乙2文献に記載のUVAであ 5 る。
イ 本件発明1と乙1発明の相違点 本件発明1のUVAは、トリアジンとトリアジンに結合する3つのヒドロ キシフェニル基とからなる骨格((2-ヒドロキシフェニル)-1,3,5 -トリアジン骨格)を有し(構成要件1F)、分子量が700以上(構成要10 件1B)であるのに対し、乙1発明のトリアジン系UVAは、乙2発明に係 るUVAとして特定されるにとどまり、トリアジンに結合した3つのヒドロ キシフェニル基を有し、分子量が700以上であることは明示されていない。
よって、本件発明1と乙1発明は、構成要件1B及び1Fにおいて相違する。
ウ 乙2発明の構成15 乙2文献には、「ヒドロキシフェニルトリアジン骨格を有する、下記の式 (略)で表される分子量が999のUVAであって」、「前記ヒドロキシフ ェニルトリアジン骨格として、トリアジンと、トリアジンに結合した3つの ヒドロキシフェニル基とからなる骨格を有するUVA。 の構成、
」 すなわち、
上記イの相違点に係る構成(乙2発明)が開示されている。
20 エ 容易想到性 乙1文献には、上記アのとおり、乙1発明に乙2発明の化合物を適用でき ることが明示的かつ直接的に記載されているから、乙1発明に乙2発明を組 み合わせることに強い動機付けがあり、当業者は、乙1発明に基づいて本件 発明1を容易に想到することができる。
25 (2) 本件発明6について ア 乙1発明 9 乙1発明には、上記(1)アの1a〜1f(ただし、1eの「偏光子保護フ ィルム」を「偏光子保護フィルムの製造方法」と読み替える。)の構成が 開示されている。
イ 本件発明6と乙1発明の相違点 5 上記(1)イと同様の理由から、本件発明1と乙6発明は、構成要件6B及 び6Fにおいて相違する。
ウ 乙2発明の構成 乙2発明には、上記(1)ウの構成が開示されている。
容易想到性10 上記(1)エと同様の理由から、当業者は、乙1発明に基づいて本件発明6 を容易に想到することができる。
(3) まとめ 本件各発明は、いずれも進歩性欠如の無効理由がある。
【原告の主張】15 (1) 本件特許は、出願後、明確性要件違反を理由とする拒絶理由通知がされ、第 三者から乙1文献が主引例として刊行物提出されたが、上記拒絶理由通知を受 けての旧請求項6の補正後、登録査定となった。このような出願経過に照らせ ば、本件各発明は、乙1発明に基づいては進歩性が否定されない。
(2) 本件発明1について20 ア 乙1発明の構成 乙1文献に開示されたUVAは「トリアジン系UVA」のみではなく「ト リアジン系UVAとトリアゾール系UVA」 (併用)である。仮に、乙1文献 に開示されたUVAが「トリアジン系UVA」のみであるとしても、乙1文 献の明細書の比較例において例示されたUVA(チヌビン(TINUVIN)25 1577。
「2-(4,6-ジフェニル-1, 5-トリアジン-2-イル) 3, -5- [ (へキシル)オキシ] -フェノール」)である。
10 イ 本件発明1と乙1発明の相違点 本件発明1と乙1発明の相違点は、被告主張の相違点のほかに、上記アの UVAの点も相違点となる。
容易想到性 5 乙1発明は偏光子保護フィルムに関する発明であるのに対し、乙2発明は 接着剤に関する発明であり、両発明は具体的な技術分野及び課題が相違する。
したがって、乙1発明に乙2発明を組み合わせる動機付けはない。
また、乙1文献にトリアジン系UVAのみが開示されているとしても、明 細書の比較例として開示されているにすぎない。乙1文献にトリアジン系U10 VAとトリアゾール系UVAが開示されているとしても、乙1発明に組み合 わせるUVAとしては、作用効果の劣る乙2発明のトリアジン系UVAでは なく、乙1文献に記載された乙2発明以外のトリアゾール系UVAを選択す ることが自然である。これらの事情等に照らせば、乙1発明に乙2発明を組 み合わせることにつき、阻害要因がある。
15 加えて、本件発明1と、乙1発明及び乙2発明の作用効果はいずれも異な るから、乙1発明と乙2発明の組合せによって本件発明1の効果が奏される ことはない。
(3) 本件発明6について ア 乙1発明の構成20 乙1発明に開示されたUVAは、上記(2)アのとおりである。
イ 本件発明6と乙1発明の相違点 上記(2)イのとおりである(ただし、「偏光子保護フィルム」を「偏光子保 護フィルムの製造方法」と読み替える。)。
容易想到性等25 上記(2)ウのとおりである。
(4) まとめ 11 本件各発明に進歩性欠如の無効理由はない。
4 争点4(原告の被った損害の額)について 【原告の主張】 (1) 逸失利益 5 被告は、遅くとも平成25年から被告製品を製造・販売等していたところ、
製品単価は少なくとも50万円/トン(税抜)、販売数は少なくとも年間30 00トンであり、販売利益率は30%をくだらない。
よって、原告の損害額(逸失利益)は、特許法102条2項に基づき、少な くとも13億5000万円(=9000トン(本訴提起前3年間の推定販売数10 量)×単価50万円/トン(推定単価)×30%(推定利益率))となる。
(2) 弁護士費用 被告の本件特許権侵害行為と相当因果関係にある弁護士費用相当額の損害 は、1億3500万円をくだらない。
(3) 一部請求15 原告は、本訴において、上記合計額のうち10億円(及び行為後の日から民 法所定の割合による遅延損害金)の損害賠償を求める(明示的一部請求)。
【被告の主張】 否認し争う。
判断
20 1 争点1(被告製品及び被告方法が「分子量が700以上の紫外線吸収剤」を使 用したものとして、構成要件1B、同6Bを各充足するか)について (1) 本件明細書等の記載 本件明細書には、別紙「特許明細書(抜粋)」の記載がある。
特許請求の範囲及び本件明細書には、UVAの分子量がいずれも整数値で記25 載されているが、分子量の計算方法や整数値(小数点以下1位を四捨五入)と する根拠について明らかにされていない。したがって、UVAの分子量等につ 12 いては、当業者の技術常識をもって解釈することとなる。
(2) 当業者の被告UVAの分子量の認識について 証拠(甲8、9)によると、分子量等の意義は次のとおりと認められ、これ による分子式C42H57N3O6で表される化合物の分子量はエのとおりとなる。
5 ア 分子量 分子量は、一定の基準によって定めた化学物質(単体又は化合物)の分子 の相対的質量をいい、その基準は原子量の場合に準ずる。ある化学物質の分 子量は、その分子を構成する原子の原子量の和に等しい。例えば、酸素(単 体)ではO2=31.9988となる。
10 イ 原子量 原子量は、一定の基準によって定めた元素の原子の質量をいい、原子の質 量は核種によって異なるが、大部分の元素について同位体の存在比は一定な ので、各元素ごとに平均としての原子量を考えることができる。その基準の 選定については歴史的変遷があり、1962年以降は質量数12の炭素の同 1215 位体 Cの原子量を12とする新基準に統一された。
現在では、質量分析器によって各元素の同位体の質量と存在比とを測定し て原子量を求める。
1919年IUPACが組織され、その下部組織としての国際原子量委員 会で討議した国際原子量が同委員会より発表されるようになった。日本では20 その値が隔年の日本化学会会誌“化学と工業”に発表される。
IUPAC原子量表(1995)をもとに、作成された日本版のものの原 子量は次のとおりである。なお、多くの元素の原子量は一定ではなく、物質 の起源や処理の仕方に依存し、原子量とその不確かさ(括弧内の数字で表さ れ、有効数字の最後の桁に対応する)は、地球上に天然に存在する元素につ25 いて適用されると注記されている。
炭素 12.0107(8) 13 窒素 14.00674(7) 水素 1.00794(7) 酸素 15.9994(3) ウ 原子量表(2003) 「化学と工業」Vol.57(2004)日本化学会 5 によるものでは、原子量は次のとおりとされている(甲8) 数値の意義等は 。
前記イと同様である。
炭素 12.0107(8) 窒素 14.0067(2) 水素 1.00794(7)10 酸素 15.9994(3) エ 以上によると、当業者において、ある物質の分子量は、その構成する原子 の原子量表記載の数値の和として認識されるから、不確からしさを考慮しな い場合、本件優先日当時に近い原子量の数値につき前記(2)ウを採用した、
分子式C42H57N3O6で表される化合物の分子量は、699.9184815 となる(不確からしさを考慮すると、小数点以下4位又は5位をJIS等に 示される方法により丸めることになると考えられる。。
) (3) 分子量に関する原告の主張について 前記(1)のとおり、本件各発明に用いられるUVAの分子量の計算において、
その基礎となる原子量の数値や、算出された分子量を特定の桁(原告の主張で20 いう、原子量につき小数点以下2桁、あるいは算出された分子量を整数値)に 丸めることは前提とされていないから、前記(2)の分子量の計算と異なる分子 量の数値を採用すべき根拠は見出せない。原子量を小数点以下2桁に丸めて分 子量を計算し、更に分子量を整数に丸めるという計算方法は、誤差の原因とな り技術常識にもそぐわないし、本件明細書の比較例におけるUVAの分子量の25 記載が原告主張の計算方法による結果と合致しないとの被告の指摘も考慮さ れるべきである。
14 また、原告は、被告UVAと同じ分子式で表されるUVAについて、カタロ グや他の特許公報等において、その分子量が700と表記されることがあるこ と(甲5、7の1ないし5)を指摘するものの、
「699.9」とか、
「699. 92」とかと表記される例もある(乙3の1ないし7)ことからすると、当業 5 者において、UVAの分子量を、算出された分子量を丸めて整数値とすること が技術常識であると認めることもできない(原告自身、有効数字は整数値をと るか、小数点以下あるいは整数値でも10の位、100の位とするかは、分野 や使用目的によってまちまちであることは自認している。。
) (4) まとめ10 以上によると、被告UVAは、分子量が699.91848であって、構成 要件1B及び同6Bの「分子量が700以上」であるUVAではないから、被 告製品及び被告方法は、構成要件1B・同6Bを充足しない。
争点1に関する原告の主張は、理由がない。
2 争点2(被告製品及び被告方法が本件各発明と均等なものとして侵害となるか)15 について (1) 特許請求の範囲に記載された構成中に相手方が製造等をする製品又は用い る方法(以下「対象製品等」という。)と異なる部分が存する場合であっても、
同部分が特許発明の本質的部分ではなく(第1要件)、同部分を対象製品等に おけるものと置き換えても、特許発明の目的を達することができ、同一の作用20 効果を奏するものであって(第2要件) 上記のように置き換えることに、
、 当該 発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(当業者)が、対象製 品等の製造等の時点において容易に想到することができたものであり(第3要 件)、対象製品等が、特許発明の特許出願時における公知技術と同一又は当業 者がこれから同出願時に容易に推考できたものではなく(第4要件) かつ、
、 対25 象製品等が特許発明の特許出願手続において特許請求の範囲から意識的に除 外されたものに当たるなどの特段の事情もないとき(第5要件)は、同対象製 15 品等は、特許請求の範囲に記載された構成と均等なものとして、特許発明の技 術的範囲に属するものと解される(最高裁平成6年(オ)第1083号同10 年2月24日第三小法廷判決・民集52巻1号113頁参照)。
(2) 第1要件について 5 ア 本件各発明は、耐熱性透明材料として好適な熱可塑性樹脂組成物と、当該 組成物からなる樹脂成形品ならびに樹脂成形品の具体的な一例である偏光 子保護フィルム、樹脂成形品の製造方法に関する発明である 【0001】。
( ) アクリル樹脂の透明度の低下を防止するためにUVAを添加する方法が 公知であったが、成形時の発泡やUVAのブリードアウト、UVAの蒸散に10 よる紫外線吸収能の低下との問題につき、従来技術として、アクリル樹脂に 組み合わせるUVAとして、トリアジン系化合物、ベンゾトリアゾール系化 合物およびベンゾフェノン系化合物が用いられていた(【0003】【00 、
05】【0006】。しかし、これらの従来技術として例示されたアクリル 、 ) 樹脂(【0006】記載の特許文献)には、いずれも分子量が700以上のU15 VAは開示されていなかった。
イ 本件各発明は、従来技術の化合物には、主鎖に環構造を有するアクリル樹 脂との相溶性に課題があり、高温成形時の発泡やブリードアウトの発生の抑 制が不十分であったことから、これらの課題を克服するため(【0007】、
【0008】、樹脂組成物を構成要件1B記載の構成とし、その製造方法を )20 構成要件6B記載の構成とし(【0009】【0010】、これにより11 、 ) 0℃以上という高いTgに基づく優れた耐熱性や高温成形時における発泡 及びブリードアウトの抑制、UVAの蒸散による問題発生の減少との効果を 奏することとなった(【0015】。
) ウ したがって、本件各発明の本質的部分は、ヒドロキシフェニルトリアジン25 骨格を有する、分子量が700以上のUVAが、主鎖に環構造を有する熱可 塑性アクリル樹脂と相溶性を有することを見出したことにより、110℃以 16 上という高い優れた耐熱性や高温成形時における発泡及びブリードアウト の抑制、UVAの蒸散による問題発生の減少という効果を有する樹脂組成物 を提供することを可能にした点にあると認められる。
エ 数値をもって技術的範囲を限定し(数値限定発明)、その数値に設定する 5 ことに意義がある発明は、その数値の範囲内の技術に限定することで、その 発明に対して特許が付与されたと考えられるから、特段の事情のない限り、
その数値による技術的範囲の限定は特許発明の本質的部分に当たると解す べきである。
上記検討によれば、分子量を「700以上」とすることには技術的意義が10 あるといえるうえ、本件において、上記特段の事情は何らうかがえない。
オ そうすると、被告UVAの分子量が「700以上」ではないとの相違点は、
本件各発明の本質的部分に係る差異であるというべきであるから、被告製品 及び被告方法について、均等の第1要件が成立すると認めることはできず、
均等侵害は成立しない。
15 カ 原告は、本件各発明におけるUVAの分子量である「700」に厳格な技 術的意義はなく、本件各発明の本質的部分は、分子量が十分に大きいという 上位概念であると主張する。
しかし、このような上位概念化は、前述の数値限定発明の技術的意義に関 する考え方と相容れず権利範囲を不当に拡大するものである。また、本件証20 拠上、本件各発明におけるUVAの分子量が十分に大きいということが当業 者にとって自明であるとも認められないし、分子量が十分に大きいことと、
被告UVAの分子量との比較における本件各発明の数値の臨界的意義との 関係は何ら明らかにされていない。
したがって、原告の主張は採用の限りでない。
25 (3) 小括 以上によると、均等侵害の他の要件を検討するまでもなく、原告の、争点2 17 にかかる主張は、理由がない。
結論
以上の次第で、請求原因に理由がないから、争点3(抗弁)、同4(損害)を判断 するまでもなく、原告の請求は棄却されるべきものである。
5 よって、主文のとおり判決する。
追加
松阿彌隆裁判官15島田美喜子裁判官20阿波野右起18 別紙被告製品目録5光学用アクリル樹脂(HTX-ZU)19 別紙被告製品説明書光学用アクリル樹脂(HTX-ZU)であり、グルタルイミド構造の環構造を主鎖5に有する熱可塑性アクリル樹脂と、ヒドロキシフェニルトリアジン骨格を有する分子量が700の紫外線吸収剤とを含み、約122℃のガラス転移温度を有する、熱可塑性樹脂組成物であり、ヒドロキシフェニルトリアジン骨格は、トリアジンと、トリアジンに結合した3つのヒドロキシフェニル基とからなる骨格((2-ヒドロキシフェニル)-1、3、5-トリアジン骨格)である。
1020 別紙特許明細書の記載(抜粋)1【技術分野】5【0001】本発明は、耐熱性透明材料として好適な熱可塑性樹脂組成物と、当該組成物からなる樹脂成形品ならびに樹脂成形品の具体的な一例である偏光子保護フィルムとに関する。また、本発明は、上記保護フィルムを備える偏光板と、当該偏光板を備える画像表示装置とに関し、さらには樹脂成形品の製造方法に関する。
102【背景技術】【0002】ポリメタクリル酸メチル(PMMA)に代表される熱可塑性アクリル樹脂(以下、単に「アクリル樹脂」ともいう)は、高い光線透過率を有するなど、その光学特性に優れるとともに、機械的強度、成形加工性および表面硬度のバランスに15優れることから、自動車および家電製品をはじめとする各種の工業製品における透明材料として幅広く使用されている。(略)【0003】アクリル樹脂は、紫外線を含む光に曝されると黄変して透明度が低下することがあり、これを防ぐ方法として、紫外線吸収剤(UVA)を添加する方法が知ら20れている。しかし一般的なUVAでは、UVAを添加したアクリル樹脂組成物を成形する際に発泡が生じたり、UVAがブリードアウトしたりすることがある。
また、成形時に加えられる熱によりUVAが蒸散して、得られた樹脂成形品の紫外線吸収能が低下したり、蒸散したUVAにより成形装置が汚染されるなどの問題が生じることがある。
25【0005】樹脂あるいは樹脂組成物のTgが高くなると、より高い成形温度が必要となる。
21 このため、主鎖に環構造を有するアクリル樹脂にUVAを添加すると、得られた樹脂成形品に発泡やUVAのブリードアウトが生じやすい。また、成形時におけるUVAの蒸散が強くなることによる紫外線吸収能の低下、成形装置の汚染が生じやすくなる。
5【0006】これらの問題を考慮し、これまで、少量の添加により高い紫外線吸収効果が得られるとされるトリアジン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物およびベンゾフェノン系化合物が、UVAとして、アクリル樹脂と組み合わせて用いられている。上述した特開2006-328334号公報にも上記化合物が開示されてい10る。
【特許文献1】特開2007-31537号公報【特許文献2】特開2006-328334号公報【特許文献3】特開2000-230016号公報【特許文献4】特開2006-96960号公報153【発明が解決しようとする課題】【0007】しかし、これらの化合物は、主鎖に環構造を有するアクリル樹脂との相溶性に課題が残る。高温での成形時における発泡、ブリードアウトの発生の抑制も必ずしも十分であるといえない。また、アクリル樹脂とUVAとを含む樹脂組成物か20ら光学部材を形成する際に、得られた部材の外観上の欠点を減らすことを目的として、ポリマーフィルタによる樹脂組成物の濾過を行うことがあるが、この場合、
樹脂組成物の成形温度をさらに高くする必要がある。成形温度が高くなると、発泡およびブリードアウトが発生しやすくなるとともに、UVAの蒸散に伴う問題(得られた樹脂成形品における紫外線吸収能の低下、蒸散したUVAによる成形25装置の汚染)が生じやすくなる。
【0008】22 本発明は、アクリル樹脂とUVAとを含む樹脂組成物であって、ガラス転移温度の高さに基づく優れた耐熱性を有しながら、高温での成形時においても、発泡、
ブリードアウトなどの発生が抑制され、UVAの蒸散による問題の発生を低減できる樹脂組成物を提供することを目的とする。
54【課題を解決するための手段】【0009】本発明の樹脂組成物は、熱可塑性アクリル樹脂(樹脂(A))と、分子量が700以上の紫外線吸収剤(UVA(B))とを含み、110℃以上のガラス転移温度(Tg)を有する。樹脂(A)は、ラクトン環構造、無水グルタル酸構造、グル10タルイミド構造、N-置換マレイミド構造および無水マレイン酸構造から選ばれる少なくとも1種の環構造を主鎖に有する。UVA(B)は、ヒドロキシフェニルトリアジン骨格を有する。ここで、前記ヒドロキシフェニルトリアジン骨格は、
トリアジンと、トリアジンに結合した3つのヒドロキシフェニル基とからなる骨格((2-ヒドロキシフェニル)-1、3、5-トリアジン骨格)である。
15【0010】本発明の熱可塑性樹脂組成物の製造方法では、ラクトン環構造、無水グルタル酸構造、グルタルイミド構造、N-置換マレイミド構造および無水マレイン酸構造から選ばれる少なくとも1種の環構造を主鎖に有する熱可塑性アクリル樹脂を重合した後、ヒドロキシフェニルトリアジン骨格を有する、分子量が700以20上の紫外線吸収剤と、前記熱可塑性アクリル樹脂とを溶融混合して、110℃以上のガラス転移温度を有する熱可塑性樹脂組成物を得る。
5【発明の効果】【0015】本発明の樹脂組成物は、110℃以上という高いTgに基づく優れた耐熱性を25示すとともに、高温での成形時においても発泡、ブリードアウトの発生が抑制され、UVAの蒸散による問題の発生が少ない。
23 6【発明を実施するための最良の形態】【0061】UVA(B)の分子量は700以上である。当該分子量は800以上が好ましく、900以上がより好ましい。一方、当該分子量が10000を超えると、樹5脂(A)との相溶性が低下することで、最終的に得られる樹脂成形品の色相、濁度などの光学的特性が低下する。UVA(B)の分子量の上限は、8000以下が好ましく、5000以下がより好ましい。
【0063】UVA(B)は2種以上の化合物の混合物であってもよく、この場合、主成分10である化合物の分子量が700以上であればよい。なお、本明細書における主成分とは、最も含有量(含有率)が多い成分を意味し、その含有率は典型的には50%以上である。
【0066】UVA(B)の構造は分子量が700以上である限り特に限定されないが、U15VA(B)がヒドロキシフェニルトリアジン骨格を有することが好ましい。ヒドロキシフェニルトリアジン骨格は、トリアジンと、トリアジンに結合した3つのヒドロキシフェニル基とからなる骨格((2-ヒドロキシフェニル)-1、3、5-トリアジン骨格)である。ヒドロキシフェニル基における水酸基の水素原子は、
トリアジンの窒素原子とともに水素結合を形成し、形成された水素結合は、フェ20ニルトリアジンの発色団としての作用を増大させる。UVA(B)では上記水素結合が3つ形成されるため、フェニルトリアジンが有する発色団としての作用をより増大でき、少ない添加量で高い紫外線吸収能を得ることができる。なお、UVA(B)が2種以上の化合物の混合物からなる場合、少なくとも主成分である化合物がヒドロキシフェニルトリアジン骨格を有することが好ましい。
257【実施例】【0154】24 以下、実施例により、本発明をより詳細に説明する。本発明は、以下に示す実施例に限定されない。
【0171】(実施例1)(略)5【0175】UVA溶液には、上記式(8)に示す紫外線吸収剤(分子量958)を主成分とし、分子量773および分子量1142の紫外線吸収剤を副成分とするCGL777MPA(チバスペシャリティケミカルズ製、有効成分80%)37.5部をトルエン12.5部に溶解させた溶液を用いた。
10【0176】次に、脱揮完了後、押出機内に残された熱溶融状態にある樹脂を押出機の先端から排出し、ペレタイザーによりペレット化して、主鎖にラクトン環構造を有するアクリル樹脂(A-1)と分子量700以上のUVA(B)とを含む透明な樹脂組成物のペレットを得た。(略)15【0177】(実施例2)UVA溶液の投入速度を0.1kg/時に変更した以外は実施例1と同様にして、主鎖にラクトン環構造を有するアクリル樹脂(A-1)と分子量700以上のUVA(B)とを含む透明な樹脂組成物のペレットを得た。樹脂組成物のガラ20ス転移温度(Tg)は127℃であった。
【0178】(実施例3)(略)【0181】次に、脱揮完了後、押出機内に残された熱溶融状態にある樹脂を押出機の先端25からポリマーフィルタによる濾過を伴いながら排出し、ペレタイザーによりペレット化して、主鎖にラクトン環構造を有するアクリル樹脂(A-2)と分子量725 00以上のUVA(B)とを含む透明な樹脂組成物のペレットを得た。(略)【0182】(実施例4)(略)【0185】5次に、脱揮完了後、押出機内に残された熱溶融状態にある樹脂を押出機の先端からポリマーフィルタによる濾過を伴いながら排出し、ペレタイザーによりペレット化して、主鎖にラクトン環構造を有するアクリル樹脂(A-3)と分子量700以上のUVA(B)とを含む透明な樹脂組成物のペレットを得た。(略)【0186】10(実施例5)(略)【0189】次に、脱揮完了後、押出機内に残された熱溶融状態にある樹脂を押出機の先端からポリマーフィルタにより濾過しながら排出し、ペレタイザーによりペレット化して、主鎖にラクトン環構造を有するアクリル樹脂(A-4)と分子量70015以上のUVA(B)とを含む透明な樹脂組成物のペレットを得た。(略)【0190】(比較例1)(略)【0194】このようにして得た樹脂(A-5)100部に、ベンゾトリアゾール骨格を有20するUVA(ADEKA製、アデカスタブLA-31、分子量659)1.5部をドライブレンドして、樹脂(A-5)とUVAとの樹脂組成物を得た。(略)【0195】(比較例2)樹脂(A-5)とドライブレンドするUVAの量を3.0部に変更した以外は25実施例1と同様にして、樹脂(A-5)とUVAとの樹脂組成物を得た。(略)【0196】26 (比較例3)比較例1で得た樹脂(A-5)100部に、ベンゾトリアゾール骨格を有するUVA(住友化学製、Sumisorb300、分子量315)1.5部をドライブレンドして、樹脂(A-5)とUVAとの樹脂組成物を得た。(略)5【0197】(比較例4)比較例1で得た樹脂(A-5)100部に、トリアジンにヒドロキシフェニル基が1つ結合した骨格を有するUVA(チバスペシャリティケミカルズ製、CGL479(TINUVIN479)、分子量676)1.5部をドライブレンドし10て、樹脂(A-5)とUVAとの樹脂組成物を得た。(略)【0198】実施例1〜5および比較例1〜4で得られた樹脂組成物に対して、上記特性を評価した結果を以下の表1に示す。
【0202】15【表1】【0203】27 表1に示すように、実施例の樹脂組成物では、高いガラス転移温度、紫外線吸収能および可視光透過性を実現しながら、成形時におけるUVAの昇華性および飛散性を比較例に比べて抑制できた。また、実施例の樹脂組成物では、成形時の発泡の発生が抑制された。
5【0204】実施例の樹脂組成物から作製した樹脂フィルムの濁度変化量は、比較例(比較例1を除く)の樹脂組成物から作製した樹脂フィルムに比べて小さかった。実施例の樹脂組成物から作製した樹脂フィルムでは、比較例に比べて、フィルム成形後の熱によるUVAのブリードアウトが抑制されたと考えられる。
28 (別紙特許公報省略)29
裁判長裁判官 10